エンジン実働時のピストン摩擦解析
*
―
シリンダボアクロスハッチ角度がピストンリング摩擦に及ぼす影響 ―
三田 修三1) 長倉 弘幸2) 勝見 則和3) 堀田 滋4) 川合 清行5) 村上 元一6)
Analysis of Piston Frictional Force under Engine Firing Condition
Effect of Cylinder Bore Crosshatch Angle on Friction between Piston Ring Pack and Cylinder Bore
-Shuzo Sanda Hiroyuki Nagakura Norikazu Katsumi Shigeru Hotta Kiyoyuki Kawai Motoichi Murakami A novel lubrication model has been developed which considers characteristics of crosshatched surface. The model yields flow factors using crosshatch angle, plateau ratio, and groove depth. The model is applied to the oil film between piston ring pack and crosshatched bore, which predicts increase in oil film thickness and reduction of friction mean effective pressure by 1kPa with reduction of crosshatch angle from 30°to 10°. The effect of friction reduction has been verified using test rig and floating liner engine. The reduction of crosshatch angle has also been confirmed no evil effect on lubricating oil consumption and anti-scuffing performance.
KEY WORDS: heat engine, engine component, tribology, modeling, piston ring, cylinder bore, surface texture (A1)
1.ま え が き 車両の燃費改善に向けたエンジンの摩擦損失低減において, ピストンおよびピストンリングとシリンダボア間の摩擦損失 の占める割合が大きく,これらの摩擦低減が有効である.最 近,シリンダボアの表面微細形状をコントロールすることに よる摩擦損失低減の研究が報告されている(1-4).飯島ら(1)は, 表面あらさを考慮した潤滑モデル(5)を用いてボアクロスハッ チ角度が摩擦損失に及ぼす影響を考察し,ハッチ角度が小さ いほど低摩擦であることを示した.浦辺ら(2)は,ボア面の行程 中央付近にディンプル加工を施すことにより油膜面積を縮小 し,摩擦低減効果を得ることに成功した.また,Chen ら (3),Caciu ら(4)は,クロスハッチの具体的形状を仮定した上,直 接数値流体力学により油膜圧力分布を計算し,摩擦特性への 影響を推定した.ただしこの方法は計算負荷が非常に高く,ク ロスハッチ形状の最適化を図る手法としては適していない. そこで本研究では,クロスハッチの具体的形状を考慮した 上で,より効率的に油膜厚さおよび摩擦特性への影響を推定 できる潤滑モデルを構築し,これをピストンリング-ボア間 *2014 年 3 月 31 日受理.2014 年 5 月 23 日自動車技術会春季 学術講演会において発表. 1)・3)・4) (株)豊田中央研究所(480-1192 愛知県長久手市横道 41-1) 2)・6) トヨタ自動車(株)(410-1193 静岡県裾野市御宿 1200) 5) TPR(株)(394-8511 長野県岡谷市神明町 2-1-13) の油膜に適用してハッチ角度が摩擦におよぼす影響を解析し た.また,単体縦型往復動試験および浮動ライナ法を用いて ピストン系の摩擦測定を行い,計算の妥当性を検証した.さ らにガソリンエンジンを用いてオイル消費への影響を調べた. 2.クロスハッチ形状を考慮した計算 2.1. クロスハッチ形状を考慮した潤滑計算法 (1) 考え方 従来のあらさを考慮した Patir らの潤滑モデル(5)(図 1(a))で は,表面あらさが油膜の流れに与える影響を流量係数 φ に換 算し,φ をRMSあらさσ と方向性パラメータ γ の関数とし て求め,φ を含んだ修正 Reynolds 方程式を油膜に適用する. ここで,関数 φ(σ,γ)は数値的に形成したあらさパラメータ σ,γ の表面について実際に流量を計算し,平滑な場合との比 を流量係数としてカーブフィットにより求めている.
Fig.1 Surface Texture Model of Cylinder Bore Crosshatch θ PR σ p D θ: Crosshatch Angle D: Groove Depth PR: Plateau Ratio σP:RMS Roughness on Plateau Surface (a) Previous Model(5)
) , ( , , , , φ σγ φx y s x ys σ:RMS Roughness γ: Roughness Direction Parameter ) , , , ( , , , ,y s x y s DPR P x φ φ (b) Developed Model � Fig.13 Refrigerator performance
����冷凍機システム性能評価結果� � 熱音響エンジン及び冷凍器を組合せた熱音響冷凍機システ ムの性能評価を行った.冷凍器の蓄熱器は開口率 ��%,等価 流路半径 �����mmのスクリーンメッシュを使用し,これとダ ブルループを介して接続された熱音響エンジン側の蓄熱器の スクリーンメッシュの開口率と流路半径の � つをパラメータ にシステム性能の評価を行った.実験では,ωτ=��� となる 等価流路半径付近で,開口率と等価流路半径を変えたスクリ ーンメッシュを複数種に対しシステム性能試験を行った.� 実験は熱音響エンジンの蓄熱器の高温端の温度が ���℃に なるように高温熱交換器のカートリッジヒーターへの供給電 力で調整して行った.この時の冷凍器で取り出した冷熱量と ヒーターへの供給電力量から総合効率を算出して比較した. 冷熱量の計測は先ほどの冷凍器の実験と同様低温熱交換器に ��℃に温調された水を供給し,冷媒出口温度が ��℃になるよ うに流量を調整した上で供給流量から冷熱量を算出する.� 図 �� で数値シミュレーション結果を等高線で,実験結果を 数値とポイントでプロットした結果を示す.開口率 ��%,等 価流路半径 ���mmで,効率 �����(����%)と最大の値を示 した.他の仕様による実験結果と数値シミュレーションによ り算出した総合効率の等高線との関係は定性的な一致を示し た.しかしながら等価流路半径及び開口率が小さい領域では 計算結果とのずれが大きい.これは蓄熱器の流路が緻密で複 雑な状態となって非線形性の影響が強くなり,線形計算であ� � Fig.14 Double loop type thermoacoustic refrigerator performance
る本結果とのずれを生じさせていると推定.効率が最大の条 件のもとで,取り出せた冷熱量は最大となり,���� であった.� � ��ま� と� め� (�)数値シミュレーションを活用して,高効率,高出力を狙 ってダブルループ型熱音響冷凍機を製作した.実用に近い冷 媒による冷温熱取出しを行い,出力 ���W,総合効率 ����% を実現した.� (�)数値シミュレーションにより,ダブルループ型熱音響冷 凍機の共鳴管構成を検討し,構成による効率や取り出せる熱 量への影響を明らかにした.� � 謝� 辞� � 最後に,本研究を実施するにあたり様々な視点でご指導頂 いた,東北大学� 工学研究科� 琵琶哲史教授に深く感謝申し 上げます.� � 参� 考� 文� 献� ���茨木茂ほか:ランキンサイクルを用いた車載用廃熱回生シ ステムの研究�自技会論文集�Vol.38,No.4,p73-78(2007)�� ���瀧田義治ほか:複リンク式高膨張比エンジンを搭載した家 庭 用 コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン ユ ニ ッ ト の 開 発 �Honda R&D Technical Review,Vol23,No.2,p28-35 (2011) ���高橋和雄ほか:温水仕様バイナリー発電システム�R&D 神戸製鋼技報�Vol.63,No.2,p2-5 (2013)� ���井上哲ほか:吸着式冷凍機の小型化の研究:デンソーテク ニカルレビュー,Vol.8,No.1,p14-19 (2003)�
��� Peter H.Ceperley:A pistonless Stirling engine – The traveling wave heat engine, J.Acoust.Soc.Am,66(5) ,1508-1513 (1979)� ��� T.Yazaki,et.al.: Traveling Wave Thermoacoustic Engine in a Looped Tube,Phys.Rev.Lett,81, 3128-3131 (1998)��
���G.W.Swift,et.al.:A thermoacoustic-Stirling heat engine:Detailed study ,J.Acoust. Soc.Am,107(6),3148-3168 (2000)
���M.Miwa,et.al.: Measurement of acoustic out power in a traveling wave engine,Ultrasonics,44, e1527-e1529 (2006)
���富永昭:熱音響工学の基礎��東京��内田老鶴圃������������� ����永田翔平ほか:共鳴管とループ管で構成される熱音響エ ンジンの発振温度比の数値計算�低温工学�Vol.43,No.4.p.561 -565(2008)� �����上田祐樹ほか:進行波音波を用いた共鳴管冷凍機�日本 機械学会論文集�� 編��Vol.73,No.3,p.191-198,(2007)� ����羽鳥祥一ほか:低温度差で駆動する多段熱音響エンジン の開発�第 �� 回スターリングシンポジューム講演論文集�� ����������
����Y.UEDA,et.al: Experimental evaluation of the acoustic� properties of stacked-screenregenerators,J.Acoust.Soc.Am,125(2), 780-786 (2006)
自動車技術会論文集,Vol.38,No.4,p.73-78(2007)
したがってハッチ角度10°の方が 30°より油膜形成能力がや や高いと推察される.また,ハッチ角度 150°では,圧力流量 係数 φxが 1 を超えている.これは,平滑面よりも油膜のせき 止め効果が小さく,油膜圧力が発生しにくいことを示してい る.さらに,油膜厚さh が溝深さ D に対して大きくなるほど ハッチ角度の影響が小さくなる.
Fig.6 Flow Factors of Crosshatch Surface Calculated -(2) 各リング油膜厚さ
前項の流量係数を用いて,図 5 のモデルで計算した各リング の油膜厚さの 1 サイクル中の変化(計算値)を図7に示す.サ イクル全体にわたりハッチ角度 10°の油膜厚さ(計算値)は 30°の場合を上回った.
Fig.7 Oil Film Thickness Calculation 2000r/min, Middle Load
-これは前項に示した油膜せき止め効果がハッチ角度 10°で 顕著であることを示している. ただし,ハッチ角度 10°と 30°の油膜厚さ差はトップリングの行程中央でわずか 0.1μm であり,これがオイル消費増大の要因になるとは考えにくい. (3) 摩擦力 次に,図 5 のモデルで計算した摩擦力の 1 サイクル中の変化, およびハッチ角度 30°と 10°の差分を図8に示す.ハッチ角 度 10°の摩擦力は行程全域にわたって 30°を下回った.これ は, ハッチ角度 10°では図 7 に示した油膜厚さの増大により, 粘性摩擦力と個体接触割合が低減したためと推察される. 30°と 10°の差は上下死点近傍の方が行程中央より大きい. これは,ピストン速度の小さい上下死点近傍では図 7 に示され るように油膜厚さが薄くなり,溝深さとの比 h/D が小さくな り,図 6 に示される流量係数の影響が大きくなったためと考 えられる.
Fig.8 Friction Force Curve Calculated
-次に,各運転条件における摩擦平均有効圧(FMEP)の計算値 を図9に示す.広い運転条件において,ハッチ角度 10°では 30°に対して 1kPa 以上の摩擦低減効果が計算で予測された. また,同一負荷では低速ほどハッチ角度 10°と 30°の差が大 きい.これは低速ほど油膜厚さの絶対値が小さいため,溝深さ と油膜厚さの比 h/D が大きく,流量係数の影響が大きくなる ためと考えられる.なお,図中のLight load(低負荷)は平均有効
圧300 kPa, Middle load(中負荷)は 650 kPa, Heavy load(高負荷)
は900 kPa にそれぞれ相当し,浮動ライナでの摩擦測定時(後 0 0.5 1 1.5 2 U ppe rR ai l 30° 10° 0 0.5 1 1.5 2 -360 -180 0 180 360 Lo w er R ai l 30° 10° 0 0.5 1 1.5 2 To p R in g 30° 10° Hatch Angle 0 0.5 1 1.5 2 Se cond R ing 30° 10° CrankAngle deg. -10 -5 0 5 10 -360 -180 0 180 360 Fr ic tio n Fo rce D iff er en ce N (30 ° - 10 ° )
Crank Angle deg. -40 -20 0 20 40 -360 -180 0 180 360 Fr ic tio n Fo rce N (R in g Pa ck)
Crank Angle deg. 10° 30° 2000r/min,Middle Load Hatch Angle 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0 2 4 6 8 10 h/D 30° 10° 150° Oil Flow suppressed φ x 0 0.5 1 1.5 2 0 2 4 6 8 10 h/D 30° 10° 150° Hatch Angle Oil Flow suppressed Oil Film increase φ s Oil Flow enhanced Oil Film decrease 一方本研究(図 1(b))では,同様の考え方をクロスハッチ形 状に特化した.すなわち表面形状をハッチ角度 θ,溝深さ D 等を含む数式(図 2)で表現し(6),これを用いて Patir ら(5)と同 様の解析によって流量係数 φ をθ, D 等の関数として求めた.
Fig.2 Mathematical Description of Crosshatch Model(6) (2) 流量係数の計算手法 図 2 に示したクロスハッチ形状の表面について Patir ら(5) の考え方に従って流量係数を計算する.油膜の流れは圧力差 に起因するもの(Poisseuille 成分)とせん断に起因するもの (Couette 成分)に分類できる.それぞれについて,以下のよ うに流量係数を計算した. 圧力差に起因する流れについて流量係数を求める方法を図 3 に示す.所定のクロスハッチ形状を有する面と平滑面間に形 成された平行油膜内に,十分多くの凹凸を含むように検査領 域を設定する.流れの主方向を x 軸にとり,境界条件として 入口側の油膜圧力をp0,出口側の油膜圧力を 0 としてこの油 膜の Reynolds 方程式を解き,流量Qxを求める.流量Qxとク ロスハッチ面を平滑面に置き換えた時の流量Qx0との比を φx とする.式で表すと(1)のようになる.
Fig.3 Calculation of Pressure Flow Factor φx
せん断に起因する流れの流量係数についても前項の圧力流 量係数と類似の方法で求められる.この場合は,図 4 に示す
ように上面を速度U で x 方向に滑らせたときの,クロスハッ
チ面と平滑面の流量比をせん断流量係数 φSとする.式で表す
と(2)のようになる.
Fig.4 Calculation of Shear Flow Factor φS
摩擦力を求めるため,粘性せん断応力についての係数 φfp, φfs(5)についても同様に計算する. (3) 摩擦力の計算手法 前節で求めた流量係数とせん断応力係数を,図 5 に示すリ ング列潤滑計算プログラム(7)に導入して摩擦力の計算を行う. ピストンリングの Reynolds 方程式(3)およびせん断応力計算 式(4)に近似式(5)(6)でカーブフィットした流量係数とせん 断応力係数を導入し,油膜圧力および摩擦力を求めた. 計算に用いた諸元および運転条件を表 1 に示す.
Fig.5 Mixed Lubrication Model of Piston Ring Pack(7)
Table 1 Input Specifications of Calculation
2.2.計算結果 (1) 流量係数 本報告ではクロスハッチ角度の影響に焦点を絞った.ハッ チ角度 3 諸元についての流量係数を図 6 に示す.圧力流量係 数 φx,せん断流量係数 φSともにハッチ角度 10°は 30°より 特にh/D が 2 以下の領域で小さい.流量係数の値が小さいほ ど油膜のせき止め効果が大きく,油膜圧力が発生しやすい. すなわち同一面圧条件下では油膜形成能力が高いことを示す. Profile (mm) Tension(N) TOP 6 2ND 4 OIL Upper and Lower Rail 10 (Each Rail) 0.018 1.2 0.3 0.15 0.02 0.003 0.8 0.5 0.08 0.005 0.2 0.35 x 荷重 W 膜厚h y x Top 2nd 速度U x W h Xin Xout y x Top 2nd Oil Piston Bore Oil Film Contact Boundary Friction Viscous Friction U 0 2 12 3 t h hU x p h x x s h U x p h fs fp 2 1 exp ( / ) , ,s f xs h D x 1 exp ( / ) , ,fs f fp fs h D fp …(3) …(4) …(5) …(6) D p = p0 Poiseuille Flow Qx p = 0 Lx Ly h (1) / 1 Smooth) is Surface (Lower ) Crosshatch is Surface (Lower 0 3 0 3 0
x Ly y x x x L p h dy x p h L Q Q ) p = 0 D h Couette Flow Qs p = 0 Upper surface Velocity U Lx Ly Smooth) is Surface (Lower Crosshatch is Surface (Lower 0 Q Q S S S 2 12 2 1 0 3
h U dy x p h h U L Ly y (2) ) D γℓ β Sliding Direction β=θ/2 ℓ y x of Function X X D f X X D D f D f D f h , , , 0 ) , , ( * , 2 cos ) , , ( * ) , , ( * ), , , ( * min ) , ( * ) , ( * ) , ( * ) , ( * 2 2 2 1 1 1 : γ @ γ @ Bore (mm) 86 Stroke (mm) 86 RMS Roughness (μm) Bore 0.8 Ring 0 Crosshatch Groove Depth (μm) 2 Crosshatch Angle (deg.) 30(Std.),10, 150 Crank Revolution (r/min) 1200, 2000,2400, 5000 Oil Viscosity (Pa・s) 0.01したがってハッチ角度10°の方が 30°より油膜形成能力がや や高いと推察される.また,ハッチ角度 150°では,圧力流量 係数 φxが 1 を超えている.これは,平滑面よりも油膜のせき 止め効果が小さく,油膜圧力が発生しにくいことを示してい る.さらに,油膜厚さh が溝深さ D に対して大きくなるほど ハッチ角度の影響が小さくなる.
Fig.6 Flow Factors of Crosshatch Surface Calculated -(2) 各リング油膜厚さ
前項の流量係数を用いて,図 5 のモデルで計算した各リング の油膜厚さの 1 サイクル中の変化(計算値)を図7に示す.サ イクル全体にわたりハッチ角度 10°の油膜厚さ(計算値)は 30°の場合を上回った.
Fig.7 Oil Film Thickness Calculation 2000r/min, Middle Load
-これは前項に示した油膜せき止め効果がハッチ角度 10°で 顕著であることを示している. ただし,ハッチ角度 10°と 30°の油膜厚さ差はトップリングの行程中央でわずか 0.1μm であり,これがオイル消費増大の要因になるとは考えにくい. (3) 摩擦力 次に,図 5 のモデルで計算した摩擦力の 1 サイクル中の変化, およびハッチ角度 30°と 10°の差分を図8に示す.ハッチ角 度 10°の摩擦力は行程全域にわたって 30°を下回った.これ は, ハッチ角度 10°では図 7 に示した油膜厚さの増大により, 粘性摩擦力と個体接触割合が低減したためと推察される. 30°と 10°の差は上下死点近傍の方が行程中央より大きい. これは,ピストン速度の小さい上下死点近傍では図 7 に示され るように油膜厚さが薄くなり,溝深さとの比 h/D が小さくな り,図 6 に示される流量係数の影響が大きくなったためと考 えられる.
Fig.8 Friction Force Curve Calculated
-次に,各運転条件における摩擦平均有効圧(FMEP)の計算値 を図9に示す.広い運転条件において,ハッチ角度 10°では 30°に対して 1kPa 以上の摩擦低減効果が計算で予測された. また,同一負荷では低速ほどハッチ角度 10°と 30°の差が大 きい.これは低速ほど油膜厚さの絶対値が小さいため,溝深さ と油膜厚さの比 h/D が大きく,流量係数の影響が大きくなる ためと考えられる.なお,図中のLight load(低負荷)は平均有効
圧300 kPa, Middle load(中負荷)は 650 kPa, Heavy load(高負荷)
は900 kPa にそれぞれ相当し,浮動ライナでの摩擦測定時(後 0 0.5 1 1.5 2 U ppe rR ai l 30° 10° 0 0.5 1 1.5 2 -360 -180 0 180 360 Lo w er R ai l 30° 10° 0 0.5 1 1.5 2 To p R in g 30° 10° Hatch Angle 0 0.5 1 1.5 2 Se cond R ing 30° 10° CrankAngle deg. -10 -5 0 5 10 -360 -180 0 180 360 Fr ic tio n Fo rce D iff er en ce N (30 ° - 10 ° )
Crank Angle deg. -40 -20 0 20 40 -360 -180 0 180 360 Fr ic tio n Fo rce N (R in g Pa ck)
Crank Angle deg. 10° 30° 2000r/min,Middle Load Hatch Angle 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0 2 4 6 8 10 h/D 30° 10° 150° Oil Flow suppressed φ x 0 0.5 1 1.5 2 0 2 4 6 8 10 h/D 30° 10° 150° Hatch Angle Oil Flow suppressed Oil Film increase φ s Oil Flow enhanced Oil Film decrease 一方本研究(図 1(b))では,同様の考え方をクロスハッチ形 状に特化した.すなわち表面形状をハッチ角度 θ,溝深さ D 等を含む数式(図 2)で表現し(6),これを用いて Patir ら(5)と同 様の解析によって流量係数 φ をθ, D 等の関数として求めた.
Fig.2 Mathematical Description of Crosshatch Model(6) (2) 流量係数の計算手法 図 2 に示したクロスハッチ形状の表面について Patir ら(5) の考え方に従って流量係数を計算する.油膜の流れは圧力差 に起因するもの(Poisseuille 成分)とせん断に起因するもの (Couette 成分)に分類できる.それぞれについて,以下のよ うに流量係数を計算した. 圧力差に起因する流れについて流量係数を求める方法を図 3 に示す.所定のクロスハッチ形状を有する面と平滑面間に形 成された平行油膜内に,十分多くの凹凸を含むように検査領 域を設定する.流れの主方向を x 軸にとり,境界条件として 入口側の油膜圧力をp0,出口側の油膜圧力を 0 としてこの油 膜の Reynolds 方程式を解き,流量Qxを求める.流量Qxとク ロスハッチ面を平滑面に置き換えた時の流量Qx0との比を φx とする.式で表すと(1)のようになる.
Fig.3 Calculation of Pressure Flow Factor φx
せん断に起因する流れの流量係数についても前項の圧力流 量係数と類似の方法で求められる.この場合は,図 4 に示す
ように上面を速度U で x 方向に滑らせたときの,クロスハッ
チ面と平滑面の流量比をせん断流量係数 φSとする.式で表す
と(2)のようになる.
Fig.4 Calculation of Shear Flow Factor φS
摩擦力を求めるため,粘性せん断応力についての係数 φfp, φfs(5)についても同様に計算する. (3) 摩擦力の計算手法 前節で求めた流量係数とせん断応力係数を,図 5 に示すリ ング列潤滑計算プログラム(7)に導入して摩擦力の計算を行う. ピストンリングの Reynolds 方程式(3)およびせん断応力計算 式(4)に近似式(5)(6)でカーブフィットした流量係数とせん 断応力係数を導入し,油膜圧力および摩擦力を求めた. 計算に用いた諸元および運転条件を表 1 に示す.
Fig.5 Mixed Lubrication Model of Piston Ring Pack(7)
Table 1 Input Specifications of Calculation
2.2.計算結果 (1) 流量係数 本報告ではクロスハッチ角度の影響に焦点を絞った.ハッ チ角度 3 諸元についての流量係数を図 6 に示す.圧力流量係 数 φx,せん断流量係数 φSともにハッチ角度 10°は 30°より 特にh/D が 2 以下の領域で小さい.流量係数の値が小さいほ ど油膜のせき止め効果が大きく,油膜圧力が発生しやすい. すなわち同一面圧条件下では油膜形成能力が高いことを示す. Profile (mm) Tension(N) TOP 6 2ND 4 OIL Upper and Lower Rail 10 (Each Rail) 0.018 1.2 0.3 0.15 0.02 0.003 0.8 0.5 0.08 0.005 0.2 0.35 x 荷重 W 膜厚h y x Top 2nd 速度U x W h Xin Xout y x Top 2nd Oil Piston Bore Oil Film Contact Boundary Friction Viscous Friction U 0 2 12 3 t h hU x p h x x s h U x p h fs fp 2 1 exp ( / ) , ,s f xs h D x 1 exp ( / ) , ,fs f fpfs h D fp …(3) …(4) …(5) …(6) D p = p0 Poiseuille Flow Qx p = 0 Lx Ly h (1) / 1 Smooth) is Surface (Lower ) Crosshatch is Surface (Lower 0 3 0 3 0
x Ly y x x x L p h dy x p h L Q Q ) p = 0 D h Couette Flow Qs p = 0 Upper surface Velocity U Lx Ly Smooth) is Surface (Lower Crosshatch is Surface (Lower 0 Q Q S S S 2 12 2 1 0 3
h U dy x p h h U L Ly y (2) ) D γℓ β Sliding Direction β=θ/2 ℓ y x of Function X X D f X X D D f D f D f h , , , 0 ) , , ( * , 2 cos ) , , ( * ) , , ( * ), , , ( * min ) , ( * ) , ( * ) , ( * ) , ( * 2 2 2 1 1 1 : γ @ γ @ Bore (mm) 86 Stroke (mm) 86 RMS Roughness (μm) Bore 0.8 Ring 0 Crosshatch Groove Depth (μm) 2 Crosshatch Angle (deg.) 30(Std.),10, 150 Crank Revolution (r/min) 1200, 2000,2400, 5000 Oil Viscosity (Pa・s) 0.013.2.実験結果 (1) 縦型往復動試験による摩擦特性測定結果 摩擦特性の測定結果を Stribeck 曲線の形に整理して図 12 に示す.縦軸は一往復の平均摩擦係数,横軸は平均すべり速 度V,油温から推定したオイル粘度η および面圧 P から算出 した軸受定数S ( = ηV/P )である.ハッチ角度 10°は 30°に比 べて,特に混合‐境界潤滑域で摩擦低減効果が見られた.こ れは前節の計算結果と同じ傾向であり,ハッチ角度縮小によ り油膜形成能力が高くなったことによると考えられる.
Fig.12 Friction Coefficient measured using Reciprocating Sliding Tester (2) 浮動ライナ法によるピストン摩擦測定結果 浮動ライナ法による摩擦力波形測定結果(中回転,中負荷) を図 13 に示す.ハッチ角度 10°は 30°に対し行程のほぼ全 域において摩擦力が低くなった.この結果は前節の計算結果 (図 8)と傾向が一致しており,油膜形成能力が高くなった効果 を示していると考えられる.なお, 図 13 の測定結果にはピス トンスカート部の摩擦も含まれるため,摩擦力の絶対値は計 算(図 8)より大きくなっている. 次に,各運転条件のFMEPについて,ハッチ角度10°と30° とで比較したものを図 14 に示す.図 9 に示す計算結果と同様 ハッチ角度縮小による摩擦低減効果が得られた.ただし,摩擦 低減効果は高負荷ほど大きくなる傾向を示した.また,摩擦 低減幅はエンジン回転数に対してほとんど依存しない.これ らの傾向は計算結果(図 9)とやや異なる.
Fig.13 Friction Curve measured using Floating Liner Engine
Fig.14 Friction Mean Effective Pressure (FMEP) measured using Floating Liner Engine
このような計算と実験の傾向の違いを見るため,代表的な 運転条件について,ハッチ角度縮小(30°→10°)に伴う摩擦 低減効果を計算と実験とで比較したものを図 15 に示す.低速 低回転では,FMEP 低減効果の計算値と実験値が良く符合して いるが,高速高負荷ほど両者にずれが生じた(実測値の方が摩 擦低減効果が大きい).
Fig.15 Difference of FMEP between Hatch Angle 30° and 10° -150 -100 -50 0 50 100 -360 -180 0 180 360 Fri ct io n fo rc e N
Crank angle deg.
2000r/min, Middle load Hatch Angle 30° 10°
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.000001 0.00001 0.0001
0.001
S =η・V/P
Hatch Angle 30°
10°
0 1 2 3 1200r/minLight Load Middle Load2000r/min Heavy Load2400r/min
FM EP D iff er en ce kP a (30 ° - 10 ° ) Cal. Exp. 0 10 20 30 0 1000 2000 3000
Crank Revolution r/min
Light load
Hatch Angle 30° 10° 0 10 20 30 0 1000 2000 3000Crank Revolution r/min
Middle load
30° 10° 0 10 20 30 0 1000 2000 3000Crank Revolution r/min
Heavy load
30° 10° 0 10 20 30 0 1000 2000 3000Motoring
30° 10°Crank Revolution r/min 3-Component force sensor Liner Piston Head 述)の運転条件に対応する.また,各負荷条件における燃焼室 圧力を浮動ライナ測定時に同時計測し,本計算のリング背面 圧力算出に用いた.
Fig.9 Friction Mean Effective Pressure (FMEP) of Rink Pack Calculated -3.実験 3.1.実験方法 (1) 縦型往復動摩擦試験 本試験機の構成を図 10 に,供試ボアの諸元および実験条件 を表 2 に示す.本試験ではピストンリングから切り出した試 験片とシリンダライナから切り出したボア試験片を用い,摺 動方向に対して直角方向に荷重を加えた状態でボア試験片を 往復摺動した際の摩擦力を測定し摩擦係数を算出した.なお, 供試リングの諸元は表 1 と同じである.
Fig.10 Image of Reciprocating Sliding Tester
Table 2 Test Condition of Reciprocating Sliding Tester
(2) 浮動ライナ法による摩擦測定装置 本試験装置の構成を図 11 に,諸元および実験条件を表 3 に 示す.本装置は木村らの研究(8)で用いられた構成と同様であ り,ポート噴射,火花点火式の単気筒エンジンをベースとし, ライナのスラスト方向に 3 分力センサを 8 個設置した浮動ラ イナ方式である.これを用いてピストンおよびピストンリン グとライナ間の摩擦力,スラスト力を測定した.
Fig.11 Floating Liner Engine for Bore Friction Measurement(8) Table 3 Test Condition of Floating Liner Engine
(3) ガソリンエンジンによる機能評価 本試験に使用したエンジン諸元を表 4 に示す.機能評価と してオイル消費試験とスカッフ試験を実施した.オイル消費 試験は,十分に摺り合わせ運転をしたエンジンで,最高出力 点および減速を含んだパターン運転を実施した.スカッフ試 験では,新品エンジンの低温始動時について確認した.
Table 4 Engine Specifications
Bore (mm) 86
Stroke (mm) 86
Crosshatch Angle (deg.) 30(Std.), 10 Crank Revolution (r/min) 800 ~ 2400
Engine Load :
Max.Combustion Pressure (kPa) 300 ~ 950Motoring Oil Viscosity Grade 0W-20 CoolantTemperature (℃) 80
Stroke (mm) 40
Crosshatch Angle (deg.) 30(Std.), 10 Crank Revolution (r/min) 500 ~ 1400 Normal Load (N) 20 ~ 100 Oil Viscosity Grade 15W-40 Oil Temperature (℃) 40 ~ 110 A part of liner Piston ring Friction Force Load cell Load
Up and down motion
Bore (mm) 80.5
Stroke (mm) 88.3
Engine Type In-line-4-cylinder Displacement (cm3) 1,797
Intake System Natural Aspiration Injection Type 0W-20 0 5 10 15 20 0 1000 2000 3000
Crank Revolution r/min
Light load
Hatch Angle 10° 30° 0 5 10 15 20 0 1000 2000 3000Crank Revolution r/min
Middle load
30° 10° 0 5 10 15 20 0 1000 2000 3000Heavy load
30° 10°Crank Revolution r/min
FME P kP a FME P kP a FME P kP a
3.2.実験結果 (1) 縦型往復動試験による摩擦特性測定結果 摩擦特性の測定結果を Stribeck 曲線の形に整理して図 12 に示す.縦軸は一往復の平均摩擦係数,横軸は平均すべり速 度V,油温から推定したオイル粘度η および面圧 P から算出 した軸受定数S ( = ηV/P )である.ハッチ角度 10°は 30°に比 べて,特に混合‐境界潤滑域で摩擦低減効果が見られた.こ れは前節の計算結果と同じ傾向であり,ハッチ角度縮小によ り油膜形成能力が高くなったことによると考えられる.
Fig.12 Friction Coefficient measured using Reciprocating Sliding Tester (2) 浮動ライナ法によるピストン摩擦測定結果 浮動ライナ法による摩擦力波形測定結果(中回転,中負荷) を図 13 に示す.ハッチ角度 10°は 30°に対し行程のほぼ全 域において摩擦力が低くなった.この結果は前節の計算結果 (図 8)と傾向が一致しており,油膜形成能力が高くなった効果 を示していると考えられる.なお, 図 13 の測定結果にはピス トンスカート部の摩擦も含まれるため,摩擦力の絶対値は計 算(図 8)より大きくなっている. 次に,各運転条件のFMEPについて,ハッチ角度10°と30° とで比較したものを図 14 に示す.図 9 に示す計算結果と同様 ハッチ角度縮小による摩擦低減効果が得られた.ただし,摩擦 低減効果は高負荷ほど大きくなる傾向を示した.また,摩擦 低減幅はエンジン回転数に対してほとんど依存しない.これ らの傾向は計算結果(図 9)とやや異なる.
Fig.13 Friction Curve measured using Floating Liner Engine
Fig.14 Friction Mean Effective Pressure (FMEP) measured using Floating Liner Engine
このような計算と実験の傾向の違いを見るため,代表的な 運転条件について,ハッチ角度縮小(30°→10°)に伴う摩擦 低減効果を計算と実験とで比較したものを図 15 に示す.低速 低回転では,FMEP 低減効果の計算値と実験値が良く符合して いるが,高速高負荷ほど両者にずれが生じた(実測値の方が摩 擦低減効果が大きい).
Fig.15 Difference of FMEP between Hatch Angle 30° and 10° -150 -100 -50 0 50 100 -360 -180 0 180 360 Fri ct io n fo rc e N
Crank angle deg.
2000r/min, Middle load Hatch Angle 30° 10°
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.000001 0.00001 0.0001
0.001
S =η・V/P
Hatch Angle 30°
10°
0 1 2 3 1200r/minLight Load Middle Load2000r/min Heavy Load2400r/min
FM EP D iff er en ce kP a (30 ° - 10 ° ) Cal. Exp. 0 10 20 30 0 1000 2000 3000
Crank Revolution r/min
Light load
Hatch Angle 30° 10° 0 10 20 30 0 1000 2000 3000Crank Revolution r/min
Middle load
30° 10° 0 10 20 30 0 1000 2000 3000Crank Revolution r/min
Heavy load
30° 10° 0 10 20 30 0 1000 2000 3000Motoring
30° 10°Crank Revolution r/min 3-Component force sensor Liner Piston Head 述)の運転条件に対応する.また,各負荷条件における燃焼室 圧力を浮動ライナ測定時に同時計測し,本計算のリング背面 圧力算出に用いた.
Fig.9 Friction Mean Effective Pressure (FMEP) of Rink Pack Calculated -3.実験 3.1.実験方法 (1) 縦型往復動摩擦試験 本試験機の構成を図 10 に,供試ボアの諸元および実験条件 を表 2 に示す.本試験ではピストンリングから切り出した試 験片とシリンダライナから切り出したボア試験片を用い,摺 動方向に対して直角方向に荷重を加えた状態でボア試験片を 往復摺動した際の摩擦力を測定し摩擦係数を算出した.なお, 供試リングの諸元は表 1 と同じである.
Fig.10 Image of Reciprocating Sliding Tester
Table 2 Test Condition of Reciprocating Sliding Tester
(2) 浮動ライナ法による摩擦測定装置 本試験装置の構成を図 11 に,諸元および実験条件を表 3 に 示す.本装置は木村らの研究(8)で用いられた構成と同様であ り,ポート噴射,火花点火式の単気筒エンジンをベースとし, ライナのスラスト方向に 3 分力センサを 8 個設置した浮動ラ イナ方式である.これを用いてピストンおよびピストンリン グとライナ間の摩擦力,スラスト力を測定した.
Fig.11 Floating Liner Engine for Bore Friction Measurement(8) Table 3 Test Condition of Floating Liner Engine
(3) ガソリンエンジンによる機能評価 本試験に使用したエンジン諸元を表 4 に示す.機能評価と してオイル消費試験とスカッフ試験を実施した.オイル消費 試験は,十分に摺り合わせ運転をしたエンジンで,最高出力 点および減速を含んだパターン運転を実施した.スカッフ試 験では,新品エンジンの低温始動時について確認した.
Table 4 Engine Specifications
Bore (mm) 86
Stroke (mm) 86
Crosshatch Angle (deg.) 30(Std.), 10 Crank Revolution (r/min) 800 ~ 2400
Engine Load :
Max.Combustion Pressure (kPa) 300 ~ 950Motoring Oil Viscosity Grade 0W-20 CoolantTemperature (℃) 80
Stroke (mm) 40
Crosshatch Angle (deg.) 30(Std.), 10 Crank Revolution (r/min) 500 ~ 1400 Normal Load (N) 20 ~ 100 Oil Viscosity Grade 15W-40 Oil Temperature (℃) 40 ~ 110 A part of liner Piston ring Friction Force Load cell Load
Up and down motion
Bore (mm) 80.5
Stroke (mm) 88.3
Engine Type In-line-4-cylinder Displacement (cm3) 1,797
Intake System Natural Aspiration Injection Type 0W-20 0 5 10 15 20 0 1000 2000 3000
Crank Revolution r/min
Light load
Hatch Angle 10° 30° 0 5 10 15 20 0 1000 2000 3000Crank Revolution r/min
Middle load
30° 10° 0 5 10 15 20 0 1000 2000 3000Heavy load
30° 10°Crank Revolution r/min
FME P kP a FME P kP a FME P kP a
高回転空冷エンジンのピストン摩擦力測定に関する研究
伊東 明美1) 岩崎 秀之2) 栗田 洋敬3) 佐藤 龍彦 4)
1.ま え が き 今日,モーターサイクルの市場規模は約 万台といわ れ,その主な市場はアジア各国であり,小型のモーターサイ クルが大多数を占める.小型空冷単気筒エンジンはこれら小 型モーターサイクル用原動機として広く用いられている.小 型モーターサイクルは重要な交通機関としての役割を担って おり,その用途は通勤,通学等の個人の移動手段のみならず, 家族単位での移動手段,物品の輸送,タクシーとしての用途 等,多岐にわたっている. 小型モーターサイクルに対する市場ニーズとしては加速性 能,最高速などの基本性能と共に低価格であること,加えて 燃費性能が良いことが強く求められている.燃費性能の向上 に向けては,燃焼効率の向上,摩擦損失の低減および部品の 軽量化が有効な手段として挙げられる.エンジンの燃焼室ま わりにおいては,発生する熱を効率的に逃がし,低摩擦を確 保しつつ部品を軽量化する必要がある.アルミ合金製シリン ダブロックは燃焼室まわりの冷却性能の向上と軽量化に効果 的な手段であるが,同時に燃費性能の向上に向けて摩擦損失 の低減が強く求められている. ここで,エンジンのピストンまわりの摩擦損失は,一般的 に,部分負荷時には他の損失と比較して大きな値を示すこと が知られている(1).このことから空冷小型単気筒エンジンに おいても,ピストンの低摩擦損失化により,燃費向上の可能 年 月 日受理. 年 月 日自動車技術会春季 学術講演会において発表. ・東京都市大学 東京都世田谷区玉堤 ・ヤマハ発動機株 静岡県磐田市新貝 性があると考えられる.また小型単気筒エンジンは,低速か ら高速までの広い範囲で使用される.したがってピストンお よびピストンリングは,全ての運転領域を考慮して,信頼性 および耐久性が確保された上で低摩擦損失となるように設計 される必要がある.そのため,空冷小型単気筒エンジンにお いても,ピストン周りの摩擦力測定手法の確立が望まれてき た. そこで本研究では,アルミ合金製シリンダブロックを有する 空冷小型単気筒エンジンのピストン摩擦力測定手法の開発を 行ったので,ここに報告する. 2.実験方法 ピストンの摩擦力測定装置を開発するにあたり,測定原理 として,浮動ライナー法(2)を採用した.ピストン摩擦力の測 定には,三分力センサーを用いた装置(3)も用いられているが, A AA A Detail A 4*
このような計算と実験の違いをもたらす原因として ① 計算で考慮されていないピストンスカートの摩擦分が実 測値に入っており,この成分にハッチ角度の影響が現れて いること ② 高速高負荷では油温上昇分が計算で十分考慮されていな いことにより,実測では計算より油膜温度が高く(粘度が 低く),ハッチ角度の影響がより大きい混合‐境界潤滑寄 りになっていること などが推測される.ただし,詳細は不明であり今後の課題と したい. (3) ガソリンエンジンによる機能評価結果 オイル消費試験結果を図 15 に示す.今回の最高出力点およ びパターン運転では,ハッチ角度縮小によるオイル消費量の 増加は見られなかった. またスカッフ試験においても,ハッチ角度縮小によるシリ ンダボア面の異常は見られなかった.Fig.16 Oil Consumption measured using Gasoline Engine 4.ま と め (1) シリンダボア表面のクロスハッチ形状(ハッチ角度,プラ トー率,プラトー面あらさ,ハッチ溝深さ)を考慮した潤 滑モデルを構築し,ピストンリング‐ボア間の油膜に適用 した. (2) 前項モデルを用いて,ハッチ角度を 30°から 10°に縮小 することにより,乗用車エンジンの実動時における摩擦損 失をFMEP で 1 kPa 程度低減できることを予測した. (3) 実機ボアとピストンリングを切り出した試験片を用いた 縦型往復摺動試験,および実機をベースとした浮動ライナ 試験により,前項の予測がほぼ妥当であることを確認した. (4) ガソリンエンジンを用いたオイル消費試験および低温始 動時のスカッフ試験においては,ハッチ角度を 30°から 10°に縮小したことによるオイル消費および耐スカッフ 性の悪化は見られなかった. 本報告では,ハッチ角度縮小による摩擦低減効果に絞って 検討したが,今回開発したモデルでは,クロスハッチボア面 のプラトー率やプラトー面あらさの潤滑に及ぼす影響につい ても推定することが可能であり,今後これらパラメータのコ ントロールによる最適ボア面性状の探索に活用していきたい. 参 考 文 献 (1) 飯島直樹,山田武志,吉田秀樹,瀧口雅章,浜武俊朗:シリ ンダホーニング角度とピストンおよびピストンリング のフリクションについて,自動車技術会学術講演会前 刷集,No.8-06, p.11-14(2006) (2) 浦辺満,高倉隆,目時聰,菅野和彦:ピストンリング・ボア 間の摩擦力低減を狙ったシリンダボア用ディンプル状テ クスチャ処理によるエンジンの燃費向上,自動車技術 会学術講演会前刷集,No.157-13, p.1-5(2013)
(3) H.Chen, et.al.: The Influence of Cylinder Liner Honing Patterns and Oil Control Ring design Parameters on the Interaction between the Twinland Oil Control Ring and the Cylinder Liner in Internal Combustion Engines, SAE Technical Paper Ser.2008-01-1614(2008)
(4) C.Caciu, et.al.: Numerical Analysis of the Consequences of Roughness Modifications in 3D Hydrodynamic Contacts, Tribology Transactions Vol.51, p.483-493 (2008)
(5) N.Patir, et.al.: An Average Flow Model for Determining Effects of Three-Dimensional Roughness on Partial Hydrodynamic Lubrication, Trans. ASME Journal of Lubrication Technology Vol.100 No.1,p.12-17(1978)
(6) 特開 2012-225721 (7) 三田修三,村上元一,野田卓,許斐敏明:ピストンリング列の 潤滑解析(油不足が油膜厚さに及ぼす影響),日本機械学会 論文集(B編),Vol.61,No.590,p3636-3643(1995) (8) 木村雄一郎,村上元一:内燃機関のピストン摩擦解析-ライ ナ壁温分布及び油温の影響,自動車技術会論文集 Vol.43, No.2, p.305-309 (2012) 0 0 1 1 1 Maximum
output point Deceleration PatternAcceleration and Hatch Angle 30° 10° Oi lC on sum pt ion g/ h