勤労者におけるうつ症状と肥満の関連 [ PDF
4
0
0
全文
(2) (2)評価項目 調査は、人間ドッグ受診前に質問紙および活動量計. 性別・年齢は、人間ドッグのデータを使用した。社会・ 経済的要因は、質問紙より配偶者の有無、教育歴、所. を郵送して行った。質問紙および活動量計の回収は、. 得状況、現在の飲酒および喫煙状況を評価した。. 人間ドッグ受診前に郵送にて回収を行った。回答項目. 血液指標は、血圧高値、高糖値、脂質異常を評価し. に不備があった場合は、質問紙を郵送して再調査を施. た。血圧高値は、収縮期血圧 130mmHg 以上、拡張期血. 行した。. 圧 85mmHg 以上のいずれか、または両方とした。高血糖 は、空腹時血糖値が 110mg/dl 以上とした。脂質異常は、. 1)肥満. 体格指数(body mass index:BMI)は人間ドッグ で得られた体重(kg)と身長(m)の二乗より算出. 中性脂肪 150mg/dl 以上、HDL コレステロール 40mg/dl 未満のいずれか、または両方とした。血液データは、 人間ドッグで得られたものを使用した。. した。肥満の定義は、BMI≧25kg/m²とした。また、 低体重を BMI<18.5 kg/m²、普通体重を 18.5≦BMI <25 kg/m²とした。. (3)統計解析 CES-D 得点を基に、対象者をうつ症状なし群と有群 にし、t検定またはχ²検定を用いて各群の背景因子を. 2)うつ症状. 比較した。さらに、各群を CES-D 得点で 5 分位し(Q1、. 自記式質問紙である Center for Epidemiologic. Q2、Q3、Q4、Q5) 、各群の背景因子を傾向性の検定を用. Studies Depression Scale (CES-D)の日本語版を使. いて比較した。CES-D 得点と肥満との関係をロジステ. 5). 用した 。CES-D は最近 1 週間のうつ症状の頻度を. ィック回帰分析(性・年齢調整、多変量調整)により. 把握する質問紙で、0‐60 点で評価されるが、高得. オッズ比および 95%信頼区間を算出して評価した。調. 点ほどよくうつの程度が強いことを意味する。また、. 整項目は、性別、年齢、配偶者の有無、教育歴、所得、. CES-D 得点が 16 点以上の者は、うつ状態での治療. 現在の飲酒・喫煙習慣の有無、身体活動量、摂取エネ. 中の者と同程度の高度なうつ状態を示すとされて. ルギー、血圧高値、高血糖、脂質異常とした。. おり、本研究においても CES-D 得点が 16 点以上の 者を「うつ症状あり」と判断し評価した。また、こ. 統計ソフトには、SAS(var9.2)を用い、有意水準は 5%とした。. の質問紙は国際的に採用され、信頼性・妥当性のあ る評価指標である 6)。. (4)倫理的配慮 本研究は、九州大学健康科学センター倫理委員会で. 3)身体活動量 身体活動量の測定は、3 軸加速度センサー活動量計 (Active Style Pro HJA-350IT、オムロンヘルスケア. の審査、承認を得ている。参加者へは、署名にて研究 への参加同意を確認することで、インフォームドコン セントを行った。. 社製)を使用した。測定期間は、人間ドッグの前 7 日 間とし、装置部位は腰部とした。測定期間中は対象者. 4.結果. が測定値を閲覧できない状態にした。身体活動量は、. 1)対象者の特性. 3METs 以上の強度(1METs=臥床安静)における身体活. 対象者の 27%(246 名:男性 226 名、女性:20 名)に. 動の強度と時間の積より求め、一日あたりの総身体活. 肥満が観察された。肥満の割合は男性で有意に高かっ. 動量(METs・時/日)に換算した。なお、一日 8 時間以. た。また、対象者のうち、うつ症状(CES-D≧16 点)が. 上の測定値が 3 日以上あるものを解析対象者とした。. ある者は全体の 18%であった。うつ症状保有者の割合 に男女差は認められなかった。. 4)エネルギー摂取量. 2)うつ症状なし群と有群の背景因子の比較. 簡 易 型 自 記 式 食 事 歴 法 質 問 票 ( brief-type. 肥満者の割合は、男女ともうつ症状なし群と有群に. self-administered diet history questionnaire:BDH. おいて有意な群間差は認められなかった。男性のうつ. を使用し、過去 1 カ月間の食事内容を調査した。これ. 症状有群では、うつ症状なし群と比較して年齢が有意. を基に 1 日あたりの平均エネルギー摂取量を算出した。. に低く、低所得の割合が有意に高かった。女性では、 うつ症状有群となし群の背景因子に統計的有意差は認. 5)その他の項目. められなかった。.
(3) 表1.CES-D得点別の背景因子の比較 CES-D 得点 Q1 ( 0-4 ) 人数 男性 (%) CES-D 得点 (点) 年齢 (歳) BMI (kg/m²) 低体重 (%). 203. Q2 ( 5-7 ). Q3 ( 8-11 ). 217. 145. Q4 ( 12-15 ). Q5 ( ≥16 ). 181. 164. p for trend. 85 2.2 ( 1.4 ) 47 ( 8 ). 86 6.5 ( 1.1 ) 46 ( 8 ). 86 10 ( 0.8 ) 48 ( 9 ). 87 13.2 ( 1.1 ) 47 ( 9 ). 85 22.4 ( 6.3 ) 45 ( 8 ). 0.62 <0.0001 0.07. 23.2 ( 3.5 ). 23.1 ( 3.6 ). 23.2 ( 3.1 ). 23.8 ( 3.1 ). 23.3 ( 3.7 ). 0.34. 5. 9. 3. 3. 7. 0.58. 普通体重 (%). 72. 66. 75. 64. 63. 0.08. 肥満 (%). 23. 25. 22. 33. 30. 0.03. 教育歴,高等学校以下 (%). 33. 27. 39. 46. 43. 0.0002. 配偶者なし (%). 18. 21. 28. 27. 30. 0.002. 所得,600万円以下 (%). 45. 43. 57. 60. 67. <0.0001. 喫煙 (%). 26. 26. 38. 39. 38. 0.0004. 飲酒 (%). 71. 67. 63. 65. 71. 0.65. 身体活動量 (METs・時/日) 摂取エネルギー (kcal/日). 2.8 ( 1.6 ). 2.8 ( 1.9 ). 2.9 ( 1.6 ). 2.7 ( 1.5 ). 2.8 ( 1.7 ). 0.91. 1933 ( 575 ). 1912 ( 543 ). 1852 ( 677 ). 1926 ( 611 ). 1946 ( 598 ). 0.87. 血圧高値 (%). 34. 34. 43. 41. 27. 0.82. 高血糖 (%). 15. 13. 18. 20. 13. 0.45. 脂質異常 (%). 24. 27. 32. 31. 26. 0.38. 連続変数は平均値(±標準偏差),離散変数は%で表記する. 傾向性の検定 p<0.05 Q1:第1分位群, Q2:第2分位群, Q3:第3分位群, Q4:第4分位群, Q5:第5分位群. 5.考察 本研究の目的は、勤労者におけるうつ症状と肥満と の関連について横断的に検討することであった。 1)対象者の特性について 本研究では対象者の 27%(男性 29%、女性 15%)が 肥満であった。平成 21 年国民健康・栄養調査 7)の結果 によれば、日本人の肥満の割合は、男性で 30.5%、女 性で 20.8%であると報告されている。女性の肥満の割 合は、全国平均と比較してやや低い結果であったが、 男性の肥満の割合は全国平均とほぼ同程度であった。 2)うつ症状と肥満との関連性について うつ症状と肥満との関連性においては、CES-D 得点 のカテゴリーが増加する毎に肥満の割合が増加するこ とが認められた。Franko ら 8)は、16 歳と 18 歳の 1,554 名の若年者を対象に 6 年間の追跡調査を行った結果、 若年時にうつ症状を保有していたものは、そうでない ものと比較して肥満発症のリスクが増加したと報告し ている。また、Dipietro ら 9)は、CES-D を用いて 1,794 名の男女のうつ症状と肥満との関連について 8 年間の 追跡調査を行った。その結果、男性でベースライン時 にうつ症状を有していなかった者と比較して、うつ症 状を保有していた者で体重の増加が認められた。これ らの研究結果により、うつ症状は肥満を引き起こすこ とが示唆された。.
(4) しかしながら、うつ症状と肥満に関するメカニズム はいくつかの仮説があるものの、未だ明らかにされて いない。例えば、うつ症状による身体活動量の低下に 加え、食行動の変化(過食)や飲酒、喫煙などの生活 習慣の乱れによって体重増加を引き起こすと考えられ ていた。しかし、本研究で CES-D 得点別に身体活動量 およびエネルギー摂取量を比較した結果に、群間差は 認められなかった。さらに、最近の研究によって、神 経内分泌系のメカニズムが明らかになりつつある。視 床下部-下垂体-副腎皮質軸を通じて糖質コルチコイ ドの分泌が促進されることで、肥満、内臓脂肪の蓄積、 インスリン抵抗性、糖尿病などを引き起こすことが報 告されている 10)。 一方で、うつ症状と肥満の有意な関連性は欧米で報 告されているものの、アジア諸国において同様の関連 を報告した研究はほとんどない。また、DSM-IV による とうつ症状には、過食による体重増加と食欲低下や拒 食による体重減少が示されている。Valerie ら. 11). は、. 53~63 歳の 9,130 名を対象にうつ症状が体重変化に与 える影響について前向きに検討を行っている。その結 果、うつ症状は体重増加と体重減少の両方に影響を与 えることが明らかになった。この結果は、CES-D 得点 と肥満が直線的な関係ではない可能性を示唆している。 同様に本研究結果は、CES-D 得点が最も高い群では、 オッズ比の有意な上昇は認められず、CES-D 得点と肥 満との関連は直線的ではない結果を支持するのかもし れない。 本研究のデザインは横断研究であるため、うつ症状 が肥満を引き起こすのか、肥満がうつ症状を引き起こ すのかは明らかにすることは出来なかった。今後の追 跡調査によりさらに詳細な検討が必要である。 6.結語 本研究では、勤労者におけるうつ症状と肥満との関 連を社会・経済的要因および生活習慣を考慮した検討 を行った。その結果、勤労者におけるうつ症状は社会・ 経済因子に加え生活習慣と独立して肥満と関連してい た。 引用文献 1)メタボリックシンドローム診断基準検討委員会: 日本内科学会雑誌, 94: 749, 2005. 2)Stunkard AJ et al. Biol Psychiatry. 54(3):330-7,2003.. 3)Goldberg. DP. and. Huxley. P.. Routledge:. London;199. 4)Murray CJ and Lopez AD. Science. 274: 740-743. 1996. 5)Radloff LS. Applied Psychological Measurment :385-401, 1977. 6)Beekman AT et al. Psychol Med 27: 231-235, 1997. 7)平成 21 年国民健康・栄養調査.厚生労働省,2010. 8)Franko DL et al. Psychol Med 35: 1505-1513, 2005. 9)Dipietro L et al. Int J Obes Relat Metab Disord. 16:745-753, 1992. 10)Bornstein SR et al. Mol Psychiatr 11: 892-902, 2006. 11)Valerie L et al. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 62: S43-51. 2007..
(5)
関連したドキュメント
・ 継続企業の前提に関する事項について、重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認め
〇新 新型 型コ コロ ロナ ナウ ウイ イル ルス ス感 感染 染症 症の の流 流行 行が が結 結核 核診 診療 療に に与 与え える る影 影響 響に
および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値
・ 継続企業の前提に関する事項について、重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認
に関する対応要綱について ………8 6 障害者差別解消法施行に伴う北区の相談窓口について ……… 16 7 その他 ………
このような状況において,当年度の連結収支につきましては,年ぶ
本案における複数の放送対象地域における放送番組の
「1 つでも、2 つでも、世界を変えるような 事柄について考えましょう。素晴らしいアイデ