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平成 26 年 12 月 19 日 J-ADNI 研究に関する第三者調査委員会調査報告書要旨 J-ADNI 研究に関する第三者調査委員会 第 1 調査に至る経緯 (P9) 第 2 調査体制 (P10) 委員会構成メンバー委員 6 名 アドバイザー 1 名 補助者 2 名 ( いずれも 第三者性 独立

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(1)

平成

26 年 12 月 19 日

J-ADNI 研究に関する第三者調査委員会 調査報告書要旨

J-ADNI 研究に関する第三者調査委員会

第1 調査に至る経緯

(P9)

第2 調査体制

(P10) 委員会構成メンバー委員6名、アドバイザー1名、補助者2名 (いずれも、第三者性、独立性、中立性を疑わせるような事情は存しないことを確認)

第3 調査内容

1.調査期間 平成26年8月29日~12月19日 2.調査事項 (1) 論理的記憶検査の検査時間及び MCI(軽度認知機能障害患者)の症状の記載に おけるデータの「改ざん」の有無 (2) 適格性について個別の判断が必要となる被験者等の研究参加の適否 (3) 被験者の同意手続きの適否 (4) 厚生労働省からのデータ保全要請後のデータ修正の適否 (5) その他更なる調査・検証が必要と思われる事項 3.調査方法(調査対象)(但し、主要なもの) (1) 調査した資料 ① J-ADNI 研究に関するプロトコル、手順書等 ② データベースシステム上のデータ ⅰ)現データベースシステム(J-ADNI VER.2.5)上のデータ ⅱ)J-ADNI VER.1 のシステム上にアップロードされた認知機能検査用紙(CTW) ⅲ)J-ADNI VER.2.5 データベースシステムから復元したデータ(P13~ (6)ア) ③ データセンターに保管されていた資料 ⅰ)データセンターミーティング議事録(2010(平成 22)年 3 月 31 日から 2011 年5 月 31 日まで) ⅱ)データセンターから研究実施医療機関に送った「修正依頼・問い合わせ一覧」 及びその補助資料(最初のものは2008 年 8 月 6 日検査にかかるもの、最後のもの は2010 年 2 月 2 日付検査にかかるもの)(P13 (6)イ) ④~⑦ システム関連の仕様書・契約書等、厚労省科研費申請書・報告書等、NEDO 事業申請書・報告書等、東大報告書及び添付資料、 ⑧ NEDO による「「アルツハイマー病総合診断体系実用化プロジェクトに関する調 査」及び「「脳画像・臨床・IT の融合によるアルツハイマー病超早期診断と先制医療 の実現」に関する調査」について(最終報告)」 ⑨ その他、ヒアリングの際にヒアリング対象者から提供を受けた資料

(2)

(2) ヒアリング 対象者 30 名 (3) 研究実施医療機関に対する照会及び調査(P13) (4) 認知症関連 6 学会への意見照会(P13) (5) アドバイザーに対する照会(P13)

第4 調査結果

(P17 以下)

1.J-ADNI 研究の概要

(1) J-ADNI 研究とは

”AD Neuroimaging Initiative (ADNI)”とは、日本語に訳すると、日本におけるアルツハ イマー病の、脳画像診断を用いた、先導的研究(観察研究)である。 J-ADNI 研究は、米国が始めた US-ADNI 研究を世界4極(米国、ヨーロッパ、オースト ラリア、日本)で統一して行うという試みに基づく、日本版の研究である。 その目的は、アルツハイマー病の根本治療の実現には、病態の本質を忠実に反映するサ ロゲートマーカーを見出し、臨床的評価と組み合わせ、発症・進行予測と、治療介入時の 効果判定を可能とする標準的方法の確定が強く望まれる。この目的で、AD に進行する率の 高い健忘型軽度認知障害(aMCI)と軽症 AD を対象、健常者を対照とし、1.5T MRI による 精密な脳容積測定、FDG-PET による脳糖代謝画像、βアミロイド・イメージングなどの画 像マーカーと脳脊髄液、血液などの体液生化学マーカーを統一プロトコールにより定期的 に検索し、臨床・神経心理学評価を組み合わせて AD の発症・進行モニター法を策定しよ うとするもの(P17)。 J-ADNI の臨床研究としての特質は、アルツハイマー病につながる脳の老化に関する「自 然経過の観察研究」であって、医薬の効果を検証する試験(いわゆる「治験」)とは異なり、 組み入れ群を用いて薬効や副作用などを判定しようとするものではない(P140)。 予め定められた条件に従い、臨床現場の診断に基づいて組み入れを行った結果のデータ ベース構築が研究の第一段階であり、その後データベースを用い、最新の画像診断とどの ように一致し、あるいは食い違うのかを検討したり、その組み入れ条件のもとで、現段階 で全体としてどのような傾向が認められるのかを、多くの研究者が多方面から解析すると ともに、次世代のデータベース構築の改善の条件を探ることが目的とされる(P140)。 (2) 予算について(P25) 厚労省科研費から合計2 億 1700 万円程度、NEDO 橋渡し促進技術開発事業から合計約 20 億 9000 万円程度、JST の統合化推進プログラムから合計 7430 万円程度の予算がついて いる。 (3) 研究組織について(P27) 主任研究者(研究代表者)岩坪威、臨床コアPI 朝田隆、荒井啓行、杉下守弘(心理コア PI)、MRI コア PI 松田博史、PET コア PI 伊藤健吾、千田道雄(PET QC PI)、石井賢二 (アミロイドPET PI)、生化学コア PI 桑野良三、荒井啓行、IT コア PI 佐藤典子(平成 22 年の手順書改訂時に岩坪に変更)、統計学コアPI 佐藤元(いずれも手順書による) (4) 研究の流れ

(3)

被験者登録開始は2008 年 8 月であり、最終被験者登録数 545 例(2008(平成 20)年度: 100 例、2009(平成 21)年度:252 例、2010(平成 22)年度:129 例、2011(平成 23) 年度:64 例)である(P24)。

被験者は、健常者及びMCI 患者は 3 年間、AD 患者は 2 年間、半年に 1 回来院(visit)、 し(スクリーニング来院、ベースライン来院、6M、12M、18M、24M、30M、36M)、来 院のつど20 数項目の検査を行う(18M、30M は服薬中の薬の確認程度)。検査内容は、採 血、採尿、MRI、PET(被験者の 25~50%)、腰椎穿刺(被験者の半数)のほか、認知機 能検査(心理検査を含み最大15 検査)を行う。検査時間としては 2~3 時間はかかるが、 1Visit につき数回来院することが必要な場合もある(P44 以下)。 その結果、最終的に、データベースシステムに入力されたデータは、①MRI 1.5T MRI 2625 件、3.0T MRI 258 件、②PET FDG-PET 1410 件、アミロイド-PET 610 件のほか、 今回問題となったデータについては、 ③症例報告書(CRF)は 3884 件(SC 脱落分を除くと 3726 件。以下同様) ④認知機能検査(CTW)は 3259 件(3111 件) ⑤CDR は 2721 件(2573 件) ⑥GDS は 1993 件(1832 件)であった(P49)。

2.調査事項について

(P54~) (1) 論理的記憶検査の検査時間及び MCI の症状の記載におけるデータの「改ざん」の有無 (前提事実) ① 問題となっている「データ」とは、臨床データや認知機能検査等のデータである。 この中にも、データシステム上のデータ(数値等)と、公表はされないがその裏付け となるものとして、データシステム上にPDF 化してアップロードされた用紙(CRF、CTW、 CDR、GDS)に記載された内容(データ)があるが、本調査で問題となっているのは、 主としてこのPDF 化された用紙の記載内容(データ)の修正である(P54)。 データベースシステム上では、これらの用紙記載データの修正履歴については、基本 的にすべて確認できるシステムとなっている(P54)。 ② データセンターは、これら臨床心理データに関するチェック権限を有する(P55)。 但し、データセンターのデータチェックを統括し最終責任を有すべき者は定められて おらず、チェックマニュアルも(当初)定められていなかった(P55)。 研究代表者、心理コアPI、臨床コア PI には、データチェック体制の構築(データチェ ック基準の策定、データセンター職員の教育等を含む)を行い、データセンターにおい て適切なチェックが行われるよう、関与をすることが「期待」されてはいたが、これら 研究者らは、データセンターからの具体的な疑義事項の問い合わせに回答する程度で、 データチェックのために必要な体制の構築を行わなかった(P62)。 そのため実際には、データセンター職員が自ら、2010 年ころから、データセンター内 部でチェックを統一化共通化しようと試み、マニュアル策定、部分的なチェック基準の 配布等を行って、データチェック体制を構築していった。但し、データチェック方針を

(4)

めぐる考え方の違いその他から、職員内部にも人間関係の軋轢、不和が絶えず、データ チェックにも混乱はあった(P57~)。 (結論)(P63~) ① 当委員会としては、この事項について、「データセンターが研究実施医療機関に対し行 った修正依頼に不正と評価されるべき点があったか、あるいは、研究実施医療機関が行 った修正自体に不正と評価されるべき点があったか」という点及びデータの「改ざん」 があったか否かという点を検討した。 ② ヒアリングで指摘された事項や東大報告書の指摘に関し、具体的に次の調査を行った。 ①CTW の修正箇所の概観(P63~) ②スクリーニング時の適格性判断に影響を与えうる修正について調査(P65~) ・MMSE、WMS-R の点数修正(P67~) 該当する 8 件について具体的調査 ・GDS の点数修正(P73~) 8 件について具体的調査 ・その他(P79~。再検査事例、時間の修正、誤って施行された B 問題の削除) ③適格性判断には影響しないが問題のある修正・修正指示がなかったか(P84~) ④MCI の症状に記載におけるデータ修正について(P103~) ③ 結論としては、②には不正な点はなく、③に関し、データセンター職員による誤った 指示と、それに基づく誤った修正は 3 件確認されたが(P84、P91)、誤った指示はいず れもヒューマンエラーの範疇に属するもので、「改ざん」指示というようなものではなか った。また、その後データセンターから適切な再修正指示が出ており、結局は正しいデ ータに戻されている(P109)。 また、④MCI の症状に関しては、入力データや用紙データの記載要領の不備・不明確 さから、統一されていない記載や修正、あるいは修正指示があったことは確認されたが、 そもそもこれは、入力データや用紙データの記載要領の不備によるものであり、これを 誤った指示であるとすることも、「改ざん」と評価することも不適切である(P102)。 ④ 以上のデータセンター職員による誤った指示や統一性のない修正は、データベースシ ステム自体、あるいはデータセンターにおけるデータチェック体制、データセンター職 員に対する教育体制等が構築されていない中で生じたヒューマンエラーであり、これを 構築して来なかったという問題はあるものの、J-ADNI 研究の組織やデータセンターの方 針として誤った修正が行われたり、研究代表者等による恣意的な修正が行われていた事 実は何ら認められない(P109~)。 (2) 適格性について個別の判断が必要となる被験者等の研究参加の適否(P111~) (前提事実) ① プロトコル上、手順書上、スクリーニング時に選択基準等に合致せず適格性を満たさ ない場合でも、研究実施医療機関が例外申請を行い、臨床判定委員会が承認すれば、当 該被験者を登録できることとされている。 他方、被験者登録後に、被験者に適格性を満たさない事情が生じた場合(例えば、併 用禁止薬の開始)、あるいは、スクリーニング時に適格性を満たさない事情が見落とされ

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て登録された後、適格性を満たさなかったことが判明した場合(例えば、併用禁止薬服 用の見落とし)の、当該被験者の扱いについては、プロトコル上、手順書上の記載が明 確でない(P40、111)。 研究の実際では、後者の場合にも研究実施医療機関から例外申請がなされていた (P111)。 ② 臨床判定委員会については、プロトコルにも、一定の者が構成員であると窺わせる記 載はあるが、明確な記載はない。 ③ J-ADNI 研究においては、実際に第 1 回臨床判定委員会が開催されたのは 2010(平成 22)年 4 月で、その後 7 回の開催があったが、臨床判定委員会において例外申請につい て判断がなされたことは一度もなかった(P34~)。 (結論) ① 例外申請については、研究代表者や臨床コア間で、被験者登録後まもなく、その都度 臨床判定委員会を開催して承認する余裕のないことから、研究代表者と臨床コアPI の 3 人がメールで協議を行い決するようになった(但し、プロトコル改訂は行われていない)。 そして、その後臨床コアPI らが多忙で対応しきれない場合など、研究代表者が一人で判 断を行う実態も存した(P112)。 このように、本来臨床判定委員会が判断すべき被験者の適格性についての判断が、臨 床判定委員会ではなく、一部の研究者によって判断されていた事実が認められた。この 手続が臨床判定委員会や研究者間で黙認されていた実態は存するものの、手続的にはプ ロトコル違反といえる(P113~)。 ② そのため、当委員会では、研究代表者ら 3 人あるいは研究代表者が単独で承認した例 外申請事案について、US-ADNI 及び認知症関連 6 学会に、組入(被験者登録)の可否に 関する意見照会を行った(P114~)。 その結果、被験者登録後に適格性に影響しうる事情が判明した場合(スクリーニング 時に見落とされた場合と、登録後の併用禁止薬開始など、登録後に当該事情が生じた場 合)については、当該被験者の来院を中止したり脱落させる必要はない(P116)、スクリ ーニング時に例外申請により組み入れられた例11 例については、見落とし事例も含め 26 件について具体的事実を前提に意見を照会したが、組入には問題がない(但し、検査手 順の逸脱その他の事情が存する場合には、その旨のコメントをデータベース上に付記す べき)との回答を得た(P117~)。 ③ CDR の評価違いによる選択基準違反という指摘について 適格性に問題はない。 (3)被験者からの同意手続きの適否について(P121~) 当委員会が被験者からの同意書取得手続に瑕疵がないか否かについて調査を実施した結 果(報告書別紙3参照)、報告書、研究開始前に同意書を取得しないままに研究が開始され た事例は合計14 件、そのうち、事後に同意書が取得された事例は 9 件、同意書が取得され なかった事例は5 件あることが判明した。なお、上記 14 件はいずれも美原記念病院で行わ れていたケースであった(P122 以下)。

(6)

同病院においては、上記14 件について、全て同病院内の倫理審査委員会に報告しており、 また、該当する被験者(被験者との連絡がとれない場合は近親者)に対しては既に事実経 過の報告と謝罪を行っていることが確認された(P113)。 (4)厚生労働省からのデータ保全要請後のデータ修正の適否(P125~) 2014 年 1 月 16 日に厚労省から研究代表者に対しデータ保全の要請があった後に、デー タセンターにおいて、不当な改ざんや意図的なデータの修正等が行われたかどうかについ て調査を行った。なお、厚労省からのデータ保全要請後も、データセンターにおいて通常 のデータのクオリティチェック作業を行うことは認められていた。 当委員会による調査の結果、厚労省からのデータ保全要請後にデータ登録や修正等が行 われたケースは、いずれも通常の品質確認作業の一環で行われたものであり、不当な改ざ んや意図的な修正等が行われたケースは確認できなかった。 (5)その他 ア 心理コアPI のデータ修正権限(「質的チェック」)について(P128~) 心理コアPI は、心理検査の正誤評価基準を、検査施行後に改めて策定し、これを既に おこなわれた心理検査に当てはめ、正誤評価を修正できる権限を有する旨述べるが、研 究実施医療機関の行った心理検査の結果を新たな基準を用いて変更するような重大な権 限が心理コアPI に与えられているとは認められない(P132~)。 イ 製薬会社からの出向者がデータセンターに関与したことについての問題(P142~) 製薬会社よりバイオ組合に出向した者がデータセンターでの業務に関与したことに関 して、利益相反の問題はない。そもそも J-ADNI 研究は、被験者の疾患進行経過の観察 を行い、その客観的なデータをもとにデータベースを構築することを目的とした研究で あり、組み入れ群を用いて薬効や副作用などを判定しようとする臨床試験ではなく、製 薬会社が、自社に有利な誤った情報をデータベースに入れるということは考えがたい(具 体的医薬も定まっておらず、何が自社によって有利な情報かも不明の段階である)。また、 実際にデータセンターにおいても、データセンター職員の恣意的あるいはバイアスのか かったデータ修正等は行われていない。 ウ データの公表について(P146) 当委員会としては、J-ADNI 研究の臨床及び心理データには、「改ざん」といえるデー タや、「不適切に修正」されたデータは存せず、登録された被験者の適格性の判断につい ても何ら問題は存しないものと考える。 データについては、適格性や組入には影響しない手順の逸脱等についてデータベース 上付記したり、MCI の症状など不正確な情報が記載されている可能性をデータベース上 で指摘するなどの配慮をした上で、このままデータ公表を行っても問題ないものと考え る。

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第5 問題点と責任の所在

1 調査の結果判明した J-ADNI 研究における問題点

(P146~) J-ADNI 研究に関しては、上記のとおり、倫理指針違反(同意手続きに関する問題)、プ ロトコル違反(同意手続きに関する問題及び例外申請に関する手続)が認められた。 さらに、データセンターのチェック体制に混乱があったため、データセンター職員によ る誤った指示(ヒューマンエラー)があり、これが「改ざん」であるかのような指摘を受 ける事態にも至った。 その原因としては、研究開始にあたっての準備不足という点が挙げられる。研究開始時 点におけるデータセンターにおけるデータチェック体制の不備等、データセンターに対す る指揮監督系統の不整備のみならず、プロトコルの不明確さや手順書との矛盾、研究全体 における指揮管理体系の不備、意思決定体制の不備など、プロジェクトマネージメント上 の様々な未熟さが存し、データセンターにおけるデータチェック上の混乱、研究者間での 意思の不統一による混乱等が生じた。 その背景には、プロジェクト開始までの時間不足に加え、中心となった研究者らのプロ ジェクトマネジメントの重要性に対する認識不足も存したものと思われる(P146~)。

2 責任

(P160~) J-ADNI 研究において、新聞報道で指摘されたような「改ざん」等の不正が行われた事 実は認められず、ここでいう責任とは、判明した問題点に関して、誰がどのような責務 を負っていたかということを意味する。 まず、J-ADNI 研究にみられた体制の不備について、そもそも、研究開始に先立ち、様々 なマネジメント体制を整えるべき責任は、第一義的には研究代表者にあったものと思わ れる。 しかしながらまた、他の研究者においても、J-ADNI 研究を実施継続するにあたり、研 究代表者を補助、支援してこなかったこと等につき、一定の責任があるものと考える。 特に、今回の問題の多くは、心理データや臨床データのチェックをめぐって生じてお り、心理コアPI、臨床コア PI には、研究代表者を補助し、あるいは自らが主導的に、当 初のデータマネジメント体制の構築を行わなかったこと、その後生じたデータセンター のデータチェックにおける混乱を収めることができなかったことについて、責任がある ことは否定できない。

第6 再発防止策

(P160~) 今回、当委員会が調査を行ったJ-ADNI 研究は、既に最終段階にあるが、調査の過程 で、多施設大規模臨床研究における様々な課題が浮き彫りとなった。 そこで、当委員会としては、今後、多施設大規模臨床研究を実施するに際して留意す べきポイントについて、以下のとおり再発防止策としてとりまとめた。 ① データ信頼性確保のための体制現在、我が国においては、臨床研究の国際基準であ るGCP(Good Clinical Practice)は治験(医薬品医療機器等法に基づく医薬品・医療機

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器等の製造販売承認を得るための臨床試験)にのみ適用され、治験に該当しないその他の 臨床研究(J-ADNI 研究もこれに含まれる)には GCP は適用されない。 GCP 準拠の臨床研究においては、被験者の保護とともに、データの信頼性の保障が厳格 に求められることから、専門的知識及び経験を有する者(例:データマネージャー、生物 統計家、プロジェクトマネージャー、臨床薬理学者、研究倫理の専門家等)の確保や、さ らに、モニタリング、監査という品質管理・保証の仕組みを整備することも必須となる。 上記のとおり、J-ADNI 研究において今回の事態が引き起こされた主な原因が、データ センターのプロジェクト内での責任・権限の不明瞭さ、データマネジメント責任者の不在 による指示命令系統の不統一、データマネジメントシステム設計・構築の不備、データマ ネジメント手順書・チェックリスト等の不整備・不統一など、プロトコルの不明確さや手 順書との矛盾、研究全体における指揮管理体系の不備、意思決定体制の不備などにあった ことに鑑みれば、もし、本研究がGCP 基準に則って行われていれば、今回の事態が起き なかったであろうと推察される。 もちろん、我が国で行われている全ての臨床研究がすべてGCP 基準で行われることが 望ましいことは言うまでもないが、他方、全てのGCP 基準を充足するためには、多額の コストや多くの専門人材が必要となることに照らせば、その実現は容易ではなく、現実的 な選択肢とは言えない。 しかしながら、J-ADNI 研究のように、多額の国費が投入される大規模多施設臨床研 究においては、GCP 基準の趣旨を踏まえ、データマネージャー、生物統計家、プロジェ クトマネージャー、臨床薬理学者、研究倫理の専門家等を確保し、さらに、モニタリング、 監査という品質管理・保証の仕組みを整備すること、研究事務局と呼ばれる機能(中央に おいて全施設をマネジメントする機能を有し、データセンターとは独立して研究内の各グ ループ間の調整を行ったり、中央組織と各施設との調整業務を行う事務局)を備えること など、データの信頼性を確保するための体制を整備することを研究実施の要件とすべきで ある。 ② ガバナンス体制 現在、我が国における臨床研究は、既述のとおり、治験を除き「臨床研究に関する倫 理指針」が適用されるが、臨床研究倫理指針は、すべての臨床研究が同一の基準で実施 される建前であり、研究の規模や予算の規模に応じて多元的な基準を設けているわけで はない。 しかしながら、単一施設で実施される小規模臨床試験と、J-ADNI 研究のように、 多額の国費が投じられ、また多数の研究機関が参加し、さらに多数の企業が参画する多施 設大規模臨床研究とでは、その求められる社会的責任の程度は異なって然るべきで、多施 設大規模臨床研究の場合は、より高度のガバナンス体制の構築が求められると考えられる。 たとえば、会社のなかでも、株式を上場している上場企業と非上場企業とでは、それぞ れ求められるガバナンス体制は異なり、また、株式会社のなかでも資本金5億円以上また は負債額 200 億円以上の大会社とその他の株式会社とでは、それぞれ求められるガバナ ンスが体制は異なるが、これと同様の理由である。

(9)

今回のケースで、既述のとおり、J-ADNI 研究において生じた混乱の主な原因が意思 決定体制、意思決定手続、研究代表者の権限の範囲が明確に定められていなかったこと、 チェック機能が十分に働かなかったことに起因することに照らせば、たとえば、多施設大 規模臨床研究の場合には、代表研究者の役割と責任を明確に定めること、意思決定体制と 意思決定手続を明確に定めること、業務執行をモニタリング・監査する機関を設置するこ とを求めるべきである。 また、モニタリング・監査の実施対象は、各施設で実施される研究を含むことはもとよ り、多施設大規模研究における研究代表者の執行内容そのものも含めるべきである。 さらに、特に研究代表者には、プロジェクト全体を統括する役割が求められるべきで、 この役割を実効的に果たすために、研究代表者を補佐する組織を設置しておくことが望ま しい。 以上のとおり、今後、多額の国費が投入される多施設大規模臨床研究においては、その 社会的責任を踏まえ、より高度のガバナンス体制を構築することを検討すべきである。

参照

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