図-1 トンネル内可視画像データ(例)
可視画像データを利用した地下鉄トンネルの状態分析
東京地下鉄 ○ 岩本佑太 東京地下鉄 三浦孝智 東京地下鉄 正会員 川上幸一 東京地下鉄 正会員 小西真治
東京大学 正会員 石川雄章 東京大学 正会員 安達慎一
1.目的
東京地下鉄では,全トンネル区間 166.5km の可視画像を撮影しデータ化しており,データから変状発生状況を 把握し長期的な保全計画に反映させることを目指した取り組みを行っている。今般,その取り組みの第1ステッ プとして,ある1路線の可視画像データから変状データを抽出・整理し,変状発生傾向を分析したので報告する。
2.可視画像データおよび分析の概要 図-1 に例示するトンネル内の可視画像デ ータから,はく離・はく落,ひび割れ,漏水 等の変状の位置,幅,長さ,方向等を機械判 読に適したデータに調製した。
その上で,変状発生傾向を分析するために,
変状発生密度分布図(路線のキロ程方向にお ける延長 100m 当たりの変状発生件数の分布 を示したグラフ)を作成するとともに,検査
(点検),補修に携わる職員の知見も踏まえ、
変状発生と何らかの関係性がある因子候補と してトンネルの諸元や工法・構造形式,地理
的条件等を想定し、それらの情報を変状発生密度分布図に重ね合わせた。また,社内で保有する歴史的知見
(路線の工事史)等の収集・整理も行い,変状集中箇所,及び要因候補の抽出を行うこととした。
3.
変状発生密度分布図の作成今回作成した変状発生密度分布図は,
横軸にキロ程(100m ピッチ),縦軸に変 状発生箇所数をとったグラフである。
なお,作成にあたっては,変状種別に より発生のメカニズムが異なると想定さ
れることから,変状種別を3つに大別した。具体的には,図-2 に示すはく離・はく落系の変状(はく落・は つり跡,はく離・浮き,鉄筋露出,補修跡等)のほか,漏水系変状(漏水・漏水痕,錆汁,析出物他),ひび 割れ(幅 0.5mm 以上)の3種である。
4.社内の暗黙的な知見の収集・共有
3.で作成した変状発生密度分布図をもとに、“変状が集中している所はなぜか”,“どんな要因の可能性が あるか”等の視点からの社内検討会を実施し,社内の暗黙的な知見を収集し共有した。なお,社内検討会に は,現場作業に従事する者を含めた多様な社員(土木課,土木工事所メンバー等)が参加した。
キーワード 地下鉄,トンネル,維持管理,可視画像データ,変状発生密度
連絡先 〒110-8614 東京都台東区東上野 3-19-6 東京地下鉄(株) 工務部土木課 TEL03-3837-8086 図-2 変状発生密度分布図(はく離・はく落系変状)
土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)
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Ⅵ‑155
5.変状発生密度分布図と変状要因候補の関する情報との重ね合わせ 4.での議論で挙げられた
トンネルの変状要因候補(路 線から水涯線までの距離,駅 名,竣工年,100m あたり工事 日数,工法,曲線半径,近接 施工の有無,防水層施工の有 無等)について,社内保有デ ータやオープンデータを収 集・整理した。これらの情報 のうち,路線から水涯線まで の距離については,国土地理 院により WEB 上で公開されて いるデータを元に算出した。
さらに,上記の変状要因候 補に関する情報報を変状発生 密度分布図に重ね合わせ,変 状集中箇所の特徴を図上で確 認することを試みた。
(1)はく離・はく落系変状;
はく離・はく落系変状につ いては,一部の集中箇所で,
曲線半径が小さい,防水層施 工無し,近接施工あり,水涯 線との近接等の特徴があるよ うに見受けられた。(図-3)
(2)漏水系変状;漏水系変状については、一部の集中箇所で,曲線半径が小さい,防水層施工無し,近接 施工あり,水涯線との近接等の特徴があるように見受けられた。(図-4)
(3)ひび割れ;ひび割れについては,一部で,水涯線と近接する箇所での集中が見受けられた。(図-5)
6.まとめ
本検討では,ある1路線での可視画像データから,路線内での変状集中箇所,及びその要因候補の抽出を 行うことができた。本検討の先には,トンネルの変状箇所の見落としの防止,点検の確実性の向上,点検業 務の効率化等を見据えており,特に,多様な変状のうち,はく落については鉄道の安全・安定運行に大きく 影響するため,その見落としがないことを重視すべきと考えている。また,検討成果を検査や補修の実務に 落とし込むことを考える場合には,社内外の工学的知見のみならず,統計学的な根拠も必要である。
以上より,今後は,データマイニング等により,変状発生要因や複数の要因の因果関係を明らかにし,そ の結果を根拠として点検時の注意区間(定期点検における確実な打音検査の対象)として設定する、はく落 が発生しやすい区間を優先的に補修するなど、実業務に活用していきたい。
参考文献
1) 国土交通省国土地理院:基盤地図情報サイト http://www.gsi.go.jp/kiban/
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50 100 150 200 250 300
水涯線までの距離
変状箇所数
ひび割れの変状発生密度(幅0.5mm以上) 変状箇所数水涯線までの距離
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水涯線までの距離
変状箇所数
はく離・はく落系変状+鉄筋露出の変状発生密度 変状箇所数水涯線までの距離
(箇所)
キロ程(100mピッチ)
0 50 100 150 200 250 300
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水涯線までの距離
変状箇所数
漏水系変状の変状発生密度 変状箇所数水涯線までの距離
キロ程(100mピッチ)
キロ程(100mピッチ)
駅 名
駅 名 構築タイプの変化点
構築タイプの変化点
水涯線まで
の距離 変状集中箇所
水涯線まで の距離
変状集中箇所
図-3 はく離・はく落系変状の変状発生密度分布と各種情報の重ね合わせ
図-4 漏水系変状の変状発生密度分布と各種情報の重ね合わせ
図-5 ひび割れの変状発生密度分布と各種情報の重ね合わせ
キロ程(100mピッチ)
駅 名
構築タイプの変化点
水涯線まで
の距離 変状集中箇所
土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)