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浮遊砂濃度計測用小型ソナーの開発に関する研究

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Academic year: 2022

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浮遊砂濃度計測用小型ソナーの開発に関する研究

豊橋技術科学大学 学生会員 渥美尚志 豊橋技術科学大学 正会員 加藤 茂 本多電子株式会社 八木田康信 豊橋技術科学大学 正会員 青木伸一

1. はじめに

本研究で扱う超音波による浮遊砂濃度計測とは、ソ ナーを用いて浮遊砂が生ずる反射エコーを計測し、そ の反射エコーから浮遊砂の濃度を推定するものである。

この際に水中での音速が既知であれば、反射エコーの 受信までに要する時間をもとに、そのエコーを生じた 浮遊砂の位置を求めることができる。これはつまり、

濃度の空間分布が計測可能だということであり、現在 多く用いられている濁度計などには無い大きなメリッ トであると言える。

本研究は超音波による浮遊砂濃度計測法の開発に関 する研究の一部である。既に行われた実験(加藤ら、

2009)ではソナーから浮遊砂までの距離が一定の場合、

浮遊砂による反射エコーの強度[V2]はその濃度[g/l]に 比例し、その対応関係はほぼ粒径に依存しないことが 示された。この関係を空間的に拡張して、反射エコー の受波データから浮遊砂濃度の空間的な分布を推定す ることが研究全体の最終的な目標である。しかし、両 者の関係を求めるためには、浮遊砂を超音波ソナーと その他の計測機器で同時に計測し、複数の地点におい て受波データと浮遊砂濃度の関係を明らかにする必要 がある。そこで、前述の既往研究の成果を活用し、反 射エコーの受波データに対応付けるための浮遊砂濃度 についても、小型の超音波ソナーを用いて計測するこ とを計画した。本研究の目的は、その濃度計測に用い るためのソナー(以下小型ソナー)についての、音波 強度[V2]-浮遊砂濃度[g/l]の対応関係を求めることであ る。

2. 使用機器と実験・データ処理の概要

本研究に使用した小型ソナーは、4 チャンネル同時 に計測可能な構成となっている。各チャンネルは独立 した直径約5cmの送受一体型円形振動子を持ち、その 発信周波数は1MHzである。アンプのサンプリング周 波数は8MHz(時間分解能:0.125×10-6秒)、計測レン ジは±1V、ビット深度は8bit(電圧分解能:0.781×10-2V)、 計測間隔は約0.13秒である。また、アンプはパソコン

に接続し、パソコンによって制御およびデータの保存 を行う。本装置は本多電子株式会社が製作した。

実験は小型ソナーとLISST(レーザー回折式浮遊砂 濃度計)を写真-1のように配置して行った。砂を水面 から投入し、この沈降してゆく浮遊砂を両機器で計測 する。これによって得られる二つのデータから、反射 エコーの音波強度と濃度との対応関係を調べた。

写真-1 LISSTおよびソナーの配置

浮 遊 砂 は 篩 に よ っ て 選 り 分 け た 106~150μm、 212~250μm、300~355μmの 3種の粒径の珪砂を用い、

それぞれについて音波強度[V2]-濃度[g/l]の分布図を 作成した。

LISSTでは2秒ごとに6サンプルの体積濃度[μl/l]の 平均値が計測され、小型ソナーでは8MHzのサンプリ ング周波数で音圧の時系列データ(発信からの経過時 間[s]と音圧[V])が取得される。このデータの時間軸を、

水中での音波の伝搬速度(1500m/s)をもとに距離の軸 に置き換えることで、計測された音波の送波距離が求 められる。これによって、小型ソナーに対する浮遊砂 の位置と、その反射エコー強度(≒浮遊砂濃度)を計測 することが可能である。この距離-反射エコー強度の 計測が約0.13秒間隔で繰り返されることで、反射エコ ー強度の時間・空間分布が得られる。空間分布データ

から LISST の計測位置に相当する位置のデータ(約

5cm幅)における音波強度[V2]の平均値を求め、さらに

LISSTと同じ2秒間隔で平均することで、ソナーのデ

ータはLISSTと比較可能なデータ形式となる。ただし、

この処理の際には、LISSTとの計測タイミングのずれ 土木学会中部支部研究発表会 (2011.3) II-048

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(2)

によるデータの不一致を低減するため、時間平均開始 位置をずらした複数のファイルを出力し(図-1)、分布 図の作成にはLISSTのデータと最も相関の高いものを 採用した。図-2は両機器のデータの対応例である。

図-1 平均開始時間の違いによる平均結果の変化の例

図-2 ソナー:LISSTデータ対応例

3. 実験結果

実験の結果得られたデータをもとに、粒径ごとの音 波強度と浮遊砂濃度の分布図を作成した。

図-3 粒径別 音波強度[V2] 浮遊砂濃度[g/l]分布図

図-3から反射エコー強度と浮遊砂濃度の間には、粒 径ごとにほぼ線形の関係があると言える。したがって、

粒径の情報が既知であればこの小型ソナーを用いて、

浮遊砂の濃度を推定することが可能であることが明ら かとなった。しかし、結果の粒径依存性については“音 波強度と濃度関係は粒径に依存しない”という前述の 研究成果と食い違うものであったため、その原因につ いて考察を行った。

4. 粒径依存性に関する考察および結論

加藤ら(2009)による実験では、図-4のように音波 強度と濃度の関係に粒径による違いはほとんど見られ ないのに対して、今回の実験では前述ように粒径によ ってその対応関係が大きく異なっている。

2.5

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0

Concentration : C (g/l)

25x10-3 20 15 10 5 0

Echo Intensity : E (V2/cm/s) Silica No.7(1) (d50=0.16mm)

Silica No.7(2) (d50=0.15-0.21mm)

Toyoura (d50=0.21mm) Silica No.7(1) : C = 97.5*E, R = 0.74 Silica No.7(2) : C = 88.8*E, R = 0.88 Toyoura : C = 79.6*E, R = 0.74 Total : C = 84.9*E, R = 0.75

16 14 12 10 8 6 4 2 0

Concentration : C (g/l)

0.16 0.12 0.08 0.04 0.00

Echo Intensity : E (V2/cm/s) Natural Sand (d50=0.3-0.35mm)

C = 88.2E, R=0.83

-4 エコー強度と濃度との関係(加藤ら、2009) (左:粒径d50=160, 150~210, 210μm 右:粒径300~355μm)

この粒径依存性の違いの原因として計測機器の違い が挙げられる。本研究で用いた小型ソナーと参考とし た研究で用いられたソナーの発信周波数はどちらとも 1MHz であるが、その周波数特性については両者とも に不明である。そこで両者の振動子の発信音について フーリエ解析を行い、その周波数スペクトルを求めた。

図-5 小型ソナーと加藤ら(2009)の実験で用いられたソナー の周波数スペクトル比較

図-5から分かるように両者の帯域幅とピーク周波数 は明らかに異なっており、この周波数特性の違いが、

加藤ら(2009)の実験結果との違いが生じる原因の一 つであると考えられる。今後、粒径と周波数の違いに よる反射エコー強度-浮遊砂濃度関係の変化について、

さらに調査が必要である。

参 考 文 献

加藤茂ら(2009):超音波を用いた浮遊砂計測法の開発 に関する研究,土木学会論文集 B2(海岸工学), Vol.B2-65,No.1,pp.1436-1440.

土木学会中部支部研究発表会 (2011.3) II-048

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