大立体角電子分光器の開発と その性能評価に関する研究
Construction and evaluation of the
performance of an electron energy analyzer with a wide solid angle
坂 井 大 輔
2008 年 10 月
大立体角電子分光器の開発と その性能評価に関する研究
Construction and evaluation of the
performance of an electron energy analyzer with a wide solid angle
2008 年 10 月
早 稲 田 大 学 理 工 学 研 究 科
物 理 学 及 応 用 物 理 学 専 攻 表 面 物 性 研 究
坂 井 大 輔
目 次
1. 序 論 1
1-1 はじめに 1
1-2. 大 門 型 電 子 分 光 器 6
1-3. 新 型 電 子 分 光 器 10
1-4. 関 連 研 究 の概 要 11
1-5. 本 論 文 の構 成 12
2. 電 子 分 光 器 の概 要 15
2-1. 電 子 分 光 器 の 動 作 原 理 15
2-1-1. 半 球 間 の電 位 分 布 15
2-1-2. 半 球 間 の運 動 16
2-1-3. 内 半 球 内 の 運 動 19
2-1-4. 電 子 軌 道 19
2-1-4-A. 内 半 球 内 入 口 区 間 (区 間 S-L) 19
2-1-4-B. 半 球 間 区 内 (区 間 L-N) 20
2-1-4-C. 内 半 球 内 アパーチャー付 近 区 間 (区 間 N-T) 22
2-1-5. 特 別 な条 件 下 での電 子 軌 道 22
2-1-6. エネルギー分 解 能 23
2-1-6-1. 初 期 型 大 門 型 電 子 分 光 器 の エネルギー分 解 能 24 2-1-6-2. 新 型 電 子 分 光 器 のエネルギー 分 解 能 25
2-1-7. 新 型 電 子 分 光 器 の電 子 軌 道 28
2-2. 新 型 電 子 分 光 器 の構 造 28
2-3. 新 型 電 子 分 光 器 の特 徴 34
3. 装 置 概 要 39
3-1. 真 空 排 気 系 39
3-2. 測 定 系 43
3-2-1. 角 度 積 分 型 測 定 43
3-2-1. 角 度 分 解 型 測 定 43
3-3. 試 料 加 熱 43
3-4. 励 起 源 49
4. 小 型 電 子 銃 を用 いた電 子 分 光 器 性 能 評 価 53
4-1. はじめに 53
4-2. 実 験 について 55
4-3. エネルギー 分 解 能 57
4-4. 角 度 分 解 能 61
4-5. エネルギー 分 解 能 の角 度 分 布 61
4-6. 角 度 分 解 型 測 定 67
4-7. まとめ 67
5. 角 度 分 解 型 紫 外 線 光 電 子 分 光 法 による性 能 評 価 71
5-1. はじめに 71
5-2. グラファイトにつ いて 72
5-3. 実 験 について 73
5-4. エネルギー 分 解 能 74
5-5. エネルギー 分 散 曲 線 82
5-6. 角 度 分 解 型 電 子 分 光 における電 子 分 光 器 性 能 の比 較 91
5-7. まとめ 93
6. 弾 道 電 子 エ ミ ッ タ ー か ら の 電 子 放 出 パ タ ー ン お よ び エ ネ ル ギ ー 分 布 測 定
95
6-1. はじめに 95
6-2. 実 験 について 97
6-3. 結 果 および考 察 について 97
6-4. まとめ 109
7. 総 論 111
7-1. 本 研 究 における成 果 111
7-2. 今 後 の展 望 112
謝 辞 115
付 章 117
参 考 文 献 121
研 究 業 績 125
第 1 章 序 論
1-1. は じ め に
1960 年 代 に 固 体 表 面 物 理 に お け る 様 々 な 分 析 手 法 が 発 明 さ れ て 以 来 、 電 子 分 光 器 は 表 面 分 析 に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た し 続 け て き た 。X 線 光 電 子 分 光 法(X-ray Photoelectron Spectroscopy: XPS)に お い て は 、同 心 半 球 型 電 子 分 光 器(Concentric Hemispherical Anal yzer: CHA)が 一 般 的 に 用 い ら れ て お り[1-1]、 オ ー ジ ェ 電 子 分 光 法 (Auger Electron Spectroscopy:
AES) に お い て は 、 同 心 円 筒 型 電 子 分 光 器 (Concentric Mirror Anal yzer:
CMA)が 発 明 さ れ て か ら は 広 く 用 い ら れ て い る[1-2]。高 分 解 能 電 子 エ ネ ル ギ ー 損 失 分 光 法 (High-Resolution Electron Energy Loss Spectroscopy:
HREELS) は 、1 meV 程 度 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 要 求 さ れ る 手 法 で あ る た め 、 円 筒 型 電 子 分 光 器 (Cylindrical Analyzer) 多 段 の 配 置 さ れ た 電 子 分 光 器 を 用 い る こ と で 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 向 上 さ せ て い る[1-3]。 そ の 他 の 分 析 手 法 に お い て も 、 数 多 く の 電 子 分 光 器 が 使 わ れ て い る 。 代 表 的 な も の を 図 1 に 示 す 。
荷 電 粒 子 の エ ネ ル ギ ー 分 析 に は 、 異 な る エ ネ ル ギ ー の 荷 電 粒 子 を(1) 空 間 的 に 分 離 す る 、(2)阻 止 電 場 を 用 い る 方 法 、(3)速 度 の 違 い に よ り 時 間 的 に 分 離 す る 方 法 、 の 3 つ が あ る 。 電 子 に お け る エ ネ ル ギ ー 分 析 に お い て は 、(1)お よ び(2)が 用 い ら れ る 。 た だ し 、(2)の 方 法 は 簡 易 的 で あ る 反 面 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 相 対 的 に 劣 る 。 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 必 要 と す る 場 合 は 、必 然 的 に(1)の 方 法 を 取 る こ と に な る 。た だ し 、(1)の 方 法 だ け で な く 、 補 助 的 に(2)に 併 用 す る 場 合 も あ る 。
(a) 同 心 半 球 型 電 子 分 光 器 (CHA)
(b) 同 心 鏡 筒 型 電 子 分 光 器 (CMA) 図 1-1.代 表 的 な 電 子 分 光 器
CH A や C M A は 最 も 多 く の 商 品 化 が な さ れ て い る 電 子 分 光 器 で あ る 。 ど ち ら の 分 光 器 も 、エ ネ ル ギ ー の 異 な る 荷 電 粒 子 を 空 間 的 な 軌 道 に 違 い に 変 換 さ せ る こ と で 、 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 実 現 し て い る 。
電 荷 q を 持 つ 速 度 v の 荷 電 粒 子 が 、電 場 E お よ び 磁 束 密 度 B の 電 磁 場 中 を 通 過 す る と 、 ロ ー レ ン ツ 力 F = q {E + v×B} を 受 け て 、 軌 道 が 曲 が る[1-4]。 こ の ロ ー レ ン ツ 力 を 利 用 し て 、 エ ネ ル ギ ー の 異 な る 粒 子 を 空 間 的 に 分 離 す る 。 一 般 的 な 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 電 子 分 光 器 に お い て は 、 磁 束 密 度 を ゼ ロ に し 、 電 場 の み を 制 御 す る こ と で エ ネ ル ギ ー 分 析 を 行 う 。 現 在 、 最 も 普 及 し て い る 電 子 分 光 器 と し て 代 表 的 な も の は 、 先 に 述 べ た CHA と CMA で あ る 。 典 型 的 な CHA を 図 1-a に 示 す 。CHA は 2 つ の 同 心 半 球 電 極 に 平 行 に 電 子 を 入 射 さ せ 、 そ の エ ネ ル ギ ー の 違 い に よ り 電 子 軌 道 半 径 が 異 な り 、 そ の 検 出 面 で の 到 達 位 置 に 違 い が 生 じ る 。 エ ネ ル ギ ー 分 解 能ΔE は 、 パ ス エ ネ ル ギ ーE、 中 点 電 位 半 径 R、 エ ネ ル ギ ー ス リ ッ ト 幅 w、 入 射 半 角αと し た と き 、
4 2
α2
+ Δ =
R w E
E (1-1)
で 表 さ れ る[1-5]。 し た が っ て 、 感 度 を 大 き く す べ く 取 込 角 度 を 大 き く す る と 、(1-1)の 右 辺 第 2 項 が 大 き く な り 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は 悪 く な る 。 ま た CHA は 通 常 イ ン レ ッ ト レ ン ズ を 使 用 す る 。 こ の イ ン レ ッ ト レ ン ズ に よ っ て 、 取 込 角 度 や 分 析 領 域 を 制 限 す る 機 能 を 持 た せ 、 微 小 領 域 分 析 や 角 度 分 解 型 分 析 を 可 能 に す る 。CHA の 特 徴 は 、相 対 的 に 感 度 が 小 さ い が 、 微 小 領 域 分 析 や 角 度 分 解 型 分 析 が 可 能 で あ る こ と で あ り 、CHA は XPS に 非 常 に 適 し た 分 光 器 で あ る と い え る 。CMA は 図 1-b に 示 さ れ る 通 り 、2 つ の 同 心 円 筒 電 極 に 約 42°の 角 度 で 中 心 軸 か ら 電 子 を 入 射 さ せ 、そ の エ ネ ル ギ ー の 違 い に よ り 中 心 軸 上 へ の 再 到 達 位 置 が 異 な る こ と に よ り エ ネ ル ギ ー 分 析 を 行 う 。CMA は 、 上 記 の 42°の 入 射 軌 道 に お い て は 、 微 小 開 き 角 に つ い て 二 次 収 束 さ せ る こ と が で き 、ま た 360°全 周 か ら 信 号 を
取 り 込 む こ と が 可 能 で あ る た め 、感 度 の 高 い 分 光 器 で あ る と い え る[1-6]。 そ の 反 面 、 測 定 角 度 が 42 度 に 限 定 さ れ る た め 、 角 度 分 解 型 の 測 定 を 行 う に は 、 不 向 き な 分 光 器 で あ る 。 実 際 に 、 取 込 領 域 に 制 限 す る た め の ス リ ッ ト 等 を 用 い て 角 度 分 解 型 の 測 定 を 行 っ て い る 例 も あ る が 、 普 及 は し て い な い[1-7~1-8]。CHA や CMA の 例 か ら も 分 か る よ う に 、取 込 立 体 角 に 大 き く す る こ と に よ る 感 度 向 上 と エ ネ ル ギ ー 分 解 能 お よ び 角 度 分 解 能 向 上 と は 、 一 般 的 に は ト レ ー ド オ フ の 関 係 に あ る 。
様 々 な 電 子 分 光 器 が 開 発 さ れ て き た 中 で 、Eastman ら が 、 取 込 立 体 角 が 理 論 上 2πで あ っ て 、か つ 角 度 分 解 型 の 測 定 も で き る 画 期 的 な 電 子 分 光 器 を 考 案 し た 。Eastman ら が は じ め に 考 案 し た も の は 、 図 1-2 に 示 す よ う に 、 グ リ ッ ド メ ッ シ ュ を 使 用 し た タ イ プ の も の で あ り 、 エ ネ ル ギ ー の 違 い を 空 間 的 な 違 い に 変 換 さ せ る と い う 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 型 の 二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 で は な か っ た[1-9]。様 々 な 二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 が 考 案 さ れ た が[1-10]、 そ れ ら の 中 で 非 常 に ユ ニ ー ク な も の が 大 門 ら に よ っ て 考 案 さ れ た 電 子 分 光 器 で あ る[1-11]。 こ の 電 子 分 光 器 は 、(1)取 込 立 体 角 が 2πと 究 極 的 に 広 い こ と 、(2)全 取 込 領 域 に お い て 一 度 に 角 度 分 解 型 の 測 定 が 可 能 で あ る こ と 、 と い う 二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 の 持 つ 特 徴 以 外 に 、 (3)構 造 が 単 純 で あ る こ と 、 と い う 特 徴 も 併 せ 持 っ て い た 。 し か し な が ら 、 本 分 光 器 は 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 電 子 の 入 射 方 向 に 強 く 依 存 し 、 分 光 器 底 面 に 垂 直 お よ び 水 平 方 向 の 入 射 に 対 し て は 、 極 端 に 分 解 能 が 悪 く な る と い う 致 命 的 な 問 題 を 持 っ て い た[1-12]。 大 門 ら は 、 取 込 立 体 角 の 維 持 を 最 も 重 要 視 し た た め 、 バ ン ド パ ス ィ ル タ ー と な る グ リ ッ ド や 障 壁 レ ン ズ 等 を 追 加 し た り す る こ と で 、 本 問 題 の 解 決 を 図 ろ う と し
図 1-2. Eastman 型 電 子 分 光 器[1-9]
初 の 二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 。 図 の 左 側 の 小 さ い 穴 か ら 励 起 源 を 入 射 さ せ 、 試 料 上 で 発 生 し た 二 次 電 子 を 試 料 周 り に 配 置 さ れ た ハ イ パ ス フ ィ ル タ ー と し て の 役 割 を 持 つ 減 速 レ ン ズ 系 と ロ ー パ ス フ ィ ル タ ー の 役 割 を 持 つ 球 面 ミ ラ ー 電 極 で ア パ ー チ ャ ー を 通 過 で き る 電 子 エ ネ ル ギ ー が 決 定 さ れ る 。 ア パ ー チ ャ ー を 通 過 し た 電 子 は 、 そ の ま ま 検 出 器 上 に 角 度 分 布 情 報 を 反 映 し た 信 号 と し て 検 出 さ れ る 。
た 。 そ の 結 果 、 構 造 は 複 雑 に な り 、 ま た 多 段 の グ リ ッ ド 通 過 に よ る 電 子 信 号 現 象 も 避 け ら れ ず 、 本 来 持 っ て い た 大 立 体 取 り 込 み に よ る 高 感 度 検 出 機 能 す ら 劣 化 さ せ る 結 果 に な っ た[1-13、14]。
本 研 究 に お い て は 、 大 門 型 二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 の 取 込 角 度 を 最 適 な±20ºの 領 域 に 制 限 す る こ と に よ っ て 、 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 実 現 で き る こ と に 注 目 し 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 入 射 方 向 依 存 性 を で き る だ け 小 さ く す る よ う に し た 電 子 分 光 器 を 設 計 し た 。 組 み 上 げ た 電 子 分 光 器 の 性 能 評 価 と し て 、 オ ー ジ ェ 電 子 分 光 法 (AES)、 低 速 電 子 線 回 折 (LEED)、 電 子 エ ネ ル ギ ー 損 失 分 光 法 (EELS)、 紫 外 線 光 電 子 分 光 法 (UPS) の 手 法 へ の 応 用 を 試 み た 。 ま た 本 分 光 器 の 特 徴 で あ る 角 度 分 解 型 電 子 分 光 に つ い て は 、 高 配 位 性 グ ラ フ ァ イ ト (HOPG) の バ ン ド 構 造 を 再 現 す る こ と で 、 そ の 有 効 性 の 評 価 を 行 っ た 。 さ ら に 、 本 電 子 分 光 器 の 特 徴 を 活 か し た 応 用 と し て 、 弾 性 電 子 放 出 エ ミ ッ タ ー の エ ミ ッ シ ョ ン パ タ ー ン 、 お よ び そ の エ ネ ル ギ ー 分 布 の 測 定 を 行 っ た 。
本 章 の 概 要 は 次 の 通 り で あ る 。最 初 に 、「 本 研 究 の 背 景 」に お い て 、大 門 型 電 子 分 光 の 構 造 に つ い て 述 べ る 。「 大 門 型 電 子 分 光 器 」に お い て 、大 門 型 電 子 分 光 器 の 特 徴 や 問 題 点 等 に つ い て 述 べ る 。「 新 型 電 子 分 光 器 」に お い て 、新 型 電 子 分 光 器 の 特 徴 や 概 要 を 述 べ る 。「 関 連 研 究 の 概 要 」に お い て 、 新 型 電 子 分 光 器 の 評 価 と し て 行 っ た 研 究 の 概 要 を 述 べ る 。 最 後 に
「 本 論 文 の 構 成 」 を 述 べ る 。 1-2. 大 門 型 電 子 分 光 器
大 門 ら が 最 初 に 考 案 し た 電 子 分 光 器 を 図 1-3 に 示 す[1-11]。2 つ の 同 心 半 球 電 極 か ら 成 り 立 ち 、 内 半 球 電 極 は 電 子 が 通 過 で き る よ う な グ リ ッ ド
メ ッ シ ュ 電 極 に な っ て い る 。 試 料 点 S を 出 射 し た 電 子 は 、 電 場 の 発 生 し て い な い 内 半 球 電 極 の 内 側 を ま っ す ぐ 進 み 、2 つ の 半 球 電 極 間 の 領 域 に 到 達 し た ら 、 中 心 よ り 放 射 状 に 発 生 し て い る 電 場
) 2
( r
V a b r ab
E ⋅
= − (1-2)
に よ る 中 心 力 を 受 け て 曲 が り 、 再 度 内 半 球 内 を ま っ す ぐ 進 み 、 ア パ ー チ ャ ーA に 到 達 す る 。A を 通 過 で き る 電 子 は 、 適 当 な エ ネ ル ギ ー を 持 っ て S を 出 射 し た 電 子 の み で あ る ( 詳 細 は 2 章 参 照 )。
本 電 子 分 光 器 の 優 れ て い る 点 は 、 (a) S を 適 当 な エ ネ ル ギ ー を 持 っ て 各 方 向 に 出 射 し た 電 子 が 完 全 に A を 通 過 で き る こ と 、す な わ ち 幾 何 収 差 が 理 論 上 ゼ ロ で あ る こ と 、(b)出 射 方 向 に 関 す る 角 度 情 報 が 保 存 さ れ る こ と 、 で あ る 。 一 方 で 、 本 電 子 分 光 器 は 、(c)試 料 周 り に 励 起 源 を 配 置 す る た め の 空 間 が 狭 い こ と 、(d)エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 出 射 角 度 に 大 き く 依 存 す る こ と 、 と い う 欠 点 を 持 っ て い る 。[1-12]。 特 に 、(d)に つ い て の 欠 点 に つ い て 、 入 射 方 向 が 電 子 分 光 器 底 面 に 対 し て 垂 直 方 向 (90° ) と 水 平 方 向 (0°、180° ) に お け る 依 存 性 が 顕 著 で あ り 、 こ れ ら の 方 向 に お い て は 全 く エ ネ ル ギ ー 分 解 し な く な る( 詳 細 は 2 章 参 照 )。こ れ は 、電 子 分 光 器 と し て は 致 命 的 な 欠 点 で あ る 。
本 問 題 の 解 決 策 と し て 、 大 門 ら は 取 込 立 体 角 の 大 き さ を 維 持 す る こ と を 重 視 し た た め 、図 1-4 に 示 す よ う に 、外 側 電 極 中 心 付 近 に Obstacle Ring と 検 出 器 直 前 に バ ン ド パ ス フ ィ ル タ ー と し て 役 割 を は た す グ リ ッ ド 電 極 を 追 加 し た 。 本 改 造 に よ り 、 特 に 垂 直 方 向 に お け る エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 劣 化 を 最 小 限 に 抑 え た が 、 電 子 分 光 器 の 透 過 率 は 追 加 グ リ ッ ド 電 極 に よ っ て 大 き く 落 ち 、 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 実 現 の 必 須 条 件 で あ る 、 エ ネ ル ギ
図 1-4.大 門 型 電 子 分 光 器 改 良 版[1-13]
改 良 版 。出 射 角 9 0 °方 向 に つ い て の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 問 題 を 、電 極 J お よ び 検 出 器 直 前 の グ リ ッ ド 電 極 を 設 置 す る こ と で 解 決 を 試 み る 。 複 雑 化 と 透 過 率 低 下 。 励 起 源 は 電 子 分 光 器 の 球 面 電 極 の 小 さ い 穴 を 通 し て 入 射 。
図 1-3. 初 期 型 大 門 型 電 子 分 光 器[1-10]
初 期 型 大 門 型 電 子 分 光 器 。 出 射 角 が 0 °、9 0 °お よ び 1 80 °方 向 に つ い て は エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 悪 く 、 特 に 9 0 °方 向 及 び 水 平 0°に つ い て は 致 命 的 な 欠 陥 で あ る と い え る 。
図 1-5 大 門 型 電 子 分 光 器 改 良 型[1-14]
最 終 改 良 版 。 各 部 の 電 極 を さ ら に 細 か く 分 割 さ せ る こ と で 分 光 器 を 最 適 化 。 さ ら な る 複 雑 化 と 分 光 器 サ イ ズ の 巨 大 化 。
ー の 違 い を 空 間 的 な 違 い に 変 換 す る と い う 重 要 な 機 能 を 垂 直 方 向 に つ い て は 全 く 解 決 さ れ な い ま ま と な っ た 。 大 門 ら は さ ら に 図 1-5 に 示 す よ う に 電 子 分 光 器 を 改 造 し 、 構 造 的 に も さ ら に 複 雑 な も の と な っ て し ま っ た [1-13、14]。
1-3. 新 型 電 子 分 光 器
前 節 に お い て 詳 述 し た 問 題 を 解 決 し 、 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 実 現 す べ く 、 新 型 電 子 分 光 器 を 設 計 し た 。 新 型 電 子 分 光 器 は 、 取 込 角 度 を エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 高 い 角 度 領 域 に お け る±20°( 立 体 角 0.12π)に 制 限 し 、大 門 型 電 子 分 光 器 が 直 面 し た エ ネ ル ギ ー 分 解 能 問 題 の 解 決 を 試 み た 。 こ れ に よ り 、 エ ネ ル ギ ー の 違 い を 空 間 の 違 い に 変 換 す る 、 と い う 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 必 須 の 機 能 が 実 現 可 能 と な っ た 。 新 型 電 子 分 光 器 と 大 門 型 電 子 分 光 器 の 決 定 的 な 違 い は こ の 点 に あ る 。 ま た 不 要 な グ リ ッ ド 電 極 を 配 置 さ せ な い こ と で 、 透 過 率 の 減 少 や グ リ ッ ド 部 に お け る 散 乱 等 に よ る 影 響 を 最 小 限 に 抑 え る こ と が 可 能 に な っ た 。
さ ら に 、 新 型 電 子 分 光 器 で は 取 込 角 度 を 制 限 し た こ と に よ り 、 試 料 周 り に 空 間 的 な 余 裕 が 出 来 た た め 、 市 販 の 励 起 源 を 容 易 に 取 り 付 け る こ と が 可 能 に な っ た 。 大 門 型 電 子 分 光 器 で は 、 電 子 分 光 器 側 よ り 一 次 励 起 ビ ー ム を 入 射 さ せ る こ と 設 計 と な っ て お り 、 事 実 上 放 射 光 等 の 強 度 の 強 い 励 起 源 の 使 用 が 前 提 と な っ て い る[1-14]。
新 型 電 子 分 光 器 は 分 光 器 内 部 で の パ ス エ ネ ル ギ ー を 一 定 の 値 と す べ く 、 入 口 に 減 速 グ リ ッ ド 電 極 を 配 置 し た 。各 グ リ ッ ド 電 極 の 透 過 率 は 88%で あ り 、 透 過 率 の 低 減 を 最 小 限 に す べ く 、2 つ の グ リ ッ ド が 試 料 点 か ら 見
て 完 全 に 重 な る よ う に 設 計 さ れ て お り 、2 つ の 電 極 を 通 し た 透 過 率 も 設 計 上 88%で あ る 。 ま た 、 本 電 子 分 光 器 は そ の 電 極 数 の 少 な さ か ら も 分 か る よ う に 、 初 期 の 大 門 型 電 子 分 光 器 が 持 ち 合 わ せ て い た 構 造 の シ ン プ ル さ を 引 き 継 い だ 設 計 と な っ た 。
1-4. 関 連 研 究 の 概 要
二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 の 角 度 を 最 適 な±20°の 取 込 立 体 角 に 制 限 す る こ と で 実 現 し た 新 型 電 子 分 光 器 を 、励 起 源 と し て 小 型 電 子 銃 を 用 い 、AES、 EELS、LEED の 手 法 に よ り 性 能 評 価 を 行 っ た 。Si(111)試 料 を 用 い た EELS 測 定 で は 、 弾 性 散 乱 ピ ー ク の 半 値 幅 よ り 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能ΔE/E=0.016
(ΔE:半 値 幅 )を 達 成 し た 。Si(111)の LEED 像 に お け る(00)ス ポ ッ ト 径 か ら 、0.5°以 下 の 角 度 分 解 能 を 達 成 し た 。 ま た 本 電 子 分 光 器 の 特 徴 で あ る 角 度 分 解 型 分 光 が 、 試 料 ZrB2(0001)を 用 い て 実 際 に 実 現 で き る こ と を 示 し た 。
次 に 、励 起 源 と し て He(I)お よ び He(II)紫 外 線 源 を 用 い て 、UPS 実 験 に お け る 性 能 評 価 を 行 っ た 。 タ ン タ ル 試 料 を 用 い た 常 温 に お け る フ ェ ル ミ 準 位 に お け る エ ネ ル ギ ー ス テ ッ プ 幅 の 測 定 か ら 、 電 子 分 光 器 の ア パ ー チ ャ ー サ イ ズ に 比 較 し て 、 有 限 の 大 き さ を 持 っ た 励 起 源 を 使 用 し た 場 合 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 評 価 し た 。 照 射 領 域 が ア パ ー チ ャ ー サ イ ズ と 同 等 の 時 は 、 電 子 銃 に よ る エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 再 現 し た が 、 そ の 照 射 領 域 が 大 き く な っ て し ま う 配 置 で は 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 悪 く な る こ と を 確 認 し た 。ま た HOPG の 角 度 分 解 UPS 像 を 取 得 し 、こ れ か ら エ ネ ル ギ ー 分 散 曲 線 を 作 成 し 、 理 論 計 算 結 果 と 比 較 を 行 う 実 験 も 実 施 し た 。σバ ン ド とπバ
ン ド 構 造 が 観 測 で き 、 波 数 の 大 き い 領 域 に お い て は 、σバ ン ド が 2 つ の ブ ラ ン チ に 割 れ る こ と も 確 認 で き た 。 さ ら に 、Γ点 を 通 る い く つ か の エ ネ ル ギ ー 分 散 面 を 比 較 す る こ と で 、HOPG の 面 内 方 向 に 関 す る 対 称 性 を 満 た す バ ン ド と な っ て い る こ と を 示 し た 。
最 後 に 、 本 分 光 器 の 最 大 の 特 徴 で あ る 同 時 角 度 分 解 型 分 光 を 活 か し た 実 試 料 に よ る 測 定 例 と し て 、 弾 道 放 出 電 子 エ ミ ッ タ ー の 角 度 分 布 を 測 定 し た 。 弾 道 放 出 電 子 エ ミ ッ タ ー の 各 運 動 エ ネ ル ギ ー に お け る 電 子 放 出 パ タ ー ン を 初 め て 取 得 し 、 エ ミ ッ シ ョ ン 分 布 の 角 度 依 存 性 が 観 察 さ れ た 。 エ ネ ル ギ ー 分 布 測 定 で は 、二 種 類 の ピ ー ク を 持 つ ス ペ ク ト ル が 確 認 さ れ 、 低 エ ネ ル ギ ー ピ ー ク を 持 つ エ ミ ッ シ ョ ン に つ い て は 指 向 性 が 高 く 、 高 エ ネ ル ギ ー ピ ー ク を 持 つ エ ミ ッ シ ョ ン に つ い て は 、 そ の ピ ー ク 形 状 は 低 電 場 駆 動 の 金 属-酸 化 物-半 導 体 (MOS) 型 エ ミ ッ タ ー か ら の 電 子 放 出 エ ネ ル ギ ー 分 布 と 比 較 的 近 い 形 状 で あ り 、 か つ 角 度 分 布 に お け る 広 が り を 持 っ た も の で あ っ た 。お よ そ 15V を し き い 値 と し て 、主 な 放 出 電 子 は 、低 エ ネ ル ギ ー ピ ー ク か ら 高 エ ネ ル ギ ー ピ ー ク へ と 、 そ の エ ネ ル ギ ー が 変 化 し た 。
1-5. 本 論 文 の 構 成
本 論 文 の 各 章 の 構 成 を 述 べ る 。
第 2 章 の 「 装 置 原 理 」 で は 、 本 研 究 で 設 計 し た 電 子 分 光 器 の 動 作 原 理 に つ い て 説 明 す る 。
第 3 章 の 「 装 置 概 要 」 で は 、 本 研 究 に お い て 製 作 し た 電 子 分 光 器 、 電 源 、 排 気 系 等 を 含 め た 装 置 全 体 の 構 成 に つ い て 説 明 す る 。
第 4 章 の 「 小 型 電 子 銃 に よ る 性 能 評 価 」 で は 、 実 験 デ ー タ と 計 算 に よ る 結 果 の 比 較 を 行 い 、 そ の 性 能 評 価 に 関 す る 結 果 を 示 す 。
第 5 章 の 「 角 度 分 解 型 紫 外 線 電 子 分 光 法 に よ る HOPG の バ ン ド 構 造 」 に お い て は 、 電 子 分 光 器 を 用 い て 、 角 度 分 解 型 紫 外 線 光 電 子 分 光 法
(ARUPS) に よ り 、HOPG の エ ネ ル ギ ー バ ン ド 構 造 を 見 事 に 確 認 で き た こ と を 示 す 。
第 6 章 の 「 弾 道 電 子 エ ミ ッ タ ー か ら の 電 子 放 出 パ タ ー ン 観 察 お よ び エ ネ ル ギ ー 分 布 測 定 」 で は 、 電 子 分 光 器 を 用 い て 、 弾 道 放 出 電 子 エ ミ ッ タ ー の 電 子 放 出 パ タ ー ン を 初 め て 取 得 し 、 そ の 特 性 評 価 の 結 果 を 示 す 。
第 7 章 の 「 ま と め 」 で は 、 本 論 文 を 総 括 し 、 今 後 の 課 題 及 び 展 望 に つ い て 論 じ る 。
第 2 章 電 子 分 光 器 の 概 要
本 章 で は 、 今 回 設 計 し た 新 型 電 子 分 光 器 の 動 作 原 理 お よ び 構 造 に つ い て 説 明 す る 。
2-1. 電 子 分 光 器 の 動 作 原 理
新 型 電 子 分 光 器 の 構 造 は 、 大 門 ら が 初 期 型 電 子 分 光 器 を 製 作 す る た め に 行 っ た も の と 同 様 の 軌 道 計 算 を 用 い て 行 っ た 結 果 か ら 判 断 し 、 最 適 化 し た も の で あ る 。 ま ず 大 門 ら も 行 っ た 軌 道 計 算[2-1]を 行 い 、 軌 道 計 算 よ り エ ネ ル ギ ー 分 解 能 と そ の 角 度 依 存 性 を 求 め 、 新 型 電 子 分 光 器 の 動 作 原 理 を 説 明 す る 。
2-1-1. 半 球 間 の 電 位 分 布
図 2-1 に 示 す よ う に S を 出 発 し て 、T に 到 達 す る 軌 道 を 計 算 す る 。 ま ず 内 半 球 ( 半 径 :a) と 外 半 球 ( 半 径 :b) の 間 に お け る 静 電 ポ テ ン シ ャ ルφは 、 動 径 方 向 r の み の 変 数 と し て 、Laplace 方 程 式
0 )
2 ( =
∇ φ r (2-1)
を 満 た す[2-2]。場 が 球 面 対 称 で あ る と し て 、半 球 の 電 圧 差( 内 半 球-外 半 球 ) を V と し た と き 、
0 )
1 2 (
2 ⎟=
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ r
dr r d dr
d
r φ (2-2)
V b r a
r = )− ( − )=
( φ
φ (2-3)
と 表 す こ と が で き る 。(2-2)よ り 、 C
dr r
r2 d φ( )=
∫
= − += .
)
( 2 const
r dr C
r r C φ
境 界 条 件(2-3)よ り 、
a V C b
C − =
aV b V ab a C b
= −
−
= 1 1)−1 (
r hV r V a b
r ab ≡
= − )
φ( (2-4)
ま た 、 電 場 E(r)に つ い て は 、 r r r hV
r r
E( )=−∇φ( )= 2 (2-5)
こ れ よ り 、a<r<b の 半 球 間 に お い て 、 電 子 は 逆 2 乗 力 に 比 例 す る 中 心 力 を 受 け 、Kepler の 運 動 を す る[2-3]。ま た 中 心 力(F=(-e)E)の み の 力 作 用 で あ る こ と か ら 、 角 運 動 量 が 保 存 さ れ る 。
2-1-2. 半 球 間 の 運 動
二 次 元 平 面 内 に お け る 中 心 力 場 に お け る 運 動 方 程 式 を 極 座 標 系(r-θ : 中 心 O、θの 基 準 線 OS)で 表 す と 、
図 2-1. 軌 道 計 算
O:電 極 半 球 中 心 、S:試 料 位 置 ( 二 次 電 子 発 生 位 置 )、T:電 子 フ ォ ー カ ス 位 置 ( ア パ ー チ ャ ー 配 置 位 置 )。半 径 a の 内 半 球 と 半 径 b の 外 半 球 の 間 に 放 射 方 向 に ポ テ ン シ ャ ル 分 布 あ り 。 内 半 球 内 は 等 電 位 空 間 。
dr d m
e m r F
r•− θ• = r = φ
• 2
(2-6) 0
2• •+ ••= = m r F
rθ θ θ (2-7)
(2-7)式 の 両 辺 に r を か け て 、 0 ) (
2 •θ•+ 2θ••= r2θ• = dt
r d r
r (2-8)
各 運 動 量 を l と し て 、 const.
2 • = ≡
m
r θ l (2-9)
と な り 、 各 運 動 量 保 存 を 意 味 し て い る 。 (2-9)を(2-6)に 代 入 し て 、θ• を 消 去 す る と 、
3 0
2
2 − =
•−
•
dr d m
e r m
r l φ
(2-10) と な り 、r の み を 変 数 と し た 方 程 式 が 求 ま る 。
次 に 、(2-10)の 両 辺 に r•を か け て 、
dr d dt dr m
e r m
l dr
d dt dr r
dt d
dr rd m
e r m r l r r
φ φ
− +
=
−
−
•
•
•
•
•
•
2 ) ( 2 )
( 2 2
2 2 3 2
2
0 ) 2 (
2 1 1
2 2
2 ⎟⎟=
⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ + −
= • r
m e mr r l
dt m d
m φ (2-11)
し た が っ て 、
const.
) 2 (
2 1
2 2 2
=
≡
−
• +
E r mr e
r l
m φ (2-12)
(2-12)に つ い て は 、 最 初 の 2 項 の 和 が 全 運 動 エ ネ ル ギ ー で 、 第 3 項 が 静 電 ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー で あ り 、 エ ネ ル ギ ー 保 存 を 表 し て い る 。 次 に 、 電 子 軌 道 を 変 数 r お よ びθを 用 い て 表 す 。(2-9)よ り 、
mdt d l r2 θ =
θ d
d mr
l dt d
= 2 (2-13)
(2-13)お よ び(2-4)を(2-12)に 代 入 し て 、 E r mr e
l d
dr mr
m l ⎟ + − =
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ ( )
2 2
1
2 2 2
2 φ
θ
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝⎛ +
=
⎟ +
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
r E ehV l
r mr d
dr
2 2 4
2 2
θ
2 2
2 4
r r E ehV l
mr d
dr ⎟−
⎠
⎜ ⎞
⎝⎛ + θ =
2 2
2 4
r r E ehV l
mr d dr
⎟−
⎠
⎜ ⎞
⎝⎛ +
θ = (2-14)
こ こ で 、
r =u1、 2 u
dr=−duと 変 数 変 換 を 行 っ て 、
( )
22
2 E ehVu u
l m d du
− +
θ = (2-15)
さ ら に 、
1 w2
d dw
= −
θ 、
l E m mehV
l mehV u
l w
2 2 2
2
1 2 1
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝ +⎛
≡ − (2-16)
と 変 換 す る と 、 こ の 積 分 に つ い て は 、
l E m mehV
l mehVu
l w w
dw
2 2 2
2 1
M 1
2 M
1 2 1 cos
1 cos
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝ +⎛
− +
= +
− =
=
∫
θ − θ −θ
l E m mehV
l mehVu
l
2 2 2
2 1
M
1 2 1 cos
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝ +⎛ + −
=θ − (2-17)
し た が っ て 、
⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝
⎛ ⎟ −
⎠
⎜ ⎞
⎝ + ⎛
−
=
= 1 1 2 cos( )
1
M 2
2 θ θ
mehV mE l
l u mehV
r (2-18)
(2-18)は 、 極 座 標 系 表 示 に お け る 二 次 曲 線 で あ り 、 原 点 ( 中 心 点 O) が そ の 焦 点 、平 方 根 で 表 さ れ て い る 部 分 が 離 心 率 に 相 当 す る 。θMは 楕 円 の 長 軸 の 方 向 を 表 す 積 分 定 数 で 、θM =∠SOMで あ る 。
2-1-3. 内 半 球 内 の 運 動
内 半 球 内 で は 電 位φ(r)一 定 で あ る た め 、 電 子 は 外 力 を 受 け な い 。 し た が っ て 、φ(r)= φ(a)=const.を(2-12)に 代 入 し て 、 同 様 の 計 算 を 行 う こ と に よ っ て 求 め ら れ る 。
) cos(
)) ( 2 (
1
2 + φ θ −θA
=
= E e a
l u m
r (2-19)
な お 、θA は 初 期 条 件 に よ っ て 決 ま る 。(2-19)は 極 座 標 形 式 に お け る 直 線 の 方 程 式 で あ る 。
2-1-4. 電 子 軌 道
電 子 軌 道 に つ い て は 、 前 項 お よ び 前 々 項 で 求 め た 方 程 式 を 具 体 的 な 初 期 条 件 を 導 入 す る こ と で 求 ま る 。S 点 よ り 出 射 し 、T 点 に 到 達 す る 電 子 軌 道 を 求 め る た め に は 、 内 半 球 内 入 口 区 間 ( 区 間 S-L)、 半 球 間 区 間 ( 区 間 L-N)、 内 半 球 出 口 区 間 ( 区 間 N-T)、 の 3 区 間 に つ い て そ れ ぞ れ 具 体 的 に 電 子 軌 道 を 求 め て つ な ぎ 合 わ せ れ ば よ い 。
2-1-4-A. 内 半 球 内 入 口 区 間 ( 区 間 S-L)
図 2-1 の よ う に 電 子 が 分 光 器 に 入 射 し た と す る と 、 初 期 条 件 は s
rt=0 = 、 rt=0 =v0cosα
•
、θt=0 =0、θ 0 0sinα s
t= =v
•
(2-20) (2-20)を 用 い て 、 エ ネ ル ギ ー お よ び 角 運 動 量 E お よ び l は 、
a mv ehV E= 02−
2
1 、l =msv0sinα (2-21)
(2-19)、(2-20)お よ び(2-21)よ り 、 本 区 間 に 電 子 軌 道 は 次 式 の よ う に 求 ま る 。
α θ α sin
) sin(
1 s r
= − (2-22)
メ ッ シ ュ 通 過 点 L お け る OL と 電 子 進 行 方 向 と の な す 角 をβと す る と 、 (2-21)の 角 運 動 量 保 存 則 よ り 、
α β sin
sin s
a = (2-23)
と な り 、L 点 に お け るθ =θL =∠SOMは 、(2-22)お よ び(2-23)よ り 、 β
α θ
θ = L = − (2-24)
2-1-4-B.半 球 間 区 間 ( 区 間 L-N)
本 区 間 に お い て も 、 エ ネ ル ギ ー お よ び 角 運 動 量 は 保 存 さ れ て お り 、 (2-21)と 同 じ 値 で あ る 。ま た 本 区 間 で の 初 期 条 件 は 、L 点 に お け る 連 続 性 に よ り 、
a
rL = 、 r•L =v0cosβ、θL =α −β 、θ 0sinβ a v
L =
•
(2-25) ま た 、 計 算 を 容 易 に す る た め 、 以 下 の 変 数 を 定 義 す る 。
2
2 0
1mv
EK ≡ (2-26a)
a E ehV
0 ≡ 2 (2-26b)
ehV amv E
EK 02
0
=
η≡ (2-26c)
こ れ を も ち い て 、 角 運 動 量 お よ び エ ネ ル ギ ー を 書 き 直 す と 、 β
η
α 2
0sin mehVa sin msv
l = = (2-27a)
a E ehV
E
E K
) 2 2 ( 2 0 = − +
= η (2-27b)
(2-27)を(2-18)に 代 入 し て 、
⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝
⎛ ⎟⎟ −
⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎟⎛
⎠
⎜ ⎞
⎝⎛ − +
−
= sin cos( )
) 2 2 ( 2 1 sin 1
1 1
M 2
2 η η β θ θ
β
η mehV
a a m ehV
a r
(
1 1 ( 2)sin cos( ))
sin 1
M 2
2 ηη β θ θ
β
η − + − −
= a
(
1 cos 1 ( 1) tan cos( ))
sin 1
M 2
2
2 β η β θ θ
β
η − + − −
= a (2-28)
こ こ で 、 記 述 を 容 易 に す る た め に 、 角 度 w を 次 の よ う に 定 義 す る 。 β
η 1)tan (
tanw≡ − (2-29)
(2-29)を(2-28)に 代 入 し て 、
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ − −
= cos( )
cos 1 cos sin
1 1
2 β θ θM
β
η w
a
r (2-30)
L 点 に お け る 初 期 条 件 を 代 入 し て 、 定 数θMを 求 め る と 、
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ − − −
= cos( )
cos 1 cos sin
1 1
2 β α β θM
β
η w
a
a (2-31)
(2-31)を 整 理 す る と 、
) cos(
)
cos(β+w = α−β−θM (2-32)
L
M θ
θ ≥ を 考 慮 し て 、
M =α+w
θ (2-33)
(2-33)を(2-30)に 代 入 し て 、
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ − − +
= cos( ( ))
cos 1 cos sin
1 1
2 w
w a
r β θ α
β
η (2-34)
2-1-4-C. 内 半 球 内 ア パ ー チ ャ ー 近 辺 区 間 ( 区 間 N-T)
(2-34)か ら 、 再 び 内 半 球 に 到 達 す る 点 N に お け る 座 標 情 報 は 、N と L が OM に 対 し て 対 称 な 位 置 に あ る こ と か ら 、
a
rN = 、θN =θM +(θM −θL)=α +β +2w (2-35)
本 区 間 の 電 子 軌 道 に つ い て は 、(2-19)お よ び(2-34)よ り 求 ま る 。計 算 に つ い て は 、 区 間 A と 同 様 に し て 、
α α θ
sin
)) 2 ( sin(
1
s
w r
+
= − (2-36)
2-1-5. 特 別 な 条 件 下 の 電 子 軌 道
前 項 で 求 め た 電 子 軌 道 に つ い て 、 本 項 で は 特 別 な 条 件 下 で の 軌 道 に つ い て 述 べ る 。OT=t =rθ =πと し た と き 、 (2-36)よ り
) 2 sin(
sin w t s
= + α
α (2-37)
と な る 。 ま た γ =∠OTNと し た と き 、OM に 関 す る ON と OL の 対 称 性 と (2-35)か ら 、
w +2
=α
γ (2-38)
こ こ でη = 1 の 場 合 に 制 限 す る と 、 w=0と な り 、(2-37)に 代 入 す る と 、 s
t= (2-39)
(2-39)は 、η = 1 の 条 件 下 に お い て 、 初 期 条 件 の 運 動 量 の 向 きαに よ ら ず 中 心 か ら の 距 離 s の T 点 に 収 束 す る こ と を 示 し て い る 。 こ の 特 徴 は 、 分 光 器 設 計 に お い て 非 常 に 有 利 で あ り 、ち ょ う ど T 点 に 分 光 器 の ア パ ー チ ャ ー を 配 置 す れ ば よ い こ と が 分 か る 。
次 に 、T 点 に 到 達 し た 電 子 の 進 行 方 向 と OT の な す 角γを 求 め る と 、η = 1 の 条 件 下 に お い て
α
γ = (2-40)
と な る 。 す な わ ち 、S 点 を 出 射 し た 電 子 の 角 度 情 報 が T 点 で も 保 存 さ れ て い る こ と を し ま す 。 こ の 性 質 は 角 度 分 解 型 測 定 に 有 利 で あ る 。
電 子 軌 道 が 最 も 中 心 点 よ り 遠 く に 到 達 す る の は 、θ =θMの と き で 、 そ の と き の 軌 道 半 径 は(2-34)よ り 、
β β
η cos cos
sin2 cos
max = −
w a w
r (2-41)
η = 1 の 条 件 下 に お い て は 、 )
cos 1
max =a( + β
r (2-42)
こ れ よ り 、外 半 球 の 半 径 を 内 半 球 の 半 径 の 2 倍(b = 2a)に 設 定 す れ ば 、 通 過 す べ き エ ネ ル ギ ー を 持 つ 電 子 は 外 半 球 に 衝 突 す る こ と な く 、T 点 に 到 達 す る こ と が 分 か る 。 ま たη = 1 お よ び b = 2a の 条 件 下 で は 、
1
0
=
=
≡ eV
E E
EK K
η (2-43)
と な り 、通 過 す る 電 子 の エ ネ ル ギ ー(eV)と 内 半 球-外 半 球 間 に 印 加 す る 電 圧(V)が 表 示 さ れ る 数 値 と し て 同 じ に な る こ と を 意 味 す る た め 、実 用 上 便 利 で も あ る 。
2-1-6. エ ネ ル ギ ー 分 解 能
前 項 で 求 め た 軌 道 計 算 を 用 い て 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 求 め 、 初 期 の 大 門 型 電 子 分 光 器 の 欠 点 と し て 持 つ エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 角 度 依 存 性 を 示 し [2-4]、 新 型 電 子 分 光 器 で は い か に し て そ の 問 題 を 解 決 し た か を 示 す 。
2-1-6-1. 初 期 型 大 門 型 電 子 分 光 器 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能
初 期 大 門 型 電 子 分 光 器 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 関 す る 出 射 角 依 存 性 を 求 め る た め 、 角 度αで 表 し た 式 をγで表 した式 に変 換 する。(2-37)、(2-38)よ り 、
γ γ sin
) 2 sin( w
t= s − (2-44)
分 光 器 内 を 通 過 す る 電 子 の エ ネ ル ギ ー が 微 少 量ΔEK だ け 異 な っ た と き に 、 電 子 の 到 達 す る 位 置 がΔt だ け 異 な っ た と す る と 、
w s s s
t
t≡ − = − −
Δ γ
γ sin
) 2
sin( (2-45)
こ こ で 、w に 関 し て 展 開 す る と 、
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ + +⋅ ⋅⋅
=
Δ 2
cos 2s wsin w
t γ
γ (2-46)
w が 十 分 に 小 さ い と 考 え る と 、(2-29)よ り
γ γ
2 2
0 2 sin
sin s a
s E
w EK
−
= Δ (2-47)
(2-47)を(2-46)に 代 入 し て 、3 次 以 上 の 項 を 無 視 す る と 、
2
0 2
2 2
2 3
2 0 2 2
2
sin sin 2 sin
cos
2 ⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ Δ + −
Δ
= −
Δ E
E s
a s E
E s
a
t s K K
γ γ γ
γ (2-48)
(2-48)よ り 、γ =90Oの 時 は 、 第 一 項 が 0 と な る た め に 1 次 の 分 散 が な く 、 2 次 か ら は じ ま る た め 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 悪 く な る こ と が 分 か る 。 (2-48)を
E0
EK
Δ に つ い て 解 く と 、
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ + Δ −
= −
Δ γ γ γ
γ
γ 2 sin cos
sin cos 2
sin 2 2
2 2 2 2
0 s
t s
s a E
EK
(2-49)
T 点 を 中 心 と し 、OS 方 向 に 径 方 向 を 持 っ た 分 光 器 ア パ ー チ ャ ー ( 幅 A)
の 設 置 を 仮 定 し た と き の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 R=
E0
EK
Δ を 求 め る と 、 エ ネ ル
ギ ー 幅 を 2ΔEKと な る こ と を 考 慮 し て 、 次 の よ う に な る 。
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ + −
= − γ γ γ
γ
γ cos sin cos sin
sin 2 2
2 2 2 2
s A s
s
R a (2-50)
γ =0Oの 時 は s R aA
= 2 (2-51)
γ =90O の 時 は 、
3 2
2 )
( s
A s
R= a − (2-52)
と な る 。(2-50)、(2-51)か ら 分 か る よ う に 、γ =0Oお よ び 90Oの 時 は 一 次 の 分 散 項 が 消 え る た め 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 悪 く な る 。 し た が っ て 、 出 射 角 度 を 0~180 Oま で 全 範 囲 を 使 用 す る と 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 に お け る 角 度 依 存 性 に よ り 、エ ネ ル ギ ー 分 解 能 劣 化 の 問 題 が 発 生 す る こ と が 分 か る 。 2-1-6-2. 新 型 電 子 分 光 器 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能
新 型 電 子 分 光 器 で は 、 前 項 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 計 算 結 果 か ら 、 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 出 射 角 依 存 性 が 小 さ く な る よ う に 、図 2-2 に 示 す よ う に 、α を 106.9 O~146.9 Oと ±20°の 範 囲 に 制 限 し た 。 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 計 算 に つ い て は 、 前 項 の 計 算 が そ の ま ま 適 用 で き る が 、T 点 に 設 置 す る ア パ ー チ ャ ー の 向 き が 36.9°と な る よ う に 配 置 さ れ て い る た め 、 図 2-3 で 示 さ れ て い る よ う に 、ア パ ー チ ャ ー 中 心 か ら の 電 子 到 達 位 置 の ず れΔt’を 計 算 す る た め に は 、前 項 で 求 め たΔt に 、次 式 の 正 弦 定 理 か ら 求 ま る 変 換 を 行 う 必 要 が あ る 。
) 9 . 36 sin(
) sin(
'
− o
= Δ
− Δ
γ γ
π
t
t (2-52)
(2-45)、(2-52)か ら
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ − −
− ⋅
=
Δ 1
sin ) 2 sin(
) 9 . 36 sin(
' sin o
γ γ γ
γ w
t s (2-53a)
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ −
⋅ +
− +
= +
Δ 1
) 2 sin(
sin )
9 . 36 2 sin(
) 2
' sin( o
w w
w t s
α α α
α (2-53b)
図 2-2. 新 型 分 光 器 入 射 角 度 範 囲
O:電 極 半 球 中 心 、S:試 料 位 置 ( 二 次 電 子 発 生 位 置 )、A:電 子 フ ォ ー カ ス 位 置 ( ア パ ー チ ャ ー 配 置 位 置 )。 半 径 a の 内 半 球 と 半 径 b の 外 半 球 の 間 に 放 射 方 向 に ポ テ ン シ ャ ル 分 布 あ り 。 内 半 球 内 は 等 電 位 空 間 。 出 射 方 向 を 1 0 6 . 9 O~1 4 6 .9 Oと±2 0 °の 範 囲 に 制 限 し た 。
本 式 を 用 い て 、 前 項 と 同 様 の 計 算 を 実 行 す れ ば 、 新 型 電 子 分 光 器 に 関 す る エ ネ ル ギ ー 分 解 能 計 算 値 が 求 ま る 。
図 2-4 は 、(2-52)の ア パ ー チ ャ ー 向 き を 考 慮 し た 場 合 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 角 度 依 存 性 を 示 し て い る 。 横 軸 に 出 射 角 度 、 縦 軸 は 分 光 器 内 の 電 子 通 過 エ ネ ル ギ ー 設 定 値 E0 と ア パ ー チ ャ ー 穴 を 実 際 に 通 過 で き る 電 子 の
エ ネ ル ギ ー 分 布 幅ΔE の と し た と き の E0
ΔE
を 示 し 、 計 算 に お い て は 図 2-1 お よ び 2-2 に お け る 内 半 球 半 径 a = 60 mm、外 半 球 半 径 b = 120 mm、s = OS
= OT= 50 mm と し 、 ア パ ー チ ャ ー 径 を 1mm、0.3mm、0.1mm の 3 条 件 に 図 2-3. Δt’とΔt の 関 係
出 射 方 向 を 1 0 6 .9 O~14 6 . 9 Oと± 20 °の 範 囲 に 制 限 し た た め、ア パ ー チ ャ ー 中 心 か ら の 電 子 到 達 位 置 の ず れΔt’を 計 算 す る た め に は 、前 項 で 求 め たΔt に 正 弦 定 理 か ら 求 ま る
お い て 計 算 を 行 っ た 。
図 2-4 よ り 、(1)出 射 角 度 を 90°付 近 お よ び 180°付 近 で は エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 著 し く 悪 く な っ て い る 、(2)130° 付 近 で は 、 角 度 依 存 性 が 最 小 で あ り 、か つ 分 解 能 が 最 も よ く な っ て い る 、(3)小 さ い ア パ ー チ ャ ー サ イ ズ で は 、 広 範 囲 な 出 射 角 度 に お い て も 角 度 依 存 性 の 影 響 が 小 さ い 、 と い う こ と が 分 か る 。 ま た 新 型 電 子 分 光 器 で 設 定 し た 106.9~146.9°と い う 範 囲 に つ い て の 妥 当 性 も 示 さ れ て い る 。
2-1-7. 新 型 電 子 分 光 器 の 電 子 軌 道
新 型 電 子 分 光 器 に つ い て の 、 異 な る エ ネ ル ギ ー に お け る 電 子 軌 道 を 図 2-5 に 示 し た 。そ れ ぞ れ の 軌 道 に つ い て は 、通 過 エ ネ ル ギ ー の 電 子 軌 道 、 通 過 エ ネ ル ギ ー の 95 パ ー セ ン ト の 電 子 軌 道 、通 過 エ ネ ル ギ ー の 105 パ ー セ ン ト の 電 子 軌 道 の 3 つ を 示 し て い る 。 図 2-5 よ り 2 つ の 事 実 が 明 確 に な っ て い る 。 第 一 点 に 、 通 過 エ ネ ル ギ ー を 持 つ 電 子 に つ い て は 、 ア パ ー チ ャ ー 面 に お い て そ の 電 子 軌 道 群 が 完 全 に 収 束 し て お り 、 そ の 一 方 で 通 過 エ ネ ル ギ ー と 異 な る 電 子 に つ い て は 、 ア パ ー チ ャ ー 面 に お い て 電 子 軌 道 群 が 完 全 に フ ォ ー カ ス し て い な い 点 で あ る 。 第 二 点 に 、 エ ネ ル ギ ー の 違 い に よ っ て 、 フ ォ ー カ ス 点 が ア パ ー チ ャ ー 面 内 上 で 分 離 し て い る 点 で あ る 。 こ の 二 つ の 事 実 は 、 高 性 能 な 電 子 分 光 器 に お い て は 重 要 な 性 質 で あ り 、 前 者 は そ の 信 号 強 度 に 寄 与 し 、 後 者 は そ の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 に 寄 与 す る 。
2-2. 新 型 電 子 分 光 器 の 構 造
前 項 に お い て 説 明 し た 新 型 電 子 分 光 器 の 原 理 に 基 づ い て 、 実 際 に 設 計
図 2-4. エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 角 度 依 存 性
出 射 角 度 を 90 °付 近 お よ び 1 8 0 °付 近 で は エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 著 し く 悪 く な っ て い る 。13 0 °付 近 で は 、 角 度 依 存 性 が 最 小 で あ り 、 か つ 分 解 能 が 最 も よ く な っ て い る 。 小 さ い ア パ ー チ ャ ー サ イ ズ で は 、 広 範 囲 な 出 射 角 度 に お い て も 角 度 依 存 性 の 影 響 が 小 さ い 。 新 型 電 子 分 光 器 で 設 定 し た 1 0 6. 9~1 4 6. 9 °と い う 範 囲 に つ い て の 妥 当 性 も 示 さ れ て い る 。
図 2-5.エ ネ ル ギ ー の 違 い に よ る 電 子 軌 道
通 過 エ ネ ル ギ ー を 持 つ 電 子 に つ い て は 、 ア パ ー チ ャ ー 面 に お い て そ の 電 子 軌 道 群 が 完 全 に 収 束 し て お り 、 そ の 一 方 で 通 過 エ ネ ル ギ ー と 異 な る 電 子 に つ い て は 、 ア パ ー チ ャ ー 面 に お い て 電 子 軌 道 群 が 完 全 に フ ォ ー カ ス し て い な い 。 エ ネ ル ギ ー の 違 い に よ っ て 、 フ ォ ー カ ス 点 が ア パ ー チ ャ ー 面 内 上 で 分 離 し て い る 。 こ の 二 つ の 電 子 分 光 器 と し て の 機 能 は 、 高 性 能 な 電 子 分 光 器 に お い て 必 須 で あ り 、 信 号 強 度 お よ び エ ネ ル ギ ー 分 解 能 に 影 響 す る
し た 電 子 分 光 器 の 模 式 図 を 図 2-6 に 、 内 部 構 造 の 写 真 を 図 2-7 に 示 す 。 本 電 子 分 光 器 は 、 取 込 角 度±20º、 す な わ ち 取 込 立 体 角 0.12πで あ る 。
主 な 構 成 部 と し て 、 減 速 レ ン ズ 部 、 分 光 器 本 体 部 、 検 出 器 部 の 3 つ で あ る 。 減 速 レ ン ズ 部 は 、2 枚 の 同 心 球 状 グ リ ッ ド メ ッ シ ュ か ら 構 成 さ れ て い る 。 ハ イ パ ス フ ィ ル タ ー と し て 機 能 を 持 ち 、 測 定 対 象 と す る 運 動 エ ネ ル ギ ー を 持 つ 電 子 を 分 光 器 内 通 過 可 能 な パ ス エ ネ ル ギ ー ま で 減 速 さ せ る こ と で 、 一 定 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 で の 測 定 を 可 能 に し て い る 。 そ れ ぞ れ の グ リ ッ ド メ ッ シ ュ の 透 過 率 は 88%で あ り 、2 枚 合 わ せ て も 透 過 率 が 88%と な る よ う に 、 そ れ ぞ れ の グ リ ッ ド メ ッ シ ュ の 球 中 心 、 す な わ ち 試 料 点 か ら 視 点 で メ ッ シ ュ 形 状 が 完 全 に 重 な る よ う な 設 計 と な っ て い る 。 分 光 器 本 体 部 は 、 内 半 球 電 極 (a = 60mm)、 外 半 球 電 極 (b = 120mm)、
終 端 電 場 補 正 の た め の ガ ー ド リ ン グ 電 極 、 上 下 方 向 の 終 端 電 場 調 整 と し て の 松 田 プ レ ー ト 、 お よ び 1mm 径 の ア パ ー チ ャ ー よ り 構 成 さ れ て い る 。 実 際 に 用 い た ア パ ー チ ャ ー 部 品 の 写 真 を 図 2-8 に 示 す 。分 光 器 本 体 部 は 、 前 項 で 行 っ た 計 算 と 直 接 関 係 す る 部 分 で も あ り 、 本 電 子 分 光 器 の 最 も 重 要 な 部 分 で あ る 。検 出 器 部 は 2 段 型 マ イ ク ロ チ ャ ン ネ ル プ レ ー ト(MCP) と 蛍 光 板 よ り 構 成 さ れ て い る 。 検 出 器 部 の 写 真 を 図 2-9 に 示 す 。 本 分 光 器 の 持 つ 「 角 度 情 報 の 保 存 」 の 特 徴 を 最 大 限 に 生 か す べ く 、 二 次 元 面 内 の 分 布 を 直 接 観 察 が 可 能 で あ る 。
本 分 光 器 の 各 電 極 表 面 に は 、 ア ク ア ダ ッ ク 処 理 を 施 し て い る 。 ア ク ア ダ ッ ク は 、ア ル コ ー ル に 溶 解 し て い る コ ロ イ ド 状 の グ ラ フ ァ イ ト で あ る 。 ア ク ア ダ ッ ク 処 理 を 施 す こ と で 、 金 属 表 面 よ り も 表 面 で の ポ テ ン シ ャ ル を 均 一 に す る 、 電 極 表 面 上 の 酸 化 物 を コ ー テ ィ ン グ す る 、 各 電 極 に 衝 突 す る 電 子 が 散 乱 に よ り 再 度 空 間 内 へ 飛 び 出 す 確 率 を 小 さ く す る 、 二 次 電
図 2-6.電 子 分 光 器 概 要
O:電 極 半 球 中 心 、S:試 料 位 置 発 ( 二 次 電 子 発 生 位 置 )、A:電 子 フ ォ ー カ ス 位 置 ( ア パ ー チ ャ ー 配 置 位 置 )。S 点 よ り 出 射 し た 電 子 は 減 速 レ ン ズ 系 に お い て 、 測 定 対 象 と す る 運 動 エ ネ ル ギ ー を 持 つ 電 子 を 分 光 器 内 通 過 可 能 な パ ス エ ネ ル ギ ー ま で 減 速 さ せ る 。内 半 球 メ ッ シ ュ を 通 過 し た 電 子 の う ち パ ス エ ネ ル ギ ー ま で 減 速 さ れ た 電 子 の み 、 分 光 器 本 体 部 に お い て 図 2 -5 に 示 さ れ る と お り の 軌 道 を 通 り 、ア パ ー チ ャ ー 上 に フ ォ ー カ ス さ れ て 通 過 す る 。ア パ ー チ ャ ー を 通 過 し た 電 子 は 、S 点 を 出 射 し た 時 の 角 度 分 布 を 保 存 し た ま ま 、 マ イ ク ロ チ ャ ン ネ ル プ レ ー ト 上 の 各 点 に 到 達 し て 検 出 さ れ る 。
図 2-7.電 子 分 光 器 写 真
電 子 軌 道 面 と 接 す る 電 極 表 面 に つ い て は 、 す べ て ア ク ア ダ ッ ク 処 理 が な さ れ て い る 。
子 の 発 生 を 抑 え る 、 な ど の 効 果 が あ る 。 ま た 電 子 分 光 器 の 性 能 が 外 部 環 境 磁 場 よ っ て 劣 化 し な い た め に 、厚 さ 1mm の 焼 鈍 処 理 を し た PC パ ー マ ロ イ で 磁 気 シ ー ル ド を 施 し た 。図 2-10 に ア ク ア ダ ッ ク 処 理 お よ び 磁 気 シ ー ル ド を 施 し た 電 子 分 光 器 の 様 子 を 示 す 。
2-3.電 子 分 光 器 の 特 徴
新 型 電 子 分 光 器 の 特 徴 は 、(a)取 込 角 度 が ±20° ( 取 込 立 体 角 0.12π) と 大 き い こ と 、(b)高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 実 現 に は 不 可 欠 な「 エ ネ ル ギ ー の 違 い を 空 間 的 な 分 散 に 変 換 す る 」と い う 機 能 を 持 っ て い る こ と 、(c)試 料 周 り に 十 分 な 空 間 が あ る た め 商 用 の 励 起 源 が 使 用 可 能 で あ る こ と 、(d) 入 射 電 子 の 角 度 情 報 が 保 存 さ れ て 検 出 さ れ る こ と 、 の 4 つ で あ る 。
(a)取 込 角 度 に つ い て 、 一 般 的 に 普 及 し て い る 同 心 鏡 型 電 子 分 光 器
(CMA) と 同 心 半 球 型 電 子 分 光 器 (CHA) と 比 較 を 行 っ て み る 。 同 心 鏡 型 電 子 分 光 器(CMA)の 取 込 立 角 が 42.6°を 中 心 と し た±6ºで あ り 、立 体 角 0.14πで あ る 。 同 心 半 球 型 電 子 分 光 器 (CHA) は 、 取 込 角 度 約 2ºの も の が 一 般 的 で あ り 、 取 込 立 体 角~10- 3πと な る 。 初 期 大 門 型 二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 角 度 依 存 性 を 最 小 限 に 抑 え る べ く 取 込 角 度 を±20ºに 制 限 し た が 、 そ れ で も 取 込 立 体 角 は CMA と 同 等 の も の で あ り 、 十 分 に 大 き い と い え る こ と が 分 か る 。
(b)「 エ ネ ル ギ ー の 違 い を 空 間 的 な 分 散 に 変 換 す る 」と い う 機 能 は 、CHA や CMA で も 用 い ら れ て お り 、 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 実 現 の た め に は 事 実 上 必 須 と い え る 。初 期 大 門 型 電 子 分 光 器 に お い て は 、2-1-6 項 で 示 し た 通 り 、エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 角 度 依 存 性 が 大 き く 、特 に 90°お よ び 0、180° の 角 度 方 向 で は エ ネ ル ギ ー 分 解 し な く な る 。 本 問 題 を 解 決 す る た め に 、
図 2-9.検 出 器 図 2-8.ア パ ー チ ャ ー
図 2-10. 電 子 分 光 器
電 子 分 光 器 は パ ー マ ロ イ に よ っ て 磁 場 遮 蔽 さ れ て い る 。 取 り 付 け フ ラ ン ジ サ イ ズ は I CF3 5 6 で あ る 。
大 門 ら は バ ン ド パ ス ィ ル タ ー と な る グ リ ッ ド や 障 壁 レ ン ズ 等 の 追 加 し 、 取 込 角 度 の 大 き さ を 維 持 す る 方 法 で 対 策 を 取 っ た が 、 こ れ ら は 高 エ ネ ル ギ ー 分 解 の 実 現 の た め の 必 須 の 「 エ ネ ル ギ ー の 違 い を 空 間 的 な 分 散 に 変 換 す る 」 と い う 機 能 を 失 い 、 分 光 器 の 構 造 を 複 雑 化 さ せ た 。 一 方 で 、 新 型 電 子 分 光 器 で は 、 入 射 角 度 を 最 適 な 方 向 の±20ºに 制 限 し た こ と に よ っ て 、 上 記 の 機 能 を 持 た せ る こ と が 可 能 と な っ て い る 。
(c)新 型 電 子 分 光 器 で は 、 入 射 角 度 を±20ºに 制 限 し た こ と で 、 試 料 周 り に 十 分 な 空 間 が あ り 、 商 用 的 な 励 起 源 を 取 り 付 け る こ と が 可 能 と な っ た 。 取 込 角 度 が 究 極 的 に 大 き い 大 門 型 電 子 分 光 器 は 、 分 光 器 内 部 を 通 過 さ せ る 形 で 励 起 源 を 試 料 に 照 射 さ せ る 方 法 を 取 ら ざ る を 得 な い た め 、 必 然 的 に 強 度 の 強 い 放 射 光 を 励 起 源 と し て 使 用 す る こ と に な り 、 汎 用 性 と い う 点 が 難 点 と な る 。
(d)角 度 情 報 が 保 存 さ れ て 検 出 さ れ る の は 、2-1-5 項 の 計 算 で 示 し た こ と か ら も 分 か る 。 こ の 性 質 は 角 度 分 解 型 分 光 測 定 に 非 常 に 有 利 な も の で あ り 、 検 出 器 上 で の 二 次 元 分 布 を 観 察 す る こ と で 、 同 時 に 角 度 分 布 情 報 が 得 ら れ る 。こ れ の 性 質 に よ り 、CHA な ど を 用 い た 角 度 分 解 測 定 と 比 較 し て 、 そ の 測 定 時 間 が 非 常 に 短 く す る こ と が 可 能 で あ る 。 本 特 徴 は 二 次 元 表 示 型 電 子 分 光 器 に 共 通 な も の で あ る 。