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高尿酸血症と腎機能障害

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Academic year: 2022

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高尿酸血症の腎・尿路系合併症としては,尿酸 結晶の産生に関連した痛風腎や尿路結石などが知 られている.一方,近年の基礎及び臨床研究から,

高尿酸血症による尿酸結晶形成とは異なる機序に よる腎障害への関連が明らかになってきている.

近年の研究から,家族性若年性高尿酸血症性腎症 の原因遺伝子としてのuromodulinの発見や尿酸ト ランスポーターABCG2の異常による腎外排泄低 下型高尿酸血症などが報告されている.また,大 規模疫学研究の結果においても高尿酸血症と腎機 能低下が関連することが報告されている.

組織学的な検討として,高尿酸血症の程度に応 じで腎の細動脈硬化が進行するとの報告がなされ ている.我々は,糖尿病性腎症の腎生検例323例 における血清尿酸値と腎組織所見,腎予後との関 連を検討した.腎生検時の尿酸値により3群に分 け検討を行った.その結果,血清尿酸値が高いほ ど腎組織所見の悪化を認め,硝子化スコア,動脈 硬化スコアともに高値であった.また,血清尿酸 値が高いほど腎機能は低下していた.

コホート研究を対象としたメタ解析において,

尿酸値が1.0 mg/dL上昇すると慢性腎臓病(CKD:

eGFR 60 mL/min/未満)の発症リスクが1.22倍と なることが2014年に報告された.我々は日本人 男性41,632人を対象とした検討を行った.対象は 正常腎機能(eGFR 60 mL/min以上)とし,平均年 齢は45.4歳で,平均尿酸値は6.0 mg/dLであった.

平均観察期間は4年で,期間中に3186人(7.6%)

がCKDを発症した.尿酸値4.0~4.9 mg /dLの群

に比べ,尿酸値6.0~6.9 mg/dLおよび7.0 mg/dL 以上の群のCKD発症のリスクはそれぞれ1.24倍,

1.23倍であり,腎機能低下速度も有意に大きかっ た.その傾向は腎機能軽度低下群(eGFR 60-89 ml/min)でより顕著であった.

一方で,高尿酸血症に対する治療介入により,

腎機能障害の進展を抑制できる可能性がある.

アロプリノールの介入効果を検討したメタ解析が 報告され,治療介入により,血清クレアチニンを 低下させ,CKD進行を遅らせる可能性が示され ている.最近では,フェブキソスタットなどの新 規XO阻害薬の有効性・安全性も検討が進められ てきている.しかしながら,これらの新規薬剤に 関しても,いまだ十分な規模での検討は不足して おり,現在行われている多施設共同,プラセボ対 照,二重盲検ランダム化比較試験(FEATHER試 験)などの結果が待たれるところである.

高尿酸血症が腎機能障害の原因となるものの,

治療介入によりその病態が改善することが示唆さ れてきた.新規薬剤の有効性も含め,今後の追加 研究および検討結果が待たれる.

金沢大学附属病院 腎臓内科 Shinji Kitajima, Tadashi Toyama, Akinori Hara, Yasunori Iwata Norihiko Sakai, Miho Shimizu, Kengo Furuichi, Takashi Wada

北島 信治  遠山 直志  原  章規 岩田 恭宜  坂井 宣彦  清水 美保 古市 賢吾  和田 隆志

高尿酸血症と腎機能障害

~腎障害進展との関連と新規尿酸降下薬の可能性~

シンポジウムⅡ−2

162 痛風と核酸代謝 第40巻 第 2 号(平成28年)

参照

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