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論文 鋼橋 RC 床版の ASR 劣化に伴うひび割れ発生に関する一考察

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(1)

論文 鋼橋 RC 床版の ASR 劣化に伴うひび割れ発生に関する一考察

青山實伸

*1

・有馬直秀

*2

・川村満紀

*3

要旨:鋼橋RC床版でASR劣化が進行した場合,床版内部に水平方向のひび割れが発生することが報告され ている。この事象を解明するためにRC床版をモデル化してFEM解析を実施した。その結果,コンクリート 内部のASR劣化に伴う非膨張層や膨張の活発な層の存在によって,ASR膨張により床版内部の上下方向に引 張応力が発生して水平方向ひび割れの発生要因になることが推察された。ASRに伴うひび割れ発生は床版内 において非膨脹層と膨張の活発な層が存在することと深く関係し,このASR劣化の特徴を勘案してFEM解 析を行うことによって,劣化に伴うひび割れ発生の推定が可能であることを明らかにした。

キーワード:ASR,RC床版,水平ひび割れ,FEM解析

1. はじめに

ASR に よ っ て 劣 化 し た 構 造物 を 適 切 に 補 修 し 維 持 管 理を行うためには,ひび割れ発生の特徴を踏まえた劣化 現象を把握することが重要になる。

温 度 お よ び 湿 度 を 正 確 に 管 理 し た 条 件 下 に お け る 鍵 本らの研究

1)

では,ASR膨張はコンクリート内部の相対 湿度分布と密接に関係し,高い相対湿度が維持されてい るコンクリート内部ではASR膨張が継続するが,表面近 傍では徐々に相対湿度が低下するので ASR 膨張ひずみ が低減することを,大型コンクリート円柱(φ450 mm ×

900 mm)を用いた実験によって明らかにし,その結果,

コンクリート円柱表面近傍に発生する引張応力により表 面ひび割れ(巨視ひび割れ)が生じることを明らかにし ている。また,再飽和過程においてはASR膨張が低減し た表層よりさらに内部の表面からの深さ約100 mmの中 間領域は,それより内部よりASR膨張が活発に進行する ことを見出している

1

。著者らは,自然条件下にあった 実際の橋脚パラペット部材の切断面におけるひび割れ発 生状況やASRゲルの観察,内部の相対湿度の測定を行っ た結果,鍵本らの研究における表面ひび割れと同様な過 程を経て生じたと推察される巨視ひび割れが存在してい ることを確認している

2

。 これまでに著者らは

3

,ASR劣化の生じたカルバート の垂直壁端面の無補強コンクリート部材中央部表面の縦 方向に生じた幅の大きなひび割れは,ある深さになると 約 90° 方 向 を 変 え て コ ン ク リ ー ト 表 面 に 平 行 に 進 展 す ることを観察している。そこで,現地における調査結果 と鍵本らの研究結果を踏まえた,2次元モデルのFEM解 析を実施し,非膨張層と活発なASR膨張を示す中間層の 存在が,ひび割れの方向を約90°変化させる事象の要因 であることを明らかにした。

ここでは,新たに鋼橋RC床版のASR劣化に伴う水平

ひび割れの発生に関して,RC 床版の立体モデルを作成 して,モデルでは非膨張層と活発なASR膨張を示す中間 層を設定し,それに基づいて実施した FEM 解析の結果 に対して考察を加えた。

2. 鋼橋RC床版の概要とASR劣化 2.1 鋼橋RC床版の概要

検討の対象となるRC床版の構造を図-1に示す。床 版は,3m間隔の主桁に支持される床版厚220 mmの鉄筋 コンクリート版で,主桁上の版厚は300 mmでハンチが 設けられている。床版上面には,75 mm厚のアスファル ト舗装が敷設されている。主桁は対傾構よって主桁の面 外方向の変形が拘束されている

コンクリート設計基準強度は24 N/mm2である。コン クリートの示方配合を表-1 に示す。支間中央部の床版 下側にはD19 mm鉄筋が125 mm間隔,床版上側ではD19

mm鉄筋が250 mm間隔で配置されている。主桁上の支

点部の床版上側にはD19 mm鉄筋が125 mm間隔,床版

下側ではD19 mm鉄筋を,250 mm間隔で配置されてい

る。

図-1 鋼橋RC床版の構造

*1 中日本ハイウエイ・エンジニアリング名古屋(株)金沢支店 道路技術部 上席調査役 博士(工) (正会員)

*2 中日本ハイウエイ・エンジニアリング名古屋(株)金沢支店 道路技術部 構造技術課 係長 (正会員)

*3 中日本ハイウエイ・エンジニアリング名古屋(株)金沢支店 特別技術顧問 金沢大学名誉教授 工学博士 (名誉会員) 表-1 RC床版コンクリートの示方配合 水W

(kg)

セメント C(kg)

W/C (%)

粗骨材G (kg/m3)

細骨材S (kg/m3)

減水剤 (kg/m3)

160 300 53 1,108 750 0.75

コンクリート工学年次論文集,Vol.39,No.1,2017

(2)

図-2 RC床版の圧縮強度の頻度分布

図 -4 コアの静 弾性係 数 /圧縮 強度比 および 静弾性 係数 と圧縮破壊時最大ひずみとの関係

2.2 鋼橋RC床版のASR劣化 (1) 圧縮強度・静弾性係数

ASR 劣 化 発 生 地 域 と さ れ てい る 富 山 県 内 の 北 陸 自 動 車 小矢部IC~朝日IC間にある建設後35~45年経過し た13橋梁で,RC床版から径55 mm×長さ約150 mmの コアを採取して求めた圧縮強度と静弾性係数の測定値の 頻度分布を図-2および図-3に示す

4)

図-2および図-3に示す記号nはコア数,mは測定 値の平均値,s は測定値が正規分布とした場合の標準偏 差値を示している。圧縮強度の頻度分布の平均値と標準 偏差値より設計基準強度24 N/mm2を下回る確率は 3 % と推定される。弾性係数は,道路橋示方書

5)

に与えられ ている値 2.5×10-4 N/mm2と比較すると低下している傾 向にある。

図-4の上段は,コアの静弾性係数/圧縮強度比と圧縮 破壊時の最大ひずみとの関係を示す。静弾性係数と圧縮 破壊時の最大ひずみの関係をプロットすると下段のよう な図になる。両者間には比較的良好な相関性があり,静 弾性係数が小さくなると圧縮破壊時の最大ひずみは大き くなる。ASR劣化が進行すると微視ひび割れ

1

が増加し

図-3 RC床版の静弾性係数の頻度分布

図-5 RC床版内部の水分率分布の測定結果

て静弾性係数が小さくなり,微視ひび割れの増加に伴っ て圧縮破壊時の最大ひずみが増大すると考える。これら の特性値はASR劣化進行程度を示す有効な指標になる。

図より,RC 床版部材においては静弾性係数は低下し,

圧縮破壊時の最大ひずみが増大していることがわかる。

このことは床版では ASR 劣化が進行していることを示 している。

(2) RC床版内部の湿度分布

RC 床版は部材厚の小さい構造物であるが,年間を通 じて湿度の高い地域では,床版内部の湿度が高いことが 報告されている

6

。建設後40年経過した北陸自動車道の RC床版内部の水分率分布の測定結果を図-5に示す。測 定は径3mmの孔を30mm間隔で2本削孔して,深さご とに孔と孔の間の水分率をコンクリート水分計(HI-800) を用いて実施した。図より床版下面の表面付近は水分率 が最も小さく,深さ40mm程度まで漸増し,40mm~70mm 間で急増して,それ以深は僅かに増加傾向を示している。

この結果,RC床版内部の約60mm以深は湿度が高くASR 反応が継続する環境にあることが推察される。なお,測 定位置の中性化深さは約20mmである。

(3) ASR劣化床版中のひび割れ

RC床版のASR劣化が進行すると水平ひび割れが発生 すると報告されている。

小林らは

7

,山間寒冷地にあった鋼橋RC床版の撤去 床版を詳細に調査している。RC床版切断面に観察され y = -0.18x + 1,170

R² = 0.60

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400

静弾性係数/圧縮強度

y = -0.0005x + 3.5 R² = 0.76

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 静弾性係数 (×104N/mm2)

圧縮破壊時の最大ひずみ(µ) 0

2 4 6 8 10

24-28 28-32 32-36 36-40 40-44 44-48

頻度

圧縮強度(N/mm2) f'ck=24, n=13 m=30.1, s=4.4

(N/mm2)

0 2 4 6 8 10

0.8-1.2 1.2-1.6 1.6-2.0 2.0-2.4 2.4-2.8 2.8-3.2

頻度

静弾性係数(×104 N/mm2) f'ck=24, n=13

m=20,800, s=5,000 (N/mm2)

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220

0 1 2 3 4 5 6

床版下面からの距離(mm)

水分率(%)

(3)

写 真 -1 RC 床 版 切断 面に観 察 され た多 数 の水 平ひ び 割れの発生状況

6)

た多数の水平ひび割れの発生状況を写真-1 に示す。水 平ひび割れのなかには骨材粒子を貫通しているものもあ る。これらのひび割れは,ASR劣化と凍害が複合して発 生したものであると述べている

7)

写真-2は,北陸自動車道の富山県内にある2橋のRC 床版において,舗装面から下方向に採取した径30 mmコ アで観察された水平ひび割れを示す。この写真よりA橋 ではRC床版上面から100 mm および75 mmの深さで水 平方向のひび割れがあったと推察される。骨材周りには 反応リムが観察される。B橋では床版上面から 100 mm の深さに複数の水平方向のひび割れが発生している。こ れらのRC床版では床版内部の中央付近に水平ひび割れ が発生しているという特徴がある。

RC床版においてASRが生じた場合には,鉛直方向の 拘束力が小さいために水平ひび割れが発生すると報告さ れている

8)

3. 鋼橋RC床版のひび割れ発生に関する考察

本研究におけるRC床版においては,立体FEMモデル を作成し,FEM解析によって床版内部の応力度状態を推 定してRC床版において見られる水平ひび割れ発生に関 して考察をおこなう。

写真-2 コアで観察された水平ひび割れ

図-7 鋼橋RC床版の解析モデルⅡ

3.1 解析モデル

RC床版の解析モデルを図-6および図-7に示す。橋 軸直角方向は図-1 に示す外主桁上から中主桁上間の支 間中央の範囲とし,橋軸方向は鉄筋配置間隔を勘案して

125 mmの幅とする。FEM解析における要素分割は図-6

に示すように横断方向の要素は50×20 mmとし,橋軸方 向の要素を 50×62.5mmとする。解析の対象となる要素

は2,388となる。鉄筋は図-6の下段に示す実配置より,

125 mm間隔で配置した区間はD19 mm鉄筋を,250 mm

図-6 鋼橋RC床版の解析モデルⅠ(モデルの範囲と要素分割)

S2 S1

主桁g上 a断面

【A橋】 【B橋】

(4)

間隔で配置した区間はD19 mmあるいはD16 mmの鉄筋 量の1/2を,表面から40 mmの深さの橋軸方向の要素間 にコンクリートと完全付着するという条件で配置する。

他にRC床版の上下に橋軸方向の鉄筋が配置されている が解析上は考慮していない。図-7に示す位置の解析モ デルの境界条件を表-2に示す。

RC 床版はアスファルト舗装で覆われているので,上 面からの相対湿度の低下はなく,湿度の低下は床版下面 からのみ生じると考える。したがってASRに伴う劣化の 進行の領域は床版下面から設定する。領域の設定は,劣 化状況調査から得られた強度性状および湿度分布の調査 結果や,鍵本らの研究

1)

を踏まえて,A~Dの4領域に区 分する。劣化が進行した段階では,A領域は非膨張層を 想定している。非膨張層の厚さは,これまでに調査した 相対湿度分布や著者等が橋脚パラペット部材の切断面で 実施した相対湿度調査結果

2

を参考にして60 mmと設定 した。B領域とC領域は膨張の活発な層であり,鍵本ら の研究

1)

を参考に80 mmと仮定した。B領域とC領域で

は材料の強度性状が異なる。D領域は,ASR劣化コンク リート体の内部にあって劣化初期の段階から膨張が緩や かに継続することを想定して設定されたものである。B 領域とC領域の膨張量はD領域の膨張量の1.3倍とした。

ここで,FEM解析は ASR劣化進行に伴う非膨張層や 活発な膨張層の存在,静弾性係数の低下の経過を勘案し て実施した。鍵本の研究

1)

によると,非膨脹層は比較的 早く形成され,非膨脹層が形成されたあと膨張の活発な 層が形成される。ここでは活発な膨張層が形成された後 に内部の劣化が進行し静弾性係数が低下すると仮定し,

図-4を参考にして静弾性係数を設定した。非膨脹層は RC 床版下面から内部に向かって進行し,活発な膨張層 も同じように進行すると想定される。

深部の膨張の緩やかな層の膨張量は,著者等が橋脚パ

ラペット部材で実施した調査とFEM解析の結果

2)

,内部

で0.24 %の膨張が生じると鉄筋は降伏し,鉄筋の応力測

定結果290 N/mm2であったことから,膨張ひずみは1,800 µと推定された。橋脚パラペットの静弾性係数は1.18× 104 N/mm2,RC床版の劣化が進行した段階の静弾性係数 を1.5×104 N/mm2としたことから,膨張ひずみは約1,400 µと推定される。BおよびC領域とD領域の膨張量比が 1.3倍であることから,D領域の膨張ひずみを1,000 µに 設定する。

FEM解析は,膨張過程と各過程の膨張量を表-3に示 すように推定して,全体として9ステップの解析を実施 することにした。表-3 に示す各ステップの領域変化と D領域の膨張経過を図に示すと図-8のようになる。な お,FEM解析ソフトはFemap with NEi Nastranを用いる。

3.2 解析結果

図-9は,ステップ6の図-7に示すS2面位置で内部 膨張量100μとした場合のFEM解析結果を示す。図-10 はステップ6の解析結果の変位図を示す。S2面のRC床 版内部に発生する主応力度は図-11に示すようになる。

図-10より床版のz方向の変位は,支間中央で上に反 る形で生じている。これは主桁によるx方向変位の拘束 とコンクリート内の非膨張層や膨張層の存在によって生 じる。図-11 より主応力度は,z(鉛直)方向で引張応 力が, x(水平)方向に圧縮応力が生じている。z 方向 は非膨張層と膨張層との境界部下側に最大1.7 N/mm2の 引張応力度が,また,活発な膨張層と緩やかな膨張層の

表-2 解析モデルの境界条件 位置 位置 x y z 回転

g上 桁上 固定 固定 固定 x,y,z軸自由

S2面 端面 固定 自由 自由 x軸自由

表-3 ASR劣化に伴う膨張過程と膨張性状および各領域の層厚や静弾性係数

ステップ 膨張状況

各領域の層厚(mm)

静弾性係数 (×10-4 N/mm2 )

D領域の膨張ひずみ(µ)

A領域 B領域 C領域 D領域

各ステップ のひずみ

累 計 ひずみ

ステップ 1 一様膨張 0 - - 220 A~D=3.0 0 0

ステップ 2 一様膨張 20 - - 200 A~D=3.0 100 100

ステップ 3 一様膨張 40 - - 180 A~D=3.0 100 200

ステップ 4 一様膨張 60 - - 160 A~D=3.0 100 300

ステップ 5 活発膨張層40mm 60 40 - 120 A~D=3.0 50 350 ステップ 6 活発膨張層80mm 60 40 40 80 A~D=3.0 50 400 ステップ 7 活発膨張層80mm 60 40 40 80 A&B=3,C&D=2.5 200 600 ステップ 8 活発膨張層80mm 60 40 40 80 A&B=3, C&D=2.0 200 800 ステップ 9 活発膨張層80mm 60 40 40 80 A&B=3, C&D=1.5 200 1,000 ポアソン比:コンクリート0.17,鉄筋0.3

(5)

図-10 膨張量100µとした場合の鋼橋 RC 床版変位図

(z方向:ステップ6)

境界部上側に 0.5N/mm2の引張応力度が発生している。

x方向は非膨張層上側に最大3.7 N/mm2の圧縮応力度が 生じている。なお,S2面と図-7に示すa断面との応力 度の差は小さい。

鉄筋には上筋で13.8 N/mm2,下筋で6.3 N/mm2の引張 応力度が発生している。

3.3解析結果の考察

各解析ステップで膨張層の膨張量が100 µの時の RC 床版内部のz方向に発生する引張応力度を図-12に示す。

ステップ1~4は非膨張層の進行過程の解析結果を示す。

図-11 RC床版内部に発生する主応力度(ステップ6)

ステップ1の解析結果より非膨張層が存在しない場合,

発生する引張応力度は僅かである。非膨張層厚の拡大に ともない大きな引張応力度が発生する位置は移動する。

ステップ 4~6 は活発な膨張層の進行過程の解析結果で ある。非膨張層と同様に引張応力度の発生位置が変化す る。ステップ6~9は ASR 膨張の継続による弾性係数の低 下過程の解析結果を示す。弾性係数の低下に伴い発生す 0

20 4060 80 100120 140 160180 200 220

1 2 3 4 5 6 7 8 9

床版下面からの 距離(mm)

各ステップ

D領域 C領域 B領域 A領域 0

250 500 750 1,000

膨張量(µ)

累計値 各ステップ

図-8 各ステップの領域変化とD領域の膨張経過

0.50 0.36 0.23 0.10 0 mm

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220

-4 -3.5 -3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 RC(mm))))

発生主応力度(

発生主応力度(

発生主応力度(

発生主応力度(N/mm2)

x方向 z方向

図-9 膨張量100µとした場合の鋼橋RC床版の FEM 解析結果(s2面,ステップ6)

(6)

図-12 RC床版内部の z 方向に発生する引張応力度

る引張応力度は順次低下している。

RC床版のASR劣化進行によってD領域の累加膨張量

が1,000 µに達した段階でのRC床版内部のz方向に発生

する引張応力度は図-13のように推定される。引張応力 度は,図-12 に示す各ステップの解析結果に表-3に示 す各ステップの膨張量との比を乗じた値の累計値である。

なお,非膨張層の境界部に発生する引張応力度は,境界 部の位置が順次移動することを勘案して推定した。

RC 床 版内 の推定 引張 応力 度は ,下 側鉄 筋付近で 2.9 N/mm2, C領域とD領域の境界部付近で2.3 N/mm2と大 きな値を示している。下側鉄筋付近に発生する引張応力 は,鉄筋との付着力があることからひび割れ発生に至る リスクは小さいと考える。他方,RC 床版内部には膨張 初期の段階から引張応力が発生するため,ASR劣化進展 に伴う水平方向の微視ひび割れが発生し,引張応力度の 増大と共に振動や疲労劣化の影響が加わることから,水 平方向のひび割れ発生に至るリスクが高くなると推察す る。なお,鉄筋に発生する応力度は上筋で96 N/mm2,下

筋で43 N/mm2と,大きな引張応力度が発生する。

4. まとめ

RC床版におけるASR劣化をモデル化することによっ て行ったFEM解析の結果とまとめると次のようになる。

(1) 北陸自動車道においてASR発生地域にあるRC床版 は静弾性係数が低下している。

(2) RC床版ではASR劣化が進行すると,床版内部の上 下方向に引張応力が発生する。大きい引張応力が発生 する位置は,非膨張層と膨張層との境界部下側と活発 な膨張層と緩やかな膨張層の境界部上側である。

(3) RC床版内部にはASR膨張初期の段階から引張応力 が発生するため,ASR劣化進展に伴う水平方向の微視 ひび割れが発生し,引張応力度の増大と共に振動や疲 労劣化の影響が加わることから,水平方向のひび割れ

発生に至るリスクが高くなると推察する。

(4) 非 膨 張 層 や 膨 張 の 活 発 な 層 の 存 在 を モ デ ル 化 し た FEMによってASRの劣化事象を定量的に説明するこ とができる。

参考文献

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図-13 D領域の累加膨張量が1,000µに達した段階 でのRC床版内部のz方向に発生する引張応力度

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

床版下面からの距離(mm)

引張応力度(N/mm2)

D層の累積膨張量1,000μ

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

mm

引張応力度(N/mm2) D 領域膨張量:100 µ

ステップ1 ステップ2 ステップ3 ステップ4 ステップ5 ステップ6

ステップ7&8 ステップ9

参照

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