• 検索結果がありません。

精神発達遅滞児における再生予測能力について 松村多美恵*・福島久忠*

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "精神発達遅滞児における再生予測能力について 松村多美恵*・福島久忠*"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

精神発達遅滞児における再生予測能力について

松村多美恵*・福島久忠*

(1992年10月7日受理)

Ability of Span Estimation in Mentally Retarded Children

Tamie MATsuMuRA and Hisatada FuKusHIMA

(Received October 7,1992)

は じ め に

記憶課題における遅滞児の劣弱さの要因の一つとしてメタ記憶の障害が指摘されている。本論文 ではメタ記憶の中でも自分自身の記憶容量の知識について検討する。自分の記憶容量がどのくらい であるかを正確に自己評価できることは、ものごとを記憶する上での重要な側面である。Brown,

Campione and Murphy(1977)は、「記憶範囲の再生予測能力は、それに続く、特定の方略を導入し 制御するあらゆる試みの基礎になっている」と述べている。自分の記憶容量の限界を知っていれば、

それに基づいて適切な記憶方略を有効に用い、記憶実行が効率的になされるであろう。

健常児における再生予測能力についてはいくつかの研究がなされている。Flavell, Friedricks and Hoyt(1970)は、1枚から10枚までの絵を順に数を増やして呈示し、それぞれの長さのリストにつ いてそれを再生できるかいなかを予測させた。その結果、保育園と幼稚園のこどもでは半数以上が 10枚の絵のリストを再生できると答えたが、2年生と4年生は10枚の絵をすべて再生できると答え たものはほんのわずかであった。実際より高いレベルの再生を予測する者は加齢とともに減少し、

実際の再生範囲プラス・マイナス2項目以内の予測を現実的な予測の基準とした場合、2・4年生 は群平均でみると現実的な予測をしていたが、年少のこどもはしていなかった。Yussen and Levy(1975)は、 Flavell, Friedricks and Hoyt(1970)の方法、すなわち、1枚から10枚まで枚数 を順に増やしながら呈示する条件に加えて、10枚の絵で始まりその後、枚数を順に減らしながら呈 示する条件の2条件で再生を予測させた。その結果、小学3年生や大学生に比べて就学前児は10枚 の絵の全部を再生できると予測するものが多かった。そして加齢とともにこの過剰な予測は減少し、

実際の成績は改良した。さらに、Markman(1973)は、幼稚園児の予測の正確さは自分の実際の記 憶遂行を繰り返して経験することによって改良されることを実証した。

Brown, Campione and Murphy(1977)はMA 6歳とMA8歳の2群を対象に10枚の絵を呈示し、

何枚再生できるかを予測させた。続いて、こども達の実際の再生数を測定し、予測数と比較した結 果、予測数が実際の再生数のプラス・マイナス2項目以内であった者はMA 6歳では21%、 MA8歳

*茨城大学教育学部障害児教育講i座(〒310茨城県水戸市文京2丁目1−1).

(2)

では31%であり、ほとんどの遅滞児が過大評価した。さらにBrown, Campione and Murphy

(1977)は、予測後に再生させるという10試行の訓練を2日間行った。その結果、現実的予測者は 訓練の翌日にはMA6歳児もMA8歳児も増加した。また、 MA8歳児においては2週間後や1年後の 維持も認められた。

しかし、Brown, Campione and Murphy(1977)の研究にはいくつかの問題点が考えられる。ま ず、彼らは、被験者が1から10までの数の概念を持っているかどうかを調べることなしに、実験を 行っている。また、MA6歳群とMA8歳群に分けているが、前者にはMA4:1歳からMA8:3歳後者に はMA5:2歳からMA11:3歳の遅滞児が含まれている。すなわち、 MA6歳群の中にMA8歳の遅滞児 がいたり、MA8歳群の中にMA5歳の遅滞児がいた。さらに、 Brown, Campione and Murphy

(1977)の研究では、予測数のみを最高24試行繰り返して、その平均を予測数としている。本研究 に先立って予備実験をした結果、予測試行を何度も繰り返して行うと被験者は飽きてしまった。そ のことが、Brown, Campione and Murphy(1977)の研究結果に影響したとも考えられる。また、

遅滞児の再生予測能力を健常児と比較検討して考察していない。そこで、本研究ではBrown,

Campione and Murphy(1977)の研究の問題点を修正し、同一MA(5・6歳)の遅滞児と健常児の再 生予測能力および予測能力におよぼす記憶遂行の繰り返し経験による効果を検討する。さらに、遅 滞児については、MAの上昇とともに予測能力が改良されるかいなかを検討する。

さらに、本研究においては系列位置課題を用いるが、遅滞児の系列位置効果についての研究は非 常に少なく、初頭効果については一致した結果が得られていない。そこで、本研究では遅滞児にお いて系列再生の初頭効果が認められるかいなかをも検討する。

ところで、記憶範囲課題を用いた研究における再生予測能力の評価法は従来の要求水準課題にお ける評価法と同一である。しかし、再生予測能力あるいは要求水準のどちらかを独立に測定するの は困難である。また、自分の記憶容量を認識しているかいなかが要求水準に影響すると思われる。

特に、記憶課題では、従来、要求水準の実験で用いられた「わなげ」「パチンコ」等と比べて偶発性 にあまり影響されないように思われる。そこで、本研究では、要求水準といった意味合いも加味さ れるとは思われるが、従来の研究で用いられた「再生予測能力」という用語をそのまま用いる。

方   法

1)被験者

被験者は茨城県内の保育所および養護i学校に在籍する健常児32名および遅滞児37名、合計69 名である。遅滞児は年少群、年中群、年長群に分けられた。被験者の内訳は表1に示す。

2)実験材料

本実験で用いられた記銘材料は、杉村・市川(1975)の幼児の概念カテゴリー基準表および先 行研究の中から選ばれた、比較的総頻度数の多いカテゴリーに属する10項目の線画からなる5

リストを用いた。それぞれの線画は、8cm×8cmの大きさにほぼおさまるように描かれた。それ それのリストに含まれる10項目の線画は、91cm×10cmの呈示カードに一列に並べて貼り付けら れた。なお、リストの構成にあたって、それぞれのリストに同一概念カテゴリーに属する項目

(3)

表1 被験者の構成

人数 CA平均 MA平均 IQ平均

(範囲) (範囲) (範囲)

健常児群 32 5:08

(5:01−6:06)

年少遅滞児群 14 15:00 5:11 42.2

(12二〇7−18:04) (5:02−6:10) (32−52)

年中遅滞児群 15 16:00 7:10 49.8

(14二〇5−18:03) (7:01−8:11) (42−58)

年長遅滞児群 8 16:09 10:01 60.8

(15:07−18:03) (9:04−10:10) (52−68)

が重複して含まれないように配慮した。また、プレテスト用課題は、5リストには含まれない 3項目の線画が用意された。具体的な記銘材料は、表2に示されている。

表2 本実験で用いた記銘材料 プレテスト 豚、林檎、自転車

リスト1 犬、すいか、帽子、飛行機、ばった、

ケーキ、きゅうり、耳、電話、スプーン リスト2 うさぎ、ぶどう、シャツ、船、とんぼ、ラッパ、

にわとり、椅子、ジャングルジム、チュウリップ リスト3 飴、トマト、目、テレビ、箸、ひよこ、

はさみ、ぶらんこ、朝顔、タンバリン

リスト4 きりん、バナナ、ズボン、自転車、ちょうちょ、

せんべい、なす、足、傘、包丁

リスト5 アイス、にんじん、手、バケツ、やかん、

つばめ、鉛筆、鉄棒、タンポポ、ピアノ

3) 手続き

実験は個別に実施され、全被験者にプレテストを行い、教示が理解できると判断された者に 対して記憶範囲課題が行われた。

(1)プレテスト(教示が理解できるかの検査)

① 10までの概念の有無を調べる。机の上のおはじき(10個)の個数を数えることと、10個 のおはじきから7個取ることを要求した。各々最高2試行まで実施した。②「覚える」と いう教示が理解できるかを調べる。プレテスト用の3項目のリストを呈示し、自由再生を

させた。

(2)記憶範囲課題

プレテストの両課題ができた者に対してのみ実施された。10項目のリストが呈示され、再 生数を予測させた。その後、各項目を命名させた後、リストが隠され、自由再生をさせた。

そして再生された項目を確認し、再生数と同じ数のシールがカードに貼られた。次のリスト が呈示され、「さっき、何枚覚えられたか」を確認し、「今度は何枚覚えられるか」と教示し、

(4)

再生数を予測させた。この予測一再生試行が5試行繰り返された。5試行を通しての再生数 は、常にシールにより示されるとともに、各試行前に確認された。なお、予測数については、

各試行後には強調されなかった。5試行終了後、1試行から5試行までの再生数を確認させ た後、6回目の予測をさせた。

結   果

1) プレテスト段階の成績

年少遅滞児群の1名以外は全員10個のおはじきを数えられた。7個のおはじきを取れなかっ た者は、健常児群2名(5。88%)、年少遅滞児群3名(17.6%)、年中遅滞児群1名(6。25%)

であった。3枚の絵は全員覚えられた。プレテスト段階で1課題でもできなかったものには、

記憶範囲課題を実施しなかった。表1は、記憶範囲課題を実施した被験者の内訳である。

2) 記憶範囲課題の成績

(1)予測数

記憶範囲課題における各群の予測数の平均値と標準偏差を試行毎および全体で示したのが 表3であり、平均値を図示したものが図1である。まず、各群間を比較する。検定の結果、

第1試行では年少遅滞児群は年中遅滞児群および年長遅滞児群より有意に予測数が多かった

¢;1.772,4ノ;27,ρ<.05;診=1.725,4ノ=20,ρ<.05)。次に、第3試行では年少遅 滞児群および年中遅滞児群は健常児群より予測数が多い傾向にあった⑰=1.471,4∫=44,

♪<.1;診=1.642,4ノ=45,♪<。1)。第4試行では年中遅滞児群は健常児群より有意に予 測数が多かったα=1.811,4∫=45,ρ〈.05)。他の試行および全体では各群問に有意差は 認められなかった。

各群の試行間の変化をみると、健常児群では第1試行は第2・第4・第5・第6試行より

(CR=1.765, ρ<.05; CR=2.157,  1)<.05 ; CR=2.6, ρ<.01 ; C1〜=1.925, 1)<.0

5)、第2試行は第3・第4・第5試行より予測数が有意に多かった(CR=2.4,♪〈.01;

CR=1.925,ρ<.05;CR=2.55,ρ〈.01)。次に年少遅滞児群では第1試行は第2・第3

・第4・第5・第6試行より有意に予測数が多かった(CR=2.412,ρ<.01;CR=2.021,

ρ〈.05;CR=2.598,ρ<.01;CR;2.598,〆.01;σR=2.0,ρ<.05)。年中遅滞児 群では第2および第4試行は第5試行より有意に予測数が多かった(CR=2.021,〆.05;

σR=1.809,ヵ〈.05)。年長遅滞児群では第2が第4試行および第5試行より有意に予測数 が多かった(CR=1.768,ρ<.05;CR=1.768,♪<.05)。

(2)正再生数

再生された順序に関係なく、各群の正しく再生された項目の総数の平均値と標準偏差を各 試行毎および全体で示したのが表4であり、平均値を図示したものが図2である。まず、各 群間を比較する。各試行における各群間の有意差の検定結果は省略するが、全体として、年 長遅滞児群は健常児群および年少遅滞児群より有意に正再生数が多く¢=2.835,4ノ=38,

(5)

表3 試行毎の予測数

健常児群 年少遅滞児群 年中遅滞児群 年長遅滞児群

1 7.44(2.56) 8.29(2.25) 6.73(2.32) 6.25(2.99)

2 6.47(1.95) 6.50(2.41) 7,27(L95) 7。13(1.83)

3 5,59(2.10) 6.64(2.35) 6.67(1.96) 6.13(2.20)

4 5.41(2.07) 6.00(2.42) 6.73(2.67) 6.38(2.29)

5 5.47(2.22) 6.07(2.34) 5.60(2.44) 6.00(2.06)

6 5.75(2.02) 6.43(2.82) 6.47(2.16) 6.63(2。64)

平均 6.02(2.28) 6.65(2.56) 6.58(2.32) 6.42(2.40)

() 内は標準偏差

9

囮健常児群

4  3

圓年少遅滞児群

2 團年中遅滞児群

1

盟年長遅滞児群

9

1   2   3   4   5   6  平

図1 各群における試行毎の予測数

♪<0.1;孟=2.997,4ノ=20,♪<.01)、年中遅滞児群より多い傾向にあった¢=1.539,

4ノ=21,ρ<.1)。また、年中遅滞児群は年少遅滞児群より有意に正再生数が多く¢=1.93 3,4ノ=27,ρ<0.5)、健常児群は年少遅滞児群より多い傾向にあった¢=1.368,4∫=4

4,ρ<.1)。

各群の試行間の変化をみると、健常児群では第1試行は第4・第5試行より(CR=3.6,

ρ<.01;CR=3.104,ρ〈.01)、第3試行は第4試行より正再生数が有意に多かった(CR=

1.837,〆.05)。次に年少遅滞児群では第1試行は第4・第5試行より(CR=2.846,♪

<.01;CR=3.015,♪〈.01)、第2試行は第3・第4試行より有意に正再生数が多かった

(CR=2.0,♪<.05;CR;2.021,ρ<.05)年長遅滞児群では第1試行は第2・第4試行 より有意に正再生数が多かった(CR;2268,ρ<,05;CR=2.268,〆.05)。年中遅滞児 群では各試行間に有意な差は認められなかった。

(6)

表4 試行毎の正再生数

健常児群 年少遅滞児群 年中遅滞児群 年長遅滞児群

1 5.06(1.43) 4.50(1.45) 5,33(1.53) 7.25(1.39)

2 4.25(L46) 4.00(1.77) 4.80(1.28) 4.88(1.76)

3 4.19(1.47) 3.43(1.64) 4.67(1.81) 6.00(1.87)

4 3.53(1.00) 2.57(0.98) 4.53(1.54) 5.50(1.41)

5 3.78(0.96) 3.07(1.16) 4.13(1.50) 5.88(2.26)

平均 4.16(1.39) 3,51(1.58) 4,69(1,59) 5.90(1.93)

)内は標準偏差

囮健常児群 圓年少遅滞児群

1 図年中遅滞児群

年長遅滞児群

1   2   3   4   5   平均

図2 各群における試行毎の正再生数

(3)現実的予測者の割合

Brown, Campione and Murphy(1977)の研究に従い、予測数が実際の正再生数のプラス

・マイナス3項目以上であった被験者を非現実的予測者とし、その割合を各試行毎および全 体で示したのが表5であり、それを図示したのが図3である。まず、各群間を比較する。検 定の結果、第3試行では健常児群および年長遅滞児群は年少遅滞児群より現実的予測者の割 合が有意に高く(Z2=5.347,♪〈.05;Z2=5.507,ρ〈.05)、年中遅滞児群より高い傾向に あった(κ2=2.811,ρ〈.1;Z2=3.652,ρ〈.1)。第4試行では健常児群は年中遅滞児群よ

り現実的予測者が高い傾向にあった(Z2=2.743,ρ<。1)。また、年長遅滞児群は年中遅滞 児群より現実的予測者の割合が有意に高く(κ2=4,79,ρ<.05)、年少遅滞児群より高い傾 向にあった(κ2=3.094,ρ〈.1)。なお、第1・第2・第5試行では各群間に有意差はな かった。全体的にみると、年長遅滞児群は年少遅滞児群および年中遅滞児群より現実的予測 者の割合が有意に高く(Z2=8.994,ρ<.01;X2=6.372,ρ<.05)、健常児群群より高い傾 向にあった(Z2=2.78,ρ<.1)。また、健常児群は年少遅滞児群より現実的予測者の割合が 有意に高かった(Z2=4.568,ρ<.05)。

各群の試行間の変化をみると、健常児群では第3試行は第1試行および第2試行より有意

(7)

に現実的予測者の割合が高かった(C1〜=1.94,♪〈.05;C1〜=2.472,ρ<.01)。なお、遅滞児 群では各試行間に有意な差は認められなかった。

表5 試行毎の現実的予測者の割合

健常児群 年少遅滞児群 年中遅滞児群 年長遅滞児群

1 43.75 28.57 46.67 50.00

2 46.88 50.00 53.33 62.50

3 71.88 35.71 46.67 87.50

4 62.63  50.00 40.00 87.50

5 62.50 50.00 53.33 75.00

平均 58.13 42.86 48.00 72.50

96

囮健常児群

国年少遅滞児群

国年中遅滞児群

1日

圏年長遅滞児群

a    1     2     3     4     5

平均 図3 各群における試行毎の予測者の割合

(4)予測数と正再生数の関係

n試行の予測数がn試行の正再生数に与える影響をみるために、予測数と正再生数の相関係 数を算出した。各群の相関係数を試行毎に示したのが表6であり、それを図示したものが図

4である。年長遅滞児群では第3・第4・第5試行の予測と再生の間の相関が有意であった

(7=.727,♪<.05;7=.869,ρ〈.01)。しかし、他の3群では相関は有意ではなかった。

各被験者の5試行における予測数と正再生数の相関係数を算出したところ、相関が有意で あった者の割合は、健常児群は6.25%、年少遅滞児群は7.14%、年中遅滞児群は20%、年長 遅滞児群は0%であった。

(5)正再生数と予測数の関係

n試行の正再生数がn+1試行の予測数に与える影響をみるために、正再生数と予測数の相 関係数を算出した。各群の相関係数を試行毎に示したのが表7であり、それを図示したもの

(8)

表6 試行毎の予測数と正再生数の相関係数

健常児群 年少遅滞児群 年中遅滞児群 年長遅滞児群 1予一1再 一.203 .437 .062 ,285 2予一2再 .069 .301 .075 .392 3予一3再 .156 .226 .288 ,727*

4予一4再 一.195 .392 一.257 .869**

5予一5再 一,025 一.133 .105 ,671*

**:ρ< .01;*:ρ<.05

日.9 X.8 X.7

      1{、     一げ        、    ノノρ       \   一      、          、 1ρ       \

Y      、

9.6  /

Y

0.5  /

^

臼.4 O.3

、・....      /

黶C〉<    /一へ        肋〜㌦凝:ぺ・    \、

一健常児群

日.2    ・      嚇@        ・       噛  脚 脅      、

・一 N少遅滞児群

日.1        、       彫 D..._..・・・・… @              ㌔   一

@       、      、     

9 、      φ     鞠

@     ψ

@     9      ・ 噛 …年中遅滞児群

一〇.1

一日.2 、  oA       ・

@、昌  一一 N長遅滞児群

一日.3

1       2       3       4       5 図4 予測数と正再生数の相関係数の試行間変化

が図5である。健常児群では第1試行の再生と第2試行の予測の問の相関が高い傾向にあり

(γ=.313,ρ<.1)、第3試行の再生と第4試行の予測の問は有意に相関が高かった(F.48 8,ρ<.01)。年少遅滞児群では第3試行の再生と第4試行の予測の間の相関が有意であった

(プ=.578,♪〈.05)。年長遅滞児群では第1試行の再生と第2試行の予測の間、第4試行の 再生と第5試行の予測の間、および第5試行の再生と第6試行の予測の間の相関が有意に高 かった(7=.821,〆.05;7=.815,〆.05;7=.871,ρ<.OD。なお、年中遅滞児群では、

正再生数と予測数の相関は有意ではなかった。

各被験者の5試行における正再生数と予測数の相関係数を算出したところ、相関が有意で あった者の割合は、健常児群は12.5%、年少遅滞児群は21.43%、年中遅滞児群は6.67%、年 長遅滞児群は25%であった。

(6)侵入項目数

当該試行のリストにないものが誤って再生時に報告される侵入項目について、前試行のリ ストの項目(リスト内侵入項目)と後試行のリスト内の項目や本実験では用いられなかった 項目(リスト外侵入項目)に分け、これらの数と2つを合わせた総侵入項目数の平均値と標 準偏差を示したのが表8であり、平均値を図示したものが図6である。各試行における各群

(9)

表7 試行間の正再生数と予測数の相関係数

健常児群 年少遅滞児群 年中遅滞児群 年長遅滞児群 1再一2予 .313+ .377 .082 .821*

2再一3予 .237 .412 一.053 .551 3再一4予 .488** .578* .229 .438 4再一5予 一.126 .387 一.014 .815*

5再一6予 一.141 .184 .208 .871**

** :1)<  .01 ; * :1)〈  .05 ; + : カ< .1

日.9

       , 

P.8    、「\      !げ一♂一 一一

\       ノ 臼・7     \・\       ノ

\      / 臼.6         \      ノ

      \一、 〆・/{㌧(a・5      _ド〉く、    /  〜一㌦.㌧.       暫       ,o臼.4 ..,..・…………・一 …/     \   ・・.

      、

P,3      \        _健常児群       、       、

       魯

P.2      − ・.      \   

       /  \.     \ .ノ    一・年少遅滞児群臼.1         !          羨璽

     曙      冒      ■       、

P    ㌧ ..,_〆          ㌔    、\      年中遅滞児群        画

皷P.1      \

_2.2       、  一一年長遅滞児群 1       2       3       4       5

図5 前試行の再生数と予測数の相関係数の試行間変化

間の有意差の検定結果は省略するが、全体として、リスト内侵入項目数と総侵入項目数では、

年少遅滞児群および年中遅滞児群は健常児群より侵入項目数が多い傾向にあった(リスト内 侵入項目数:孟=1.45,4ノ;44,ρ〈.1諸=1.31,4ノ=45,ρ<.1;総侵入項目数:診=1.654,

4∫=44,ρ<.1;診=1.371,4∫=45,ヵ<.1)。なお、リスト外侵入項目数では各群問に有意な 差は認められなかった。

(7)系列位置による正再生率

記憶範囲課題における各系列位置の正再生率を「全被験者の5試行の正再生数合計/被験 者数×5」で算出し、各群毎に示したのが表9であり、それを図示したものが図7である。

各系列位置における群問の比較は省略する。

まず、健常児群では、系列位置1は系列位置2から10より有意に正再生率が高かった((〉

R=4,ρ<.01;CR=3.969,♪<.01;CR=3.47,ρ<.01;CR=3.343,♪<.01;CR=3.87

8, ρ<.01 ;σR;5.029, ρ〈.01 ;C、R=4.828, ♪〈.01 ;C、R=4.085, 1)〈.01 ;C∫〜=3.213,

ρ<.Ol)。系列位置2は系列位置5から9より有意に正再生率が高かった(CR=1.701,ρ

<.05;C1〜=2, ∫)<.05 ;CR=4.199, ρ<.01 ;CR=3.055, ρ<.01 ;σ1〜=2.942, 」ク〈.01)。

(10)

表8 各群の平均侵入項目数

健常児群 年少遅滞児群 年中遅滞児群 年長遅滞児群 リスト内侵入項目数 .06(.29) .29(.76) .23(.58) .10(.30)

リスト外侵入項目数 .03(.32) .13(.33) .11(.35) 0 総侵入項目数 .09(。42) .40(.82) .33(.75) .10(.30)

)内は標準偏差

a5

9.4 、」、、 、 、 、 、 、

日.3

1, .噛

X、 噛

:㍉

1 し、A

a2 1〜 巳 ㌃\、

三∫ 幽一∴

圓リスト外侵入項目

a.1

図リスト内侵入項目

9

図6 各群における平均侵入項目数

系列位置3は系列位置6から9より有意に正再生率が高かった(σR=2.085,ρ<.05;σR=

4.619,ρ<.01;CR=3.079,♪<.01;CR=2.085,♪<.05)。系列位置4および6は系列位 置7・8より有意に正再生率が高かった(系列位置4:CR=3.878,ρ<.01;CR=1.668,ρ<.0 5;系列位置6:CR=3.878,ρ<.01;CR=1.746,ρ<.01)。また、系列位置5・8・9・10は系列 位置7より(CR=3.464,ρ<.01;CR=2.55,♪<.01;C1〜=3.336,ヵ〈.01;CR=3。726,

♪<.01)、系列位置10は系列位置8より有意に正再生率が高かった(CR;1.919,ρ〈.05)。

次に、年少遅滞児群では、系列位置1は系列位置2から10より有意に正再生率が高かった

(C1〜=2.667, ρ〈.01 ;C1〜=3.328, ρ<.01 ;C、R=2.219, ρ<.05 ;C∫〜=3.175, ♪<.01 ; σ∫〜=2.219, ♪<.05 ;CR=2.774, ρ<.01 ;C1〜=2.405, 1)〈.01 ;C1〜=3.175, 」〃<.01 ;

CR=1.664,♪<.05)。また、系列位置10は系列位置7・9より有意に正再生率が高かった

(CR=2.412,♪〈.01;CR=2.214,ρ<.05)。年中遅滞児群では、系列位置1は系列位置2 から10より有意に正再生率が高かった(CR=2.412,♪<.01;CR=2.598,ρ<.01;CR=2.

021,ρ<.05;CR=1.871,ρ〈.05;CR=1.664,ρ<.05;C1〜=2.94,1)<.01;CR=2.774,

♪<.01;CR=2.066,ヵ<.05;CR;2.219,♪<.05)。また、系列位置2および3は系列位置 7より有意に正再生率が高かった(CR=1.664,ρ<.05;CR=1.664,♪<.05)。系列位置9 は系列位置7・8より(CR=1.809,ρ<.05;σR=1.809,ρ〈.05)、系列位置10は系列位置7 より有意に正再生率が高かった(CR=2.021,ρ<.05)。次に年長遅滞児群では、系列位置1

(11)

表9 各系列位置の正再生率

健常児群 年少遅滞児群 年中遅滞児群 年長遅滞児群

1 75.00 69.00 73.00 95.00

2 54.00 40.00 49.00 63.00

3 48.00 34.00 44.00 68.00

4 43.00 30.00 45.00 58.00

5 36.00 30.00 45.00 45.00

6 34.00 31.00 56.00 55.00

7 15.00 20.00 28.00 30.00

8 31.00 31.00 31.00 58.00

9 34.00 24.00 44.00 50.00

10 45.00 41.00 53.00 70.00

平均 41.63 35.14 46.93 59.00

1田

9臼

η

囮健常児群

4a 国年少遅滞児群

團年中遅滞児群

1日

團年長遅滞児群

2

1    2     3     4     5     6     7     8     9    12

図7 各群における各系列位置の正再生率

は系列位置2から9より有意に正再生率が高かった(CR=2.475,ヵ<.01;CR=2.268,ρ

〈.05;C、R=2.475, 1)〈.01 ;σR=2.268, 1)〈.05;C1〜=2.268, ヵ<.05 ;C1〜=2.475, ♪〈.

Ol;CR=2.041,ρ<.05;CR=2.041,ρ<.05)。また、系列位置2・3・4・8・10は系列位置7よ り有意に正再生率が高かった(CR=2.267,♪<.05;CR=2.268,♪〈.05;CR=2.041,ρ

<.05;C1〜=1.789,ク<.05;CR=2.041,♪<.05)。さらに、系列位置2・3・4・8・10は系列位 置7より有意に正再生率が高かった(CR=2.267,♪<.05;CR=2.268,ヵ<.05;CR=2.04

1, 」ク<.05;C∫〜=1.789, 」ク〈.05;σR=2.041, 1)<.05)o

(12)

考   察

プレテストの結果より、おはじきを数えたり、ある数のおはじきをとったりすることは全員でき たわけではなかった。やはり、数の概念の有無を調べてから本課題に入ることは妥当であった。ま た、3枚の絵を覚えることは全員できていることから、「記憶する」という教示は全員理解したと思 われる。

予測数においては、全体的には4群間に差は認められなかった。試行毎では年少遅滞児群および 年中遅滞児群がやや高いように思われる。なお、本研究における健常児群(5・6歳)の予測数は

Flavell, Friedricks and Hoyt(1970)とYussen and Levy(1975)の研究結果より高かった。これ は、リストを呈示する際、本研究では全試行10枚呈示したが、Flavell, Friedricks and Hoyt(1970)

とYussen and Levy(1975)の研究では1から10まで順に枚数を増やして呈示の方法をとったため ではないかと考えられる。

正再生数においては、全体的にみても試行毎にみても健常児群は年少遅滞児群より正再生数が多 く、遅滞児ではMAの上昇とともに正再生数が多くなった。この現象は、侵入項目、特にリスト内侵 入項目が年少遅滞児群や年中遅滞児群において多い傾向がある、すなわちこれらの群においては順 向抑制が強いこととも関係するように思われる。なお、健常児群の正再生数は Flavell, Friedricks and Hoyt(1970)とYussen and Levy(1975)の研究結果と類似している。

現実的予測者の割合においては、全体的にみると健常児群は年少遅滞児群より高かった。また、

この2群の差は第3試行において著しかった。以上の結果から、健常児群は年少遅滞児群より自分 の記憶容量を現実的に自己評価できる(再生予測能力が高い)者が多いことが示唆される。これと 関連して、有意差は認められないが健常児群より年少遅滞児群の方が予測数が多く、反対に正再生 数が少ない傾向が認められた。また、試行毎では第3試行で年少遅滞児群は健常児群より予測数が 多く、正再生数が少ない傾向にあった。つまり、年少遅滞児群は健常児群と比べ、正再生数が少な い割に予測数が多いことが示唆される。本実験では年少(MA 6歳)の遅滞児群の43%が現実的な 予測をしたが、Brown, Campione, and Murphy(1977)の研究結果では、遅滞児(6歳)の21%が 現実的な予測をしたと報告されている。これは、はじめに述べたようにBrown, Campione, and Murphy(1977)が予測試行のみを最高24試行繰り返して実施したため被験者が飽きてしまい、非現 実的な予測をしてしまったためではないかと考えられる。次に、現実的予測者の割合における遅滞 児の発達的変化をみると、年長遅滞児群は年少遅滞児群および年中遅滞児群より高かった。すなわ ち、MAが9・10歳になると再生予測能力が改良されることが示唆される。

健常児群と年長遅滞児群において現実的予測者が多いことについてさらに予測数と正再生数の関 係からみていく。各群のn試行の予測数がn試行の正再生数に与える影響を分析すると、一部、相関 が認められたところもあったが、全体として試行毎にみても、5試行で各被験者毎にみても相関は 認められなかった。このことから、各被験者は予測数に合わせて再生を行っているのではない。つ まり、予測数は再生数から独立であることがわかる。では、各試行(n試行)の正再生数は次の試行

(n+1試行)の予測数に影響を与えているのであろうか。分析の結果、正再生数と次の試行の予測 数は5試行すべてではないが、健常児群および年長遅滞児群で多くの相関が認められ、予測数は前 の試行の正再生数に影響されている。すなわち、自分自身の記憶容量に合わせて次の試行の予測を

(13)

していることが示唆される。そのため、健常児群と年長遅滞児群において現実的予測者が多くなっ たものと思われる。

また、繰り返し試行の効果をみると、健常児群と年長遅滞児群において第3試行が第1・2試行よ り現実的予測者の割合が高かった。すなわち、この2群において記憶遂行を繰り返すことによって 予測能力が改良されることが示唆される。これは、前述のように記憶遂行を繰り返すことによって 前試行の正再生数に予測数を合わせるようになったためと思われる。なお、第4・5試行で第3試 行より現実的予測者の割合が低くなった要因として、試行を繰り返すことにより課題への集中が減 少したためであると思われる。

最後に、正再生数における系列位置効果について検討する。Ellis(1970)は、遅滞青年においては 系列位置曲線で初頭位置と中間位置の成績が新近位置と比べ同程度に低いこと、すなわち新近効果 は認められるが初頭効果は認められないことを指摘している。松村・倉本(1980)は、MA5・6歳の 遅滞児において記銘材料が具体物の時、初頭効果が認められたことを指摘している。本研究で用い

られた記銘材料は絵カードであったが、すべての群において初頭効果も新近効果も認められた。

ま と め

本研究は、遅滞児の記憶において重要な役割を持つメタ記憶の一種である自分の記憶容量の知識 について検討した。被験者はCA5・6歳の健常児群、 MA5・6歳の遅滞児群(年少遅滞児群)、 MA7・8 歳の遅滞児群(年中遅滞児群)、およびMA9・10歳の遅滞児群(年長遅滞児群)である。各群ともに 数概念と教示の理解に関するプレテストを達成した被験者に対して絵カードによる記憶範囲課題が 実施された。10枚の絵カードが呈示され、再生できると思われる枚数を予測させた。その後、自由 再生を行い、正再生数が確認された。以上を1試行とし、合計5試行実施された。5試行終了後、

6回目の予測がなされた。なお、試行毎の正再生数についてはシールによって強調された。結果は 以下のようであった。

① 年少遅滞児群の正再生数は、同一MA(5・6歳)の健常児と比べて劣る。この原因のひとつと して順向抑制の影響が強いことが考えられる。

②年少遅滞児の再生予測能力は同一MA(5・6歳)の健常児と比べて劣る。遅滞児においては年 少遅滞児群および年中遅滞児群は年長遅滞児群より劣る。これは、年少遅滞児群や年中遅滞児 群が正再生数が低いにもかかわらず、過剰な予測をしているためである。それに対し、健常児 群や年長遅滞児群は前試行の正再生数に合わせて次の試行の再生数を予測している。

③ そのため、健常児群と年長遅滞児群は記憶遂行を繰り返すことにより再生予測能力が改良さ

れた。

④ 全群の系列位置曲線において初頭効果と新近効果が認められた。

(14)

引 用 文 献       「

Brown, A.L, J.C.Campione, and M.D.Murphy.1977. Maintenance and generalization of

trained metamnemonic awareness by educable retarded children. VoπrπαZ o/Eヱ♪θ7伽θη如Z Ch掘

   Pε)161zoZogッ,24,191−211.      「

dllis, N.R 1970. Memory processes in retardates and normals. In N.REIIIs(ed.),ノη孟θプπα診foπ4Z 7爾θω o∫γθ3θακhfη7ηθ窺αZ 7θ如r4αだoη(VoL4). New York:Academic Press.

Flavell, J.H., A.G.Friedrichs, and J.G.Hoyt.1970. Developmental changes in Memorization Processs.

Cogπ猛ゴηε・P3ッohσJogy, L 324−340.

Markman,ED.1973. The development of knowledge concerning the effects categorization upon free

reca11. C1庭Z4∠)θ〃θZoρηzθηち44,237−246.      ・

松村多美恵・倉本敦子.1980.「精神薄弱児のリハーサル方略におよぼすラベリングと記銘材料の効果につ いて」『特殊教育学研究』18,26−32,

杉村健・市川裕子.1975.「概念カテゴリー基準表一幼児の場合一」『奈良教育大学紀要』24,135−146.

Yussen, S,R. and V.M.Levy.1975. Developmental changes in predicting one s own span of short−term memory! ノo祝7ηαZ o∫Eκ♪θγ伽8η診αZ Cんfごdl PεyohoZogッ,19,502−508.

参照

関連したドキュメント

• 家族性が強いものの原因は単一遺伝子ではなく、様々な先天的要 因によってもたらされる脳機能発達の遅れや偏りである。.. Epilepsy and autism.2016) (Anukirthiga et

或はBifidobacteriumとして3)1つのnew genus

に関して言 えば, は つのリー群の組 によって等質空間として表すこと はできないが, つのリー群の組 を用いればクリフォード・クラ イン形

しかし,物質報酬群と言語報酬群に分けてみると,言語報酬群については,言語報酬を与

地震による自動停止等 福島第一原発の原子炉においては、地震発生時点で、1 号機から 3 号機まで は稼働中であり、4 号機から

試験音再生用音源(スピーカー)は、可搬型(重量 20kg 程度)かつ再生能力等の条件

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児