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理科教育における観察の機能に 関する実験的研究(第23報)

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(1)

99

理科教育における観察の機能に 関する実験的研究(第23報)

一観察過程の論理構造(2)一        あ

理科研究室 局

(1969年11月11日受理)

§ 1.研究の意味

§2. 「物の浮き沈み」における観察過程の論理構造   (1)A方式における観察過程とその定式

  ② B方式における観察過程とその定式   (3)C方式における観察過程とその定式   (4)D方式における観察過程とその定式   (5)ESS理科における観察過程とその定式

§3.各方式の観察過程の比較

  (1)観察過程における諸要素の集計とその解釈   ② 鍵概念に関する実験操作の性格の比較

§4.観察効果を支配する主な要素

§5.結論

 §1.研究の意味

      (1)  (2)       (3)

 本研究のここ数年間の経過を要約すると,第17,18および19報で明らかにした観察能力 の3因子,すなわち変化の観察,多角的観察および集中的観察の各機能が実際の具体的な 理科教材の学習過程においてどうはたらき,観察様式の差違が学習効果にどう影響するか

      (4)   (5)

を研究するため,第20および21報において教材「レンズ」と「振り子」の学習過程におい て実験的比較を行なった。その結果明らかになった観察機能の質・量の学習効果に及ぼす 影響についての結論すなわち,①観察機能が豊富であり,②特に集中的観察の比重の大

きい学習過程が大きな学習効果をあげることを,より本質的にまた構造的に分析するため

    (6)

に,前報においては観察過程の論理構造を,記号の使用による定式化を行なうことによっ て,明確化し,教材「レンズ」と「振り子」について,各2種の観察過程を比較検討した。

そうすることによって,観察過程と学習効果の関係の観点から,振り子学習・レンズ学習

(2)

の両者に共通な結論は,学習における鍵概念(Key Concept)を導く段階における観察機 能の豊富さ・集中的観察の比重の高さが,学習全体の効果を高くする中心的要因であるこ とがわかった。すなわち振り子学習における「周期」,レンズ学習における「結像」という 鍵概念に至る段階における観察機能のはたらき方が,学習効果を左右する決定的な因子に

なるわけである。またレンズ学習の観察過程においては,第20報でのべた「発展場面にお ける観察」の学習効果に与える大きな寄与が,定式の比較によってより明確にできた。こ のように,観察過程の文脈を記号化することによって定式をつくり,各種学習方式の比較 の基礎とするこの方法は,共通点・相違点の鮮明な抽出を可能にし,学習指導法の比較研 究に有効であることがわかった。

       (6)

 ところで,前報で扱った教材「振り子」と「レンズ」の観察過程は,いずれも観察内容 の豊富さ・観察を通じてひき出される法則性の明確さなどの点で数ある理科教材の中でも 典型的・代表的な教材であり,またいずれも児童にとってはいわゆる難i教材の1種でもあ る。このような性格をもったこの二つの教材の観察過程は研究対象として格好なものと筆 者は考え,分析を進めてきたのであるが,一面これらの教材がもっていない重要な問題場 面が他の教材にみられることも事実である。その一・つはこの二つの教材の学習において行 なう実験操作に着目すると,観察過程が異なっても,大体似通ったものがほとんどである という点が指摘されなければならない。観察過程の方式がちがっていても,振り子の場合 は,糸に重りをつけて振ることには変りがなく,その重りの材料の差違は,副次的なもの であるにすぎない。レンズの場合も凸レンズ,凹レンズは,その直径の大小,焦点距離の 大小にあるにしても,大きな材料のちがいはなく,わずかに,第20報であつかったビーカ ー・フラスコに水を入れたレンズ様のものが学習の発展場面において,材料の変化を示す

ぐらいなものである。

 そこで本報では,観察過程における実験操作の多様性も持っている教材で,観察から法 則性の探究に至る道筋の内容が豊かな典型的教材を選ぶことにし,教材「物の浮き沈み」

の場合を扱った。そしてこの教材の観察過程を前報の手法によって定式化し,論理構造を 明らかにするよう努めてみたわけである。なお本報でとりあげる「物の浮き沈み」はこれ までと同様物理的教材であるが,その一つの理由は観察から法則性を探究する過程を重視 する場合その代表としては論理的内容をもった教材が望ましく,そのような性格をもった ものは物理的教材に最も多いからである。以上のような観点から,「物の浮き沈み」は検討 に値する観察内容豊かな学習過程をもっているといえる。なお将来は,他分野の教材も検 討し比較してみたいと考えている。

(3)

高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報) 101

§2. 「物の浮き沈み」における観察過程の論理構造

 教材「物の浮き沈み」の指導内容の骨子は学習指導要領につぎのように示されている。

 現行指導要領(1958年改訂,1961実施)

「物の浮き沈みについて調べる。

 (7)同じ体積の水より軽いものは水の中に押し沈めても浮き上がり,水より重いものは 沈むことを理解する。

 (イ)卵などは水の中では沈むけれども,濃い食塩水の中では浮くことに気づく。」

 新指導要領(1968年改訂,1971年実施)

「物の重さから物の質の違いを理解させる。

 ア.同じ体積の水より重い物は沈み,水より軽い物は浮くこと。

 イ.水に沈む物でも,食塩水の中ではその濃さによって浮く物があること。」

 この教材は,実質的には密度・浮力の関連現象を扱っており,この事実に関係していろ いろ議論も行われてきたが,ここでは,あくまで観察過程に焦点をおいて分析し,その構造 を明らかにしようとしたのである。この教材では,同体積の物体と水(別種の液体のときも ある)の重さの比較が認識過程においても,実験操作においても最重要な学習場面であり,

この場面で成功するかどうかは,学習全体の効果を支配するという事実は否定できない。

 ここで観察過程の論理構造の分析に使った資料はつぎのようなものである。

 現行指導要領による教科書3種(A,B, C各方式とよぶ)

 新指導要領による展開1種(D方式)

 ESS理科における展開

 ここでESS理科(Elementary Science Study)も並べたのは,昨1968年に作られた        (7)

Teacher s GuideのTrial Teaching Editionにt Sink or Float という教材があり,

その内容は仲々豊かな実験観察によって構成されているので,前記A,B, C, D各方式 と比較してみたわけである。もちろんESS理科では教科書なしで指導するのであり,こ のTeacher s Guideは指導資料であるため必ずしもここに示されている全部の観察を児 童に行なわせる必要はないわけで,日本の教科書にのっている観察と同列に比較するのは 当を得ないともいえる。しかし,この点を含んだ上で比較検討するならば,その観察過程 における特色を明らかにできようし,すぐれた有効な観察過程を求める上で一つの助けに なると考え,論理構造の分析を行なってみたのである。

 さて観察過程の論理構造を定式化するために使用する諸記号は,前報と全く同じである が,その内,本報に使った記号を示すと,つぎのようである。

(4)

 事象:F,プロトコル命題:P,概念:C,関係:R,多角的観察:Om,変化の観察:Ot,

集中的観察:Oe,等価次元:ε

   (1)A方式における観察過程とその定式

 教科書Aに盛られている実験観察を,順序に並べてみると,つぎのようである。

 1.うくものとしずむもの  かんさつ

 いろいろなものを集めて,うくと思うもの,しずむと思うものとに分けてみましょう。

また,その分けかたが正しいかどうかをしらべてみましょう。

 じっけん1

 同じくらいの大きさの,木・コルク・石・ねんどを水に入れて,うきしずみのようすを しらべましょう。

 じっけん2

 同じ木やねんどで,大きさのちがうものを水に入れて,うきしずみのようすをくらべま

しよう。

 じっけん3

 ねんどと同じ体積の水をはかりとって,重さをしらべましょう。また木についても,同 じようにしてくらべましょう。

体積のはかりかた(略)

水とものとの重さのくらべかた(略)

 研究

 コルク・ろう・石。たまごなどで,それらと同じ体積の水と重さをくらべて,たしかめ てみましょう。

 2.食塩水と水  かんさつ

 たまごを,水やこい食塩水の中に入れて,うきしずみを見ましょう。

 じっけん

 たまごをビーカーの水にしずめておき,そこへこい食塩水を少しずつ入れて,たまごの うくようすをしらべましょう。

 研究

 たまごと同じ体積の水やこい食塩水をとって,たまごと重さをくらべて,たしかめてみ ましょう。

 以上の観察内容を概括してみると,表1のようになるg

(5)

高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報) 103

表1. A方式の観察内容

1

2

8

5

6

7

同じくらいの大きさの木・コルク・石・ねんどを水に入れての浮き沈み。

大きさのちがう木・ねんどの浮き沈み。

同体積のねんど・水・木の重さくらべ。

コルク・ろう・石・たまごと同体積の水の重さくらべと浮き沈み。

同体積の水と食塩水の重さくらべ。

水と食塩水中におけるたまごの浮き沈み。

水中に沈んでいるたまごに食塩水を注いだときの浮き沈み。

 さて,ここにみられる観察過程の各段階を記号を使って定式化してみると,表2のよう

になる。

表2.A方式における観察過程の定式

(1)

(2)

(3)

(4)

 Om ↓

F ⊂P11  0m ↓

F ⊂P12  0m ↓

F ⊂Pユ3  0孤

 ↓

F ⊂P14  0m ↓

F ⊂P21  0m ↓

F ⊂P24  0e ↓

F ⊂P31  0c ↓

F ⊂P34

 Oc ↓

F ⊂P42  0e ↓

F ⊂P46

  おP11=P12

  どP13=P14

P31⊂R1 P34⊂R2 R1⊂C R2⊂C

  おP42=P46⊂R1

(6)

茨城大学教育学部紀要 第十九号

 Oe ↓

F ⊂P43  0c ↓

F ⊂P45

  どP43==P45⊂R2

R1⊂C R2⊂C

(5)

(6)

(7)

 Oc ↓

F ⊂P5e1  0c ↓

F ⊂P502  0m ↓

F ⊂P651  0m ↓

F ⊂P652  0tF↓⊂P751

P651⊂R1 P652⊂R2

P751⊂R1 Rl⊂C

 この表でPの右下に二つないし三つの数字が書いてあるが,その意味は初めの数字は観 察の段階の順番,すなわち観察のステージの番号で,左側の()内の数字と一致する。

2番目の数字は浮き沈みする固体物質の種類を示すものであり,例えば,P13とあるのは ステージ(1)の観察において石(この場合3で示した)の浮き沈みを行なった結果得られた プロトコル命題のことである。つまり「石は水の中に沈む」という意味をもつ。三つの数 字がついている場合は,特に液体物質の同体積の重さに着目した観察の場合,3番目の数 字でその液体の種類を示したのである。

 また関係Rの内,R1は物が浮く場合のその物体と液体との関係を示し, R2は物が沈 む場合の関係を示している。概念Cは,この場合鍵概念であるが,同体積の重さを比較す

るとき,液体に比べて固体あるいは別種の液体がより重い場合は沈み,より軽い場合は浮 かぶという物の浮き沈みの決定的要因を支配する「同体積の重さ」という概念把握を意味

しているわけである。なお,このほかの諸記号については前報と全く同じ取り扱いをして

いる。

   ② B方式における観察過程とその定式

 教科書Bに盛られている実験観察は,つぎの通りである。

 1.うきしずみと重さ  実けん1

 いろいろな大きさの小石・あぶらねんど・ろう・木ぎれなどの重さを,上ざらてんびん でくらべてみよう?

(7)

      高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報)    105

 実けん2

 同じ体積の小石・あぶらねんど・ろうの重さをくらべてみよう。

 ① ビーカーに水を入れ,水面のいちにしるしをつける。この中に小石を入れ,上がっ た水面のいちにしるしをつけ,小石を取り出す。

 ② あぶらねんどを水の中に少しずつ入れ,水面の高さが小石のときと同じになったら 取り出す。

 ③小石より少し大きいろうを水にしずめ,小石と同じ体積になるまでけずり取る。

 ④ 小石・あぶらねんど・ろうの重さを,上ざらてんびんでくらべる。

 実けん3

 小石・あぶらねんど・ろうの重さをこれらのものと同じ体積の水の重さとくらべてみよ

う。

 ①二つのビーカーを上ざらてんびんにのせてつりあわせる。

 ② 小石と同じ体積の水を,一つのビーカーにうつし取る。

 ③ もう一つのビーカーに小石を入れて重さをくらべる。

 ④あぶらねんどやろうも水と重さをくらべる。

 実けん4

 大小二つの木ぎれを,それぞれ同じ体積の水の重さとくらべ,どちらがかるいかしらべ てみよう。

 研究

 あぶらねんどは水にしずむが,これを中空のボールのような形にするとうくのはなぜだ

ろうか。

 2.たまごのうきしずみ  実けん1

 食塩をとけるだけとかした食塩水をつくり,その中にたまごを入れて,水の中に入れた ときとくらべてみよう。

 実けん2

 たまごの重さを同じ体積の水や食塩水の重さとくらべてみよう。

 ①たまごと同じ体積の水をメスシリンダー一にうつし取って,目もりを読む。

 ② 食塩水をメスシリンダーに入れて,水と同じ体積だけはかり取る。

 ③たまご・水・食塩水の重さをはかってくらべる。

 研究1

あぶらねんど・けしゴム・ジャガイモなどは,こい食塩水にうくだろうかしずむだろう

(8)

茨城大学教育学部紀要 第十九号

か。

 研究2

 あぶらが水にうくのは,なぜだろうか。

以上の観察内容を概括してみると,表3のようになる。

表3.B方式の観察内容

石・あぶらねんど。ろう・木の浮き沈み。

いろいろな大きさの石・あぶらねんど。ろう・木の重さくらべ。

同体積の石・あぶらねんど・ろうの重さくらべ。

同体積の石・あぶらねんど・ろう・水の重さくらぺ。

大小二つの木片と同体積の水の重さくらべ。

水と食塩水中におけるたまごの浮き沈み。

たまごと同体積の水および食塩水の重さくらべ。

あぶらねんど。けしゴム・ジャガイモなどの食塩水中における浮き沈み。

油と水の浮き沈み。

この観察過程の各段階を,定式化すると表4のようになる。

表4. B方式における観察過程の定式

ω

(2)

 Om ↓

F ⊂P11  0m ↓

F ⊂P12  0m ↓

F ⊂P13  0m ↓

F ⊂P14  0m ↓

F ⊂P21  0m ↓

F ⊂P22  0m ↓

F ⊂P23  0m ↓

F ⊂P24

  どP11=P12

  eP 13=P14

(9)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

 高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報)

 Oc ↓

F ⊂P31

 0C         e

 ↓       P31=P32⊂R2 F ⊂P32

 0c ↓      P33⊂Rl F ⊂P33

 0c ↓

F ⊂P41

 0c         ε

 ↓       P41=P42⊂R2 F ⊂P42

 0c ↓      P43⊂Rl F ⊂P43

         R1⊂C          R2⊂C  Oe ↓

F ⊂P54

 0c ↓      P54⊂Rl F ⊂P54

         R1⊂C  Oc ↓       P650⊂R2

F ⊂P650

 0c ↓        P651⊂Rl F ⊂P651

         R1⊂C          R2⊂C  Oc ↓       P750⊂R2

F ⊂P7so

 Oc ↓       P751⊂Rl F ⊂P751

 0e ↓      R1⊂C F ⊂P75

         R2⊂C  O皿 ↓

F ⊂P821

 0m         ε

 ↓       P821=P861⊂R2 F ⊂Ps61

107

(10)

(9)

  71   P  お

m ⊂ 0↓

  F

  02   P   

m ⊂ 0↓

  F

茨城大学教育学部紀要 第十九号

P871⊂R1 R1⊂C R2⊂C Pgo2⊂R1 R⊂C

   (3)C方式における観察過程とその定式

 教科書Cに盛られている実験観察は,つぎの通りである。

 1.うくものとしずむものの重さくらべ  じっけん1

 ①あたためてやわらかくしたろうを,小さなさかずきにいっぱいつめこんで,ひやし てかためてからとり出す。

 ②同じさかずきの中にあぶらねんどをいっぱいにつめこんで,とり出す。

 ③とり出したろうとあぶらねんどの重さをそれぞれはかる。

 ④さかずきの中の水の重さをはかる。

 ⑤ ろう・あぶらねんど・水の重さをくらべる。

 2.同じたいせきの石と水の重さくらべ  じっけん2

 ① ビーカーの外がわに紙をはりつける。

 ② ビーカーに水を半分ほど入れ,その水面の高さを紙にしるす。

 ③ 水の中に石を入れる。

 ④ 石を入れると,水面は上がる。水面がもとの高さになるまで,水をスポイトでくみ 出して,メスシリンダーへうつす。

 じっけん3

 ① 100em 3のビーカー−2こを上ざらてんびんの両方のさらにのせて,つりあわせる。

 ② じっけん2.のメスシリンダーの水と石とを,それぞれ左右のビーカーに入れる。

 研究

 このほか,鉄のもくねじ,なまりのおもり,ゴムせんなど,水にしずむものについても 同じようにしてしらべよう。

 3.同じたいせきの木と水との重さくらべ  じっけん4,

(11)

       高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報)    109

① じっけん2.のように,ビーカーに水を入れ,水面の高さを紙にしるす。

 ②木ぎれを細いはりにさし,木ぎれがビーカーの水の中にぜんぶつかるまでおしこ

む。

 ③ じっけん2.と同じようにして,木ぎれと同じたいせきの水をメスシリンダーにと

る。

 ④ じっけん3.のようにして,木ぎれと同じたいせきの水の重さとくらべる。

 研究

 このほか,コルクせん,リンゴなど,水にうくものについても同じようにしらべよう。

 4.たまごのうきしずみ  じっけん5.

 ① ま水のはいったビーカーにたまごを入れる。

 ②水に食塩を入れ,よくかきまわしてとかす。これに,ま水からとり出したたまごを 入れる。

 ③ 食塩水をだんだんこくしていく。

 じっけん6.

 ① ビーカーに紙テープをはって目じるしをつけておく。この目じるしまでま水を入れ て,重さをはかる。

 ② 次に,はかりのおもりはそのままにして,ビーカーの水をすてる。かわりに食塩水 を目じるしまで入れて,はかりにのせ,はかりのうでのかたむきを見る。

以上の観察内容を概括してみると,表5のようになる。

表5. C方式の観察内容

(1)ろう・あぶらねんど・木・石の浮き沈み。

(2)同体積のろう・あぶらねんど・水の重さくらべ。

⑧石と同体積の水をとり出す。        、一

(4)同体積の石と水の重さくらべ。

㈲ 同体積の木と水の重さくらべ。

⑥ 水中に沈んでいるたまごに食塩水を注いだときの浮き沈み。

(7)同体積の水と食塩水の重さくらべ。

この観察過程の各段階を,定式化すると,表6のようになる。

(12)

茨城大学教育学部紀要 第十九号

表6. C方式における観察過程の定式

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)

 Om ↓

F ⊂P11  0m ↓

F ⊂P12  0m ↓

F ⊂P13  0m ↓

F ⊂P14 Fgc⊂P・3

9c F ⊂P24  0c ↓

F⊂P201  0e ↓

F ⊂P32  0e ↓

F ⊂P42  0c ↓

F ⊂P51  0m ↓

F ⊂P65e  Ot ↓

F ⊂P6s1  0e ↓

F ⊂P750  0c ↓

F ⊂P7s1

P23⊂R1 P24⊂R2 R1⊂C

P32⊂:R2

R2⊂C P42⊂R2 R2⊂C P51⊂R1

P 6so⊂R2

P651⊂R1

P751⊂R1 Rl⊂C

R1⊂C

  ④ D方式における観察過程とその定式

新指導要領による展開の例として,D方式をとり,その定式化を行なってみた。

1.水にうくものとしずむもの じっけん1,

(13)

      高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報)    111

 下のもののうち,どれが水にういて,どれがしずむか。あらかじめよそうしてからたし かめよう。

 リンゴ,小石,ジャガイモ,コルク,鉄,あぶらねんど,木,ろうそく,発ぽうスチロ  ール

 2.同じ体せきのものの重さ  じっけん2.

 ① 小さな立方体の木へんを用意する。

 ② あぶらねんど,リンゴ,ジャガイモを,それぞれ木へんと同じ体せきに切る。

 ③それぞれの重さをはかる。

 研究1

 発ぽうスチロールのかたまりをじっけん2の木へんと同じ体せきに切り,重さをはかっ

てみる。

 じっけん3.

 ①じっけん2.の木へんのたて・横・高さをものさしではかりその体せきを計算によ ってもとめる。

 ② よくかわかした,からのビーカーの重さをはかっておく。

 ③①で計算によってもとめたあたいだけ,メスシリンダーで水をはかりとり,②で重さ をはかったビーカーに入れる。

 ④ このビーカーを上ざらてんびんにのせて重さをはかる。

 ⑤ からのビーカー一の重さを,④のあたいからさし引いて水の重さを求める。

 体せきをかんたんに計算でもとめることのできないものの体せきのはかり方(略)

 じっけん4.

 ①上ざらてんびんの両方のさらに,からのビーカーをのせてつりあわせておく。

②小石と鉄のねじの体せきをはかり,同じ体せきの水をメスシリンダーではかりと

る。

 ③ それぞれを,上ざらてんびんにのせてあるビーカーに入れて重さをくらべる。

 ④コルクせんやろうそくでも調べる。

 3.えき体の重さともののうきしずみ  じっけん5.

 ① 水・こい食塩水・アルコールを,それぞれ同じ体せきだけはかりとる。

 ② それぞれを,前もって重さをはかっておいたビーカーに入れて重さをはかる。

 じっけん6,

(14)

 ① こい食塩水の中にジャガイモを入れる。

 ② ジャガイモと同じ体せきのこい食塩水を,メスシリンダーではかりとる。

 ③ジャガイモと食塩水との,同じ体せきの重さをくらべる。

 研究2.

 ① じっけん6.のジャガイモのかわりに,あぶらねんどを使って同じようにじっけん してみょう。

 ② じっけん6.の食塩水を,水でだんだんうすめていったら,ジャガイモはどうなる だろうか。ためしてみよう。またどうしてそうなるか考えてみよう。

 じっけん7.

 ①アルコールの中に,木・リンゴ・ろうなどを入れ,うくかしずむかを調べる。

 ② アルコールと氷とを同じ体せきだけとって,重さをくらべる。

以上の観察内容を概括してみると,表7のようになる。

表7, D方式の観察内容

(1)リンゴ・小石・ジャガイモ・コルク・鉄・あぶらねんど・木・ろうそく・発ぽうスチ  ロールの浮き沈み。

(2)同体積の木・あぶらねんど・リンゴ・ジャガイモの重さくらべ。

(3)木と同体積の水の重さくらべ。

(4)石・鉄と同体積の水の重さくらべ。

㈲同体積の水・食塩水・アルコールの重さくらべ。

(6)ジャガイモと同体積の食塩水の重さくらべと浮き沈み。

(7)アルコール中の木・リンゴ・ろうの浮き沈み。

この観察過程を定式化すると,表8のようになる。

表8. D方式における観察過程の定式

ω  Om

 ↓

F ⊂P11  0m ↓

F ⊂P12  0m ↓

F ⊂P13

(15)

(2)

(3)

(4)

(6)

 高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報)

 Om ↓

F ⊂P14  0m ↓

F ⊂P15  0m ↓

F ⊂P16  0m ↓

F ⊂P17

 0m       e  ε  ε

 ↓       P12== P13 == P15=P16

F ⊂P18

 0m        e  ε  ε  ε  ↓       P11=P14== P17=P18==P19

F ⊂P19  0m ↓

F ⊂P27  0m ↓

F ⊂P21  0m ↓

F ⊂P23  0m

F ⊂P26

 0c        ε  ε

 ↓       P21=P27=P37⊂Rl F ⊂P37

 0c       ε

 ↓       P23=P26⊂R2 F ⊂P300

         R1⊂C  R2⊂C  Oc ↓

F ⊂P42

 0c ↓       P42==P45⊂R2  R2⊂C F ⊂P45

 0c ↓

F ⊂P500  0c ↓

F ⊂P501  0c ↓

F ⊂P502

113

(16)

茨城大学教育学部紀要 第十九号

(6)

(7)

 Oe ↓

F ⊂Pe3  0c ↓

F ⊂P66

 Om ↓

F ⊂P77  0m ↓

F ⊂P71  0m ↓

F ⊂P78

P63⊂R1 P66⊂R2 R1⊂C R2⊂C

P77⊂R,

  eP71=:P78⊂R2

R1⊂C R2⊂C

   (6)ESS理科における観察過程とその定式

 ESS理科の学習指導は徹底した形式陶治主義をとっている。理科の知識は忘れ去られ るものであるから暗記する必要はなく,科学の方法を訓練すればよいという過程重視の指 導であるこのような考えから,教材の選択構成も,実質陶治面をほとんど顧慮せず,科学 の方法という形式陶治面から決定する。したがって,ここで検討するeSink or Float も その内容の修得結果にはさほどの期待をかけず,豊かな実験観察を通して考え,創意工夫 する児童の活動に最大のウェイトをかけている。しかしそうはいっても,物の浮き沈みが その物体と液体の同体積の重さにおける大小関係で決定されるという法則性に向って指導 が展開されることにはちがいないのである。この観点に立てば,前述のA〜D方式の場合 と十分比較しうる対象であるといえる。以下その指導展開の要約をのべる。ただし,ここ で物の浮き沈みそのものの学習活動の前にのべられている Materials Preliminary Activity:Balances Assembling the Balance は,学習の補足的な部分であるので省 略し,専ら浮き沈みに関する部分をとりあげることにする。

 1  Sink or Float   1. Sink or Float

 いろいろな固体物体の水に対する浮き沈みを観察する。

 材料……Plastjcine, Paper Clips, Rubber Erasers, Sponge, Stone,Bar Soap,

     Paraffin, Cork.       1   2, Sinking Floaters

(17)

       高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報)    115

 水の上に浮いている物を沈ませる工夫をする。例えば物の上に重りをのせるとか,ガラ スのコップを逆さにかぶせて下方に押し下げる(厳密には沈むというより水面を降下させ るといった方がよいかもしれない)などの方法をとる。   

  3. Floating Sinkers

 水の中に沈んでいる物を浮かす工夫をする。例えば沈んでいるPlasticineやClayを扁 平にし舟形に変形することによって浮かせ,また数片に分離すれば再び沈むといった実験 を行なう。

  4. Boats

 ClayをBoatの形にすれば,その上に他の物体(旅客にたとえている)を少しのせても 沈まないこと。

  5. Foil Packages

 Aluminum Foilなどはそのままでは沈むが,ボール状に丸めてしまうと浮くこと。

  6. Straws

 Plastic Strawが浮くこと。これを利用して一端に重りをつけることによって一方が沈 み一方が浮くように工夫し,Hydrometer製作の方向に指導する。

  7. Salt Water

 水と食塩水を並べ,同じ物体が一方においては沈み,一方では浮くことを観察する。ま たどちらの液でも浮く物体の場合は,液面下に沈んでいる部分の厚さが異なることを確か

める。

  8. Making Salt Water

 食塩を水に加えながら,濃度の異なる食塩水を作っていき,浮き沈みの実験を行なう。

  9, Comparing

 同体積の水と食塩水の重さを比較し,これを物の浮き沈みに結びつける。   .

  10.  Other Substances

 9と同じことを他の物質についても行なう。

 材料……Sugar,Table Salt, Baking Soda, Glycerineの各水溶液。

     Alcohol, Linsed Oil, Motor Oil, Corn Syrup, Glycerine,

     Pancake Syrup.

 この中には,同体積の重さが水より軽いものと重いものが共に含まれている。

  11.,tOii

 9,10と同じことをOilについても行なう。ただしOi1は取り扱い難い液体なので,教師 のDemonstrationに止めてもよい。

(18)

 ll  Tubes

  1. Tubes       

 無色透明のPlastic Tubeに水を入れ,栓をし,この中で物の浮き沈みをしらべる準備

をする。

  2. Elevators,

 1で用意したTubeの中にAluminum Cylinderを入れ, Tube全体を逆さにすると,

水中を降下し,いわゆるDown Elevatorになる。 Wooden Cy!inderを入れるとUp Elevatorになる。このようにして Down and Up Elevators の実験をする。

  3. Fa11ing Objects

 。まずいろいろな物体をTubeの中に入れ実験すると,同じ落ちる物でも,物質によっ て落ちる速さが異なることを観察する。

 。水中に物体が沈む場合は,重いものも軽いものも皆同じだけの水面上昇を起すこと,

浮く場合は重いものの場合の方が水面上昇が著しいことを実験する。

 。水の入ったTubeを通してTubeの向う側に物や人間を見て確かめる。このTubeが レンズと同じようないわゆる Optical Effect を示すことを認める。

 。物体を液体に沈めたときは,Water, Alcoho1, Salt Waterなどの液体の種類に関係 なくいずれの場合も排水量が等しいことを確かめる。

 皿. Comparing,,

 。Strawの一端にSmall Ball of Plasticineをつけた一種のHydrometerを作りこれ を使って同体積の液体の重さのちがいが,区別できることを知る。

 。これまでの実験からいろいろな物質のRelative Weightを比較し,液体と同体積の 重さの大小関係に結びつける。

 以上の実験観察内容を実質的に物の浮き沈みに関するものに絞って,定式化すると表9 のようになる。

 表9, ESS Sink or Float における観察過程の定式

(1)  Om

 ↓

F ⊂Plo  Om ↓

F ⊂P11  0m ↓

F ⊂Pユ2

(19)

2

  

004

( 

5

6

 高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研筑(第23報)

 Om        ε  ε  ε  ↓       Plo==P11=:P12==Pls

F ⊂P1,9

 0m ↓

F ⊂P14  0m ↓

F ⊂P15  0m ↓

F ⊂P 16

 0m ↓

F ⊂P17

 0m        ε  ε  ε  ε  ↓       P14=P15=P16=・P17==P18

F ⊂P18  0t ↓

F ⊂.P210  0t ↓

F ⊂P!210  0t ↓

F ⊂P310  0t ↓

F ⊂P41e  Ot ↓

F ⊂P490  0t ↓ F ⊂P4!o

 Om ↓

F ⊂P510  0m ↓

F ⊂P511

 0c ↓       P600⊂R2 F ⊂P600

 0。

 ↓       P 601⊂Rl F ⊂P601

 0e ↓

F ⊂P602  0c ↓

F ⊂P601ノ

117

(20)

(7)

〈8)

(9)

き 

る 

コリ 

  

  

き 

  

60

04

P e=

03

P ε=

01

P ε=

02

P

R

07

P ε=

06

P ε=

05

P

R

09

P ε=

08

P

R1⊂C R2⊂C

 表9においてPの右下の数字にダッシュ(つの記号をつけたものがある。これは同じ材       、

料の加工晶のように実質的に材質が同じでありながら,一応別の物体であるときである9

(21)

高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研筑(第23報) 119

例えばプラスチックに対してその加工品,食塩に対して食卓塩といった場合である。また PそのものにダヅシュがついているP/210であるが,これは,水上に浮いている物体にガ ラスのコップをかぶせて押し下げ,中の物も下降する現象についての命題であり,本来の 浮き沈みからずれた場合である。

 §3.各方式の観察過程の比較

   (1)観察過程における諸要素の集計とその解釈

 これまでのべてきたA,B, C, D各方式とESS理科 Sink or Float の計5種の観 察過程の定式の中には,それぞれかなり多量のP,R, Cその他の要素が含まれている。

そこで各方式の観察過程の比較を行なうために,ここで諸要素の集計をしてみると,表10 のようになる。

  表10.観察過程における諸要素の集計

要素〜些メーA B C D E S S

P 17 25 14 25 37

ε 4 5 。i12 13

⊂R1 4 7 4 3 3

⊂R2 3 5 4 4 2

⊂R 7 12 8 7 5

⊂C 5 10 6 7 2

初めのRまでのP 7 10 5 14 19 初めのCまでのP 8 14 7 15 37 初めのCまでのR 2 4 2 2 5 初めのCまでのOm 6 8 4 13 14 初めのCまでの0・ 2 6 3 2 13 初めのCまでのOt 0 0 0 0 10

P/R 2.4 2・11 1・81 3・61 7。4 P/C 3・41 2・51 2・31 3・61 18.5 P/(R+C) 1・4 P 1.1 1・・1 1・81 5.3

 まず一般的に考えられることは,一つの教材の学習過程に含まれる観察は豊かなほど児 童の感覚・知覚を通していわゆる感性的認識を助長し,これがひいては理性的認識に達す る可能性を開くことである。ただここで注意しなければならないと思われる二つの問題が

(22)

ある。一つは授業時間が無制限でない以上当然行ない得る観察の量には限界があるし,ま たある定った時間内で行なう観察の量は,ある程度以上になると学習効果は却ってマイナ スになることもあるのではないかという問題である。もう一つは観察は豊かなほどよいと しても,その豊かさというのは,単に量的な豊かさだけでは不十分で,質的な豊かさをあ わせもつ必要があるのではないか。強調していうならば,むしろ質的な豊かさこそが観察 効果に最も寄与する要因ではないかということである。さてこのような二つの問題を意識 しながら,表10をみてみると,まず表の上の方にあるP,εなどの数は観察の量的な豊か さを示すものといえる。そこで観察の質的な豊かさを示すものは何なのか,しかもそれを 数量的に表現できないものかという観点から考察した結果,この教材の学習過程における 鍵概念Cに着目し,それに至る観察機能に焦点をあててみたのである。またCに至る途中 の段階で現われる関係Rにも着目してみたわけである。このような考えから求めた集計が

「初めのRまでのP」,「初めのCまでのP」などの数値である。つまり初めのR,初めの Cに至る観察過程は,学習内容を定着させるための決定的段階である。この段階で豊かな 観察を経て関係または概念に達することは,みずみずしい生の感性的認識と結びついた関 係または概念を把握させることができる。その反対にこの段階で貧弱な観察しか経ないで 概念に到達させようとすると,いわゆる「ひからびた抽象」が行われ,一応把握したよう にみえる概念も深い定着は期待できず,したがって生きて働らく知識の形成がおぼつかな

くなるといえよう。

 この段階における観察の豊かさを表からよみとると,まずすべての項目においてESS 理科の場合が圧倒的にすぐれている。ただこの場合はTeacher s Guideにのべられた観 察内容で,すべての観察を必ず行なうとは限らず,また授業時間も多くとれることをあわ せ考えて,一応これを別格とすると,あとのA,B, C, D各方式の比較はつぎのように なる。「初めのRまでのP」ではD,B, A, Cの順,「初めのCまでのP」ではD, B,A,

Cの順,「初めのCまでのR」ではBが一番で他は同じ,「初めのCまでの0司ではD,

B,A, Cの順,「初めのCまでの0,」ではB, C,他は同じ,「初めのCまでのOt」で はA〜Dすべての方式に含まれていないという結果になる。全体としてはDついでBがす

ぐれているのではないかと考えられるが,前報にものべたように,集中的観察Ocの豊か さは特に重視されるので,もしこの教材においてもこのことがそのままいえるとするなら ばB,Cもかなり高く評価しなければならない。

 つぎに一つの関係Rを導くのにどれだけのPを得ているかを比の形で求めてみたのが P/Rであり,一一つの概念Cを抽出するのにどれだけのPから行なっているかをP/Cであ らわしてみた。さらにRとCの両者を共に含めて考えるために,P/(R+C)という比を

(23)

高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第23報) 121

求めてみた。これらの比の値においてもESS理科は圧倒的に高い値を示しているが, A

〜D各方式においてはいずれもD,A, B, Cの順になる。これらの比は,一つの関係ま たは概念を得る過程における観察の豊かさであり,どれだけたんねんな観察を基礎にして 導いているかをあらわすわけで,この点からもD方式はすぐれていることになる。

 以上のような比較が成り立つわけであるが,今後はこれを検証してみたいと考えてい る。この場合つぎにのべる実験操作の性格の比較とあわせて検証する予定である。

   ② 鍵概念に関する実験操作の性格の比較

 この教材の鍵概念は,物の浮き沈みを決定する要因である物体と液体の同体積の重さの 大小関係の基礎となる「同体積の重さ」である。ところでこの同体積の重さを測るために は,物体と同体積の水を取り出しまたは示して測ることが前提となる。この「同体積の水 の扱い方」にはいくつかの種類の操作があり得る。そしてこの操作は鍵概念を明瞭に把握 し,その正しいイメージを形成するためには重大な影響をもたらすものである。まさにこ の教材を象徴する操作であるこのような観点から,「同体積の水の扱い方」における実験 操作の性格を比較することは,各方式の観察過程を吟味する上で欠くことのできない本質 的な問題であると考え分析してみた。

まず各方式における操作を簡略化して図示すると,図のようになる。

  図.各方式における「同体積の水の扱い方」

A B C D

 (ESS理科の場合はB方式と同じ操作をとっている。)

 A方式の場合は,メスシリンダーに水を入れ,その中に物体を沈める。浮く物体につい ては針などで押しこむ。このときの水面の前後の差を読みとり,これが物体と「同体積の 水」であるとする。

 B方式の場合は,ビーカーに水を入れ,その中に物体を沈め,上昇した水面の高さにビ ーカーの外側から線を引き,つぎに物体を外に取り出し,その代りに前につけた線の高さ

まで予め測ってあるメスシリンダー内の水を少しつつ入れる。これによって物体の代りに 入れた水,すなわち「同体積の水」をつかめることになる。

 C方式の場合は,ビーカーに水を入れ,始めに水面の高さにビーカーの外側から線を引

(24)

茨城大学教育学部紀要 第十九号

き,つぎに物体を沈め,水位の上った水を少しつつ空のメスシリンダーに移し入れ,元の 水位に戻し,結局「同体積の水」をメスシリンダー内に移しとるのである。

 D方式の場合は,メスシリンダーに水を入れ,始めに水位を読み取り,つぎに物体を沈 め,水位の上った水を少しつつビーカーに移し入れ,元の水位に戻し,つまり「同体積の 水」をビーカーにとり,その体積はメスシリンダーの目盛の差ではかるわけである。

 以上の各方式における「同体積の水の扱い方」の実験操作は,それぞれ個性を持ってい るが,これらを比較する観点としてつぎのようなものが考えられる。

 ① 直接性

 ある実験操作によって,取り出された「水」がどれだけ直接的に物体と「同体積の水」

を示しよく表現しているかという観点である。眼の前に取り出された水がなるほど物体と

「同体積の水」だと,できるだけはっきり実感できることは非常に望ましいことである。

このような実験操作の性格を「直接性」という言葉で表現してみた。この直接性の観点か らみて,その大きい順に並べるとB,D, C, Aの各方式となる。なおESS理科の場合 は実質的にB方式と同じであり直接性の大きな実験操作を行なっていることになる。さて B方式においては,取り出した物体の代りに水を入れるのであるから最も直接的であり,

D方式とC方式においては物体による水位上昇分だけの水を取り出すので,その前提とし て物体を入れると物体と同体積分だけ水位が上昇するということを認識していなくてはな らない。その点でやや問接的ではあるが,「同体積の水」を外に取り出して示すのである からその点では直接性を持っている。D方式とC方式とではほとんど差がないが,強いて いえばD方式の場合の方がメスシリンダーのため水位上昇がより著しくみられ,その場で 目盛を読み,やや直接性が高いと考えられる。これに対し,A方式においては,物体によ る水位上昇を読み取るだけで,その前提として物体と同体積の水位上昇が起こることを当 然とする認識がなければならず,その上同体積の水を取り出しもしないので,最も間接的 な実験操作である。

 ある概念を認識する場合,できるならばそれを視覚的に把握するのが最も確かな認識に なろう。その点でこの直接性の尺度は鍵概念に関する実験操作の性格としては極めて大切 なものといえよう。

 ② 正確性

 実験観察はそれが正確であるほど望ましいことは当然であるが,この場合は物体と「同 体積の水」の体積をどれだけ正確に測ることができるかの程度である。この正確性の観点 からみて,その大きい順に並べてみると,A, D, C, Bの各方式となる。 A方式やD方 式はメスシリンダー内で前後を読み取るのであるから最も正確に測れるが,C方式やB方

(25)

高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研筑(第23報) 123

式の場合はビーカーからの水の出し入れに伴なう誤差はかなり大きくなるわけである。

 ③ 簡易性

 実験操作における手の動きがどれだけ簡単でたやすいかの程度をさしており,この場合 はその大きい順に並べてA,D, C, Bの各方式となる。

 上述の三つの観点からみた各方式の順位をまとめると表11のようになる。

表11,実験操作の性格と各方式の順位

一 方 式

      A

 性 格  一一一 B C D ES S

直  接  性 4 1 3 2 1

正  確  性 1 4 3 2 4

簡  易  性    1 4 3 2 4

 以上は実験操作の持っている三つの性格における比較であるが,これらの性格の学習指 導における重要性の軽重が問題である。この問題は教材の性格とも関係をもちあるいは一 概にいえないことであるかもしれないが,筆者は一応これらの内でも特に直接性の大小は 重要な意味をもっているのではないかと推測している。この点に関しては今後検証してみ

たいと考えている。

 §4.観察効果を支配する主な要素

 教材「物の浮き沈み」の学習における鍵概念は物体と液体との間で大小関係が比較され る「同体積の重さ」であるが,この概念は「重さ」という概念と「体積」という概念との 組合せ・複合によって成り立っている。「同体積の質量」の代りに「密度」という概念を

とってみてもこの点においては全く変りはない。ここで「重さ」の概念は体感とも結びつ きやすいし,子どもも認識しやすい。「体積」の概念は「長さ」や「面積」(通俗的には 広さ)の概念に比べれば複雑であるが,小学校4年生にとっては算数での指導も既にな されており,難しいことはない。しかし,この両者を結びつけて考えることは,やはり一 段高次の概念形成を要することは否定できない。この点に着目すれば「物の浮き沈み」の 指導過程は,相当たんねんな観察過程を経た上での概念形成でなければならないことにな る。その点で前述のように豊かな観察は効果的であろう。物の浮き沈みは物体と液体との 同体積の重さの大小関係で決まるのではあるまいかという一種の仮説は豊かな観察によっ て受け入れられていくであろう。この点についてヘンペル(Carl G・Hempe1)はつぎの ように云っている。

 「科学において,仮説の受容可能1生(Acceptability)あるいは信頼1生(Credibility)と

参照

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