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原 爆 と 社 会 保 障 法

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(1)

は   じ

  め

  に

  一九 四五 年八 月、 アメ リカ 合衆 国は 第二 次大 戦終 結後 の世 界的 覇権 を確 保す るた めに

、人 種的 差別 観に 基づ いて

、広 島、 長 崎に 原子 爆弾 を投 下し た。 日本 政府 は終 戦前 にこ の原 爆投 下に 対し てア メリ カ政 府に ただ 一度

、抗 議し たこ とを 除い て、 今 日に 至る まで 原爆 災害 の被 害者 に対 して 抑圧 する 立場 を維 持し てき た。 二〇

〇三 年四 月に 始ま った 原爆 症認 定集 団訴 訟 は

、遂 に業 を煮 やし た被 害者 たち のま さに 命を 掛け た抗 議で あっ   孫振 斗事 件最 高裁 判決

(昭 和五 三年 三月 三〇 日一 小判

)に おい て、 かつ ての 原爆 医療 法に つい て、 これ を「 社会 保障 法 と 国家 補償 法の 複合 的性 格」 とす る見 解が 判示 され た後

、社 会保 障法 学界 は、 その 意味 する とこ ろを

、一 部の 研究 者を 除 い て継 続的 に検 討し てき たと はい えな

たと えば 二一 世紀 の入 口に あた って 学会 の理 論水 準を 問う た『 学会 講座

』に お い ても 独立 した 章を 見出 すこ とは でき な   本稿 は、 社会 保障 法の 視点 から 原爆 被害 を把 握す るさ さや かな 試み であ

( 1

( 2

( 4

五 三

(      

) 五 三

原 爆 と 社 会 保 障 法

   

田  

   

   

(2)

  なお この 小論 を故

・竹 中康 之教 授に 捧げ るこ とを お許 しい ただ きた い。 竹中 教授 と私 はほ ぼ同 世代 であ るが

、私 が社 会 保 障法 学会 に加 入し た頃

、彼 は既 にE C社 会保 障法 の若 き第 一人 者で あっ た。 大分 で開 催さ れた 社会 保障 法学 会の 昼休 み に

、三 井正 信・ 広島 大教 授と 竹中 教授

、私 の三 人で 日本 文理 大の 学内 を散 策し た。 春ら しい 暖か い日 差し のな かで

、全 く の 与太 話を した

。わ れわ れに は時 間は 永遠 にあ るよ うに 思え

、死 は遙 かに 遠く 想像 もつ かな かっ た。 時間 は残 酷だ

。あ の 春 の陽 気の 中で

、わ れわ れは 貴重 な時 間を 失っ てい たこ とに 気が つか なか った

。   竹中 教授 の死 は早 すぎ た。 彼の 無念 の思 いが

、徒 に馬 齢を 重ね るの みの 私を 鞭打 って くれ れば 幸い であ る。

( 1

)  原 爆 症 認 定 集 団 訴 訟 に つ き

、 伊 藤 直 子

・田 部 知 江 子

・ 中 川 重 徳『 被 爆 者 は な ぜ 原 爆 症 認 定 を 求 め る の か

』 岩 波 書 店( 二

〇 六 年

)、 長 谷 川 千 秋 著

・ 京 都 原 爆 訴 訟 支 援 ネ ッ ト

『 に ん げ ん を か え せ   原 爆 症 裁 判 傍 聴 日 誌

』 か も が わ 出 版

( 二

〇 一

〇 年

) な ど

( 2

)  社 会 保 障 と 被 爆 者 援 護 法 制 と の 関 連 に つ い て は

、 小 川 政 亮

「 被 爆 者 援 護

」『 ジ ュ リ ス ト 臨 時 増 刊

・ 特 集

・ 損 害 賠 償 制 度 と 被 害 者 の 救 済

』 有 斐 閣

( 一 九 七 九 年

) 所 収

、 荒 木 誠 之

「 援 護 法 と 社 会 保 障

」 沼 田 稲 次 郎

・ 小 川 政 亮

・ 佐 藤 進 編

『 現 代 法 と 社 会 保 障

』 総 合 労 働 研 究 所

( 一 九 八 二 年

)、 同「 戦 争 犠 牲 者 援 護

」『 社 会 保 障

・ 社 会 福 祉 事 典

』労 働 旬 報 社

( 一 九 八 九 年

) 四

〇 一 頁

、三 村 正 弘

「 原 爆 被 害 者 援 護 法 と 社 会 保障 の 一 考 察

」『 I P S H U 研 究 報 告 シ リ ー ズ

・ 研 究 報 告      原 爆 被 害 者 相 談 員 の 会 か ら の 報 告

No.

23

広 島 大 学 平 和 研 究 セ ン タ ー

( 一 九 九 六 年

) 一

〇 五 頁

、岡 田 正 則

、 藤 原 精 吾

、島 方 時 夫

「 戦 争 被 害 と 社 会 保 障

」 井 上 英 夫・ 高 野 範 城 編

『 実 務 社 会 保 障 法 講 義

』民 事 法 研 究 会

( 二

〇 七 年

)所 収

、 小 川 政 亮 著 作 集 編 集 委 員 会 編『 小 川 政 亮 著 作 集 8   社 会 保 障 と 平 和

・ 国 籍

・ 被 爆 者

』 大 月 書 店

( 二

〇 七 年

) な ど

。   筆 者 の 研 究 と し て は

S h inY ama d a, T h eL a wo f th eS u p p or t of th eA to mi c B omb S u rv iv or s ., p p . 12 , 19 97 , U n iv e rs ityo f Jo sz e f

A tti la , S ze g e d , Hu n g ar y.;

山 田 晋

T h eL awo f th eS u p p o rt o f th eA to mi c B o mb S u rv iv o rs .

」 社 会 学

・ 社 会 福 祉 学 研 究 一

〇 号

( 一 九 九 七 年

) 一 七 頁

、「 社 会 手 当 を 受 け る 権 利

」事 典 刊 行 委 員 会 編

『 社 会 保 障

・社 会 福 祉 大 事 典

』 旬 報 社

( 二

〇 四 年

)四 九 八

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

五 四

(      

) 五 四

(3)

、「 社 会 的 援 護 の 種 類 と 類 型( 援 護 法 を 中 心 に

)」

『 社 会 福 祉 エ ン サ イ ク ロ ペ デ ィ ア

』 中 央 法 規( 二

〇 七 年

) 五

〇 頁

、「 所 得 保 障 法 の 体 系 と 構 造

・ 試 論

」 荒 木 誠 之

・ 桑 原 洋 子 編

『 社 会 保 障 法

・ 福 祉 と 労 働 法 の 新 展 開

』 信 山 社

( 二

〇 一

〇 年

) 七 九 頁

( 3

)  全 六 巻中

、 第六 巻に 藤 原精 吾

・ 論文

、「 総論

─ 賠償

・ 補 償か ら社 会 保障 制 度へ

」 日本 社 会保 障法 学 会編

『 講座   社 会 保障 法 6巻   社 会 保 障 法 の 関 連 領 域

─ 拡 大 と 発 展

』 法 律 文 化 社

( 二

〇 一 年

) が 所 収 さ れ る の み で あ る

( 4

)  西 埜 教 授 は

、 戦 争 犠 牲 者 補 償 につ い て

、 全 体 を 展 望 し た 体 系 的 な 補 償 理 論 の 樹 立 が 喫 急 の 課 題 で あ る と 指摘 す る

。 西 埜 章「 戦 争 犠 牲 者 補 償 序 説

」 法 政 理 論 二 六 巻 四 号

( 一 九 九 四 年

) 二 二

〇 頁 以 下 所 収

一 節   原

  爆

  被

 

  一九 四五 年八 月に 広島

、長 崎に 投下 され た原 爆は わが 国に 甚大 な被 害を 及ぼ した

。そ れら はま さに 筆舌 に尽 くせ ぬカ タ ス トロ フィ ーで ある が、 本稿 で必 要な 限り に限 定す れば 以下 のよ うな もの とな る。 すな わち

、原 爆に よる

、市 民に 対す る 無 差別 殺戮

、医 療的

・生 活障 害的 被害

(原 爆投 下に よる 熱線

、爆 風な どに よる 外傷

、そ の治 癒異 常、 いわ ゆる 原爆 症、 障 害 など

)、 所 得稼 得能 力的 喪失

(労 働能 力の 低下

、喪 失)

、精 神的 被害

、財 産的 被害

(家 屋の 崩壊 など

)で ある

。   原爆 によ る市 民の 無差 別殺 戮は

、原 爆の 被爆 の直 接的 影響 によ り、 即死 およ び急 性期 原爆 症( 被爆

~4 箇月 以内

)の 死 者 は、 広島 で約 一四 万人

、長 崎で 約七 万人 とさ れる

。一 家の 稼ぎ 手も 多く ここ に含 まれ

、残 され た遺 族は 瞬時 に収 入の 途 が 閉ざ され た。 急性 期 を超 えて 生命 を維 持で きた もの の

、原 爆症 や被 爆に よる 身体

・精 神に 障害 を負 っ た者 は

、医 療的 ニ ー ズ や社 会福 祉的 支援 を要 する 生活 障害 的ニ ーズ をお わさ れた

。ま た被 爆に よる 疾病 や身 体障 害は

、当 人の 労働 能力 の低 下 や 喪失 を惹 起し

、所 得的 喪失 をも たら した

。被 爆に よる 財産 的被 害と して は、 家屋 の崩 壊な どが ある

。家 屋を 焼失 する こ と は財 産的 被害 のみ なら ず、 住居 を失 い生 活基 盤を 喪失 する こと を意 味し た。 以下 に原 爆被 害に 法は どの よう に対 応し て

( 1

害 )

原 爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

五 五

(      

) 五 五

(4)

き たか を見 る。

(  一)  原 爆の 医療 的被 害の 保障 法制   戦時 災害 につ いて は、 戦時 災害 保護 法( 昭和 一七 年法 七一 号) によ り保 護を うけ るこ とが でき

同法 六条 は救 助の 種 類 とし て「 医療 及び 助産

」を 規定 して いる

。事 実、 広島

、長 崎に おい ても 戦時 災害 保護 法に よる 救助 が実 施さ れた

。し か し 同 法の 施行 規 則

(昭 和一 七 年厚 生省 令 二六 号) は

「救 助ヲ 為 スベ キ期 間 ハ二 月以 内ニ 於 テ地 方長 官 之ヲ 定ム

」( 三条

) と 規定 して おり

、同 条但 し書 きで は延 長が 可能 であ った にも かか わら ず、 広島

、長 崎に おい ても 延長 はさ れず

、一

〇月 に は 戦時 災害 保護 法に よる 救助 はう ち切 られ た。 この 後、 一九 五七 年に 原子 爆弾 被爆 者の 医療 等に 関す る法

(原 爆医 療法

) が 制定

・施 行さ れる まで

、被 爆者 の医 療に 関し ては

、原 則的 に自 己負 担、 ある いは 生活 保護 法の 医療 扶助 によ るこ とに な る

。   原 爆医 療法 は

「被 爆 者」

(被 爆時 爆心 地か ら およ そ四 キロ 以 内に いた 者、 早期 入市 者、 胎 内 被爆 者) に

「原 子爆 弾被 爆 者 健康 手帳

」を 交付 し、 健康 診断 や疾 病に 関し ては 審査 を経 て経 費を 国が 負担 する こと とな った

。そ の原 爆医 療法 は、 被 爆 者援 護法 に引 き継 がれ る。   な お原 爆医 療 法は

、 医療 給 付に つい て 当該 疾病 が 原爆 の傷 害作 用 に起 因す る こと

( 起 因性

) と、

「現 に医 療 を要 する 状 態 にあ る」 こと

(要 医療 性) を要 求し てい る。 老人 性白 内障 を伴 う原 爆白 内障 につ いて

「要 医療 性」 を容 認し たも のと し て

、 い わゆ る 石田 原爆 訴訟 が ある

( 広 島地 裁判 昭 和五 一年 七月 二 七日

・ 判タ 三 三八 号一 一 一頁

)。 脊髄 円錐 上 部症 候群 に つ いて

「起 因性

」が 否定 され た例 とし て、 桑原 訴訟 があ る( 広島 地裁 判昭 和四 八年 四月 一九 日・ 判時 七〇

〇号 八九 頁、 広 島 高裁 判昭 和五 四年 五月 一六 日・ 判時 九四 四号 四〇 頁)

( 2

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

五 六

(      

) 五 六

(5)

  いわ ゆる 東訴 訟で は肝 機能 障害 に原 爆「 起因 性」 が認 めら れた

(平 成一 六年 三月 三一 日東 京地 裁判

、判 時一 八六 七号 三 頁

、 平 成一 七年 三 月二 九日 東京 高裁 判

)。 ま た 右半 身不 全麻 痺 につ いて

「 起 因性

」 およ び

「 要医 療性

」 を 認め たも のに 松 谷 訴訟 があ る( 長崎 地裁 判平 成五 年五 月二 六日 判タ 八一 六号 二五 八頁

、福 岡高 裁判 平成 九年 一一 月七 日・ 判タ 九八 四号 一

〇 三 頁、 最 高 裁判 平成 一 二年 七月 一 八日

・ 判時 一 七二 四号 二 九頁

)。 虚血 性心 疾 患に つい て 放射 線起 因 性を 認 めた 判例 も あ る( 高知 地裁 平成 二一 年三 月二 七日

)。

(  二)  原 爆の 所得 的喪 失   戦 時災 害 保 護法 は 一 六条 で

、 戦 時災 害 に 因り

「傷 痍 受ケ 又 ハ 疾病 ニ 罹 リタ ル 者」 また は 当 該傷 痍

・ 疾病 が 治 癒し た が

「身 体ニ 著シ キ 障害 存ス ル 者」 に 対し て 扶助 がな され る こと を規 定 する

。 その 内 容は

、 生活 扶 助、 医 療扶 助、 出産 扶助

、 生 業扶 助で ある

(一 七条

)。 し かし 前述 の通 り戦 時災 害保 護法 は二 ヶ月 で適 用が うち 切り とな る。   この 後

、 一九 六八 年 に

「原 子爆 弾 被爆 者に 対す る 特別 措置 法」

(被 爆者 特 別措 置法

) が 制定

・ 施行 され

、 各 種特 別手 当 等 が支 給さ れた

。   その 一方 で、 軍人

・軍 属等 が原 爆に より 被害 を受 けた 場合 に関 して は、 一九 五二 年「 戦傷 病者 戦没 者遺 族等 援護 法」 に よ り援 護が なさ れ、 遺族 年金 の形 で所 得保 障が はか られ てい る。

(  三)  原 爆の 財産 的被 害( 家屋 の崩 壊、 財産 の消 失)   住宅 や家 財の 滅失

、財 産的 被害 につ いて は、 戦時 災害 保護 法に よっ て給 輿金 の形 で補 償さ れる 建前 であ った が、 原爆 被 害 の甚 大さ と状 況の 混乱 から

、そ して 二ヶ 月後 には 戦時 災害 保護 法の 打ち 切り によ り、 ほと んど 私的 財産 の補 償は なさ れ な かっ た。 原 爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

五 七

(      

) 五 七

(6)

(  四)  原 爆の 精神 的被 害   原爆 によ る 精神 的 被害 に 関し て は、 原爆 被爆 に よる 心 的外 傷 後ス ト レス 障 害(

P o st T ra u ma ticS tr es sDi so rd er

P TS D

) の よう なも のと

、国 家に よる 慰謝

・謝 罪を 求め るも のの 二つ があ る。 心的 外傷 後ス トレ ス障 害に つい て、 国が 定め る「 被 災 地 域」

(原 爆被 爆地 域 と第 一種 健康 診 断特 別地 域) の外 で、 爆 心 地か ら半 径一 二 キロ メー ト ル以 内の

「 被 爆体 験者

」 に つ いて は、 長崎 県内 在住 者に 限っ て、 被爆 体験 によ る心 的外 傷後 スト レス 障害 が原 因で 鬱病 など の精 神疾 患に なっ た場 合 の み、 医療 給付 が支 給さ れる

。こ れは

、長 崎県

、長 崎市 の被 爆地 域の 拡大 の要 望に 対し て、 厚生 省が 爆心 地か ら半 径一 二 キ ロメ ート ル以 内の

「被 爆地 域」 未指 定地 域に つい て「 放射 能の 影響 はな いが

、被 爆体 験に よる PT SD など の精 神的 な 健 康影 響が ある

」と して

、二

〇〇 二年 に「 第二 種健 康診 断特 例地 域」 とし て指 定し たこ とに よる

。   後者 の国 家に よる 慰謝

・謝 罪に 関し ては 実現 して いな い。

(  五)  被 爆者 援護 法( 原子 爆弾 被爆 者に 対す る援 護に 関す る法 律)   原爆 投下 当時 の広 島市

、長 崎市 の区 域内

、ま たは 隣接 する 区域 内に 在っ た者

、原 爆投 下の 際ま たは その 後に 身体 に原 爆 の 放射 能の 影響 を受 ける よう な事 情の 下に あっ た者

、そ の者 の胎 児で あっ た者 で、 被爆 者健 康手 帳の 交付 を受 けた もの は、 こ の法 律の 保護 を受 ける こと がで きる

。被 爆者 健康 手帳 は、 申請 によ り、 その 居住 地の 都道 府県 知事 が交 付す る。   援護 とし ては

、健 康管 理、 医療

、手 当等 の支 給、 福祉 事業 があ る。 健康 管理 とし ては

、都 道府 県知 事が 被爆 者に 対し

、 毎 年、 行な う健 康診 断や 指導 など があ る。   厚生 労働 大臣 は、 原爆 の傷 害作 用に 起因 して 負傷 し、 また は疾 病に かか り、 現に 医療 を要 する 状態 にあ る被 爆者 に対 し、 必 要な 医療 の給 付を 行う

。医 療の 給付 を受 けよ うと する 者は

、あ らか じめ

、そ の負 傷、 疾病 が原 爆の 傷害 作用 に起 因す る

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

五 八

(      

) 五 八

(7)

旨 の厚 生労 働大 臣の 認定 を受 けな けれ ばな らな い。 医療 の給 付の 範囲 は、 診察

、薬 剤の 支給

、手 術そ の他 の治 療、 病院 ま た は診 療所 への 入院 など 医療 保険 の範 囲と 同様 であ る。   福祉 事業 とし ては

、都 道府 県に よる

、被 爆者 の心 身の 健康 に関 する 相談

、日 常生 活に 関す る相 談そ の他 被爆 者の 援護 に 関 す る相 談に 応 ずる 相談 事業

、 居 宅生 活支 援 事業

( ホー ム ヘル パー 派遣

、 デ イサ ービ ス

、 短期 入所

)、 施設 入 所に よる 養 護 事業 があ る。   介護 手当 以外 の手 当に つい ては 国庫 負担 であ り、 介護 手当 につ いて は、 介護 手当 の支 給に 要す る費 用に つい ては その 十 分 の八 を、 介護 手当 に係 る事 務の 処理 に要 する 費用 につ いて はそ の二 分の 一を 負担 する

。福 祉事 業に つい ては 国庫 から の 補 助が ある

( 1

)  原 子 爆 弾 の も た ら し た 被 害 に つ い て は

、 広 島 市・ 長 崎 市 原 爆 災 害 誌 編 集 委 員 会 編『 原 爆 災 害   ヒ ロ シ マ

・ ナ ガ サ キ

』岩 波 書 店

( 一 九 八 五 年

) に 詳 し い

( 2

)  戰 時 災 害 保 護 法 に つ い て は

、 赤 澤 史 郎「 戦 時 災 害 保 護 法 小 論

」 立 命 館 法 学 二 二 五・ 二 二 六 号

( 一 九 九 二 年

)四

〇 頁 以 下 所 収

。 な お 戦 時 災 害 保 護 法 の 実 態 に つ い て は

、 吉 田 久 一『 改 訂 増 補 版

・ 現 代 社 会 事 業 史 研 究・ 吉 田 久 一 著 作 集 3

』 川 島 書 店( 一 九 九

〇 年

) 二 三 六

~ 二 三 八 頁 も 参 照

二 節   原 爆 と 社 会 保 障 法

(  一)  従 来の 理論   社会 保障 法学 研究 にお いて は被 爆者 援護 法を

、社 会保 障法 体系 から 除外 する もの

、そ の中 に位 置付 ける もの

、折 衷的 に 原 爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

五 九

(      

) 五 九

(8)

捉 える もの があ る。

① 除外 説   片岡 直教 授は

、戦 争犠 牲者 援護 制度 には 所得 保障 ない し生 活保 障を 目的 とし た給 付と

、慰 藉料 的給 付と が併 存し てお り、 こ れら の給 付を 必要 とす る要 保障 事故 が国 家活 動に より 引き 起こ され たと いう 事実 が、 被害 に対 する 国家 責任

、国 家補 償 の 観念 を強 く要 請し また 慰藉 料的 給付 の存 在も

「戦 争犠 牲者 援護 立法 をし て、 スト レー トに

、社 会保 障法 であ ると いい が た くし てい る」 とす   小川 政亮 教授 は、 被爆 者援 護法 は、 要補 償事 由の 発生 の原 因な いし 成立 の根 拠が

、専 ら権 力の 主体 とし ての 国家 の責 任 に 帰せ られ るべ き活 動の 犠牲 者で ある こと に求 めら れる べき もの であ り、 損失 補償

・国 家補 償・ 国家 賠償 とし て、 一般 の い わゆ る社 会保 障と は異 なる 特殊 の性 格を もつ とす

河野 正輝 教授 も同 趣旨 であ   遠藤 昇三 教授 は社 会保 障法 を「 資本 主義 社会 の諸 法則 の展 開の 必然 的帰 結と して の勤 労諸 階層 の状 態の 法則 的悪 化即 ち 窮 乏化 法則 の展 開が

、生 み出 す」 貧困

=生 活問 題を

、労 働能 力の 再生 産過 程に 照ら して

、体 系区 分す

そし て社 会保 障 法 の特 色は

、貧 困創 出責 任に 対す る損 害補 償請 求権 にあ ると する

。し たが って

、国 家の みに 責任 のあ る戦 争援 護法 や被 爆 者 援護 法制 は社 会保 障法 とは なら ない

。   江口 隆裕 教授 は、 被爆 者援 護法 のよ うに

「被 爆と いう 戦争 に起 因す る被 害を 対象 とし

、被 爆と いう 歴史 的事 実に よっ て 対 象が 固定 され る法 律を

、社 会連 帯や 相互 援助 を基 礎と する 社会 保障 立法 に含 める こと 自体 疑問 であ ると する

。江 口教 授 は

「社 会連 帯や 相互 援助 の観 念は

、観 念的 にせ よ負 担者 の受 益可 能性 を前 提と する もの であ り、 被爆 者の よう な特 定の 者 を 対象 とす る立 法は その 前提 を欠 いて いる

」と す

( 1

( 2

( 3

( 4

( 5

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

(      

) 六

(9)

② 包摂 説   堀勝 洋教 授は

、社 会保 障法 を「 生活 困難 に陥 った 者に 対し 公的 責任 で健 やか で安 心で きる 生活 を保 障す る給 付を 行う 制 度 にあ たる 法」 と定 義、 これ に該 当す るも のは 生活 困難 の原 因、 費用 負担 者を 問う こと なく その 社会 保障 法体 系に 取り 込 ん でい る。 これ ゆえ 被爆 者援 護法 を「 社会 扶助 法」 の「 戦争 犠牲 者援 護法

」に 分類 す   岩村 正彦 教授 は制 度別 体系 説に 立ち つつ

、戦 争犠 牲者 援護 は「 国家 の戦 争責 任を 背景 とす る戦 争犠 牲者 に対 する 補償 の 制 度 であ り、 社 会 保障 とは 理 念を 異に す る」 が

、「 両者 の間 に 近似 性が あ るこ とは 否 定し えず

、 さ しあ たり 社 会保 障の 一 部 に含 めて おく

」と い

こ れら は法 体系 的に は「 その 他」 に分 類さ れて いる

③ 複合 説   社会 保障 法に おけ る、 要保 障事 故の 性格 に応 じて

、そ れに 対応 する 社会 保障 給付 別に 体系 を立 てる 荒木 教授

戦争 犠 牲 者 援護 法は 単 なる

「 戦後 処 理的 な特 別 法」 と 見る べ きで はな く、

「国 家 責任 にも と づく 人権 尊 重の 法、 生 活 保障 の法 と し て の性 格」 を持 つこ と を認 識し な けれ ばな ら ない と指 摘 し、

「 生 活保 障と い う点 では 社 会保 障の 原 理が

、 戦 争被 害者 へ の つぐ ない とい う点 では 国家 補償 の原 理が 基礎 とな って いる が、 この 2つ の原 理が 不可 分に 結び つい てい ると ころ に、 戦 争 犠牲 者援 護の 諸制 度の 特色 が見 いだ され

とい う。 また 被爆 者援 護法 の前 身で ある 原爆 二法 につ いて は「 社会 保障 の 特 別法 とし ての 位置 をし める

」と し、 被爆 者に 対す る国 家補 償の 原理 が根 底に ある 点で

、戦 争犠 牲者 援護 と同 一の 基盤 に 立 って いる とす る。 そし て「 原爆 医療 法は それ 自体 完結 した 立法 とい より

、被 爆者 特別 措置 法と 不可 分に 結び 付き

、い わ ば 原爆 補償 法の 一部 を構 成す るも のと いう べき もの

」と いう

。そ して 原爆 医療 法が 医療 給付 を内 容と する こと に着 目す れ ば

「そ こに いわ ゆる 社会 保障 的性 格を 認め るこ とが でき るの であ るが

、そ の社 会保 障的 性格 とは 原爆 補償 の手 段と して 行

( 6

( 7

( 8

( 9

」 原

爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

六 一

(      

) 六 一

(10)

わ れ る医 療の 機 能を いう も のに ほか な らな い」

。 原 爆二 法の

「複 合的 性 格」 と は

「こ の 二つ の性 格 を並 列的 に とあ らえ る よ りは

、国 家補 償法 とし ての 基本 的性 格と

、そ の医 療級 の側 面に あら われ る社 会保 障的 機能 とに 区別 して 認識 する のが

、 よ り正 確で あろ

とす る。   高藤 昭教 授は 被爆 援護 法制 に関 し、 原爆 二法 は、 原爆 被爆 者の 被害 の特 殊性

、深 刻性 と、 原爆 被害 を生 じさ せた 国家 責 任 と いう

、 二 側面 から 理 解さ れ、

「現 行原 爆 二法 は、 その 二つ の 要素 に対 応 する 社会 保 障性 と国 家 補償 性の 二 重性 格的

、 複 合 的立 法と み るべ き」 で

、「 この 場 合国 家は

、 憲 法二 五条 に 基づ く国 民 に対 する 生 活保 障責 任 主体 と、 戦 争 開始 に対 す る 補 償責 任主 体 との 二重 の 責任 主体 と して あら わ れて い

。 な お教 授は

、 被 爆者 援護 法 を新 たに 立 法す る場 合

、 社会 保 障 法と 国家 保補 償法 の二 つの 選択 肢が ある が、 社会 保障 法と した 場合

、国 家責 任は 問え ない ので

「原 爆被 爆者 援護 法は 戦 争 開始

─原 爆被 爆誘 発に 対す る国 家責 任を 基礎 とす る補 償原 理に たっ て構 想さ れる べ

と する

。   除外 説は

、戦 争と いう 社会 保障 の要 保障 事故 の発 生原 因と その 責任 を重 視す るが

、原 因発 生の 責任 およ びそ の追 求と

、 保 障給 付の 社会 保障 法的 把握 は別 問題 であ る。 労災 給付 や児 童手 当の よう に、 要保 障事 故の 発生 原因 の責 任よ りも

、社 会 的 支援 の必 要性 に関 する 社会 的承 認の 存在 こそ が、 社会 保障 法的 把握 の核 心で ある

。ま た除 外説 にた つと

、原 爆被 害の 補 償 給付 には

、社 会保 障法 の基 本原 理で ある 生活 保障 の原 理が 第一 義的 には たら かず

、被 爆者 の支 援の 実効 性に 疑問 があ る。   包括 説は 理論 的帰 結と いう より も、 厚生 労働 省の 管轄 を丸 のみ して 社会 保障 法域 とと らえ てい るに すぎ ない

( 1

)  片 岡 直

「 わ が 国 に お け る 所 得 保 障 制 度 の 構 造 と 体 系 に 関 す る 一 考 察

」『 社 会 法 の 現 代 的 課 題

─ 林 迪 廣 教 授 還 暦 祝 賀 論 文 集

』 法 律 文 化 社

( 一 九 八 三 年

) 四 五 九 頁 以 下

、 所 収

(  

10

(  

11

(  

12

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

六 二

(      

) 六 二

(11)

( 2

)  小 川 政 亮

「 被 爆 者 援 護 法 の 法 的 考 察 若 干

」 日 本 社 会 事 業 大 編

『 現 代 日 本 の 社 会 福 祉

』 勁 草 書 房

( 一 九 七 六 年

) 九 六 頁

( 3

)  河 野 正 輝

・ 江 口 隆 裕 編

『 レ ク チ ャ

─ 社 会 保 障 法

』 法 律 文 化 社

( 二

〇 九 年

) 五 頁

。 ま た 河 野

「 社 会 保 障 法 の 目 的 理 念 と 法 体 系

」『 学 会 講 座   社 会 保 障 法 一 巻     世 紀 の 社 会 保 障 法

』 法 律 文 化 社

( 二

〇 一 年

) 所 収

、 二 四 頁

、 参 照

。 倉 田 聡 教 授 も 戦 傷 病

21

者 戦 没 者 遺 族 等 援 護 法 や 被 爆 者 援 護 法 な ど を「 国 家 補 償 と し て の 援 護 法 制

」 と す る 点 で 河 野 教 授 と 同 じ 立 場 に 立 つ

。倉 田 聡「 社 会 保 障 と 国 家 補 償

」 加 藤 智 章

・ 菊 池 馨 実

・ 倉 田 聡

・ 前 田 雅 子

『 社 会 保 障 法

( 第 四 版

)』 有 斐 閣

( 二

〇 九 年

)。

( 4

)  遠 藤 昇 三

『「 人 間 の 尊 厳 の 原 理

」 と 社 会 保 障 法

』 法 律 文 化 社

( 一 九 九 一 年

)。

( 5

)  江 口 隆 裕

「 社 会 保 障 法 判 例・ 在 外 被 爆 者 に 対 す る 被 爆 者 援 護 法 に 基 づ く 健 康 管 理 手 当 の 支 給 が 認 めら れ た 事 例

」 季 刊

・社 会 保 障 研 究 四

〇 巻 二 号

( 二

〇 四 年

) 二

〇 七 頁

( 6

)  堀 勝 洋

『 社 会 保 障 法 総 論

( 第 二 版

)』 東 大 出 版 会

( 二

〇 四 年

) 一

〇 六 頁 以 下

( 7

)  岩 村 正 彦

『 社 会 保 障 法

』 弘 文 堂

( 二

〇 一 年

) 一 七 頁

( 8

)  い わ ゆ る 荒 木 理 論 に つ い て は 荒 木 誠 之

『 社 会 保 障 の 法 的 構 造

』 有 斐 閣

( 一 九 八 三 年

)、 柳 澤 旭

「 荒 木

「 社 会 法

」 理 論 の 基 点 と 展 開

─ 労 働 関 係

( 労 働 法

) か ら 社 会 保 障 法 へ

」 山 口 経 済 学 雑 誌 五 五 巻 五 号

( 二

〇 七 年

)、 同

「 荒 木

「 社 会 法

」 理 論 の 展 開 と 到 達 点

─ 労 働 条 件 法 理 か ら 生 活 保 障 法 理 へ

」 広 島 法 学 三 一 巻 一 号

( 二

〇 七 年

)、 同

「 荒 木

「 社 会 法

」 論 の 法 的 構 造 と 特 質

─ 社 会 保 障 法 か ら 労 働 法 へ

」 山 口 経 済 学 雑 誌 五 六 巻 二 号

( 二

〇 七 年

)、 山 田 晋

「 荒 木 理 論 に と っ て 社 会 保 障 法 と は 何 か

~ 柳 澤 教 授

・ 三 論 文 か ら 学 ぶ

」 社 会 学

・ 社 会 福 祉 学 研 究 一 二 七 号

( 二

〇 七 年

)。

( 9

)  荒 木 誠 之

「 戦 争 犠 牲 者 援 護

」『 社 会 保 障

・ 社 会 福 祉 事 典

』 労 働 旬 報 社

( 一 九 八 九 年

) 四

〇 一 頁

(  

)  荒 木 誠 之

「 原 爆 医 療 法 の 性 格 と 受 給 要 件

」 ジ ュ リ ス ト 六 六 七 号

( 一 九 七 八 年

) 六 四 頁

、 引 用 は 六 七 頁

10

(  

)  高 藤 昭

『 社 会 保 障 法 の 基 本 原 理 と 構 造

』 法 政 大 学 出 版 会

( 一 九 九 四 年

)、 同

『 社 会 保 障 法 制 概 論

』 龍 星 出 版

( 一 九 九 七 年

)。

11

(  

)  高 藤 昭

「 原 爆 の う ず き と 法

」 判 例 タ イ ム ズ 三 四

〇 号

( 一 九 七 七 年

) 二 頁

12

爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

六 三

(      

) 六 三

(12)

三 節   被 爆 者 援 護 法 の 法 的 性 質 に 関 す る 裁 判 例

(  一)  初 期の 判例   被爆 者援 護法 制に つい ての 最初 の訴 訟は 桑原 訴訟 であ るが

、第 一審 では 裁判 所は 被爆 者援 護法 の法 的性 質に は言 及し て い ない

。   不法 滞在 者の 被爆 者健 康手 帳交 付申 請を 行政 が却 下し たこ とを 巡る いわ ゆる 孫振 斗事 件裁 判で

、裁 判所 は一 貫し て自 治 体 の不 法滞 在者 の被 爆者 健康 手帳 交付 却下 処分 を違 法と した

。福 岡地 裁( 昭和 四九 年三 月三

〇日 判決

・判 時七 三六 号二 九 頁

、判 タ三

〇六 号) では 原爆 二法 が「 外国 人被 爆者 に対 して も権 利主 体と して の法 的地 位を 与え た法 律と 解さ える こと 前 段 判示 のと おり であ って みれ ば、 同法 はこ の点 にお いて すで に他 のい わゆ る社 会保 障法 とも 類を 異に する 特異 の立 法と い う べき 側面 を有 する もの とい うこ とが でき る」 とし た。   控 訴審 判決

(福 岡高 裁昭 和 五〇 年七 月 一七 日

・判 時 七八 九号 一 一

、「 原子 爆弾 に よる 被爆 は

、 戦争 と いう 全く 個 人 の責 任に 帰す るこ との でき ない 国家 の行 為に よっ て生 じた もの であ り、 しか も、 その 被爆 者は

、原 爆特 有の 放射 線、 熱 線

、爆 風等 の傷 害作 用に より

、一 般戦 災者 の場 合と 比較 して

、肉 体的 にも 精神 的に も社 会生 活の 面で も、 より 一層 悲惨 か つ 不安 定の 状態 にお かれ た点 に顕 著な 特異 性が あり

、原 爆二 法は

、か かる 意味 での 戦争 犠牲 者の 救済 を目 的と した もの と 考 えら れる 一面 があ るの で、 これ を純 然た る社 会保 障法 とし て性 格づ けて しま うこ とは なお 問題 が残 るも のと 言わ なけ れ ば なら ない

」と する

。そ して

「原 爆医 療法 は一 面社 会保 障法 の性 格を もち なが らも

、他 面、 被爆 者に 対す る国 家補 償的 性 格 をも 併有 する 一種 特別 の立 法と いう べく

」と する

( 1

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

六 四

(      

) 六 四

(13)

  石田 訴訟 判決

(広 島地 裁昭 和五 一年 七月 二七 日・ 判時 八二 三号 一七

は、 原爆 医療 法が

「社 会保 障施 策の 一環 とし て 立 案さ れた もの であ るこ とは 明ら かで ある が、 同法 を生 活保 護法 等の 通常 の社 会保 障法 と同 一の 性格 のも のと する こと に つ い ては 疑 問が あり

、「 一面 で は戦 争 犠牲 者と し ての 被 爆者 救済 を 目的 と した もの で 国家 補償 法 とし て の側 面を も 有す る も の」 と判 示し た。

(  二)  孫 振斗 事件 最高 裁判 決   昭和 五三 年に は被 爆者 援護 法制 を巡 る初 の最 高裁 判決 が出 た。 孫振 斗事 件最 高裁 判決 であ る( 昭和 五三 年三 月三

〇日 一 小 判

・ 判時 八八 六 号三

。 最 高裁 は

「 原爆 医 療法 は被 爆 者の 健康 面 に着 目し て 公費 によ り 必要 な医 療 の給 付 をす るこ と を 中心 とす るも ので あっ て、 その 点か らみ ると

、い わゆ る社 会保 障法 とし て他 の公 的医 療給 付立 法と 同様 の性 格を もつ も の であ ると いう こと がで きる

。…

。し かし なが ら、

…。 原爆 医療 法は

、こ のよ うな 特殊 の戦 争被 害に つい て戦 争遂 行主 体 で あっ た国 が自 らの 責任 によ りそ の救 済を はか ると いう 一面 をも 有す るも ので あり

、そ の点 では 実質 的に 国家 補償 的配 慮 が 制度 の根 底に ある こと は、 これ を否 定す るこ とが でき ない

。」 と して

「原 爆医 療法 の複 合的 性格

」を 指摘 する

。   こ れ以 降、 被 爆 者援 護 法の 法的 性 質に 関す る 裁判 所 の見 解は

、〈 国家 補 償的 配慮 を 制度 の 根底 にも つ 複合 的性 格 を持 つ 社 会保 障法

〉と いう もの に定 着 する

。例 えば

、桑 原 訴訟 二 審判 決( 広島 高裁 昭和 五 四年 五月 一六 日

・判 時 九四 四号 四

〇 が ある

。判 決は

、原 爆医 療法 は被 爆者 の健 康面 に着 目し て公 費医 療給 付な すこ とを 中心 とす る点 から 社会 保障 法と して の 性 格を 持つ が「 他面

、被 爆と いう 特殊 の戦 争被 害に つい て戦 争遂 行主 体で あっ た国 が自 らの 責任 によ りそ の救 済を 図る と い う一 面を も有 する もの であ り、 その 点で は実 質的 に国 家補 償的 配慮 が制 度の 根底 にあ るこ とを 否定 しえ ず、 従っ て、 原 爆 医療 法は

、社 会保 障法 と国 家補 償法 の性 格を あわ せも った 複合 的立 法で ある とい うこ とが でき る」 と判 示し た。 また い

( 2

( 3

( 4

) 原

爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

六 五

(      

) 六 五

(14)

わ ゆる 在外 被爆 者に 関す る訴 訟で も、 被爆 者援 護法 の性 質を

「社 会保 障と 国家 補償 の性 格を 併有 する 特殊 な立 法」 とす る 判 断が 定着 して いる

(大 阪地 裁判 平成 一三 年六 月一 日・ 判タ 一〇 八四 号八 五頁

、長 崎地 裁判 平成 一六 年九 月二 八日

・判 タ 一 二二 八号 一五

〇頁

)。   裁判 例で は、 原爆 二法 の法 的性 格に 関す る国 側の 主張 であ る〈 原爆 二法 は社 会保 障法 であ り、 社会 連帯 の基 礎の ない 不 法 入国

・不 法滞 在者 には 適用 がな い〉 とい う主 張を 退け る論 理と して

〈原 爆二 法は 国家 補償 法的 性格 と社 会保 障法 的性 格 を 兼ね 備え てお り、 不法 入国

・不 法滞 在者 であ れ不 適用 とは いえ ない

〉と いう 論理 を用 いた

。国 側も 裁判 所も

「社 会保 障 法

」の 法的 性質 を非 常に 曖昧 なま ま使 用し てお り、 最高 裁判 決の 結果

、原 爆二 法の 法的 性格 につ いて 決着 をみ たと いう わ け では ない

。   孫振 斗事 件最 高裁 判決 を契 機に

、社 会保 障制 度審 議会 答申

(一 九九 七年 一月 二九 日) と、 衆議 院社 会労 働委 員会 附帯 決 議

(四 月二 五日

)を 受け て、 厚生 大臣 の私 的諮 問機 関と して 設け られ た原 爆被 爆者 対策 基本 問題 懇談 会( 会長

・茅 誠司

) は

、一 九八

〇年 一二 月一 一日

「原 爆被 爆者 対策 の基 本理 念及 び基 本的 在り 方に つい て」 とい う意 見書 を提 出し

、原 爆被 爆 者 対策 は「 原爆 被害 とい う特 殊性 の強 い戦 争損 害に 着目 した 一種 の戦 争損 害救 済制 度と 解す べき であ り、 これ を単 なる 社 会 保障 制度 と考 える のは 適当 では ない

」と しつ つも

、国 家補 償の 見地 に立 ちな がら も「 今次 戦争 の過 程に おい て原 爆被 爆 者 が受 けた 放射 線に よる 健康 障害 すな わち

『特 別の 犠牲

』に つい て、 その 原因 の行 為の 違法 性、 故意

、過 失の 有無 等に か か わり なく

、結 果責 任( 危険 責任 とい って もよ い) とし て、 戦争 被害 に相 応す る『 相当 の補 償』 を認 める べき だと いう 趣 旨

」で

、国 の完 全な 損害 賠償 を認 める 趣旨 では ない とい う。   基本 問題 懇談 会・ 報告 は、 戦争 被害 の受 忍論 に立 ちつ つ、 放射 線に よる 健康 障害 すな わち

『特 別の 犠牲

』の みを 補償 す

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

六 六

(      

) 六 六

(15)

る とい う点 にそ の核 心が ある

。   本来

、原 爆被 害者 対策 基本 問題 懇談 会に 期待 され たの は、 法的 位置 づけ が曖 昧で あっ た原 爆二 法を 再検 討し

、原 爆被 爆 者 対策 制度 の方 向性 を示 すこ とが 求め られ たが

、報 告書 は政 府の 弁護 と、 国家 責任 の回 避に 終始 し、 激し い批 判に 晒さ れ る こと にな

( 1

)  判 例 研 究 と し て

、 荒 木 誠 之

「 韓 国 人 被 爆 者 と 原 爆 医 療

」『 社 会 保 障 判 例 百 選

[ 以 下

『 百 選

』 と 表 記 す る

]( 初 版

)』 有 斐 閣

( 一 九 七 七 年

)。

( 2

)  石 田 原 爆 訴 訟 に つ き

、 平 井 勝 彦「 原 爆 医 療 給 付 要 件 と

「 要 医 療 性

」─ 石 田 原 爆 訴 訟

」『 百 選( 初 版

)』

、 久 塚 純 一「 原 爆 医 療 給 付 要 件 と

「 要 医 療 性

」─ 石 田 原 爆 訴 訟

」『 百 選( 二 版

)』 有 斐 閣( 一 九 九 一 年

)、 吉 岡 幹 夫

「 石 田 原 爆 訴 訟 判 決 の 問 題 点

」ジ ュ リ ス ト 六 二 一 号

( 一 九 七 六 年

) 八 二 頁

、加 藤 智 章

「 原 爆 医 療 給 付 用 件 と

「 要 医 療 性

」」

『 百 選

( 三 版

)』 有 斐 閣

( 二

〇 年

)、 阿 佐 美 信 義

「 石 田 原 爆 訴 訟 と 被 爆 者 援 護 法

」 労 働 法 律 旬 報 九 一 二 号

( 一 九 七 六 年

)、 下 山 瑛 二

「 最 新 判 例 批 評

」 判 例 評 論 二 一 七 号

( 一 九 七 七 年

)、 高 藤 昭

「 原 爆 の う ず き と 法

」 判 例 タ イ ム ズ 三 四

〇 号

( 一 九 七 七 年

) 二 頁 な ど

( 3

)  判 例 研 究 と し て 荒 木 誠 之

「 原 爆 医 療 法 の 性 格 と 受 給 要 件

」 ジ ュ リ ス ト 六 六 七 号

( 一 九 七 八 年

)、 荒 木 誠 之

「 原 爆 医 療 法 の 性 格 と 受 給 要 件

」 荒 木 誠 之

・ 林 迪 廣 編

『 判 例 研 究   社 会 保 障 法

』 法 律 文 化 社

( 一 九 七 九 年

)、 吉 岡 幹 夫

「 判 例 批 評

」 判 例 評 論 二 三 八 号

、 伊 藤 博 義

「 韓 国 人 被 爆 者 と 原 爆 医 療

」『 百 選

( 三 版

)』

、 清 水 泰 幸

「 韓 国 人 被 爆 者 と 原 爆 医 療

」『 百 選

( 四 版

)』 有 斐 閣

( 二

〇 八 年

)、 判 例 評 釈 と し て

、 内 野 正 幸

・ 法 学 協 会 雑 誌 九 八 巻 一 号

( 一 九 八 一 年

) 一 一 七 頁

、 橋 本 公 亘

「 損 失 補 償 と 社 会 保 障

」 雄 川 一 郎 編

『 行 政 判 例 百 選 1

』 有 斐 閣( 一 九 七 九 年

) 二 九 三 頁

、 又 坂 常 人

「 国 家 補 償 と 社 会 保 障

」塩 野 宏

・ 小 早 川 光 郎・ 宇 賀 克 也 編

『 行 政 判 例 百 選

( 四 版

)』 有 斐 閣

( 一 九 九 三 年

) 三 六 二 頁

( 4

)  桑 原 訴 訟 に つ き 吉 岡 幹 夫

「 原 爆 医 療 認 定 訴 訟 の 意 義

─ 桑 原 訴 訟 第 一 審 判 決 を 契 機 と し て

」 法 経 論 集

( 静 岡 大 学 法 経 短 大

) 三 二

・ 三 三 号

( 一 九 七 四 年

)。

( 5

)  椎 名 麻 紗 枝

『 原 爆 犯 罪

─ 被 爆 者 は な ぜ 放 置 さ れ た か

』 大 月 書 店

( 一 九 八 五 年

) 一 五

〇 頁 以 下

、 浜 谷 正 晴

「 戦 後 の

「 分 水 嶺

」─

( 5

。 原

爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

六 七

(      

) 六 七

(16)

被 爆 者 対 策 懇 意見 書 に 問 う

」歴 史 研 究 四 九 二 号( 一 九 八 一 年

)、 下 田 平 裕 身「 原 爆 被 爆 者 に対 す る 供 国家 補 償 僑 を 考え る

」 季 刊・ 労 働 法 一 二 三 号

( 一 九 八 二 年

) 一 二 二 頁

、 な ど

四 節   試

          論

  被爆 者援 護法 が社 会保 障法 域に 属す るも のか を論 じる 意義 は何 か? 社会 保障 法域 に属 する とな れば

、そ の解 釈・ 運用 に あ たっ ては

、生 存権 理念 が第 一義 的原 理と なる

。国 家補 償法 域と なれ ば、 行政 法の 原理 が一 義的 に支 配す るこ とに なる

。   現行 被爆 者援 護法 を分 類す るこ とと

、被 爆者 援護 の法 理を 分類 する こと は別 問題 であ る。 被爆 者援 護法 は、 様々 な要 素、 狭 窄物 を単 一の 法文 に包 括し てお り、 かな らず しも 学問 的に 整序 され たも ので はな い。 した がっ て現 行法 をど う分 類す る か に関 して は、 複合 的性 格を もつ もの と把 握す る折 衷説 にな らざ るを 得な い。 例え ば、 放射 線影 響の 研究

(四

〇条

)は 社 会 保障 法の 問題 では ない が、 医療

(一

〇条

)は 社会 保障 法の 問題 であ る。 した がっ て分 類は 相対 的な もの とな らざ るを 得 な い。   では そも そも

、国 家が 被爆 者を 援護

・保 護し なけ れば なら ない のは 何故 か? それ は戦 争が 国家 のも たら した 行為 であ り、 被 爆も その 帰結 の一 つだ から であ る。 した がっ て被 爆者 の保 護の 理屈 は、 国家 補償 であ る。 行政 法学 にお いて は今 村成 和 教 授、 秋山 義昭 教授

、下 山英 二教 授の 所見 の通 りで あ   しか し被 爆者 援護 につ いて は、 一般 的な

・通 常の 国家 補償 の理 論で は、 これ に適 正に 対応 でき ない

。原 爆被 害は その 潜 伏 性、 継続 性に

、国 家補 償法 理が 適用 され る一 般的 な事 象と は異 なる 点が あっ た。 つま り国 家補 償の 論理 は、 原爆 被害 に

( 1

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

六 八

(      

) 六 八

(17)

適 切に 対応 する 論理 を持 ち合 わせ てい なか った

。そ れは

「国 家補 償の 谷間

」と 称さ れる 点と は別 の次 元で ある

。そ れゆ え 被 爆者 援護 につ いて は、 社会 保障 の手 法が 用い られ る。 先に 見ら れる よう に、 社会 保障 は現 実に 発生 して いる ニー ズに 対 応 す るた め、 ニ ー ズを 惹起 した

「原 因」 に 注目 し ない

。「 原因

」 に注 目す る こと が、 か え って ニー ズを 有 する もの の有 責 の 議論 に発 展す るこ とを 回避 する ため であ る。 しか し被 爆者 援護 は「 原因

」の ゆえ に社 会保 障法 域に 投入 され てき たも の と いえ る。   しか し国 家は 被爆 者援 護・ 被爆 被害 の国 家補 償に おい て、 財産 的補 償に すべ てを 還元 する こと も可 能で あっ たに もか か わ ら ず、 あ え て社 会保 障 法に 類似 す る手 法を も って

( 所得 保 障と 医療 保 障を 視野 に 入れ

)、 法制 定 がな され た こと を考 え れ ば、 社会 保障 法域 に取 り込 んで

、被 爆者 援護 法を 解釈

・運 用す るの が適 切で あろ う。   被爆 者援 護法 を社 会保 障法 の範 疇に 含ま せる こと によ り、 国家 の戦 争責 任が 曖昧 にな ると いっ た危 惧感 もあ ろう

。し か し 社会 保障 法に 含ま せる こ とは

、戦 争 責任

・戦 後責 任を 曖昧 にし

、国 家に 免 罪符 を 与え るこ とで はな い。 社会 保 障法 にあ っ て は、 給付 を社 会化 する こと によ り、 事故 責任 も社 会化 した に過 ぎな い。 国家 責任 を棚 上げ にし

、無 罪放 免す るこ とで は な い。 例え ば、 労働 災害 を社 会保 険化 する こと は、 労災 に関 する 企業 責任 を不 問に する こと では ない

。社 会保 障法 に位 置 づ ける こと によ り、 責任 追及 とは 別に

、生 活保 障が 可能 とな る。   社会 保障 法は ニー ズに 着眼 した 給付 体系 の法 であ ると 考え るの であ れば

、上 述の 補償 は社 会保 障法 体系 の中 に組 み込 ま れ るべ きで ある

。そ の上 で、 社会 化さ れた 責任 の性 質に 応じ て、 社会 保険 か無 拠出 かな どの 財源 の問 題が 論じ られ るこ と に なる

。   筆者 は既 にい わゆ る荒 木理 論( 給付 別体 系論

)を 基盤 とし て、 援護 法、 自然 災害 補償 法制

、犯 罪被 害給 付な どを 社会 保 原 爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

六 九

(      

) 六 九

(18)

障 の体 系内 に位 置づ け、 より 包括 的な 社会 保障 法の 所得 保障 の体 系を 提唱 し

こ こで は所 得保 障法 のみ なら ず、 社会 保 障 法の 体系 の中 で被 爆者 援護 法制 につ いて 検討 して みよ う。   まず 被爆 者援 護に 対す る社 会的 給付 がな ぜ社 会保 障法 の体 系に 位置 づけ られ ねば なら ない のか

。   第一 に被 爆者 援護 法の 給付 が、 ただ 支給 され るこ と、 それ 自体 が目 的で はな く、 支給 され るこ とに より 受給 者の 自立 を 促 進す ると いう 要素 を持 って いる から であ る。 この 点で 単な る損 害補 償給 付と は意 味あ いが 異な る。 自立 のた めの 給付 で あ る点 を考 慮す れば

、そ の目 的は 社会 保障 法の 目的 と合 致す る。 社会 保障 の一 環と して 位置 づけ るこ とに よっ て、 給付 の 目 的 を適 正に 達 成で きる

。 社 会保 障法 の 原理 に従 え ば、

「 相 当の 補償

」 で あろ うが な かろ うが

、 自 立達 成ま で の給 付は 継 続 され るこ とに なる

。例 えば

、給 付額 に物 価ス ライ ドを 採用 し、 給付 価値 を生 活時 点に あわ せる こと など が、 社会 保障 法 の 法理 から 考え られ る。   第二 に、 各給 付が 社会 保障 法の 体系 に位 置づ けら れる こと によ り、 給付 水準 が生 存権 理念 によ りコ ント ロー ルさ れる

。 給 付額 の切 り下 げは 正当 化さ れず

、特 に憲 法二 五条 二項 にお いて 不断 の向 上義 務が 国家 に課 され る。 社会 保障 法体 系に 位 置 づけ るこ とに より

、そ の額 の向 上の 理論 的根 拠を 生存 権に 求め るこ とが でき る。   以上 のよ うな 理由 によ り社 会保 障法 に位 置づ ける こと には 意味 があ る。 この 点で も従 来の 除外 説は 再検 討さ れる べき で あ る。   なお 社会 保障 の財 源を 拠出 とす るか 無拠 出と する かは 基本 的に は国 民的 合意

、選 択の 問題 であ るが

、国 家補 償の 要素 の 反 映と して

、給 付に 関す る財 源は 当然 に国 庫か らの 負担 とな る。

( 2

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

(      

) 七

(19)

( 1

)  今 村 成 和

「 国 家 補 償 法

」 今 村 成 和

・雄 川 一 郎

『 国 家 補 償 法

・ 行 政 争 訟 法

』有 斐 閣

( 一 九 五 七 年

) 一 三 一 頁

、 今 村 成 和・ 畠 山 武 道

( 補 訂

)『 行 政 法 入 門

( 七 版

)』 有 斐 閣

( 二

〇 四 年

) 二

〇 七 頁

、 秋 山 義 昭

『 国 家 補 償 法

』 ぎ ょ う せ い

( 一 九 八 五 年

)、 下 山 瑛 二

『 国 家 補 償 法

』 筑 摩 書 房( 一 九 七 三 年

) 四 三 一 頁

、 西 埜 章「 戦 争 犠 牲 者 補 償 序 説

」 法 政 理 論 二 六 巻 四 号

( 一 九 九 四 年

)二 二

〇 頁 以 下 所 収 な ど

( 2

)  山 田 晋

「 所 得 保 障 法 の 体 系 と 構 造

・ 試 論

」 荒 木 誠 之

・ 桑 原 洋 子 編

『 社 会 保 障 法

・ 福 祉 と 労 働 法 の 新 展 開

』 信 山 社

( 二

〇 一

〇 年

) 七 九 頁 以 下 所 収

五 節   被 爆 者 援 護 法 を 含 め た 場 合 の 社 会 保 障 の 法 体 系

  社会 保障 には

、社 会保 障給 付の 対象 とな る伝 統的

・基 本的 なニ ーズ と、 必ず しも 伝統 的で はな いが

、さ まざ まな 理由 や 国 家の 歴史 的経 緯に より

、社 会保 障の 範疇 に包 摂さ れた ニー ズと があ る。 仮に 前者 を「 一般

」、 後 者を

「特 殊」 とす る。

「  一般

」 的類 型 はほ ぼ各 国に 共通 に 見出 すこ とが でき

、 老 齢、 障 害、 遺族

、 失業

、 貧 困な どで あり

、 こ れら は産 業革 命 以 後、 労働 組合 運動 の発 展と 軌を 一に して 発展 して きた もの で、 労働 者か ら一 般国 民・ 市民 へと その 人的 適用 範囲 も拡 大 し てき た。 IL O社 会保 障最 低基 準( 一〇 二号

)条 約が 規定 する 要保 障事 故の メニ ュー は、 この こと の反 映で ある

。   一 方、

「 特 殊」 的 類型 は 各国 に共 通 とい うよ り はむ しろ

、 各 国の 事情 や 法制 度、 歴 史 的経 緯に よ り社 会保 障 に取 り込 ま れ て いる もの で、 戦 争 被害

、 自然 災害

、 犯 罪被 害な どで あ る

(ド イツ

、 ニ ュー ジー ラン ドの 社 会保 障を 見よ

)。 通常

、 社 会 保障 では

、現 実に 生じ てい るニ ーズ に注 目し

、要 保障 事故 の「 原因

」に 注目 する こと はな い。 しか し「 特殊

」的 類型 は し ばし ばそ の保 障す べき ニー ズを 引き 起こ した

「原 因」 に注 目す る。 した がっ てニ ーズ より もそ の「 原因

」が 強調 され

、 し ばし ば補 償と の関 連が 問題 とさ れる

(逆 に、 補償 の議 論の 中で 社会 保障 の包 摂さ れて きた とも いえ る)

。 こ れら の「 特 原 爆 と 社 会 保 障 法

( 山 田

七 一

(      

) 七 一

(20)

」的 類型 の社 会保 障の

「原 因」 を社 会法 的に 把握 すれ ば、

「 社会 の共 同危 険」 の発 露と 捉え られ る。 犯罪 はそ の典 型で

、 社 会を 構成 する 上で 不可 避と もい え、 これ をゼ ロに する こと は不 可能 であ る。 した がっ て、 社会 が社 会た る以 上、 その 必 然 的リ スク によ って 引き 起こ され るニ ーズ に対 して

、社 会的 給付 を行 うこ とが 社会 的に 承認 され る。 その 場合

、生 活保 障 に 着目 され れば 社会 保障 法の 範囲 に含 まれ

、弔 意・ 慰謝 的給 付で あれ ば、 生活 保障 の側 面は 後退 し、 社会 保障 法と は把 握 さ れ ない

。 自然 災 害の 場合

、「 原因

」 は 一般 的に は 人為 的な もの で はな い。 た だ し災 害そ のも は 自然 であ っ ても

、 被害 が 人 為的

(不 作為

)で ある とい うこ とは あり える

。住 民が 居住 して いる 地域 に自 然災 害が 襲っ た場 合、 その 災害 の可 能性 が 予 想で きれ ば、 国家 は当 該住 民を 転居 させ たり

、居 住禁 止と する こと もで きた はず であ る。 国家 がそ れを しな かっ た・ で き なか った のは

、住 民・ 国民 の合 意を 得ら れな かっ たり

、金 銭補 償が 不可 能で あっ たか らで あろ う。 逆に 言え ば、 国家 が 住 民・ 国民 の合 意を とり つけ るな り、 金銭 補償 をす るな どし て、 合意 の上

、住 民を 転居 ある いは 居住 禁止 とす れば

、ど の よ うな 災害 が発 生し よう とも

、国 民へ の被 害は 生じ るこ とも なく ニー ズも 発生 しな かっ た。 それ がで きず

・あ るい はそ れ を しな いが 故に

、ニ ーズ が発 生し た以 上、 国が 責任 を負 うと いう 社会 的承 認が あっ ても 非理 論的 とは いえ ない

。   戦争 は国 家行 為で ある

。し かし 国家 の必 須・ 必然 的な 行為 では なく

、国 家は 戦争 をせ ずと も存 続は 可能 であ る。 戦争 は そ の意 味で は不 要な 行為 であ り、 他国 への 違法 な行 為で ある

。同 時に 自国 民へ の被 害が 当然 に生 じる もの であ り、 その こ と は当 然予 想さ れる こと であ る。 した がっ て戦 争開 始を 決定 する 時点 で国 家は

、自 国民 への 対戦 国に よる 加害 行為 を認 識 し てい る。 また 国家 は戦 争被 害を 補償 する こと を前 提と して いる

。な ぜな ら、 近代 国家 では 戦争 開始 を決 定す る為 政者 を 選 ぶの は国 民で あり

、自 国民 の損 害を 引き 起こ すに もか かわ らず 戦争 を開 始す ると いう こと を多 くの 国民 は理 解し てい る。 し たが って 自分 たち が平 等に その 被害 に遭 遇す るこ とも 想定 して いる

。そ こで はそ の被 害の 補償 を国 民的 連帯 や全 国民 的

論     説

修 道 法 学   三 四 巻   一 号

七 二

(      

) 七 二

参照

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