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A Study of the Practice Program to Improve the Ability that the Primary Schoolchild Throws

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Academic year: 2021

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小学生の投能力向上のための練習プログラムの研究

―リリース時の上肢の動きに着目して―

佐藤天馬*・勝本真**

(2016 年 11 月 1 日受理)

A Study of the Practice Program to Improve the Ability that the Primary Schoolchild Throws

―Attention is Paid to the Movement of the Upper Limb at the Time of Release―

 Temma SATO * and Makoto KATSUMOTO **

(Accepted November 1, 2016)

Ⅰ.はじめに

 文部科学省では,平成24(2012)年に「スポーツ基本法」の規定を受けて,「スポーツ基本計画」

を公表した。その政策目標として「子どものスポーツ機会の充実を目指し,学校や地域等において,

すべての子どもがスポーツを楽しむことができる環境の整備を図る。そうした取組の結果として,

今後10年以内に子どもの体力が昭和60(1985)年頃の水準を上回ることができるよう,今後5 年間,体力の向上傾向が維持され,確実なものとなることを目標とする」としている。このよう な経緯の中で平成20(2008)年度から全国体力調査が実施され,報告書や活用シートを配布する ことにより,調査に参加した学校及び教育委員会,児童生徒,さらに家庭にまで分析結果がフィー ドバックされるようになった。課題を改善するための取組が推進され,新体力テストの合計点は緩 やかに増加しており,長期的低下傾向に歯止めがかかるなど一定の成果が見られている。しかし,

文部科学省は,男子のソフトボール投げ(投力)の数値は低下傾向を示していると報告しており,

茨城県教育委員会でも,唯一,男子のソフトボール投げのみ低下傾向であるという報告が見られる。

 「投げる能力」の低下傾向は,児童の日常的な遊びや学校体育などから「投げること」の経験や 指導が十分になされていないことなどが原因と指摘し,体育授業の学習経験を通じて,運動技能の 習熟及び運動能力の発達を得るためには,効率の良いプログラムが必要だと述べている(池田・田原,

2012)。男子児童の投能力を向上させるため,投射角度と投球初速に着目し,投射角度の矯正と投 球初速の向上をねらいとした2種類の運動プログラムを短期間実施した(大谷,2015)。結果として,

中央大学附属中学校・高等学校(〒184-8575 東京都小金井市貫井北町3-22-1; Chuo University Junior and Senior High School, Tokyo 184-8575 Japan).

茨城大学教育学部(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; College of Education, Ibaraki University, Mito 310- 8512 Japan).

*

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全体の約80%の児童が投射角度の矯正と投球初速の向上に成功し,投的距離を増加させることに 繋がった。しかし,リリースポイントが安定せず,投げ腕の肘の伸展が不十分であることが明らか になった。優れた投能力を持つ小学生の特徴として,右肘の伸展を大きく使っているという結果が 報告されているが(小林ら,2012),この研究では,リリースポイントが安定せず,投げ腕の肘の 伸展が不十分であることが明らかになった。

 そこで本研究では,児童の投能力の向上させるために,ソフトボールを遠投する際のリリースポ イントと肘の伸展に着目した。課題の改善をねらいとした練習プログラムを3種類考案し,短期間

(週3回4週,計12回)で実施しその効果を検証した。研究対象としては,小学校低学年が最も 投動作の習得に優れた年齢であるという報告(奥野ら,1989)があること,また大谷の研究対象 を引き継いで実施することから,小学2・3年生を対象とした。トレーニング前後のリリースポイ ントと肘の伸展の変化,それに伴う遠投距離の変化から,独自に考案した練習プログラムの有効性 について明らかにすることで,児童の投能力を向上させるための一資料を得ることを目的とした。

Ⅱ.研究方法

第 1 節 被験者

 茨城県内にあるN小学校の第2学年(男3名・女6名)及び第3学年(男5名・女4名)の児 童18名を対象とした。被験者は全員が右利きであった。また,第3学年の男子児童1名が,オーバー ハンド型の投動作を伴う運動である野球の少年団に所属する児童であっが,他の17名は少年団等 へ加入していなかった。

第 2 節 練習プログラム  1.地面的当て

 先行研究として,「真下投げトレーニング」を中学野球投手に3ヶ月間行わせたところ,トレー ニング後ではリリースポイントが前方になり,投球速度も増加するという結果が報告されている(蔭 山・前田,2013)。また6歳児の男女116名の投能力を測定し,テニスボールの遠投距離と他のボー ルの遠投距離の間に強い相関関係が認められたことから,テニスボールを遠くまで投げられる者は,

様々なボールを遠くまで投げることができ,投動作に関して本質的な技術や筋力が備わっている者 だと述べている(小林ら,1990)。

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そこで本研究では,図1に示すように,フラフープを壁の近くの地面に的を設置する。的から 3m離れた地面にテープを貼り,軸足や踏み出し足の位置・方向を矯正する。地面の的にテニスボー ルを叩きつけ,壁に当たって跳ね返った距離によって点数化することとした。壁から3m毎にコー ンを置き,手前から1点・2点・3点というように設定した。

 2.仰向け真上投げ

 野球の指導書では,リリースポイントを安定させるための有効な方法として,仰向けに寝た状 態でボールを上に向かって投げるという練習が紹介されている(山本,2009)。またボールのリ リースポイントや手首,肘の使い方を覚えることができるとともに,コントロールをよくするた めの練習として有効であると説明している(仲沢,2006)。しかし,この仰向け真上投げに関す る研究や報告は少ない。

 そこで本研究では,図2に示すようにペアを組み,一人がフラフープを持ち,仰向けになって いる者の真上にくるようにする。仰向けになっている者は,そのフラフープの中をボールの上昇 中にくぐらせるようにする。何回くぐらせることができたかなどで点数化した。肘,手首,指先 の順に動くよう助言し,下回転のスピンをかけることを意識させた。

 3.かに走りロープ筒投げ

 バトンを通したロープの壁に固定して張り,もう一方から壁に向かってバトンを投げる遊び

(「ロープスロー」)を考案した(林ら,2007)。この遊びを行うことで,下体の回転,上体の回 転,肩の動き,肘の動き,最後に手のスナップという順次性が観察できるようになるという結果 が報告されている。また,大谷らは,投射角度が42.0°に近づくよう,「バックボード当て」を 考案し小学1~3年の男子児童16名を被験者とし,短期間(週4回3週間)で実施したところ,

80%以上の児童が目標角度の42.0°に近づき,投距離も増加したと報告している。加えて,小学 生向けに作成した投運動プログラムのひとつである「かに走り投げ」は,投球時における上肢と 下肢の動きの連結を円滑にするという結果が報告されている(尾縣ら,2001)。

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 そこで本研究では,図3に示すように,目標の投射角度になるように張られたロープに筒を通 し,体重移動の力を伝えられるようにするための要素を取り入れ,筒を投げることとした。

第 3 節 練習プログラムの実施スケジュール

 練習プログラムの実施期間は,平成27年9月14日~10月21日で,授業日の中休みと昼休 みの時間に行った。中休みの15分間で,練習プログラム①「地面的当て」(図1)を実施し,昼 休みの20分間で,練習プログラム②「仰向け真上投げ」(図2)と③「かに走りロープ筒投げ」(図 3)を実施した。また,練習プログラム開始以前の日,実施終了以降の日に全員利き手でソフトボー ルの遠投を実施し,投擲距離の測定と投動作のビデオ撮影をした。

第 4 節 実験条件  1.試技

 ソフトボールの遠投を利き手で2回行い,記録の良い方を分析対象とした。投球距離をメート ル単位とし,メートル未満を切り捨てるなど,文部科学省が示した新体力テスト実施要項(6歳

~11歳対象)に則り実施した(文部科学省,1999)。投球時の注意点については,前述のテスト 実施要項に則り,投球のフォームについては指定しないが,「できるだけ下手投げをしない方が 良い」ということ,「ステップをした方が良い」ということの2点を指示した。

 2.ビデオ撮影

 投球初速,投射角度,リリース時の肘の角度及びスナップ比の4項目を解析するため,被験者の 投げ手側である左右側頭中点・右肩峰点・右肘関節中心・右手関節中心・右手小指近位指節間関節 中心・右大転子点・右膝関節中心・右足関節中心に合計9個のポイントマーカーを付けた。投擲距 離の測定とともに,投動作を2台のハイスピードカメラ(CASIO社製,EX-F1)により300コマ

/秒で撮影した。ソフトボール投げの助走範囲の円の中心とカメラの距離は5mであった。

 3.ビデオ分析

 撮影した動画からDLT法により3次元座標値を得るため,撮影範囲内の9か所にキャリブレーショ ンポールを順に立てて実験に先立って撮影した。動画は,3次元ビデオ動作解析システム(Frame-

DIASV)を使用して分析点のデジタイズを行い,3次元座標を算出した。分析点は,ポイントマーカー

を付けた9点の中から,分析する4項目の測定に必要な,ボールの中心・右手小指近位指節間関節中心・

右手関節中心・右肘関節中心・右肩峰点の5点とした。また,踏み出した足が地面に着いてからフォ ロースルーまでの動作を分析した。得られたデータは,Microsoft Office Excel 2010を使用し分析した。

投射角度は,ボールリリース時の座標と,リリースの2コマ次の座標の2点間における,X軸方向・

Y軸方向のそれぞれの移動距離を求めた後,下記の式を用い算出した。

 投射角度=ATAN(Y軸方向への移動距離/X軸方向への移動距離)*180/PI()

 投球初速は,ボールのリリース時の座標と,リリースの2コマ次の座標の2点間の距離を求め た後,その経過時間で除した。スナップ比は,各被験者のリリース時の手首の速さとボール初速 度との比で求めた(桜井・宮下,1992)。5月に実施された新体力テスト時の被験者のソフトボー ル投げの記録と,練習プログラム実施前後の被験者のソフトボール投げの記録をもとに,統計処 理ソフト(SPSS ver.11.0J for Windows)を用いて検定を行った。

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Ⅲ.結果と考察

第1節 練習プログラム実施に伴うソフトボールの投距離とフォームの変化

 表1に練習プログラム実施前後のソフトボールの投距離の記録を示した。実施前の平均値は

12.56m,練習プログラム実施後の記録の平均値は14.33mであった。表2に示すように,T検定

を行い5%水準で有意な差が見られた。記録が上昇した児童は,18名中13名(72.2%)であった。

 練習プログラム実施前後で最も変化した部分は,リリース時の肘の角度であった。図4は被験 者KRの投球フォームであり,練習プログラム実施前は肘が曲がったままリリースをしており,

スナップ動作を駆使せずボールを投げていた。しかし実施後は,体幹を前傾させながら肘を伸展 させて,リリース位置も前方へ移動していることが分かる。この被験者は投球初速が2.9m/s上 昇していたことから,練習プログラムの効果があったのではないかと考えられる。また図5は被 験者SKにおける正面から見たリリース時のフォームである。練習プログラム実施前後でリリー ス時の肘の高さが変化したケースも多く見られた。久慈ら6)は,「肘が肩のラインよりも高い位

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置にあった方が,腕を上から下に振りやすくなるため,より速い球を投げられる」と解説してい る(久慈ら,2009)。被験者ONの練習プログラム実施後において記録が最も良かった児童であ る。図6は,ONの投球フォームであり,特徴として実施後のリリース前における腕が深く畳ま れていることが分かる。指導書では,「リリース前に腕をより深く畳むことで,リリースまでのボー ルを押し出す時間が長くなり,また腕の振りの速さも速くなるため,球速に大きな差を生むこと になる」と解説している(竹内・花岡,2006)。これらのトレーニング効果は,先行研究の報告 を踏まえても,腕を上から下へ強く振る「地面的当て」による効果が大きかったのではないかと 考えられる。

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第2節 練習プログラムに伴う肘角度及びスナップ比の変化  練習プログラム実施前の

リリース時における肘角度 の平均値は102.85°であっ た。図7に示すように,肘 角度が150.1°~165.0°の 児童は18名中2名(11.0%),

165.1°~180.0°の児童は 18名中0名であった。また,

120.0°以下の児童は18名 中15名(83.3%) で あ っ た。練習プログラム実施後 では,リリース時における 肘角度の平均値は132.46° であった。T検定の結果,5% 水準で有意な差が認められ た(表2)。図7に示すよう

に,肘角度が150.1°~165.0°の児童は18名中3名(16.7%),165.1°~180.0°の児童は18名 中3名(16.7%)であった。また,120.0°以下の児童は18名中8名(44.5%)に減少した。

 次に手首の動きに着目する。スナップ動作の利用は,投運動の合理性を決める要因の一つであ る。3歳から9歳の幼児児童男女計180名についてテニスボールの遠投動作を撮影し,ボールと 上肢各部の速度変化を求め,ボールの初速とリリース時の手首の速さの比を「スナップ比」とし

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て算出した研究があった(桜井・宮下,1992)。練習プログラム実施前のスナップ比の平均値は1.44 であったが,実施後のスナップ比の平均値は1.57であった。そのプログラム実施前後の変化を 示したのが図8であり,多くの被検者のスナップ比が大きくなったことを示している。T検定の 結果,5%水準で有意な差が認められた(表2)。

第3節 練習プログラムに伴う投球初速及び投射角度の変化

 運動プログラム実施前後の投球初速変化を図9に示した。実施前の平均値は11.76m/s,実施後 の投球初速の平均値は12.6m/sであった。T検定の結果、5%水準で有意な差が認められた(表2)。

図10から初速が大きくなっている人数が増えていることが分かる。

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 図10は,練習プログラム実施前後のソフトボール投げ投射角度を示した。本研究において,「か に走りロープ筒投げ」で矯正しようとした角度は42.0である。練習プログラム実施前の投射角度 の平均値は29.25°,実施後は28.52°であり,若干の減少を見せた。低い角度で投げ出そうとすれば,

重力に逆らわないことになるため初速度は向上すると考察できる。本研究の結果もこのことが投射 角度の平均値が減少した一つの要因であると推察できる。また,大谷は「バックボード当て」で投 射角度を矯正することに成功した。その際「実際にボールを投げる」運動プログラムを取り入れて いたが,本研究ではボールではなく堅紙の芯を使用した。実際に投げるボールで練習をしなかった ことで,スナップ動作の感覚的な違いが生じ,投射角度を矯正できなかったのではないかと考えら れる。しかし,「かに走りロープ筒投げ」を実施したことによって,多くの児童に,リリース前の「胸 の張り」が見られた。筒を保持したまま,かに走りをすることで,自然と胸を張る動作が生まれて いたため,投射角度の矯正はできなかったが,投運動連鎖の1要素である「胸の張り」という動作 を生み出すことに,少なからず効果があったのではないかと推察する。

第4節 練習プログラムを実施した時の指導ポイント

 本研究では,筆者が実際に茨城県内のN小学校へ毎回赴き実施した。対象の児童数が18名とい う比較的少人数であったため,毎回全員に対し助言等の指導を行うことができた。そのため,一人 一人のフォームを観察しながらの指導が中心になった。しかし,本研究で考案した練習プログラム を実際に教育現場で実施する場合,休み時間や授業内で,教師の指導の下実施される場合が多いの ではないかと考えられる。その場合,教える側の教師に特別な能力が備わっていなくても実施でき るよう,それぞれの練習プログラムにおいて,予想されるつまずきに対応した言葉掛けを教師間で あらかじめ設定しておく必要があると考えられる。また,魅力的なゲーム性のある楽しいルールや 活動を導入することで,投能力の確実な向上が期待できるのではないかと推察できる。

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 1.地面的当て

 この練習プログラムは体育館で行うため,ソフトボールをそのまま使用してしまうと,窓ガラ スが割れることや跳ね返ったボールが児童に当たり,怪我に繋がってしまう危険があった。しか し,先行研究をもとに,テニスボールに代替して実施することができたため,これらの危険を少 しでも回避でき,安全性を保つことができた。

 指導をする中で,跳ね返りの距離を競う目安としてカラーコーンに児童の好きなキャラクター の絵を貼った。プログラム実施の序盤は,児童がどのキャラクターまで跳ね返るかを競い合って いたが,中盤以降は,地面の的に叩きつけるという目的を欠いている児童が現れた。そこで,当 初はフラフープを的にしていたが,その中にもキャラクターの絵を置き,児童の興味・関心を引 き付けようと考えた。さらに手前においてあるカラーコーンから,1点・2点・3点と,点数化 することにより,児童はより意欲的に取り組むようになっていた。

 2.仰向け真上投げ

 この練習プログラムを実施するためには,ボールがあればよいため,手軽に行える練習プログ ラムである。プログラム実施時には,「ペアの人が掲げているフラフープを通すように投げ上げ よう。」と指導した。そのため,手首や指先のスナップ動作を使わず,肘の伸展動作のみでボー ルを投げ上げている児童が多く確認できた。そこで,テニスボールに白色のテープを貼り付けた。

しっかりと下回転をかけるように投げ上げると,黄色のテニスボールがテープの色である白色に 変化するようになった。その後,「ボールに下回転をかけるように投げ上げよう」と指示をした ところ,児童は色を変えるのに必死になり,スナップ動作を伴った投げ上げになっていた。

 練習プログラム開始2週間ほど経過した頃から,多くの児童が上手く回転をかけることができ るようになっていた。しかし,丁寧に真上に投げ上げようとする児童は少なくなっていた。そこ で,ペアの人が持つフラフープを小さいサイズの物にしたり,10秒間で何回投げ上げることが できるのか競い合ったりしたことで,真上に丁寧に,且つ回転のかかったボールを投げ上げるこ とができるようになっていた。

 

 3.かに走りロープ筒投げ

 この練習プログラムは,堅紙製の筒をソフトボール1号球の直径(8.5cm)と同じ長さになる ように切断し使用した。ロープはポリエチレン製の物を使用し,体育館の天井付近に括り付けた。

プログラム実施直後は,筒を頭上で持ち,肘が伸びきった位置で投げ手側の足を後方へ引き,筒 を投げるように指示した。序盤は,多くの児童が力任せに腕を振ってしまい,投射方向から力の 向きがずれてしまっていた。また,ステップをせず投げるよう指示していたこともあり,腕の力 に頼りスナップ動作を駆使していないように見られた。

 そこで,筒を通しているロープの隣にキャラクターの絵を5mごとに掲示したロープを張った。

すると児童はより遠くへ投げようと試行錯誤するようになり,ロープの角度に合わせたしなやか な腕の振りの必要性に気付くことができていた。また,かに走りの動作を取り入れたことで腕の 力だけでなく,下体,上体,肩,肘,手首,最後に指先の動きという順次性が観察できるように なった。

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Ⅳ.まとめ

 本研究では,児童の投能力を向上させるため,ソフトボールを遠投する際のリリースのスナッ プ動作と肘の伸展に着目した。それぞれの改善をねらいとした練習プログラムを3種類考案し,

短期間(週3回4週,計12回)で実施した。トレーニング前後のリリースポイントと肘の伸展 の変化,それに伴う遠投距離の変化から,独自に考案した練習プログラムの有効性について明ら かにすることで,児童の投能力を向上させるための一資料を得ることを目的とした。

 本研究で得られた結果は,以下の通りであった。

1)80%以上の児童に肘角度の改善,スナップ比の向上が見られた。また60%以上の児童に投球 初速の向上が見られた。約70%の児童の遠投記録も向上したことから,肘角度とスナップ動 作の改善及び投球初速の向上を目的とした「地面的当て」,「仰向け真上投げ」における,トレー ニングの効果があったと推察した。

2)練習プログラム実施に伴い,体幹を前傾させながら肘を伸展させて,リリース位置も前方へ 移動している変化が見られた。また,リリース前における腕が小さくたたまれ,腕の振りを 速めることのできる投球フォームへの変容も見られた。

3)投射角度を目的とした「かに走りロープ筒投げ」を実施したところ,本研究では改善は見ら れなかった。実際に投げるボールを用いたトレーニングの方がより効果的ではないかと考え られる。しかしながら,筒を保持したままかに走りをすることで自然と胸を張る動作が見られ,

投運動連鎖の1要素を生み出すことができた。

引用文献

1)林政孝,石田譲,小林博隆.2007. 「楽しみながら投動作を身につけることができる教具・カリキュラム の工夫」, 北海道教育大学釧路校研究紀要, 39, pp.111-114.

2)池田延行,田原淳子.2012. 「小学生を対象とした「投げる運動」の授業実践に関する研究」, 国士舘大学 体育研究所報,31,pp.73-76.

3)蔭山雅洋,前田明.2013. 「真下投げトレーニングにおける段階的プログラムの一例とその効果~中学野 球投手3ヶ月間の指導における事例~」, スポーツパフォーマンス研究, 5, pp.90-101.

4)小林育斗,阿江通良,宮﨑明世,藤井範久.2012. 「優れた投能力をもつ小学生の投動作の特徴とその標 準動作」, 体育学研究,57, pp.613-629.

5)小林寛道,脇田裕久,八木規夫.1990.『幼児の発達運動学』,pp.91-98,ミネルヴァ書房.

6)久慈照嘉,山田勝彦,亀山つとむ.2009.『ぐんぐんうまくなる!野球守備』,p22, ベースボール・マガジン社.

7)文部科学省.1999. 「新体力テスト実施要項(6歳~11歳対象)」, pp.1-10.

8)仲沢伸一.2006. 『上達する!野球』, p152,ナツメ社.

9)尾縣貢,高橋健夫,高本恵美,細越淳二 関岡康雄.2001. 「オーバーハンドスロー能力改善のための学 習プログラムの作成:小学校2・3年生を対象として」, 体育学研究, 46, pp.281-294.

10)奥野暢通,後藤幸弘,辻野昭.1989. 「投運動学習の適時期に関する研究―小・中学生のオーバーハンド

(12)

スローの練習効果から―」, スポーツ教育学研究, 9, pp.23-35.

11)大谷直輝.2015. 「短期間での児童の投能力向上を目指した運動プログラムに関する研究―投射角度と投

球初速に着目して―」, 茨城大学教育学部卒業論文.

12)桜井伸二,宮下充正.1992. 『投げる科学』, p193, 大修館書店.

13)竹内久外志,花岡美智子.2006. 『150キロのボールを投げる!』, p24. ナツメ社.

14)山本健.2009. 『基本を極める!軟式野球』,p39,大泉書店.

参照

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