銑鉄関税引上(昭和7年)の歴史的性格
奈 倉 文 二
ては,以後の帝国主義展開過程における関税政策序 の性格も一般的な独占利潤維持のための保護関税
1932(昭和7)年6月,第62回臨時帝国議会に (カルテル関税)とは単純には規定され難iい場合が おいて関税定率法改正案が可決され(6月14日), 多い。とすれば,歴史具体的な関税政策を考察す 従来毎百斤拾銭(トン当り1.67円)であった銑鉄 る場合には,一般的にカルテル関税か育成関税か 輸入関税率は毎百斤参拾六銭(トン当り6.00円) と二者択一的に把握するのみでは十分ではなく,
へと3.6倍に引き上げられることとなった(6月 日本資本主義の産業・貿易構造上の特質と独占資 16日実施)。 本の具体的存在形態とを考慮しつ》,その独自な
高橋財政下におけるこの関税改正は,銑鉄の 内容を把握し,性格規定を行う必要があろう。
みならず合計29品目に及ぶ「関税定率法改正法 ところで,従来の研究史においては,銑鉄関税
律」と,「輸入税ノ従量税率二関スル法律」によ 引上に至る経過や引上論・反対論についての指摘 (3)る従量課税品目の35%増課との二つから成り,従 は一応なされているが,その性格並びに意義につ
来の井上財政期における関税政策に比して全体と いての考察は十分ではない。即ち,富永祐治氏が,
して産業保護的関税政策であることは言うまでも 銑鉄関税引上直後の時点において, 「すでに育成
(1)
ない。だが,個々の関税率改正がいかなる性格を の意味を失った日本鉄鋼関税は,今日,純粋なカル 有し,いかなる効果・意義を果したのかは一応別 テル維持関税への転向の前夜に立っている」,と (4)
モに考察されねばならない。とくに,「銑鉄二付 展望しており,市川弘勝氏が,いちはやく「本邦」
キマシテハ今度ノ関税ノ引上中最モ重大ナル問 製銑業と印度銑との具体的対抗関係の分析を基礎 (2) (5)
閨vとされていただけに独自な検討が要請され として,関税引上による効果を高く評価し,また・
る。しかも,銑鉄関税引上は低廉なインド銑鉄の 梅津和郎氏が,同様に銑鉄関税引上(と為替相場下
大量輸入に圧迫され続けてきた銑鉄カルテル(銑 落)によるインド銑鉄防遇効果を評価し,国家権力 (6)
鉄共同組合)の一貫した要求であり,政府にとっ による財閥資本保護を意味するものと把握する・
ても大正末以来の鉄鋼政策上の懸案であったこと など,鉄鋼業史研究・貿易政策史研究のいずれに を考慮するならば,この関税引上が日本鉄鋼業史 おいても,銑鉄関税引上の性格・意義について多 上いかなる意義をもっていたのかを確定する必要 少とも言及しているものは,概して言えば,銑鉄 は大きいと言わなければならない。 関税引上をカルテル保護関税的なものと把え,イ 概して,帝国主義段階に於ける関税政策は,独 ンド銑鉄防遇と財閥製銑資本保護の役割を果した 占資本形成上の武器であるとともに,独占利潤維 ものとして把握しているかのごとくである。
持のためのカルテル保護関税として機能する。だ しかし,果して一般的なカルテル保護関税とし が,当初関税障壁を欠如し,重化学工業基盤の脆 て把握するだけで十分であるのか,また,その政 弱なま〜帝国主義に転化した日本資本主義におい 策課題(インド銑鉄防邊と財閥資本保護)とその実
際に果した役割との間にはさほどの乖離は存在し 上,562〜578頁(吉田震太郎執筆)。
なかったと言えるのであろうか。その場合,とく (4)富永祐治『本邦鉄鋼業と関税』昭和7年,383頁。
に銑鉄共同組合のカルテルとしての特質が考慮さ (5)鉄鋼統制会企画部『印度及豪州鉄鋼業の解剖』
れねばならない。この点で注目されるのは水谷驕 (昭和18年)・第8章(市川弘勝執筆)。
氏の議論であ£そこでは特徴離格鮪する銑 (6聴津和郎『躰の貿塊想』昭和3礁
{7)交謁社『現代日本産業発達史』】V鉄鋼,昭和44年鉄カルテルによるインド銑鉄防遇活動(とくにそ
(以下『鉄鋼』と略)第三部第四章及び第五章第一の価格政策)の分析が詳細に示され,カルテル内 節(ともに水谷饒執筆)。の在「満州」製銑資本(とくに満鉄鞍山)と財閥 (8)拙稿「満州製鉄業補助金問題」〔村上。森・奈倉
製銑資本との矛盾が指摘される。だが,意外に ・窪田「大倉財閥の研究(2)」中の筆者担当部分
も,銑鉄関税引上については・その内容が簡単に (『東京経大学会誌』第95号,1976年3.月所載)〕。
指摘されているだけである(278・307頁)。この {9)本稿で使用した未公刊資料のうち,旧大倉鉱業資 ことは・氏が「カルテル活動の帰結」としてトラ 料(東京経済大学保管)については,筆者も所属し スト(「製鉄合同」)の成立を説いている方法と関 ている大倉財閥研究会の会員諸氏に負うところ大で 連し,銑鉄関税引上の独自的意義を評価していな あり,大蔵省所蔵『昭和財政史資料』については・
いことに基因する,と推察される。だが,実際に 同省財政史室大森とく子氏に御世話になっている。
は銑鉄関税引上と「製鉄合同」政策とは密接な関 記して謝意を表したい。
連をもって登場している以上,両者の関連のあり 尚,本稿では・紙幅の制約により,重要資料の引 方こそ問われねばならないはずである。また,筆 用も殆んど割愛せざるを得なかったことをあらかじ
めお断わりしておく。者は,すでに別の機会において,大正末以来の銑
鉄関税引上問題と関連して生起してきた「満州製
鉄業補助金問題」というものを資料紹介的分析と 1 銑鉄カルテルと関税問題 (8)して示したが,銑鉄関税引上そのものの性格と意 まずはじめに,問題の所在をより明確にするた
義を検討課題とする本稿においても,この「補助 めに,昭和初期における銑鉄関税問題がとくに銑 金問題」との関連での検討は不可欠である。 鉄カルテルにとっていかなる意味をもっていたの
したがって,以下,新資料の発掘・整理を基礎 かを簡単に見ておこう。 (9)としつ㍉銑鉄関税引上の経過。対抗関係・政府 すでに周知のごとく,1926(大正15)年の関税
案の論拠・引上額算出方法・引上の諸結果などを 率改正の際には,鋼材関税率の引上はなされたが,
(1) ● 。 ● ●
具体的に検討することにより,全体として銑鉄関 銑鉄関税率の引上は見送りとされ,その代替施策 税引上の歴史的性格を確定したいと考えるが,そ として銑鉄奨励金の交付策が採用される(同年3
の際,引上運動の主体たる銑鉄共同組合のカルテ 月製鉄業奨励法改正)。また,同年6月には「本 (2)ルとしての特徴的性格と関税引上・満州製鉄業補 邦」製銑資本(在「満州」製銑資本を含む)5社
助金・「製鉄合同」という当時の「製鉄国策」の により銑鉄共同組合が結成される。この銑鉄カル 相互関連に特に留意を払うこととする。 テルは,関税障壁を欠如した状況下において,イ
ンド銑鉄防遇を主要な目的として成立したカルテ11)詳しくは大蔵省関税局『税関百年史』上,昭和47
年,565〜568頁を参照されたい。 ルであって,銑鉄奨励金の交付と満鉄鞍山製鉄所
{2)『第62回帝国議会衆議院議事速記録』昭和7年6 (国家資本系)の加盟という国家的保護によりは
月10日,関税定率法中改正法律案外一件委員会委員 じめて・いわゆる「外銑相場追随主義」という低 ●長東武報告。 価格政策を採用することが可能となる,いわば特
● ● ● ・ ● ■ ● ● (3)
{3)通産省編『商工政策史』第17巻鉄鋼業(大橋周治 殊国策的カルテルである。
執筆)昭和45年,274〜294頁。前掲『税関百年史』 だが,昭和初期においても,インド銑鉄の輸入
第1表 銑鉄輸移入高・国内生産高・自給率 〔単位:聴,自給率%〕
輪 入 高 総需要高 自 給 率 (%)
年 次 移入高 国内生産高 輸移出高
(G)=A+ 旦 C+D+E
計㈹1(畠養佃)1(留卜1(c
⑪ ③ αりD十E−F G lDきElG
1926(大正15) 399,640 227,628 159,521 104,717 809,624 4,686 1,309,295 61.8 69.8 82.0 27(昭和2) 472,947 261,130 198,919 102,668 896,171 4,325 1,467,461 61.1 68.1 81.6 28(〃 3) 569,214 310,489 213,142 139,832 1,092,536 4,904 1,796,678 60.8 68.6 80.5 29(〃 4) 654,055 411,477 195,150 137,598 1,087,128 3,771 1,875,010 58.0 65.3 75.7 30(〃 5) 405,829 214,374 179,175 109,432 1,161,894 5,412 1,671,743 69.5 76.0 86.8 31(〃 6) 399,448 150,491 242,147 95,127 917,342 2,551 1,409,366 65.1 71.8 89.0 32(〃 7) 444,425 117,862 322,476 205,955 1,010,761 652 1,660,489 60.9 73.3 92.7 33(〃 8) 640,852 172,060 455,379 160,429 1,423,889 437 2,224,733 64.0 71.2 91.7
34(〃 9) 614,398 202,154 409,427 164,185 1,728,158 849 2,505,892 69.0 75.5 91.9
〔註〕 「満州」は「満蒙及関東州ヨリノ輸入額」。
〔出所〕商工省鉱山局『製鉄業参考資料』昭和10年版。
は減少するどころか,逆に激増傾向にあって(昭 産費の低下を実現しつ》あった。したがって,満 和4年ピーク),自給率も低下傾向を示す(第1 鉄鞍山製鉄所は銑鉄カルテル内においてインド銑
(4)
¥参照)。 鉄に辛うじて対抗し得る唯一の製銑資本となって 第2表は「本邦民間市場」における銑鉄需給高 いくのに対し,他の財閥系製銑資本は銑鉄カルテ の調査であるが, 「満州」銑鉄は「本邦銑」に計 ルの販売価格(「外銑相場追随主義」による低価 上してあるので,外国銑(A)の殆んど全部をイ 格)によっては自己の利潤を十全には得ることが
ンド銑鉄が占めており,民間市場における実際の できず,銑鉄奨励金に依存して(「赤字補償」)
需要高(D)に占める外国銑の割合(A/D)は昭 辛うじて資本としての存立を維持していく。
和4年までは5割前後を示している。つまり,昭 こうした日本資本の内部矛盾は,とくに昭和4年 和初期においては, 「本邦民間市場」に供給され 末以降の銑鉄市価急落傾向のもとで激しくなる。
ている銑鉄の半ばを占めるインド銑鉄との対抗・ 第3表(図表)に見るごとく,4年上期まではイン 駆逐が銑鉄カルテルの最大の課題なのであった。 ド銑鉄の輸入価格は比較的安定的に推移していた
(7)
アこで注目しておく必要があることは,「日満 のだが,同年末以降インド銑鉄が日本市場に「競
(5) (8)
銑の協調」といわれる銑鉄カルテルによるインド 争的廉売」を挑んだことにより,さらに,折から 銑鉄防遇活動は,実は日印製銑資本の対抗関係を の金解禁・昭和恐慌の影響が加わり,5・6年にか 基本的対抗関係としつ〜も,日本資本内部におい けてインド銑鉄の輪入価格は急落の一一途を辿る。
ても,国内財閥系製銑資本(朝鮮の三菱製鉄兼二 銑鉄カルテル側もこれに対抗して追随し,ないし 浦を含む)と在「満州」製銑資本(とくに満鉄鞍 はそれ以上に販売価格を低下させたのであり,こ 山)との間に副次的矛盾を含みつ》展開されたこ こに日本市場をめぐる日印製銑資本の争奪戦はそ とである。すなわち,既に別の機会に明らかにし の頂点に達する。もっともインド銑鉄の輸入数量
(6)
たごとく,満鉄鞍山製鉄所は大正15年の貧鉱処理 自体は5・6年には減少し,自給率は多少高まって 法工業化の成功を生産力的基礎とし,さらに,翌 いるが(前掲第1表・第2表参照),これは決し
昭和2年には国家資本系の「満鉄コンッェルン」 て「外銑相場追随主義」によるインド銑鉄防遇の (9>
としての特質を十全に発揮した「鞍山製鉄所の更 成功を意味するものではなく,昭和恐慌下の需要 生策」(運賃・石炭の原価扱い,「水膨れ」資本 激減に基因するものであり,このことは4年から の切捨等)を実施したことにより,急速に銑鉄生 6年にかけて在庫高が急増していることにもあら
第2表 本邦民間市場銑鉄需給高調べ 〔単位:千トン,百トン未満切捨,()内%〕
1夫正・51昭和2}3141516171819
外国銑供給(輸入)*(A) 231.5 267.0 33a8 444.0 216.0 150.9 11&2 172.4 20a8
(内)イ ン ド 銑 227.6 261.1 310.4 411.4 214.3 150.4 117.8 172.0 20a 1 出 銑 高 (B) 470.4 546.2 666.4 726.7 770.7 744.9 790.1 990.6 1,197.6
八幡銑売出高 一 一 一 一 一 一 一 19.3 97.2
本邦銑 自家用特定先直売及市整理払出高場地 売 高
所O向直売高
73.3 R7.1 W.4
84.3 R7.7 P8.1
124.3 T1.2 Q1.4
138.4 S7.2 Q6.3
122.9 R8.2 S2.8
138.1 Q3.7 U7.3
191.0 S5.5 P13.4
324.3 T3.8 R7.2
321.8 U9.4 Q4.3
製鉄所納入高 22.0 117.7 106.9 82.8 31.5 一 6.9 19.6 一
供給
嵩薄僕轟獅
329.4R30.7 288.2Q87.9 R67.8362.5 R38.9431.8 535.1R49.4 515.7R98.9 433.2T45.8
574.9 W00.3
879.3 X48.8
在庫高に編入 一1.3 0.2 一5.3 92.8 185.7 116.8 一112.6 一225.4 一69.5
年 末 在 庫 高 89.0 89.2 83.9 176.8 362.5 479.3 366.7 141.2 71.6
需要高(D−A+C)156a215即17・α6レ8a・156刷54呵664・lg7a71帆6
A/D (%) (41.2) (48.1) (47.5) (56.7) (38.2) (27.4) (1乳8) (17.7) (17.6)
C/D (%) (58.8) (51.9) (52.5) (43.3) (61.8) (72.6) (81.2) (82.3) (82.4)
(B)の内訳
璽簾二1 ノレ
95.6 U4.6 P15.7
92.2 U7.6 P25.0
109.5 V5.7 P45.9
117.1 X8.9 P53.2
117.9 X5.6 P5α5
82.5 P11.9 P45.2
77.5 P20.2 P61.9
128.5 P94.3 P61.1
218.5 Q49.3 Q10.8
テ本 渓 湖 48.4 46.3 59.6 77.1 85.5 67.1 83.4 116.8 153.7
馳鞍 山 145.9 192.8 22α6 217.8 262.9 276.6 282.6 322.0 322.3
藍 (小 計) 470.4 524.1 611.5 664.2 712.7 683.4 725.8 922.9 1,154.8
色浅 野 一 22.1 54.8 62.4 58.0 61.4 64.3 67.6 42.7
〔註〕*「印度,支那及米国以外ヨリノ輸入銑ハ特殊銑ト看徹シ計上セズ」,「支那銑若松港輸入高ハ製鉄所 向ト認メ全部控除セリ」。
〔出所〕 銑鉄共同組合「銑鉄諸統計表」(昭和6年度)及び銑鉄共同販売株式会社「銑鉄年報」(昭和9年度)。
ただし,大正15年のBの内訳のみ,銑鉄共同組合「本邦民間市場銑鉄需給高表」(昭和5年3月17日調)。
いずれも旧大倉鉱業資料。
われている通りである(前掲第2表参照)。 である。
こうして,銑鉄カルテルは「外銑相場追随主 だが,ここでも注意さるべきことは,銑鉄関税 義」によるインド銑鉄防邊活動によっては,本来 引上運動をめぐっても銑鉄カルテル内部に部分的 的カルテルのごとき国内市場の独占的支配を前提 利害対立が存在することである。即ち,銑鉄関税 とした独占価格の設定と独占利潤の維持は不可能 率引上は一般的には満州銑鉄にも適用されること であるばかりでなく,昭和恐慌下の銑鉄市価急落 になるので,在「満州」製銑資本の場合は,国内 のもとでは完全な「採算割れ」となるのであり, 財閥系製銑資本と比較して銑鉄関税引上運動に対 とくに財閥系製銑資本は言わば「資本としての存 しては消極的であり,一応銑鉄カルテルとして共 立の危機」に陥いる。そこで,銑鉄カルテルとし 同歩調をとりつ〜も,関税引上の際には「関税戻 ては,より根本的且つ効果的なインド銑鉄防遇策 シ」等の何らかの見返り措置が講じられたき旨を
(10)
として,銑鉄関税の大幅引上を政府に要請するの 強く政府に要請し続けるのである。裏返して言え
第3表(図表) 銑鉄国内市価・カルテル販売単価・翰入単価の推移
60 T8
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円/トン 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 年 度 T.15 S.2 S.3 S.4 S.5 S.6 S.7 S.8 S.9
(a》国内市価(釜石骸炭銑1号) 58 57 57 56 48 38 37 46 51
(b}銑鉄共同組合扱販売単価 一 46.22 45,7345.86 45.7646.13 45.0144.49 38.1732.00 29.7424.83 26.1032.16 41.1544.60 44.7447.Ol
{c}印度銑鉄輸入単価(沖着) 42.5341.43 41.8842.65 41.1242.11 41.8640.29 37.6432.70 25.9022.85 24.3732.58 33.4033.94 36.7035.72
{d購州銑鉄輸入単価(沖着) 46.3246.01 45.8646.57 47.2046.35 46.3846.43 44.0536.74 32.3326.75 26.7328.81 37.3443.75 45.7246.95
(註)(a凍京に於ける平均相場。伍製鋼用(平炉銑A号)。㈹昭和6年まで「関東州」よりの輸入銑鉄、7年以降「関東州」及び「満州国」の計
(但し、昭和8年以降の「月表」の分類にしたがう)。
(出所)(a)商工省鉱山局「製鉄業参考資料」。①銑鉄共同組合「銑鉄諸統計表J(昭和4年度)及び銑鉄共同販売株式会社「銑鉄年報」(昭和9年 度)。lc)㈹大蔵省編纂「外国貿易月表」各年版(但し、百斤冨0.0硬墜として換算)。
ば,銑鉄関税の引上は,銑鉄カルテル内部におい
@ 丑 銑鉄関税問題の経過てもとくに窮地に陥いっていた国内の三井・三菱
系両財閥製銑資本にとってこそ正に死活の課題と では・政府側では銑鉄関税問題をどのように受 なっていたのである。 けとめていたのであろうか。政府側の論議は1926
(大正15)年の関税率の全般的改正(銑鉄につ
(1)その決定的理由がインドによる日本製綿糸布に対 いては据置)直後から開始されている。というの する報復関税設定の懸念であったことを行論との関 は同年の第51帝国議会における附帯決議に基づい
係で注意しておきたい。
@ て,常設の関税調査委員会が設置され,銑鉄関税②釜石鉱山,日本製鋼所(輪西),三菱製鉄(兼二
@ 率についても鋼材等とともにここに諮問され,本浦),大倉鉱業(本渓湖)及び南満州鉄道(鞍山)
の5社。 格的検討が加えられることになったからである。
(3)前掲『鉄鋼』271〜277頁。尚,拙稿「大正期にお 以下,同委員会での審議結果を中心に銑鉄関税 ける製銑資本の存在形態」〔茨城大学『人文学部紀 問題の経過を要約的に述べることとするが・あら 要(社会科学)』第8号,昭和50年3月〕をも参照 かじめ大雑把に次の三期に時期区分しておく。第 されたい。 1期は昭和2・3年頃の議論であり,銑鉄カルテル ωインド銑鉄は品質優秀且つ価格低廉であった。そ は関税引上を要求しつトも,商工省当局はその要 れは,原料資源の豊富さとその調達の容易さ及び労 求の根拠を是認せず,関税引上を適当とは認める 賃の低廉さとにより銑鉄製造原価自体が安価であっ に至らない時期である(銑鉄奨励金廃止による関 たことに加えて,国内銑鉄需要が少量であり市場独 税保護一元化案をも含む)。第皿期は昭和5年か
占が容易なために国内販売価格を比較的高価に維持 ら6年初頭にかけての議論であり,日印製銑資本
し,輸出価格を低廉にしえたのである。要言すれ の日本市場をめぐる競争は熾烈を極め,「本邦」ば,イギリス帝国主義下の植民地的条件のもとで不 製銑業はその存亡の危機に直面しているとのカル均衡に発達した製銑部門のダンピング輸出であり,
テル側の主張を商工省当局が認めるに至る時期でその主要輸出先(7割前後)が日本となっていたの
である。詳しくは前掲『印度及濠州鉄鋼業の解剖』 あるが,浜口内閣の「産業合理化」方針とも関連 を参照されたい(とくに13,202〜205頁)。 して・保護の方法・関税引上の程度などにおいて
㈲銑鉄共販業績編纂委員会『本邦銑鉄統制販売史』 政府案が決定を見るに至らない時期である。第皿 昭和16年,48頁。 期は昭和6年末から7年にかけての議論であり,
㈲前掲拙稿「大正期における製銑資本の存在形態」。 高橋財政下に関税政策全体が産業保護的な方向へ ω沖着価格は42円前後であり,これに陸揚費その他 転換するとともに,銑鉄関税についても大幅引上
諸掛と関税計約4円(富永前掲書274頁,後掲第4表 が決定される時期である。
でも昭和3〜5年で4・17円)を加算した輸入市価は まず,第1期の昭和2年3月の委員会において
46円前後であり,銑鉄共販価格はこれを基準として は,税率の変更は必要なしと判定された。その根
設定される。 拠は,商工省当局の算出によれば,第4表の(b)に
(8)この契機の一つは銑鉄共同組合と製鋼業者との間 見るごとく,当時のインド銑鉄の輸入価格(沖着)の銑鉄売買協定(4年12月)である。この協定につ はトン当り42円であるが,陸揚費その他諸掛と関いては詳しくは前掲『本邦銑鉄統制販売史』 138〜
税を加算すれば47円弱となるのに対して,他方,153頁を参照のこと。
(9)こうした因果関連の把握(前掲『鉄鋼』276頁)で 国内銑鉄生産費は51・93円であるが,銑鉄奨励金 は,なにゆえに昭和5〜7年に銑鉄関税引上運動が を差し引くとやはり47円弱となり・当時の税率に 盛んになるのかを理解し得ない。 よっても辛うじて採算がとれると判断されたこと ω詳しくは前掲拙稿「満州製鉄業補助金問題」を参 にある。
照されたい。 次いで,同年12月には商工審議会が銑鉄奨励金
の廃止による関税保護への一元化を決議したこと インド銑鉄輸入価格は急落傾向を示す。5年5月 に伴い,翌3年1月,商工省当局は新関税率毎百斤 の商工省調査によれば〔第4表(e)〕,インド銑鉄 四拾銭(トン当り約6.67円=当時の税率1・67円+ 輸入価格はわずか3ケ月前に比して4円近くも低 奨励金相当額5円)を提案した(第4表(c)参照)。 下したのであり,国内生産費は3ケ月前と同様と
同時に商工省はいわゆるHexible tariff(屈伸関 みているので,その差額3.42円を生じている。当 (1)税率)の制度を併せ採用することを主張した。し 時の銑鉄カルテルの主張(「銑鉄関税引上要望陳
かしながら,関税調査委員会としては,関税保護 述要領」)の中に指摘されている銑鉄生産費とイ への一元化案とflexible tar丑制度の採用につい ンド銑鉄輸入価格は第4表(1)に掲出してある。
ては結論を得るに至らなかった。 それによれば,翌6年の見込みとして,生産費・
その後,鋼材の内外市価が欧州鉄鋼業の動向と 輸入価格ともに低下を見込んでいるのであるが,
ともに漸次昂騰したのに伴い・銑鉄市価もや〜持 低下を見込んだ後の生産費が5年7月の商工省調 ち直しの気配を示したので,銑鉄関税問題は一時 査(e)と略同様となっているのに対し,インド銑鉄
小康状態となり,関税調査委員会としては将来の 輸入市価は当時の輸入市価より急低下して32.00 (2)趨勢を注視することとなった。 円となる見込とし,結局,奨励金を考慮しても両
第皿期の昭和5年に入ると銑鉄関税問題は新た 者の差額は約10円となると計算して,これを希望 な展開を見る。すでに見たごとく・昭和4年には 改正税率としているのである。しかし,他方,銑 インド銑鉄の日本市場への流入は急増し,輸入単 鉄輸入業者は,インド銑鉄は我国製鋼業の発展に 価も同年下期より低下しつ〜あった。しかしなが とって寄与大であり,むしろ無税にすべきことを
ら,5年3・4月においては商工省当局はそれ程事 主張し,関税調査委員会としては結局この時点で (4)態を深刻に受けとめてはおらず,銑鉄関税引上に も結論を持ち越したのである。
よる保護は「未ダ其ノ時期二非ズ」とした。その さて,昭和5年末から6年初頭にかけての銑鉄 根拠は,商工省の算出によれば(第4表の(d)参 関税問題の特徴は,「製鉄合同」案と関連して論 照),国内銑鉄標準生産費は46.36円と推定さ 議されたことにある。即ち,臨時産業審議会の答 れ,インド銑鉄の輸入価格は陸揚費その他諸掛を 申(「製鉄業統制に関する方策案」昭和5年11月 加えて40.00円であり,その差6.36円であるが, 12日)を受けて「製鉄会社法案要綱」が準備され 当時の関税率と奨…励金額とを考慮すれば殆んどそ るとともに,12月24日の臨時産業合理局顧問会議 の差はなかったこと(むしろ生産費がわずかに下 は銑鉄関税引上を決定する。その引上の具体案は,
まわる)に求められている。しかも,日本製銑業 第4表(f)に見るごとく,「合同」後の銑鉄生産費 は目下設備改善・増産計画遂行途上にあることを を約42円と見積もり,インド銑鉄の輸入価格は陸 も考慮して,「斯業ノ経営ヲ不能ナラシムルカ如 揚費その他諸掛を加えると31.50円となるので,
キ根本的打撃ヲ受クルノ惧無之見込」と判断され その差額10・50円を新関税率として設定する(奨 (3)たのである。ここに見られるごとく,当時におけ 励金は廃止)というものであった。この「合同」
る商工省当局の製銑資本の存立に対する判断は, 案と一体となった銑鉄関税引上案に対しては,
浜口内閣の産業合理化方策を反映してか,かなり 「産業合理化」の本義に反する等,鉄鋼関税引上 厳しいものがある。この点は,当時の銑鉄カルテ 反対連盟をはじめとする種々の反対論が展開され ル提出による銑鉄生産費51.00円(前年9月調査, たが(後述),商工省側は「合同」を行わなけれ 第4表(k)の5年3月調査では51.25円)を商工省 ば一層の関税引上が必要であることなどを主張し 側は採用せず,それより5円近く低い数値を標準 て実現をはからんとした。しかし,「合同」案そ 生産費と推定したことにもあらわれている。 のものが政府部内の不統一(井上大蔵大臣が新会
ところが,すでに見たごとく,その後短期間に 社の発行する社債1億円に対する政府保証を拒否
第4表 国 内銑鉄生産 費 と 銑鉄輸入価 商工省。大蔵省調べ
エ・期②ls瑚(b)l sa・月¢)】&瑚(d)1&瑚⑥lsa1月 聰 生産費
鉄 鉱 石 15.20 14.40 11.90 11.20 11.20 11.20 原 骸 炭 20.90 17.33 14.63 13.96 13.96 13.30
料 満 俺 鉱 1.50 1.50 1.50 0.50
費 石 灰 石 1.40 1.20 1.50 1.20 1.20 1.20
小 計 37.50 32.93 29.53 27.86 27.86 26.20 労 力 費 3.00 2.50 2.50 2.50 2.50 2.00
雑 費 12.00 10.50 軌70 9.50 9.50 8.30
利益及錆却 6.16 6.00 Z50 6.50 6.50 5.50
合 計 58.66 51.93 49.23 46.36 46.36 42.00
製鉄 奨励金 一 5.00 一 5.00 5.00 一 差 引 58.66 46.93 49.23 41.36 41.36
輸入価格
沖 着 48.00 42.00 40.00 37.50 33.77 2aoO
陸 揚 費
エ他諸掛
1.50 P.88
1.50 P.70
}a5・ 2.50 2.50 2.50
計 51.38 45.20 42.50 40.00 36.27 31.50
〔改正案〕 〔現行〕 〔奨励金+現行〕〔現行〕 〔現行〕
関 税 7.00 1.67 6.67 1.67 1.67 一 合 計 58.38 46.87 49.17 41.67 37」94
生産費ト輸入価格トノ差 α28 0.06 0.06 一α31 3.42
〔奨励金廃止新関税〕 10.50
〔出所〕(a)〜(e)「銑鉄生産費ト輸入価格トノ比較変遷」(昭和5年7月)(『昭和財政史資料』1−41所収)。
(f)「製鉄合同会社設立計画案」昭和6年1月(推定)(同上5−153所収)。
(g)(h)「銑鉄生産費ノ研究」昭和7年3.月30日(同上4−86及び4−219所収)。
(i)「銑鉄生産費」昭和7年6月8日(同上4−86及び4−219所収)。
この数値は大蔵省関税局『税関百年史』上(昭和47年)577頁にも記載さる。
(j)鉄鋼協議会「鉄鋼関税改正二関スル陳情書」大正15年10月。
(k)銑鉄共同組合「銑鉄生産費御照会二係ル件」昭和5年3月7日,鉄鋼協議会宛(旧大倉鉱業資料)。
(1)銑鉄共同組合「銑鉄関税引上要望陳述要領」昭和5年7月15日(旧大倉鉱業資料)。
(m)銑鉄共同組合『銑鉄関税引上ノ急務』昭和6年2月。
格 と の 比較 〔単位:銑鉄1トン当り円〕
製鉄業者調べ
S6平均(9)is瑚(h)1S瑚(i) 篇閣S瑚(k)IS6見込(1)陣月(m)
9.60 15.30 15.30 12.37
11.40 17.60 1a65 13.39
α40 1.35
0.60 1.10 1.00 1.00
i 2;::1 22.00 R.50
■ 置
エ 料 費 サ 造 費
r−一一一一■−
P 34.00 29.95
│
8L
28.00
圏一一一一一■■
Q8.11 原 料 費
2.50 Q8.00
間 接 費
ャ計(工場原価)
17.00圏141・00 6.50 R6.45
6.00 R4.00
4.50 R2.61
作業費(製錬費)
ャ 計
0.65 運転資金金利 旨 1.25 1.25 運転資金金利 1 3.00 2.50
P1.50 1.50112・98 ag8 2.50 P.50 R.00
固定資本利廻 K 却
^ 賃
1&oo
戟k営業費17.00
ε00@3.00
y運賃〕 6.80
4.00 Q.70 S.05
3.00 P.70 S.00
利 益 K 却
^ 賃 138・28 3臥63 35.65 合 計 51。25}F15α00。臨麓■■一閣一一一圃一■凹一一
46.00−■■9■■■廟■■■■巳■■幽一一嗣■露■■■巳一騨■
42.56 合 計
● 繭一一国■一一一唱閣■一鯛■■■顧繭一一馴闇ロー馴■■ ■一一圏■■繭■臨一一■■■9■
4.10 4.00 500 5.00 4.00 一
31.53 31.65 51.00 46.25 42.00
22.03 23.83
1.60 1.60
23.63 25.43 44.00 37.13 32.00 30.00
1.67
25.30
6.23 6.22 7.00 912 10.00 12.56
〃 獄00 〃 希望改正税率
したことなど)により議会に提出されずに挫折し 一86所収)。
たことに伴い,結局関税引上案も実現されずに終 (3)商工省鉱山局「鉄鋼関税改正二関スル調査」昭和
チたのであ窺 5年3月(昭1−41所収).
最後に第皿期について。昭和6年12月以降の金 ω前掲「最近ノ鉄関税改正問題」,前掲「銑鉄関税
問題ノ経過」。輸出再禁止を出発点とするいわゆる高橋財政の展
(5)以上,前掲『税関百年史』上563・564頁,前掲「銑開過程は,関税政策全体のあり方の転換をも結果
鉄関税問題ノ経過」,「製鉄合同会社設立計画案」したであろうことは容易に首肯できる。だが,本 (原案)作成者・年月日不詳(昭和6年1月と推定
稿で問題にしている銑鉄関税問題について,具体 される)(昭5−153所収)。
的にいつどのような形で政府案が決定されるに至 (6}「銑鉄生産費ノ研究」昭和7年3月30日(昭4一
ったのかを現存する諸資料から明確に確定するの 86所収)。第4表(h)の数値とはやや異なるが,そ はや》困難iである。7年3月時点で再検討が行わ れは商工省が見込んだ「理想的標準生産費」35.00 れたこと,当時商工省側は新関税率毎百斤四拾五 円を基礎として算出した結果である。
銭(トン当り7.50円)案を考慮していたことは明ら (7)「銑鉄関税率沿革」昭和7年6月(推定)(昭4一
(6)
かになるが,この案がどう推移したのかは定かで 219所収)。
ない。関税調査委員会が政府の諮問に対して毎百 (8}『第62回帝国議会貴族院議事速記録』昭和7年6 斤参拾六銭(トン当り6.00円)案を「最近ノ事情 月12日。
二基キ慎重審議ノ上」答申したのは5月20日のこ
(7)
ととされている。だが,同委員会がこの答申案を
皿 関税引上論と反対論審議したのは当日わずか一回限りであったとい(8)う。むしろ,5月頃に急拠政府案が決定されたも では,銑鉄カルテルによる関税引上論と反対勢
のと解するのが自然であろう。 力による反対論はどのように展開されたのであろ ところで,この新関税率案(トン当り6.00円) うか。第5表は銑鉄共同組合(一部鉄鋼協議会)
の算出根拠は,第4表ωに示すごとく,国内銑鉄 による関税引上要望関係資料をその作成された年 生産費35.65円とインド銑鉄輸入価格25.43円(陸 代順にまとめたものである。本表からも,銑鉄力 揚諸掛1.60円を含む)との差額10.22円より奨励 ルテルが大正15年の銑鉄関税据置以来一貫して関 金4.00円を差し引いた数値6.22円を約6円と査定 税引上運動を行っていること,及び特に昭和5年
したことにある。この引上幅がいかなる意味をも 以降,前述のことき情勢の下で活発な運動を展開 つことになるか,またその算出方法をめぐる問題 していること,が看取されるであろう。
点などは,政府の引上案の論拠とともに後に検討 こうした銑鉄カルテルによる盛んな関税引上運 されるところである。 動は逆に関西地方を中心に反対運動を惹起する。
第6表にみるごとく,その中心勢力は鉄工業者(
ωこの制度は関税定率法第5条の3として,次の条
@ 鉄加工業者),鉄商,銑鉄輸入業者などの貿易商,文を追加せんとするものであった。「銑鉄ノ輸入二
依リ本邦二於ケル製鱒業ガ鰭ヲ被ル虞アルトキ 雛業界(インド向綿糸布糊に対する報擬懸
念),自由貿易論者などであり,大阪地方では広ハ銑鉄二対シ勅令ノ定ムル所二依リ関税調査委員会
ノ審査ヲ経テ百斤二付別表二定ムル関税ノ外五割以 範な連合体を組織し(大阪商工会議所なども参 下ノ関税ヲ課スルコトヲ得」。 加),強力な反対運動を展開する。とくに昭和5
(2)以上の経過に関しては,大蔵省主税局「最近ノ鉄 年末から6年初頭にかけて反対運動が集中してい 1関税問題」昭和5年11月〔大蔵省所蔵『昭和財政史 るのは「製鉄合同」案と関連して銑鉄関税引上案
資料』1−41所収(以下昭1−41というように略)〕, が発表されたことに伴うものである。
関税課「銑鉄関税問題ノ経過」昭和7年3月(昭4 ところで,こうした関税引上運動と反対運動そ
第5表 銑鉄共同組合による銑鉄関税引上要望関係資料一覧
年 月【 件 名 (資料名) 1出所
大正15年10月 (備考:鉄鋼協議会『鉄鋼関税改正二関スル陳情書』) 〔販〕〔大倉〕
昭和2年2月 「銑鉄関税率改正に関する陳情書」 〔販〕
6月 『印度製鉄事業視察報告』 〔販〕
3年10月 「金解禁ノ影響二係ル答申」 〔大倉〕
4年1月 「大阪各団体鉄関税引上反対要旨ヲ駁ス」 〔大倉〕
11月 (備考:鉄鋼協議会『我国製鉄鋼業ノ保護二関スル陳情書』) 〔大倉〕
5年3月 「標準生産費二係ル答申」 〔大倉〕
4月 「国産銑鉄使用方指定御願ノ件」 〔販〕
〃 「不当廉売品輸入二対シ関税定率法第五条ノニ適用方申請ノ件」 〔販〕〔大倉〕
7月 「銑鉄関税引上要望陳述要領」 〔大倉〕〔昭〕
8月 「井上大蔵大臣へ陳晴及質問応答ノ要領」 〔大倉〕
10月 「関税引上二関シ俵商工大臣へ陳述備忘録」 〔大倉〕
6年2月 『銑鉄関税引上の急務』 〔販〕〔大倉〕
9月 「対印度銑鉄関係並二本邦市価等説明資料」 〔大倉〕
11月 『印度二於ケル製鉄業保護ノ真相』 〔販〕〔大倉〕
12月 「銑鉄関税改正ノ必要二就テ」 〔大倉〕
6年12月・7年1月 「銑鉄関税二係ル件」 〔大倉〕〔昭〕
7年3月 (備考:鉄鋼協議会『鉄鋼関税率ノ改正二関スル陳情書』) 〔昭〕
5月 『銑鉄関税引上は刻下の急務なり』 〔販〕〔大倉〕
ノノ 関税関係及び印度鉄鋼関係参考諸表 〔大倉〕
6月 「銑鉄関税引上二対スル説明補遣」 〔大倉〕
〃 「銑鉄関税引上反対理由二対スル反駁」 〔大倉〕
〔出所〕〔販〕 :銑鉄共販業績編纂委員会『本邦銑鉄統制販売史』昭和16年。
〔大倉〕:旧大倉鉱業資料(東京経済大学保管)。
〔昭〕 :大蔵省所蔵『昭和財政史資料』。
のもの(運動過程)を全面的に分析するのは本稿 び消費者への影響に関するもの,第4にその他 の主たる課題ではないので,ここでは昭和6・7年 (上記分類に該当し難いもの)の四つである。
時点における引上論と反対論の主な内容だけを簡 第1に,現状認識と関税引上の必要性につい
単に検討しておこう。第7表に明らかなごとく, て。銑鉄カルテルの主張によれば,「本邦」製銑 6
サの主な内容は整理すると四つに大別される。即 業はすでに全需要を充し得るまでに発達している ち,第1に「本邦」製銑業をとりまく現状に対す のであるが,印度銑の「競争的廉売」により苦境 る認識と関税引上の必要性如何に関するもの,第 に陥いっていること,印度銑の原価はさほど低廉 2に関税引上の全体的位置づけ及び性格(本質) ではなく,自国政策の手厚い保護により過剰銑鉄 に関するもの,第3に銑鉄市価騰貴の関連産業及 をダンピング輸出しており,もしその我国市場の
第6表 銑鉄関税引上反対論一覧
年月副反対縮(団体)i 件 名(資料名) 1出所
昭和2・9 大阪鉄工業同業組合 「銑鉄鋼材関税引上反対陳情書」 〔昭〕
3・1 〃 「鉄鋼関税引上反対陳情ノ概要」 〔昭〕
3.9
不詳(鉄工業者と推定される)
「鉄鋼価格変動ノ上ヨリ見タル鉄鋼関税引上ノ不必要」 〔昭〕
4・1 鉄木材関税引上反対連盟 鉄木材関税引上反対 〔大倉〕
5 岸本。日商・日印通商 「印度銑鉄不当廉売法適用反対陳清書」 〔販〕〔昭〕
5 日 印 通商 「バーン銑鉄準国産御指定御願」 〔大倉〕〔昭〕
5・12・12 神戸自由通商協会 「鉄鋼関税引上反対決議」 〔昭〕
5・12・17 「鉄鋼関税引上反対声明書」 〔昭〕
5・12・20 大阪鉄工業同業組合等20
c体 「鉄鋼関税引上反対決議」 〔昭〕
6・1・15 大阪鉄商同業組合 「鉄鋼関税引上反対決議書」 〔販〕〔大倉〕
6・1・19 U・1・23
経済更新会
蜊繽、工会議所・大阪府工業懇話会・社団法人大阪工業会
「決議」
u鉄鋼関税引上二関スル反対決議」
〔昭〕
k政〕〔昭〕
6・1(推定) 鉄関税引上反対同盟会 「製鉄合同及び鉄関税引上に対する反対意見書」 〔販〕〔政〕〔大倉〕
6・初(推定) 上 田 貞 次郎 「製鉄合同と関税」 〔販〕
6・1・30 〃 「最近の関税問題」 〔販〕〔大倉〕
6・初(推定) 大阪鉄工業組合 「製鉄合同・鉄鋼関税引上の一般産業に及ぼす影響」 〔昭〕
6・9 大阪自由通商協会 「関税改正二関スル意見書」 〔大倉〕
7.5.30 銑鉄関税引上反対産業団 体連盟
「銑鉄関税引上反対決議並二参考資料」 〔昭〕
〔註〕資料の全文が確認されるもののみを掲出した。
〔出所〕〔販〕 :銑鉄共販業績編纂委員会『本邦銑鉄統制販売史』昭和16年。
〔大倉〕:旧大倉鉱業資料(東京経済大学保管)。
〔昭〕 :大蔵省所蔵『昭和財政史資料』。
〔政〕 :通産省編『商工政策史』第17巻鉄鋼業(大橋周治稿),昭和45年。
支配を許せばやがて価格は高値に吊り上げられる は銑鉄市価を騰貴せしめ,鉄加工業・製鋼業・土 であろうこと,などが関税引上の根拠とされてい 木建築業などに大打撃を与え,さらに鉄製品関係
る。これに対し・反対論者は,内地銑鉄は十分に の輸出を阻害すること,結局は消費者民衆の負担 (2)引き合う筈であること・関税引上はむしろ製銑 を増加すること,などの一大キャンペーンを張る。
業の発達それ自体にとって有害であること・など これに対して,銑鉄カルテル側は,関税引上による を主張するが,この点では引上論を十分に反駁 銑鉄市価への跳ね返りをトン当り3円と見積り,
し尽してはいない(この他金輸出再禁止後の鉄価 3円上昇した場合の関連産業及び消費者への影響 騰貴の割合についてはその評価を大分異にしてい は軽微なものと全体として極めて過小に計算した
る)。 上で,製銑業と鉄加工業とは「共存共栄」を理念 だが,第2。第3の点となると事情は異なる。 として考慮されるべきであること,輸出品加工業 第3の銑鉄市価騰貴の関連産業及び消費者への影 の対外競争力はむしろ外国銑排除によりその基礎 響について先に述べると,反対論者は,関税引上 が安定するものであること,消費者負担について