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麻酔科ペインクリニックについて About the Pain Clinic of Anesthesiology 大瀬戸 清 茂 Kiyoshige OHSETO

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東医大誌 74(4)

: 374

-

381, 2016

最 終 講 義

麻酔科ペインクリニックについて About the Pain Clinic of Anesthesiology

大瀬戸 清 茂 Kiyoshige OHSETO

東京医科大学麻酔科学分野

Anesthesiology, Tokyo Medical University

私がお話しした最終講義では、麻酔科ペインクリ ニックについて述べました。そのなかで、ペインク リニックを分かり易く理解するために、「ペインク リニックについて」、「東京医科大学麻酔科ペインク リニックの歴史」、 「痛みについて」、 「痛みの感じ方」、

「麻酔科ペインクリニックの診察や検査について」、

「治療について」、「神経ブロック治療とその他の治 療」、「慢性痛と適応疾患」などに分けて主に Q&A の形式で文章にしました。

Q 麻酔科ペインクリニックはどういう科ですか?

「ペイン」は英語で「痛み」を表す言葉で、「麻酔 科ペインクリニック」というのは、麻酔科における 痛みの専門診療を行う科のことです。

日本人には古くから「我慢は美徳」という考え方 があり、我慢強いことが立派であるとされる傾向が 強かったように思われます。ところが、つらい痛み を我慢し続けても、一つの痛みが別の痛みを招いた り、痛みを増強させたりする「悪循環」が起こりや すいので、現代では痛みは我慢しすぎないことが大 切であると理解されています。

痛みの原因になっている病気が明らかな場合は、

その病気の治療を受けることが第一です。しかし、

原因となる病気が治っているのに痛みだけが続く場 合や、原因がわからない痛み、長期間、改善しない

痛みがある場合には、痛みの治療を受けることが必 要であり、そのために痛みの専門外来である麻酔科 ペインクリニックを紹介するのがよいと考えていま す。

Q 東京医科大学麻酔科ペインクリニックの 歴史について

東京医科大学麻酔科ペインクリニックの歴史につ いては、記録が残っている 1979 年以降について述 べます。この当時の発表は、鍼灸についてであり、

針麻酔と針治療についての発表がありました。その 後藤野義雄先生のクモ膜下フェノールブロックや 様々な神経ブロックについて発表されています。さ らに、伊藤樹史先生の CT ガイド下神経ブロック、

2000 年頃からは、矢数芳英先生よる漢方薬の発表 があります。治療法について 2010 年以前は、光線 治療と一般的なランドマーク法による神経ブロック 法が多く、大瀬戸着任後の 2010 年以降は X 線透視 下や超音波ガイドの下神経ブロック法が主流を占め ています。

Q 急性痛と慢性痛の違いについて?

痛みには大きく「急性痛」と「慢性痛」の 2 種類 があります。

急性痛は、怪我や急性の病気などによって急激に

*本論文は平成

28

1

15

日に行われた最終講義の要旨である。

キーワード

:

慢性痛、神経ブロック、神経障害性疼痛

(別冊請求先

:

160

-

0023 東京都新宿区西新宿 6

-

7

-

1 東京医科大学病院麻酔科)

(2)

起こる痛みで、一般的に原因となる怪我や病気が治 ると同時に痛みも消えてしまうものです。

慢性痛というのは、3 ヶ月以上も持続する痛みで す。「関節リウマチ」や「三叉神経痛」などは慢性 痛の代表的なものですが、関節リウマチでは慢性炎 症などにより常にジワジワと痛みが続きますが、三 叉神経痛では突然、発作的な激しい痛みを何度も繰 り返します。このように痛みの現れ方は、それぞれ 大きく異なります。また、急性痛である怪我や病気 が治ったあとに、いつまでも痛みが残っている場合 も、その痛みは「慢性痛」となります。

ただし、その慢性痛が起こるメカニズムは「急性 痛が慢性化したもの」というように単純なものでは なく、様々な原因があります。

たとえば、怪我や病気で炎症などが起きた時点で、

神経の組織が破壊されたり、変化したりして、神経 まで損傷され慢性化してしまうことがあります。或 いは、 「痛みの刺激」を神経が記憶してしまうために、

元になる怪我や病気が治っても、痛みだけが続いて 慢性化してしまうということもあります。さらに、

一つの痛みが、別の痛みをまねいて慢性化すること もあります。

一般に体のある部分が傷や障害を受けた場合、痛 みを起こす「発痛物質」が放出され、その部分の侵 害受容器が刺激されることによって痛みが生じま す。

そして痛みが起こると、その部分の交感神経が緊 張して血管の収縮が起こり、血液の循環が悪くなっ て、部分的な酸素不足が起こります。この酸素不足 状態が、「発痛物質」を再生産させると考えられて います。最初は軽い痛みだったのに、それを放置し ているうちに我慢できないほどの痛みになってしま うことがあるのは、障害部で上記のような悪循環が 起こるためと考えられています。

そのため、慢性痛は軽い痛みでも放置せず、早め に手当した方がいいと考えます。

Q 痛みの感じ方の個人差と「痛みの悪循環」ついて?

痛みの感じ方は人によって違い、同じ深さの傷を 負っても、ある人は「痛い」と感じ、ある人は「た いしたことない」と感じるかもしれません。

また、「昨日は痛くなかったのに、今日はとても 痛く感じる」ということがありますが、それは、痛 みが精神的な影響や気圧・温度などの変化に影響を

受けやすいためと考えられています。痛みが「イラ イラ」や「精神的な落ち込み」を引き起こすと、そ れによって「血管の収縮」や「不眠」が起こり、そ のせいで「さらなる痛み」を招きます。また、急激 な気圧や温度の変化でも痛みが敏感になっていれば 増強します。

これが、障害部だけでなく中枢を含めた「痛みの 悪循環」で、「不安」「イライラ」「落ち込み」など の苦悩であるマイナスの感情は痛みを増強させ、痛 みを慢性化させやすくします。反対に、 「安心」や「希 望」といったプラスの感情は、痛みを軽減させます。

そして、体調の善し悪しも気分に影響するので、痛 みの感じ方を左右する要因のひとつになります。

このように、慢性痛は「痛みの悪循環」を招きや すい上、外出もままならず、日常生活に支障を来た して「生活の質(QOL)」を低下させます。このよ うな事にならないように痛みで困っている症例は早 期に一度麻酔科ペインクリニックに受診を検討する のもよいと考えます。

Q ペインクリニックでは、どのように

「痛みの検査」を行うのでしょうか?

ペインクリニックでは、患者さんの痛みを軽減す る最適な治療法を検討するために様々な検査を行い ますが、まずは「問診」で、痛みの場所や程度、期 間、痛み方、病歴、病院の受診経歴などについて聞 いていきます。

その際、患者さんの話から、より具体的・客観的 に痛みの状態を捉えるために、 「痛みの評価尺度(痛 みのものさし)」を用いることもあります。

「痛みの評価尺度」は数種類あり、たとえば「NRS

(Numerical Rating Scale)」 は、 0 か ら 10 ま で の 11 段階の数字を用いて、患者自身に痛みのレベルを数 字で示す方法です。

0 を「痛みがない」、一番右の 10 を「最悪の痛み」

として、現在の痛みはどの段階かを示すものです。

その他、痛みの程度に合わせて笑い顔が次第に泣き 顔になっていくカードを用いる「フェイス・スケー ル」や、痛みを火山の噴火にたとえたイラストカー ドを用いるなどをして、痛みの程度を相対的な判断 をします。

また、精神的な要因が痛みと関わっていそうな場

合は、抑うつ状態を調べる「心理的検査」などを行

います。

(3)

さらに、「生活の質(QOL)」がどの程度維持で きているかも確認します。

その他、患部に赤みや湿疹、麻痺、けいれんなど がないかをチェックする「視診」や、患者さんのど の神経がどのように障害されているかを、刷毛で感 覚低下や過敏などを調べます。また、痛みを引き起 こすポイント (圧痛点) がないかを探したりする「触 診」を行います。

Q 他には、どんな診療の流れですか?

ペインクリニックでの「痛みの検査」以外の診察・

検査について述べます。

まず、痛みの原因となっている病気の有無を調べ る検査を行います。

たとえば頭痛の場合は「頭部 MRI や CT 」などの 画像検査などを行います。また、痛みのある部位ご とに、内部の病気の有無を調べる検査を行います。

さらに、血液検査や尿検査などの一般生理検査を 行い、痛みを引き起こすような病気がないかどうか を調べます。

神経系の障害が疑われる場合は、どの部位の神経 に障害が起きているのかを調べる「神経学的検査」

を行います。神経学的検査には、眼球の動きや聴力、

視野、舌の神経などを調べる「脳神経検査」と、皮 膚の表面や筋肉、関節、骨などの感覚、反射や筋力 のテストと皮膚の感覚検査があります。

さらに、患部の神経や動脈、関節などを伸ばした り、圧迫したりすることで、痛みや痺れなどを誘発

させて局所診断を行う 「疼痛誘発試験」 を行います。

また、関節痛の場合には、「関節可動域検査」で、

関節が動かせる範囲を測定することで、関節の動き を阻害している因子を見つけたり、障害の程度を判 定したりします。

これらの他に、これまで「痛み」そのものについ ては、患者さんの訴え以外に情報がなく、痛みを客 観的に評価することができませんでしたが、最近は

「電流知覚域検査」を行うことによって、それが一 部可能になりました。それは「知覚・痛覚定量分析 装置(Pain Vision)」という機械を用い、刺激を感 じる電流量を客観的な数値として示す検査法です。

Q 心理的な検査を行いますか?

前述したように、痛みは精神的なものが影響しや すいので、患者さんの精神状態を診る検査は、初診 時に行われます。

多くの場合は問診時に、その時の気分や悩みごと、

ストレスに感じていることがないか、などを訊ねま す。そのとき、必ず心理検査も行います。この検査 で多少なりとも痛みに心理的な傾向がみられたら、

臨床心理士の心理アセスメントが開始され、認知行 動療法が始まります。

さらに、運動療法などが必要ならリハビリテー ション科に紹介します。このように、痛みの治療は、

臨床心理士、外来看護師、受付事務、リハビリテー ションなどとチームを組んで適宜チーム医療が行わ れます。必要ならメンタル科にも紹介します。

1 神経ブロック治療模式図

(4)

Q ペインクリニックでは、どんな治療が 行われるのでしょうか?

*まず神経ブロックについて述べます。

ペインクリニックでは、種々の方法で痛みを治療 していますが、代表的なものに「神経ブロック」と 呼ばれる治療法があります(図 1 )。

痛みは、体中に張り巡らされている神経によって、

脳へと伝えられます。

神経ブロックとは、痛みの原因になっている感覚

(知覚)神経、運動神経、交感神経に対して薬液の 注入などを行い、痛みの刺激が脳に伝達されるのを 遮断(ブロック)して痛みをとるという治療法です。

痛む部位の神経やその周辺に、ピンポイントで効 果の高い薬液を集中的に注入するため、その神経へ の薬液注入で痛みがなくなれば、痛い神経が解る診 断的ブロックとしての活用もできます。また、鎮痛 薬の内服や痛み止めの点滴では効果のない痛みにも 効く場合が多くあります。

痛みのある局所にのみ薬を用いるので、全身や内 臓への影響はほとんどないと考えられます。但し、

抗凝固薬などを服用している場合は、神経ブロック が制限されます。

神経ブロックに用いられる薬液は「局所麻酔薬」

と「神経破壊薬」に大別されますが、最も多く用い

られるのは「局所麻酔薬」です。

神経ブロックの種類や、痛みをもたらす病気、患 者さんの年齢、痛みのある部位などによって、薬液 の濃度や量をこまかく調節・選択できるため「オー ダーメイドの治療」が可能となります。

外来で使用する「局所麻酔薬」の効果時間は約 30 分から 1 時間半程ですが、前にお話しした「痛 みの悪循環」を断ち切ることができますので、何度 か繰り返すうちに痛みが軽く、または起こりにくく なっていくと考えています。

「神経破壊薬」は、神経を長期間遮断する薬ですが、

1 回の治療で用いられる薬の量は極限られているの で、慎重に使用する必要があります。

個人差はありますが、多くは 1 年から数年の効果 がみられ、中には十数年以上、痛みの再発がない患 者さんもいます。

Q 神経ブロックの他には、どんな治療法が ありますか?

その他の治療法について述べたいと思います。

薬液を注入する化学的な神経ブロックに対して、

「物理的な神経ブロック」として「高周波熱凝固法」

「高周波パルス法」という方法があります(図 2)。

X 線透視をしながら、画像を視て痛みのある神経 に特殊な針を刺して高周波電流を流し、その熱で神

2 高周波熱凝固法とパルス法

(5)

経の中の極小部分のタンパク質を固めて神経を破壊 し、痛みの神経伝達をブロックする方法と 42°C 以 下で高周波電流を流して神経の変性を起こさないで 痛みを取る方法です。特に、頸部痛を示す頸椎椎間 関節症、腰殿部痛がある腰椎椎間関節症などの痛み に対して行う脊髄神経後枝高周波熱凝固法は、学会 ガイドラインでも推奨度の高い治療法として示され ています。

最近では器械を補助的に使用しながら針先の進め る方法として、超音波や IVRCT の画像を視ながら 目的とする神経へ刺入する方法も盛んに行われてい ます(図 3)。

そして、痛みの治療として最も一般的なものは

「薬物療法」です。

薬で痛みを止める治療は他科でも広く行われてい て、内服薬や座薬、点滴、注射などによって、体内 に取り込まれた薬の成分が、神経に作用して痛みを 和らげます。

ペインクリニックでの薬物療法は、主に神経ブ ロックなどの専門的な治療の効果を高めたり、ブ ロックでは効果の少ない症例に対して行われます。

ただし、痛みの程度や、どんなときに痛むかといっ た症状あるいは注射の嫌いな症例では、神経ブロッ クよりも先に薬物治療をスタートさせる場合も多く あります。

これら、神経ブロックや薬物療法、その併用療法 でも痛みを充分に抑えられない場合には、症状と原 因疾患に応じて、 「心理療法」や「理学療法」 、 「運 動療法」 、 「針灸治療」など、様々な治療法を併用す る場合があります。

Q ペインクリニックで治療の対象になる「痛み」

には、どんなものがありますか?

ペインクリニックは、体のあらゆる部位の痛みが 治療の対象となります。

ケガや急性の病気などによって急激に起こる「急 性痛」を治療することもありますが、主に行われる のは痛みが、1 ヶ月以上続く「痛み」と「慢性痛」

に対する治療です。

腰痛や頭痛、帯状疱疹の後遺症である神経痛、関 節の痛み、手術や外傷の後に起こる難治性の痛み、

がんの痛み、さらに歯を抜いた後の痛みやギプス固 定除去後に痛みが持続したものなどの「治療が原因 で生じた痛み」も対象になります。

ただし、慢性の痛みの場合、ペインクリニックを 受診すれば、すぐに痛みがピタリと止まる、という ものではありません。

まずは個々の患者さんの「痛みの起こり方」や原 因をきちんと見極めてから、痛みの継続による苦痛 を取り除いていくことが大事と考えています。

3 超音波ガイド下神経ブロック法・X

線透視下神経ブロック法

(6)

Q ペインクリニックで、よく治療されている

「慢性痛」には、どんなものがあるのでしょうか?

*まず典型的三叉神経痛について述べます。

ペインクリニックで多く診ている慢性痛として、

まずは「顔の痛み」を生じる「三叉神経痛」が挙げ られます。

痛みなどの感覚を脳に伝える知覚神経の一つであ る三叉神経に異常が起こり、発作的に激しい痛みが 起こるもので、多くは 50 代から発症し、男性より も女性に多くみられます。以前は「原因不明」とさ れてきましたが、最近では脳幹から出た三叉神経が、

周囲の血管に圧迫されて痛みが起こると考えられて います。

発作性の激痛は、顔の左右いずれかに起こること が多いですが、まれに両側に起こることもあり、軽 く触れたり、風にあたったり、口を動かすなどのわ ずかな刺激で激痛が誘発され、食事や会話も困難に なることがあります。痛みを抑える治療法がなかっ た昔の時代には、痛みでものが食べられず、餓死し た人もいたという病気です。

三叉神経痛の治療は薬物治療が第一選択で、抗て んかん薬の「カルバマゼピン」を内服すると、症状 が軽減されます。ただし、副作用が起こることもあ り、使用量が多すぎると「眠気」や「吐き気」「め まい」 「便秘」などが起こることがあります。さらに、

アレルギーによる重症の発疹が出ることもあり、そ の場合には、薬の服用を中止しなくてはいけません。

また長期間、この薬を服用した場合には白血球が 減少することもあります。

従って、この薬を飲んでいる方の場合は、6 ヶ月 に 1 回くらいは副作用のチェックをすることが必要 になります。

薬を使用したくない人や、薬だけでは効果が不十 分な場合には、次の治療に移行します。

薬以外の治療には「神経ブロック」のほか、 「神 経血管減圧術」と言って、耳の後ろを小さく切開し、

三叉神経を圧迫している血管を神経から離す方法 や、神経の根元に放射線をピンポイントで照射する

「ガンマナイフ療法」などがあります。

しかし、いずれも、しばらくして痛みが再発する ことがまれにあり、その場合はまた薬物療法から再 スタートし、それで治らなければ神経ブロックとな ります。

Q ペインクリニックで診療されている他の病気 には、どのような病気がありますか?

帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛について述べます。

「帯状疱疹」の痛みも、ペインクリニックで治療 することが多いです。

帯状疱疹は、皮膚に疱疹ができて激しい痛みを生 じる病気で、痛みは 2 〜 3 週間も続いて、夜も眠れ ないことがあります。

さらに、 「帯状疱疹後神経痛」と言って、帯状疱 疹の疱疹や痛みが一旦消えて、「治った」と思った ところに痛みが現れることがあります。帯状疱疹の 治療開始が遅れたり、治療が不十分だったりすると、

ウイルスによって傷ついた神経がうまく再生でき ず、神経痛が残ってしまいます。従って、帯状疱疹 を発症したら、まずは帯状疱疹後神経痛にならない ために、早期からの治療が大切です。

帯状疱疹痛の治療は、主として薬物治療を行いな がら、神経ブロックを行います。

しかし、 50 歳以上で帯状疱疹になると「帯状疱 疹後神経痛」になりやすく、その場合は、「鎮痛」

と「神経の再生の促進」を合わせた治療を開始しま す。

帯状疱疹後神経痛の治療も、薬物治療を主体とし て、補助的に神経ブロックを行うこともあります。

帯状疱疹後神経痛には、一般の鎮痛薬はほとんど 効果がないので、「抗うつ薬」や「抗不安薬」、「抗 てんかん薬」などを組み合わせて用います。

また、従来の鎮痛薬とは全く異なる新しい作用機 序の「プレガバリン」という抗てんかん薬の範疇に ある薬も効果が高く、現在多く使用されています。

ただ、一旦帯状疱疹後神経痛になってしまうと、

痛みを完全に消し去ることは非常に難しくなりま す。帯状疱疹になったら、「抗ウイルス薬」による 治療と共に、急性期から痛みを十分にコントロール して、後遺症を残さないことが重要です。

Q 神経障害性疼痛について?

ケガや病気が治った後、いつまでも痛みが続き、

さらに、それが激しい痛みになることがあります。

これは、神経そのものの働きが障害されて起こる痛 みで「神経障害性疼痛」と呼ばれます。

激しい痛みが特徴で、「刺すような」「焼けるよう

な」「電気が走るような」などと表現されることも

(7)

少なくありません。 「風があたっただけでも痛む」 「軽 く触れただけでもピリピリする」といった症状を訴 える患者さんもいます。

こうした痛みには、神経ブロックと薬物療法を中 心として、心理療法が並行して行われ、チーム医療 をすることもあります。

その他、症状に応じて、動かす機能を保持や増強 する「リハビリテーション」や、温熱療法で患部を 温め、痛みのために動かさずにいた関節や筋肉が硬 くなるのをふせぐ「物理療法」、 「脊髄刺激療法」、 「手 術療法」など、様々な治療法が用いられることもあ ります。

Q 「腰痛」の中で椎間板ヘルニアなどで、ペイン クリニックに来られる方もいますか?

腰椎椎間板ヘルニアについてまず述べます。

日本人の中で最も訴えの多い病気は「腰痛」と言 われていて、ペインクリニックにも慢性の腰痛を訴 えて来られる患者さんが多くいます。

慢性の腰痛を起こす代表的な病気は、 「腰椎椎間 板ヘルニア」です。

ヘルニアの治療は近年、大きく変化していて、20 年前はヘルニアが見つかったらすぐに手術をしてい ましたが、MRI の登場によって、「はみ出た髄核は 3 〜 6 月で自然に吸収される」ということがわかっ てきました。

さらに、「手術をした人としなかった人を比べる と、 1 年後の予後が変わらない」という結果も報告 もあります。

従って、ヘルニアによって麻痺や排尿障害などが 起きた場合は緊急手術が必要ですが、その必要がな い場合には、手術をしない「保存的治療」で、自然 に吸収や縮小するのを待つという考えに変わってき ています。

手術をしない場合は、薬物療法や神経ブロックで ヘルニアの症状が軽減するまでの間の痛みを鎮める ことになります。

薬は鎮痛薬以外に、不安感が強い人には「抗不安 薬」、落ち込みやすい人は「抗うつ薬」など、様々 な薬が処方されます。

さらに、筋力アップや腰痛体操をしてもらったり、

神経ブロックを併用したりしながら、軽快するまで の期間をフォローしていきます。

非特異的な腰痛に関しても、神経ブロックと他の

保存療法を組み合わせながら治療を行います。

Q 腰部脊柱管狭窄症についてペインクリニックの 診療はどのようなものですか?

「腰部脊柱管狭窄症」も慢性の腰痛を起こす病気 で、腰の痛みに、足の痺れや感覚の鈍化、坐骨神経 痛を伴うこともあります。

原因は腰椎の老化に関係しますが、それ以外にも 脊椎の病気、椎間板ヘルニア、外傷などによって起 こる病気です。長く歩くとつらくなり、休み休み歩 く「間欠跛行」が特徴的な症状です。

最近の長期予後の研究で、腰部脊柱管狭窄症の軽 度または中等度の患者のうち,1/3 ないし 1/2 では 自然経過でも良好な予後が期待できると報告されて います。

したがって、最初の治療の主体は「保存的治療」で、

薬物療法、理学療法、コルセットなどの装具、神経 ブロックなどが行われています。

ペインクリニックでは、最初に神経ブロックで痛 みの軽減を図ります。

この時、神経ブロックに、神経の循環を改善する

「プロスタグランジン製剤」などの点滴や薬を併用 すると、「間欠跛行」などの症状も改善されます。

通常の神経ブロックを行ってもあまり効果がない 場合には、神経根ブロックや、「高周波法」などを 行います。又、整形外科での手術なども選択されま す。

我々ペインクリニックの一番の務めは、動けない 人は動けるように、動ける人は社会復帰して仕事が できるように、患者さんをバックアップすることで す。

長引く慢性の痛みに困っている方は、一度、ペイ ンクリニックに相談してもよいのではないかと考え ています。

ま と め

以上述べた疾患のほか、様々な痛みや不定愁訴を

訴える患者さんも来院します。それらの痛みや愁訴

に対して、今まで述べたことを種々考慮しながら診

療しています(図 4)。また、現在は難治性慢性疼

痛に対して、チーム医療や各科と学際的な連携をし

ながら対処して治療を行います。将来的に他科など

で困っている痛みなどの疾患に対して、東京医科大

学病院の麻酔科ペインセンターとしての役割を担っ

(8)

て、慢性疼痛の診療で当病院に貢献していきたいと 思います。

謝   辞

在任中お世話になった大学、病院、同窓会、麻酔 科分野同窓会や医局員の皆様に心からお礼を申し上 げます。また、講演の司会を担当して頂いた近江明 文教授に深謝します。

文   献

1

) ペインクリニック診断・治療ガイド第

5

版(大 瀬戸清茂監修)、日本医事新報社、

2013

4 ペインクリニックに於ける痛みの治療

2)

インターベンショナル痛み治療ガイドライン(日 本ペインクリニック学会インターベンショナル 痛み治療ガイドライン作成チーム・編)、真興交 易(株)医書出版部、2014

3)

神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(日本ペ インクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガ イドライン作成ワーキンググループ・編)、真興 交易(株)医書出版部、2011

4)

腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン改定第

2

版(監修

:

日本整形外科学会、日本脊椎脊髄 病学会)、2011

5)

腰痛診療ガイドライン

2012(監修 日本整形外

科学会、日本腰痛学会)、

2012

6

) 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン

2011

。日本 整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会、2011

参照

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