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医療保障制度と官民の役割分担:はじめに

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Academic year: 2021

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医療保障制度と官民の役割分担:はじめに

平成25年度大会共通論題

総合司会 恩 藏 三 穂

本年度の共通論題のテーマは, 医療保障制度と官民の役割分担 である。

医療 というキーワードで全国大会をふりかえると,平成18年度シンポジ ウムで 民間医療保険の課題と将来 というテーマのもと,保険業の内部か らみた民間医療保険の課題が論じられている。今回の共通論題では,医療保 障制度が抱える課題を解消するために,民間が担うことのできる役割につい て焦点をあてている。

さて,日本の公的医療保険制度は,医療機関を自由に選べるフリーアクセ スを実現し,安い医療費で高度な医療を受けられるとして,世界から極めて 高い評価を得ている。ここで共通論題における議論を進めるにあたり,本制 度の患者負担に関わる4つのポイントを確認し,現在,わが国の抱える課題 について触れてみたい。

一つめとして, 公的医療保険制度の体系 からみてみよう。国民健康保 険,健康保険および後期高齢者医療制度で成り立つ本制度では,基本的に社 会保険方式がとられているが, 国民皆保険 を維持するために公費が投入 されている。また,後期高齢者医療制度においては,現役世代からの支援金 も組み込まれている。

二つめとして, 患者の自己負担 があげられる。患者の自己負担率の経 緯をみると,法改正ごとにその負担率は上昇しているが,現在(2013年),

現役世代は3割負担,70歳以上の高齢者は1割負担(現役並み所得者は3割

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*平成25年10月27日の日本保険学会(愛知学院大学)報告による。

/平成26年5月7日原稿受領。

【平成25年度日本保険学会大会】シンポジウム 医療保障制度と官民の役割分担

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負担)である。なお,70〜74歳の高齢者については本来2割負担であるが,

特例措置として2013年度末まで1割負担に凍結されていた。

三つめとして, 高額療養費制度 があげられる。この制度では,月間の 医療費が高額な場合,その一部を保険者から支給されるため,患者は医療費 負担をより軽減することができる。厚生労働省(2009年度)によると,実効 給付率は83.3%,うち若人が78.9%,後期高齢者が91.3%である。

四つめは, 保険外併用療養費制度 である。日本では,一連の診療中に 保険が適用されない診療が一部分でもあると,保険が適用される診療も含め て医療費の全額が自己負担になる。いわゆる混合診療の禁止である。ただし,

新しい医療技術の出現や患者ニーズの多様化に適切に対応するため,厚生労 働大臣が定める 評価療養 (先進医療,医薬品の治験に係る診療など7種 類)および 選定療養 (特別の療養環境の提供,歯科の金合金など10種類)

については, 保険外併用療養費制度 で一部保険給付が認められている。

こうした患者負担を軽減する措置がとられる公的医療保険制度を通じて,世 界最高レベルの平均寿命と医療水準を実現してきたといわれている。

しかしながら,公的医療保険制度には大きな課題が表面化しつつある。す なわち, 医療費負担の増大 である。65歳以上1人当たりの医療費は64歳 以下の約4倍に匹敵するようであるが,高齢化の進行によって,ますます医 療費が増加するという問題が生じている。また,医療技術の進歩による医療 の高度化も,医療費を増加させる一因となっている。医療費(名目額)につ いてみると,2011年は39兆円であったが,2015年には45兆円,2025年には60 兆円に到達すると見込まれている 。

一方,医療費の主たる支え手である労働人口が減少しているという問題も ある。厚生労働省によれば,65歳以上の国民1人に対して20〜64歳の人口割 合をみると,1965年は9.1人で 胴上げ型 ,2012年は2.4人で 騎馬戦型 であったが,2050年は1.2人で 肩車型 と予想されている。少子高齢化や

医療保障制度と官民の役割分担:はじめに

1) 社会保障 改革に関する集中検討会議(第10回) (2012)参考資料1‑2,26 ページ。

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医療の高度化による医療費負担の増大は,現在の公的医療保険制度の根幹を 揺さぶるものといえよう。

上述した共通認識のもと,各報告者には,それぞれの専門分野からの視点 でご報告していただく。具体的には,⑴諸外国との比較,⑵情報の非対称性,

⑶保険者機能,⑷保険契約者における公平性,についてである。

また,ご報告いただく議論を深めるために,パネルディスカッションでは,

医療制度改革と民間の役割 , 予防・健康管理と民間の役割 , イノベー ションと民間の役割 , 諸外国における民間の役割 という4つのテーマを 用意した。これらのテーマに従って,それぞれの視点でご発言いただき,フ ロアとの質疑応答を通じて議論を深めていきたい。安定的で持続可能な医療 保障制度をわが国で実現させるために,民間が担うことができる役割とは何 か,本共通論題によって有効な示唆が得られればと考えている。

(筆者は高千穂大学教授) 保険学雑誌 第 625号

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