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医療保障制度と官民の役割分担

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医療保障制度と官民の役割分担

平成25年度日本保険学会全国大会

パネルディスカッション

【司会:恩藏三穂】それではお時間になりましたので,パネルディスカッシ ョンを始めます。お手元にパネルディスカッション用の資料はございますか。

これに従って,パネルディスカッションを進めていきたいと思います。

今回の共通論題, 医療保障制度と官民の役割分担 では,公的医療保障 制度が抱える課題を解消するために民間が担うことができる役割について,

各報告者が論じてまいりました。さらにここで議論を深めるために,四つの ポイントに絞らせていただきました。一つ目が 医療制度改革と民間の役 割 ,二つ目が 予防・健康管理と民間の役割 ,三つ目が イノベーション と民間の役割 ,そして四つ目が 諸外国における民間の役割 でございま す。

それでは,最初の 医療制度改革と民間の役割 について始めます。小坂 先生,ただいまご提示しましたポイントの概略とご意見を頂戴できればと思 います。よろしくお願いいたします。

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【小坂雅人】まず論点1としてお示しした内容の説明に加えて,多少の個人 的なコメントを述べさせていただきたいと思います。現在,示されている医 療改革の方向性の中で,民間の医療保険と関係してくると思われる部分をピ ックアップしたものです。

1つ目は,平均在院日数が今後も減少していくという点です。2012年の平 均在院日数は,高度急性期,一般急性期,亜急性期という,いわゆる急性期 については,それぞれ19〜20日,13〜14日,75日となっていますが,政府の 社会保障と税の一体改革成案には, 2025年の段階でそれぞれ15〜16日,9 日程度,60日程度という目標が掲げられています。病床規制や診療報酬によ る誘導といった手段によって在院日数を短縮することで,高齢者の入院患者 の増加に対応していこうということです。平均在院日数が減ってくるという ことは,定額の入院給付金を中心とした現在の民間医療保険に対するニーズ が減少してくることが考えられると思います。また,早期で退院するという ことは,現在よりも早い段階,まだ回復途上にある段階で退院するというこ

出典:社会保障・税一体改革成案における改革項目

出典:社会保障制度改革国民会議報告を受けた プログラム法案 の骨子(8/21 閣議決定)

論点1:医療制度改革と民間の役割

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とになりますので,在宅医療や在宅介護といったものに対するニーズが増え てきますが,今のところ,民間医療保険もしくは介護保険で,退院後の在宅 療養に対する手厚い保障はあまり提供されていませんので,そのあたりに対 するニーズも出てくるのではないでしょうか。

2つ目の患者負担の増減については,国民会議の報告を受けたプログラム 法案の骨子が示されています。1点目は, 70歳から74歳の窓口負担 。法律 の本則上は2割となっていますが,これまで1割で凍結されていまして,こ れを本則どおりに戻そうという論議がなされています。この改定は,自己負 担の上振れ要素になりますので,民間保険に対するニーズも多少増えてくる と思います。

もう1点が, 高額療養費の適用となる自己負担限度額の見直し です。

現在は,一月当たりの自己負担の限度額というのは3段階に分けられていま す。通常の所得水準の方々は,一月当たり10万円はいかない負担額です。ま た,高額所得者については15万円強。低所得世帯に対しては,3万5,400円 というように,3段階の自己負担限度額が設定されています。それに対して,

高額所得者の負担は引き上げ,中所得者の負担はもう少し細分化しようとい ったような提案がなされています。この点につきましては,恐らく現行より も負担が増える人たちが出てきますので,民間保険による保障に対するニー ズが出てくるかと思います。あとは,紹介状なしの大病院の外来受診患者へ の定額自己負担導入,給食の自己負担の見直し。こちらも自己負担にプラス の影響がありますので,民間医療保険に対するニーズが出てくるかと思いま す。

【司会】ありがとうございました。それでは,石坂先生,お願いします。

【石坂元一】いずれの論点に関するコメントも,できるだけ報告と関連づけ たものにしたいと思いますので,その結果,近視眼的なものになるかもしれ ません。

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患者負担の増減というところについてですが,報告の中でも示しましたよ うに,患者の自己負担は,モラルハザードの影響を緩和する有効な手段です し,疾病率や医療サービスの需要量を下げる誘因となり得ます。また,自己 負担を求めることは,厚生損失の縮小にもつながります。ただし,厚生損失 やその縮小の度合いというのは,医療サービスに対する需要の価格弾力性に 大きく依存しております。もし弾力性が小さいならば,厚生損失も相対的に 小さいことになります。したがって,この観点からは,弾力性の小さな医療 費の負担率を相対的に下げたほうが効率的だといえます。また,高額療養費 制度は,軽い疾病の自己負担を相対的に上げているとも受け取れます。いず れにせよ,実質負担を考慮して,全体のバランスを考える必要があると思い ます。

そして自己負担を引き上げることのデメリットとしましては,医療アクセ スを抑えてしまうということが挙げられます。軽い疾病が重篤になったり,

あるいは未発見の疾病がそのまま放置されたり,そういった事態が引き起こ されかねないと思われます。

以上が改革の影響としますと,民間の役割として,自己負担増に対する軽 減やデメリットの解消といった補完,あるいは契約者の需要ないしは結果の 不確実性に対応する補足や二重といった柔軟な機能が求められるかと思いま す。ただし,これらによる自己負担の実質引き下げというのは,総医療費増 大につながる可能性もあるということを最後に指摘しておきます。

【司会】ありがとうございます。次に,石田先生,お願いします。

【石田成則】私からは,いくつかの点に絞ってお話ししたいと思います。ま ず,一番大事なことは,この在院日数につきまして,病床というのが分かれ ております。病床というのは,一般病床,療養病床,それから精神病床とい う形で病床が別れていて,一般病床についてはかなり減少を見てきているの は確かですが,高齢者で長期入院をする療養病床における在院日数というも

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のがあまり変わっていない。さらには,在院日数を減らす目的で,まだ十分 に治っていない,例えば,もっとリハビリが必要な患者さんをいったん自宅 に返してしまう。そうすると,また別の病院に行って入院する。こうした病 院の 渡り ということが起こってしまう。こうした療養病床における高齢 者の行動を考えていきますと,病床での長期入院というのは,これからまだ 起こる可能性があって,これが平均在院日数に大きな影響を及ぼしてくるの ではないかと思っています。ただ,現在,この長期入院に関しましては,あ る一定の月数までについては包括払い,それ以後は予算管理で出来高という ことになっていて,診療報酬のところで療養病床における長期入院を抑える 方向にあると思います。

もう1点,先ほどの病院の 渡り ではないですが,社会的入院というこ とがやはり大きな問題になっていて,この社会的入院を解消するためには,

在宅化ということが必要になってくる。ところが,在宅化が必要になってく るのだけれども,自宅のほうで家族と一緒に暮らしている,同居の場合はい いわけです。そうでない世帯が非常に増えてきている。独居老人が増えてき ている。こうした人たちに対する在宅医療のサービスが著しく不足している。

保育所よりももっと社会的に見れば深刻な問題ではないかと思っています。

そういう意味で,政策的にもますます在宅化ないしは,ものからサービス化 ということを進めていくことが,長期入院問題にピリオドを打って,在院日 数の短縮化につながっていくのではないかと思っております。

それから,国保の患者負担のことについてお話をしていきますと,これま でも,実は高齢者の自己負担割合が上げられてきたわけですが,この効果は,

非常に短期的です。これまでの政策で見ても,2年,3年は継続しますが,

それ以降,のど元過ぎれば熱さ忘れるということで,自己負担割合の上昇が 必ずしも入院日数の抑制につながっていないことが言われています。

2番目の自己負担限度額の見直しということについては,まさに石坂先生 のおっしゃったとおりです。高額医療費の自己負担は,後精算になってきま すので,所得が高い人にとってはそれほど影響がないと私は思うのです。と

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ころが,所得が低い人にとっては,やはりこうした仕組みをあらかじめ組み 込んだ行動を取ることも当然考えられますので,低所得者層と高所得者層に 与える影響を分離して考える必要があると思います。

最後に,紹介状なしの大病院での受診ということについては,これはもう 皆さんもご承知と思いますが,要は病院の機能分化,これをますます推し進 めるということと同時に,かかりつけ医制度,家庭医制度をしっかり根付か せることが大事になってきている。私がイギリスにいたつたない経験でも,

そのかかりつけ医は,地域のコーディネーターとなって医療と福祉の連携を とっているという事例があるわけです。リハビリや術後の生活について社会 福祉士の方がかかりつけ医の方から連絡を受けて,在宅でも療養をよりしや すくする環境づくりをしております。そういう意味で,医学部の教育のあり 方,それから専門医への集中の問題,いろいろな問題を克服して,かかりつ け医制度を根付かせることが重要と思います。

【司会】ありがとうございました。では,宮地先生,お願いします。

【宮地朋果】高額療養費の自己負担限度額の見直しについてお話しますが,

おしなべて効率性を重視した施策ではないかと考えます。限度額のアップに ついてみると,金銭的な意味では,一定以上の所得を得ている人にとっては,

民間保険の意義・役割が拡大していくように思います。また,企業が手厚い 保障を独自に提供している場合には,企業保障の存在も相対的に大きくなっ ていくのではないでしょうか。

水島一也先生のご著書 現代保険経済 に︑生活保障システムの三層構造 についてのご説明があります。社会保障の上に企業保障︑さらに個人保障が あるというものです。近年,公的な保障が縮小し,企業保障,個人保障とい った私的な保障が相対的に大きくなっています。

限度額のダウンに関しては,特に,若年層における非正規雇用割合の高ま りや,ワーキングプアなどの問題があります。また,ニートについても多く

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の問題が指摘されています。これらは長期的にみて,少子高齢化とあいまっ て非常に大きなリスクとなり得ます。特に保険会社ということではありませ んが,民間には雇用面での努力や支援策等が求められると思います。また,

民間保険会社には,商品開発や価格設定など商品提供面での工夫が求められ るのではないでしょうか。しかし国などから何らかの強制力が働かなければ,

対応することは難しいかもしれません。

【司会】ありがとうございました。それでは,論点2 予防・健康管理と民 間の役割 について,ご意見を伺いたいと思います。

先ほどと同じように,小坂先生,よろしくお願いします。

【小坂】2点目は,2025年度に向けて何らかの対策による医療費抑制効果が 提示されているものです。8月30日に厚生労働省から示されたもので,高齢 者への介護予防,現役世代からの健康づくり,医療資源の有効活用の三つで

論点2:予防・健康管理と民間の役割

出典: 国民の健康寿命が延伸する社会 に向けた予防・健康管理に関する取組の 推進(8/30厚労省)

出典:社会保障制度改革国民会議報告を受けた プログラム法案 の骨子(8/21 閣議決定)

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す。中でも特徴的なものが,2番目の現役世代からの健康づくりとして掲げ られている,レセプトや健診情報などを活用した データヘルス です。レ セプトは健保組合が持っていますが,健診情報は企業が持っていますので,

同じ対象者の情報が分断されている現状を何とかしよういうのが, データ ヘルスの推進 の内容です。そしてもう一つが,2008年に開始された特定健 診・保健指導を通じた生活習慣病予防の推進です。この二つの取り組みをメ インとして,今後健康管理や予防というものに更に力を入れていきましょう と。その取り組みには健保組合だけではなく,民間の事業者の参入を進めて いきましょうという方針が示されています。ここでは保険会社が事業者とし ていろいろな役割を担っていくこともあるでしょうし,健康づくりが進展す ることによって,入院保険金などの支払い面への影響も出てくると思われま す。

もう1点が,予防管理の推進策として示されている,健康管理や疾病予防 など自助努力を行うインセンティブを持てる仕組みの検討です。簡単に言い ますと,健康づくり,健診,運動といったことに気をつけている人に対して は,例えば,ポイント制度などを導入して,個人的に対してインセンティブ を与えてあげましょうということです。ポイント制度は,すでに国保や健保 組合で導入されているところもありますが,中にはポイントを現金化するこ とが可能なものもあります。このような,金銭的なメリットを導入するとい うのは,公的保険の中への民間的要素の取り入れともなっているのかなと思 います。

【司会】ありがとうございます。石坂先生,お願いいたします。

【石坂】予防や健康管理の推進ですが,この実施によりまして,疾病の頻度,

強度が下がり,かつぶれが小さくなるということは,官にとっても民にとっ てもリスク管理上望ましいことといえます。したがいまして,この観点から,

現在官がこういったことを主導しているようですが,民も追随・協調すべき

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だと考えられます。そもそも,保険という仕組みを取っている限り,モラル ハザードの問題は避けられないと思われます。報告の中で,自己負担の効果 をお示ししましたように,自己負担分が存在することによって,ある意味,

契約者に制限が課され,その結果,疾病率や医療サービス量を下げる努力・

投資を行う誘因が生じます。したがいまして,前論点の自己負担の設定は,

この論点の2番目の予防や健康管理の推進に関連があると考えられます。ま た,契約者の行動原理は期待効用最大化としておりましたので,インセンテ ィブとしては,こういったことの実施によって効用を上げる,例えば,今,

小坂さんよりお話がありましたように,予防や健康管理に対する補助が有効 であろうと思います。なお,疾病率が下がれば保険料も下がり,保険以外の 財・サービスも含めた契約者の消費計画範囲というものが広がることになり ますので,結果,効用も増して,効率,公平いずれの面でも改善が見込まれ るものと思います。

【石田】私は,今回の報告の中で,公的な保険者,市町の行動を捉えました。

実は最近になって,市町の保険者の中で,1年間病院に行かなかったとか,

検診を複数回受けたことに対して現金の給付をする市町も出てきている。そ れは,自治体の魅力を高める自治体間の競争でもあるかと思います。私は介 護保険が始まる以前に,地元の山口で介護手当というものがその当時ありま したが, 比較情報が欲しい と言ったら, そういう比較情報はまかりなら ん と言われました。自治体間の競争を促進するのはよくないと言われたこ とがありました。そうした意味で,私自身,報告の中でもお話ししましたが,

創意工夫を凝らして予防医療を促進するために,民間保険者というものの存 在がこれからクローズアップされてくると思っております。ただ一方で,自 治体の中でも競争が起こって創意工夫ができるということになれば,これは これで現場の中で多少の状況改善にはなると思っております。

もう1点だけ補足させていただきます。各官庁でばらまき的にもらった予 算を,どうやって効果的,効率に使っているのかという財政の効果検証は,

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日本ではほとんどなされていない。アメリカやヨーロッパの国では当たり前 のことが,日本ではなされていない。こうしたことも予防医療が促進しない 一つの遠因になっていると思っています。だから,費用対効果を見て,予防 医療のあり方をしっかり検討すべき時期に来ていると考えております。

【宮地】先ほどの石田先生のお話と関連しますけれども,仮にではあります が,予防・健康管理が民間(営利)に委託され,しかも委託される業者間に 競争が働けば,効率や費用対効果が上がることが考えられます。一方で,競 争が絡むと,予防効果が高い対策は何かという点が重視され,本当の必要性 や長期的な視点よりも, すぐに効果が出る ものや人を中心に,施策がな される懸念もあります。したがって,疾病の種類や各個人の身体的な状況に よって,極論を言うと, 命の選別 がなされる可能性が出てくると思いま す。

そのような意味では,適正な規制等がなければ,予防・健康管理を民間

(営利)に委託することで, 公平性 に影響が出てくる恐れがあると考えま す。これは,affordabilityと

availabilityの双方に当てはまる問題です。

【司会】ありがとうございました。それでは,論点3 イノベーションと民 間の役割 について,よろしくお願いいたします。

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【小坂】こちらにお示ししましたのは,保険外併用療養として扱われている 先進医療の概略と,最近話題の再生医療についてです。先進医療につきまし ては,保険外併用療養費制度で先進医療の技術料部分だけが自己負担となる もので,陽子線治療とか重粒子線治療といったようながんの治療では300万 円ぐらいの負担となります。また,保険外併用療養ではありませんが,ホウ 素中性子捕捉療法であるとか ダヴィンチ という手術支援ロボットといっ た先進的な医療技術の開発もどんどん進んでいます。

もう一つは,再生医療の市場拡大です。経産省の報告書によると,2020年 には再生医療の市場が1,000億円近くになると見込まれており,かなりのス ピードで拡大していくことになります。また,現在法律案が国会で審議中で すけれども,再生医療の承認のスピードを早めていくような改正も見込まれ ます。

これらの新たな医療技術が先進医療の適用になるとすれば,現在の先進医 療特約をどのように考えていくのか,また,先進医療ではない保険外併用療 法となった場合の対応はどうするのかといったことが,今後の検討課題では

論点3:イノベーションと民間の役割

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ないかと思っています。

【石坂】保険外併用療養費制度が適用されますと,患者負担の軽減,同時に 治療選択肢の増加,こういうことがあります。加えて,民間保険でカバーを 提供するならば,患者にとっての不確実性低減の意味で効率的であるといえ ます。先進医療や再生医療といった新しい医療技術は,とりわけ高額になり がちですので,不確実性の低減は特に有効といえます。ただし,新しい技術 であるがゆえの結果の不確実性は高まってしまうと思います。

懸念事項の一つとしまして,医療サービス需要量と医療費の増大が挙げら れます。ポイントは,患者が直面するコストといいますか,患者が直面する 価格が保険加入によって下がりますので,需要量が増して,総医療費が増大 してしまう。また,よく言われることですが,医師や医療機関が保険外診療 の価格を引き上げる可能性もあると思われますので,こういったことを抑制 する仕組みづくりも大事になってきます。

【石田】この論点については,石坂先生とほぼ意見が同じなので,多く付け 加えることはありません。新薬ですとか新技術などは不確実性が非常に高い ものです。これに対する規制は,社会的規制といわれますが,国民の安全,

患者の安全を確保するものであって,こうした規制については,大きく変え ないほうがよいと私自身は考えております。

一方で,高額診療によって,患者の選択肢が増える。しかし,選択肢が増 えるものの,患者はもともと選択能力がないから計画医療にしていた経緯や,

計画的に政策介入を行ってきた事情があるわけです。患者の選択能力を高め るような仕組み,たとえばセカンドオピニオンですとか第三者の助言,こう いったものを促進する政策をとっていけば,こうした類の経済的な規制につ いては緩和できる可能性はあります。ただし,患者の金銭的な負担能力とい うことについては注視が必要でありまして,私自身は,混合診療を一気に解 禁にするよりは選定療養制度を少しずつ拡大していく。いわゆる管理された

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市場の拡大が必要であると考えております。

【宮地】先進医療などの治療は,高額になる傾向があります。高額な治療費 を払うことができず,治療を断念する人もいます。しかし,このことが本当 に不平等あるいは不公平であろうかという疑問が湧いてきます。例えば,ア メリカの社会に関しては,しばしば 機会の平等 が尊重されますが, 結 果の平等 に関してはその限りではないという指摘があります。貧困者が病 院を追い出される一方で,富裕層がホテルのような快適な施設で世界最高ク ラスの医療サービスを提供されています。どのような医療体制・環境が望ま しいかは,国民の価値観や物事の優先順位に影響を受けるので,民間の関わ り方や役割もそれらを反映せざるを得ないと思われます。

【司会】ありがとうございました。それでは,最後の論点4 諸外国におけ る民間の役割 についてお願いいたします。

論点4:諸外国における民間の役割

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【小坂】ここに並べたことは,私が本報告で述べたことと重なりますので詳 細な説明は省きます。個人的な意見を述べますと,イギリスについては,自 由なアンダーライティングが行われている点では日本と似通った民間医療保 険の市場と考えています。一方,日本では公的病院も私的病院も公的保険の 給付対象になっていますので,イギリスのように公的給付の対象外となる私 的病院での入院保障に対するニーズは存在しません。

フランスについては,先ほどの説明でも挙げましたが,高額療養費制度の 見直しや,保険外併用療養の拡大などから,フランスのような補完型の保険 に対するニーズが高まってくるのだと思います。

ドイツについては,代替保険というものは日本では考えにくいと思います が,例えば,公的保険者の 選択タリフ に含まれている,自助努力のイン センティブとしてのキャッシュバックなど,公的保険の給付にも民間的なバ リエーションが求められてくるのかなと思っております。

【石坂】私の報告は,わが国に特化したものではなく,どちらかといいます と,簡素かつ一般的なモデルを用いたものなので,こういった論点に対して 直接解を得ることはできません。もし得ようとするのであれば,比較可能な 形でモデルを立てて,ある基準の下でどれが選択されるかを考えるというこ とになります。したがいまして,若干論点から外れてしまうかもしれません が,今後予想される状況を踏まえて得られる示唆をコメントしたいと思いま す。

報告の中では,公的医療保険と民間医療保険を組み合わせることで,いず れのタイプの効用も上がる一例を示しました。そこでは,民間保険は補完の 役割を果たすものでした。急速な高齢化は,高リスクタイプ者の割合を大き くしていると考えられます。提示したモデルにおいて,他の条件を一定とし た場合,高リスクタイプ者の割合が上がっていきますと,公的保険の保険料 が上がっていき,結果,低リスクタイプ者の効用は下がってしまう。さらに,

民間保険会社が提供する低リスクタイプ者へのカバー範囲もより小さなもの

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になってしまうといえます。

以上を踏まえますと,民間保険の役割としては,やはり最初の論点で述べ たように柔軟な役割が求められる可能性があると思います。

それと,医療保障制度全体として,何を追い求めるのかということで,効 率を追い求めるのか,公平なのか,効率の中で公平あるいは公平の中で効率 というような,どのスタンスを取るかというのは各国さまざまで,所得格差 等を考えると,公平を追い求めるということになるかと思います。ですので,

こういう問題を考えるときに,わが国はどういうスタンスを取るのかという ことを検討する必要があると思います。

【石田】この点については,私は相反することを少し述べないといけないの ですが,私の報告の中でも冒頭に取り上げました,民間の保険者と公的な保 険者の共存とか競争ということが,アメリカのメディケアの一部で行われて いるわけです。ところが,残念ながら,レジュメの最後のところにお話をし ましたように,どうしてもアクセスビリティですとか低所得者の負担という ことを考慮して,一部に規制が残存したり新たな規制が生まれたりというこ とになって,官と民が共存したとしても,共存条件がなかなか均一化されな いために,かえって市場にゆがみが生じてしまうという問題があります。こ のようなアメリカのやり方はちょっとどうか,と考えているところです

一方で,報告の中で取り上げましたオランダやスイスというのは,コンパ ートメント1,コンパートメント2,コンパートメント3といって医療市場 を対象となる疾病や重篤度によって分けて,それぞれの中で,公的保険者が メインのところ,それから公と私が共存するところ,私に任せるところとし て,市場を分割している。そうすると,所得の弾性値,需要の弾性値という こともまた問題になってくるわけですけれども,医療の中でも自由度,裁量 度が利くようなものについては,民間の保険者に任せてしまう。どうしても 重篤で重大なものについては,公的な保険者が中心となる。その中間の市場 については,公と私が共存する。こういう市場構造も考えられると思ってお

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ります。

【宮地】報告内容に関連してお話しいたします。

医療保険については,アンダーライティングの観点から見て,明らかに有 効と思われるファクターに関しても,その使用が適切でないと判断される場 合も多くあります。

例えば,人種などです。しかし,人種というファクターを使用することが 適正でないとされても,結果として同様の効果が得られる場合があります。

アメリカでは,居住地によって所得水準,教育水準,社会的属性,人種など に有意な差が見受けられることがあります。そのため居住地をリスクファク ターと認める場合,結果的に,人種をリスクファクターとして使用すること と同様の効果が生じることもあると考えられます。

使用が適正と考えられるリスクファクターは,日々変わる可能性があるの で,民間保険会社は世論や社会の変化を,国際的な動向も含めて注意深くみ ていく必要があります。

【司会】ありがとうございました。それでは次に,今お話しいただいた内容 に基づきまして,フロアの皆様から質問形式でご参加いただきたいと思いま す。恒例どおり,ご質問の前にご所属とお名前をいただければと存じます。

なお,今回,ホームページを通じて事前に質問をいただきました。まず,事 前質問を紹介させていただきます。

元 戸大学の刀禰先生からのご質問でございます。

今年の共通論題のテーマは,医療保障制度と官民の役割分担となっていま す。医療保障制度といえば,本来わが国では職域健康保険と地域健康保険か らなる公的医療保険のほかにも,生活保護世帯に対する全額公費負担の医療 扶助制度や厚生労働省指定の公費による特定疾病治療制度,地方自治体が行 う乳幼児医療費助成制度なども含まれます。したがって,本年度大会の共通 論題で官民の役割分担について論じられているのは,医療保障制度全体につ

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いてではなく,その中の医療保険の分野についてではないかと考えます。第 1報告の東京海上研究所小坂雅人さんのタイトルにある 医療保障制度の存 在下における民間医療保険の役割 こそが,共通論題のメインタイトルにふ さわしいと思いますが,このあたりの用語についてご見解を,とのご質問で ございます。

刀禰先生のおっしゃるとおり, 医療保障制度 には 医療保険制度 の ほかに 医療扶助制度 , 特定疾病治療制度 , 乳幼児医療費助成制度 も 含まれると思われますが,それらは官民の役割分担,つまり民間参入が想定 しにくいものと考えられますので,司会者および報告者としましては, 医 療保険制度 に絞って議論を進めてまいりました。また,イギリスなど海外 では税方式のものもあり,今回の報告では,海外も視野に入れておりますた め,タイトルは 医療保障制度 で妥当なのではないかと思われます。

報告者の方で何か他にございますか。

特にないようですので,次にフロアの皆様から質問を受け付けたいと思い ます。どなたかいらっしゃいますか。

【小樽商科大学・中浜 隆】中浜でございます。私も医療保険を勉強してい ることもございまして,先ほどの先生方のご報告,大変興味深く拝見しまし て,勉強させていただきました。本当にありがとうございます。

そこで私から1点,質問を申し上げたいと存じます。大きなと申しますか,

大雑把な質問で恐縮でございますけれども,先ほどの先生方のご報告にもご ざいましたように,主要国は共通の課題を有しながらも,医療保障制度は異 なっているわけでございまして,その点におきまして,官民の役割分担につ きましては,いわば日本型の官民役割分担モデルを構築していくことになる のであろうと,私は思いました。

そこで,具体的な質問でございますけども,先生方は論点1から論点4ま での四つの論点(事実関係)をお示しになったわけでございますけれども,

こうした論点(事実関係)は,今申しました日本型の官民役割分担モデルに

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ついて考察するときに,どのようなインプリケーションを与えるものである と考えられますか。この点につきましては今後の課題とされているかもしれ ませんけれども,現時点でさしあたり考えられていることで十分でございま すので,ご教示をいただけますならば幸いに存じます。

【司会】中浜先生,ありがとうございます。それでは先ほどと同じ順番で,

小坂先生からお願いいたします。

【小坂】まず論点1についてですが,これまでは高額療養費制度によって自 己負担額が抑えられてきたために,比較的高所得の人たちは,自己負担に対 する準備を考えなくて良いという現実があったと思います。それが今回の改 正によって,月当たり25万とか30万とか,割と大きな負担が生じ得ることに なりますので,それらを補完するタイプの保障を求めるようになっていくの ではないかと考えています。さらに,論点3については,イノベーションの 進展によって高額な医療技術が開発されてきています。がんの陽子線治療,

抗がん剤やリウマチの治療薬など,相当高額なものが数多く出てきています。

さらに,再生医療につきましては,すでに保険収載されている製品が2品目 ありますけれども,それらは数百万とか1,000万といった金額ですし,臨床 試験が始まった

iPS

細胞につきましては,現在の一人当たりのコストは 5,000万円とも言われています。このような先進的な技術が保険外併用療養 の対象とされるのであれば,自己負担に対する保障ニーズが出てくるのかな と思っています。

【石坂】お答えとしてあまり適切ではないのですが,私の報告はモデルを用 いてというような話でしたので,その観点からお話しします。同じ経済モデ ルを立てて,同じ基準を設けるのであれば,恐らく官民の役割分担に関して も,ここで役割分担を行えば望ましい,そういった同じ答えが出てくると思 います。

(19)

国によってなぜ異なってくるのかというのは,モデルで言いますと,前提,

そしてモデルを立てたうえでの基準,この2点が各国で異なってくるために,

望ましい役割分担も異なってくると思われます。論点4や報告の中でもお話 ししましたように,まずは制度として何を追い求めていくのか,効率なのか 公平なのかとか,そういった話が前提や基準として必要になってきます。そ して各国の社会構成員によって,社会観とか公平感とか,ないしは政治的要 素,そういったことをいろいろ加味したうえで,初めて日本型の官民の役割 分担が導かれるものと思います。

【石田】私にとって非常に難しい課題を突きつけられたと思っております。

日本型の官民の役割分担ということでいいますと,例えば,後期高齢者の医 療制度については,5割ほど公費の負担が入っていて,それ以外を保険料と 自己負担という形になっている。このように考えてきますと,幅広い土壌で,

いわゆる応能負担といいますが,能力に応じて支払う部分と,それから受診 をすることによって負担する応益の部分があり,医療費というのは,応能と 応益を組み合わせて将来的に資金調達していくべきと考えます。

最近は,民間の健保組合などに対する総報酬割によって保険料の額を上げ ていって,後期高齢者,特に入院の医療費に対する負担を高めていこうとし ている。このように考えてみると,これからの官民の役割分担の中で,所得 の分配の公平性も踏まえて,応能と応益を組み合わせて資金を調達していく ことが一つのポイントになってくると思っています。民間の医療保険はまさ に 応益 ということになってきますので,今後は少しずつ 応能 よりも

応益 が増えていく,こうした方向にあると思っております。

ただ一方で,民間の医療保険の需要分析などを見てみますと,需要量とい うのはあまり所得などには影響されなくて,どちらかいうと,資産額や遺産 額の影響が非常に大きいです。そうすると,比較的所得の高い人たちが,老 後長く入院したり,医療費やリハビリ費がかかったりするのを防ぐために利 用しているという側面があります。応益負担というものを官と民でそれぞれ

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高めていくと,民間の保険のウエイトが高まると格差が生じてしまうことに なります。そういう意味では,石坂先生のご発言とも多少通じますが,応能 と応益,ないしは効率と公平,このバランスの中で将来的な日本型の官民の 役割分担が決まってくるような気がしています。

【宮地】ご質問をいただき,ありがとうございます。本当に難しい質問です ので,十分な答えとは言えませんが,日本型の官民役割分担を考察していく うえで,あるいは構築していくうえで必要不可欠な視点についてお話しいた します。

各国が選択している医療保障制度および官民役割分担のあり方は,その 国々の歴史・文化・国民性・国民の意識・価値観など,あらゆる要因のうえ に成り立っています。したがって,単純に制度や在り方を導入したり模倣し たり,あるいは比較することは困難です。官民役割分担について考える際に は,このような視点が不可欠であると考えております。

【司会】ありがとうございました。

それでは,他にどなたかご質問の方はいらっしゃいますか。

【早稲田大学・江澤雅彦】江澤でございます。8月6日に社会保障制度改革 国民会議の報告書が出ました。今日の報告を準備される際にそれを内容とし て入れ込むことができたかどうかわかりませんが,あの報告書を読んでいて,

私が考えたのは,さきほど宮地先生がおっしゃった水島先生の本に,三層保 障の話があって,公的保障,企業保障,個人保障でしたか,われわれが勉強 していた頃は,官民の官というか公的な保障というのがまずあって,その補 完が民間の役割だと理解してきた気がするのです。

ただ,あの報告書を見ますと,手元に原文がないので正確さを欠くのです が,基礎は自助なのだと,公助はそれを補完するものだという,今まで考え てきたこととは逆なことが書いてあるのです。例えば, 公的な医療保険と

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いうのは自助の共同化である と,こう書いてあるのです。つまり,本来自 己責任ということが基本にあって,公的な医療保険というのもあるのだけれ ども,それは自助を共同化することによって,平均保険料主義でもって保険 料を集めてやっているという説明です。そのあたり,われわれは考え直さな ければいけないのかなという,なにか今日の皆さんの各論的なお話に対して 総論的な質問なのですけれども,そんなことを今悩んでいて,そういう役割 分担論を書くときには,あの報告書のこの部分を引用して,何か自分で言及 しなければいけないのかなと思っています。

この点,スピーカーの皆様で何かお考えがあれば教えていただきたいし,

まだ無ければ,論文を書かれるときに少しでも言及していただいて,その後 共有できたらよいと思っております。

【司会】ありがとうございました。それでは,小坂先生,お願いいたします。

【小坂】どうもありがとうございます。国民会議の報告書自体ではないので すが,それを受けて政府が定めたプログラム法案については,それぞれの論 点に,細かい所ですけれども,引用しております。私自身,日本の社会保障 の歴史には詳しくないのですが,ヨーロッパの社会保障における,自助,共 助,公助の関係は,自助が最初にきて,それから企業も含めた共同体におけ る共助というものがある。そしてそれをさらに超えたものとして公助,社会 保障制度というものが存在すると認識しています。石坂先生のご発表にもあ ったように,規制のない医療保険の市場は,逆選択で市場自体が成立しない か,リスクセレクションで弱者が排除されてしまう。そこを是正するために,

社会保険や税方式による政府の介入が正当化されるということなのだと思い ますが,今後は,自助をもう少し厚くしていかないと,公助だけでは維持で きないところまで来ているというメッセージなのかなと個人的には思ってい ます。

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【石坂】ありがとうございます。私はこの研究といいますか勉強を始める前 は,完全に官があって,そして民があるというようなイメージで勉強,研究 を行っていたのですが,今日ご紹介したモデルは,特に,官があって民とい うようなタイプのものではなくて,どこで線引きをしたら望ましいかという のも発展的には得られるようなモデルになっております。短期間でそれが求 められるかというと難しいところですが,自助から公助へと,そのような流 れも含めて少し考えたいと思います。

【石田】ご質問どうもありがとうございます。

私の考え方は小坂さんの考え方と全く同じでございまして,やはり社会に おいて自助が基本であると思っております。社会保険にしても,日本の場合 は税方式ではなくて社会保険方式を採っている。社会保険方式というのは,

多くの国で,労使折半で保険料負担をしておりまして,自ら保険料を出すと いうことです。これもある意味の自助です。将来に備える,備えさせるとい うパターナリズムという考えの基にそういうことを行わせる。これは,私は 一種の自助であると思っています。そしてこの自助をさせることによって,

一つは,将来,老後になったらこういうことが困るのだよ,病気になったと きこういうことが困るのだよということを認識させる,いわゆる認識効果の 働くことが社会保険の自己負担のいいところだと思っております。そういう 意味で,社会保険自体もともと自助で成り立っている。その自助を連帯化し た,広域化したものであると考えております。

ただ,例えば日本の場合,本来であれば医療にしろ,社会保険にしろ,

元々戦後は働く人たち,労働者が対象だったわけです。労働者を対象にやっ ていたものを,その家族や自営業者にだんだん広げていった経緯があります。

こうした拡張の歴史がありますが,私自身は,その職域の中で留めておくべ きだったと思っているのです。社会保険のもう一つのいいところは,職域ご とに分けることによって,例えば老後の定年退職の年齢であるとか,疾病構 造であるとかは,似通っているわけです。そうすると,社会保険でその職域

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ごとに分けていることの意味は,同じような定年退職の年齢であったり,同 じような疾病構造を持っていたりする人たちに各職場で職域で予防医療を行 う。そのことによって最終的に医療費の管理を行う,ないしは健康の増進を 行うことになってくると思います。まず自助があって,その後,今度は職域 ごとの助け合いがあって,それを最終的に広くしたものが社会保険になって いる,社会保障になっているということです。日本の場合も最初は社会保険 で働く人たちを中心にしていたものが,だんだん対象や給付の内容が広がっ ていったということになります。日本の社会保障も,元々は自助や職場での 助け合いが基本だったと考えています。

【宮地】江澤先生,ありがとうございます。ご指摘いただいた視点を,論文 作成の際に,ぜひ入れていきたいと思います。

本日の報告では,国民の意識・価値観が制度に与える影響について主に検 討してまいりましたが,先生のコメント・ご質問を伺うことで,制度・環境 が国民の意識・価値観に与える影響についても,同様に考えていく必要があ ることを再認識いたしました。ありがとうございました。

【司会】江澤先生,ありがとうございました。それではちょうどお時間にな りました。まだご質問のある方もいらっしゃるかもしれませんが,ここまで にさせていただきたいと思います。報告者から,そしてフロアの皆様からも,

大変有意義なご意見やご教授をいただきました。これら議論を参考に,本テ ーマについては,今後とも議論を続けていく必要があると存じます。皆さん,

どうもありがとうございました。

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