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他人のためにする保険契約は,本当に 第三者のためにする契約か?

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(1)

他人のためにする保険契約は,本当に 第三者のためにする契約か?

⎜⎜ ドイツVVG改正を契機として ⎜⎜

今 井 薫

■アブストラクト

新保険法では, 第三者のためにする損害保険契約 とされるいわゆる 他人のためにする保険 だが,この考え方は旧VVGの条文配置に淵源を 有するものと思われる。しかし,新VVGでは,従来損害保険に固有であっ Fremdversicherungの規定が保険総則におかれることとなったため,生 命保険では用語法の異なる2つの 他人のためにする保険 に関する規律が 併存する。イタリアでは2002年の破毀院連合部判決でFremdversicherung 型の 他人のためにする保険 は生命保険においては事務管理とされ,保険 金請求権の指定変更権も被保険者自身に帰属するという判決を見ることがで きるが,新VVGにおいては,従来の見解が抑制的に維持された。しかし,

これはドイツのFremdversicherungは,被保険者に対する保険契約者の諸 権利を43条以下で維持しているからであって,原初形態のそれが当然に 第 三者のためにする契約 の性質を有するものではない。

■キーワード

Versicherung fur fremde Rechnung, Versicherung zugunsten Dritter, 他人のためにする保険契約

*平成22年6月19日の日本保険学会関西部会報告による。

/平成23年3月18日原稿受領。

(2)

1. はじめに

筆者は,すでにイタリア保険契約法において,従来わが国で 他人のため にする保険契約 とされてきたものが,実は異なる2つの性質をもつ契約類 型ではないかということを指摘した 。すなわちイタリア民法典では,第4 部 債務 第3編 契約各論 第20章が 保険 に関する条項 となってい るが,わが国でいう 他人のためにする保険 とされる条文は,保険総則規 定に該当する1891条と,生命保険のそれに該当する1920条に置かれている。

ところで,わが国の 他人のためにする保険 は,改正前商法では損害保険 に関する647条および652条と,生命保険に関する675条に規定されていた。

しかし,彼我の 他人のためにする保険契約 は,2つの点で大きく異なっ ている。すなわち,① 用語法の差異 と,② 条文排列の差異 とである。

すなわち,①ではイタリア民法典1891条が per conto altrui,1920条が a favore di un terzo という具合で,そもそも用語が異なっていた。② の条文排列についても, per conto 型契約は保険総則に置かれている規 定である以上,損害保険に固有の規定ではなく,あわせて生命保険にも適用 されねばならないのである。一方の a favore 型契約は生命保険に固有 の規定であって,イタリアでは生命保険には,2つの 他人のためにする保 険契約 の規律を適用せねばならないことになる。

とはいえ,わが国では大森忠夫博士 ,西島梅治博士 そして山下友信教

1) 拙稿 保険契約における企業節の法理−イタリア保険学説の研究− (千倉 書房,2005年)217頁以下,同 イタリア法におけるper conto契約の法的性 質 損害保険研究71巻4号(2010年)33頁以下。

2) 5 款 か ら な る。第 1 款 総 則 (1882−1903条),第 2 款 損 害 保 険 (1904−1918条),第 3 款 生 命 保 険 (1919−1927条),第 4 款 再 保 険 (1928−1931条),第5款 終末規定 (1932条)である。これとは別に,民法 典第5部 労務 編には,第6編 組合企業と再保険 第2章に 再保険

(2546−2548条)の条項が設けられている。

3) 大森忠夫 保険法(補訂版) (有斐閣,1985年)100頁。

4) 西島梅治 保険法[第3版] (悠々社,1998年)26,27頁。

(3)

授 などの保険法の大家の見解は,損害保険契約も生命保険契約も,一貫し て民法の 第三者のためにする契約 であるとする立場をとられてきた。ま た,新保険法立法でも,損害保険に関する8条,生命保険に関する42条,そ して傷害疾病定額保険に関する71条でも,いずれも条文の構成にほとんど違 いがない 。

2. 旧ドイツ保険契約法

わが国において,いわゆる 他人のためにする保険 が,すべて民法の 第三者のためにする契約 であると解される理由は,推測するにドイツ保 険契約法の影響が大きいと思われる。1908年制定のドイツ保険契約法(旧 VVG)は, Versicherung fur fremde Rechnung とされる per conto 型規定 は,損害保険に固有のものとして規定されてきた。したがって,

生命保険および疾病保険 には適用されなかった(傷害保険はこの限りで ない) 。その一方,これらに適用されるべき 他人のためにする保険契約 については,イタリアの a favore 契約に該当すべきものが 保険金受 給権 (Bezugsberechtigung)というタイトルの下に旧VVG166条以下に規 定されていた。残念ながら,そこでは明確に民法典(BGB)の 第三者の ためにする契約 とリンクする定義規定に相当するものが欠けている 。し

5) 山下友信 保険法 (有斐閣,2005年)262頁。

6) 保険法8条で 被保険者 とされているところが,同42条,71条では 保険 金受取人 となっているだけである。もちろん保険金受取人の変更など固有の 問題がある生命保険や傷害疾病定額保険には,別途規定があることはもとより である。

7) いずれも翻訳すれば 他人の計算による保険 である。

8) もっとも,傷害保険に関する旧VVG179条2項は, 他人に生じる傷害に対 する保険は,疑わしいときは,他人の計算で引き受けられた(fur Rechnung des andern genommen)ものと看做す。この場合75条から79条までの規定が, 

準用される としており,準用される規定も損害保険固有の規定の適用である ことが明定されることに留意されたい。もっとも生命保険型の他人のためにす る契約がないわけではない。旧VVG180条参照。

9) 旧VVG166条1項では, 一時払保険の場合,疑わしいときは,保険者の同

(4)

かしながら,たとえば, 保険金受給権 についてのHofmann弁護士の解 説でも これは,第三者のためにする契約(Vertrag zugunsten eines Drit- ter)の特殊保険法的な形態でドイツ民法典(BGB)328条 以下を部分的 に変更している とされている 。 Bezugsberechtigung という表現その ものをもって一個の人保険に固有の 第三者のためにする保険 の規律であ ると考えていたのである。

他方,旧VVGVersicherung fur fremde Rechnungについては, 第 三者の計算による(利益における im  Interesse)契約の問題である と説 明されている 。つま り こ こ で は,Versicherung fur fremde Rechnung もまた 第三者のためにする契約 であるが,第三者の利益における損害保 険に固有の規定 であって,その意味で166条以下との抵触を生じていない。

しかし,Hofmannによれば,fur fremde Rechnung(他 人 の 計 算 に よ る)型の人保険への適用例として,実質的な契約者が多数にわたる団体保険

(Gruppenversicherung)をあげている。この基本契約(Rahmenvertrag)

とよばれる契約構造においては保険契約者の地位は,あくまでも形式的なも のだという 。ここでは,形式的契約者(雇用者など)がもっぱら自己の名

意なしに第三者を保険金受給権者(Bezugsberechtigte)として指定し,また 指定された第三者に代えて他の者を充てる権限が保険契約者に留保されている ものと看做す とされる。

10) BGB328条は,第三者のためにする契約の定義規定で,第三者が直接給付を

請求しうる権利を取得するとするわが国民法537条に相当する規定である。

11) Edgar Hofmann,Privatversicherungsrecht,3. Aufl., M unchen1991, S.

45.

12) Hofmann・前掲注11)S.44.

13) 旧VVG168条が定める,保険金受給権者(保険金受取人)が保険金を受領 拒絶した場合,保険契約者による受領権を定める規定は,したがってここには 適用がない。

14) Hofmann・前掲注11)S.43.。Hofmannはまた, 例外的に,雇用者により 生命保険の形で任意に処分される他人の企業老齢保障の場合があり得る。この 場合,保険契約者は,被用者(旧VVG159条2項にいう被保険者)の書面の 同意で契約を締結し,この者をさらに保険金受給権者となし(これはいわゆる

(5)

義で,多数の実質的契約者たる人の集団(形式的には 被保険者 として登 場する従業員など)の計算で締結される保険契約のケースを, 他人の計算 による保険 の制度によることを認めてきた。これは,ローマ大学のVolpe

Putzolu教授の企業団体保険に対する考え方とまさしく整合する 。と

はいえ,旧VVGでは, 他人の計算による保険 に関する74条の規定は,

傷害保険の場合(旧VVG179条2項)を除けば,損害保険に固有の規定で あった。したがって,Hofmannも,かかる団体保険については, 人保険 においても,いまや定額保険としても損害保険としても,契約締結すること は差し支えない ということで,これを損害保険に位置づけざるをえなかっ た 。

なお,旧VVG下における傷害保険に fur fremde Rechnung の文言 が用いられることについて,Hofmannは,他人を被保険者とする傷害保険 では,保険事故を生じると 保険契約に基づく請求権は被保険者としてこの 第三者自身にも帰属する。したがって,第三者の計算による保険が問題とな る と述べている。一方,保険契約者自身の計算による(fur eigene Rech- nung des VN)第三者(被保険者)の傷害保険が引き受けられるべき場合 は,当該契約は他人の傷害の保険として被保険者同意が問題となるとされ

直接保険),あるいは被用者に付与される年金受給権のための契約を自ら付保 する(間接保険Ruckdeckungsversicherung),雇用者である とも述べてい る。Hofmann・前掲注11)S.254.。間接保険では,保険に基づく(第一次的)

給付は雇用者に帰属する。この場合,期間満了前の保険事故だけが保険保護さ れるべき場合,十分な退職年金引当金が充足される以前は,死亡および高度障 害事故のための定期保険がその保障を充足する,としている。

15) 拙 稿(2010)・ 前 掲 注1)77‑79頁。Antigono Donati e Giovanna Volpe Putzolu,Manuale di diritto delle assicurazioni,  9ediz., M ilano 2009,

pagg.194,195.

16) 後述するが,これは決して特殊な 他人の生命の保険 ではなく,他人の計 算による( fur fremde Rechnung 型の)死亡生命保険と解すべきもので,

むしろ損害保険型の 他人のためにする生命保険 と見るべきものであった。

なお,山野嘉朗 団体定期保険契約の効力・効果 判タ933号44,45頁。

17) Hofmann・前掲注11)SS.43,44.。

(6)

る 。ここで, fur fremde Rechnung の保険が意味するものについて,

Hofmannは,保険者に対する関係について,保険契約者と被保険者に認め られる法的地位(外部関係)と,保険契約者と被保険者間の内部関係とを峻 別する。外部関係は,保険契約上の請求権の帰属は被保険者ではある(旧

VVG75条1項本文,新VVG44条1項本文)が,その一方で,内部関係的に

は契約の処分権はなお保険契約者に留保されている(旧VVG76条1項,新 VVG45条1項)というものである。この保険契約上の内部関係が存在しな いとすれば,任意法に基づいて生じる法律関係,すなわち信託関係(Treu- handverhaltniss)だけが存在し続けることになるという 。

3. ドイツ保険契約法の改正

2008年1月1日,ドイツ保険契約法の100年ぶりの大改正により 他人の ためにする保険契約 の条文排列は大きく変わった。すなわち,従来はおお むね損害保険にのみ適用されてきた fur fremde Rechnung に関する諸 規定が,新VVGでは,第1編 総則 編第1章の第3節として43条から48 条に置かれることとなり 他人の計算による 型の契約類型が人保険領域に 適用されることとなった 。したがって,Bezugsberechtigungを保険金受 取人指定についての特別規定に過ぎず, 他人のためにする保険 の性質を 論じるものでないとでも解さない限り ,生命保険には,明らかに2つの種

18) Hofmann・前掲注11)S.258.。

19) Hofmann・前掲注11)S.156.。

20) この場合は,保険契約者自身の傷害について他人が保険金受給する生保型規

定で,旧VVG180条に該当する。旧179条2項については,ほぼ同一の規定が

VVG179条1項2文に規定されている。

21) イタリア民法典の1920条のように, 第三者のためにする生命保険 という ような規定の仕方をしているわけではないので,法的性質は 第三者のために する契約 である43条が規定し,保険金受取人に関するものを159条および185 条以下にそれぞれ規定していると解することもできる。しかし,それでは旧 VVG時代との連続性は失われたとの批判を受けることになろう。本稿2‑3頁の 本文および前掲注6)を参照。

(7)

類の 他人のためにする保険契約 ,すなわち旧VVG166条以下の人保険に 適用されてきた他人の保険金受領を容認する, 他人のためにする 型の契 約類型と,従来はもっぱら損害保険に固有の規定とされてきた旧VVG74条 以下の, 他人の計算による 型の契約類型とが重畳的に適用を見ることに なった。そして,さらにいえば,かつてHofmannが従業員団体保険をめぐ って苦慮したように, 他人の計算による 型契約を,あえて人損害保険で あると技巧的に解する必要もまた,なくなった 。

4. fur fremde Rechnung 型契約とは何か

⑴ はじめに

さて,従来生命保険など人保険に一般的であった 他人のためにする 契 約の基本形は,ドイツ民法典328条以下にも規定されているものであること に留意しなければならない。

まず旧VVG166条1項は,保険契約者には保険金受取人を指定し,また

これを変更する権限があること,保険金受取人の権利は保険事故発生時に生 じること,を定めている。一方BGB328条1項は,かかる 契約により第三 者への給付 をなし得ると定めるとともに,その内容については2項におい て,とくに契約の目的により決定されるとしている 。旧VVG166条は,

22) Hofmannは,このために,あえて 人保険では,いまや定額保険としても,

あるいは損害保険としても契約締結することが可能なので,グループ(団体)

保険や集合保険の場合には,多数の保険契約者が生じる と述べて,形式的な 保険契約者を企業,実質的な被保険者兼保険契約者を従業員とするイタリア法 よりもはるかに技巧的な構成をとる。Hofmann・前掲注11)S.43.。

23) Hans Brox u. W olf-Dietrich W alker,Allgemeines Schuldrecht, 31. Aufl. Munchen2006, S.376.なお,ここでの規定の仕方が包括的であるのは,

ド イ ツ で は,真 性 第 三 者 の た め に す る 契 約(Echter Vertrag zu Gunsten Dritter)とは別に,不真性第三者のためにする契約が想定されており,ここ 

では,諾約者は第三者への給付の義務を負うものの,第三者自身は直接に諾約 者に対して給付を請求する権利をもたないものである。拙稿 (2005)・前掲注 1)228,229頁参照。

(8)

まさにこれを受けるかたちで,第三者たる保険金受取人の権利が保険者に対 する直接の権利であること,保険事故発生時に当該権利が生じること,保険 金受取人を指定し変更する権利は,保険契約者に留保されることが宣言され る。しかも, 他人のためにする生命保険契約 に応えるように,BGB331 条でも 死亡事故後の給付 の規定を設け,給付が要約者の死亡後に生じる 場合には,第三者の給付請求権は,要約者の死亡を条件として生じるものと されている 。なお,旧VVG168条では,すでに前掲注13)でも触れたよう に,保険金受取人が権利を放棄した場合,当該権利は保険契約者に帰属する 旨を定めているが,BGB333条にも類似の規定がある。もっとも,そこでは,

放棄された権利自体の帰属については言及がない。しかし,第三者により取 得される権利は,要約者と諾約者の補償関係により第三者に帰属することと されたのであり,当該権利設定に第三者の関与はない。そこで,第三者に対 して法律がこれを放棄し得ることを明定したものであるとされる 。むろん,

BGB333条は,第三者たる保険金受取人が当該権利から離脱し得ることのみ を定める規定であるため,その結 果 と し て の 請 求 権 の 帰 属 に つ い て は BGB335条に委ねることとなった 。旧VVG168条は保険契約の下では,要 約者である保険契約者に帰属することをあらためて明確に示したのも,まさ に同じ構成をとったものと見ることができる。もっとも,契約そのものは有 効に存続するのであれば,解釈によりあらためて要約者がその処分をなし得 るという結論を導くことは困難ではない 。

24) Brox/Walker・前掲注23)S.378,379.。

25) Brox/Walker・前掲注23)S.380; Dieter M edicus,SchuldrechtⅠ(All- gemeiner Teil),12Aufl., Munchen2000, S.373.

26) Medicus・前掲注25)S.375.によれば, 335条により,少なくとも疑わしい ときは,第三者への給付債権は,要約者にも帰属すべきである としている。

なお,Brox/Walker・前掲注23)S.379.も同旨。

27) イタリア民法典1411条4項にも,BGB335条とまったく同一の規定がある。

(9)

他人の計算による 契約

フランクフルト大学のManfred Wandt教授による2009年の全訂第4版 保険法 で,教授は, 旧VVGにおいて損害保険に関する章の中で規定 されていた他人の計算による(fur fremde Rechnung)保険は,新たに編 纂されたVVGでは総則編(VVG43条から48条)に規定されている。この 新しい体系は,他人の計算による保険が,−疾病,生命および傷害保険の場 合の特別規定を条件として−損害保険におけるのと同様に定額保険にも妥当 するという事情を考慮している と述べて,従来は損害保険のみを対象とし てきた 他人の計算による保険 が,法改正を契機に人保険一般にも適用さ れることを明らかにした。ところで,一応新法に対応したものになっている Schwintowskiらの2008年の注釈書の新保険法43条に関する記述では,物保 険(Sachversicherungen)について触れるのみで,いまだ人保険について の単元が準備されていない 。また,損害保険では 被保険利益 が問題と なるが,Wandt教授も 保険契約者が自分自身の利益を付保したか疑わし いときは,2つ目の可能性として,他人の利益がこの者のために付保される ことを考慮する (下線筆者)ものとする 。

これによって人保険の基本型である zugunsten Dritter 型契約が,

fur fremde Rechnung 型契約の人険分野への登場による反対解釈から,

明らかに要約者(Versprechensempfanger)である保険契約者自身に帰属 すべき利益の第三者への処分の問題であると考えられることになる。そして,

当該利益について,諾約者(Versprechender)である保険者との合意(補

28) M anfred Wandt,Versicherungsrecht,4., vollig neu bearbeitete und erweiterte Aufg., Koln2009, S.238. 

29) けだし,定義規定の条文である本条について, A. 規範の目的 , B. 規 範の内容 および, C. 物保険 についてしか解説がない。Cについても,

自 己 の 物 の 保 険 と , 他 人 の 物 の 保 険 に 言 及 す る の み で あ る 。H a n s  P.

Schwintowski/Christph Brommelmeyer(Hrsg.), Praxiskommentar zum Versicherungsvertragsrecht,Munster 2008, S.332(Michael Hubsch稿).

30) Wandt・前掲注28)S.239.。

(10)

償関係)にもとづいて,第三者である保険金受取人(Bezugsberechtigte による権利行使を許す契約とされる 。けだし,BGB333条は, 第三者が 契約に基づいて取得した権利を諾約者に対して拒絶するときは,この権利は 取得されなかったものと看做す と規定しているからである。ここでいう,

権利が取得されなかった とは,当事者間の契約において受益者を指定す る意思表示がなかったこと,すなわち一般の契約類型と同様に当初からの二 面契約となることを意味する。なお,第三者が受益を拒絶する旨の意思表示 は,一方的な相手を要する意思表示であるとされ,当該意思が表示された場 合は,その結果として要約者自身がこの権利を行使する者とされる 。新 VVG160条3項でも,旧法と同様に,明文で 保険者に対する給付請求権が,

受取人指定された第三者によって取得されなかったときは,その権利は保険 契約者に帰属する と規定された 。

これに対して,2つ目の 他人の利益がこの者のために付保されている 契約では,第三者が受益を拒絶したとしても,保険契約者は当然に第三者の 権利を行使できる者とはならない。そもそも,他人の利益が保険の目的であ る以上,保険契約者は保険給付を受けうる者とはなりえない。被保険者が保 険契約者に権利行使を委託すれば,保険契約者自身が保険者に対して権利を 行使することは可能ではある 。とはいえ,この場合であっても本来の権利

31) Brox/Walker・前掲注23)S.378,379.。

32) Brox/Walker・前掲注23)S.379,380; Heinrich Dorner/Ina Ebert/Jorn Eckert/Thomas Hoeren/Rainer Kemper  /Reiner Schulze/Ansgar Staudin-

ger, Burgerliches Gesetzbuch, Baden-Baden2001, S.384.

33) 旧VVG168条にもほぼ同じ規定があった。ただし,旧法では, 他人のため にする生命保険 の一般規定である166条も,その解釈を規定する167条および 受益者の履行拒絶を定める168条も,すべて 一時払保険(Kapitalversiche- rung)の場合 に限定的に用いられている。しかし,新法159条以下のそれに はこのような限定はなくなっている。

34) 規定の方式が原則主義的なイタリアの場合は,まさにそうであった。保険契 約一般に適用されるper conto型契約を規定する民法典1891条2項は, 契約 から生じる権利は被保険者に帰属する。保険契約者は,保険証券を保有すると きといえども被保険者の明示の同意なしにその権利を行使することはできな

(11)

者である被保険者が保険給付の受領を保険契約者に委嘱したに過ぎず,被保 険者自身が受益を拒絶したことにはならない。

ところで,この形式の人保険を,旧VVGは知らなかったわけではないこ とはすでに述べた。旧VVG179条の傷害保険の定義規定において,その2 項で, 他人に生じる傷害に対する保険は,疑わしいときは,他人の計算に より(fur Rechnung des anderen)引き受けられたものと看做す とされ,

この場合はとくに旧VVGの75条から79条までの規定が準用されることとさ れていた。75条から79条とは,旧VVGの損害保険に関する規定として設け られていた fur fremde Rechnung 型契約の規定のことである。これは まさに,わが国の新保険法67条1項ただし書に相当する契約ということにな るはずである 。この分野が拡張されて,ドイツの新VVGでは,単に傷害 保険にとどまることなく,人保険一般にも拡張されたのである。

5. fur fremde Rechnung 型契約を zugunsten Dritter 型契約 と同一視させるものは何か?

⑴ はじめに

すでにイタリア法の研究においてみたように,両者の識別がこのように可 能であればこそ,イタリアでは,これを容易に別次元の存在として意識させ ることになった。そもそもイタリアにおけるper conto契約は損害保険に 固有の規定ではなかった。それは,a favore型契約とは異なり,あらゆる

い と定めている。

35) とはいえ,わが国には fur fremde Rechnung 型契約をべつに考える学 説がないため,これも 他人の傷害の保険 の一類型ということになってしま う。たとえば,山下友信・米山高生 (編) 保険法解説(生命保険・傷害疾病 定額保 険) (有 斐 閣,2010年)203〜206頁(山 本 哲 生・筆)参 照。な お,新 VVG150条2項1文但書で,企業老齢保障制度に基づく企業団体保険には,他 人の生命が保険の目的ではあるが被保険者の同意を要しない旨の規定が導入さ れている。保険給付が団体構成員(およびその指図人)にのみ与えられる fur fremde Rechnung 型契約を前提とする契約だからである。Wandt・前 掲注28)S.14.。

(12)

保険種目にも適用可能な,ある意味信託的な事務管理を想定した契約類型と 考 え ら れ た。そ し て,破 毀 院2002年 4 月18日 連 合 部 判 決 に お い て,per conto型契約は,本来要約者に帰属する権利の第三者への処分を規定する  a favore型契約ではないことが,あらためて確認されてもいる 。 

それでは,ドイツでも新VVGの制定により,これと同じように考え得る であろうか。しかし,これは困難な問題であるように思われる。たとえば,

前述のWandt教授の著書においても, fur fremde Rechnung 型契約の 法律効果を論じるにあたって,BGBの328条の規定によるべきものとしてい る 。これは,前述したように 第三者のためにする契約 の規定である。

こ の こ と に つ い て,Wandtは, 全 般 的 に 契 約 に 影 響 を 及 ぼ す 形 成 権

(Gestaltungsrecht),すなわちVVG8条(保険契約者の撤回権)による撤 回権あるいは解約権(Kundigungsrecht)も,もっぱら保険契約者に帰属す る からだと述べている 。なるほど, 他人のためにする生命保険 では,

保険金受取人の指定変更権や契約そのものの解除権などの形成権は,たしか に保険契約者固有の権利である 。生命保険に関するイタリア民法典1920条 でも,保険金受取人の指定は保険契約者のものである 。しかし,イタリア における直近の体系書の著者であるSimone Forniが,契約締結の利益がこ の種の第三者のためにする契約にあっては,保険契約者にあることは否めな

36) 拙稿(2010)・前掲注1)37頁以下。すなわち,前者は事務管理とする。

37) Wandt・前掲注28)SS.239,230.。

38) Wandt・前掲注28)S.230.。

39) 新VVG159条1項 保険契約者は,疑義があるときは,保険者の同意なし に第三者を保険金受取人に指定することができ,またこのように指定された第 三者に代えて他の者を指定することができる 。この規定について,Wandtは,

保険契約者=保険者関係は,保険者が保険金受取人の債権に対する抗弁を援 用しうる限りにおいてのみ問題である と述べている。Wandt・前掲注28)S.

424.。

40) Antonio La Torre(a cura di),Le assicurazioni,M ilano 2000, pag.

311.

(13)

いとしているように ,保険契約上の処分権が被保険者にあると解される 他人の計算による保険 とは別に考える余地はあったのである。

⑵ ドイツ法における保険契約者の処分権限

さて,すでに見たように,従来ドイツでも,もっぱら損害保険に用いられ てきた fur fremde Rechnung と,生命保険の条文上の規定として現れ Bezugsberechtigung とは,明らかに区別されている。すなわち,後

者はBGB328条以下で定める 第三者のためにする契約 の特殊保険法的規

定であった。そのため,他人の傷害保険について,その傷害を被った者だけ が保険者に対して権利を取得する契約(保険契約者自身も受取人の変更権限 は有しない)については,それまで損害保険に固有の規定であった fur fremde Rechnung 型 契 約 の 規 定 が 適 用 さ れ る も の と さ れ て き た(旧 

VVG179条2項)。この場合,保険契約者は,契約上の権利を被保険者に与 えるのみで,契約解除権等の処分権はともかく,保険者に対する保険給付請 求権の指図をなしえなかった。

それでも,ドイツでは fur fremde Rechnung 型契約について, 他人 の計算による保険は,BGB328条の意味における(真性)第三者のためにす る契約の法律で規定される特殊なケースである とする判決も多いようであ る 。いままでは,たしかに 他人の計算による保険やそれに基づく被保険 者は,損害保険や傷害保険に見出される のみであるから,それを 法律 に基づく例外と考える ことができないわけではなかった。しかし,いまや

41) Simone Forni,Assicurazione impresa-Manuale professionale di diritto delle assicurazioni private-,Milano2009,  pag.277.も っ と も,Forniは,

per conto契約について,表現の問題とも解されるが,一応 第三者のために する契約 から説明する点でLa Torre裁判官やVolpe-Putzolu教授などの イタリア通説とは異なる。

42) Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)S.323.Zeitschrift fur Versiche- rungsrecht,1988, S.362,363.など多数に上る。

43) Hofmann・前掲注11)S.44.。

(14)

それはあらゆる保険種目に適用可能な類型であって,従来のように一方を 第三者のためにする契約 の損害保険的な特殊系とは言い得なくなった。

それにもかかわらず,なお,ドイツ学説が第三者のためにする契約と主張 し て や ま な い の は, 保 険 給 付 請 求 権 に 関 す る 保 険 契 約 者 の 処 分 権 限

(VVG45条1項)と,47条により条件づけられたより強い被保険者の補償関 係(Deckungsverhaltnis)への取り込みに基づく特殊性が,例外のない分 類を正しいものとしている からであるといわれている 。 fur fremde Rechnung 型契約の冒頭規定である新  VVG43条は,当該契約の概念規定

である。そこでは,まず第1項で 自己の名で他人のために(im  eigenen Namen fur einen anderen) 契約が締結し得ることを明定しているが,す 

でに言及するようにBGBの 第三者のためにする契約 冒頭の定義規定で ある328条は,契約により第三者への給付は可能である旨を定めており,同 様に第2項では,権利取得の態様は契約の目的によるとされているのである から,その意味するところはきわめて広範で,たしかにVVG43条がBGB の定める 第三者のためにする契約 に包含されるものとすることも可能で ある 。もちろん,VVG44条1項により,被保険者(給付請求権者)は本 質的に保険者に対する権利(保険金受取人の変更権も含まれよう)を有する。

またWandt教授は,保険契約者または被保険者の破産を生じた際も,かか

る点が重要になるという。けだし,当該請求権はつねに被保険者の破産財団 に帰属し,他方,被保険者は保険契約者の破産による影響を受けないはずだ からである 。

44) Schwintowski/Brummelmeyer・前掲注29)S.323.。

45) もっとも,諾約者は第三者に給付をするが第三者自身は諾約者に給付を請求 する権利を有しない 不真性第三者のためにする契約 は,BGB328条以下に は該当しないといわれる。Brox/Walker・前掲注22)S.376.。

46) Wandt・前掲注28)S.240.。Wandtによれば,保険契約者が被保険者に代わ って保険給付を受領したのちに破産した場合,被保険者は取戻権を行使しうる という。

(15)

しかし,問題の新VVG45条1項 であるが,そこでは,契約当事者たる 保険契約者は,上述のように最終的には被保険者に属すべき保険契約上の権 利について,自己の名による処分は可能であるとしている 。被保険者が,

保険契約者の同意なく権利を処分したり裁判上権利を行使したりできるのは,

あくまでも被保険者が保険証券を占有している場合に限られるが,他方保険 証券の送付を請求できるのは契約当事者である保険契約者である(VVG44 条1項,2項)。それゆえ,保険証券の交付を受けた保険契約者は,その証 券を被保険者に引渡すまでの間は,その処分権限に基づいて,損害てん補の 根拠および額に関する拘束力ある意思表示を発したり受領したりすることが でき,また一定の支払態様を合意することもできることになる 。もっとも,

この強力な規定は保険者の責任軽減が含意されているからに他ならない。

Wandtも述べているように,約款や条文なしにこのような権限が保険契約 者に認められるわけではないことに留意しなければならない 。

47) 保険契約者は,被保険者に属する保険契約に基づく権利を,自己の名をも って処分(im  eigenen Namen verfugen)することができる と規定されて いる。なお,新井修司・金岡京子(共訳) ドイツ保険契約法(2008年1月1 日施行) (㈳日本損害保険協会・㈳生命保険協会,2008年)215頁。

48) 新VVG44条1項1文では, 他人の計算による保険では,保険契約に基づ く権利は被保険者に属する としているが,第2文では, ただし,保険証券 の引渡(Übermittlung des Versicherungsscheins)は,保険契約者のみが請 求することができる と定めている。旧VVG75条1項は 保険証券の交付

(Aushandigung) としていた。新VVGの第2文の趣旨は,注釈書が 被保 険者が占有離脱した保険証券を保有するとき,および保険者の被保険者への保 険証券交付(Aushandigung)意思の欠缺が明らかでないときは,保険証券の 免責的効果は存続する と解しているところからみると,その意図するところ は変わらないと思われる。Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)S.348.。

49) Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)S.352.。

50) Wandt・前掲注28)S.240.。もちろん,通常の保険証券は,あくまでも保険 契約が締結されたという保険契約者の意思表示の証拠に過ぎない。真性の有価 証券とされるのは,指図式で振出される運送保険証券のみであるという。

Wandt・前掲注28)SS.161,162, Hofmann・前掲注11)S.74.。

(16)

⑶ 被保険者の認識と行為

つぎに,新VVG47条1項の規定の趣旨を検討する。47条1項によれば,

保険契約者の認識と行為(die Kenntnis und das Verhalten des Versi- cherungsnehmers)が法的意義を有する限りにおいて,他人の計算による保 険では,被保険者の認識や行為も考慮しなければならない と規定されてい る 。すなわち当該規定は,保険契約者に適用されるオプリーゲンハイトや 免責条項は,他人の計算による保険の場合,どの程度保険給付請求権者たる 被保険者を拘束するかを定めるものである 。これについて,注釈書の中で

Hubschは,認識を問題にする規定は,オプリーゲンハイトの問題であると

述べている。ここでいうオプリーゲンハイトの問題とは,たとえば告知義務 のように権利保全のため自己に対する責務であり,相手方はそもそもその履 行を請求し得ない性質のものである。それゆえ当該義務違反があっても,権 利者に権利毀損を生じるだけで,相手方になんらの権利も生じない。本来で あれば,かかるオプリーゲンハイトの履行は契約当事者である保険契約者に 求められるのではあるが,47条1項はこれを被保険者に拡張する。すなわち,

保険契約者がその対象となる限りにおいて,被保険者の有する認識や行為に も本規定が適用されるとする 。

免責条項とは,一定の条件における引受危険の制限のことで,これは,

特定のリスクを最初から保険保護の範疇から除外すること である。この 場合,普通保険約款の規定により,保険契約者の行為を保険保護に影響させ る場合,同様に本条規定は,その行為の対象を被保険者にまで拡張する 。 51) 旧VVG79条1項にも損害保険に固有ではあったが同種の規定がある。これ について,Hofmannは, 保険契約者の認識または行為に基づいて保険者に 被保険者に対する抗弁が生じるところでは,被保険者は保険契約者に等しい,

それゆえ被保険者の認識または行為は同様に考慮される としており,被保険 者の提供する保険料の受領義務を規定する旧VVG35a条(新VVG34条)の 規定の趣旨も同様に考えている。Hofmann・前掲注11)S.159.。

52) Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)S.358.。

53) Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)S.359.。

54) Wandt・前掲注28)S.198.。被保険者には妥当するが,保険金受取人には関

(17)

たとえば,VVG81条により,保険契約者が故意に保険事故を招致すれば保 険者は保険給付を免れ,また保険契約者の重大な過失により保険事故が生じ た場合は,保険給付は責任の重大性に応じて縮減されるが,他人の計算によ る保険の場合には,当該免責や保険保護の縮減は被保険者にまで拡張され,

この場合保険者は,被保険者についても主観的な免責条件を満たせば給付を 免れ,または給付を縮減することができる 。

ところで,第三者のためにする契約に関するBGB334条(第三者に対する 債務者の抗弁)の規定では, 契約に基づく抗弁は,第三者に対しても諾約 者に帰属する とされている。その趣旨は,債務関係に基づいて債権者に帰 属するであろう権利よりも多くの権利が損害を被った第三者に帰属してはな らないという趣旨であるという。条文上は類似するように見えて,その意味 するところは逆であることに留意すべきであろう 。

6. 展

以 上 で み た よ う に,ド イ ツ 保 険 契 約 法 に お け る fur fremde Rech- nung 型契約は,被保険者自身の権利は認めるものの民法の第三者のため にする契約の範疇にとどまっている。これは,すでに検討したイタリア民法 典の規定とは異なり,VVGにおいて,実際の権利者たる被保険者より手厚 く保険契約者の権限を優先する権利規定を置いていることの反映であるとい える。しかしながら, fur fremde Rechnung 型契約が完全にBGBで定 め,生命保険のVVG159条に該当する zugunsten Dritter 型契約の中に 包含され得るものでもないことは,他人の傷害の保険で,傷害を被った他人 を保険給付を受くべき者とする旧VVG179条2項におい て, fur Rech- nung des anderen と表記されることからも明らかである 。

係しない。

55) Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)S.362.。

56) Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)S.362,Brox/Walker・前 掲 注 23)SS.388,389.。

57) HGB383条1項の問屋に関する規定では,営業のためではあるが,また商品

(18)

それでは,他人の計算による傷害保険の場合はというと,旧179条2項に より当時は損害保険に規律されていた同様の規定である旧VVG79条1項の 準用により,被保険者の告知義務違反や事故招致は当然免責とされた。すな わち,他人の傷害保険では,被保険者自身が保険金受取人である場合も保険 契約者が保険金を受け取るべき場合も保険金を受けるべき者の告知義務違反 や事故招致は,損害保険同様保険者の免責事由になるのである。しかし,生 命 保 険 の 場 合 の 権 利 者 た る 保 険 金 受 取 人 は そ う で は な い。こ れ は,旧 VVG170条2項が, 死亡事故についての保険において,第三者が受取人に 指定された場合に,当該第三者が故意に違法な行為により保険が引受けられ ている者の死亡を惹起したときは,その受取人の指定はなされなかったもの と看做す とされてはいるが,だからといって保険者免責とされるわけでは ない 。この意味するところは,BGB334条が,要約者に対する抗弁権で諾 約者が第三者に対抗できるとするのは,あくまでも第三者の属性が被保険者 である場合に限られる。損害保険と異なり,受益者の属性が被保険者とは異 なる第三者が告知義務を負うとされたり,事故招致により保険者免責とされ る趣旨ではない。したがって,BGB334条も,本来の利益の帰属者たる要約 者に対する抗弁事由は契約そのものの効力に影響するから,その反射効とし て第三者に対抗できるという趣旨にとどまり,当然に第三者の義務違反が契 約当事者の補償関係に影響を及ぼすという構造を示すものではない。新保険 法47条1項はBGB334条にリンクした規定とはいえず,それは単に保険事故 の客体である被保険者の告知義務違反や行為違反について,保険者の免責を 定めた特殊保険契約法的規定と言わざるを得ない 。

や有価証券に限定されるのではあるが,その売買の損益を自らにではなく第三 者に帰属させる者(wer es gewerbsma ig ubernimmt,Waren oder Wert- papiere fur Rechnung eines anderen (des Kommittenten)in eigenem Namen zu kaufen oder zu verkaufen.  )がまさに問屋である。

58) 新VVG162条2項も同旨。これについて,Hofmannは,保険金受給権は,

被保険者の相続財産となるとしている。Hofmann・前掲注11)S.256.。

59) これは,すでに言及したように被保険者の保険料支払を保険者が拒絶できな

(19)

このように考えれば,新VVG44条1項が, fur fremde Rechnung 約について契約上の権利が被保険者に帰属すると定め,あるいは同45条3項 で被保険者の同意がある場合にのみ保険者は保険契約者に保険給付を行うも のと定めながら ,44条1項但書で保険証券の送付を請求できる者を保険契 約者に限定したり,同45条1項が契約の処分権を保険契約者としているのも,

いずれも第三者のためにする契約の属性というよりは,保険者の責任を軽減 するドイツ保険契約法固有の要請によるものと見ることができよう。

fur fremde Rechnung 型契約は,想定されるところ,明らかに企業団 体保険を射程として,生命保険領域に拡張された。この場合の保険金受取人 の指定・変更権限は, 保険契約に基づく権利は被保険者に属する とする 44条1項の解釈により,おそらくは保険契約者とは異なる被保険者自身に属 するであろう。しかし,特殊保険法的とはいえ,45条1項では契約に基づく 権利の処分権限を保険契約者に付与していることから,問題がないわけでは ない。けだし,Hubschによれば,当該処分権には実体法的には損害額の算 定や,損害てん補の根拠および額に関する拘束力ある意思表示を発したり受 領したりすることができるとし,訴訟法上も損害てん補請求権を法律上行使

いとする旧VVG35a(新VVG34条)と同様のもので,BGBにはそこまでの 規定は存在しない(BGB267条2項,268条)。ちなみに,同条では, 他人の 計算による保険の被保険者 といわゆる第三者のためにする保険の 保険金受 取人 に当該権利が認められるが,これはあくまでも権利保全のため保険契約 が認める権利である。Wandt・前掲注28)S.185.。

60) 権利が原始的に被保険者にあることを明定している。Wandtは,新VVG44 条1項についても 保険契約者の給付請求権が基本的に第三者に帰属する の だと述べてはいるが,おそらくこれは正しくない。であるとすれば,当該権利 を被保険者が放棄すれば権利は保険契約者に戻るはずであるが,被保険利益が 問題とならない生命保険ですら,もとよりそのようになるわけではないからで ある。Wandt・前掲注28)S.240.。ちなみに,損害保険にのみ適用された旧 VVG75条について,Hofmannが, 保険証券の交付は保険契約者のみ請求で きる。そのため,保険契約者に帰属する保険契約に基づく権利も,原則的には もっぱら保険契約者の同意による と述べているのとは,微妙に表現が異なっ ている。Hofmann・前掲注11)S.44.。

(20)

し,また44条2項により推定される積極的および消極的当事者適格を有する とされ,必ずしもイタリア法で考えられたような単純な保険契約者の契約解 除権に限られないからである 。

しかし,この規定が生命保険に転用されれば,こんどは生命保険規定によ り45条1項は制約を受けるものと思われる。まず,Prolss/Martinの著書か らも明らかなように,生命保険では,旧法時代においても保険契約者による 処分権の譲渡はできなかったし,保険金受取人の変更権についても被保険者 の同意が必要である。また定額保険である以上,損害額の決定に保険契約者 が関与することもできない。であるとすれば,生命保険に適用されることに なる 他人の計算による 保険の,保険契約者に認められた契約の処分権限 は,実体として従来の損害保険において理解されてきたところと比較すれば 大幅な制約を受けることは予想されるところである。もしそうであるとすれ ば,旧VVG74条以下,あるいは新VVG43条以下に規定された fur frem-

de Rechnung 型契約を,従来通り第三者のためにする契約の範疇で考え

る必要性もいくばくかは減殺されるのではなかろうか。今後の議論の成果に 期待したい。

(筆者は京都産業大学法務研究科教授)

61) Schwintowski/Brommelmeyer・前掲注29)SS.352‑354.。なお,当 該 規 定

は旧VVG76条1項である。損害保険時代の旧法の見解として,保険契約者の

処分権は,差押または譲渡し得ないものとしている。被保険利益の問題がある ので,少なくとも当時は当然であったであろう。Prolss/Martin,Versiche- rungsvertragsgesetz,27. Aufl., Munchen2004, S.688.

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