金沢大学 十 全 医 学会 椎 誌 第9 3巻 第6号 8 03−81 7 く1 9 841
家 兎再接着耳 介血流に及 ぼす寒 冷と ニ コ チ ン の影響
金沢 大学 医学 部整 形外 科 学教 室 く主 任二野村 進 数 授1
岩 井 養 信
く昭和5 9年1 1月1 0日受付I
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再 接 着術を受け た切 断指の血流が, 寒 冷暴 露と喫 煙によ り, どの よ う な影 響を受け るかを明ら かに す る た め, 実験モデルと して家兎に再接 着 耳 介を作り, m e r C u ry Str ain ga uge plethys m ogr aphy によ り 種々の条 件 下で の血流量を測定し た.室温 2 0 士 20C 下で の耳 介血流量の最 大値は,健 側 耳 介で19 4.4 士2 2.5
mllminJ
,
1 0 0 ml組 織く平 均値士S Dl で あ り,再 接 着後1 ケ月 日と 6 ケ月 日の耳 介で は,99.5 士15.O mllminlI lO Oml と 1 1 6.9 士1 4.O mll mi nl1 0 0 ml であった. 全 身寒 冷 暴露 く7 士 30C, 6 0 分l で耳 介 血 流量は, 健 側 も再接 着 耳 介も共に著 明な減 少が み ら れ た. タバコ煙によ りお こる耳介の血 管収 縮は, 再 接 着耳 介では健 側よ り弱かった が, ニ コチン0.05 m g座g 体 重の静脈 内投 与にて,再 接着 耳 介で は 血流減 少が健 側よ り長 時 間 続き, 投与 後1 5 分で の耳介 血 流 量は, 投 与 前の血流量の54.0%であっ た. 以 上 の実 験 結果よ り, 再 接着 指の術 後に お いて, 寒 冷暴 露や喫 煙で循環障 害がお こる可 能性が 示唆さ れ る.
Eey w ords r eplantatio n, C Old, nic otin e,blo od flo w, r ab bit e a r
外傷によ り切 断さ れ た指の再 接 着術 後2 週間 以上経 過し た症 例で, 寒 冷暴 露や喫煙を契機に, 突 然その指
の循環 障 害を起こし た症 例が あったこと を先に報告し たり. 再接 着 指において,寒 冷暴 露や喫煙が 血流に及 ぼ す影響を 理解し ておくこと は, 術 後 管理の上で極め て 重要である. 正常ヒト手指に つ いて は, 寒 冷や喫 煙が 皮膚血 管を強く収 縮さ せ ること が知ら れて いる2−41. し かし, 再 接 着 指において, 寒 冷暴 露や喫煙 が その血流 を ど の程 度 減 少さ せ るか, ま た 血流 減少の様 態が同じ かど うか, いま だ 明確でない. こ の点を明らか にす る 目的で, 再 接 着指の モデルと して再 接着 術を行っ た家 兎の耳 介を 用い, 寒 冷 暴露とニ コチン投 与によ る当 該 耳介の血流 動態について検 討し た.
材料およ び方法
成熟 家 兎の右 側 耳 介を基部で完 全 切 断し た後, 直ち に再接 着 術を行い, 生者し た耳介の 血流 測 定を 以 下に 述べる方法で行い, 寒 冷暴 露や喫煙条件 下で の血流 変 動を観 察し た.
工. 血 流 測定 装置
Eaga n5 1,Ho nda ら6 Iによ り報 告さ れ た方 法を一部 改 良し たm e r c u ry str ain ga uge plethys m ogr aphy によ り, 家兎耳 介の血 流 測定 を行っ た.
A b br e viatio n s こ M S G , m e r C u ry Str ain ga uge.
1 . M e r c u ry str ain ga uge の構 造と製 作 内径0.0 1 2 インチ, 外 径0.0 2 5 インチ, 長さ 95 m m の シリコ ンチュ ー ブCDo w Co mi ng 社製1 の内 腔を水 銀 く9 9.0%l で密 封し たm e r c u rystr ain ga ugeくM S Gl
を作 成し た. 所 定の長さ のシリコ ンチュ ー ブ の 一端か らツベルク リン針をつけ た注射 器で水銀を注入 し, そ の先 端に断 端のみ絶 縁の ないリ ー ドワイ ヤー く壷同線J を挿入 し, 注射 針を按 去し た後, 他の 一 端に同じ く別
のリー ドワイ ヤ ー を挿入 し てシリコ ンチエ ニ プ内 腔に
水銀を密 封し た. リー ドワイ ヤ ー は, シリコ ンチュ ー
ブの内径よ り や や太いものを使用 し, 3 m m 挿入 し た 先端 部で水 銀と鋼のアマルガム形成によ り, リ ー ドワ イ ヤー と水銀の接 触が切 断さ れ るのを防いだ く囲 い.
2 . Calibr atio n 装 置
顕 微 鏡の微動 調整 装 置を改 造し, M S G の感度 較正 装置を作 製し たく囲21. 較正に際し, M S G に5.O g の
張 力をかけ た ま ま簡 単にリ ー ドワイ ヤー を 脱着でき る よ うにし, 微動ダ イ ヤル の 1 回転が M S G の0.5m m の伸展に相 当す る よ うに調整し た. M S G の伸展によ る水銀の電 気 抵 抗 変化を, 下 記の4 . の装 置によ り測 定し たく図3ン.
3 . Ve n o u s o c clu sio n 装 置
測定 部位への流入動 脈血流は阻害せずに, 流 出 静脈
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血 流のみ遮 断す る た めの ゴ ム製カフく巾1.5 c mンを作 製し た. 耳 介の血流 測 定時, こ の カ フを所 定の圧で瞬 間的に膨 大させる た めに, 図4 の如く加圧 タンク, 水 銀マノメ ー ター , 電 磁 弁, スイッチ な どから な る加圧
装 置を作 製し た.
4 . 増 幅 器と記 録器
M S G を W he a sto n bridge の 山辺に入 れ, その電 気 抵 抗 変 化を 三栄 測 器6 M 5 7 A 増 幅器 で測 定し,
Se rv O C O rde rS R 6 52 で記 録し た く図31.
本 法は,水 銀の抵抗 温度 係 数が 8.9X lO−40bm .c mノb C と大き く, 外界 温 度の影 響を 受 け や すいという 短所
m e r C u ry
Le ad wir eくCul le ad wir eくCul F ig.1. Sche m a of m e r c u ry str ain ga uge. A sili−
c o n etubeisfilled with m e r c u ry a nd it,ste r min als a r efit ted with le ad wir e s.
Fig,2. Calibr atio n de vic e fo r m e r c u ry str ain ga uge. T he de vic e is r e m odelled fr o m a fin e adju stm e nt devic e of a mic r o s c ope.
が あ る2I. そのた め, 本 実験で は測定用 M S G と全く同 じ長さのM S G を W he a sto n bridge の測 定用 M S G と対す る 一辺に入 れ, そ れ を張 力は変えずに同側耳 介 皮膚 表面に貼 付す ることによ り 温度 補正 を行った.
工工. 実験方 法
1 . 家 兎 耳 介再 接 着群の作 成
成 熟 雄 家 兎 く3.5 へ4.O kgン24 羽 を使用 し た. ソ ム ノ ベ ンチル 0.5 旬1.O mlノkg腹 腔 内投 与によ る麻 酔 後,
右 側 耳介を剃 毛 消 毒し手 術 台に固定し た. 耳 介 基部で 皮膚およ び皮下組 織を輪 状に切開し た後, 耳 介 中心動 静 脈およ び大 耳 介 神経を分 離し, 耳介中心 動静脈 を結 集切断し た. 大耳 介 神経およ び耳 介軟骨 も同 部で鋭利
に切 断し, 耳 介を完 全に切離し た. 耳 介 軟骨を断 端部
で1.Oc m 短縮し,更に耳 介軟 骨 断 端を 0.8c m 重 ねて 4−0 ナ イロ ン系で縫 合し た. つい で顕 微 鏡下に,耳 介中 心動 脈を 1 0−0 ナ イロ ン系で6 へ 7 銑 耳 介 中心 静 脈を 10針で吻 合し た.大 耳 介 神経は 4 針で神 経上膜 縫 合を
F ig.3. Im peda n c e m atch ing u nit くSa n−eis okuk i 6 M 5 7 Al a nd r e c o rde rくSe r v o c o rde rS R 652l.
Fi g.4. Sche m atic dr a wing of the de vic e fo r v e n o u s o c clu sio n. It c o n sists of a c uff,S Ole n oid
v alv e, m a n O m ete r, air r e s e r v oir a nd o xy ge n Cylinde r.
家兎 再 接 着耳 介 血 流に及 ぼ す寒 冷とニ コチン の影響 8 0 5
行った. 他の小 血管を すべて電 気凝固によ り 止 血 し た 後 皮 膚縫 合を行い, 手 術を終了 し た. 術 後は室温 2 3士 lOCで飼育を続け た. 術 後 経過良好 例では,術 後1 日目
から耳介 全 体に浮腰 が出現 し, そ れ は術後4 日日から 1週間目まで著明 と な り, その後 徐々 に減 少し た. 術 後1 ケ月 日では, 浮腰 は 耳介 尖端 部に は認め ら れ な かった が, 接 合部 近 傍には軽 度に認め ら れ た. 生者し た耳 介は, 術 後6 ケ月経 過し て も萎縮は な く, 耳毛 の 発 育は良 好で あったく図5ン. 10 羽の再接 着 耳 介は術 後 1週 間以内に循環 障 害を おこし壊死 と なった. 他の 2 羽では創 部の感 染を おこし, ま た飽の2 羽では耳 介の 部 分壊 死をお こし た.術 後 経過の良好であった 1 0 羽 を 実験 対 象と して用いた. 家 兎を耳 介の血 流 測定用 の固 定装 置に慣れ させる た めに数日 間にわ た り模 擬 実 験を 行っ た後, 実験に供し た.
2 . 耳 介血流量 と皮 膚 温の測 定 準備
ウレ タン0.3 句0.5gノkg の腹 腔 内 投 与によ り麻 酔 し た家 兎を Eaga n5切報 告し たc a n v a ssling によ る固 定装 置に固定し た. 耳 介の固定には, 円周10 1 m m の
硬質 塩 化ビニ ー ル製円筒を耳介 内側には めこみ, これ をサ ー ジ カルテー プで固 定し た後, 耳 介と円筒を合わ せ て外 側から M S G で偉く よ うに固 定し た く図6う.
M S G は耳介 尖 端よ り 2.O c m 中枢に装 着し た. カ フは 更に3.Oc m 中枢に装 着し た. 静脈圧迫のた めのカフ は 6 0旬7 0 m m Hg で加圧 し た. 耳 介の脈 波を測定す る 時は, M S G を耳 介 中JL−動 脈の本 幹の上で,左右の耳 介
の対称 部 位に装着し た. サー ミ スター を耳 介 尖端よ り 1.Oc m 中枢で耳介 外 側 面に固 定し,デ ジ タル温度 計で
皮膚温を測 定し た.
3 . 耳 介血 流 量 算 出の実 際
60 旬70m m Hg の 圧 で カフを膨ら ま す と, 動 脈 血 はカ フよ り末梢へ流入 し続け る が, 静 脈 環流は阻止 さ れ, カフ の末梢 部の容 積は, 初め直線 的に急 速に, つ いで綬 徐に増 加し, 最後に平衡に達し, カフ圧を解 除 す る と も とに戻るく囲7う. 容 積 変化の初め の 立 ち 上 が り部 分の接 線か ら,単 位 時 間あ た りの容積 変 化を求め,
F ig.5. T he r epla nted right e a r at6 m o nths afte r Ope r atio n. T heleft e a r w a sinta ct.
Fig.6. Rab b itin po sitio n fo r e a rplethys m ogr aphy. T he r ab bit w a s s u spe nded o n a C a n V a S Sling.
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動脈血流入 量 を算 出し た. 高さ が山一定の弾 力性のあ る 円 柱 く円軋 Cニ容 積, Vi 断 面 積, A.1 におt−て,
円 周の変 化 率 く%ム C つ と容積の変 化 率 く%ム V l お よ び断面 積の変 化 率く%ムA l との間には, 1 %ムC ニ 2%ム V,1 %ム Cニ 2%ム A の関 係が あ り71,円周の 変 化 率が わかれ ば, 容積の変化 率が わかる. ま た, 容 積の変 化率と断面 積の変 化 率は同じ と な る. 例え ば,
円筒の周径が101 m m くCII な ら ば, その断面 積 くA.1 はくCl12ノ毎 ニ812.1 8m m2と な る. 円 筒上に耳 介を固 定 し た時の周径くC21が 1 05 m m な ら ば, その断面 積くA21 はくC212ノ4汀 ニ8 7 7.7 8m m 2と な り, 耳 介の断 面 積 くA3I は A 2
− Alニ6 5.6 0 m m2と な る. 1 %ム C2こ 2%A A2
の関 係から, 1 %ムC2ニ 2 X8 7 7.7 8ノ6 5.6 0%ム Aまニ
2 6.7 6%ム A3が求め ら れ る. こ の実験で は, M S G の1
m m の伸 展によ り 5 0 0m m の ペ ンの defle ctio nが起
こる よ うに記録 計の感度をセッ ト し て あ るの で, C2の 1 %の変化で 5 2 5 m m のdefle ctio n が起こる. 流入曲 線の傾き が, 4 4 0 m mノmin な ら ば く図8コ, 1 分 間に 4 4 0ノ5 2 5ニ0.幻%のC2の伸 展が起こったことにな り,
1 00 ml組 織 中へ1 分 間に流入 す る血 液 量は 2 6.7 6 X O.8 3ニ2 2.2 1 mllmin110 0 ml と計 算さ れ, これ を耳 介
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F ig.7. C ha nge in the e a r v olu m e by v e n o u s o c clu sio n in a n o rr n al e a r. T he r e c o rd is r e ad fr o m the righ t to left. Ts,e a r Sk inte mpe r atu r ei abs ciss a,tim ei O rd in ate, pe r C e ntage Cha nge in Y Olu m e.
血流量と し た.
4 . 測 定 条件
以下に述べる4 つの条件 下で 血流測 定を行った.
1ン 2 0士20Cの室渥下で の耳 介血 流量 と耳 介皮 膚温 の同時 測 定.
2 1 7 士30Cの寒 冷に60分間, 全 身暴 露し た時の耳 介血流量と耳 介 皮膚温 の測定.
3 1室温下で, ニ コ チン0.0 5 m gノkg の静 脈 内 投 与時
の耳 介血流量の測 定.
射 タバ コ副 流煙を 5 秒 間, 家 兎 顔 面に暴 露し た時
の耳 介脈 波の測 定.
い, 2 う, 4 1 に お いて は, 再 接 着 術 後1 ケ 月日と 6 ケ月 日に測 定し, 3 1に お い ては,再 接 着術 後1 へ一3 ケ 月日のもの につ いて測 定を行い, 健 常 耳 介を対照 と し た.
成 績
1 . 室温 く2 0士20C う での耳 介 血 流 量と皮 膚温
c a n v a s sling 製 固 定装 置に2 時間 固 定し た家 兎の, 健
常 耳 介と再 接 着 後の耳 介の血 流量 と皮 膚温 を測 定し た. 耳 介 固 定用の円 筒は, あ らかじ め皮 膚温に近い
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Fig.8. C ha nge in the e a r v olu m e by v e n o u s o c clu sio n in a r epla nted e a r. Co nditio n s a r ethe S a me a Sin F ig.7.
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