リ チ ウム の抗うつ 効 果 と内因性 う つ 病 の概 念 の検討
金沢 大学医 学 部 神経 精 神 医学 講 座 く主 任こ山口成長教 授I
丸 山 隆
く昭和6 1年5月3 0日受付I
R D C の m ajo rdepr e s sio n ま た は min o rdepr e s sio n の診 断基 準を満た し た 55 人 を対 象と してうつ 病の2 つの観点に つ い て研 究を行った. 1 つは リ チ ウムくL il の急性の抗うつ効 果のイミプ ラミ ンく工M Pン と の 比較,さ らに Li によ る脳 波 変化と Li 比 が Li の抗うつ効 果の予測 因子 と して有 用か,に つ いて調べた.
次に, 内 因性うつ病に対す る診 断の信 頼 性 くr eliab ilit yl と概 念の妥 当性 くv alidit yI に関す る検 討を行っ
た. Li の急 性の抗うつ効果を, H D R S と B D I の 2 つ のうつ症 状の評価尺度を指標と し て, 4 週にわ た り I M P と比 較し た時,全 体と し て等しい抗 うつ効 果が認め ら れ た が,4週 目の H D R S で治 療前の症 状が重 篤 な ほ ど,L i の抗 うつ効 果が イミプ ラ ミン のそ れ を 上 回 る傾 向を認め た. L i の 反応者と非 反応 者で,L iによ り惹 起さ れ る脳 波変 化に有意 差を認めず, ま た,Li 比 も両 者 間で有 意な差を認めず,脳 波 変化と L i比は Li
に対す る反応 者の 予測 因子 と は な り得ない こと を 示唆し た. 5つの内 因 性うつ病の操作 的診 断基準を,
R D C m ajo r depr e s sio n も し く は min o r depr e s sio n を満た し た 4 9 人のうつ病 患 者に適用 し た が, 4 9%が R D C 内 因性うつ痕 10.2%が D S M −III メ ランコリ ー を満た し, 診 断 基準 間の 一致 率を 示 すx 係数の1 0偶
のう ち 5 個だ け が有 意に0 で は なかった. 内 因性うつ病と誘発 因子の極 度の関係で は, R D C によ る R D C 内 因性 うつ病と非 内 因 性うつ病で は誘 発 因子 の強さに有 意 差を認めず, N E D DI の得 点と誘 発 因子にも有 意な相 関を認め な かった. しかし, N els o n ら の A D の得 点と誘 発 因子の強さには有 意な相 関を認め た.
内 因性うつ病の重 症 度に関し て は,R D C によ る診 断では内 因性うつ病は非 内 因性うつ病よ り有 意に重篤で あり, そ の他の 4 つの診 断基 準に関し て も有 意 差は認め ないが, 内因 性うつ痛が よ り 重篤な傾 向を認め た.
Li よ る治 療効 果を R D C 内因 性うつ病と非 内 因性うつ病について 比較し た が 2 週 目, 4 週 目と も両群で有 意な差は認め ら れ なかった. 内 因性うつ病の概 念に関し て議論の あ る幾つ か の側 面に つ いて の 以 上の結果
によ り, 内因性 うつ病は非 内 因性うつ病よ り も ー般に重 篤である といえ る が, 内 因 性うつ病は非 内因 性う
つ病よ り強い誘発 因子 と, よ り良好な薬 物 反応を有す る という可 能性に関し て は否 定 的であ る. さ らに操作 的診 断基 準 間の 一 致率は極め て低く, 内 因 性うつ病の概 念は今 後, さ らに検討の必 要性が あ ること を 示唆 す る も のである.
K ey w o rds lith iu m ,im lpr a min e, C O n C ep t Of e ndoge n o u s depr e s sio n, a nti− depr e s s a nt effic a cy, E E G findings,1ith ium r atio
リ チ ウムく1i th iu m ,LD は, オー ス ト ラ リ ア の CadelI によっ て抗 躁 作用 を持つ薬 剤と し て導入 さ れ て か ら 3 6 年が経 過し た が,精 神 科領 域に おけ る薬 物 治 療剤と して は最 初のも の で あ る. こ の薬 剤は単純なドイ オンJ で あ り な が ら, 特 異的な抗 躁作用 を有す る点で極め て
ユ ニ ー ク であり, 臨床 面で も基 礎 的な面で も高い関心 が持た れ ている2I. 躁 病に対し て は, ニ重 盲検 法を含
む, 数 多くの比較試 験によって急 性 治療のみ で な く,
予 防効果について も その有 効性が確立 さ れている. 近 年うつ病に対す る L i の急 性およ び 予防 効 果につ
いて の報 告が増え ている が, 特にうつ病に対す る急性 治 療 効 果は, いま だ確 立さ れ ている と はいえず, 多く
の臨 床 研 究が必 要と思わ れ る3I.
いか な る種 類の研 究で あ れ, うつ病に関す る 研究の
A b br e viatio n s ニR D C, R e s e a r ch D iagn o stic Crite riaニD S M −III, D iagn o stic a nd Statistic al M a n u al of M e ntal D is o rde r s,th ird editio n三L i,lithiu m ニH D R S,H a m ilto n Depr e s sio n Rating Sc aleニB D I, Be ck,s Depr e s sio n In v e nto ry ニ工M P , imipr a min eニA N C O V A
, a n alysis of
リ チ ウ ム の抗うつ効 果と内因使うつ病の概念の検 討
際の大き な障 害は, こ の疾 患の 仁異 質 性J にあ る と 考え ら れ る 刷. 事 実, 高橋引, 大月ら7 I, は脳 内生 体ア ミ ン に関す る研 究のr e vie w から, 躁うつ病はr 神 経疾 患や精神 分裂 病以上に異な る 下位 群を含ん でいる と想 定で き る証 拠が集め ら れ ているJ こと を 示唆し,
Me ndels ら8Iは,r 治 療反応, ホ ル モ ン定 量, 電 解 質バ ラン ス, 経過 な ど を考 慮し た と き, うつ病は異 質の
グル ー プ で あ ること が次第にはっき り し て き たJ と述
べている. こ の 仁異 質性J の た め, 多くの臨 床 家や研 究者は うつ病を よ り合理的で系統 的に下位 分 類す るこ とによ り, よ り均一 な集 団に集約す る試み を行って き た9 I l OI.うつ病の分 類を確立 す ること は,こ こ3 0年 間の 精神 医学の大き な関心 事の 一つ であっ た1H1 2I
最近の うつ病に関す る研 究で, 内 因性うつ痛くe ndo− ge n o u sdepr e s sio nl は神 経 生理.化 学 的 異常を伴っ た うつ病の 亜型と み な さ れ, うつ病の生物 学 的な病 原解 明の研 究 対 象と し て の中心 的存 在と し て注目さ れつ つ あ る相 川. そ の一 方でこの うつ病の 亜 型 の概 念 あるい は診 断を め ぐって多く の議 論が か わ さ れ ている1引 用 し た がって, うつ病の中核を な す と考え ら れ る内 因性 うつ病の 概 念の信 頼 性 くr eliab ilit yl と妥 当 性 くv alid it yl を検 討す ること は, うつ病 研 究にお け る重 要な問題と思わ れ る.
L i と うつ病に関す る 以 上 の観 点か ら, こ こで は 2 つ の側面に つ いて研 究し た. は じ めに操 作 的 診 断 基 準 b pe r atio n al diagn o stic c rite rial に基づ き診 断さ れ たうつ病に対す る L i の急性の治 療 効 果およ び そ の 予 測因子くpr ed icto rl と し ての L i 比 と脳 波 変 化に つ いTC,
次に内因性うつ病の診 断 基準の信頼 性と 症候学, 誘 発 因子, 薬理学 的反応 性な どからみた うつ病の概 念の妥 当性に つ いて検 討し た.
対 象お よ び方法 1 . 対象の選択と 面接 方法
対 象は昭 和5 7 年3 月 か ら 5 9年12月の 3 年間に福 井県立 精神 病 院に於て外 来通 院ないし 入院 中で, 著明 なうつ症状を 呈 し, 研 究に対し て協 力 的な患者から な る. た だ し, 重篤な心, 腎, 肝 障害のた め 現在その治 療を受 け ている ものは除 外し た. 年 齢や性 別には制 限 は設 け なか った. 外 来 患 者に対し て は, 投薬 開 始日,
2 週間目, 4週 間目の計3 回面接を実 施し た が, 入院 患者に対しては随 時 実施し た.
質問 内容は 現症, 既 往歴, 家族 歴, 発 症年 齢な ど を
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含む が, 構成 的 面 接 法 くstr u ctu r ed inte r vie wI の中で 最も よ く知られ た N e w Yo rk State Psych iatric In sti− tute のSchedulefo r A ffe ctiv e D is o rde r s 鹿 Sch iz o. phr e nia くS A D Sl 1 7Jの中か ら躁 症 状, うつ症 状, 精 神 病症 状を評 価す る項 目を選び出し, 上 記最 低3 回 の面 接時に これ ら の項 目の すべてに つ いて質 問を行うこと によっで情 報を収 集し た.
H . 治 療への割 当て, 投 与 期 間, 投 与方 法 対 象と し て適 切と判 断さ れ た患 者を,無 作 為に Li群
かイ ミ プ ラ ミン くimipr ami n e,I M Pl 群に割 当て た.
ある薬物の抗 うつ効 果を既 存の抗 うつ剤を対 象と し て比較す る場 合,工M P か ア ミ ト リ プ チ リンを標 準 薬と し て使用 す る の が普通である が, こ こ では, 1つ工M P は抗 精 神 病 薬である クロ ル プ ロ マ ジン くcblo rp−
r o m a zin el か ら誘 導さ れ たにも か か わ らず1 8I, そ の後 の臨 床 試験によ って著 明な抗 うつ効果 が証 明さ れ た最 初の 三環 系抗うつ剤であり, 抗 うつ剤と し て最も広 く 使 用さ れ ている,2コそ れ故,数 多く の比 較 試験に よっ
て そ の有 効 性が確 認さ れ ている川2 01, 31 M e ndels
ら2り, 渡辺ら2 2Iは L i の抗うつ作用 を 工M P を標 準 薬と し て 比較し ている, な ど の 理由で 工M P を標 準 薬と し て選 択し た.
急 性の治療 期 間と し て は 2 週 間か ら 1 0 週 間が適 当 と考え ら れ る が, 11 Hohn2 3l
, M cClatchey細は抗う つ剤の 比較 試験に お いて 4週 間の期 間を採用 し, 2う
19 58 年か ら 1 9 7 2年ま での抗うつ剤の有効 性に関す る 報 告を総 括し た K le r m a n ら2 01の論 文でも 4週 間が最 も多い, な どの理由で治 療期 間と し て 4 週 間を採用 し た.
投 与 方 法と し て, 午 前9時と午後9 時の1 日 2 回の
分 割 投 与 で, 投 与量 はい わ ゆ る fix ed−fle xib le
S Chedule に従い, 炭 酸イミプ ラミ ン70 m gか ら開 始
し, その後は fle xib le do s eで投与し た.
Ill. 投与 期間 中の症1犬評 価
L i群と I M P 群の いずれ も治 療 直前 くw e ek Ol, 2 週目 くw e ek 21, 4 過 日 くw e ek 41 ハ ミルトンうつ 病症 状尺度 くH a milto n Depr e s sio n Rating Sc ale,
H D R Sン2 51を 用い て, さ らに患 者 自 身によって, Be ck,
S Depr e s sio n In v e nto ry くB D Il 2 61の邦 訳し た ものを 用い症状 評 価を行った.
1 V. リ チ ウム濃 度と 脳波 くE E Gう測定
Li 投与 群について, 2週 目と 4 週 目にL i濃 度 測 定 の た めの採 血を行った.採 血日の朝は服薬を中止 さ せ,
a n alysis of c o v a ria n c e三N E D D I, N e w C a stle E ndoge n o u s D epr e s sio n D iagn o stic Inde x ニ
E E G, ele ctr o e n c ephalogr a m ニA D
, Auto n o m o u s Depr e s sio n こ T E D, T aylo r,s Endoge n o u s Depr e s sio n三S A D S,Schedule for A ffe ctiv e D is o rde r s a nd Schiz ophr e nia