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高齢者の身体機能向上を目的とした運動プログラム研究 池永 昌弘

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(1)

高齢者の身体機能向上を目的とした運動プログラム研究

池永 昌弘

(2)

博士学位論文

高齢者の身体機能向上を目的とした運動プログラム研究

福岡大学 2014

池永 昌弘

(3)

目次

序論

我が国の高齢化の現状...2 高齢者における健康と運動の関わり...3 健康長寿獲得のための運動プログラムの現状... 5

第1章 三軸加速度計を用いた身体活動量と身体機能および身体組成との関係 第1節 身体活動量と筋力、歩行速度の関係

...11

緒言 方法

A.

対象者

B.

調査期間

C.

調査地域

D.

形態計測

E.

身体活動量の測定

F.

身体機能の測定

G.

統計処理 結果

考察

第2節 身体活動量と骨格筋量の関係...25 緒言

方法

A.

対象者

B.

調査期間

C.

調査地域

D.

形態・身体組成

E.

身体機能の測定

(4)

F.

身体活動量の測定

G.

サルコペニアの抽出

H.

統計処理

結果 考察

第2章 高齢者の身体機能改善および筋量増加に有効な運動の

無作為化比較試験① ~重量負荷靴による運動介入~

...38

緒言

方法

A.

対象者

B.

介入方法

C.

身体活動量の測定

D.

骨格筋量指標(筋組織厚、筋細胞内液量)の測定

E.

歩行動作分析

F.

統計分析 結果

A.

参加状況

B.

靴重量および身体活動量の変化

C.

骨格筋量の変化

D.

歩行動作の変化 考察

結論

第3章 高齢者の身体機能改善および筋量増加に有効な運動の

無作為化比較試験① ~スロージョギングによる運動介入~...56 緒言

方法

A.

対象者

(5)

B.

介入方法

C.

運動処方(走行速度の決定法)

D.

測定項目

1)

形態計測および身体組成

2)

有酸素能力

3)

身体機能

E.

統計処理 結果

考察 結論

結語

...72

参考文献...75

(6)

1

序論

(7)

2

我が国の高齢化の現状

我が国は、これまでに人類が経験したことがない速度で急速に高齢化が進ん でいる。

2011

年の厚生労働省の発表(平成

23

年簡易生命表)によると、日本人 の平均寿命は、男性

79.44

年、女性は

85.90

年である。2012年

10

月に発表され た年齢別人口統計によると、

65

歳以上の人口は初めて

3000

万人を超え、高齢化

率は

24.1%と年々増加している。高齢化率が 20%以上を超高齢社会というが、我

が国の高齢化は少子化が同時進行しており、さらなる高齢化を助長している。

高齢化による問題の一つとして、医療費および介護費用の増大が懸念されて いる。

2010

年の国民医療費は総額

36

6000

億円で、前年より

1

4000

万円増 加している。そのうち

70

歳以上の高齢者の医療費は

16

2000

億円となってい る。また、介護費用や保険料も年々増加している(平成

24

年保険料と介護費用 の推移, 厚生労働省)。これらの問題に対し、2008年度に法律により、医療保険 者に対して、特定健康診査・特定保健指導を義務化させた(高齢者の医療の確 保に関する法律)。その背景には、高齢者の低体力化からの虚弱化や、要介護化 からの寝たきり化を早期から防止する手段としての生活習慣病予防など、医療 費抑制を意図した政策である。つまり、健康で自立した生活を送る期間である

「健康寿命」をいかにして延伸するかが、超高齢者社会への重要な対応策であ るといえる。

また介護が必要となった主な原因として脳血管疾患(

21.5%

)、認知症(

15.3%

) が上げられるが、脳血管疾患は生活習慣病を起因とした疾患であり、予防策と して肥満解消や適度な運動が推奨されている。さらに認知症に関しては根本的 な治療方法は未だ解明されていないが、近年、運動によりアルツハイマー型認 知症と関連する海馬の容積が増大するという研究が発表され、運動による認知 症予防への期待が高まっている。その他の要介護への移行原因として、関節疾

(8)

3

患(10.9%)や転倒骨折(10.2%)といった運動器の疾患や機能低下が要因と考 えられるきっかけが多く、さらに

13.7%は加齢に伴う衰弱と報告されている。こ

れらの要介護の移行原因は身体機能低下が直接的に関連すると考えられる。身 体機能を構成する体力(持久力、筋力、敏捷性、柔軟性など)は、生物学的老 化による形態変化や生理的変化によって低下することは明らかである。この体 力低下の一要因は骨格筋を含む臓器の細胞老化や細胞死によるものであるが、

運動はこれらの老化への遅延を可能とすることがこれまでの研究で明らかとな っている。つまり運動は、加齢に伴ういずれの身体的諸問題に対しても有効に 働き、結果的に「健康寿命」を延伸することが示唆される。

高齢者における健康と運動の関わり

実際に、後期高齢者や虚弱高齢者における運動の実践が有効であるとする研 究がいくつか報告されており、無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial:

RCT)を中心としたシステマティックレビューの報告や、ガイドラインが作成

されている。しかし、高齢者は体力や健康状態の個人差が極めて大きく、個別 に応じた効果的な運動の種類や様式、強度、時間等の運動処方に関しては一律 の設定や具体的な方法は確立されていない。また、このような個人差だけでな く、人種や地域差、更には経済状況などの社会背景も考慮した適切な運動プロ グラムを確立させていく必要がある。

2000

年以上前、初めて

Hippocrates

が運動(過剰な運動はよくないとして)は 健康に良いと提唱して以来、運動や身体活動の疫学はその方法と共に発達して きた。

20

世紀半ばになると、定量的な分析が行われるようになり、

Morris

らは 選択バイアスならびに交絡因子の調整を行い、積極的な運動は冠状動脈性心臓

病(

coronary heart disease: CHD

)を予防し、さらに全死因死亡率と関係すること

示した。Morris らは、ロンドンの

2

階建てバスの活動的な車掌と、座位活動の

(9)

4

多い運転手を対象に、職業上の身体活動と冠疾患の関係を調査し、CHD 予防に ついて明確な証明を行った。さらに彼らは身体活動量の低い公務員とは対照的 に、活動量の高い郵便配達員も車掌と同様に

CHD

への予防がなされていたこと を明らかにした(Morris et al. 1966; Paffenbarger et al. 2001)。さらに同研究グループ は、活動の強度に対して疑問を抱き、質問票を用いて活動の強度を

Light,

Moderate, Vigorous

に分類し、前向きコホート研究により疾病の発症との関連を

調査した。その結果

Moderate

もしくは

Vigorous

の身体活動は、他の因子から独 立して

CHD

の発症と強い関係にあることを示した。これらの研究結果から導か れる結論は、「職業上や日常生活における活発な身体活動、規則的な運動習慣は、

CHD

発症リスクを低下させ、さらに早期の死亡を防ぐ」ということである。20 世紀後半以降、コンピュータの統計処理の発展に伴い、性別、人種、民族、年 齢、社会的グループ、そして世界各国の多くの人々の膨大なデータを用いた疫 学研究が行われている。

高齢者においても習慣的な運動と活発な身体活動が、その後の健康に関わる とする研究がいくつかある。70歳代の高齢者

302

名を対象にエネルギー消費量 の測定(二重標識水法)を行い、7年間の生存率を追跡して研究によると、7年

後には

1

770kcal

以上のエネルギー消費量の高い高齢者では

8

割以上が生存し

ていた一方で、1日

521kcal

以下のエネルギー消費量の少ない高齢者は

5

割近く が死亡したことを報告している

(Manini et al. 2006)

。つまり高齢期の高い身体活 動量は長寿に繋がると言えそうである。

一方、体力や身体機能が高いことも健康長寿に繋がることは明らかである。

加齢に伴う身体機能の低下は、廃用による生理学的な変容と類似している。高 齢者では、心臓血管系機能、肺機能、筋力、筋持久力、柔軟性が加齢と伴に著 しく低下する。メタアナリスにより延べ

5

万人の身体機能と死亡リスクの関係

(10)

5

を調査した研究結果によると、身体機能の低下に伴い死亡リスクが高くなり、

最も歩行速度が遅いグループは、最も歩行速度が速いグループと比較して3倍 近く死亡リスクが高いことが明らかとされている。この研究結果からも良い身 体機能を有することは極めて重要であると言える。特に高齢者では体力のキャ パシティは直接、日常の生活機能と関係することが予測される。生活機能とは 生きていくために必要な機能全体を指すが、高齢者ではこの生活機能が低下す る。国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and

Health, ICF)によると、生活機能は健康状態と個人の背景因子との相互作用ある

いは複合的な関係にあると言われている。つまり、これらのいずれか、または 複数の因子を改善することで、健康状態も改善され、生活機能が向上すること が考えられる。特に、心身機能や身体構造、活動性といった因子は、我々の研 究領域である体力科学的なアプローチによって変容が可能といえる。しかし、

高齢者では個人の置かれた環境要因や個人要因は、若年者に比べて大きくなる ことが予測されるため、個別に応じた対策が必要となる。そこで本研究では、

一人一人の日常の身体活動量を定量化し、活動の強度や時間が身体機能に関連 するかどうかについて検討した(第1章)。

健康長寿獲得のための運動プログラムの現状

体力科学的なアプローチによる健康促進プログラムは我が国の超高齢化問題 の解決策として、全国で広く展開されている。このプログラムの多くは、教室 参加型のトレーニングプログラムが一般的である。しかし、このような教室参 加型は、指導者の監視下であり、参加者の運動に対する積極的な姿勢が必要で ある。また、参加人数の制限や、実施する地域の環境、個人の健康状態など、

様々な要因で運動継続が困難となる可能性が考えられる。より多くの高齢者に 適切な運動プログラムを提供するには、従来の方法だけでは限界があるといえ

(11)

6

る。そのため、教室参加型だけでなく、日常生活下で行う効果的なプログラム も必要であると考える。

Hippocrates

が「運動は健康に良い」と助言をしたのは約

2000

年前である。人

200

万年の歴史(Collard and Wood 2000)を考慮すると、極最近のことである。

2004

年に

Bramble

Lieberman

は、「Endurance running and the evolution of Homo」

という論文を

Nature

に発表した(Bramble and Lieberman 2004)。彼らの説は、ヒト は本来狩りの為に長距離を走る必要性が進化を促し、長いアキレス腱や長い脚、

大腿部や臀部の筋肉などの走りに適した身体特性を持つように進化したという 説である。人類は、約1万年前に農耕牧畜を始めた。狩猟採取という方法で自 然の恵みを利用する生活から、食料を生産するという新しい技術を得たのであ る。人類

200

万年の歴史を

200m

の陸上トラックに例えると、1万年前、つまり ゴール

1m

手前までは狩猟採取を行い、定住することなく食料を追い求めていた のである。農耕牧畜の開始以降、人類の生活様式は大きく変化し、それに適応 する形で走る必要性が減り、身体活動量が徐々に変化したと考えられる。その 変化にいち早く気づいたのが

Hippocrates

であり、200mのゴール

20

㎝手前で人 類に対し警告を発したのかもしれない。20 世紀後半以降、人類はこれまでにな い飽食の時代となり、我々の生活は非常に豊かになり利便性が高くなった。我 が国では

1954

年に原子力発電の開発が本格的に開始されて以降、自動車の普及 率の増加、電力の十分な供給による第二次産業が著しく発展した。生活が便利 になる一方で、人類はもはや走ることの必要性をなくし始め、自らの足で移動 する身体活動すら失いかけている。そのような身体不活動は様々な病気を引き 起こす引き金となることは、前述の疫学研究からも明らかである。これらの出 来事は、

200m

のゴール手前わずか

5

㎜からのことである。

Bramble

Lieberman

は、ヒトは生きていくために走ることに適した身体に進化したと述べている。

(12)

7

日常生活の移動手段として失われつつある走動作を運動として行うことは、ヒ トの特性上、最も誰でも自然に取り組める運動様式であり、人類の進化の過程 で得た身体特性を維持する上では必要不可欠な運動(活動)であると考えられ る。

ドイツの発生学者

Wilhelm Roux

(1850年‐1924年)は、生理学の基本法則(ル ーの法則)として、「活動性肥大の原則」、「不活動性萎縮の法則」、「長期にわた る機能向上制限による器官の特殊な活動能力減退の法則」、「合目的的構造の機 能的自己形成の原理」を提唱した。これらの法則は現代のスポーツや体育のト レーニングに置き換えて考えることが出来る。またトレーニングだけでなく、

日常生活においてもこの法則は当てはまる。生活様式の変化に伴い身体活動量 が減少し、特に走動作に関しては日常生活下では皆無となりつつある。狩猟の ために走るように進化した人類が、走動作を失うことはルーの「不活動性萎縮 の法則」に当てはまる。つまり走行時に必要な筋肉が、不使用による筋萎縮(廃 用性萎縮)を引き起こすことが推察される。特に骨格筋の萎縮は

40

歳代から

50

歳代に萎縮が始まり、70 歳代以降、急激に低下する。それに伴って筋力の低下 や身体機能低下が起こる。この加齢に伴う骨格筋の萎縮を

Sarcopenia

と呼ぶ。

しかし、加齢に伴う筋萎縮は部位特性があることが明らかとなっている。特に 下肢筋群は上肢筋群に比較して、量的に加齢の影響を受けやすい事が明らかと されているが、同じ下肢筋群でも部位差があることがわかっている。宮下ら

(2003)超音波診断装置を用いて、下肢の骨格筋を大腿部と下腿部のそれぞれ の部位ごとに筋厚を調査し、加齢変化を報告した。その結果によると、大腿部 前面(大腿四頭筋)の筋群の加齢による低下が最も顕著であり、逆に大腿部後 面(ハムストリングス)の筋群は加齢の影響を受け難いことが報告された。加 齢に伴い日常生活中の身体活動の内容が変化し、それに付随して生じる個々の

(13)

8

筋群の活動量および活動水準の年齢差を反映したものであると推察されている。

ルーの「活動性肥大の原則」を基に考えると、特異的に萎縮する筋群に対し、

適切な活動を行うことで、その筋群が肥大することが予測できる。つまり、廃 用性萎縮により低下しやすい筋群をターゲットとした運動様式が、「最小労作の 最大効果」を生む可能性が示唆される。健康づくりのための運動プログラムを 考える上で、より多くの人数を対象とした場合、プログラム参加者だけでなく 支援側にとっても、負担を最小限に抑え(最小労作)で最大効果を発揮するプ ログラムが理想であると考える。

著者の所属先である福岡大学スポーツ科学部運動生理学研究室では、長年の 研究成果により科学的エビデンスに基づいたニコニコペースの運動効果を実証 してきている。ニコニコペースとは、最大酸素摂取量(VO2

max)の約 50%に相

当 す る 運 動 強 度 で あ り 、 運 動 負 荷 に 伴 う 乳 酸 濃 度 が 急 増 す る 点 (

Lactate

Threshold: LT)を基準に運動処方を作成する。そのため疲労を感じにくく、日常

的に取り組み易い事が大きな特徴であると言える。ニコニコペースによる運動 は、有酸素能力の向上、肥満改善、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の予 防や改善だけでなく、運動様式を工夫することで筋力向上も可能である。筋力 増強として有効な運動処方はレジスタンストレーニングと言われているが、有 酸素運動でも運動様式を工夫することで筋力の向上が期待できる。Mori らは高 齢や

38

名を対象にベンチステップ昇降運動を用いた

12

週間のトレーニング効 果を

RCT

により検証した。その結果、有酸素能力の向上(38%増加)だけでな く脚伸展パワーが有意に向上(

45%

増加)したことを報告した。これは有酸素運 動においても、運動様式の工夫により高齢者の有酸素能力と膝関節伸展筋力を 同時に向上することを明らかとした極めて重要な知見である。その運動様式は 加齢に伴い低下しやすい大腿四頭筋、大臀筋、大腰筋を主働筋とした運動であ

(14)

9

る。本研究では、これまでの知見を基に、新たに考案された運動プログラムが、

高齢者の身体機能向上に効果があるか否かについて検証を行った。

(15)

10

第1章

三軸加速度計を用いた身体活動量と

身体機能および身体組成との関係

(16)

11

第1節 身体活動量と筋力、歩行速度の関係 緒言

地域在住の高齢者を対象としたシステマティックレビューによると、実測し た身体機能(握力、歩行速度、椅子立ち上がり時間)と全死因死亡率は強く関 係する(Cooper et al. 2010)。特に下肢機能は障害の悪化もしくは改善と関連する

(Guralnik et al. 1995)。筋力または筋パワーは日常生活に必要な身体機能にとって

最も重要な能力の一つである。加齢に伴う筋力や筋パワーの減少は「Dynapenia」

と呼ばれている(Clark and Manini 2008)。下肢筋力の低下は、身体機能低下、機 能制限、身体障がいの危険因子であることが報告されている(Visser et al. 2000;

Visser et al. 2005; Manini et al. 2007)。さらに長期縦断研究の結果によると、下肢

筋力の低下は加齢に伴う筋サイズの低下の

2~5

倍であることが報告されている

(Delmonico et al. 2009)。つまり、下肢筋力の維持は極めて重要であると言える。

一般的には、筋力増強のための運動はマシンを用いた中強度から高強度のレ ジスタンストレーニングが最も効果的な方法とされており、その効果は強度に 依存するとされている(ACSM, 運動処方の指針)。しかし、近年では低強度であ ってもトレーニング量が多ければ、高強度と同様に筋力増強効果が見られると した研究がいくつか報告されている(Taaffe et al. 1996; Bemben et al. 2000)。つま り低強度であっても運動様式を工夫することで、筋肥大を引き起こす可能性が 示唆される。このように低強度の活動でも高齢者の身体機能に効果があること が介入研究から明らかになっている。このことから考えると、日常生活での低 強度から中強度の身体活動時間を多くすることで、筋力や筋量の維持につなが るのではないだろうか。ところが(介入ではないが)日常的に低強度から中強 度の身体活動を多く実践している高齢者において、に効果が生じているか否か については明らかになっていない。

(17)

12

先行研究によると、質問紙にて調査した身体活動量(Physical activity: PA)は、

高齢期における身体機能と関連することが示されている(Brach et al. 2004;

Rolland et al. 2004; Peterson et al. 2009)。近年では、加速度計を用いた身体活動量

の定量が行われ、一軸加速度計を用いて身体活動量の強度と時間を算出し、高 齢者の身体活動量と筋力との関係について調査されている。

Abe

らの報告による と、一軸加速度計を用いた

3METs

以上の中強度から高強度の身体活動は

(Moderate to vigorous physical activity: MVPA, ≧3METs)、膝屈曲筋力と関連す るが膝伸展筋力とは関連しないとしている(Abe et al. 2012)。また、Aoyagiらの 研究によると、一軸加速度による

MVPA

の時間は、膝伸展筋力と正相関するこ とが報告されている。しかしこの関連性は女性高齢者のみであり、男性ではそ の関連性がないことを報告している(Aoyagi et al. 2009)。これらの研究はいずれ も一軸加速度計を用いているが、使用された一軸加速度計は垂直方向のみの加 速度を検出する構造となっており、水平方向の加速度は検出できないため、高 齢者の身体活動量を正確に測定することが難しい(Yamada et al. 2009b)。これらの 限界点を考慮し、近年では上下方向、左右方向、前後方向の三軸の加速度を検 出する三軸加速度計が開発され、一軸加速度計と比較してより正確に高齢者の 身体活動量の測定が可能であることが報告されている(Yamada et al. 2009b)。最近 の研究では三軸加速度計で推定されたエネルギー消費量は、メタボリックチャ ンバー法

(Midorikawa et al. 2007)

や二重標識水法(

Doubly Labeled Water, DLW

(Yamada et al. 2009b)を用いたエネルギー消費量の評価と強く関連することが示

されている。しかし、三軸加速度計でも機器の違いによって異なるアルゴリズ ムを用いて活動強度が算出されている。メタボリックチャンバー法による妥当 性を検証した

ActiveTracer (AC-301

または

AC-210; GMS, Tokyo, Japan)

は、座位中、

立位中、家事または歩行中のエネルギー消費量を睡眠時代謝で除した、Physical

(18)

13

Activity ratio (PAR)という独自の指標を用いて、以下の式から活動強度を家事活

動と歩行を分類して活動強度(MET)を算出するアルゴリズムが使われている。

b

ActiveTracer

から検出された合成加速度である(Midorikawa et al. 2007)。

PAR = 0.0123×b + 1.7208 (家事用の式)

PAR = 0.0081×b + 0.9234 (歩行用の式)

MET = PAR / 1.1

一方、DLW 法によるエネルギー消費量を用いて妥当性を検証した

Actimarker (AM, EW4800; Panasonic Electric Works, Osaka, Japan)は、以下の式から算出される。

kcal (min) = c×d×基礎代謝(BMR, kcal/day) +

安静時代謝(RMR, kcal/min)

MET = kcal (min) / RMR (kcal/day)

c

は係数を示し、dは

AM

から検出された合成加速度を示す。AMは高齢者を対 象に

DLW

法により測定した総エネルギー消費量との妥当性を検証した、唯一の 三軸加速度計である(Yamada et al. 2009b)。さらに、この

AM

で推定した低強度 活動が長い高齢者は、動脈スティフネスの機能が良い事が報告されている

(Gando et al. 2010)。そこで本研究は横断研究により、地域在住の日本人男性高齢

者を対象に、上肢と下肢の筋力ならびに歩行速度と、三軸加速度計(AM)を用 いた様々な強度の身体活動との関係を調査した。

方法

A. 対象者

70

79

歳の地域高齢男性

178

名を対象とした。

6

か月以内に重篤な心疾患、

脳梗塞、糖尿病の合併症、急性の関節痛や神経障害があった者は、対象から除 外した。全ての対象者に対して、本研究の方法、危険性について口頭で説明し、

理解を得た後、自発的な意思により同意書に署名を得た. 本研究は福岡大学研究

(19)

14

倫理審査委員会により承認を得て実施された。

B. 調査期間

2011

6

月から

2012

2

月までの間に実施された。

C. 調査地域

福岡県筑紫郡那珂川町にて調査を行った。那珂川町は総人口

49,872

名(男性

24,324

名、女性

25,547

名)65歳以上の人口は、男性

3933

名、女性

4939

名、高

齢化率は

17.8%である(平成 25

3

31

日現在, 年齢別男女別人口調, 福岡県

筑紫郡那珂川町)。福岡市の西南部に隣接しており、福岡市に近い平地部ではベ ッドタウンとして都市化が進行しているが、他の地域は山地となっている。

D. 形態計測

体重はデジタルスケールを用いて

0.1

㎏単位で記録した。身長は

0.1

㎝単位で 測定した。総体水分量(Total body water, TBW)を多周波生体電気インピーダン ス計(Physion Z, Kyoto, Japan)を用いて推定した(Yamada et al. 2009a)。対脂肪率 を以下の式から算出した:(体重 – 0.732 × TBW) / 体重 × 100(Racette et al. 1994)

E. 身体活動量の測定

身体活動量(Physical activity: PA)の測定には、三軸加速度計(Actimarker

EW4800, Panasonic

社製)を使用した。対象者には

10

日間腰部に装着し、入浴や

プールなどの水没する可能性がある場合以外は、24 時間装着するように教示し た。解析に用いたデータは、配布の前後一日を除く

8

日間とした。採用データ は

10

時間以上の装着が得られた日のデータを採用とした。最低採用日数は

4

(20)

15

とし、4日以上のデータがあった対象者のデータを採用した。本研究に用いた

3

軸加速度計は、上下方向、左右方向、前後方向の加速度を

20Hz

で検出し、1分 間の平均合成加速度が算出される。酸素摂取量と合成加速度の回帰式から算出 された

1

分ごとの

METs

をデータに用いた。本研究では強度別に、

Light

(~2.9METs,

LPA)

、Moderate(3.0~5.9METs, MPA)、Vigorous(6.0~METs, VPA)に分類し、

各強度に要した時間を算出した。一日の不活動時間 (Inactivity) は次の式より算 出した: 1440 – ( LPA時間 + MPA 時間+ VPA時間) 。また、歩数、

PAL

(Physical

activity level)を評価に用いた。

F. 身体機能の測定

歩行速度は

6m

歩行テストを用いた。助走路(前後各

2m)を含めた 10m

を歩 行し、6m間に要した時間をストップウォッチで計測した。歩行試技は通常歩行

(「家の中を歩くように楽に」と指示)と、最大歩行(「出来るだけ早歩きで」

と指示)を

2

回ずつ計測した。6m間の時間から、歩行速度(m/秒)を算出した

(Kimura et al. 2012)。

握力の測定は、スメドレー式デジタル握力計(グリップ−D、T.K.K.5401、竹井 機器工業株式会社製)を用いて測定した。測定時は人差し指の関節がほぼ直角 になるように握りの幅を調節した。直立の姿勢で腕を自然に下げ握力計が身体 や衣服に触れないようにして測定した。測定は各対象者

2

回ずつ行い、最大値 を記録した(Kimura et al. 2012)。

最大膝関節伸展力は、脚筋力測定器(片脚用筋力測定台;

T.K.K.5715

、テンシ ョンメーターD;

T.K.K.5710e、竹井機器工業株式会社製)を用いて測定した。椅

子座位にて膝関節屈曲角度は

90

度とした。対象者は腕を組んで体を固定し、計 測機器と接続するアタッチメントは外果上部に合わせた。軽く練習を行った後、

(21)

16

膝伸展による約

3

秒間の最大随意運動を実施した。ピークトルク(Nm)は、検 出された力(N)と、膝関節中心とアタッチメントを装着した外果の距離(m)

の積から算出した。測定は各対象者

2

回ずつ行い、最大値を記録した(Kimura et al.

2012)。

G. 統計処理

結果は平均±標準偏差で示した。すべての変数は視覚的にまたは正規性の検定 を行い、非正規分布の変数に関しては対数変換を行った。歩数と

MPA

時間の関 係にはピアソンの積率相関係数を用いた。PAパラメータと身体機能の独立関係 を評価するために、年齢、

BMI、体脂肪率で調整した偏相関分析を行った。さら

に、高い身体機能と

PA

の概算の閾値を評価するために、任意に対象者を四分位 に分類(Q1-Q4)した。分類位された全ての項目は

Q1

を最低分位、Q4 を最高 分位とした。解析には年齢、

BMI、体脂肪率で調整した共分散分析(ANCOVA)

を行い、事後検定に

Bonferroni

法を用いた。また、四分位に分類した各

PA

パラ メータと身体機能の関連を、Trend 検定を用いて検証した。有意水準は

5%未満

とした。

(22)

17

結果

表 1-1-1に対象者特性を示す。図

1-1-1

に歩数と

MPA

時間の関係を示す。歩数 と

MPA

時間は高い相関関係を示した(r = 0.906)。

図 1-1-2に年齢、

BMI、体脂肪率で調整した身体機能と身体活動量の偏相関分

析の結果を示す。膝伸展筋力は歩数と

MPA

時間と有意な正の相関関係を示した

(歩数, r = 0.167,

P < 0.05; MPA

時間, r = 0.208, P < 0.01, 歩数と

MPA

時間は対 数変換)。膝伸展筋力と歩数の偏相関係数(r = 0.180, P < 0.05)は、膝伸展トル クと

MPA

時間の偏相関係数(r = 0.225, P < 0.01)と有意差は認められなかった。

さらに最大歩行速度は、歩数(r = 0.211, P < 0.01, 対数変換)と MPA時間 (r =

0.213, P < 0.01,

対数変換)と有意な相関関係を示した。一方で、膝伸展筋力と

LPA

表 1-1-1 対象者の身体特性ならびに身体活動量

項目 平均 ±SD (最小 , 最大) 中央値 (Q1 , Q3)

N

年齢 73.7 ± 2.6 (70 , 79) 74 (71 , 76)

体重, kg 63.2 ± 8.4 (37.9 , 87) 62.7 (57.2 , 69) 身長, m 162.7 ± 5.2 (150.1 , 179.3) 163.1 (158.7 , 165.8)

BMI, kg/m2 23.9 ± 2.9 (13.3 , 31.2) 23.8 (21.9 , 25.9)

体脂肪率, % 30.1 ± 6.2 (11.9 , 46.9) 30.2 (27.1 , 34.3) 握力, kg 35.4 ± 5.3 (20.2 , 50.6) 35.6 (31.7 , 39.2) 膝伸展トルク, Nm/kg 2.35 ± 0.54 (1.28 , 3.73) 2.28 (1.94 , 2.71) 通常歩行速度, m/秒 1.34 ± 0.19 (0.77 , 1.76) 1.34 (1.22 , 1.46) 最大歩行速度, m/秒 1.91 ± 0.27 (1.11 , 2.85) 1.92 (1.73 , 2.07) 歩数, 歩/日 6,523 ± 3,797 (1,276 , 24,778) 5,878 (3,844 , 8,394) 不活動時間, 分/日 842.1 ± 129.8 (551.9 , 1161) 838.4 (747.0 , 919.6) 不活動時間の割合, %

LPA時間, 分/日 563.5 ± 125.4 (241.1 , 863.9) 559.9 (496.0 , 639.0) LPA時間の割合, %

MPA時間, 分/日 34.3 ± 27.0 (2.4 , 170.6) 28.6 (13.6 , 46.8)

MPA時間の割合, %

VPA時間, 分/日 0.1 ± 0.6 (0 , 6) 0.0 (0 , 0)

VPA時間の割合, %

BMI=Body mass index; LPA=低強度活動; MPA=中強度活動; VPA=高強度活動; SD=標準 偏差; Q1=第1四分位数; Q3=第3四分位数

178

(58.5) (39.1) (2.4) (0.01)

(23)

18

または

VPA

時間の間には有意な関連性は認められず、膝伸展筋力は不活動時間 と負の相関関係の傾向を示した(r = -0.147, P = 0.053, 対数変換)。通常歩行速度 と握力に関しては、いずれの

PA

パラメータとも有意な関連性は認められなかっ た。

1-1-1 3軸加速度計で推定したMPA時間と歩数の関係.

y = 0.0064x - 7.7468 r = 0.9057

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

MPA時間(分/日)

歩数(歩/日)

(24)

19 y = 0.22ln(x) + 0.46

r= 0.167 P= 0.028

1.0 2.0 3.0 4.0

0 10,000 20,000

膝伸展トルク(Nm/kg)

歩数(/)

y = 0.11ln(x) + 0.94 r= 0.211 P< 0.01

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0 10,000 20,000

最大歩行速度(m/)

歩数(歩/日) y = -0.0007x + 2.97

r= -0.147 P= 0.053

1.0 2.0 3.0 4.0

500 700 900 1,100

膝伸展トルク(Nm/kg)

不活動時間(分/日)

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

500 700 900 1,100

最大歩行速度(m/)

不活動時間(分/日) NS

1.0 2.0 3.0 4.0

0 500 1,000

膝伸展トルク(Nm/kg)

LPA時間 (分/日)

NS

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0 500 1,000

最大歩行速度(m/)

LPA時間(分/日)

NS

y = 0.17ln(x) + 1.80 r= 0.208 P< 0.01

1.0 2.0 3.0 4.0

0 50 100 150 200

膝伸展トルク(Nm/kg)

M PA時間 (分/日)

y = 0.074ln(x) + 1.67 r= 0.213 P< 0.01

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0 50 100 150 200

最大歩行速度(m/)

M PA時間(分/日)

1.0 2.0 3.0 4.0

0 2 4 6 8

膝伸展トルク(Nm/kg)

VPA時間 (/) NS

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0 2 4 6 8

最大歩行速度(m/)

VPA時間(/) NS

1-1-2 膝伸展トルクおよび最大歩行速度と歩数

,

各強度の活動 時間との関係

.

偏相関係数は年齢, BMI, 体脂肪率で調整した.

(25)

20

四分位分析のため、歩数と

MPA

時間を基準に対象者を四分位に分類し(表

1-1-2)

、年齢、BMI、体脂肪率で調整した

ANCOVA

による比較を行った。VPA

時間に関しては

178

名中

148

名の

VPA

時間が観察されなかったため、四分位に 分類することができなかった。歩数または

MPA

時間で分類した場合、Q4 の最 大歩行速度が

Q1

と比べ、有意に高値を示した(P < 0.05)。また、歩数も

MPA

時間も、膝伸展力と最大歩行速度と有意に関連した(P for trend < 0.05)。不活動 時間または

LPA

時間で分類した場合、いずれの身体機能とも関連を示さなかっ

N 最小 最大

歩数, /

Q1 44 1,276 3,750 34.8 ± 5.5 2.29 ± 0.57 1.32 ± 0.20 1.83 ± 0.27 Q2 44 3,797 5,847 35.1 ± 4.9 2.20 ± 0.46 1.35 ± 0.19 1.89 ± 0.29 Q3 45 5,910 8,394 35.2 ± 5.5 2.40 ± 0.47 1.34 ± 0.20 1.93 ± 0.25 Q4 45 8,424 24,778 36.4 ± 5.2 2.48 ± 0.57 1.35 ± 0.16 1.98 ± 0.23

不活動時間, /

Q1 44 551.9 742.8 34.9 ± 4.8 2.41 ± 0.51 1.33 ± 0.22 1.88 ± 0.26 Q2 44 747.0 833.1 36.4 ± 5.4 2.33 ± 0.54 1.34 ± 0.20 1.92 ± 0.33 Q3 45 834.7 919.4 34.6 ± 4.8 2.38 ± 0.58 1.36 ± 0.17 1.94 ± 0.24 Q4 45 919.6 1160.6 35.7 ± 6.0 2.27 ± 0.52 1.32 ± 0.16 1.89 ± 0.24

LPA時間, /

Q1 44 241.1 494.8 35.4 ± 5.8 2.28 ± 0.51 1.33 ± 0.18 1.91 ± 0.25 Q2 44 496.0 558.8 35.2 ± 5.4 2.35 ± 0.58 1.36 ± 0.15 1.92 ± 0.24 Q3 45 559.3 638.6 36.3 ± 5.3 2.40 ± 0.59 1.33 ± 0.21 1.90 ± 0.31 Q4 45 639.0 863.9 34.6 ± 4.6 2.35 ± 0.46 1.34 ± 0.21 1.90 ± 0.28

MPA時間, /

Q1 44 2.4 13.5 35.1 ± 6.2 2.25 ± 0.55 1.32 ± 0.19 1.82 ± 0.26 Q2 44 13.6 28.5 35.3 ± 4.6 2.31 ± 0.53 1.35 ± 0.19 1.90 ± 0.30 Q3 45 28.5 46.6 34.1 ± 5.3 2.31 ± 0.47 1.34 ± 0.19 1.92 ± 0.23 Q4 45 46.8 170.6 37.0 ± 4.9 2.51 ± 0.54 1.35 ± 0.18 1.99 ± 0.25

平均値 ± 標準偏差. 年齢, BMI, 体脂肪率で調整.

*P < 0.05 versus Q1.

P for trend 0.195 0.033 0.539 0.003

LPA=低強度活動; MPA=中強度活動; VPA=高強度活動; ; Q1=第1四分位数; Q2=第2四分位数; Q3=第3四分位 数; Q4=第4四分位数

P for trend 0.707 0.412 0.913 0.673

P for trend 0.869 0.311 0.910 0.857

P for trend 0.160 0.032 0.674 0.007

握力, kg 膝伸展トルク, Nm/kg

通常歩行 速度, m/秒

最大歩行 速度, m/秒

*

*

1-1-2 筋力ならびに歩行速度と身体活動量の四分位比較

(26)

21

た。

考察

本研究は、高齢男性において、歩数と

MPA

時間が、膝伸展筋力および最大歩 行速度と有意に関連することを示した。本研究は

DLW

法との妥当性が確認され た三軸加速度計を用いて地域高齢者の身体活動量を評価し、身体機能との関連 性を検討した最初の研究である。高齢男性にとって、日常の身体活動の強度は、

下肢筋力や歩行能力を維持する上で重要な一要因である。本研究では

MPA(3.0

~5.9METs)時間が長いことが、膝伸展力と最大歩行速度と関連することを示し た。しかし、これらの関連性は相関係数が、

0.175~0.225

と低く、日常の身体活 動量は筋力や歩行能力と強く関係するわけではないことを示唆する結果である。

歩数計や加速度計を用いた客観的な身体活動量と、身体機能の関連性を検討 した研究はいくつか報告されている(Gerdhem et al. 2008; Scott et al. 2009; Aoyagi

et al. 2009; Abe et al. 2012)。これらの研究は身体活動量と身体機能は正の関係が

あることを示唆している。Gerdhem らは、身体活動量と下肢筋力は関連せず、

歩行速度と有意な正の相関関係を示したことを報告している(Gerdhem et al.

2008)。この研究の対象者は 80

歳代の女性であった。Aoyagi らは日本人高齢者

を対象に一年間の加速度計による身体活動量と下肢筋力を含む身体機能の関連 を調査している(Aoyagi et al. 2009)。その結果、

MVPA

時間と下肢筋力の関係は、

女性では有意な相関関係があるが(

r = 0.24, 0.25

)男性ではその関連性がなかっ た。また、近年

Abe

らは、女性を対象に一軸加速度計で評価した

3METs

以上の 歩行活動が、膝伸展筋力とは関係せず、膝屈曲筋力と関連したと報告している。

さらに、この研究では、超音波法を用いて下肢の筋厚を測定しており、MVPA 時間は下腿部の筋厚とのみ関連し、大腿部では

MVPA

との関連性がないと報告 している(Abe et al. 2012)。

(27)

22

対照的に、本研究では、男性高齢者における膝伸展筋力と

MPA

時間に有意な 相関関係を示した(r = 0.225, P<0.05)。この要因として、身体活動量の測定に用 いた機器の違い一因として考えられる。これまでの加速度計法による身体活動 量の測定は一軸加速度計を用いている。一軸加速度計は垂直方向のみの動きを とらえており、水平方向の動きを検出することはできない。そのため、低強度 活動を過小評価していることが報告されている(Yamada et al. 2009b)。一方で本研 究ではより正確な三軸加速度計を用いた。その他の理由としては、本研究の対 象者数が多かったことが考えられる。

Hikihara

らは一軸加速度計(Lifecorder, LC)と、本研究で使用した三軸加速度

計(AM)の活動強度に関する妥当性について調査している。その結果、一軸加 速度計も

AM

も移動性の活動は実測値(Douglas bag method)と近似していたが、

非移動性の活動(家庭内活動など)を過小評価していた。特に

LC

20.3%~55.6%

と、AM(8.0%~19.4%)と比較して大きく過小評価していた。このような家庭 内活動に多くみられる非移動性の活動を評価するには、一軸加速度計よりも三 軸加速度計を用いる方が好ましいことが推察される。しかし、三軸加速度計で も各種メーカーのアルゴリズムの違いから、機器ごとに差異が生じることは常 に考慮しなくてはならない。本研究で用いた

AM

も、

Hikihara

らの報告によると、

非移動性の活動は実測値よりも過小評価していた。非移動性の低強度活動が多 い高齢者では、より正確に非移動性の身体活動量計測が可能なアルゴリズムを 持つ機器が必要といえる。AMを用いた本研究の身体活動量の結果と、LCを用

いた

Aoyagi

らの研究を比較すると、本研究で観察された高齢男性の平均

MVPA

時間は、

LC

により評価した先行研究と比較して平均歩数は少ないにも関わらず 多い(本研究

vs. Aoyagi et al.,

歩数

: 6,636±4,050 vs. 7,037±2,668

/

日、

MVPA

時 間: 35.1±29.5 vs. 18.8±13.0分/日)。この理由として、

LC

は階段昇降を除いて全て

(28)

23

の種類の活動(掃除機がけ、洗濯干し、皿洗い、小さな荷物を運ぶ、歩行、走 行)で

AM

に比べ過小評価する(Hikihara et al. 2012)ため、本研究の

MPA

時間は

LC

を用いた先行研究に比べ長かったと考える。さらに膝伸展筋力や最大歩行速 度の関連性も、

LC

を用いた先行研究(Aoyagi et al. 2009)よりも強い関連性がみら れる。この結果は、高齢者にとって移動性の活動だけでなく、非移動性の活動 も健康問題や機能維持に貢献する可能性を示唆するものである。

また、一軸加速度計で傾斜歩行時の活動強度を評価することは不可能である が、その一方で、三軸加速度計から検出される合成加速度は歩行時の傾斜角度 に比例して変化することが報告されている(Terrier et al. 2001; Yamazaki et al.

2009)。しかし、基本的には加速度計では傾斜歩行時の活動強度を推定すること

は困難であると考察されている。さらに本研究で用いた

AM

による傾斜歩行時 の身体活動量測定の妥当性については定かではないため、傾斜歩行時の活動強 度が何

METs

として算出されたかは不明である。本研究の調査地域(那珂川町)

は、緩やかな傾斜が多く、対象者によっては日常的に傾斜歩行を行っている可 能性は高い。この課題に関してさらなる研究が必要であると言える。

本研究はいくつかの限界がある。まずは横断研究であるため、因果関係につ いては証明できないため、長期縦断研究や無作為化比較試験が必要である。次 に、本研究で用いた三軸加速度計(AM)は、DLW を用いた妥当性が検証され たものであり、総エネルギー消費量の推定には優れているものの、活動強度別 の妥当性に関しては検討されていない。特に、非移動性の活動の誤差が大きい 為、これらの活動を考慮した分析が必要であるといえる。

結論として、本研究は、年齢、

BMI、体脂肪率での調整後、高齢者の身体活動

を比較的正確に評価可能な三軸加速度計で評価した

MPA

時間と最大歩行速度、

膝伸展筋力の間に有意な正の相関関係を示した。しかし両者の関連性は強くな

(29)

24

く、筋力低下予防としては、日常の身体活動増加に加え、筋力増強を目的とし た運動も必要である可能性が示唆された。

(30)

25

第2節 身体活動量と骨格筋量の関係 緒言

前節では三軸加速度計を用いた客観的な身体活動量と、筋力、歩行能力の関 係性を明らかにした。第2節では、同様の三軸加速度計を用いた身体活動量と、

サルコペニアの関係を検討する。加齢に伴う筋萎縮をサルコペニアと呼ぶが、

サルコペニア予防として、積極的な運動や身体活動の増加が有効であると考え られる。近年、客観的な手法を用いた身体活動量の測定法を用いて、日常の身 体活動量が高齢者の筋量維持に貢献するかについて研究が行われている。

Manini

らは

DLW

法を用いて高齢者のエネルギー消費量と、除脂肪量と関係を調査した。

その結果、横断的にはエネルギー消費量の高い高齢者は、高い除脂肪量を有し ていたが、長期的な加齢に伴う身体組成の変化と、エネルギー消費量は必ずし も関係しないことが報告されている(Manini et al. 2009)。一方で日常の活動強度 を加速度計を用いて評価し、DXAで測定した四肢の筋量指標との関連性を調査 した研究(Park et al. 2010)によると、MPA時間は下肢の筋量と正の相関関係にあ ることが示され、サルコペニア予防として、日常の身体活動の強度が重要であ ることが示唆されている。

サルコペニアは高齢者の筋力低下の主要因であり、筋力の低下は日常生活活 動(activities of daily living, ADL)を制限する。そのため、高齢期の筋量が身体 機能障害や死亡率を予測する因子であることが報告されている

(Janssen 2006;

Volpato et al. 2004)。 1

一方で他の研究では筋量が身体機能障害や死亡率とあまり

強く関係しないことが報告されている

(Visser et al. 2000; Newman et al. 2006)

。さ らに、高齢者の

DXA

法による下肢筋量と下肢筋力を毎年測定し、経年的変化を 調査した研究の結果によると、筋力が低下したグループとそうでないグループ の筋量の変化はどの集団もほぼ同様の加齢変化を示していたことが報告されて

(31)

26

いる(Clark and Manini 2008)。筋力の規定因子は筋量だけではないため、筋量と 筋力の変化は必ずしも同時並行で起こらないことが考えられるが、これまでの 高齢者の筋量評価には

CT

MRI、DXA

といった画像法による測定が行われて いる。

骨格筋は生体中では大量の水分を保持している。この水分は細胞内区画と細 胞外区画に分布しており、それぞれを細胞内液量(intracellular water, ICW)と細 胞外液量(extracellular water, ECW)と呼ぶ。骨格筋の収縮要素は

ICW

であり、

ECW

は筋力と関係しない非収縮要素である。近年、部位別多周波生体電気イン ピーダンス法が(segmental bioelectrical impedance spectroscopy, S-BIS)開発され

ICW

ECW

を定量化することが可能となった。Yamadaらは

S-BIS

を用いてヒ トの骨格筋における

ICW

ECW

の加齢変化ならびに筋力や筋パワーとの関連 性を調査している(Yamada et al. 2009a; Yamada et al. 2010)。その結果、ICWが加 齢に伴い顕著に低下し、ECW は変わらず相対的(ECW/TW)に増加しており、

ECW

を含めた骨格筋量の評価は、真の筋細胞量を評価できていない可能性を示 唆している。つまり従来の画像法は非収縮要素である

ECW

も含めた骨格筋量の 評価指標であり、特に相対的に

ECW

が増加した高齢者では、これらの影響を除 いた筋量評価を行うことが望ましいと考える。

本研究は

S-BIS

を用いて骨格筋量を定量化し、サルコペニアと三軸加速度計

による身体活動量の関連性を横断的に調査することを目的とした。

方法

A. 対象者

地域在住高齢男女

1,072

名を対象とした。

6

か月以内に重篤な心疾患、脳梗塞、

糖尿病の合併症、急性の関節痛や神経障害があった者は、対象から除外した。

(32)

27

全対象者のうち、身体活動量、身体機能、身体組成のデータが全て揃い、質問 紙にて「400m歩く」または「休まず階段を昇れる」ことが「困難でない」と回 答した者を解析対象とした。解析対象者は

65~88

歳の男性

325

名、女性

341

名 であった。全ての対象者に対して、本研究の方法、危険性について口頭で説明 し、理解を得た後、自発的な意思により同意書に署名を得た。本研究は福岡大 学研究倫理審査委員会により承認を得て実施された。

B. 調査期間

2011

6

月から

2012

2

月までの間に実施された。

C. 調査地域

福岡県筑紫郡那珂川町にて調査を行った。那珂川町は総人口

49,872

名(男性

24,324

名、女性

25,547

名)65歳以上の人口は、男性

3933

名、女性

4939

名、高

齢化率は

17.8%である(平成 25

3

31

日現在, 年齢別男女別人口調, 福岡県

筑紫郡那珂川町)。福岡市の西南部に隣接しており、福岡市に近い平地部ではベ ッドタウンとして都市化が進行しているが、他の地域は山地となっている。

D. 形態・身体組成

体重はデジタルスケールを用いて

0.1

㎏単位で記録した。身長は

0.1

㎝単位で 測定した。多周波法に基づく体組成の測定には、部位別多周波生体電気インピ ーダンス(

S-MBIA

)装置(

Yamada et al. 2010

を改良したもの、京都製)を用い た。同機器は

2

種類の誘導法(遠位誘導法、近位誘導法)によって各部位の区 間抵抗値を算出できる。測定は電気抵抗に影響のない布製マットの上で、仰臥 位良肢位にて行った。この姿勢による

10

分の安静後に

2

回(遠位誘導法と近位

(33)

28

誘導法)測定した。先行研究にならい(Bartok and Schoeller. 2004; Yamada et al.

2010)

、多周波法に基づく生体電気インピーダンス法により出力された抵抗値か

ら、各部位(上腕、前腕、大腿部、下腿部)の除脂肪量、総水分量(Total water:

TW)指標、細胞内液量(Intracellular water: ICW)指標、細胞外液量(Extracellular water: ECW)指標を算出した。本研究で用いた機器とは異なるが、生体電気イ

ンピーダンス法で測定した当該区間の抵抗値と、MRI を用いて測定した各筋体 積が相関係数

0.9

以上の直線関係にあることが報告されている(Miyatani et al。

2001)

。その中でも

ICW

指標は、骨格筋組織中の細胞外液を除いた筋細胞量に

関連し、筋力をよく反映した指標であることが報告されている(Yamada et al.

2010)

。本研究では

ICW

を骨格筋量指標とした。

E. 身体機能の測定

握力、膝伸展トルク、歩行速度に関して、前述(第

1

章 第

1

節)と同様の 方法で実施した。

複合的な移動能力の指標として、

Timed up & Go

テスト(TUG)を行った。椅 子から立ち上がり、3m先の目印をできるだけ速く歩いて折り返し、再び椅子に 戻って座るまでの時間を計測した。

脚力並びに敏捷性の指標として

5

回椅子立ち上がりテスト(チェアスタンド)

を行った。座位姿勢から開始し、膝関節がまっすぐ伸びるまできちんと立ち上 がり、再び椅子に座る、もしくは臀部を椅子に接触させる動作を

5

回繰り返し た時の時間を計測した。測定時は浅めに座り、歩隔を肩幅程度に広げさせ、腕 を組んだ姿勢で行わせた。膝が伸びてない場合や屈曲時に椅子に接触していな い場合は再度計測を実施した。

下肢の脚パワーの指標として垂直跳びを行った。デジタル垂直跳び測定器(ジ

(34)

29

ャンプ-MD,

T.K.K.5406,竹井機器工業株式会社製)を用い、腰部に測定器をと

りつけ、直立姿勢にて助走をつけず、また腰部に手をおき上肢の反動を利用せ ずに跳躍を行った。

バランス能力の指標には開眼片足立ちテストを行った。対象者は両手を腰に 置き、開始の合図でどちらかの足を地面から離し、バランスをとるように教示 した。浮かした足が地面に着いた場合や、支持脚側に触れた場合、また手が腰 から離れた時点で終了とした。最大

2

分間まで計測し、最初の測定が

30

秒以下 の場合は

2

回測定し、最大値を記録した。

F. 身体活動量の測定

身体活動量(Physical activity: PA)の測定には、三軸加速度計(Actimarker

EW4800, Panasonic

社製)を使用した。対象者には

10

日間腰部に装着し、入浴や

プールなどの水没する可能性がある場合以外は、24 時間装着するように教示し た。解析に用いたデータは、配布の前後一日を除く

8

日間とした。採用データ は

10

時間以上の装着が得られた日のデータを採用とした。最低採用日数は

4

日 とし、4日以上のデータがあった対象者のデータを採用した。本研究に用いた

3

軸加速度計は、上下方向、左右方向、前後方向の加速度を

20Hz

で検出し、1分 間の平均合成加速度が算出される。酸素摂取量と合成加速度の回帰式から算出 された

1

分ごとの

METs

をデータに用いた。本研究では強度別に、

Light

~2.9METs, LPA)

、Moderate(3.0~5.9METs, MPA)、Vigorous(6.0~METs, VPA)に分類し、

各強度に要した時間を算出した。また、歩数、

PAL

Physical activity level

)を評 価に用いた。

G. サルコペニアの抽出

(35)

30

サルコペニアの基準には、ヨーロッパ老年医学会の提唱する基準を用い、骨 格筋量の減少を必須項目とし、握力または歩行速度の両方もしくは一つ当ては まる場合をサルコペニアと定義した(Cruz-Jentoft et al. 2010)。骨格筋量の指標と

しては、

S-BIS

により測定した、四肢の骨格筋量指標を体重で除した値を用いた。

本研究での骨格筋量減少のカットオフは、18~39 歳の若年者のサンプル(男性

91

名、女性

54

名)から

2

標準偏差以下と定義した。なお、握力のカットオフは 男女それぞれ

30

㎏以下、

20

㎏以下とし(Lauretani et al. 2003)、歩行速度のカット オフ基準は通常歩行速度が男女ともに

1.0m/秒以下とした(Morley et al. 2011)。

H. 統計処理

結果は平均±標準偏差で示した。前期高齢者(65~74 歳)と後期高齢者(75 歳~)の比較には対応なしの

t-test,

χ²-testを用いた。サルコペニアに該当する 対象者(以下サルコペニア群)と該当しない対象者(以下非サルコペニア)の 比較には年齢を調整因子とした共分散分析を用いた。また、身体活動量低下に よるサルコペニア発症のリスクを分析するために、ロジスティック回帰分析を 行った。従属変数はサルコペニアの有無とし、強制投入法により四分位に分類 した身体活動量(歩数、不活動時間、MPA 時間)と年齢を独立変数とした。有

意水準は

5%未満とした。

結果

1-2-1

に対象者の基本特性について、男女それぞれ前期高齢者と後期高齢者

に分類した結果を示す。女性では自己健康感が「良い」と回答した割合が、前 期高齢者に比べて後期高齢者の方が高値を示した(

P<0.05

)。喫煙率や体の痛み に関しては有意差が認められなかった。

(36)

31

表 1-2-2 に身体特性と身体活動量の結果を示す。身体活動量を前期高齢者と 後期高齢者を比較すると、男女ともに不活動時間や

LPA

時間が後期高齢者では 増加し、歩数や

MPA

時間が有意に減少していた(P<0.05)。

表 1-2-3に対象者の身体機能の結果について示す。通常歩行速度を除くすべて の項目において、前期高齢者に比べて後期高齢者では低値を示した(P<0.01)。

表 1-2-1 対象者の基本特性 項目

N

年齢, 平均値±SD

69.0 ± 2.6 78.6 ± 3.6 69.3 ± 2.6 78.4 ± 3.2

喫煙, n (%)

 今までなし  今も吸っている  以前吸っていた 自己健康感, n (%)  非常に良い  とても良い  良い

 あまり良くない  良くない

最近1か月での体の痛み, n (%)  全身のどこか

 膝

男性

65-74歳 75-88歳

女性

65-74歳 75-88歳

27 (11.4) 3 (1.3) 115 (48.7)

236

61 (25.8) 30 (12.7) 145 (61.4)

5 (2.1) 36 (15.3)

163 (69.1) 182 (69.5)

262 79

24 (27.0) 3 (3.4) 62 (69.7)

2 (2.2) 88

10 (11.2) 56 (62.9)

32 (12.2) 4 (1.5) 16 (6.1)

6 (2.3) 239 (91.2)

64 (81)

46 (51.7) 126 (48.1) 42 (16) 20 (22.5)

1 (1.1)

1 (1.3) 5 (6.3) 0 (0) 4 (5.1)

38(16.1) 17 (19.1) 50 (19.1) 18 (22.8) 11 (13.9)

58 (73.4) 71 (89.9)

P

< 0.05, 65-74歳 vs. 75-88歳 (χ²-test)

**P < 0.01, 65-74歳 vs. 75-88歳 (t-test)

**

**

(37)

32

サルコペニア基準に用いた測定項目の度数分布を図

1-2-1

に示す。定めたカッ トオフからサルコペニアに該当したのは男性

324

名中

55

名(17.0%)、女性

341

名中

84

名(

24.6%

)であった。各測定項目別にサルコペニアの有症率を算出す

ると、筋量の該当者は男性

66.7%女性 78.6%、握力は男性 17.6%女性 26.8%、歩

行の該当者は男性

4.9%

女性

4.4%

であった(図

1-2-2

)。サルコペニア群と非サル

1-2-2 対象者の身体特性・身体活動量

項目

BMI (kg/m2) 23.7 ± 2.6 23.9 ± 2.9 23.0 ± 3.1 22.1 ± 2.9 腹囲 (cm) 86.8 ± 7.6 87.7 ± 8.3 86.3 ± 8.9 85.5 ± 9.0 大腿部周囲径 (cm) 50.6 ± 3.0 49.4 ± 3.8 50.7 ± 4.1 48.2 ± 3.9 除脂肪体重 (kg) 44.2 ± 4.7 43.0 ± 5.5 31.7 ± 2.9 30.8 ± 2.7 体脂肪率 (%) 29.9 ± 5.8 29.7 ± 7.1 38.9 ± 6.0 36.7 ± 6.6

大腿筋量 (kg) 4.2 ± 0.7 3.7 ± 0.8 2.5 ± 0.4 2.2 ± 0.4

歩数 (/) 7607 ± 3902 5759 ± 3571 6462 ± 2827 4940 ± 2269 不活動時間 (/) 827 ± 133.0 865 ± 134 745 ± 124 795 ± 129 LPA時間 (/) 165.8 ± 59.2 149.5 ± 54.6 208.0 ± 60.1 185.5 ± 58.2 MPA時間 (/) 40.4 ± 26.6 28.2 ± 28.6 35.8 ± 22.1 25.9 ± 23.3 VPA時間 (/) 0.77 ± 3.29 0.10 ± 0.45 0.06 ± 0.23 0.00 ± 0.02

BMI: Body mass index;

LPA: Light physical activity: MPA: Moderate physical activity; VPA: Vigorous physical activity

男性 女性

65-74歳 75-88歳 65-74歳 75-88歳

* P< 0.05, **P< 0.01, 65-74歳vs. 75-88歳(t-test)

*

*

**

**

*

**

*

**

**

**

**

*

**

**

**

**

*

表 1-2-3 対象者の身体機能特性 項目

握力 (kg)

36.9 ± 5.4 33.9 ± 5.5 23.6 ± 4.1 22.1 ± 4.0

膝伸展トルク (Nm/kg)

26.5 ± 6.2 21.9 ± 5.0 18.5 ± 5.1 17.0 ± 3.9

TUG ()

6.8 ± 1.2 7.5 ± 1.4 6.9 ± 1.1 7.7 ± 1.5

チェアスタンド (秒)

7.6 ± 1.7 8.9 ± 2.3 7.7 ± 1.9 8.8 ± 2.6

開眼片足立ち (秒)

64.1 ± 42.2 32.6 ± 33.2 62.9 ± 41.5 35.5 ± 34.6

垂直跳び (cm)

25.3 ± 6.0 19.7 ± 5.4 18.3 ± 3.8 15.0 ± 3.8

通常歩行速度 (m/秒)

1.4 ± 0.2 1.3 ± 0.2 1.4 ± 0.2 1.3 ± 0.2

最大歩行速度 (m/秒)

1.6 ± 0.2 1.5 ± 0.2 1.6 ± 0.2 1.5 ± 0.2

TUG: Timed up & Go

女性

65-74歳 75-88歳 65-74歳 75-88歳

男性

**

**

**

**

**

**

**

**

**

**

**

**

**

* P < 0.05, **P < 0.01, 65-74

vs. 75-88

歳(

t-test

**

(38)

33

コペニア群の基本特性を表

1-2-4、

身体特性ならびに身体活動量の 比較結果を表

1-2-5

に示す。身体 活動量を比較すると、男性におい て、非サルコペニア群に比べて、

サルコペニア群の不活動時間が 長く(P<0.05)、歩数が有意に少な く(P<0.05)と

MPA

時間が有意に 短かった(P<0.05)。一方、女性に おいてはいずれの身体活動量の 項目とも有意差を認めなかった。

男性において、群間差が認めら れた歩数、不活動時間、

MPA

時間 をそれぞれ四分位に分類し、サル コペニアを有するオッズ比をロ ジスティック回帰分析により算 出した(図

1-2-3)

。歩数に関して は、一日約

9000

歩以上の

Q4

のサ ルコペニア発症リスクは、約

4000

歩以下の

Q1

0.35

倍になることが示された(95%CI: 0.12-0.96)。不活動時間で は、統計的な有意差は認められなかった。また、

MPA

時間では、

16

分から

30

分程度の

Q2

または

50

分以上の

Q4

のサルコペニア発症リスクは、Q1のそれぞ れ

0.25

倍 (

95%CI: 0.10-0.64

)、

0.39

倍 (

95%CI: 0.17-0.92

) と な っ た 。

0 10 20 30 40 50 60 70

50 60 70 80 90 100110120130140150160

人数

骨格筋量指標(ml/kg)

男性 女性

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 2

人数

通常歩行速度(m/秒)

男性 女性 0

10 20 30 40 50 60 70 80 90

8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52

人数

握力(kg)

男性 女性

図 1-2-1 サルコペニア基準項目の度数分布

参照

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