―修士論文―
構造可変型ロボットに対しての制御アルゴリズム の拡張に関する研究
Expansion of Control Algorithm for Reconfigurable Robots
平成23年度
地域イノベーション学研究科 地域イノベーション学専攻
北村 政仁
第
1
章 緒言1
1.1
研究背景と目的. . . . 1
1.2
論文の構成. . . . 2
第
2
章 構造可変型ロボットについて3 2.1
構造可変型ロボットの構造. . . . 3
2.2
構造可変型ロボットの情報通信. . . . 4
2.3
無接触伝送. . . . 5
第
3
章 構造可変型ロボットの制御アルゴリズム6 3.1
構造可変型ロボットの位置制御. . . . 6
3.2
分散知能. . . . 7
3.2.1
多自由度ロボットにおける動力学. . . . 7
3.2.2
外乱オブザーバ. . . . 7
3.2.3
係数図法. . . . 9
3.2.4
分散知能の制御アルゴリズムの構築. . . . 10
3.3
中央制御部の構築. . . . 13
3.3.1
逆運動学. . . . 13
3.3.2
仮想位置伝播アルゴリズム(VPTA) . . . . 14
3.3.3
順運動学. . . . 15
3.3.4
作業空間オブザーバの設計. . . . 17
第
4
章 位置・力制御切り替えアルゴリズム18 4.1
インピーダンス制御. . . . 18
4.2
構造可変型ロボットの力制御. . . . 19
4.3
制御モードの切替え. . . . 20
5.2
位置・力制御切り替えアルゴリズムの有効性の確認. . . . 22 5.3
結果. . . . 23
第6
章 伝送遅延を考慮した制御アルゴリズムへの拡張25 6.1
構造可変型ロボットにおける伝送遅延. . . . 25 6.2
通信外乱オブザーバ. . . . 28 6.3
制御アルゴリズムへの適応. . . . 31
第
7
章 シミュレーション33
7.1
シミュレーション条件・指令. . . . 33 7.2
結果. . . . 34
第
8
章 まとめと今後の課題37
8.1
まとめ. . . . 37 8.2
今後の課題. . . . 38
参考文献
39
1.1 研究背景と目的
従来,工場の自動化は低コスト化を目的とし,同じ製品を大量に生産する「小品種 多量生産」を対象として行われてきた。しかし,近年ではあらゆる面での多様化が進 んでおり,その多様化に伴い産業界においても従来の方法である「小品種多量生産」か ら社会のニーズに合わせて生産する「多品種少量生産」に作業形態の移行が余儀なく されている。現在の多新種少量生産の対応としては,複数のロボットによって作業を 細かく変更,汎用性の高い多自由度のロボットの導入,それでも対応が困難な場合は,
人が担当することにより生産ラインを柔軟にするといったことで対応している。しか しながら,複数のロボット,また汎用性の高いロボットの導入や生産ラインに人の手 を使うことは,コストの面,作業効率の面などで問題がある。また,従来のロボット に故障が発生した場合,生産ライン全体が停止する可能性があり生産作業に重大な影 響を及ぼしかねないといった問題もある。そこで我々研究グループでは,より柔軟に 多品種少量生産に対応するために手先だけでなく,すべての軸が状況に応じて組替え が可能な構造可変型ロボットを提案している。構造可変型ロボットは,すべての軸を 組替え可能にすることで,作業に応じて軸の数や種類を変更でき,より多様な作業を 実現できる。また,故障した場合は,故障した軸を交換する事で対応できるため,対 故障性にすぐれ,生産ラインの停止といった状況を免れることができる。
これらの機能を備えた構造可変型ロボットを考える上で,構造の変更に適したロボッ トの機構や,それに応じた制御系についても考える必要性がある。ロボットの機構を 説明すると,提案する構造可変型ロボットは,中央制御部とモジュールと呼ばれる組 替え可能な最小の構成要素から成り立っている。モジュール間では,情報と電力の無 接触伝送を実現し,組替えに対して適しているだけでなく,有線での磨耗や動作範囲 の制約といったことも解決できる。そして,モジュールに分散知能を装備させることで 中央制御部において自動認識でき,組替えを迅速に行う。また,中央制御部と分散知能 を用いた分散制御を行う事で従来型ロボットに比べ計算負荷を分散することが可能で ある。また構造可変型ロボットがこれらの機構を有すると,作業の変更に対しての制
御系についても柔軟に対応しなければならない。そこで先行研究では,中央制御部に おいてヤコビ行列を用いない逆運動学である仮想速度伝播アルゴリズム
(VVTA)
や仮 想位置伝播アルゴリズム(VPTA)
が考案され,分散知能においては,構造の変化に対 して代数的にコントローラパラメータを算出する係数図法を用いることにより組替え に適したアルゴリズムが提案されている。[1][2]私は,本論文において大きく分けて二つの研究を示す。まず一つ目の取り組みは,構 造可変型ロボットに対しては,前任者の片岡氏の研究より逆運動学に仮想位置伝播ア ルゴリズム
(VPTA)
を用いた位置ベースでの軌道制御が確立されている。また,その アルゴリズムに力制御を付加し,各制御モード切り替えスイッチを付加することで作 業環境に適した制御が可能とした位置ベースでの位置・力制御切り替えアルゴリズム を提案されている。しかし前任者の研究ではこのアルゴリズムに関して,シミュレー ションで有効性の確認は行われているが,実機検証が行われていない。[2]そこで構造 可変型ロボットを模擬した3
自由度マニピュレータを用いて実装することにより,構 造可変型ロボットに適した位置ベースの位置・力制御切り替えアルゴリズムの有効性 を確認する。そして二つ目は,中央制御部と各モジュールの分散知能の間での伝送遅 延の問題に焦点を当て,伝送遅延を考慮した場合の構造可変型ロボットのモデルにお ける制御アルゴリズムの構築に関して提案する。1.2 論文の構成
2
章において構造可変型ロボットの構造について詳しく説明する。そして,中央制 御部と分散知能において,通信を行うことで分散制御の実現について簡単に説明する。また,電力と情報の無接触伝送の原理について説明する。
3
章において,構造可変型ロ ボットの制御系について示し,組替えについて柔軟に対応することを示す。また,各 分散知能と中央制御部の制御系の説明を行う。4
章では提案する位置・力制御切り替え アルゴリズムに構成している力制御について説明する。また位置制御モードと力制御 モードの切り替え条件について説明を行う。5章では実機検証を行い,位置・力制御切 り替えアルゴリズムの有効性の実現について検証を行う。6
章においては,伝送遅延を 考慮した制御アルゴリズムの提案を示す。そして,7章においてシミュレーションによ り提案するアルゴリズムの有効性を示す。8
章では本論文のまとめと今後の課題につい て述べ結びとする。2.1 構造可変型ロボットの構造
図
2.1:
構造可変型ロボット従来型ロボットは中央制御部において手先位置の指令に対して,逆運動学を解き一 括して各軸のアクチュエータへの指令を生成し,各軸のエンコーダ情報から順運動学 を解きロボットの手先位置を認識し,指令に対してフィードバックすることを行って いた.そのため,計算負荷の集中といった問題がある.また,物理的な問題として,一 つの軸に対し指令情報用とエンコーダ情報用のケーブルが必要となり,中央制御部の 情報線が集まり複雑になる.そして,各アクチュエータに対して電力ケーブルも必要 となりロボット全体の配線が煩雑になる.そのため,ケーブルにおける動作範囲の制 約や磨耗における故障の原因になる可能性が高い。
それに対して,構造可変型ロボットは図
2.1
のように中央制御部(Central Intelligence)
と組替え可能な複数のモジュールから成り立っている。各モジュール間では非接触伝 送によって電力と情報の伝送が可能であることを想定しているため,状況に応じての組替えが可能な構造となっている。各モジュールには分散知能
(Local Intelligence)
が 存在し,それぞれモジュールの物理パラメータを保持している。組替えの際に中央制 御部にそのパラメータを送信することで中央制御部は各モジュールを認識することが できる。また,組替え時に適切なコントローラ設計を自律的に行い,各アクチュエー タの角度制御を行うことで構造の変化に対応する。中央制御部では,すべての分散知 能を統括することによりロボット全体の制御を実現している。そして,状況に応じて 位置と力制御の切替えを行うことで環境の変化に柔軟に対応することができる。この ように計算を中央制御部と分散知能に分けることで計算負荷の集中を回避できるとい う構造となっている。2.2 構造可変型ロボットの情報通信
組替えに対して柔軟に対応するため,分散知能ではそれぞれの物理パラメータを保 持している。組替え後に図
2.2
の黒矢印のようにID
や物理パラメータを送信する。そ して,中央制御部ではどのようなモジュールが接続されているかを自動認識を行い,そ して各軸における適切なノミナル慣性を算出し,分散知能に送信する。分散知能はノ ミナル慣性を用いてコントローラパラメータの調整を行う。Local Intelligence 1 Local Intelligence 2 Local Intelligence k Central Intelligence
Physical Parameter Nominal Inertia
ID Reference
Response
図
2.2:
中央制御部と分散知能における情報通信そして,制御を行う際は白矢印のように,中央制御部では逆運動学を解き,各軸への 指令を生成し分散知能に送信する。分散知能では指令を追従するようにアクチュエー タを制御し,その結果を中央制御部に送信する。そして中央制御部では順運動学を解 き,現在の手先位置を求めフィードバックする.そして分散制御を実現する。
2.3 無接触伝送
構造可変型ロボットにおいて,情報と電力の無接触伝送について説明する。電力は 図
2.3
に示すようにトランスとインバータとコンバータを用いる事で実現する。物理的 に接続していないが,電気的に接続できているため,電力を一次側(中央制御部)
から二次側
(各分散知能)
に伝送することが可能である。図
2.3:
電力の無接触伝送情報伝送では,電力伝送に重畳させて伝送する方式と電力伝送の内側に図
2.4
のよう に銅線を配置する事,内側と外側で磁界が打ち消しあい,電力伝送と独立して情報を 伝送する方式がある。図
2.4:
情報伝送用アンテナまた,無接触伝送であるので組替えに対してコネクタ接続のような磨耗や劣化といっ たことは発生しにくい。電力効率では,適切な共振コンデンサを付加する事で,イン バータのスイッチング周波数と同じ周波数において漏れインダクタンスと共振させ,高 効率で電力伝送を行うことができる。
ゴリズム
本研究においては,中央制御部では位置制御系を用いて作業空間における位置制御 と力制御を実現する。そのため,関節空間において位置制御系を構築する必要がある。
3.1 構造可変型ロボットの位置制御
図
3.1:
構造可変型ロボットのブロック線図構造可変型ロボットに構成される中央制御部と分散知能の制御系の構成について説 明する。図
3.1
のブロック線図では,位置指令値x ref
を逆運動学である仮想位置伝播 アルゴリズム(VPTA)
により各関節の分散知能への位置指令θ ref
に変換する。そして ロボットからの角度応答を順運動学を用いて手先の位置応答に変換することにより位 置ベースでロボットの軌道制御が可能となる。また作業空間オブザーバを付加するこ とにより位置偏差を補償する。次節よりそれぞれの説明をする。3.2 分散知能
構造可変型ロボットにおいての分散制御を構築する際,多自由度ロボットにおける 動力学方程式を導出する。
3.2.1
多自由度ロボットにおける動力学一般的な多自由度ロボットにおける動力学方程式は
(3.1)
式となる。τ = J (θ)¨ θ + h(θ, θ) + ˙ g(θ) (3.1)
ここでJ (θ)
は慣性項,h(θ, θ) ˙
は遠心コリオリ力,粘性,クーロン摩擦力などを表わ す項,g(θ)
は重力項を表わす。またτ
は関節トルクである。基本的に(3.1)
式より最 適な関節トルクを算出し,最適なコントローラの調整をすれば多自由度ロボットの制 御は可能であるが,一般に各関節は他の関節からの干渉や,摩擦などの非線形要素の 影響を受けるため,実際に複雑な動力学モデルとなる。従来のロボットの制御器はそ のロボットの構造に特化した調整ができれば問題ないが,構造可変型ロボットでは組 替えが考えられ運動方程式は変化する。このとき当然ながら各関節の最適な速度制御 器も変化し,調整が必要となる。そこで本研究では外乱オブザーバにより各関節モデ ルをノミナル化し,代数的に設計を行うことができる係数図法を適用することで,こ の問題に対応することを提案する。3.2.2
外乱オブザーバ外乱オブザーバについて簡単に説明する。いまある軸の運動方程式を次式とおく。
J q ¨ + τ l = τ cmd (3.2)
ここで,
J
はモータ慣性モーメント,アームの慣性モーメントの和であり,τ l
は負荷 トルク( τ int :遠心力,コリオリ力のような内部干渉力, D q ˙ :粘性摩擦, F :クーロン
摩擦,τ ext
接触作業などのように外部から受ける力),またτ cmd
はモータが発生する トルクを表す。さらにロボットを扱うので慣性変動を考える。慣性モーメントJ
をノ ミナル値J n
とそれ以外∆J
に分け,(3.2)式へ代入すると次の式を得る。J n q ¨ = τ cmd − (τ l + ∆J q) ¨ (3.3)
= τ cmd − (τ int + τ ext + D q ˙ + F + ∆J q) ¨ (3.4)
これらの関係を図示すると図
3.2
のようになる。右辺第2
項をまとめて外乱τ dis
とし て定義すると,τ dis = τ l + ∆J q ¨ (3.5)
= τ int + τ ext + D q ˙ + F + (J − J n )¨ q (3.6)
となる。(3.5),(3.6)式より次式を得る。J n q ¨ = τ cmd − τ dis (3.7)
J n
はノミナル慣性であり,τ cmd
はトルク指令値,q ¨
はセンサ情報から計算できるた め,これらの数値を代入することで外乱トルクτ dis
を推定することができる。実際に はセンサ情報にはノイズが加わるのでローパスフィルタを通したものを用いる。ˆ
τ dis = g f
s + g f τ dis (3.8)
ここで
g f
はローパスフィルタのカットオフ周波数である。推定されたτ ˆ dis
とτ dis
が 相殺するようにトルク入力に付加することで外乱抑圧特性が向上する。カットオフ周 波数以内はτ dis = ˆ τ dis
とすることができるので,図3.2
は等価的に図3.3
のようにみる ことができる。このようにしてロボットに生じる慣性変動などの影響をカットオフ周 波数以内では抑えられ,ロボットの姿勢によらずJ n
に固定されているとみることがで きる。外乱オブザーバを各モジュールの分散知能に備えることによって,組替え時の速度 制御系の設計問題を簡単に扱うことができる。組替え時中央制御部は各モジュールか らリンク長,重心位置,質量などの物理パラメータを収集する。中央制御部は簡単な 計算によって各モジュールのノミナル慣性モーメントを決定する。このようにしてマ ニピュレータの複雑な動力学モデル計算,制御設計を回避し,次節に述べる速度制御 器設計に係数図法を用いることで簡便な制御アルゴリズムを構成することを考える。
図
3.2:
外乱オブザーバ図
3.3: 3.2
と等価なブロック図3.2.3
係数図法係数図法は,パラメータ空間上での代数的設計法であり,閉ループ伝達関数の分母 多項式のパラメータから安定性に関係する安定度指標
γ
や整定時間に関係する等価時 定数τ
を算出することができる。安定度指標
γ
や等価時定数τ
は,伝達関数G(s)
が(3.9)
式で与えられた際,(3.10),(3.11)
式のようにそれぞれ求める。G(s) = N (s)
D(s) = b m s m + b m − 1 s m − 1 + · · · b 1 s + b 0
a n s n + a n − 1 s n − 1 + · · · a 1 s + a 0 (n ≥ m) (3.9)
Tcmd
+ : + '
fdis
Td i 8
γ i = a 2 i
a i+1 a i − 1 (i = 1 ∼ n − 1) (3.10) τ = a 1
a 0 (3.11)
ここで,τ は整定時間に関係するパラメータであり
2.5τ
〜3.5τ で整定することが知ら れており,設計者が指定することが可能である。γ
は安定性に関係するパラメータであ り,安定度指標の与え方の指針として標準形があり,γn − 1 ∼ γ 2 = 2, γ 1 = 2.5
が良い値 であることが知られている。コントローラ設計では標準形になるようにパラメータを 調節することで,優れた特性を得ることが可能である。3.2.4
分散知能の制御アルゴリズムの構築図
3.4:
分散知能における制御系今回,分散知能において位置制御アルゴリズムを構成するには,速度制御系におい てコントローラパラメータを求め,そのパラメータを用いて再び位置制御系に係数図 法を適用するようにする。そこで図
3.4
のような速度制御系の構成を行う。速度制御系 では,外乱オブザーバを用いる事で,リンク間における非干渉化を実現し,ロボット の姿勢変化における慣性変動も補償している。分散知能において,アクチュエータを制御を行うとともに組替え時に性能が劣化し ないように,適切なコントローラ設計を行わなければならない。今回速度コントロー ラとして分散知能において組替え後の自立的なコントローラ設計を行い,また低次に
するためコントローラの形は簡単な構造である
PI
コントローラを用いる。これにより 速度制御系全体の伝達関数は以下のように得られる。θ ˙ res k θ ˙ ref k
= K p k s + K i k J n k s 2 + K p k s + K i k
(3.12)
そして,係数図法を式に適用する事で安定度指標
γ 1
や等価時定数τ v
は次のようになる。γ 1 = K p 2
k
J n k K i k (3.13)
τ v = K p k
K i k (3.14)
ここで,(K
p k , K i k )
について解くと以下の(3.15),(3.16)
式が得られる。K p k = J n k γ 1
τ v (3.15)
K i k = J n k γ 1
τ v 2 (3.16)
J n k
はk
軸におけるノミナル慣性である。そして,組替える時中央制御部でJ n k
の適切 な値を計算した後,式に代入することで自律的にコントローラのパラメータを決定す ることが可能である。そして,上の(3.15),(3.16)
式をふまえて速度制御系をコントロー ラ設計において表すと(3.17)
式となる。θ ˙ res k θ ˙ ref k
= γ 1 τ v s + γ 1 τ v 2 s 2 + γ 1 τ v s + γ 1
(3.17)
これに外乱オブザーバを使用しリンク間における非干渉化を実現し,ロボットの姿勢 変化における慣性変動も補償を行い,係数図法を使用することで非常に簡易に良好な 速度制御を構成することを示した。そして,求めた速度制御系に位置コントローラと 積分器と位置フィードバックを付加することにより図
3.4
のような位置制御系を構築す る。そして外乱オブザーバを構成することにより,リンク間の非干渉化は実現できて いるが,組替え時のコントローラ設計を行う必要がある。そこで,速度制御系におい てコントローラパラメータを求め,そのパラメータを用いて再度,位置制御系に係数 図法を適用する。速度制御系をコントローラ設計において求めた式を用いて位置制御 系全体の伝達関数を表すと(3.18)
式となる。θ res k θ ref C
k
= K pp k (γ 1 τ v s + γ 1 )
τ v 2 s 3 + γ 1 τ v s 2 + (γ 1 + K pp k γ 1 τ v )s + K pp k γ 1
(3.18)
ここで再び係数図法を適用することで,安定度指標と位置の等価時定数
τ p
を以下のよ うに求めることができる。γ 1 = (1 + K pp k τ v ) 2
τ v K pp k (3.19)
γ 2 = γ 1
(1 + K pp k τ v ) (3.20)
τ p = (1 + K pp k τ v )
K pp k (3.21)
そして
τ p
,Kpp k
について求めると以下のようになる。τ p = γ 1 + γ 2 2
γ 1 τ v (3.22)
K pp k = γ 1
γ 2 2 τ v (3.23)
したがって,組み替えにおいてコントローラパラメータの更新は速度制御系のコント ローラが行い,位置制御系のコントローラパラメータは更新しなくてもいいことが上
の
(3.22),(3.23)
式より分かる。これにより各分散知能は自律制御が可能で構造の変化に対応した機構となっている。
3.3 中央制御部の構築
構造可変型ロボットの中央制御部は,構造可変ロボット全体を統括する役割を持つ。
まず,作業・環境が変更した時には現状の構造で実行可能であるか判断し,不可能であ れば適した構造を選択する。このとき全モジュールから機構の情報や,物理パラメー タを収集することができ,外部から新たな情報の入力作業を必要としない。新しい機 構に組替えが終了したら中央制御部は各モジュールに与えるノミナル慣性モーメント を計算する。また係数図法に用いる等価時定数を設定する。分散知能へのそれらのパ ラメータの送信が終了すると,軌道制御のために中央制御部のコントローラの設計を 行う。また中央制御部においてロボットの手先の位置指令を各アクチュエータの角度指 令に変換する逆運動学,そして各アクチュエータの角度応答からロボットの手先応答 に変換する順運動学などの構造可変型ロボットに関する運動学を行う構造となってい る。また,手先の位置指令に対して偏差を補償を行い,よりよい応答にするため作業 空間オブザーバが構成されている。また様々な作業環境に適用するため,力制御の構 成も行われている。次節よりそれぞれの構成について詳しく説明していくことにする。
3.3.1
逆運動学通常,ロボットの逆運動学は代数的に解く方法と繰返し計算アルゴリズムにより解 く方法がある。代数的に解く方法として,オイラー角の解に関する逆変換法や特定の アーム形態に対してひとつの解を導出するといった幾何学的な方法がある。しかしな がら,オイラー角の解に関する逆変換法は計算量が多く,冗長マニュピレータにおい て明確に算出することができない。そして,幾何学的な方法においはアームの形態に 応じて一意に求めることが可能であるが組替えに適しているとはいえない。また,速 度制御系における逆運動学解法としてヤコビ行列の擬似逆行列を用いた方法もあるが,
組替えにはヤコビ行列を再構築しなければならないため不向きである。そこで前任者 である三輪氏によりヤコビ行列を用いない逆運動学解法として構造可変型ロボットに 適用した仮想的に手先速度指令を各モジュールに伝播する仮想速度伝播アルゴリズム
(VVTA)
が提案され,また片岡氏により仮想的に位置指令を各モジュールに伝播する仮想位置伝播アルゴリズム
(VPTA)
が提案されている。本研究においては,位置ベー スで位置と力制御を実現しそれを実機検証を行うためにVPTA
を用いて逆運動学を解 くため,次節でVPTA
について説明する。3.3.2
仮想位置伝播アルゴリズム(VPTA)
図
3.5: VPTA
における座標系まず,図
3.5
に示すように各関節において座標系を定義する。作業空間における位置 指令x ref
と実際の手先位置x res
との偏差をx error
とする。そして,作業空間における 指令をΣ k+1
において,座標変換を行うと以下の式のように求めることができる。x error k+1 = [
x error θ
k+1 x error r k+1 x error n k+1 ] T
(3.24) θ
成分は(3.25)
式を利用してjoint k + 1
への指令として与えr,n
成分はk
軸以降の位 置指令として(3.26)
式のように仮想的に伝播を行う。θ ref k = θ k res + x error θ
k+1 /L k (3.25)
x error k+1 = k R − k+1 1 [
0 x error r
k+1 x error n
k+1
] T
(3.26)
ここでk R k+1
は3 × 3
の座標系Σ k
から座標系Σ k+1
への変換行列である。そして,次 の軸以降も同じように座標変換を用いて伝播する。このように作業空間で与えた位置 指令が関節空間の角度指令に変換できる。また指令を各分散知能に等分に分配するた めに参照値を手先側,ベース側2
つに分配し,伝播方向を2
方向から行い,その和を 各軸への指令とする。これを式で表すと(3.27)
式となりこれを各軸への指令とする。θ k ref = θ res k + (x error(e) θ
k+1 + x error(b) θ
k − 1 )/L k (3.27)
これにより
VPTA
を用いることにより位置ベースでの逆運動学が構成することが可能 となる。3.3.3
順運動学ロボットのリンク機構を記述する一般的な方法として,DH法
(Denavit-Hartenberg
の表記法)を用いる.特徴として,同次変換を4
つのリンクパラメータで記述でき,リ ンクパラメータの値がすべて与えられた場合には,同次変換行列は関節変数で表現す ることができる.したがって関節変数を与えれば同次変換行列を導出することができ,順運動学を解くことができる。DH法は図
3.6
に示すリンク座標系Σ i
をΣ i − 1
から見た 場合の同次変換における記述法であり,リンクパラメータは以下の4
つで定義される。(a)
関節i
が回転関節(b)
関節i
が直動関節図
3.6:
関節パラメータ1. x i
軸に沿ってa i − 1
だけ並進2. x i − 1
軸回りにa i − 1
だけ回転3. z i
軸に沿ってd i
だけ並進4. z i
軸回りにa i − 1
だけ回転そして,最終的に得られる変換行列,
i − 1 T i
は以下のように求める。i − 1 T i =
cos θ i − sin θ i 0 a i − 1
cos α i − 1 sin θ i cos α i − 1 cos θ i − sin α i − 1 − sin α i − 1 · d i sin α i − 1 sin θ i sin α i − 1 cos θ i cos α i − 1 cos α i − 1 · d i
0 0 0 1
(3.28)
これを用いることでエンドエフェクタのリンク座標系
Σ n
を基準座標系Σ 0
に関係づけ る変換は以下の式で表現できる。0 T n = 0 T 1 1
T 2 · · · n − 1 T n (3.29)
このようにすることで,ロボットの各軸の関節変数
(θ, d)
を(3.29)
式に代入すること で,作業空間においてロボットのエンドエフェクタの位置を求めることが可能である。つまり,順運動学を解くことができる。
3.3.4
作業空間オブザーバの設計今回,作業空間オブザーバを構成する目的は,前節で説明した仮想位置伝播アルゴ
リズム
(VPTA)
を用いる逆運動学では,ロボットの姿勢により最後の軸は伝播することができない。そこでこれを余りと考える。余りが生じると逆運動学を正確に解くこ とができない。しかし,実際に余りが生じることは,指令に対して不足した手先への 位置指令として考えることができる。したがって,外乱が加わり目標を達成できない と考え,作業空間オブザーバにより,その外乱を推定し補償をする。また,各関節空 間で位置制御系を構築して角度を制御しているが作業空間において過渡的な位置誤差 が発生する。この位置誤差も作業空間オブザーバにより補償する。作業空間オブザー バの設計は以下のように行う。各分散知能の伝達関数が等しく設計し,それらを行列 表現すると以下ようになる。
θ res =
G L 1 (s) 0 0 0
0 G L 2 (s) 0 0
0 0 . .. 0
0 0 0 G L k (s)
θ ref
(G L 1 (s) = G L 2 (s) = · · · = G L k (s) = G L (s)) (3.30)
θ res = G L (s)θ ref (3.31)
分散知能における制御系は外乱オブザーバのフィルタの帯域内では,すべて外乱オブ ザーバによってノミナル化され,各軸において独立に式が成立するので,次式が成立 する。
θ res = γ 1
γ 2 2 τ 2 s 2 + γ 2 2 τ s + γ 1 θ ref (3.32)
また,VPTAと順運動学がそれぞれ逆変換の関係にあるとすると近似的に作業空間において
(3.33)
式が成立する。よって,作業空間オブザーバは(3.32)
式がノミナルな応答になるように設計を行う。
x res = γ 1
γ 2 2 τ 2 s 2 + γ 2 2 τ s + γ 1 x ref (3.33)
これにより作業空間オブザーバを適用することで仮想位置伝播アルゴリズムより生じ る余りやモデル変動を抑え,良好な軌道制御が構築できる。ズム
本研究で提案する構造可変型ロボットでは,前節で説明した仮想位置伝播アルゴリ
ズム
(VPTA)
を用いての位置ベースでの位置制御アルゴリズムに,特定の作業環境下で作業を行うことを想定して力制御を付加することにする。そして作業環境に応じて 位置制御,力制御が切り替わることが可能なアルゴリズムを構成する。この章では,力 制御,そして各制御モードの切り替え条件の説明を行う。
4.1 インピーダンス制御
力制御には,直接トルクを制御するトルク制御ベース力制御と間接的に力情報を基 に位置制御を行う位置制御ベース力制御がある.本研究の目的である位置制御と力制御 の実現であるために位置制御型力制御としてインピーダンス制御を用いる。インピー ダンス制御はロボットの手先に外力が加わったとき,外力とその外力による変位が希
望する図
4.1(a)
に示すインピーダンスモデル(慣性 m,粘性 d,弾性 k)
に従って動くように力制御を行う。このインピーダンスモデルは
(4.1)
式で表せる。m∆¨ x + d∆ ˙ x + k∆x = ∆f (4.1)
これは機械モデルと同じ動特性を持ち以下のブロック図
4.1(b)
で表すことができる。こ のインピーダンス制御を用いることにより力制御を行う。(a)
インピーダンスモデル(b)
ブロック図図
4.1:
インピーダンスモデル4.2 構造可変型ロボットの力制御
図
4.2:
力制御を付加した中央制御部における制御系位置制御と力制御を実現するためには,制御モード切替えとインピーダンス制御を 用いる。中央制御部全体のブロック図を図
4.2
に示す。構造可変型ロボットにおけるイ ンピーダンスモデル(慣性 M
,粘性D)
を(4.2)
式を用いて力次元の参照入力を位置次 元の参照入力へ変換する。C imp = 1
M s 2 + Ds (4.2)
したがって,図
4.2
で示されるように位置制御でロボットを対象物の場所に位置決めを 行い,対象物に到達して対象物を押し込むなどの動作をするとき力制御に切替り制御 する。これにより環境に柔軟に対応できる制御系を構築することが可能となる。ム
f
ム
f
ト
ゴ
4.3 制御モードの切替え
制御モードの切り替えには,位置制御で衝突し,制御モードを力制御に切り替えて 作業対象物を押し,対象物から離れることで力制御から位置制御への切り替えを実現 する。
switch1.
位置制御から力制御への切り替え位置制御時には,制御モードを力制御に切り替えて対象物を押すような制御系を実現 する必要がある。そこで,具体的に切り替え条件は位置制御時に,対象物と衝突する ことで,力センサの反力が発生し,そのときに力制御へと移行する。したがって,力セ ンサに値があれば
( | F res | > 0)
力制御に移行する。その際,インピーダンスコントロー ラの初期入力を位置制御指令に依存する形を構成すれば,切り替え時インピーダンス コントローラの出力(x ref F )
を位置指令(x cmd )
と同じ値にすることができるため連続的 な切り替えを行うことができる。switch2.
力制御から位置制御への切り替え力制御から位置制御に移行する時,力指令が正
( | F res | > 0)
であれば力制御に切り替 わっているのでロボットへの指令はインピーダンスコントローラの出力(x ref F )
である。力制御時,位置指令が対象物から離れる時,ロボットを位置制御するように切り替え る必要がある。そこで,具体的な切り替え条件は,インピーダンスコントローラの出 力
(x ref F )
と位置指令(x cmd )
を比較することにより切り替えを行う。つまりロボットが 対象物に接触している時,位置指令とインピーダンスコントローラの出力との関係はx ref F < x cmd
となるので力制御で,ロボットが対象物から離れる時,位置指令とイン ピーダンスコントローラの出力の関係はx ref F = x cmd
となる。この時を切り替え条件 とする。また力制御から位置制御からの切り替え条件を位置指令の比較により切り替 えているため,切り替えで問題となる指令の連続的な切り替えについては,連続的に なることが可能であるため問題にならない。今回提案したアルゴリズムの有効性を実機により検証する。実機検証では,構造可 変型ロボットを模擬した
3
自由度マニピュレータを用いて実装を行う。5.1 実機条件
モジュールのパラメータ,各軸のモータ慣性は表
5.1
に示す.サンプリング時間を1[ms],作業空間オブザーバのカットオフ周波数は 10[rad/s]
とし,外乱オブザーバのカットオフ周波数を
100[rad/s]
とした。分散知能の角速度の等価時定数τ v
を0.018[s]
と した.インピーダンスパラメータの慣性係数M
は15[kg],粘性係数 D
は1000[Ns/m]
とした。また,接触させる対象物は図のような壁を想定した箱をロボットの手前に置 きロボットに指令が入力されると手先がロボットの手前に構成されてる対象物に接触 する構造になっている。
表
5.1:
実機条件(モジュールパラメータ)
リンク長
[m]
各軸のモータ慣性リンク
1 0.06 0.0055
リンク
2 0.06 0.0055
リンク
3 0.06 0.0055
5.2 位置・力制御切り替えアルゴリズムの有効性の確認
(a)
写真(b)
模式図図
5.1: 3
自由度ロボットマニピュレータ実機検証では,構造可変型ロボットを模擬した図
5.1
で示すような3
自由度マニピュ レータを用いて,壁があるような環境下で壁に対して接触したときの位置制御から力 制御の切り替え,そして壁から離れるとき力制御から位置制御の切り替えにそれぞれ 考察した切り替え条件を用いて連続的に切り替わり可能か検証する。ロボットに与え る指令は,半径r = 0.02[m]
の円軌道指令を与える。また力制御での指令は壁からの反 力は-3[N]となるように与えた。5.3 結果
次の図
5.2,図 5.3
はx
軸,y軸の指令に対する応答,図5.4
は壁からの反力応答を示した。
図
5.2:
位置応答(x
軸)図
5.3:
位置応答(y
軸)図
5.4:
力応答結果から考察すると,まず位置制御から力制御への切り替えを確認すると,力応答 より反力が力センサに値を検知すると,ロボットの先端が壁に接触すると同時に力制 御に切り替えが行えていることが確認できる。また力応答結果より
− 3[N]
を示してい ることから力制御が行われていることが確認できる。これにより位置制御から力制御 へ力応答の検出により連続的な切り替えが行えていることが確認できる。次に力制御 から位置制御への切り替わりについて確認する。x軸の結果からは,ちょうど指令と壁 の位置が同じ値を示した時に力制御から位置制御に切り替わっていることが確認でき る。また力反力の結果からもx
軸での切り替わりと同時に,力応答が0[N]
に収束して いるのが確認できる。この結果から,ロボットの手先が壁へ接触,そして壁から離れ た際,連続的に切り替わりが行えていることを示すことができた。このことから提案 した位置ベースでの位置・力制御切り替えアルゴリズムの実機での有効性を確認する ことができた。リズムへの拡張
1
章でも述べたが,構造可変型ロボットは,アクチュエータを有するモジュールの組 み替えによりロボットを構成する機構をもつという大きな特徴をもつロボットである。それに伴い制御系においても分散知能において各モジュールのモータを独立に制御し,
中央制御部において各モジュールを統括しロボットの軌道制御を行う分散制御システ ムを導入している。そして各モジュール間では,非接触伝送技術を用いることにより 情報の伝達を行うといった特徴を有している。これにより中央制御部から分散知能の 間で指令または応答の伝達において伝送の遅れが生じるのではないかと現在考えてい る。この章では,それらの伝送遅れを考慮し補償するための制御系の構築を行ったの で示す。
6.1 構造可変型ロボットにおける伝送遅延
図
6.1:
伝送遅延を付加した制御アルゴリズム従来の構造可変型ロボットの研究において,ロボットのモデルを構築する際,伝送遅
延を考慮したモデルは構築していなかった。そこで,シミュレーション上において,伝送 遅延を考慮した構造可変型ロボットのモデルに対して従来の制御アルゴリズムを構築す ると,どのような特性が表れるか検証する。今回,構造可変型ロボットで用いる制御ア ルゴリズムは,前節同様,逆運動学において仮想位置伝播アルゴリズム
(VPTA)
を用い てロボットの位置制御を行う制御系を用いた。構築したモデルの制御アルゴリズムを図6.1
に示す。この図より中央制御部(Central Intelligence)
と分散知能(Local Intelligence)
との間に時間遅れ(Time Delay)
を設けることにより想定するモデルを構築した。ロボッ トに与える指令は,半径r = 0.1[m]
の円軌道指令を与える。今回中央制御部で生成し た指令から分散知能へ送られる指令の時間遅れ,また分散知能によって生成された角 度応答を中央制御部に送る際,発生する時間遅れは0.075[s]
とした。次の図6.2,図 6.3
のx
軸,y軸は,作業空間オブザーバを構成していない場合の指令に対する応答結果を 示す。以下の結果から,x軸,y軸共に時間遅れを構成した場合,指令に対して応答に 伝送遅れの影響が出て,指令に対しての追従が遅れていることが分かる。また図6.4,
図
6.5
の結果から作業空間オブザーバを構成した際の指令に対する応答結果をみる。応 答は指令に対して発散している。これは,遅れを持つ制御対象と遅れを考慮していな い作業空間オブザーバのノミナルモデルとの間に差が生じてしまうためであると考え ている。これにより従来の制御アルゴリズムの構成では,時間遅れを考慮したモデル に対して,こちらが望む応答を示すことが出来ないことが結果から分かる。そこで制 御アルゴリズムにおいて,時間遅れが存在した場合,補償出来るアルゴリズムの構成 が必要となる。図
6.2:
位置応答(x
軸)図
6.3:
位置応答(y
軸)図
6.4:
位置応答(x
軸)[作業空間オブザーバ]図
6.5:
位置応答(y
軸)[作業空間オブザーバ]6.2 通信外乱オブザーバ
今回上記で述べた問題に対して,通信外乱オブザーバ
(Communication Disturbance
Observer)
を用いることでの補償を考える。通信外乱オブザーバは,ロボットの遠隔操作を行うことを想定したバイラテラル遠隔操作システムに用いられている手法である。
Network disturbance
Master
Slave Model
Master side Slave side
Slave Model Master
Communication Line
(A)
バイラテラル遠隔操作システム(B)
通信外乱の構成Network disturbance
Master
Slave Model
Master side Slave side
Slave Model Master
Communication Line
Network disturbance
Master
Slave Model
Master side Slave side
Slave Model Master
Communication Line
Slave Model Slave Model Master
Communication Line
(A)
バイラテラル遠隔操作システム(B)
通信外乱の構成図
6.6:
通信外乱の構成Network disturbance
Master
Master side Slave side Communication
Disturbance
Observer Slave Model
Network disturbance
Master
Master side Slave side Communication
Disturbance
Observer Slave Model
図
6.7:
通信遅延の補償Slave Model Slave Model
図
6.8:
通信外乱オブザーバ[8][9]
ロボットを操作するマスター側と遠隔地で動作させるスレーブロボット側との情報のやり取りの際,ネットワーク通信の手段を用いて情報のやり取りを行うため,伝送 の遅れが生じる。その際に,その遅れを補償するために考えられている手法である。バ イラテラル遠隔操作システムを例に通信外乱オブザーバについて説明する。図
6.6-(A)
では,マスターによって生成されたトルク次元の制御入力F
がマスタ側から送信され,スレーブの速度応答
sX
がマスター側にフィードバックされている。またJ n
はスレー ブの慣性のノミナル値である。このとき,実際にマスタ側が受信するフィードバック 信号sXe − T s
は通信路における通信遅延(T 1 :マスタからスレーブへ伝達する際の通信遅
延,T2 :スレーブからマスタへ伝達する際の通信遅延)
の影響により,T(= T 1 + T 2 )
だけ 遅れている。ここで,システムの入出力関係にのみ着目して,図6.6-(A)
は図6.6-(B)
の ようにすることが出来る。つまり,フィードバック信号sXe − T s
が遅れているのは,通信 遅延によるのではなく通信外乱(Network disturbance)
によると考える。図6.6-(B)
の バイラテラル遠隔操作システムのおいて,通信外乱は次式で表される。D net (s) = F (1 − e − T s ) (6.1)
ここで,図6.6-(B)
においてF
とsXe − T s
から通信外乱オブザーバを用いて通信外乱を 推定することが可能であり,推定された通信外乱を用いて通信遅延を補償することが できる。その様子を示したのが図6.7
である。また通信外乱オブザーバの内部構造を図6.8
に示す。オブザーバのカットオフ周波数g net
が十分大きいと仮定すると, ˆD net
は以F sX sX ε ‑Ts
Dnet
sX(l ‑e‑ Ts)
下のようになる。
D ˆ net = J n s 2 X(1 − e − T s ) (6.2)
また推定された通信外乱から補償信号は次のようになる。d ˆ net (s) = sX(1 − e − T s ) (6.3)
これにより図6.6-(A)
および図6.6-(B)
ではsXe − T s
であったマスタが受信するフィー ドバック信号が,図6.7
ではsX
となっている。つまりフィードバック信号に通信遅延 の影響が現れていない。よって通信遅延は補償されたことになる。6.3 制御アルゴリズムへの適応
Communication Disturbance
Observer
図
6.9:
通信外乱オブザーバを付加した制御アルゴリズム伝送遅延を考慮した構造可変型ロボットのモデルに対して,伝送遅延を補償し指令 に追従する安定した制御を実現するため,従来の構造可変型ロボットの制御アルゴリ ズムに対して通信外乱オブザーバ付加することを考える。今回構成を考えている制御 アルゴリズムを図