• 検索結果がありません。

ソーシャルワーク研究法としての内容分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ソーシャルワーク研究法としての内容分析"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ソーシャルワーク研究法としての内容分析

その他のタイトル Content analysis as a social work research method

著者 窄山 太

雑誌名 人間健康学研究 : Journal for the study of health and well‑being

1‑2

ページ 21‑32

発行年 2011‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00023290

(2)

窄 山 太

A b s t r a c t  

C o n t e n t  a n a l y s i s  i s   t h e  r e s e a r c h  method and c l i n i c a l  t o o l  u s e f u l  t o  s o c i a l  w o r k ,  which  i t   p r e m i s e s   u n d e r s t a n d i n g  t h e  q u a l i t y  and working c o n t e n t s  i n  a d v a n c e .  I t   i s   u s e f u l  i n  v a r i o u s  a r e a s ,  such a s   e d u c a t i o n ,  an i n v e s t i g a t i o n ,  and p r a c t i c e ,  a s  a  means o f  a n a l y z i n g  p r a c t i c e  r e c o r d s ,  r e p o r t s ,  and t h e  f r e e ‑ a n s w e r s  o f  a  q u e s t i o n n a i r e .  By u s i n g  c o n t e n t  a n a l y s i s  e f f e c t i v e l y ,  d i s c o v e r y  o f  e v i d e n c e  c o n c e r n i n g   u n d e r s t a n d i n g  o f  a  u s e r  and p r a c t i c e  knowledge i s   e x p e c t a b l e .  R a t h e r  t h a n  a n y t h i n g ,  i t   h a s  p o s s i b i l i t y   t h a t  t h e  f u r t h e r  p r a c t i c a l  u s e  i s   e x p e c t a b l e  a c c o r d i n g  t o  a  r e s e a r c h  d e s i g n ,  i n  t h a t  i t   c a n  summarize i n   where i t  i s  e a s y  t o  u n d e r s t a n d  many t e x t  d a t a  i n  t h e  a r e a  o f  s o c i a l  w o r k .  

I .  

はじめに

本稿では、ソーシャルワーク研究法としての内容 分析

( c o n t e n ta n a l y s i s )

をテーマとする。内容分 析は、一般的に、「コミュニケーションの内容を客 観的かつ体系的に分析する手法」(土屋, 2009:120)

と定義されるが、本稿では、それがどのようなもの であり、どのように進められるのかについて概説す るとともに、ソーシャルワークでは内容分析をどの ように活用しているのか、さらに活用する上で留意 する点は何かについて述べる。

内容分析という用語は、研究において「データの 示す内容を分析する」との言い方で、あまり意識さ れることなく使用される。すなわち、内容分析は「文 字化されたコミュニケーションに関するデータ」(以 下、「テキストデータ」という。)を対象として、そ の内容を分析するという点では、すべての研究で使 用される可能性がある。しかしながら、本稿では、

テキストデータを分析するための科学的手続きを有 する特定された方法として内容分析を取り上げる。

ソーシャルワークにおけるテキストデータは、ソ ーシャルワーカーの実践活動や教育、研究など幅広 い場面で見ることができる。例えば、実践では、相 談援助に関する記録があり、学習・教育では、ソー シャルワーカー養成課程に関する資料や報告が、研 究では論文やレポートなどがある。しかしながら、

こうしたテキストデータは、一部の研究で活用され ることもあるが、体系的に分析され実践で活用され

ているとはいいがたい。テキストデータを対象とす る内容分析は、ソーシャルワークにおいても、こう した既存のテキストデータを分析する方法として活 用できるのではないかという点に本稿の問題意識が ある。

本稿ではこうした問題意識にもとづき、以下、内 容分析の特徴、作業内容、ソーシャルワークでの適 用例を記述した上で、ソーシャルワーク研究法とし て内容分析を用いる際の留意点について述べる。な お、本稿では、内容分析の対象となる情報をテキス トデータと、そしてテキストデータが記載されてい る媒体を資料と呼び区別する。

II.  内容分析の特徴

内容分析は、端的にいうと、質的研究における調 査分析の方法として、質的データであるテキストデ ータを、ことばの使用度合いの算出やコーディング 作業を通して要約し、その意味するところを推論す る一連の過程である。土屋 (2009)は以下のように 述べている。

内 容 分 析

( c o n t e n ta n a l y s i s )

とは、コミュ ニケーションの内容を客観的かつ体系的に分析 する手法である。コミュニケーションの内容

( c o n t e n t

コンテンツ)とは、コミュニケーショ ン活動、つまり誰が誰に向かって何をどうやっ て伝え表現したか、その結果どんな影響がもた

(3)

2 2  

人 間 健 康 学 研 究 第

1・2

号 合 併 号

らされたか、という一連の過程の中で、且庄~

にあたる部分である。テレビで放映された番組、

新聞に載っている記事、雑誌のなかの漫画、ニ 人の間で交わされた会話、小説や手紙の文章、

プログの書き込みなど、コミュニケーションの 中身を対象とするのが内容分析である。

( p . 1 2 0

下線は引用者による。)

しかしながら、内容分析という用語は「データの 内容を分析する」というような言い方で使用されて おり、あらゆる研究でも使用される可能性がある。

鈴木• 島崎

( 2 0 0 6 )

は以下のように述べている。

もっとも広い言い方をすれば、内容分析とは、

コミュニケーション・メッセージの諸特性の整 理・分類・要約・解釈・推論・評価などの作業 過程のことであると言えよう。このように考え れば、たとえば学生が試験で長い文章の要約を 書いたり、文芸評論家が同ー作者のいくつかの 作品の登場人物の類似性を指摘したり、さらに はある文章を注意深く読んでその隠された意味 を了解したりすることなど、かなり広範囲の知 的活動を含むことになる。事実、このような意 味でこの語を用いることも一般社会ではふつう におこなわれている。

( p . 1 1 5 )

この意味では、内容分析を特定の科学的研究法と は言いがたいことになる。しかしながら、内容分析 は、質的データであるテキストデータを一連の手続 きに基づいて分析するための方法であり、先のよう な使用からは区別されている。鈴木•島崎 (2006) は、

続いて以下のように述べている。

しかし、コミュニケーション研究の世界で は、内容分析という言葉はもっと狭い特殊な意 味で用いられており、恣意的・直観的方法では なく、科学的手続きにもとづいた一連の作業に よって構成されるものであるとみなされている。

( p . 1 1 5 )  

特別な準備を必要としない、学術用途に限って使用 されるものとの誤解が一般にはあるが、科学的方法 に依拠する研究方法であるとしている。

内容分析は、主としてマス・コミュニケーション 研究の分野で発展した。歴史的には、

1 7 4 3

年にス ウェーデンで行われた賛美歌『ジオンの歌』の分析 が内容分析の最初だとされている

( K r i p p e n d o r f f , 1 9 8 0 = 1 9 8 9 )

。そして、

2 0

世 紀 初 頭 に は ア メ リ カ において新聞記事の分析方法として発展し、その

B e r e l s o n

C o n t e n ta n a l y s i s   i n   communication  r e s e a r c h

を出版したことで、社会科学の領域におけ

る分析方法の

1

つとして取り入れられたとされる

(舟島,

2 0 0 7 )

。なお、国内で最初に行われた新聞記 事の内容分析は、「東京五新聞の内容分類」

( 1 9 3 1 )

であったとされ(土屋,

2 0 0 9 )

、また、池内

( 1 9 5 4 , 1 9 5 6 )

は研究方法の観点から内容分析を取り上げ、

その意義と問題点を指摘している。近年では、有馬

( 2 0 0 7 )

が内容分析の紹介を目的として『内容分析 の方法』を出版している。以下、代表的な定義のい

くつかを年代順に列挙する。

・ B e r e l s o n   ( 1 9 5 2 : 1 8 )   : 

内容分析は明白なコミュニ ケーションの内容を客観的、体系的、そして 量的に説明するためのリサーチ技術である。

・ H o l i s t i   ( 1 9 6 9 : 1 4 )   : 

内容分析は、特定のメッセー ジの特徴を客観的かつ体系的に位置づけて推 論するための技術である。

• K r i p p e n d o r f f   ( 1 9 8 0 = 1 9 8 9 : 2 1 )  : 

内容分析とは、デ ータをもとにそこから(それが組込まれた)

文脈に関して再現可能で

( r e p l i c a b l e )

かつ妥 当な

( v a l i d )

推論を行うための

1

つの調査技 法である。

・Weber ( 1 9 9 0 : 9 )   : 

内容分析は、一連の手続によっ てテキストから妥当な推論を行うための調査 技法である。

•藤田 (1997:121)

テクストを整理・要約する方法 である内容分析

( C o n t e n ta n a l y s i s )

とは、テ クスト(人が書いたメッセージ)の中で、あ

1

つの構成要素をとりあげ、「量」という形 で整理・要約することをいう。

また、

Neuendorf( 2 0 0 2 )

は、内容分析は、容易 ・橋元

( 1 9 9 8 : 7 5 ): 

コミュニケーションでやりとり なもので、すべての調査にあてはまる用語であり、 される情報内容を「メッセージ」とよぶが、

(4)

特に、手紙や書籍、新聞記事など、書かれた 結果が残されているものを第三者の立場から 客観的に捉えた場合にそれを「テクスト」と よぶことが多い。このテクストを、ある一定 の仮説のもとに客観的に分析する手法を「内 容分析」とよぶ。

・Neuendorf ( 2 0 0 2 )   : 

内容分析は、(客観性ー間主 観性への関心、先験的デザイン、信頼性、妥 当性、一般化への可能性、再現可能性と仮説 検証を含んだ)科学的技法によりメッセージ を要約し、量的に分析する。そして、測定さ れる変数の種類やメッセージが生み出された 文脈に限定されることはない。

・日吉

( 2 0 0 4 : 5 ): 

内容分析は、マス・コミュニケ ーション研究における代表的な実証的方法の

1

つであり、メディア・メッセージを統計調 査に基づいて科学的に研究するために用いる 技法である。

内容分析は、

B e r e l s o n ( 1 9 5 2 )

の 定 義 に 見 ら れるように、質的データであるものを量的デー タに変換し分析する手法として体系化された。

B e r e l s o n   ( 1 9 5 2 : 1 5 )

は内容分析の特徴として、① ことばの統語性

s y n t a c t i c

や 意 味

s e m a n t i c

を対象 とすること、②客観的

o b j e c t i v e

であること、③ 体 系 的

s y s t e m a t i c

で あ る こ と 、 そ し て ④ 数 量 的

q u a n t i t a t i v e

であること、をあげている。しかしな がら、その後の展開で、数量化の段階を含めるかど うかについては議論があり(藤田,

1 9 9 2 )

、対象規 定やデータ分析の方法、とりわけ分析に解釈や推 論を含むかどうかという点にも、

B e r e l s o n ( 1 9 5 2 )

H o l s t i   ( 1 9 6 9 )

K r i p p e n d o r f f ( 1 9 8 0 = 1 9 8 9 )

の定義 には変遷が見てとれる(舟島,

2 0 0 7 )

。なお、土屋

( 2 0 0 9 : 1 2 2 ‑ 1 2 3 )

は内容分析を用いる推論の枠組み には、以下の

5

つのアプローチがあるとしている。

・システム論的アプローチ:「コミュニケーション 活動全体を自律的に解釈や意見などの情報を 産出するシステムとみな」し、「コミュニケー ション行為の当事者の考えや発言に影響を与 える事象を一応捨象して、コミュニケーショ ンの内容自体の変化やパターンを見い出し、

推定しようとする立場」

( p . 1 2 2 )

・基準照合的アプローチ:「コミュニケーションの 内容を、対象とするコミュニケーション活動 の外部に存在する基準に照らし合わせて、チ ェックし評価しようとする」

( p . 1 2 2 )

・微候発見的アプローチ:「直接測定したり観察す るのが難しい現象の指標を、コミュニケーシ ョンの内容から見出そうとする」

( p . 1 2 3 )

・言語的表象アプローチ:「主に言語的コミュニケ ーションの内容を現実の表象と捉え、ある事 柄の描写においてどのような言及がどれだけ なされているかを整理して、どのような知 識が伝達され理解されているかを推論する」

( p . 1 2 3 )  

• 制度的アプローチ:「コミュニケーションの内容

から、それを生み出した組織や制度のあり方 を推論しようとする」

( p . 1 2 3 )

以上から、内容分析にはいくつかの立場があるこ とがわかる。舟島

( 2 0 0 7 )

は、この点を以下のよう にまとめている。

内容分析は、どの研究者の立場を採用するか によって、データの種類、分析の視点と範囲、

信頼性・妥当性の検証方法が大きく異なる研究 方法である。そのため、内容分析という方法を 質的研究、もしくは量質併用研究に用いる場合、

その研究が何を目指しているのかという観点か ら、どの立場の内容分析を選択するのかについ て入念に検討し、決定する必要がある。

( p . 4 1 ‑ 4 2 )

m .  

内容分析の作業

内容分析における作業のポイントは、どのような リサーチクエスチョンや仮説のもとに、どのような 資料をどのような分析単位で分析するかという点に ある。ここでいう分析単位とは、資料からどのよう なテキストデータをどのようなカテゴリーで抽出し まとめるかについての取り決めである。以下、土屋

( 2 0 0 9 )

Royse ( 2 0 0 8 )

、有馬

( 2 0 0 7 )

、舟島

( 2 0 0 7 )

藤田 (2007) 、鈴木• 島崎

( 2 0 0 6 )

、 日 吉

( 2 0 0 4 )

Neuendorf ( 2 0 0 2 )

などの諸説をふまえ、内容分析 での作業について述べる。

(5)

2 4  

人 間 健 康 学 研 究 第1・2号 合 併 号

①リサーチクエスチョンならびに仮説設定

1

段階は、リサーチクエスチョンならびに仮説 の設定である。これは、「『研究のための問い』と『問 いに対する回答文』を決定する」(舟島,

2 0 0 7 )

のである。

「研究のための問い」とは、データを分析して 何を明らかにしたいのかを質問文の表現を用い て文章化したものである。また、「問いに対する 回答文」とは、分析した結果をその空欄に書き 込むことにより、「研究のための問い」の回答と して成立する

1

文である。/研究者は「研究の ための問い」と「問いに対する回答文」を常に 見える場所に掲示し、確認しながら分析するこ とが重要である。(舟島,

2 0 0 7 :5 4 ‑ 5 5 )  

リサーチクエスチョンならびに仮説設定は、内容 分析に限らずすべての調査研究において重要である ことは言うまでもない。内容分析で特にこの段階が 強調される理由は、内容分析で扱うテキストデータ の特徴による。すなわち、対象として収集されたテ キストデータには、その研究のために新たに集めら れたものだけではなく、既存の資料も含まれる。そ して、その中には研究の趣旨から外れるものも含ま れている可能性がある。そうしたデータを峻別し、

必要なものを的確に収集することが求められるため である。

②収集資料の範囲とサンプリング単位の設定 ここでは、テキストデータの収集範囲を設定する。

これは、リサーチクエスチョンや仮説に基づいて、

「いつから、いつまでの、どのような内容のものを、

どのような形で、どこから収集するか」ということ を決定する。

資料には、書籍、雑誌、新聞、テレビ番組、各種 の会議録や報告書、インタビュー記録など様々なも のがある。その資料の中から、いつからいつまでの

は、極めて重要である。資料が入手できなければ、

研究を続けることは困難である。反対に、入手でき る資料を前提にリサーチクエスチョンと仮説を設定 しても、期待される所見が見いだせる保証はなく、

そのような設定自体が適切かどうかを検討しなけれ ばならない。

なお、資料の保管・保存形態も重要である。資料 が紙媒体の場合、コンピュータで分析するには電子 データに変換する必要がある。資料が多くなるほど、

とりわけ手書きの場合には、変換作業に多くの時間 と労力を費やさなければならないことになる。

③記録単位の設定

内容分析は、コーディングによるテキストデータ の分類と推論による理解を目的とする。ここでは、

資料からテキストデータをどのような形で抽出し、

どのように分類するかに関する取り決め、すわなち 記録単位を設定する。

土屋

( 2 0 0 9 )

や日吉

( 2 0 0 4 )

を参照すると、この 記録単位は、別々に分析できるテキストデータ部分 を指し、物理的カテゴリーとシンボル的カテゴリー に区分できる。物理的カテゴリーはデータが扱われ ている紙面の大きさ、所要時間、文字数や文章数、

行数など、データの意味や内容に関係しない情報と される。シンボル的カテゴリーは、さらに以下の

4

つのレベルに区分される(日吉,

2 0 0 4 : 1 7 ‑ 1 9 )

・単語の出現回数など「意味に関する判断を必要 としない」、統語的カテゴリー

• ある特定のシンボルを指し示すさまざまな対象

を含んだ、言及的カテゴリー

•分析単位を事前の定義によって説明する、テー マ的カテゴリー

・文章の内容・主張などを対象として、一定の複 雑な構造を持ったテクスト(声明・主張)を、

シンプルなカテゴリーに変換して、測定する ための、命題的カテゴリー

期間を調査対象とするのかを決定しなければならな なお、記録単位を特徴づける文脈単位にも考慮す い。また、すべての資料を収集することがむずかし る必要があるとされる。舟島

( 2 0 0 7 )

は記録単位と い場合は、サンプリングを行なうことになる。 文脈単位の関係を以下のように規定している。

テキストデータを含む資料を入手できるかどうか

(6)

記録単位とは、記述内容の出現を算出するた め最小形の内容であり、内容を分析し分類する 際の基礎となる単位である。これに対して、文 脈単位とは、記録単位を性格づける際に吟味さ れるであろう最大形をとった内容である。研究 者は、それぞれの研究目的に応じて記録単位と 文脈単位を決定しなければならない

( p . 5 7 )

これらの作業は、一覧表やシート、分析作業用マ ニュアルにまとめられ、分析作業を分担する人々

(「コーダー」という。)に配布、教示される。

④分析

ここでは、記録単位にしたがいテキストデータを 分析することが課題となる。抽出したテキストデ ータの個別化を図り、カテゴリーに分類する作業 を経て、テキストデータ間の関連性を検討すると ともに、その文脈が意味するところを推論するこ ととなる。

舟島

( 2 0 0 7 )

はデータ分析を基礎分析と本分析 に区分している。「表現が完全に一致している記録 単位、表現は少し異なるが完全に意味が一致してい る記録単位などを分類整理」

( p . 5 9 )

するために基 礎分析を行い、その結果を類似性の観点からまと め、上位のカテゴリーを生成し、これに記録単位数 と出現割合を加えて、最終的に図表の形にまとめて いくことになる。また、有馬

( 2 0 0 7 )

はコンピュー タヘの入力の観点から、テキストデータのクリーニ ングの重要性とその後の統計処理に関する注意点に ついて説いている。

分析結果はこうした作業を経て報告される。そし て、その結果をもとに仮説が証明されるかどうかを 検討し、テーマについての考察が行なわれる。

⑤信頼性と妥当性の検証

内容分析に限らず、質的調査では、同じデータに 対して異なる分析者が異なる見解を導き出すことが ある。分析作業を複数で行う場合や同一の人物が時 間を経て行う場合では、同じことばが同じカテゴリ ーに分類されているかどうかを確認する。

また、使用されたことばを分類する場合であれ ば、違うカテゴリーに振り分けてしまうことは低い

かもしれない。しかしながら、そうした場合でも、

ことばが肯定的にも否定的にも、さらには比喩的に も使用される可能性を有していることをふまえ、そ のことばの意味を理解し分類作業を行うことには留 意しておかなければならない。使用されることばに 関する記録単位に着目して、量的分析と質的分析の 両方から検討することが求められる。

内容分析は、テキストデータの収集よりもむし ろ、分類や理解に特質があること、数量的に表現さ れる部分があっても、それは本来、質的データを取 り扱っているということを念頭に作業を進めなけれ ばならないといえる。

IV.  ソーシャルワーク研究領域での 内容分析の適用例

内容分析の適用について、鈴木• 島崎

( 2 0 0 6 : 1 1 6 ‑ 1 1 7 )

B e r e l s o n ( 1 9 5 2 )

が提示した適用範囲をも

とにして、以下のようにまとめている。

①内容の特徴の記述一言及された事柄自体に関す るもの

・コミュニケーションの内容の時代的変化を たどる ・学問の発展をたどる ・国別にコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 内 容 の 相 違 を 明 ら か に す る・複数のメディア間の比較をおこなう コミュニケーションの内容が送り手が公言し ている目的と合致しているかどうか確かめる

・コミュニケーションの内容や構成がある規 準と合致しているかどうかを調べてそのコミ ュニケーションの評価をおこなう ・より大 きな調査計画の中で、自由回答の整理などを、

作業の一貰としておこなう

②内容の特徴の記述一言及の仕方、記述形式に関 するもの

・送り手の主張の仕方を調べてプロパガンダ のテクニックを暴露する ・メッセージの特 性から読みやすさ、聞きやすさを測定する 文体の特徴を明らかにし、作者を推定したり、

文学的影響の有無を知る

③送り手に関するもの

・送り手の特性、意図、主張を明らかにする 精神分析の面接記録などの資料から個人とか

(7)

2 6  

人 間 健 康 学 研 究 第12号 合 併 号

集団の心理状態を測定する

• あるコミュニ

ケーションが実はプロパガンダであることを 暴露する ・相手側が対外的・対内的に流す コミュニケーションを分析して政治的・軍事 的情報を得る

④受け手に関するもの

・コミュニケーション内容の特色から、それ に反映されているであろうその時代の精神や 風潮を推定したり、特定の集団成員の態度や 関心、価値観を推定する

⑤効果に関するもの

ある集団が常時接触しているメディアがど のようなことを扱っているかを知ることによ って、その集団が何に注目し、関心を持って いるかを明らかにする

• あるコミュニケー

ションがどのように受け入れられ、どのよう な影響をもたらしたかを明らかにする

このように内容分析の適用範囲はコミュニケーシ ョンを中心として非常に幅広い。ソーシャルワーク の分野でも、例えば、①クライエント集団の特徴、

②教科書の構成、③論文テーマの傾向、④科目の概 要、⑤業務分析などをテーマとしたものがある。以 下では、

Rubin

B a b b i e( 2 0 1 0 )

Royse( 2 0 0 8 )  

などを参考に、これらのいくつかを列挙する。これ

らから、ソーシャルワーク研究法としてテーマを限 定することなく、またテキストデータの収集方法を 限定することなく、幅広く用いられていることを窺 い知ることができる。

感じていること」に関する自由回答

1 8 7

票のうち、

「介護における倫理的態度や行動に関係のある内容 を記述していた

( p . 1 9 2 )

1 1 8

票について内容分析 を行なっている。結果、 5項目をもつ「高齢者の家 族介護における倫理的諸問題」と

2

項目をもつ「家 族介護に対する人生上の意味づけ」に分類している。

藤野

( 2 0 0 8 )

は、「『老い』の当事者である高齢 者の語りによるリアルな『老い』にアプローチし、

高齢者ケアに生かす視点を見いだ」

( p . 9 9 )

すこと を目的として、養護老人ホームの

1 0

人の女性入所 者を対象に「老い」と「日常生活」に関する半構造 化インタビューを行ない、内容分析を行なってい る。結果として

2 4

のカテゴリーを見いだし、さら

3

つの「老い」カテゴリーと

6

つの「養護老人ホ ームでの生活」カテゴリーにまとめている。

②教科書の構成に関する分析

Kramer

P a c o u r e k

H o v l a n d ‑ S c a f e( 2 0 0 3 )

ソーシャルワーク教育における終末期ケアの取扱い の改善を意図して、有用なソーシャルワーク実践に 関連する

1 0

の項目について

5 0

冊の教科書を対象に 分析を行なっている。結果、終末期ケアは全体の

3.35%

のみで扱われていることを見いだしている。

T a y l o r

Mulroy

A u s t i n( 2 0 0 4 )

は、「人間行 動と社会環境」で使用される

1 4

冊の書籍を、ソー シャルワーク教育協議会

( C o u n c i lon S o c i a l  Work  E d u c a t i o n ;  CSWE)

が策定した「教育方針と認可基 準」の「人間行動と社会環境」から分析している。

そこでは、人間行動と社会環境の相補的性質をいか に内容に反映しているか等の項目を基準に評価し、

①クライエント集団の特徴に関する分析 ライフサイクル志向、システム志向、理論志向の 3

McRoy

( 1 9 9 0 )

は、養子縁組の告知とそれに つのタイプに識別できることとともに、マクロな社 まつわるコミュニケーションが養子縁組家族の問題 会環境やその他のレベルとの相互関係に関する内容 となることがあるという観点から、

2

歳以前に養子 に対する関心が高まっていることを指摘している。

として迎えられ、調査時に

1 1

歳から

1 7

歳となって いた子どものいる親子

5 0

組に、非構造化インタビ ューを行ない、その結果からコミュニケーションの パターンを考察している。そして、その結果をふま え、こうした親子に対する

1 0

項目の質問を提示し ている。

沖田

( 1 9 9 9 )

は、高齢者に対する家族介護の倫 理的問題をテーマに調査を行ない、「日々の介護で

③論文テーマの傾向に関する分析

T r i p o d i   ( 1 9 8 4 )

1 9 5 6

年から

1 9 8 0

年の間に

6

種のソーシャルワーク専門雑誌に掲載された調査論 文について、実験的、数量記述的、探索的な内容で ある実証的論文と、調査に関連するテーマを内容と するものや実証の方法をテーマとする非実証的な 論文に分類するとともに、

5

年単位の期間設定を行

(8)

なった上で内容分析を行なった。結果、調査論文 うした研究の輪郭を知ることは、ソーシャルワーク

1 9 5 6

年からの

5

年間が全体の

1 3 . 8 %

であったも 研究の動向を知る上で有用であると結んでいる。

のが、

1 9 7 6

年からの

5

年間では

2 6 . 9 %

に増加して いること、また実証的論文の割合が

1 9 5 6

年からの

5

年間で約半分であったものが、

1 9 7 6

年からの

5

間では

7 0 . 9 %

を占めていることを見いだしている。

Rogge

Cox ( 2 0 0 1 )

は、ソーシャルワークで は「環境での人」の視座を再定義する取り組みが継 続して行なわれているものの、意味するところや利 用のしやすさなどについて見解の相違があり、それ に関する議論がソーシャルワーク専門誌に数多く掲 載されていることに着目し、

1 9 8 7

年からの

1 0

年間

S o c i a lWork A b s t r a c t s

誌に掲載された論文の要 約を対象にコンピュータを用いて内容分析を行い、

どのように「環境での人」を解釈し活用されるのか についての評価を試みている。

V o o r h i s

Wagner ( 2 0 0 2 )

は、同性愛をテーマ とする論文を調べるために、

1 9 8 8

年から

1 9 9 7

年の 間の 4種類のソーシャルワーク研究雑誌に掲載され

1 , 9 6 4

の論文を調査している。結果、

3.9%

にあ たる

7 7

本が該当し、内

3

分の

2

HIV/AIDS

を焦 点としていた。そして多くの論文が人々に問題を設 定しており、同性愛に対する偏見や環境への介入を 志向するものはほとんどなかったことから、ストレ ングスや偏見、社会正義を焦点とする文献がもっと 必要であるとしている。なお、

Royse ( 2 0 0 8 )

はこ の結果を

McMahon

A l l e n ‑ M e a r e s ( 1 9 9 2 )

1 0

年前にソーシャルワークのマイノリティヘの関心を テーマとして行なった調査結果とも類似するとして いる。

C r a i g

Cook

F r a s e r ( 2 0 0 4 )

1 9 9 6

年 か ら

2 0 0 0

年までの

5

年間に、顕著な研究としてソーシ ャルワークリサーチ学会にノミネートされた

2 9 9

の論文を対象に、掲載誌、テーマ領域、研究デザイ ン、分析手法等の観点から分析を行なった。結果、

量的研究が

7 5 . 9 % ( 2 2 7

本)、質的研究が

1 1 . 5 % ( 3 3  

本)、混合型が

1 1 .3 %   ( 3 4

本)であったこと、質的 研究方法で内容分析を使用したものが

2 1 .2 %

だった こと、質的研究の

7 5 . 8 %

がコンピュータ・ソフトウ ェアを使用していたこと等を提示した。また、受賞 した

1 6

の研究は量的研究が

8 1 %

、混合型が

1 9 %

質的研究のみで受賞したものはなかったこと等、こ

④科目の概要に関する分析

T a y l o r

A u s t i n

Mulroy ( 2 0 0 4 )

は、「人間行 動と社会環境」という科目で社会環境がどのように 構成されているかについて分析している。そこでは、

ソーシャルワーク教育協議会

( C o u n c i lon S o c i a l   Work E d u c a t i o n ;  CSWE)

の「教育方針と認可基準」

における「人間行動と社会環境」の内容に基づいて 提供される「人間行動と社会環境」のコース概要か ら、人間行動と社会環境の相補的性質を反映してい るかなどの点について、 8つの基準から検討してい

( p . 6 1 )

。その結果、コースは、ライフスパン志向、

システム志向、理論志向、そしてその組み合わせの 4つのタイプに識別されたとし、また、マクロの社 会環境、人間の多様性、ウェルビーイング、そして 実践を志向する理論への関心が高まっていることを 見いだした。

⑤実践記録や機関・施設資料等に基づく業務分析 倉田

( 2 0 0 1 )

は、サービス計画を実現するため に必要な条件と方策の解明を意図して、介護老人福 祉施設(特養)職員を対象に自由回答法によるアン ケート調査を実施し、

8 2 2

票の回答をもとに内容分 析を行なった結果、 5つのカテゴリーから

2 8

の項 目を抽出したとしている。また、全国の特別養護老 人ホーム

1 , 0 0 0

ヶ所に処遇目標が記載されている資 料の寄贈を依頼した結果、

3 2 4

施設で示されている 処遇目標を分析対象とし、「文章化された処遇目標 を素目標としての単位要素ごとに分解した上でその 内容について分析」

( p . 5 4 )

し、その結果を処遇目 標の位置づけと内容の面から考察を行なっている

(倉田,

2 0 0 0 ) 。

B e n t l e y

Walsh

Farmer ( 2 0 0 5 )

は 、 精 神 医 療分野のソーシャルワーカーの実践役割と活動に関 する

2 0 0 1

年の全国調査の所見を

9 9 4

のデータで報 告しているが、その中では、とりわけ

2

つの自由回 答について内容分析を行なっている。そして、ソー シャルワーカーが精神医療に関する知識を増やし、

特定の介入スキルを使用し、医師等との接触の頻度 を増やすことでさらに大きな役割を担うとともに能

(9)

2 8  

人間健康学研究第 1•2号 合 併 号

力も発揮されるだろうと結んでいる。

口村

( 2 0 1 0 )

は、高齢者のショートステイにお ける生活相談員の業務について、

1 6 7

人の既存臨床 情報

( 1 6

情報)から「相談員が関与した業務」を 抜粋し、内容分析を行なっている。その結果として、

2 2

個のカテゴリーとその上位カテゴリー

5

個を見 いだし、さらにショートステイにおける生活相談員 の業務の特徴に関する考察を行っている。

V. 

内容分析の活用に関する留意点

1 .  

質的調査としての内容分析の利点と弱点 内容分析は、いかに数量的に分析を行なっても、

資料は質的性質をもつものであり、その意味におい て質的データの分析法として位置づけられる(樋口

,  2 0 0 6 )

。これまで見たように、内容分析はソーシャ ルワークの分野でも、研究方法の

1

つとして取り 入れられてきた

( A l l e n ‑ M e a r e s ,1 9 8 4 ;  S m i t h ,  1 9 8 4 ;   Rubin & B a b b i e ,  2 0 1 0 ;  Royse, 2 0 0 8 )

。それは、ソー

シャルワーク専門職として「どこに行こうとするの か」、「どのようにしてそこへ行くのか」の前段階と して「今どこにいるのか」を知るための方法として 活用できる

( T a b e r& S h a p i r o ,  1 9 6 5 )

。内容分析は、

まさにこの点で科学的見地からソーシャルワークに 貢献できる可能性を有している。ここではあらため て、内容分析の利点と弱点をまとめたい。

内容分析の利点は、様々なテキストデータを分析 の対象として活用するという点がある。とりわけ、

アンケート調査やインタビュー等により新たに収集 したデータを対象とすることも可能であるが、既存 資料を対象とできる点は、内容分析の特質をよく示 すもので、他の利点はここから派生したともいえる。

例えば、

Royse ( 2 0 0 8 : 2 5 6 )

は、内容分析を二次 的データ分析としてもとらえており、利点として、

①目立たない、②高額な費用を要しない、③機関の 許可を得られれば、機関が保有する書類やデータベ ースを使用できる、④大量のデータを扱うことがで きる、といった点をあげる。加えて、内容分析の前 提となるリサーチクエスチョンや仮説設定、ある いはデータの存在と分析単位の設定が必要である ことを指摘した上で、内容分析の使用に際しては 特別なトレーニングや知識を要しないと述べてい

( p . 2 5 6 )

。また、

RubinとBabbie ( 2 0 1 0 : 2 4 6 )

利点として目立たなさをあげるが、それは、既存デ ータを使用するという点から、時間と費用が経済的 であること、データ分析の修正が容易であること、

長期の調査期間を設定できること、そして、研究テ ーマに影響されずにデータを扱えることといった理 由をあげている。

資料やデータの提供者が調査を受けているという 意識を持つことなく、資料を分析できることから、

研究倫理に反しない限りで、より自然な、ありのま まの情報を収集できるところに利点を見いだすこと ができる。

一方で、内容分析は、調査手法や実験手法、参与 観察といった他の社会科学や行動科学と同じような 方法を持たないことから、内容分析は簡単に行える ものであること、すべての調査にあてはまる用語で あること、特別な準備のいらない誰もができるもの であること、そして学術的なものに限って使用され るといったように広く誤解されている点があると指 摘される

( N e u e n d o r f ,2 0 0 2 )

また、妥当性と信頼性は課題としてつねに取り 上げられる。分析単位がリサーチクエスチョンに 沿ったものかどうか、適切にデータは分類されて いるかどうかに関する課題である。例えば、

Rubin

とBabbie (

2 0 1 0 : 2 4 7 )

は、分析の対象が記録された ものに限定される点を指摘している。また、

Royse ( 2 0 0 8 : 2 5 6 ‑ 2 5 7 )

は、ことばの出現回数をカウント することとその文面が意図するところは、必ずしも 一致しないことをあげている。ことばが肯定的意味 合いで使用されているのか、それとも否定的な意味 合いで使用されているかは、頻出回数だけで判断す ることはできない。また、ことばから潜在する内容 を推論するためには、複数の分析者によるコーディ ング作業が必要となるが、複数作業における一致度 をどのように保証するか。そして、実験とは違い、

既存の資料を使用するため無関係な変数を統制でき ず、所見では因果関係を証明することができないこ

とを指摘している。

また、テキストデータの質の確認は重要である。

二次的データ分析の弱点には、新旧を含めたデータ の質が保証されないことがあげられることから、サ ンプリングの時点で留意しておくことが求められ る。とりわけ、仮説検証を行なう場合、仮説に適合

(10)

するテキストデータのみを意図的に収集するのでは なく、末確認の事例による分析単位の検証や、反対 の所見を示すようなデータも分析してみることの必 要性が指摘されている

( R o y s e ,2 0 0 8 )

2 .  

内容分析の展開性

ソーシャルワーク研究法として内容分析を用いる 場合に留意すべき点は、信頼性・妥当性の保証と、

テキストデータの数量化がある。とりわけ、数量化 については、樋口

( 2 0 0 6 : 3 )

が「内容分析では、多 くの場合、データをいくつかのカテゴリーに分類し た上で、各カテゴリーに分類されたデータの数を数 え上げたりといった、計量的分析が行われる」と述 べている。このカテゴリー化の作業と計量的分析の 施行は、先の定義のように内容分析の特質といえ るもので、この

2

点を効率的かつ効果的に行なう ための手段としてコンピュータを使用することが 望ましいとされる

( K r i p p e n d o r f f ,1 9 8 0 = 1 9 8 9 ;  

樋口,

2 0 0 6 )

この点が内容分析を用いる際の留意点でもある。

テキストデータを類似性の観点から検討し、新たな カテゴリーに集約するボトムアップ的発想は内容分 析で有力な方法である。しかし、これをすべて手作 業で行なうとなると、複数のコーダーが必要になる。

また、コーダー間の不一致を減らすためのマニュア ルや教示といった対策も必要となる。さらにいえば、

資料の量が膨大な場合、すべてを読み解くことは容 易ではない。こうした点をふまえ、以下では、コン ピュータの使用を念頭においた内容分析の活用につ いてまとめる。

コンピュータの使用にともなう関心事項は、テキ ストデータの質的分析と量的分析の関連性、分析者 の恣意的操作の回避、作業の自動化と効率化、そし て手続きの明示化である。

質的分析と量的分析の関連性は、樋口

( 2 0 0 4 )

が、互いに排他的なそれまでの内容分析の2つの アプローチを統合するアプローチを提案している。

樋口

( 2 0 0 4 : 1 0 2 )

は、これまでのアプローチを、①

C o r r e l a t i o n a l

アプローチと称される「頻繁に同じ 文書の中にあらわれる言葉のグループや、あるい は、共通する言葉を多く含む文書のグループを、多 変量解析によって自動的に発見・分類するためにコ

ンピュータを用いるアプローチ」で「データ中の主 題を探索するアプローチ」と、②

D i c t i o n a r y ‑ b a s e d  

アプローチと称される「分析者が作成した基準にし たがって言葉や文書を分類するためにコンピュータ を用いるアプローチ」にまとめている。そして、前 者は、「多変量解析によってデータ全体を要約・提 示した上で、コーディング規則を公開するという手 順を踏めば、データ全体の中から、どの部分、ある いはどの側面がコーディング規則によって取り上 げられたのかを、第三者が把握できるようになる」

( p . 1 0 4 )

とし、後者の「理論や仮説に都合の良いコ ーディング規則ばかりが作成•利用されてしまう危 険性」

( p . 1 0 3 )

の問題を補うとする。また、「研究 者が抱きうるあらゆる理論・仮説にもとづいた分類 を、多変量解析によって自動化できるとは考えにく

( p . 1 0 4 )

ことをふまえ、「コーディング規則を 作成することで、分析者の理論や問題意識を自由に 操作化し、テキスト型データの様々な側面に自由に 焦点を絞れる」

( p . 1 0 3 )

点に後者の利点があるとし ている。そして、その上で、これらを統合する以下 のアプローチを提案する(樋口,

2 0 0 4 )

段階

1:  C o r r e l a t i o n a l

アプローチに倣い、多変 量解析を用いることで、分析者の持つ理 論や問題意識の影響を極力受けない形 で、データを要約・提示する。

段階

2 :  D i c t i o n a r y ‑ b a s e d

アプローチに倣い、コ ーディング規則を作成することで、理 論仮説の検証や問題意識の追究を行う。

( p . 1 0 4 )  

分析者の恣意的操作の回避、分析作業の自動化と 効率化、手続きの明示化についても、このアプロー チをコンピュータで行なうことにより対応できると ころが多いといえる。樋口

( 2 0 0 6 )

はこうした内容 分析の方法を計量テキスト分析と称し、以下のよう に定義する。

計量テキスト分析とは、計量的分析手法を用 いてテキスト型データを整理または分析し、内 容分析

( c o n t e n ta n a l y s i s )

を行う方法である。計 量テキスト分析の実践においては、コンピュー

(11)

3 0  

人 間 健 康 学 研 究 第

1

2

号 合 併 号

タの適切な利用が望ましい。

( p . 1 8 )

な領域で有用であるといえる。内容分析を効果的に

そして、コンピュータを使う利点として「量的分 析を行う前の段階ではコーディングの信頼性を維持 し、労力を軽減することに、そして量的分析の後の 段階ではデータの質的側面を活かすための検索に役 立つ」点をあげている(樋口,

2 0 0 6 : 1 3 )

計量テキスト分析について、川端

( 2 0 0 9 : 1 3 8 ‑ 1 3 9 )

は利点と弱点を示しており、利点は「大量のデータ が扱えること」、「信頼性を高めることができるこ と」、「コードを共有できること」、「検索が速く正確 であること」をあげ、一方、弱点には「データが少 ないと労力の割に報われないこと」、「あいまいな言 葉をうまく識別できない場合が多いこと」、そして

「コンピュータは文脈を理解できないこと」をあげ ている。

大量のテキストデータの分析を行なえる点でコン ピュータは極めて有用である。分析単位がしつかり していれば、テキストデータがいくら多くとも、コ ンピュータはそれにしたがって分類を行ってくれる であろうし、また、大量のデータから必要なテキス

トデータを抽出してくれるであろう。

一方で、コンピュータの使用はテキストデータが 電子化されていることが前提であることを忘れては ならない。資料が紙媒体で、さらに手書き場合には、

その量が多くなるほど、変換に費やす時間と労力は 膨大になる。資料が電子化されていない場合には見 過ごすことのできない課題である。

これらをふまえると、ソーシャルワーク研究法と して内容分析を用いる場合、テキストデータの電子 化について見通しがあること、そして明確な分析単 位が設定されていることを前提に、コンピュータを 使用する方が得策であるといえる。それにあわせて、

ユーザーとして必要なコンピュータやソフトに関す る知識や技術を修得することが課題となろう。

用いることで、利用者に対する理解や実践に係るエ ビデンスの発見等が期待できる。何よりも、ソーシ ャルワークの分野にある数多くのテキストデータを 理解しやすい形に要約できるという点で、研究デザ イン次第でさらなる活用が期待できる可能性を有し ている。

その一方で、内容分析は、他の質的研究法と同様 に、信頼性と妥当性について留意することが必要で ある。分析を複数で行なうことやコンピュータの使 用により、分析者の恣意性を減らすことに努めると

しても、分析単位の設定ではどうしても分析者の問 題意識が反映されるため、やはり注意を要するであ ろう。また、紙媒体の資料、とりわけ手書き資料を コンピュータで分析する場合には、データの電子化 が課題となることも忘れてはならない。

ソーシャルワーク研究法として内容分析を用いる 場合、他の手法と同様、リサーチクエスチョンや仮 説設定、研究対象等を明確にすることが重要であ り、こうした基礎的作業を通して、内容分析はソー シャルワークの様々な領域で効果を発揮することが できるといえる。

引用・参考文献

A l l e n ‑ M e a r e s ,  P a u l a .   ( 1 9 8 4 )   C o n t e n t  A n a l y s i s :  I t   d o e s   have a  p l a c e   i n   s o c i a l  w o r k .  J o u r n a l  o f  S o c i a l  S e r v i c e   R e s e a r c h ,   7 ,   p p .   5 1 ‑ 6 8 .  

有馬明恵

( 2 0 0 7 )

『メッセージ分析の方法』ナカニシャ

出 版

B e n t l e y ,  K i a  J . ,   W a l s h ,  J .   &  F a r m e r ,   R . L .  ( 2 0 0 5 )   S o c i a l   Work R o l e  and A c t i v i t i e s  Regarding P s y c h i a t r i c   M e d i c a t o n :  R e s u l t s  o f  n a t i o n a l  s u r v e y .  S o c i a l  W o r k ,   5 0 ( 4 ) ,  p p .  2 9 5 ‑ 3 0 3 .  

Berelson, Bernard.  (1952)  Content Analysis i n   C o m m u n i c a t i o n  R e s e a r c h .  G l e n c o e ,   i l l   . :   The F r e e  P r e s s .   ( = 1 9 5 7 ,  

稲葉三千男・金圭燥訳『内容分析』みすず書 VI.  おわりに

1 9 5 7 )

内容分析は、その特質や作業内容を事前に理解し

C r a i g ,  C . D . ,  C o o k ,  P . G .   &  F r a s e r ,  M.W.  ( 2 0 0 4 )   R e s e a r c h  

ておくことを前提として、ソーシャルワークの分野

award  i n   t h e  S o c i e t y  f o r  S o c i a l  Work and R e s e a r c h ,  

でも用いることができる研究方法である。とりわけ、

1 9 9 6 ‑ 2 0 0 0 .   R e s e a r c h  o n  S o c i a l  Work P r a c t i c e ,   1 4 ( 1 ) ,   p p .  

各種報告書や実践記録やアンケートの自由回答を分

5 1 ‑ 5 6 .  

析する方法として、教育、研究、実践といった様々 藤野好美

( 2 0 0 8 )

「養護老人ホームの女性入所者にとっ

(12)

ての「老い」とケアの課題について—ィンタビュ

ーを基にした内容分析一」『社会福祉学』 4 9 ( 2 ) ,p p .   9 7 ‑ 1 1 0 .  

藤田真文 ( 1 9 9 7 ) 「メッセージを解剖する」橋元良明編『コ ミュニケーション学への招待』大修館書店、 p p .1 1 5 ‑ 1 3 0 .  

藤田真文 ( 1 9 9 2 ) 「内容分析研究における『量化』の展 開と批判」『慶応義塾大学新聞研究所年報』 3 8 ,p p .   5 3 ‑ 7 2 .  

橋元良明 ( 1 9 9 8 )「メッセージ分析」高橋順ー・渡辺文夫・

大渕憲一編著『人間科学研究法ハンドブック』ナカ ニシャ出版, p p .7 5 ‑ 8 6 .  

樋口耕一 ( 2 0 0 6 ) 「内容分析から計量テキスト分析へ 縦承と発展を目指して一」『大阪大学大学院人 間科学研究科紀要』 3 2 ,p p .  1 ‑ 2 7 .  

樋口耕一 (2004) 「テキスト型データの計量的分析—

2 つのアプローチの峻別と統合」『理論と方法』 1 9 ( 1 ) , p p .  1 0 1 ‑ 1 1 5 .  

舟島なをみ ( 2 0 0 7 )『質的研究への挑戦(第 2 版)』医学 書院、 p p .4 0 ‑ 7 9 .  

日吉昭彦 ( 2 0 0 4 ) 「内容分析研究の展開」『マス・コミュ ニケーション研究』 6 4 ,p p .  5 ‑ 2 4 .  

H o l i s t i ,  Ole  R .  ( 1 9 6 9 )  C o n t e n t  A n a l y s i s  f o r  S o c i a l  S c i e n c e s   and H u m a n i t i e s .  R e a d i n g ,  MA: Addison‑Wesley. 

池内一 ( 1 9 5 4 ) 「内容分析の方法について(上)」『東京 大学新聞研究所紀要』 3 ,p p .  3 3 ‑ 4 6 .  

池内一 ( 1 9 5 6 ) 「内容分析の方法について(下)」『東京 大学新聞研究所紀要』 5 ,p p .  4 7 ‑ 5 8 .  

川端亮 ( 2 0 0 9 ) 「質的データのコンピュータ・コーディ ング」谷富夫・芦田徹郎編著『よくわかる質的社会 調査ー技法編』ミネルヴァ書房、 p p .1 3 4 ‑ 1 4 7 .   Kramer, B e t t y  J . ,   Hovland‑Scafe, 

C. 

&  Pacourek, L .  

( 2 0 0 3 )  A n a l y s i s  o f  E n d ‑ o f ‑ L i f e  Content i n  S o c i a l  Work  T e x t b o o k s .  / o u r n a l  o f  S o c i a l  Work E d u c a t i o n ,  3 9 ( 2 ) ,  p p .   2 9 9 ‑ 3 2 0 .  

Krippendorff, Klaus. ( 1 9 8 0 )  Content A n a l y s i s :  An  i n t r o d u c t i o n  t o  i t s  m e t l w d o l o g y .  (=三上俊治・椎野信雄・

橋元良明訳 ( 1 9 8 9 )『メッセージ分析の技法一「内 容分析」への招待一』勁草書房)

倉田康路 ( 2 0 0 1 ) 「入所施設におけるサービス計画(全 体計画)を実現するための条件と方策―介護老人 福祉施設(特養)職員による自由回答の内容分析か

ら一」『社会福祉学』 4 2 ( 1 ) 、 pp.101

1 1 3 .

倉田康路 ( 2 0 0 0 ) 「特別養護老人ホームにおける処遇 目標に関する分析的研究ー一施設運営上の視点から 一」『ソーシャルワーク研究』 2 6 ( 2 ) ,p p .  5 2 ‑ 5 8 .   口村淳 ( 2 0 1 0 ) 「高齢者ショートステイにおける相談

員業務の特徴ー一既存臨床情報の内容分析を通して 一」『社会福祉学』 5 0 ( 4 ) ,p p .  1 4 8 ‑ 1 5 9 .  

McMahon, Anthony & A l l e n ‑ M e a r e s ,  P .  ( 1 9 9 2 )  I s  S o c i a l   Work R a c i s t ?  :  A c o n t e n t  a n a l y s i s  o f  r e c e n t  l i t e r a t u r e .   S o c i a l  W o r k ,  3 7 ( 6 ) ,  p p .  5 3 3 ‑ 5 3 9 .  

McRoy, Ruth G . ,  G r o t e v a n t ,  H . D . ,  L o p e z ,  5 .  A. & F u r u t a ,   A .  ( 1 9 9 0 )  Adoption R e v e l a t i o n  and Communication  I s s u e :  I m p l i c a t i o n s  f o r  P r a c t i c e .  F a m i l i e s  i n  S o c i e t y ,   7 1 ( 9 ) ,  p p .  5 5 0 ‑ 5 5 7 .  

Neuendorf, Kimberly A. ( 2 0 0 2 )  The C o n t e n t  A n a l y s i s   G u i d e b o o k ,  Sage P u b l i c a t i o n s .  

Rogge, Mary E . ,   &  Cox, M.E. ( 2 0 0 1 )  The P e r s o n ‑ I n ‑ E n v i r o r u n e n t  P e r s p e c t i v e  i n  S o c i a l  Work J o u r n a l s :  A  c o m p u t e r ‑ a s s i s t e d  c o n t e n t  a n a l y s i s .  J o u r n a l  o f  S o c i a l   S e r v i c e s  R e s e a r c h ,  2 8 ( 2 ) ,  p p .  4 7 ‑ 6 8 .  

R o y s e ,  D a v i d .  ( 2 0 0 8 )  Content A

y s i s ,R e s e a r c h  Methods  i n  S o c i a l  W o r k ,  5 t h  e d . ,  B r o o k s / C o l e ,  p p .  2 5 4 ‑ 2 6 3 .   Rubin, Allen & Babbie, E .  ( 2 0 0 8 )  E s s e n t i a l  R e s e a r c h  

Methods f o r  S o c i a l  Work, 2nd e d . ,  Brooks/Cole, p p .   2 3 7 ‑ 2 5 1 .  

沖田佳代子 ( 1 9 9 9 ) 「痴呆性高齢者の介護における倫理 的諸問題ー一家族介護者による自由記述回答の内容 分析一」『社会福祉学』 4 0 ( 1 ) ,p p .  1 9 0 ‑ 2 0 8 .  

Smith, Audrey D. ( 1 9 8 2 )  Another Look a t  Content  A n a l y s i s :  An  essay r e v i e w .  S o c i a l  Work R e s e a r c h  & 

A b s t r a c t s ,  1 8 ( 4 ) ,  p p .  5 ‑ 1 0 .  

鈴木裕久•

島崎哲彦 ( 2 0 0 6 )『新版・マス・コミュニケ ーションの調査研究法』創風社.

T a b e r ,  Merlin & S h a p i r o ,  I .   ( 1 9 6 5 )  S o c i a l  Work and I t s   Knowledge B a s e :  A c o n t e n t  a n a l y s i s  o f  t h e  p e r i o d i c a l   l i t e r a t u r e .  S o c i a l  W o r k ,  1 0 ( 1 0 ) ,  p p .  1 0 0 ‑ 1 0 7 .  

T a y l o r ,  S a r a h ,  Mulroy, E . A .  & A u s t i n ,  M . J .  ( 2 0 0 4 )  S o c i a l   Work Textbooks on Human B e h a v i o r  and t h e  S o c i a l   E n v i r o r u n e n t :  An  A n a l y s i s  o f  t h e  S o c i a l  E n v i r o r u n e n t   Component. J o u r n a l  o f  Human B e h a v i o r  i n  t h e  S o c i a l   E n v i r o n m e n t ,  1 0 ( 3 ) ,  p p .  8 5 ‑ 1 1 0 .  

Taylor, Sarah, Austin, M . J . ,  Mulroy, E.A. ( 2 0 0 4 )  

参照

関連したドキュメント

C. 

 リスク研究の分野では、 「リスク」 を検証する際にその対になる言葉と して 「ベネフ ィッ ト」

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o

※ 2 既に提出しており、記載内容に変更がない場合は添付不要

である水産動植物の種類の特定によってなされる︒但し︑第五種共同漁業を内容とする共同漁業権については水産動

これら諸々の構造的制約というフィルターを通して析出された行為を分析対象とする点で︑構

①配慮義務の内容として︑どの程度の措置をとる必要があるかについては︑粘り強い議論が行なわれた︒メンガー

 筆記試験は与えられた課題に対して、時間 内に回答 しなければなりません。時間内に答 え を出すことは働 くことと 同様です。 だから分からな い問題は後回しでもいいので