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ニ パブリシティ価値が発生するもの

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(1)

  パブリシティ価値の定義と﹁パブリシティの権利﹂        い

堀 江 亜以子    

一 わが国における﹁パブリシティ権﹂保護理論の展開

ニ パブリシティ価値が発生するもの

 ー.生物

  ω 著名人︵芸能人︑スポーツ選手等︶の氏名・肖像        ・

  ② 動物

  ③ 植物 ︑

 2.非生物

  ω 著作権との交錯

  ② 商標権との交錯

  ㈲ 意匠権との交錯      ︐     ︑   −       ︑

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       .   ︵都法四十四ー二︶ 二七五

(2)

・      二七六

 3.小括

三 ﹁物のパブリシティ権﹂対象物の類型化

 1.﹁物﹂の性質に基づく四類型

 2.﹁物のパブリシティ権﹂論は必要か

四 不正競争防止法の適用可能性

 1.﹁パブリシティ価値﹂と差止請求権

 2.出所表示・品質保証機能との乖離

五 今後の課題

一 わが国における﹁パブリシティ権﹂保護理論の展開

      ︵1︶  いわゆる﹁パブリシティの権利﹂論は︑当初米国において発生・発展したものであるが︑この概念が日本に紹介さ       ︵2︶ れ︑実際に判決として登場したのはマーク・レスター事件判決が最初である︒この事件では︑子役俳優が主演した外

国映画の一部を︑映画の内容とは関係のないチョコレート菓子の広告に使用した行為につき︑当該俳優に損害賠償請

求権が生ずるか否かが争われた︒この判決においては直接に﹁パブリシティ権﹂という文言は用いられていないもの

の︑わが国の判例上初めて︑俳優等の氏名・肖像について人格的利益︵精神的利益︶とは別個独立した﹁氏名及び肖

像に関する財産的利益﹂の存在が肯定された︒       ︵3︶  その後いくつかの裁判例を経て︑﹁パブリシティ権﹂という文言が使用されるに至ったのは﹁光GENJI﹂事件

(3)

︵4︶ 判決である︒これらの裁判例を通じて︑著名人の氏名・.肖像等を広告に使用したり︑あるいはそれ自体を商品化する

ことによって︑プライバシー権等の人格的利益とは異なる経済的利益が発生し︑これが法的な保護の対象となること

が明らかにされた︒       ︵5︶  さらに︑﹁おニャン子クラブ﹂事件控訴審判決は︑著名人の氏名・肖像等に生ずる経済的利益の侵害につき差止請

求権を行使しうると判示した︒差止請求権が発生する明確な条文根拠は示されなかったものの︑この判決以後︑﹁パ

ブリシティ権﹂とは﹁固有の名声︑社会的評価︑知名度等を獲得した著名人がその氏名︑肖像から生ずる顧客吸引力

の持つ経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利﹂として認知されていくことになる︒       ︑        ︵6︶  その後︑﹁パブリシティ権﹂の対象は拡大する傾向を見せる︒﹁キング・クリムゾン﹂事件第一審判決は︑著名なロッ

クバンドに関する情報を網羅的に掲載した書籍にレコード・ジャケットを掲載する行為も﹁パブリシティ権﹂侵害に        ︵7︶      ︵8︶ 当たると判断した︒さらに︑ギャロップレーサー事件判決では︑競馬ゲーム・ソフトの中で実在の競走馬の馬名を使

用した行為につき﹁物のパブリシティ権﹂の侵害を認め︑その権利の帰属主体を物︵H競走馬︶の所有権著︵H馬主︶

であると判示した︒

 これに対し︑同様に競走馬育成ゲームソフトの中で実在の競走馬の名称を使用した行為が問題となったダービース

︑      ︵9︶ タリオン事件控訴審判決は︑﹁パブリシティ権﹂は人格権に根ざすものであって︑物に﹁パブリシティ権﹂を認める

ことはできないと判示した︒ここに至って︑裁判例の積み重ねによって明らかにされつつあるかに思われた﹁パブリ

シティ権﹂の内容や対象は\再び混迷の状況に陥ったといってよいであろう︒

 ﹁パブリシティ権﹂を定義するに当たって︑その発生のメルクマールとなる﹁顧客吸引力﹂はしばしば﹁パブリシ

ティ価値﹂と呼ばれる︒そして︑﹁パブリシティ権﹂侵害の有無が問題となるのは︑﹁パブリシティ価値﹂自体が商品

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二七七

(4)

      二七八

化され︑あるいはその宣伝・広告効果を利用された場合である︒本稿は.いわゆる﹁パブリシティ権﹂論を展開する前

提として︑﹁パブリシティ権﹂が保護の対象としている﹁パブリシティ価値﹂とは何かを明らかにすることにより︑

﹁パブリシティ権﹂の内容を明らかにする道筋を示すことを目的とする︒

 次節ではまず︑現在﹁パブリシティ権﹂論において議論の対象とされているものに限らず︑﹁パブリシティ価値﹂

が発生しうると考えられるものとして︑その名称や外観自体に商品価値が発生して商品化事業や宣伝・広告に利用さ

れうるものを分類・列挙し︑﹁パブリシティ価値﹂とは何かを明らかにする︒

 次に昨今の﹁物のパブリシティ権﹂論について︑対象の側面から考察することにより︑議論の妥当性について検討

する︒  その後︑現行法上適用しうる可能性のある法規として︑不正競争防止法の適用可能性に言及し︑従来からの各論的

問題解決への足がかりを作りたいと思う︒

ニ パブリシティ価値が発生するもの

 一でみた通り︑現在︑わが国の裁判例において︑芸能人や有名スポーッ選手といったいわゆる著名人の氏名・肖像

については﹁パブリシティ権﹂に基づ︑いてその﹁パブリシティ価値﹂の保護がなされているが︑動物その他の﹁物﹂        ︵10︶ については見解が分かれている︒他方︑学説上においては︑商品化事業と宣伝・広告という利用態様に着目して漫画       ︵11︶ のキャラクターや︑プロ・スポーツ・チームのシンボルマーク等をも視野に入れた論考がみられる︒以下では︑商品

化事業あるいは宣伝・広告に利用されうると考えられるものを︑まず生物と非生物とに分け︑それらが従来求められ

(5)

ている社会的役割と商品化事業や宣伝・広告利用との関係について分類・分析することを通じて︑﹁パブリシティ価

値﹂とは何かを定義する︒

  ・1.生物       ︐

    ω 著名人︵芸能人︑スポーッ選手等︶の氏名.肖像

    現在わが国において︑著名人の氏名・肖像等に﹁パブリシティ価値﹂が発生するということについては︑判例.学

   説ともに見解の一致しているどころであろう︒また︑商品化事業・広告宣伝のいずれにおいても利用されうることに

︐  ついても疑いの余地はない︒しかしながら︑その﹁著名人﹂の﹁業務内容︵11社会的役割︶﹂によって︑﹁パブリシティ

   価値﹂の発生の仕方に相違がみられる可能性があるだろう︒

 a.歌手︑俳優︑スポーッ選手等

  歌手︑.俳優︑スポーッ選手等については︑まず︑その芸能活動や競技における活躍を通じて著名となり︑そこから

 ﹁パブリシティ価値﹂が発生し︑商品化事業への利用可能性が生ずると考えることができる︒広告.宣伝についても

^利用価値が発生するめは著名性の獲得後である︒この場合︑彼らの氏名・肖像は﹁パブリシティ価値﹂を有する氏名.

 肖像であると同時に︑その活動や競技といった﹁本来的業務︵‖歌唱・演奏︑演技︑競技︶﹂をするに当たって彼ら

 を識別する標識でもあり︑両者の機能を区別することが可能である︒仮にこの﹁本来的業務﹂を一次的コン一プクスト

 とすれば︑彼らの氏名・肖像は一次的コンテクストの主体を示す表示として機能すると同時に︑そこから離れた二次

∨的コンテクストにおいて商品化し︑あるいは宣伝・広告に利用しうると考えることができる︒すなわち﹁パブリシティ

    パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二七九

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二八〇

価値の発生﹂とは﹁二次的コンテクストの発生﹂ということができるであろう︒

b.著名性先行型の芸能人等

 しかしながら︑現在﹁パブリシティ価値﹂の発生する著名人とは︑必ずしも前項で述べたような本来的業務を通じ

て著名になった者ばかりとはいえないのではないか︒特に芸能人においては︑著名性の獲得が先行する場合がかなり        ロ  増えているのではないだろうか︒このような場合には︑一次的コンテクストが未定または欠如したまま二次的コンテ

クストが発生する︑もしくは二次的コンテクストの発生そのものが目的であるということもできるであろう︒

 ② 動物

 動物に関しても︑商品化事業や広告宣伝に利用されることが少なくないことから︑﹁パブリシティ価値﹂が発生し

ていると考えることができる︒実際には動物タレント専門の事務所に所属し︑訓練されている動物が︑映画やドラマ︑

CMなどに登場して人気を博す場合が典型的であるが︑その他にメディアで紹介された珍しい動物が人気を博し︑商

品化事業に利用されることもある︒その際前者の場合にはその動物個体自体に識別力が生じているのに対し︑後者の

場合は個体ではなく動物種に人気が発生していることが多いという特徴がある︒

a.個体識別力を獲得した動物の名称・肖像

 動物個体自体に識別力が生じている場合︑著名人の例に模して︑その個体の名称・姿態は︑動物タレントとしての

業務という一次的コンテクストにおける動物個体に関する表示であると同時に︑二次的コンテクストにおける﹁パブ

リシティ価値﹂の発生源であるといいうる︒しかしながら︑動物の場合︑商品化事業の対象となりうることは間違い

(7)

ないが︑宣伝・広告に利用する場合には︑その動物個体が出演することによって宣伝・広告の効果が高くなるという

相関関係は︑否定はできないものの︑著名人の場合に比して薄いのではないだろうか︒

b.個体識別力はないが︑新たに種としての識別力・人気を得たもの     

他方︑個体識別力が発生していない場合︑当然一次的コンテクストは存在しない︒商品化事業の対象として二次的

コンテクストが発生する余地はあるが︑そこに﹁権利﹂を措定するとした場合︑その主体が想定しうるのだろうか︒

その動物が主体になり得ないのは当然として︑種全体の名称や姿態が二次的コンテクストの発生源である場合︑それ

を特定人に帰属させることはできるのであろうか︒この点につき︑野生生物の場合と︑人工交配やその他の技術によっ

て人為的に作られた生物種とを分けて考えることができるが︑この点については﹁物のパブリシティ権﹂との関連に

おいて後述する︒

 ③ 植物

 植物については︑一次的コンテクストを想定することはまず不可能であるが︑個体識別力を獲得している場合にそ

れを商品化する可能性はある︒個体識別力を持たない場合はどうか︑また動物におけるのと同様︑野生の場合と人工︑  .

の場合との異同はどうかといった問題については﹁物のパブリシティ権﹂どの関連において後述する︒

2.非生物         ・    ︑  わが国の裁判例において主に﹁パブリシティ権﹂の対象として議論されているのはほとんどが人や動物についてで

あるが︑﹁物のパブリシティ権﹂肯定論者が﹁物のパブリシティ権を認めた事例﹂としてあげる判決の中には生物以

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二八一

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       ︑二八二

         ︵13︶ 外のものも含まれている︒また前述の通り︑﹁パブリシティ価値﹂の発生源としてはキャラクターやシンボルマーク

等も視野に入れる必要がある︒生物以外のもの一般を対象とする﹁物のパブリシティ権﹂論については節を改めて言

及するので︑ここでは実際に商品化事業が行われる一方で︑その対象物が他の知的財産法によっても保護の対象たり

うる場合に限定して検討する︒

ω 著作権との交錯      −

a.漫画・アニメのキャラクター

 漫画やアニメーション等のキャラクターについてはその商品化に関する権利を中心に従来様々に議論され︑判例上       ︵14︶       ︵15︶ も著作権法による保護を認めた事例と不正競争防止法による保護を認めた事例とが存在する︒このうち著作権法によ

る保護を認めた事例において特徴的なのは︑キャラクターを特定の容姿・外観・性格等を備えた人格的なものとして

とらえ︑キャラクターそのものについての著作物性は否定するものの︑結論としては原著作物の複製や変形に該当す

るものとして原著作物の著作権に基づく保護が与えられていることである︒

 漫画やアニメのキャラクターは︑一次的コンテクストにおいて︑原著作物のストーリーを展開させるための登場人

物であって︑その名称や外観・姿態は当該キャラクターを表す記号的なものとして著作物の一部を成すものである︒

しかしながら︑二次的コンテクストにおいて︑キャラクターの名称・外観・容姿は︑原著作物から離れて商品化され

うるパブリシティ価値の源泉として存在するものであるから︑著名人の氏名・肖像に生ずる﹁パブリシティ価値﹂に

類似するものと考えることができる︒また︑著名人と同様に︑キャラクターの名称・外観・姿態から生ずる宣伝・広

(9)

告効果を︑原著作物から離れて利用しうることも既に周知の事実であろう︒だとすれば︑﹁パブリシティ価値﹂とい

う観点からすれば︑著名人と漫画・アニメのキャラクターとは同列に扱われてよいはずである︒

 しかしながら︑ここで問題となるのが︑原著作物の著作権保護期間との関係である︒漫画・アニメキャラクターの

商品化権については原著作物の著作権によるものとする裁判例が既に多数蓄積されていることを勘案して︑一次的コ

ンテクストにおいて著作権法で保護されるものは二次的コンテクストにおいても著作権法で保護されるべきであると

いうのであれば︑原著作物の著作権保護期間終了と同時に﹁パブリシティ価値﹂もパブリック・ドメイン化すること

になる︒果たしてこれが妥当な解決であるか否かについてはさらなる検討を要する︒また︑近年において不正競争防

止法によって保護を与える裁判例もみられる点も留意すべきであろう︒

b∵キャラクター商品のためにのみ創作されたキャラクター      ︑

 前述の原著作物たる漫画やアニメのキャラクターとして著名になったものに﹁パブリシティ価値﹂が発生する場合

以外にも︑架空の存在であるキャラクターが商品化され︑あるいは宣伝・広告に利用されることが往々にしてある︒

これは最初から﹁キャラクター商品﹂として販売するためにデザインされたキャラクターを︑文具や食器︑衣類その

他の商品に付して販売するような形態である︒最近は︑このようなキャラクターが特に人気を博した場合に︑その後

に絵本や漫画が出版されたり︑アニメ化されたりすることはあるが︑当初は﹁商品化を目的として創作されたキャラ

クター﹂をのみが存在するにすぎないから︑︐二次的コンテクストのみを目的とし︑一次的コンテクストが欠如したキャ

ラクターということができるであろう︒このようなキャラクターも﹁パブリシティ価値﹂が発生すれば︑商品化事業        ︵16︶︑−       ︑ のみならず︑宣伝・広告に利用されうることはもちろんである︒

c.美術著作物︵絵画・彫刻・写真︶の商品化

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄   −   a        ︵都法四十四ー二︶ 二八三

(10)

       二八四

 従来あまり論じられることはなかったが︑漫画やアニメ以外の美術著作物についても実際に商品化されたり︑宣伝・

広告に利用されたりしている現実に鑑みれば︑その﹁パブリシティ価値﹂を論じる余地は存在するであろう︒美術作

品も︑美術館の売店などで︑ポスターや絵葉書のみならず︑Tシャツや文旦ハ︑灰皿などに印刷されて販売されること

があるが︑作品全体が複製されている場合︑特に絵画や写真などに関しては︑未だ著作物としての鑑賞対象の範疇に

あるというべきであり︑印刷されている媒体が何らかの商品であるにすぎないから︑著作権法プロパーの問題として

把握しても何ら問題は生じないと思われる︒

 しかし︑著名な絵画作品に描かれた人物等について︑その部分だけが抜き出され︑立体化され︑商品化されること     ︵17︶ は起こり得る︒この場合は鑑賞の対象というよりも︑むしろ漫画・アニメのキャラクターに類似すると言えるであろ

う︒  但し︑彫刻等の立体作品についてはいずれに分類されるのかを一概にいうのは困難であり︑個別具体的な事例に即

して判断するしかないと思われる︒

 ② 商標権との交錯

 著名な商標は︑それが表章するものを離れて︑﹁パブリシティ価値﹂を生ずることがある︒この場合︑当該商標が

付されている商品が指定商品であるか否かは関係がなく︵むしろ指定商品外であることも多いであろう︶︑また当該

商標が本体表すべき出所とは異なる出所によって製造され︑当該商標とは別に商品出所が表示されていることも多い        ︵18︶ から︑このような態様で使用される限りにおいて︑当該商標それ自体は出所表示機能も失われているといってよい︒

商品を購入する消費者側も︑当該商標の本来的に有する出所表示機能や品質保証機能とは全く関係なく︑商品デザイ

(11)

      ︵19︶ ンとしての商標にひかれて購入しているにすぎない︒

 すなわち︑商標その他の標章についても一次的コンテクスト︵11商品等の出所表示・品質保証︶を離れて︑二次的

コンテクストとして﹁パブリシティ価値﹂が発生しうるということができるであろう︒この場合︑商標権の対象であ

る登録商標と︑不正競争防止法上の商品等表示としての保護のみを受けうる標章とに分けられるが︑前者につき︑ギャ       の  ロップレーサー事件控訴審判決は︑﹁商標法によって商標として登録した馬名が保護されるのは・登録した商標を自

己の業務にかかる商品又は役務について使用する場合に限られるのであって︑本件のように競走馬の馬主が競走馬の

有する名声︑社会的評価︑知名度等から生じる顧客吸引力という経済的利益ないし価値を支配し︑これを利用しよう

とするときには︑必ずしも有効とはいえないことが明らかである﹂として︑商標法の適用を否定している︒確かに︑.

自他商品識別力が認められれば︑たとえ未使用の段階であっても登録しうる商標権を︑全く異質な﹁パブリシティ価

値﹂についても援用するのは妥当な解決とは言えない︒

 他方︑不正競争防止法によって保護される商品等表示である場合については︑二条一項一号における出所表示・品

質保証機能を捨象して︑二号の著名表示保護規定を適用することになるであろう︒

 ③ 意匠権との交錯

 意匠権の対象となっている物品のデザインが人気を得た場合はどうか︒意匠権の保護期間内であれば︑同一類似物

品についてはまさに意匠権侵害の問題であるし︑非類似物品においては意匠の転用の問題である︒また当然の事なが

ら保護期間終了後であれば当該意匠はパブリック・ドメイン化するのであるから︑何人も自由に利用できるはずであ

る︒しかし︑当該意匠が︑不正競争防止法上の商品等表示としての機能を果たすに至っていた場合はどうか︒これは

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利ピ      ︵都法四十四ー二︶ 二八五

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      二八六

意匠法と不正競争防止法の適用関係の問題ということになり︑本稿の射程からはずれるが︑商品等表示としての機能

を維持・管理する行為が継続的に適切に行われている場合には︑不正競争防止法プロパーの問題となるであろう︒

3.小括  歌手・俳優・スポーッ選手等の人物や︑個体識別力を獲得した動物︑漫画・アニメ等のキャラクターは︑その本来

担う業務・役割︵一次的コンテクスト︶において著名となり︑そこから各々の氏名︵名称︶︒肖像︵外観︒姿態︶に

ついて発生した﹁パブリシティ価値﹂を商品化事業や宣伝・広告に利用しうる︵二次的コンテクストの発生︶という

ことができる︒商標についても︑本来的に商標として果たすべき機能︵一次的コンテクスト︶を離れて︑それ自体に

﹁パブリシティ価値﹂が発生し商品化事業が可能となる︵二次的コンテクストの発生︶点で同様である︒また一般の

美術著作物の中にも︑鑑賞の対象たる著作物︵一次的コンテクストの存在︶を離れて︑それ自体が商品化事業や宣伝︒

広告に利用しうる︵二次的コンテクストの発生︶ものが含まれている︒

 このことから︑従来の﹁パブリシティ権﹂論において保護の対象とされている﹁パブリシティ価値﹂とは︑従来議

論されている﹁芸能人︑スポーツ選手等の著名人の氏名・肖像等に生ずる経済的利益﹂の枠に限定されるものではな

く︑生物であると否とに関わりなく︑それが社会的に期待されている役割を超えて︑それ自体に独自の商品価値や宣

伝・広告効果を備えたもの全般に認められるものであるといえる︒さらには︑グラビアアイドルやキャラクター商品

のために創作されたキャラクターのように︑最初からその肖像・外観・姿態等に商品価値や宣伝︒広告効果を生じさ

せ利用することを目的とするものは︑一次的コンテクストが欠如したまま︑﹁パブリシティ価値﹂の追求をその本旨

としているものであって︑むしろ︑純粋に﹁パブリシティ価値﹂の範疇にあるといえるから︑価値の源泉たるものが

(13)

一次的コンテクストにおいていかなる法的保護を受けているかによって︑﹁パブリシティ価値﹂の保護の可否を検討

することは妥当とは言えない︒

三 ﹁物のパブリシティ権﹂対象物の類型化

 二では﹁パブリシティ価値﹂の源泉たりうると思われるものを生物と非生物︵知的財産権の客体︶とに分け︑一次

的コンテクストにおける法的保護との関係という視点から見てきたが︑これらと︑近年問題とされている﹁物のパブ

リシティ権﹂論とはどのような関係に立つのか︒また︑﹁パブリシティ価値﹂の保護対象の範囲として︑どこに境界    ︐

がひかれるべきなのか︒ここでは︑﹁物のパブリシティ権﹂論において取り上げられそいる裁判例に現れた保護客体

を足がかりに分類.分析を加え︑さらにニー②および⑧で積み残した動・植物と﹁パブリシティ価値﹂の問題を検討

したい︒ 1. ﹁物﹂の性質に基づく四類型

 いわゆる﹁物のパブリシティ権﹂論がその対象にしているのは︑生物以外の﹁物﹂︐であり︑基本的には有体物の名

称.外観に﹁パブリシティ価値﹂が発生しうることを前提としている︒二2.では非生物については一次的コンテ

クストとして知的財産法による保護が認められるものに限定して検討七たが︑﹁物のパブリシティ権﹂論において取

り上げられている物は既存の知的財産法による保護が認められないか︑あるいは前述の競争馬名のように︑それによ

る保護が妥当ではない︑もしくは不明確なものである︒

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄      ︐︵都法四十四−二︶ 二八七

(14)

       二八八

 一方︑動・植物に関する検討からすると︑﹁人﹂以外のものについては﹁生物/非生物﹂という切り分けのみなら

ず︑﹁自然物・人工物﹂という分類も可能であり︑その結果﹁人﹂以外のものについては以下の4類型に分類するこ

とができる︒

 a 生物×自然物

 b 非生物×自然物

 c 生物×人工物

 d 非生物×人工物

 まず︑aの類型についてであるが︑野生動物の珍種が衆目を集め︑その姿態を撮影した写真や戯画化した絵画が商

品化されることは珍しくない︒しかし︑野生動物である以上︑個体識別力を得ることは非常に稀であって︑特定種の

有する一般的特徴までしか認識されないのが通常であるから︑その商品化はむしろ商品等に使用される写真や絵画の

著作権の問題に集約されるであろう︒野生植物に関しては︑特に古い巨木などはその所在を特定することができるか    身

ら個体識別力を得る可能性はあり︑また当該個体に所有権が発生していることもあり得る︒商品化事業を行うに値す

る商品価値が発生する場合︑法律上の権利としては商品化に当たって使用される写真等の著作権と︑当該個体の所有

権が関わることになるが︑個体識別力ある植物の全てに商品化事業上の価値が発生するわけではないことに留意する

必要がある︒

 b類型についても︑生物以外の自然物が商品化事業の対象たりうるには個体識別力が必要であろう︒例えば︑景勝

地の山や岩︑河川等である︒この場合も︑野生植物と同様に︑所有権の客体たる可能性がある︒

 だとすると︑aとbは︑むしろ﹁個体識別力のある自然物﹂と﹁個体識別力のない自然物﹂とに分類し直すことが

(15)

できよう︒そして﹁個体識別力のない自然物﹂につき︑その名称や一般的特徴としての外観を何者かが独占しうると

すれば︑それは当該自然物を写し取った写真や絵画の著作権として︑あるいは︑当該自然物とは無関係な商品・役務

において使用される商標としてでろう︒もし仮にその名称や外観に商品価値が発生して商品化されあるいは宣伝・広

告に利用されることがあるとすれば︑それは二2.で言及したように︑著作物や商標について﹁パブリシティ価値﹂

が発生していると考えるのが自然であろう︒       −

 同様のことは﹁個体識別力のある自然物﹂についても言えるが︑この場合さらに所有権の客体たる可能性がある︒

しかしここで注意しなければならないのは︑個体識別力の発生と︑それが現に何人かの所有権の客体であるか否かと

いう事実との間には︑何ら相関関係が存在していないということである︒もちろん︑所有権の効力として︑動産であ

れば非公開にすることができるであろうし︑不動産の場合にも周囲を立入禁止にすることができる︒しかしながら︑

商品化や宣伝・広告利用に値する﹁パブリシティ価値﹂は︑それらに所有権者が存在しなくても発生しうるのである

から︑所有権の内容に﹁パブリシティ価値﹂まで含めて考えるのは妥当とは言えない︒

 他方︑いわゆる﹁物のパブリシティ権﹂論において︑わが国の裁判例上﹁物のパブリシティ権﹂を認めたといわれ

るものは全て︑cもしくはdの類型に分類されるであろう︒

 例えば︑生物であっても︑品種改良や調教その他人間の手が加わっているものを人工物と定義するならば︑長尾鶏

︵21︶      ︵22︶ 事件や競走馬パブリシティ事件が射程にしていたものをc類型に含めることができる︒       −        ︵23︶         ︵24︶  また︑広告用ガス気球事件︑クルーザー事件︑前掲キング・クリムゾン事件などは︑生物以外のものであって︑人

の手により創造されたものが対象となっていた事例であるからd類型に分類することができる︒

 だとすると︑現在﹁物のパブリシティ権﹂論において議論されている﹁物﹂とは全て人工物であり︑その﹁パブリ

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二八九   −

(16)

       二九〇

シティ価値﹂の対象となる名称や外観は人間の創造物ということになる︒わが国の法体系上︑人の創作に係る名称や

外観については既に︑意匠法・商標法・著作権法・不正競争防止法等の知的財産法がその保護対象としているから︑

あえて﹁パブリシティ権﹂というものを想定するに当たっては︑それらの諸法との関係が明らかにされなければなら

ない︒ここでひとまず項を改めて︑﹁物のパブリシティ権﹂論がその根拠としている﹁物﹂について検討し︑﹁パブリ

シティ価値﹂というものをよりいっそう明らかにしてみようと思う︒

2.﹁物のパブリシティ権﹂論は必要か

 ω  ﹁生物×人工物﹂類型判決の検討

 長尾鶏事件では︑品種改良によりある特徴を持った観賞用の鶏を得たことにより︑その外観の商品への利用につき

独占権を主張した事例であるが︑その形質が突然変異等技術以外のものに由来するのであって︑更に一個体限りのも

のである場合には︑その個体の外観につき商品化事業に値する価値が発生する可能性はあるだろう︒しかし︑その形

質が繁殖によって次世代に受け継がれるようなものである場合に︑当該品種全般の外観についての商品化事業上の価

値と︑そのうちの一個体が備えた価値との優劣関係を考えた場合︑やはり個体識別力を備えたものが優先されるべき

であろう︒

 品種全般の外観的特徴はむしろ︑識別標識として不正競争防止法上の表示概念に含まれうるものであり︑その表示

としての性質を超えて商品化事業上の価値が生ずるか否かの問題と考えるのが適切ではないだろうか︒

 他方︑個体識別力を備えたものである場合は︑ニー.②において述べたとおり︑﹁パブリシティ価値﹂の発生する

余地がある︒しかし︑ここで問題なのは︑この﹁パブリシティ価値﹂の保護において何らかの権利を措定した場合に︑

(17)

     ﹁パブリシティ価値﹂の源泉たる動・植物が権利主体となり得ないことである︒﹁物のパブリシティ権﹂論においては       ︵25︶     所有権者をもって﹁パブリシティ価値﹂についても権利主体とみなすものがあり︑前掲ギャロップレーサー事件にお       ︵26︶      いても第一審・控訴審ともに所有権者に権利主体性を認めでいるが︑東京地裁平成一四年七月三日判決は個体識別力

     を有する樹木に関し︑所有権者が特に撮影禁止等を明示していない限り所有権を侵害しているとは言えないと判示し

     ている︒     ︑

      確かに︑個体識別力を獲得した動・植物に所有権者がいる場合︑権利の客体に生ずる﹁パブリシティ価値﹂も所有

     権者に帰属すると考えれば︑その点のみに関しては解決が容易であろう︒しかし︑ここで問題なのは︑前項において

     ﹁個体識別力ある自然物﹂について指摘したのと同様︑﹁パブリシティ価値﹂の発生と所有権との間には相関関係が存

     在していないことである︒もっとも﹁自然物﹂に比較して﹁人工物﹂に・﹁パブリシティ価値﹂が生ずる場合には︑そ

     の﹁人工的な部分﹂こそが価値の源泉となっている場合がほとんどであろう︒しかし︑例えば競走馬のように︑所有

     権者が﹁パブリシティ価値﹂獲得プロセス及び維持行為から乖離する場合が存在することを考えれば︑盲目的に所有

     権者に﹁パブリシティ価値﹂を帰属させるべきではなく︑むしろ獲得プロセス・維持行為を遂行する者︑﹁パブリシ

     ティ価値﹂を管理する者の存在を視野に入れた議論をすることが必要である︒

      なお︑競走馬事件について付言すると︑競走馬自体に﹁パブリシティ価値﹂の発生する可能性があるのはもちろん

     であるが︑いずれの事例においても︑ゲームの中に登場する競走馬の識別に実在の競走馬の馬名が使用されているに

     すぎず︑馬名という識別標識を標識として用いているのみであって︑二次的コンテクストとして競走馬の馬名に生じ

−    ている﹁パブリシティ価値﹂を商品化したものとはいえないであろう︒

パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二九一

(18)

二九二

 ② ﹁非生物×人工物﹂類型判決の検討

 この類型について検討すべきは︑二2.で述べた﹁非生物﹂の﹁パブリシティ価値﹂が既存の知的財産法による

保護とは別個のものとして認められるか否かの問題であろう︒なぜなら︑人の手によって創造されたものの外観が顧

客吸引力を有する場合に︑それがいかなる理由により︑いかなる法によって保護されうるのかの問題だからである︒

 広告用ガス気球事件では︑日本国内には一つしか存在していない気球の外観の利用が問題となったが︑本来当該気

球の外観に発生する顧客吸引力は気球制作者の意匠権の対象であろう︒それとは別個に気球の所有者に顧客吸引力の

保護を理由としてその外観の独占を認めうるとすれば︑前掲東京地裁平成一四年七月三日判決のように撮影禁止等の

明示をしているか︑当該気球の外観が所有者の営業を示す表示としての機能を有している場合でなければならないの

ではないだろうか︒しかしながら︑本来意匠権の対象たりうる物品の外観につき︑その内の一つを所有しているにす

ぎない者の営業を示す表示となりうるのであろうか︒この事件では︑確かに判決時において当該気球はわが国に一つ

しか存在しなかったかも知れないが︑その後他者が同じものを輸入しうることを勘案すれば︑撮影行為が直接に所有

権を侵害するものとは言えない以上︑所有者に外観そのものについて何らかの権利を認める必要性があるとは考えら

れない︒また︑この事例において︑果たして﹁パブリシティ価値﹂が発生したとQいうるかどうかも疑問である︒

 同様のことはクルーザー事件にも該当する︒この事件におけるクルーザーが所有者の営業におけるシンボル的存在

として周知になっていたとしても︑完全に個体識別力を有していたといいうるのでない限り︑クルーザーの外観その

ものについて所有者に何らかの権利を認めることは難しいのではないだろうか︒﹁パブリシティ価値﹂の発生の有無

についてもやはり疑問を持たざるを得ない︒

 他方︑前掲キング・クリムゾン事件は上記二例とは様相を異にする︒この事件において問題なのは︑﹁パブリシティ

(19)

価値﹂の発生するものの範囲と︑その利用形態による侵害の有無である︒﹁パブリシティ権﹂の保護の範囲に当たる

か否かが問題とされたのは︑バンドの名称及びメンバーの氏名・肖像と︑レコード等のジャケット写真であり︑前者

について﹁パブリシティ価値﹂が発生することには異論がない︒レコード等のジャケット写真についても︑メンバー

の肖像写真が含まれる物に関しては﹁著名人の肖像﹂に生じている﹁パブリシティ価値﹂を認めることができるであ

ろう︒問題はメンバーの肖像が含まれないレコードジャケットに生じた﹁パブリシティ価値﹂にいかなる保護が妥当

かということである︒確かにレコードジャケットそのものの図柄が著名であって︑それをレコード以外の商品に付し

て商品化することはあり得るが︑ジャケットの図柄・デザインは絵画や写真等からなるものであるから︑基本的に著

作権の対象となるべきものである︒二2.ωにおいて検討したように︑殊更に図柄の一部に二次的コンテクストが

生じているのでもない限り︑本来︑著作権プロパーの問題として処理すべきものであろう︒あるいはレコードジャケッ

トは著作物であると同時にレコいドという商品の包装の一部として標識の役割を果たすものでもあるから︑他者の商

品等の識別標識として流用されている場合には︑まずは商標法や不正競争防止法の適用が考えられるべきである︒

 またレコードジャケット写真の利用形態に関し︑書籍の中に使用されているものについては︑当該レコードの紹介

に資する範囲で使用されているのであれば引用︵著三二条︶に該当するであろうし︑それを超えると判断されるよう

な利用形態であれば複製権︵著二一条︶侵害の問題として把握するべきである︒表紙等への使用行為は︑書籍の内容

とは全く関係ない場合には需要者に誤認混同を生ぜしむるおそれのあるものとして不正競争防止法による解決がなさ      ︵27︶ れるべきであり︑書籍の内容を表す役割を果たしているのであれば利用の態様によっては著作権法上の問題が発生す

るにすぎない︒

 肖像写真についても︑写真集のようにそれ自体が書籍の価値のほとんど全てである場合は﹁パブリシティ価値﹂の

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄     °        ︐︵都法四十四ー二︶ 二九三

(20)

      二九四

利用にも該当するといいうるが︑書籍の内容の補足説明的に使用されていると考え得る範囲であれば︑著作権法上の

問題か︑場合によってはむしろプライバシー権の問題が発生すると考えるべきであろうし︑表紙への使用行為につい

てはレコードジャケットの場合と同じく︑原則的には不正競争防止法二条一項一号に関する問題として解決されるべ

きであろう︒       °

 キング・クリムゾン第一審判決は︑レコードジャケットについて﹁パブリシティ権﹂を認めるに際し︑﹁著名人が

獲得した名声︑社会的評価︑知名度等から生ずる経済的な価値で︑顧客吸引力があると認められる場合には︑それを

もパブリシティ権の内容に含まれると解すべきである﹂と述べているが︑このように定義してしまった場合︑この顧

客吸引力には︑商標法や不正競争防止法︑意匠法︑著作権法などの既存の法によって保護されるべき︑一次的コンテ

クストにおいて生ずる顧客吸引力︑ひいては顧客吸引力一般までも含むこととなってしまう︒﹁パブリシティ価値﹂

とは︑確かに﹁顧客吸引力﹂を有するものではあるが︑︿﹁顧客吸引力﹂11﹁パブリシティ価値﹂﹀なのではない︒世

の中に多数存在する﹁顧客吸引力を有するもの﹂の内の一つに﹁パブリシティ価値﹂が含まれているのである︒そし

て︑これまで使用してきたコ次的コンテクスト﹂﹁二次的コンテクスト﹂という捉え方を別の言い方に置き換える

ならば︑既存の顧客吸引力から発生した別種の顧客吸引力が﹁パブリシティ価値﹂の正体であり︑その在り方が従来

の法規定が想定していなかったものであるからこそ︑その価値の保護について問題が生じているというべきなのであ

る︒  そうであるならば︑﹁物のパブリシティ権﹂論とは﹁パブリシティ価値﹂のもつ﹁顧客吸引力﹂というものを﹁顧

客吸引力﹂一般と誤って解釈した結果の産物であって︑﹁パブリシティ権﹂の対象についてことさら﹁物﹂にこだわ

ることは本質を見誤ることとなるのではないだろうか︒もっとも︑だからといって︑既存の知的財産法による保護の

(21)

対象となっているもののみに限定されるべきという結論がただちに導かれるわけではない︒従来の判決例が論拠とし

て不適当であったにすぎず︑今後検討に値する事例が現れる可能性を完全に否定するものではない︒

四 不正競争防止法の適用可能性

1.﹁パブリツティ価値﹂と差止請求権

 従来︑﹁パブリシティ権﹂は著名人の氏名・肖像等の商品化や宣伝・広告利用に関する経済的利益を保護する権利

として把握されてきた︒その際︑そもそも﹁人﹂の氏名・肖像にはプライバシー権等の人格権的要素が伴っているこ

とから︑﹁パブリシティ権﹂の性質を考える際には︑﹁パブリシティ権﹂を

 a.人格的要素に限定する説

 b.人格権には限定しないが︑人格権的要素を含む財産権説

 c.人格的要素を含まない純粋な財産権説        ︵28︶ とに分類することができる︒

 他方︑漫画やアニメのキャラクター等については上述の通り︑キャラクター自体の著作物性は否定されているもの

の︑原著作物の著作権に基づいて保護を与える判決例が多数蓄積され︑また一部にはキャラクター自体に著作物性を        ︵29︶ 肯定して原著作物の著作権から独立した保護を与えるべきであるとする見解もある︒

 しかし︑二︑三において検討してきた内容を総括すると︑いわゆる﹁パブリシティ権﹂の保護の対象を︑その﹁パ

ブリシティ価値﹂の発生源として把握した場合には︑従来からの﹁人﹂﹁物﹂という分類よりも︑むしろそれが利用

されるコンテクストによつて分類する方が妥当であり︑一次的コンテクストにおいていかなる法規による保護が与え

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二九五−

(22)

      二九六

られているかという点にのみ着目することは︑本来目指すべき﹁パブリシティ価値﹂の保護を検討する上で本質を見

誤りかねないであろう︒

 ここで注意しておかなければならないのは︑保護されるべき価値自体は同じものでありながら︑従来はその対象に

よって適用される法規が異なっていたということである︒すなわち︑著名人の﹁パブリシティ権﹂保護の裁判例にお

ける最大の難点は︑明文の根拠規定を挙げることなく解釈論によって差止請求権を認めていることである︒﹁パブリ

シティ価値﹂が無断で利用されることにより不当にその経済的利益が侵害された場合には︑その被侵害利益について

民法七〇九条に基づき損害賠償請求権が認められるであろうが︑その後の侵害行為を阻止することができないのであ

れば︑利用態様いかんによって﹁パブリシティ価値﹂が低下し︑本来得られたはずの﹁将来的な利益﹂が不当に奪わ

れることも往々にして起こりうる︒しかし︑あくまでも﹁パブリシティ価値﹂はその管理者の維持管理行為如何によっ

て大きく左右されるものなのであるから︑その﹁逸失利益﹂を算出することは不可能である︒その点︑一次的コンテ

クストにおいて著作権法や商標法による保護を受けられるものについては︑これらの法規を根拠とすることができる

という解釈にたてば︑差止請求権を援用することについては何ら問題を生じない︒また﹁物のパブリシティ権﹂論に

おいて所有権者に権利が帰属すると解釈するのも︑結局のところ︑所有権という確固たる物権の援用が可能になるこ

とも一因であろう︒

 とはいえ︑問題の本質からはずれた議論を続けることは問題であり︑やはり︑﹁パブリシティ価値﹂全体について        ︵30︶ 適用可能な法規を探るべきであろう︒       ︵31︶  その際に注目すべきは︑プロフットボール・マーク事件最高裁判決であろう︒この事件では︑米国のプロフットボー

ル・リーグ所属各チームのヘルメットの図柄につき︑独占的利用契約を締結していた日本企業の許諾を得ることなく︑

(23)

ビニール製ロッカーの模様として利用した行為が︑旧不正競争防止法一条一項一号二号の混同防止規定に該当すると

判示された︒これはまさに︑チームの標識たる図案が﹁標識﹂として利用される一次的コンテクストから離れ︑﹁商゜

品化﹂という二次的コンテクストにおいて利用されたものである︒

 プロフットボール・マーク事件では︑﹁広義の混同﹂が生じうることに基づき旧不正競争防止法が適用されたが︑

旧法下において﹁広義の混同﹂に該当すると判示された事例は︑現行法下では不正競争防止法二条一項一号のみなら

ず二号が適用される可能性も存在する︒そして︑むしろ﹁パブリシティ価値﹂の無断利用の態様にこそ二号は威力を

発揮すると思われる︒しかし︑まず問題となるのは﹁商品等表示﹂に該当するか否か︑﹁商品等表示﹂の解釈適用の

範囲の問題であろう︒

2.出所表示・品質保証機能との乖離

 商標や企業・団体のロゴについてはもちろんのこと︑歌手・俳優等著名人の氏名・肖像は︑まさに一次的コンテク

ストにおいて︑その役務に関する商品等表示として機能しているといえるから︑本来的な不正競争防止法による保護        ︵32︶ の客体として把握することができるであろう︒例えば︑﹁高知東急﹂事件判決は︑著名人の氏名等と会社商号との間

に不正競争防止法二条一項一号の﹁広義の混同﹂が生ずるおそれを認める︒漫画やアニメのキャラクターの名称や外

観については︑他の著作物の中で使用された場合は著作権法上の問題であろうが︑そうではなく︑他の商品・役務等

についての商品等表示として使用されている場合には︑﹁広義の混同﹂が生ずると考えることができるであろう︒

 それに対し︑二次的コンテクストにおける利用の場合︑氏名︵名称︶・肖像︵外観︶等自体が商品なのであり︑商

品そのものに﹁表示﹂性を認めることが必要となる︒しかし︑実際には商品の出所に関する表示は別個に存在してい

   パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二九七

(24)

      二九八

ることも多く︑また極端な場合︑消費者は明らかに無許諾の﹁偽物﹂であっても構わないのであるから︑﹁広義の混

同﹂はおろか︑出所表示や品質保証といった機能が失われている場合も想定する必要があろう︒その場合はあくまで

も事業者間での不公正さの是正の問題となるはずである︒

一次的コンテクストにおける保護客体が存在せず︑二次的コンテクストにおける商品性のみが存在するものについ

ても同様である︒

 ﹁パブリシティ価値﹂の保護につき不正競争防止法︑ことに二条一項一号が適用されるためには︑①﹁商品等表示﹂

として出所表示機能及び品質保証機能を有していること︑②冒用者による商品等表示の﹁使用﹂等が﹁商品等表示と       ︵33︶ しての﹂使用であること︑③﹁混同のおそれ﹂の存在という要件を満たさなければならない︒井上論文は商標の機能

の変容に伴う標識法の領域拡大を足がかりに混同防止規定の適用可能性を探り︑二号の著名表示保護規定の適用に関

しては慎重であるが︑むしろ二次的コンテクストにおける商品性が問題となる事例こそ本来この規定が適用されるべ

きものではないだろうか︒

 もっともその際には︑旧法下での判例の積み重ねの上にある現在の﹁表示﹂概念について︑改めて洗い直す作業も

必要となるであろう︒この点については本稿において検討する対象が大きすぎるものであるから︑別稿にて論ずるこ

ととし︑その後再び﹁パブリシティ価値﹂との関係について論じる機会をもちたいと考える︒

五 今後の課題

本稿では︑﹁パブリシティ価値﹂の発生源と考えられるものの分類・分析を通じて︑いわゆる﹁パブリシティの権

(25)

ノ︑利﹂の対象たる﹁パブリシティ価値﹂とは何かを定義付けることを目的としてきたが︑それが本来的に社会において    ︑ ︐

  求められている役割という一次的コンテクストを超えて︑それ自体に商品価値を生ずる二次的コンテクストを有する

  ものであるという︑はなはだ抽象的ではあるが一定の結論を得た︒それにより︑一次的コンテクストにおげる対象物

  ︐の保護規定から離れて︑﹁パブリシティ価値﹂全体としての保護規定を検討するべきであると考える︒立法論はとも

  かくとして︑解釈論的に考えるならば︑その際に最も有力な候補は不正競争防止法であろう︒筆者は従前より︑いわ

  ゆる﹁パブリシティ権﹂や﹁キャラクター権﹂について不正競争防止法規定の元で保護するべきではないかという漠

  然たるアイディアを抱きつつも︑説得力のある論を提示するにいたらず︑その間に出された井上論文は非常に示唆に

  富むものであった︒しかし︑不正競争防止法規定を直接に適用しうると解釈すること︑には︑やはり躊躇をおぼえる部

  分もある︒今後の課題としては︑不正競争防止法規定の解釈についてさらなる研究を重ね︑その上で納得のいく解釈

  枠組みを提示することであろう︒それによって︑﹁パブリシティ権﹂論における権利主体や︑保護期間等の各論的な

  問題についても明確な解答を提示できるものと思う︒

   また︑コンテクストの分離という方法論を元に︑特に著作物の利用に関して新たな解釈枠組みを提示できるのでは

  ないかと考えている︒

   本稿は今後の研究における足がかり的なものとして位置づけたい︒

︵1︶ 井上由里子﹁パブリシティの権利の再構成1ーその理論的根拠としての混同防止規定1ー﹂﹃現代企業法学の研究lL筑

 波大学大学院企業法専攻十周年記念論集﹄一二九頁︵信山社・二〇〇一︶︑新井みゆき﹁物のパブリシティ権﹂同志社法学

  五二巻三号一六二ー四頁参照︒

︵2︶ 東京地判昭五一・六・二九︵判時八一七号二三頁︑ 判タ三三九号=二六頁︶

  パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 二九九

(26)

三〇〇

︵3︶ 王選手メダル事件決定︵東京地決昭五三・一〇・二判タ三七二号九七頁︶︑中森明菜カレンダー事件決定︵東京決昭六一・

  一〇︒九判時一二一二号一四二頁︑ 判タ六一七号一八四頁︶︑中森明菜ブロマイド事件決定︵東京地決昭六一・一〇・一

  七判タ六一七号一九〇頁︶︑藤岡弘事件判決︵富山地判昭六一・一〇・三一判時一一=八号一二八頁︶

︵4︶ 東京地判平元・九・二七判時一三二六号=二七頁︑ 金商八四九号三九頁

︵5︶ 東京高判平三・九・二六︵判時一四〇〇号三頁︑ 判夕七七二号二四六頁︑ 法律新聞一〇三二号六頁︶︒原審判決︵東京

  地判平二・一二・二一判時一四〇〇号一〇頁︶では人格権に基づいて差止請求を認容している︒

︵6︶・東京地判平一〇・一・一二 ︵判時一六四四号一四一頁︑ 判夕九九七号二四五頁︶

︵7︶ 但し控訴審︵東京高判平=・二・二四︽判例集未登載︾︶は﹁パブリシティ権﹂侵害を否定した︵判決確定︶︒

︵8︶ 第一審:名古屋地判平一二・一・一九︵判タ一〇七〇号二三三頁︶︑控訴審:名古屋高判平=二・三・八︵判タ一〇七一

  号二九四頁︶

︵9︶ 東京高判平一四・九・一二︵判時一八〇九号一四〇頁︑ 判タ=一四号一八七頁︶︑

︵10︶ ﹁パブリシティ権﹂に関する議論は︑従来専ら﹁著名人﹂に関してなされてきたことから︑保護客体に関しては人格権的

  要素に限るとする一元説︵渡辺修﹁人格メルクマールの利用権−人格権の一元的構成に関する覚書1﹂法学六〇巻六

  号二八六頁︶と︑人格権的要素と財産権的要素とにまたがるとする二元説に分かれている︒二元説の中でも﹁パブリシティ

  権﹂は﹁人の氏名・肖像﹂という人格的要素を常に伴うものであるとする見解においては﹁物﹂をその範疇とする余地はな

  い︒新井・前掲論文一五七頁参照︒

︵11︶井上︒前掲論文一四四頁以降︒﹁パブリシティ価値﹂の利用態様を商品化事業と広告宣伝とに分類し︑商品化事業類型に

  おいて不正競争防止法が適用された例としてキャラクターやシンボルマークの商品化に言及している︒

︵12︶ 例えばグラビアアイドルのように︑その肖像自体が商品である場合︑従来考えられているような芸能活動は存在せず︑む

  しろその前段階として水着グラビアなどでの著名性獲得が先行する︒さらには雑誌の読者モデルという﹁非芸能人﹂の状態

  で著名性を獲得してしまう場合などもこのようなケースといえよう︒

︵13︶ 広告用ガス気球事件︵東京地判昭五二・三・一七判時八六八号六四頁︑ 金商五三三号二七頁︑ 判タ三六二号二八八頁︶︑

  クルーザー事件︵神戸地伊丹支判平三・一一・二八判時一四一二号=二六頁︶︑前掲キングクリムゾン事件等︒

︵14︶ サザエさん事件︵東京地判昭五一・五・二六無体裁集八巻一号二一九頁︑判時八一五号二七頁︑判タ三三六号二〇一頁︶

(27)

  をはじめ︑たいやきくん事件︵東京地判昭五二・三二二〇最新著作権関係判例集七一三頁︶︑ライダーマン事件︵東京地判      ︑

  昭五二・一一・一四無体裁集九巻二号七一七頁︑判時八六九号三八頁︑判夕三六四号二八九頁︶︑スヌーピー事件︵東京地

  判昭五三.一二.二二判タ三七八号一五二頁︶等多数︒また刑事においても︑キャンディ・キャンディ刑事事件︵大阪地判   昭五四・八・一四判タ三九六号六四頁︶等がある︒

︵15︶ ディズニー不正競争事件︵東京地判平ニパニ・二八判時一三四五号=六頁︑判タ七二四号二五二頁︶︑ポパイ・ネクタ

  イ事件控訴審判決︵東京高判平四・五・︑一四民集五一巻六号二八六二頁︑知的裁集二四巻二号三八五頁︑判例時報一四一一=

  号六二頁︶

︵16︶ なお昨今ではCM用に創作されたキャラクターが人気を博し︑商品化されるという事例も見受けられるが×この場合はむ

  しろCMという映画著作物を一次的コンテクストとして把握するべきであろう︒

︵17︶ 実際に︑エドヴァルド・ムンク作﹃叫び﹄に描かれた人物像のみが抜き出されて立体化された人形が販売されたことがあ

  る︒また︑最近では現代アート作家の作品中に登場する人物等が商品化されることも多い︒

︵18︶ 例えば︑﹁OoO知Oo﹂Φ﹂は本来は清涼飲料の商標でありながら︑それ自体が商品のデザインとして衣類や貯金箱等に付ざ︑

  れて販売されている︒

︵19︶ 例えば︑高級ブランドのロゴ・マークなどについても︑商品が偽物と知った上で購入したり︑商品の包装に使用されるロ

  ゴ入りの紙袋を再利用する等︑一部の消費者行動の側面からみれば︑必ずしも出所表示機能・品質保証機能が求められてい

  るとは言えない︒井上・前掲論文一五一頁は︑商標機能の変容として﹁古典的なモデルに比較すると︑品質保証機能は薄れ

  てきているのである﹂と述べているが︑食品等の商品の安全性が重視される分野や︑商品の機能性が重視される分野などに

  おいては厳然として品質保証機能は重要である︒むしろ︑一部の商品分野によっては︑古典的モデルにおける商標機能とは

  別の文脈が発生していると把握するのが適切ではないだろうか︒     

︵20︶ 名古屋高裁平成一三年三月八日判決︵判タ一〇七一号二九四頁︶       ︑

︵21︶ 高知地判昭五九・一〇・二九︵判夕五五九号二九一頁︶

︵22︶ 前掲ギャロップレーサー事件︑ダービー︐スタリオン事件︵第一審:東京地判平一三・八・二七判時一七五八号三頁・判タ       ・

  一〇七一号二八三頁︑控訴審:前掲東京高判平一四・九・一二︶

︵23︶ 東京地判昭五二.三一一七判時八六八号六四頁︑判タ三六二号二八八頁

パブリシティ価値の定義と﹃パブリシティの権利﹄       ︵都法四十四ー二︶ 三〇一

(28)

三〇二

︵24︶ 神戸地伊丹支判平三・=・二八判時一四一二号ニニ六頁

︵25︶ 伊藤真﹁物のパブリシティ権﹂﹃田倉整先生古希記念・知的財産をめぐる諸問題﹄︵発明協会︒一九九六︶五〇七頁︑新井

  みゆき﹁物のパブリシティ権﹂同志社法学五二巻三号一四八頁︑同﹁競走馬にパブリシティ権を認めた事例﹂知財管理五一

  巻一〇号一六三五頁

︵26︶ 判時一七九三号一二八頁︑判タ=〇二号一七五頁

︵27︶ ﹁ゴーマニズム宣言﹂事件第一審判決︵東京地判平=・八・三一判時一七〇二号一四五頁︶

︵28︶ 新井・前掲論文一五六頁︒なお︑﹁パブリシティ権﹂概念の輸入元である米国において︑﹁パブリシティの権利︵﹃戸σqgo︷

  U已ぴばO蔓︶﹂の語が初めて用いられたのは国①①一①昌ピpぴ○畠8口Φ︒︒ニコo°<◆弓oOOmO古Φ乞日σqΩ已日w甘○こNOb︒呵ふ巳゜︒ΦO

  ︵卜o白匹 ○や吋゜ ﹂Φ㎝ω︶が最初であるが︑それ以前はプライバシー権の枠組みの中で解決が図られていたことから︑﹁パブリシティ

  権﹂は﹁プライバシー権﹂から発生したものと考えられている︒

︵29︶ 牛木理一﹁漫画キャラクターの著作権保護﹂パテント<○﹂°留Zoふ

︵30︶ 牛木理一﹃キャラクター戦略と商品化権﹄五六三頁は結論として特別立法の必要性を述べる︒確かに﹁パブリシティ価値﹂

  の保護のために特別に立法することは理想ではあるが︑そのための解釈論の積み重ねが今までに十分になされているとはい

  えないであろう︒

︵31︶ 最判昭五九・五゜・二九民集三八巻七号九二〇頁

︵32︶ 東京地裁平成一〇年三月=二日判決︵判時一六三九号=五頁︑ 判タ九六六号二五七頁︶

︵33︶ 井上・前掲論文一四九頁︒

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