鋼鋳物のオーステナイト粒度について
(昭和48年5月1日 原稿受理)
金属加工学科 大和田野 利 郎
久留米工業学園短大浅田明弘
金属加工学科江原隆一郎
Austenite Grain Size of Cast Steel
by Toshiro OWADANO Akihiro・ASADA Ryuichiro EBARA
In.°rd・r三・study th・au・t・nit・grain・ize・f as−ca・t・tee1・at high t。mp,,atures,
austemte g「aln三・・wth du・ing…ling・nd the ch・ng・・f・u・t・nit。 grain、ize in
am 垂♀獅獅〟Et v・n・u・t・mp・r・tures we・e inv・・tig・t・d. Th。 measurem,nt。f。。1u㎜ar 9「a1竺1・ngth・f cast・t・・1・with vari・us ca・b・n・。nt・nt, and。b,,rvati。n。f th,
「elat1・n b・tw・・n d・nd・itic segreg・ti・n and p・im・・y・u・t・nit。 g,画were al、。 d。皿。.
Theτesults obtained are as follows.
1)Au・t・nit・grain g・・wth・f・・st・teeエ・is rec・gni,ed。b。v。1100℃. B。1。、草thi、
temperature, it is not recognized.
2)Aust・nit・grain s1・e is th・s画1・st・t ca・b・n・。nt,nt b。tween O.2and O.36
%Except for this range, it grows remarkably.
9)Au・t・nit・g・ain g・・wth can be seen in・㎜・註ing・t high t・mperature du・ing coollng.
4)Th・m・・e the ca・b・n・・nt・nt increases, th・wider the c・1umnar g・ain.egi。n becomes. The granular grain region becomes wider as carbon coロtent decreases.
5) At high carboロcontent, it is口ot seen that the dendrite goes over the auste・
nite gτain l}oundary, 13ut, at low carbon coltent, dendrite goes over the austenite grain boundary and extends stτaight.
』 鋳造のままの鋼鋳物のオーステナイト粒度とそ
1・緒 言 の後の熱処理によって生ずるオーステナイト粒度 鋼鋳物は高温での凝固後,オーステナイトの状 との関係を調べた報告は比職的多い2)硝。しかし 態をへて常温の組識となる。鋳造のままの一次オ ながら.鋳造後の高温でのオーステナイト粒度に 一ステナイトの結晶粒の大きさは1〜ユOmnユの 関する報告は少ないようである。程度であり,焼なましあるいは焼ならし,焼入れ Sauveur日,は溶鋼が凝固を始めてからA、点に などの加熱時に生ずる二次オーステナイトより2 至るまでにオーステナイト粒が粗大化する糠子を 桁近くも大きいn。 図式的に説明した。また・三ケ島ら9)は高炭素鋼 ほとんどの鋼鋳物は熱処理を施して使用される の凝固後のオーステナイト粒は約1200℃まで粗 から鋳造のままの組織について注意がはらわれる 大化することを示した・著者らも普通鈍鋼のオー ことは少ない。しかし,鋼鈍物の組織をより詳細 ステナイト粒が約1200℃まで粗大化することを に理解するためには鋳造のままの組織の基本型と 認め報告したが1°),鋼鋳物のオーステナイト粒 それらに影響を与える因子を知る必要がある2}。 の粗大化については未だ十分明らかにされてい
5mm厚さにMgOでライニングした。溶解材
としては檸鋼(0.24%Cおよび0.52%C)と 金ロジウムの熱電対を5の部分に挿入して測定 電解鉄を用い,溶解量は1kg/1 chargeとし し,凝固後の冷却曲線を求めた。
た.脱酸はフェ・シ胎ソ(75%Si)と99.99% 2・3腐食および鋳造組織の観察
の純アルミ昌ウムをそれぞれ4および29投入 図1b)に示した鋳物下部より25皿mのX−X
し,1〜2秒撹持して行なった。脱酸しないもの, の部分を切断・研磨した後ニトロサルフリック試 フエロシリヨンおよび純アルミニウムで脱酸した 薬(H2SO450 cc, HNO3100 cc・H20100 cc)試料の炭素およびケイ素含量を表1にまとめて で3〜4秒間腐食した。また・ニトロサルフリッ 示す。 ク試薬で腐食した後かるくパフ研磨し・ピクラー ルまたはナィタールで腐食する方法も試みた。鋳
表1供試醐の炭購よぴケイ素舗 造繊の観察にはピ列ソ酸飽和端液酪面活
処 理
試験片 番 号
ユ
2 3
45 6 7
脱酸なし
clSi
0.09 0.20 0.22 0.31 0.32 0.36
0.02 0.11 0.03 0.16 0.16 0.13
フエロシリ コンで脱酸
clSi
0.ユ1 0.19 0.26 0.32 0.35 0.42
0.32 0.39 0.姶 0.63 0.44 0.37
巽遍ウ 性剤を加えた腐鰍と一ト・サ・レ四。ク試薬を
clSi 恥た・
0.ユ5 0.18 0.19 0.24 0.33 0.38 0.41
o.03 2.4. オーステナイト結晶粒度の測定方法
0.04 測定部分はマクロ腐食した試料表面の柱状晶の o.04 部分に限定した。同一試料を光の方向を変えて写 α05 真撮影し,結晶粒の判別を容易にした上で,図21:i;に写真で示す面鯉6m酬・の結晶粒数を数
0.ユ9 え・平均の結晶粒面穣を算出した。写真1a), b)
に光の方向を変えて撮影した写真の一例を示す。
2.2, 鋳造および焼入れ
鋳型は表面硬さ75〜85,水分約3.5%の生砂
型で混練機およびジョルト・スクィーズ型造型機 を用いて作製した。図1に形状および寸法を示
す。この鋳型に溶鋼を注入後凝固途上で湯道を除
去し,図上番号1〜4までを1400,1300、1100 干 および900℃で水中に投入急冷し,5はそのま
ま鋳型中で冷却した。また・・1400℃・ユ200℃お 図2 オーステナイト粒度の測定位置
よび900℃からの冷却中に最大100秒間の焼鈍を行なった後焼入れする方法も試みた。 工 実 験 結 果
なお,鋳込温度は1600〜1650℃で・・白金一白 3・1. 冷却速度の測定結果
写真1 光の方向を変ふて撮影した写真の一例(×3.6)
(注)鋳造後]400℃になった時にユ000℃に保持した炉巾 に入れ・100秒後とりだし焼入れた試料,CO.2%
1600
1400
こ
G1200
・ぺ
1000
三、}
800 600
l l ・
0 50 100 150 200 250 300
召、} .倍 くsec)
図3 冷却曲線(アルミニウムで脱酸0.33%C)
鋳造後のオーステナイト結晶粒の粗大化には冷 表2 各処理の冷却に要する時間と冷却速度
却漣の影響が大きいと思われるので・脱酸しな \腋区間
い試料・フェロシリコンおよびアルミニウムで脱 \\酸した試料の冷却曲線を測定した。各温度区間の 処 理\
冷却に要した平均時川7と冷却速度了/JTを各 脱酷なし 試料につきまとめて表2に示す.1破から.フェ ;三簾リコ
・シリコンで脱醍アルミーウムで脱醜脱酸し 三礒ニゥム
1400〜1300°C
7{η∬
コ2・・1・・12・
}11・9}・.1ユ9
}9・51α・95
1300〜1/0ぴC r ∫/∬
ユ100〜900°C
1 {
r 了/」r已::繍::1
33・ 110・16771・0
0.428 0.・1220.355
ない試料の順に冷却速度が早いことがわかる・一 (注) 『:各温度区間の冷却に要する時聞
例として,図3に了が平均値に近い,表2のアル Jτ:降下温度ミニウムで脱酸した炭素上itO,33%の試料につい ゾ/∬:冷却速度
ての冷却曲線を示す, シリコンで脱酸した試料およびアルミニウムで脱 3・2・ 冷却中のオーステナイト粒の成長 酸した試料について・2・2で述べた各焼入れ温度 図4,図5および図6は脱酸しない試料フェロ とオーステナ・fト粒の大きさとの困係を示したも
図4 焼入れ温度とオーステナイト粒度との関係 (脱 酸 なし )
1.0
亘
置
」 o.B 二 卍
c O.6
遵
±
㌔ 04
‡
弍
0.2
800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500
此八4L這ノ匡 〔 の
図5 焼入れ温度とオーステナイト粒度との関係 (フェロシリコンで脱酸)
ミ o.8
』
ぺ
㌔ O.6
−〜ζ
に
史
・− oム こ 貰
し
≒ 0 2
800 900 1000 ]100 1200 1300 1400 1500
ア
此 入・μ 競足ζ゜己)
図6 焼入れ温度とオーステナイト粒度との関係 (アルミニウムで脱酸)
のである。脱酸なしの0.32%Cの場合を除くと, アルミエウムで脱酸した場台には,シリコソで いずれの図からも明らかのように、オーステナイ 脱酸した場合に比べオーステナイト粒の成長の割 ト粒は焼入れ温度1100℃まで成畏し,その後の 台は小さく,高温での成長の割合も小さくなって 成長は認められない。この結果は三ケ島ら9ハおよ いる。写真2にフェロシリコソで脱酸した炭素量 び著者ら1mの実験結果とほぼ一致している。 9□9%の鋼鋳物のオーステナイト粒の成長の模様
、蚕讐鍵竃講鍵塞 迫.ぽ麟ご一4
ぱ
写真2 オーステナイト粒成長の一例(X3・6)
C Oコ9% そ氾入れ1品度 a)1400°C b)130ぴC c)]100°C d)9(1〔〕℃
1.0
s ミQ8
、)
恒
よ 0.6 ここ、04
∵
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1.O
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0 01 02 03 04 05 人
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図7 炭素含有量とオーステナイト粒度との関係 0 01 02 03 0ム 05 (脱酸なし) ℃ ξ 含 亨 ジ :.づ)
㌻図_び図9は脱酸しなし鍋フエ図 亨鷲言蕊㌣度との関係
。シリコンで脱酸した試料およびアルミニ垣で と炭瓢との関係を示したものである・フェPシ 脱酸した試料についてオーステナイト粒の大きさ リコシおよびアルミニウムで脱酸した試料は共に
図9 炭素含有量とオーステナイト粒度との関係 図10焼鈍時間とオーステナイト粒度 (アルミニウムで脱酸) との関係
炭素]ilが約0.2〜0.36%でオーステナイト粒の大 の成長を調べた。
きさは小さく,この範囲より炭素量が増加あるい その結果,図10に示すように.1200℃に保持 は減少するにつれてオーステナ・fト粒は大きくな した炉中に1450℃まで冷却後の試料を入れた場 っている(図7および図8)。しかしながら.前 合,オーステナ・fト粒の成長が最も著しいことが 述のように,フェロシリコンで脱酸した試料に比 わかった。この場合冷却曲線を求めると,鋼塊表 べると・アルミニウムで脱酸した試料の炭素litに 面の温度は約1270℃に保たれていることがわか
よるオーステナイト粒の変化の割合は小さい。ま った。その他の場台にも,前述の場合ほどではな た,脱酸しないものは,フェロシリコンおよびア いが,オーステナイト粒の成長が認められてい ルミニウムで脱酸したものに比べ微細化の程度が る。写真3に,1400℃から水冷した場合と,
小さくパラツキが多くみられる。 1400℃でユ200℃の炉中に100秒間保持して水 3.3.冷却途中の焼鈍によるオーステナイト粒 冷した場合を比較して示す。前者に比べ,後者の の成長 場合のオーステナイト粒の成長の割合が大きいこ 3・2でオーステナイト粒の成長は約1100℃ま とが明瞭である。
で認められた・そこで・冷却速度を遅くし・鋼塊 3・4・炭素含有量と柱状晶の長さの関係 の高温における時川を長くしてオーステナイト粒 図11はシリコンあるいぱアルミニウムで脱酸
ユ40°℃から水冷 14…Cの試料を12・。℃の
炉中に1001少保持して水冷
写真3オーステナイト糠の成長1こおよぼす娩の鯉(・2%C)Z3.6までの高温で隣接するオーステナイト粒を吸収し て粗大化する。一般的には結晶の成長速度Gと
§ .温度「との間には,アルレ⇒スの式がなりた :8。 つとしてよいエ1㌔す誌ち・
£6。 但LG・・定歎ロ・活性化エネ・レギー
眠 したがって,高温では成長速度が大きく粗大化が
弔
D=克fn ・・… に2)
α1 0.2 03 04 05 が成立する。ここで,海,πは定数
已音砕醐 すなわち・a3で述べた冷却の紳磯鈍によ
るオーステナイト粒の成長は(2)式で説明でき図11炭素舗趾柱状晶の長さの関係 る。
した試料の炭素含有量の変化に伴なう柱状晶の長 図7,図8および図9で示したように,オ_ス
さの変化を調べた結果である・同図から明らかな テナイト粒度は炭素量が0.2〜0.36%で小さく,
ように・炭素量約α2%以上では炭素含有量が増 この範囲以外では粗大化していることがわかっ 加するにつれて柱状晶の畏さの割合は増加してい た。このことは,三ケ島聞が鋳鋼網状組識の微細
る。なお・柱状晶の長さの割合は同図中に示す測 化の機構として説明していることと良く一致して 定した柱状晶の長さ∫と∫ の平均値を鋳物の半 いる。この包晶反応による微細化の程度は脱酸し 径∫。で除して求めた。 ないものに比べ,シリコソおよびアルミニウムで 55・樹枝状偏析と一次才一ステナイト粒との 脱酸したものが大きい。これは脱酸の際に生ずる
関係 非金属介在物によるためだと思おれる12)。また,
2・3で述べたピクリソ酸飽和水溶液に表面活性 脱酸しない場合にデータのバラツキが大きいのは 剤を加えた腐食液と一ト叶ルフリ・ク試薬を用 鋼塊中に巣が生ずる場合が多く,試料によって冷 いて樹枝状偏析と一次オーステナイトを同時に現 却条件が異なったためだと思われる。なお,炭素 出し・両者の関係を観察した。その結果,高炭素 含有量が増加すると柱状晶の割合が増すことは白 含量(0・42%C)の試料では樹枝状晶が明確に現 鋳鉄に閲するPattersonら13}の結果とよく一致 われ,一つのオーステナイト粒は数個の樹枝状晶 している。
からなりたっていることを認めた。この場合,焼、 網状組識の網はオーステナイト粒界に析出した 入れ温度が高ければ(1ユ00℃以上),樹枝状晶は フェライトで網目の中には多数の方向の異なった オーステナイト粒界を越えないが,低ければ一部 デソドライトが含まれていることをすでに報告し
越える場合がみられた。また,低炭素含世(0.19 ている10㌔
%C)の試料では高炭素の場合ほど明確ではない 著者の一人が別に行なった実験川で,網状組織 が,樹枝状晶はオーステナイト粒界を越えて真直 と樹枝状晶との間には次の関係があることが確め ぐにのびているように見えた。 られている。
1) 低炭紫鋳鋼(炭素含量0.14〜0.20%)で
4考 察 は繊状晶は徽されポオーステナイト粒
3.2の結果より,いずれの炭素含有量において 界を越えて真直ぐにのびている。ケィ索の増 も,オーステナイト粒は約1100℃まで成長する 加によって樹枝状晶は粗大化する。
ことがわかった。すなわち,凝固直後のオーステ 2) 中炭素鋳鋼(炭素含五10・20〜0、40%)で ナイト粒のいくつかは,Ar3変態点に冷却される は網状組織はケイ素量0・7%位まできわあて
. 2)M.F. Hawkes and B、 F. Brown:The Iron
密撒関係があることがわかる・ Ag。162(1948)0・t・b…4,ユ38
3)M.F. Hawkes:Trans. AIME 172(1947),
5.結言 510 一 鋼醐のオースrト蜘こ閤して炭素含有 4)A撚i㌫s5;;dEF B「°wnlT「a
量とオーステナイト粒の大きさならびに成長の程 5)E.A. L・ria l Tran5・ASM 40(1948)・677
度との関係および脱酬によるオーステ〔粒 6)A:∴7蒜鴎 AmeE F°un輌aピs
度の変化および樹枝状偏析との関係について実験 7)EA. L。τia:」・urna1。f Metals 191(ユ95ユ),
した結果次のことが明らかになった。 1029
・)鋳銅のオーステナイト粒は約…ぴCまで B)長蒜u:1、:le霊t㍑1駐!1;〔霊G霊
粗大化し.その後は成長しない白 Hm〕2) オーステナイト粒度は炭素含有丑約0・2〜 9)三ケ島.迎,藤村:溶接学会認37(1968)・352
α36%で最も小さく・こ卿を外れると著11;語鑑罐麟蓑鵜』麟鰯
しく粗大となる。 性(1965),P.97〜98〔丸善〕
3)冷却の途中、高温で焼鈍すればオーステナ 12)三ケ島:鋳鋼(1954)・P・116〜〔メL善〕
イト粒}誠財る・ 13)嘉霊誌n、IT讃i爵P:G esse「 t』
4) 炭素量が増加すると柱状晶領域が広くな 14)大和田野:未発表 り,炭素量が減少すれば粒状晶領域が広が