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杜甫が描いた中国人の心象風景
王
本論文は「はじめに」と「おわりに」を除けば、三つの章で構成する。
「はじめに」では、「心象風景」とはなにか、「心象風景」と文学の関係、「心象風景」と中国古 典文芸理論の「意境」との関係を究明する。
第一章では、杜甫の略年譜、杜甫の波瀾の人生及び杜詩の四つの分期(吉川幸次郎の杜甫研究 の一つの特質とも言える詩風の変化によって詩作を四つの時代に分ける)を説明する。
第二章では、杜甫が描いた中国人の心象風景がどのように現われているのか、杜甫の詩の特質 を探ることによって論述する。この章で杜甫の詩は忠実に中国文学の伝統を継承し、杜甫の詩の 特質は中国文学の特質であることを明らかにする。
(一)体裁の豊富さについて
杜甫は律詩の完成者でありながら、詩作の体裁は非常に豊富で、古体詩、楽府及び近体詩に数 多くの名作を残されている。他の詩人と比べても、杜詩の体裁の豊富さに勝る人はいない。
(二)詩作の題材について
杜甫は、普通人の日常的経験、人間に身近な風景、虚構でない地上の経験を題材として文学を 創るという中国文学の伝統を忠実に守り、身の回りの日常、普通のことがらを題材として、しか も人間の重要な問題を掘り起こして詩を作る。「題材として使えないものはない」と評価されて いる。
(三)詩作の内容について
杜甫の詩作は人間諸相に関する感得がほとんどであるから、『詩経』にはじまった中国の抒情 詩の伝統が、頂点に達すのは『詩経』から千数百年を経た唐の時代、杜甫を代表的な詩人とする。
(四)詩作の方法について
吉川幸次郎が杜詩の二つの方向、緻密と飛躍の理論を提出した。詩は必ずこの二つの方向をあ わせもたなければならないという理論が、杜甫にあったという。私は緻密と飛躍は、横と縦の軸 で表すことで、杜詩の研究法として使えると考える。横の目線で、「比」という比喩の技法で、
緻密に人間社会への凝視を表現する。つまり、実在の風景を緻密に描くことである。それを通じ て、縦の軸で、「興」という連想の手法で、想像の空間、つまり心象を構築することができる。
(五)「意境」の融合について
中国古代の文芸理論にあった「意象」は日本語の中の「心像」と同じ意味である。「意境」と は、作者の主観的な思いである「意」と客観的な景物の「境」が融け合う境地である。杜甫は「情 景交融」、つまり景情一致という手法によって、「意境」の融合を表現する。自然は単なる感覚の 美として詠ぜられず、常に何らかの象徴として歌われるという、中国自然詩の方向が、杜甫に至っ て確定する。
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第三章は、本論文のまとめとして、「集大成」とは何か、及び杜甫が中国古典詩作の「集大成」
の詩人と称賛される理由を述べる。
「おわりに」では、杜甫の詩作は後世への影響について、杜甫が宋代江西詩派の始祖であるこ とと明代文学理論「詩は必ず盛唐にあり」の根源であることによって説明する。
修士論文 王