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バイオフィルム形成阻害に基づく海洋生物の付着防 止物質の研究

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Academic year: 2021

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(1)

バイオフィルム形成阻害に基づく海洋生物の付着防 止物質の研究

著者 山田 昭浩

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 20

ページ 101‑104

発行年 1999‑03‑31

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1538

(2)

氏名0(本

)  

  

  

  

(愛知県

)

学位 の種 類

 

 

 (工

)

学位 記 番 号

  

工博 甲第

  157  

学位授与の日付

  

平成 9年 9月 26日

学位授与の要件

  

学位規則第4条第 1項 該当 研究科。専攻の名称

  

電子科学研究科

 

電子材料科学

学位論文題ロ

  

バイオフィルム形成阻害に基づ く海洋生物の付着防止物質 の研究

論 文 審 査 委 員   (委 員長)

教 授

 

 

 

 

  

教 授

 

 

 

巌太郎 教 授

 

教 授 上 村 大 輔

1日

海洋の岩礁、人工建造物、船底などに付着 して生活する生物は付着生物 と呼ばれ、このなかでも特 に人工建造物、船底などに付着 して大 きな被害を引 き起 こす ものを汚損生物 と呼び、これら汚損生物 による汚損 を生物汚損 と呼ぶ。例 えば、船底 に生物汚損が生 じると、海水 との抵抗が大 きくなるた め、船舶の航行速度の減退、エネルギー消費の増大を引 き起 こすも しか しなが ら、現在 まで使用され ている亜酸化銅、 ビス トリブチルチ ンオキサイ ド(TBTO)な どの銅系、スズ系化合物 は重金属の流 出、堆積 による環境汚染から食物連鎖による人体への移行が考えられ、また毒物による殺貝であるた め生態系のバランスを崩すおそれがあるので特 に毒性の高いスズ系化合物は現在ではほとんど使用で

きな くならている。 このためこれに代 わる安全な生物付着防止剤の開発が求められている。

本研究は天然物由来の防汚剤の探索 を目的とする。海水中に沈めた無処理の表面における汚損の過 程 についてはよく調べ られている。表面では速やかにコンデイショニングフイルムと呼ばれる有機物 の吸着が起 こる。そ して周囲にはバクテリアや珪藻がいるため表面はバイオフィルムによつて覆われ

(MicЮ

fouling)。

このバイオフイルムが形成 された後に、フジツボ、ムラサキイガイ等による生 物汚損 (MacЮ 一fouling)が起 こる。このことを考慮 し、海洋における生物汚損の初期の段階であるバ イオフイルムの形成 を制御することができればそれに引 き続 く大型生物の付着 を制御することが可能 になるのではないか と予想 し、これを指標 として探索 を行 うこととした。

2.評

 

 

(1)

実験室 内で行 う評価系はバイオフィルム形成制御 を指標 とする方法を採用 した。海岸土砂 より安定

‑101‑

(3)

に糖 を生産 した

RhodospiHllum salexigens SCRC l13株

を下田の海岸土壌か ら単離 しこの系で用いるこ ととした。浸漬する基材 に試料を均一にのせることについては、ガラス表面をす りにしてそこにメタ ノールなどの有機溶媒に溶か した試料 を塗布することにより解決 した。菌の付着量の定量では付着性 細菌が菌体外 に多糖類を生産 して付着 していることが知 られているため、この糖類を定量することに より菌の付着量 を測定することとした。 これ らのことを考慮 し次のようなアッセイ系 を構築 した。

ビーカーの中に液体培地 を入れ、Rhodospi五1lum sdexigens SCRC H3株 をグリセロールス トックより 接種 し

2日

間攪拌 しなが ら

25℃

で培養 し、そこに試科 を塗布 した両面ス リガラス片をホルダーにラン ダムに並べたものを浸漬 し、 さらに5日間培養 を続けた後、1.5%食 塩水で洗條 し、それぞれのガラス 片毎 に試験官 に移 してフェノール硫酸法 により糖 を定量 した。

上記のアッセイ系を用いて海洋由来のサ ンプルを中心にスクリーニングを行 ったところ、コワカイ メン

(Psammaplysilla purpurea)か

らはビスデアセチルソレノライ ドD(1)が、海洋バ クテ リアである SCRC3P79株(CytOphaga sp.)か らはエチルN‑2‑フ ェニルエチルカーバメー ト(2)をバイオフィルム 形成阻害物質 として得た。

3.評

 

 

(2)

上記の方法はデータの再現性、操作の煩雑 さに問題があつたため、ある程度の付着阻害活性を有す るエチルN‑2‑(4‑ニ トロフェニル

)エ

チルカーバメー ト(3)に増殖阻害活性が認められたことに着 日し、これに対する増殖阻害活性 を指標にして探索をおこなった。試料 を塗布 した両面ス リガラス片 を液体培地の入った試験管に入れ、前培養液を接種 し、ざらに

25℃

3日

間振盪培養 し、この培養液 610nmにおける吸光度 を測定 して菌の増殖量 とした。 この評価系 を用いて天然物 を中心 に探索 を 行 った ところ、コワカイメン

(Psalnma.plysilla purpurea)か

らアエロプリシエンーIが、沖縄産カイメン

(Agelas sp。 )か

らブロモアグ リフェリンが、沖縄産未同定カイメンか らオロイジンが、奄美産未同定

ウミキノコから13‑ヒ ドロキシロボリ ドが、糸状菌からはシ トリニン、カエ トミンが増殖阻害活性物 質 として得 られた。また沖縄産カイメン

(CallyspOngia sp。 )か

ら新規ニ トロアルカン、 ウンテニ ンA

(4)、 B(5)、

C(6)が 増殖阻害活性物質 として得 られた。またフェネチルア ミンの誘導体 を合成 したと

ころ、

N、

N一ジクロロー2‑(4‑ニ トロフェニル

)エ

チルア ミン、

N、

N一ジクロロー2‑(4‑ク

ロフェニル

)エ

チルアシン、2‑(4‑ニ トロフエニル)エチルイソシアニ ド、

2‑(2、

4‑ジクロロフェ ニル

)エ

チルイソシアニ ド、2‑(4‑ニ トロフェニル)エチルイソチオシアネー ト

(7)、 2‑(2、

4‑ジ

クロロフェニル)エチルイソチオシアネー ト

(8)、

トリエチルアンモニウム2‑(4‑ニ トロフェニル)エ チルジチオカルバ ミン酸に顕著な増殖阻害活性が認め られた。

しか しなが らこの方法はサ ンプルの消費量が多 く、精製の進んだ段階でサ ンプルの減少が問題 と なった。そこでこのアッセイ系 をスケールダウンし、サ ンプル使用量が少なくてすみ測定 も簡単な96 ウエルプレー トを用いる方法 を行 つた。量の少な くなったものに対 して探索 を行 つた ところ、海藻

(Wrangelia sp。 )か

ら トリブロモアセ トア ミドが得 られた。

(4)

実験 を行 った ところ、2‑(4‑ニ トロフェニル

)エ

チルイソチオシアネー ト

(7)、

2‑(2、 4‑ジクロ ロフェニル

)エ

チルイソチオシアネー ト(8)に顕著な効果が認め られた。

5.総

 

本研究 において実験室 におけるバ イオフイルム形成制御物質の評価系 を確立 し、2‑(4‑ニ トロ フェニル

)エ

チルイソチオシアネー ト

(7)、

2‑(2、 4‑ジクロロフェニル

)エ

チルイソチオシアネー

(8)が

防汚剤 として有望であることが確認 された。 また新規化合物であるビスデアセチルソレノラ イ ドD(1)、 ウンテニ ン

A(4)、 B(5)、

C(6)に バイオフイルム形成阻害活性があることを確認 した。

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‑103‑

(5)

海洋における生物汚損は、21世紀に向けて解決 しておかなければならない、極めて深刻な問題であ る。亜酸化銅 0ビ ス

(ト

リプルチルチン)オキサイ ド

(■

3TO)な どの貴金属系防汚剤が従来使用 されて 来たが、環境汚染のため特に毒性の高いスズ系化合物については、現在ほぼその使用が禁止 されてい る。それ故環境に残存 しない、安全な有機系生物付着防止剤の開発が求められている。本論文は海洋 生物 自身や防御のために使 っていると推定 される、環境 に穏やかな海洋生物付着防止物質の探索研究

を述べた ものである。

本論文は全

5章

か ら構成 されている。

1章では序論 として本研究の背景お よび目的について述べている。

2章

では実験室で実施可能な生物試験法 を構築 し、これを利用 して目的物質の探索 を行った。試 験法の特徴 は付着性細菌の繁殖、すなわちバイオフィルム形成が引 き金 とな り大型海洋生物の付着が 進行することに基礎 を置いている点である。付着性細菌 は海岸土砂か ら単離 し、同定後使用 してい る。その結果、海面動物 より活性を示す新規物質のビスアセチルソレノライ ドDを単離 し、化学構造 を解明 した。 さらに、海洋細菌か らは

N― (2‑フ

ェニルエチル

)カ

ルバ ミン酸エチルを得ている。

3章

ではさらに生物試験法 を改良 して、多 くの材料からの目的物質の探索 を行 った。再現性、操 作性の良い付着性細菌に対する増殖阻害活性 を指標 とし研究を進めた。その結果、沖縄で採集 した海 綿動物から新規ニ トロアルカンであるウンテニン類 を単離 し、化学構造を推定するとともに、さらに 化学合成 によってこれを確認 した。 また、第

2章

で述べているフェネチルアミンの誘導体のなかでは 2‑(4‑ニ トロフェニル

)エ

チルイソチオシアナー トに顕著な活性 を認めている。一方、海草からは活性 物質 として トリブロモアセ トアミドを得ている。以上の結果から、海洋生物は様々な付着防止物質を 内在 させ、生体防御 を達成 していることを明 らかにした。

第4章 ではこれまでに得 られた化合物に対 して実海域での効果 を評価 している。2…

(4‑ニ

トロフェニ )エチルイソチオシアナー トおよび

2‐ (2,牛

ジクロロフェニル

)エ

チルイソチオシアナー トに顕著な効 果が認め られ、特 に後者については物性、経済性か らみて実用化の期待が持てるとしている。

第5章 は本研究 をまとめるとともに、活性物質の作用機序 についての考察 を行 った。

以上のように、本論文はバイオフィルム形成 を阻害することで大型海洋生物の付着 を防止 しようと 研究を進め、実用化の期待が持てる物質の創製 という成果を得ている。また、海洋生物の有する付着 生物からの防御機構 についても解明 した。 よつて本論文は博士

(工

)の学位 を授与するに充分値する

と結論 された。

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