Title
淡水性付着生物カワヒバリガイの付着機構の解明と付着防
止技術( はしがき )
Author(s)
松井, 佳彦
Report No.
平成12年度-平成14年度年度科学研究費補助金 (基盤研究
(B)(2) 課題番号12558070) 研究成果報告書
Issue Date
2002
Type
研究報告書
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/581
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。本研究では,導水管内に生息するカワヒバリガイの付着状況を把握した上で,カワヒバ リガイの付着を防止する・カワヒバリガイの脱離を促進させることを目的として調査研究 を行った. 第2章では,阪神水道企業団大道事業所内の導水管内の付着密度を2回調査することに よって実際の被害状況をとらえるとともに,導水管内の流速分布をコンピュータシミュレ ーションによって推定し付着密度と流速の関係を考察した.調査対象区間においては,管 路直線部よりも屈曲部の付着密度が高いこと,さらに管壁面付近の流速が1m/s以上の場所 ではカワヒバリガイの付着密度が低下していることを明らかにした.導水管の管壁面近傍 の流速を1m/s以上にすることによって,カワヒバリガイの付着密度を低下させることが可 能であると思われる. 第3章では,長良川と淀川において各種の塗料を塗布した試験片を用いて浸漬試験を行 い付着忌避性を評価した.その結果,シリコーン樹脂系塗料と銅・銀含有樹脂塗料の中に はフィールドにおいてカワヒバリガイに対する高い付着防汚効果を示すものが存在した. 一方,実験室内においても簡易試験を行い,種々の試験片の付着忌避性を評価した結果, 簡易試験として提案した静置法は,フィールドで高い付着防汚性を発揮する試験片を抽出 するためのスクリーニング試験として有効であることがわかった.また,試験片の表面物 性を測定して忌避性との関係を考察した結果,試験片の表面自由エネルギーの水素結合力 成分値を低下させることがカワヒバリガイに対する付着防汚性を高めるための必要条件で ある可能性を示した.特に表面自由エネルギーの水素結合力成分値が低いシリコーン樹脂 系塗料に関しては,さらに表面粗さを低下させることによって防汚効果が発揮することを 確認した.一方,シリコーンオイルの溶出量と防汚効果はほぼ関係であった. 第4章では,引張試験機を用いて試験片に付着したカワヒバリガイを脱離するために必要な力と エネルギーを指標として除去性を評価した.その結果,シリコーン樹脂系塗料の脱離力は0.1N未 満で,相対的に除去性が高いことを明らかにした.また,脱離過程での足糸の様子を観察した結 果,分泌した各足糸が脱離する際,試験片と接着円盤の界面で剥離する場合と,足糸の繊維部が 切断する場合があることを確認し,分泌した足糸数が少ないほど,かつ剥離する足糸の割合が大 きいほど脱離力や脱離エネルギーが低下することを明らかにした.さらに,除去性と試験片の表面 物性の関係を考察した結果,表面自由エネルギーの水素結合力成分値が低い試験片ほど足糸 が剥離する割合が大きく,付着力も小さいことが分かった.しかし,試験片の表面粗さと 付着力はほぼ無関係であった.本研究ではフィールドで採取した成貝を実験室内で試験片 に再付着させた後脱離性を評価している.このため各試験片の除去性の相対的な関係を評 価しているため,今後はフィールドで付着,成長したカワヒバリガイに対して試験片の除 去性を評価する必要が残された. 第5章では水流によってカワヒバリガイの脱離を試み,脱離に必要な流速と成貝に作用
する抗力を測定した・その結果,シリコーン樹脂系塗料に付着したカワヒバリガイは比較 的低い流速で脱離させることが可能で,相対的に脱離性の優れた塗料であることを確認し た・さらに各種試験片の脱離に必要な抗力は引張試験で測定した脱離力と比較すると平均 で1/5程度であることを確認した・また,脱離時に足糸繊維部が切断する場合に限って,カ ワヒバリガイの殻長と足糸数からその成貝を脱離するために必要な流速を推定した.その 結見足糸数が一定であると仮定した場合,カワヒバリガイが成長するにしたがって脱離 に必要な流速が増加する可能性を確認した.