通電加熱法による多種類熱物性値の同時測定法に関 する研究
著者 高橋 一郎
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 13
ページ 139‑140
発行年 1992‑03‑30
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1740
氏名。(本籍
)
高橋
一
郎 (山形県)
学 位 の種類 工 学 博 士 学 位記 番号
工博乙第
28
号学位授与の日付
平 成 2年 8月 10日
学位授与の要件
学位規則第5条第2項該当
°学位論文題目
通電加熱法による多種類熱物性値の同時測定法に関する研究
論文審査 委 員 (委員長)
教 授 荒 木 信 幸
教 授 児 山
仁
教 授 野 田 直 剛
教 授 秋 山 鐵 夫
助教授 牧 野
敦
論 文 内 容 の 要 旨
工業技術の発展を支えているものの一つに材料科学がある。殊に近年,新素材の開発がめざましく, 超耐熱合金やアモルファス合金などの応用技術が進展 しつつある。それに伴って,広範囲な温度域で の熱物性情報が強く望まれている。しかるに,広い温度範囲の測定では,熱膨張率などほかの熱物性 の変化が測定精度に影響するため,関係する熱物性値も同時に測定する必要がある。また,要求度の 高い測定対象は難加工性のものが多 く,従来法の適用が容易でないことが多い。
以上の観点から,本研究は,金属など導電性団体の多種類の熱物性値が同時測定可能な測定方法を 開発 し,更に各測定条件に関係する理論誤差を解析 し本方法の有用性を明らかにしたものである。
本論文を要約すると次のとおりである。すなわち,第1章では,本研究の背景と目的を述べている。
第 2章 では,固体熱物性測定法の既往の研究,および本通電加熱法が測定対象としている熱物性値ご とに,それぞれの測定法の現状を概説 している。そして特に重要な熱 3定数の測定法における本測定 法の位置づけをしている。第 3章では,本測定理論をまとめて示 している。測定でぎる熱物性値は, 熱膨張率,電気抵抗率,全半球放射率,熱伝導率, トムソン係数,比熱,および温度伝導率などであ
る。試料は,円形または矩形断面の棒状のもので,薄いリボン状試料も適用可能である。また,測定 温度域は常温から1000K程度の高温域と広範囲である。第 4章 では,本研究において改良開発され た測定装置とその測定方法について述べている。本装置の特徴は,水冷真空容器の中に試料保持部と 熱電対プロープ走査測定部が分離して固定されているため,測定部に試料加熱による熱的影響が及ば ないこと。温度はもちろん基礎測定量の殆どが一本の熱電対プローブを用いて測定できること・。この プロープ先端は接触覚センサも兼ねており,測定時のみ試料表面に接触するようにしていること。温
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度計測では,いわゆるバランス法を適用 していること。 したがって,試料に熱電対を貼 り付けるなど の熟練を要する加工が不要なことである。また, この場合に問題 となる温度測定誤差は補正係数を導 入することによって除去できるため,試料温度の測定精度が高いことである。本測定装置では 1台 の コンピュータによって温度制御とオンライン計測がなされる。測定方法は,昇温定常加熱モー ド,定
常温度分布測定モー ド,および非定常温度変化測定モー ドに分かれており,それらの測定結果によっ て上記のような多種類の熱物性値が得 られる。第5章では,各熱物性値測定条件に関係する測定誤差 の影響度を理論解析によって明 らかにしている。特に,試料断面内に温度分布が存在することに起因 する理論誤差を求め,その評価式を導出している。その結果から,矩形断面試料のほうが円形断面の そ れより有利であることが示されている。さらに,放射率測定において,従来十分考慮されなかった 試料周囲か らの反射による影響度を見積 もる方法が示されている。以上の結果を利用 して,試料の最 適形状寸法を選定する方法について述べている。第6章では,」IS・ SUS304及び純銀の円形断面棒
状 (直径3111111)試料の測定結果を示 し,各熱物性値の測定精度を評価 している。例えば,SUS304の
熱伝導率が 300〜960KにおいてNBSの SRM公表値に対 し5%の差で求められている。第 7章では,
厚 さ20μ m程度の極薄 リボン状試料の適用例を示 している。すなわち」IS e SUS304と アモルファス 合金4種類の測定結果か ら,アモルファス合金 も結晶性の金属と似た電子の挙動によってその熱物性 が左右されることを明 らかにしている。第8章では,金属基板に被覆 した非金属塗膜の全半球放射率 と熱伝導率の同時測定法を呈示 している。純銅の矩形断面棒状試料の片面に黒色耐熱塗料を塗布 した ものを用いて本通電加熱装置により測定 した結果は, この塗料を放射伝熱促進に利用する場合の有効 な熱物性情報を与えている。第9章では,本測定法において比較的低い温度域での熱物性値測定精度 を向上 させるために,試料表面を黒色巻膜によって高放射率面にすることが有効であることを示 して いる。その場合,比熱測定における塗膜の存在による理論誤差を理論解析によってその影響度を見積 もっている。矩形断面棒状試料を用いた比熟測定の結果は,600K以下で文献値 と良 く一致 している 力湖00Kではそれより7%低い値が得 られている。また,温度計測において,前述 の補正係数を測定 して求めた非定常温度変化と,試料に熱電対を直接スポット溶接 して測定 した結果とを比較している。
その結果から,この補正係数を測定すれば熱電対プローブによる温度測定確度が十分高 く本方法が有 効である通とを明 らかにしている。第10章は本論文の総括であり,各章で得 られた結果を要約 してい
る。
以上により,本通電加熱法は,広い温度範囲で精度良 く多種類の熱物性値が測定できること。およ び,従来法では測定が困難であった極薄試料の適用が可能であることなど,本測定法の有用性が実証 された。
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