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雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会科学篇

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(1)

ついて(1) : 静岡県内の研究指定校への調査から

著者 石上 靖芳

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会科学篇

巻 57

ページ 333‑345

発行年 2007‑03

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00006841

(2)

力向上 フロンティアスクールの成果 とその影響 について (1)

一静岡県内の研究指定校への調査か ら一

About the result of the scholastic achievement at frontier schools and the influence they have

-From the investigation on the designated research schools in the Shizuoka Prefecture-

石 上 靖 芳 Yasuyoshi ISHIGAMI

(平 成 18年 10月 2日 受理 )

1。 問題 の所 在

1998年 12月 に改定内容が公示 された学習指導要領では、   ゆとり教育 "と 教育内容の質的な充実を標 榜 し、教える内容の 3割 削減や総合的な学習の新設、教育課程編成の弾力化等か ら自立的な特色ある学 校の創設を求め、教育改革の一層の推進を図ろうとした ものである。 しか し、期を同 じくして大学生の 数学の学力低下を指摘 した経済学者の西村和雄、受験生が勉強 しな くなった傾向を憂慮する精神科医師 和田秀樹、学習意欲や学力の階層間格差の拡大を問題 にす る教育社会学者の苅谷剛彦 らの論点を源流 に して学力低下論争が起 き、マスコ ミ・ ジャーナ リズムを巻 き込んで大論争へ と発展 していった (1ヽ 当然 のように批判の対象 となったのは、 3割 削減 し改定 された学習指導要領、学校週 5日 制への批判等であ り、改定の趣旨であるゆとり教育 は「 ゆるみ教育」 とまで椰楡 され、文部科学省の文教政策への批判 は 日増 しに高まっていったのは周知のとお りである。

そのような世論のなか、文部科学省は「確かな学力の向上のための 2002ア ピール『学びのすすめ』」 (2) の緊急声明や学カアクションプランとして施策を次々と矢継 ぎ早 に打 ち立て、学力低下論の払拭に勢力 をつ ぎ込んでいったことは記憶 に新 しい。 この一連のアクションプランの中核 になったのが、学力向上 フロンティア事業であり、学力向上 フロンティアスクールとして、全国に小中学校 1689校 を指定 し (平 成 15〜 17年 までの 3年 間が研究期間 )、 学力向上に資す る実践研究を委託 したのである。その趣旨とし て、 「文部科学省 と都道府県教育委員会 との連携・ 協力の下、理解や習熟の程度 に応 じた指導の実施や 小学校 における教員の得意分野を生か した教科担任制の導入など、児童生徒一人一人の実態に応 じたき め細かな指導の一層の充実を図 るために実践研究を推進 し、その成果を全国すべての学校に普及 させる ことにより、新 しい学習指導要領のね らいとする「確かな学力」の向上に資する」 (3)を 示 した。研究の 具体的な柱 として、 「①発展的な学習や補充的な学習など個 に応 じた指導のための教材の開発」 「②少人 数指導をはじめ とする個 に応 じた指導のための指導方法・ 指導体制の工夫改善」 「③児童生徒の学力の 評価を生か した指導の改善教材の開発」の 3点 を掲 げたのである。 さらに、 この事業の大 きな特徴 は、

指定校での実証的な研究の成果を、近隣の小中学校をはじめとして全ての地域 に普及を図るという大 き な目的を持 っていたのである。特に、②に関 しては、少人数指導を行 う加配教員が優先的に措置され、

多 くの指定校が、 この指導体制や指導方法の研究を中心に研究が進められたことは特筆すべき点である。

そのため、学力向上 フロンティアスクールの研究指定 は、本校 において一人一人の児童生徒への学力保

(3)

障をどうなすべ きかを具体的に明 らかにすることにあるのに、少人数指導のシステム開発を行 う研究の 指定へと置 き換え られ、研究が推進 された感 もないわけで もない。いずれにおいて も、かつてこのよう な大規模な研究指定 は前例がな く、稀有のことであり、研究指定校は、国、地方教育行政の強い方針の

もと研究を推進す ることになったのである。

静岡県においては、文部科学省か ら県全体の地域指定を受 け、県下の小中学校 36校 を指定校 として選 定 し、研究を開始するに至 った。県では、いち早 く県内の児童生徒の学力低下への危惧か ら、県教育委 員会が主導 し、平成 15年 度 には、地方初の「確かな学力育成会議」 (4)を 開催 し、学力問題 に関 して、静 岡県 における学校、教師、地域、社会がどうあるべ きなのか、またどのような対策を立てていけばよい のかを育成会議 に審議を委ねた。 この育成会議は、元文部大臣の有馬朗人を座長に据え、学識経験者、

小・ 中・ 高等学校の校長、 PTA、 民間人か らなる 19名 の委員で組織された。計 5回 の審議 において真 摯な討議 と検討がなされ、その結果、 「静岡の子 どもに『確かな学力』を」の提言 としてまとめ られた。

現在ではこの提言を受 け、静岡県版カ リキュラムの作成、 カ リキュラムコーディネーター等の教育施策 に反映され現在 に至 っている。筆者 は、静岡県教育委員会在職中に、 この事業の行政側の担当として指 定校の 1/3に あたる 12校 の研究に関わる機会があり、共同で研究の方向性や内容の検討を行 った。静岡 県では、 この研究 に関 して、年 2回 の連絡協議会を設定 し、 さらに県内 3つ の教育事務所では、担当者 会議 として地域協議会を年 3〜 4回 設定 し、情報交換や研究の進捗状況を確認するなど、研究の方向性 と取組内容 に関 して助言 を行 った。 また、各指定校へは、年間 3〜 4回 の訪間を行い、校内研修等へ直 接参加することを通 して研究への支援 を図 ってきた。結果 として指定された各学校 は、学力低下問題 に 真 っ向か ら取 り組み、 2〜 3年 間にわたり真摯に実践研究を推進 し、得 られた具体的な知見を近隣の学 校をはじめとする地域へ普及 させてい ったのである。

平成 18年 度現在、文部科学省の政策的な施策等の実施に関する勢いは失せ、規模は縮小 されたものの、

一連の学力向上 アクションプランは継続 して実施されている。 この学力向上 フロンティアスクールは学 力拠点校形成事業 として引き継がれ平成 17年 度か らスター トしている。現在では、学力低下論争 はほぼ 終焉 し、各学校 においては、新学習指導要領の趣旨が浸透 しはじめると同時に平穏 さを保ち、学校教育 が担 う本来の営みを粛々 と取 り組んでいるように窺える。そこで本研究 は、 2年 の月 日が経た今、県内 研究指定を受 けた 36校 において、その取 り組みや成果が学校組織、学校文化、教育課程等にどのような 影響をもた らしているのか、また教師の教育観や授業実践にどのように影響を与えているのかを調査 し、

この事業が与えた成果 と影響 について明 らかにすることを目的 とする。

2.調 査 方 法

学力向上 フロンティアスクール指定校 において、指定後 における具体的な成果や影響を調査するため に、質問紙調査 (表 1)を 作成 し、県内の学力向上 フロンティアスクール校の指定を受 けた公立小中学 校 36校 へ郵送 し回答を依頼 した。質問紙調査の実施に際 し、各学校における回答者は、人事異動による 転出などによる影響 と、複数の視点か ら質的な事実の把握を行 うために、 この研究事業に携わった 3人 前後の教師に回答 して頂 けるよう文面 にて依頼 した。

・ 調査対象 :静 岡県内における学力向上 フロンティアスクール指定を受 けた 36校

・ 調査時期 :平成 18年 9月

その結果、 21校 か ら 50名 の教師か らの回答があり、回収率 は58.3%で あった。また、小学校 は 13校

あり、 30人 の回答があり、回答者の教職経験 は 13年 か ら 38年 であった。中学校か らは 8校 か ら 20人 の回

(4)

答があ り、回答者の教職経験 は、 5年 か ら 25年 であったが、大半が 10年 以上の教職経験を もつ教師で占 め られていた。

質問紙の調査の内容に関 しては、第 1点 目に、 この事業の研究の柱である「①発展的な学習や補充的 な学習など個に応 じた指導のための教材の開発、②少人数指導をはじめとする個に応 じた指導のための 指導方法・ 指導体制の工夫改善、③児童生徒の学力の評価を生か した指導の改善教材の開発」の 3点 を 柱 に、 「研究指定で取 り組んだことが、現在の学校の教育活動にどのような影響や成果を もた らしてい るのか」で構成 した。第 2点 目に、 「回答者 自身が この研究指定か ら受けた影響について」 、第 3点 目に、

「教育課程編成上 における影響や教師の力量形成のフォーマルな場である校内研修をはじめとす る教師 間の協働体制や組織体制について」、第 4点 日に、 「子 どもたちの変容そのものと外部 との連携がどのよ うに進んでいるのか」の 4点 を柱 として設間を設定 した。本稿においては、紙幅の制約上、第 1点 目を 中心 に回答のあった記述の分析について報告する。

表 1  質問紙の内容について

1.こ の指定においては、①発展的な学習や補充的な学習など個に応 じた指導のための教材の開発、②少人数指 導をはじめとする個に応 じた指導 のための指導方法・ 指導体制の工夫改善、③児童生徒の学力の評価を生か し た指導の改善教材の開発の 3点 が柱 となっていました。 これ らか ら得 られた研究の成果は、現在の貴校の教育 活動 にどのような影響や成果を もた らしていますか。それぞれの項 目に具体的にお答え下 さい。

(1)発 展的な学習や補充的な学習など個に応 じた指導のための教材の開発について

(2)少 人数指導 (習 熟度指導 )を はじめとする個に応 じた指導のための指導方法・ 指導体制の工夫改善 につい て

(3)児 童生徒の学力の評価を生か した指導の改善について

2.こ の研究か ら先生御 自身の価値観の変容や影響について具体的にお答え下 さい。

(1)学 力の捉え方 について

(2)授 業実践 に関 して変わ ったり、気をつけたりするようになったことについて (単 元開発、課題解決学習への取 り組み…… )

(3)評 価の捉えや評価方法に関 して変わ った り、気をつけたりするようになったことについて (評 価規準の活 用、 自己評価・ 相互評価の活用…… )

3.校 内研修をはじめとする校内組織体制への影響や効果について具体的にお答え下 さい。

(1)教 育課程編成等において具体的な工夫をは じめとする影響をもた らしていることについて (時 間割編成、

モ ジュール設定、小学校における教科担任制の導入…… )

(2)校 内研修を実施する上での影響や効果について

(授 業研究の分析方法、協議会の運営方法、公開研究会の実施…・

:。

)

(3)教 師間のコ ミュニケーションの促進や協働体制について

4。 .子 どもたちの学力向上や生活面 において具体的な成果や影響をもたらしていることについて具体的にお答え 下 さい。

(1)子 どもたちの学力が向上 してきていると思いますか。 その理由について具体的にお書 き下 さい。 (授 業中 における子 どもたちの変容など )

(2)子 どもたちの生活面について

5.学 力を向上 させ るために保護者や地域の学校など外部 との連携に関 してその影響や成果について具体的 にお

答え下 さい。 (近 隣の小中学校 との連携、保護者 の学校参画をはじめとす るゲス トテ ィチ ャーやアシスタン ト

ティチャーなどの導入。 ・ ・… )

(5)

3.結 果 と考 察

(1)発 展的な学習や補充的な学習など個に応 じた指導のための教材の開発 について

児童生徒 は生来、様々な資質や能力において個体の差があり、学習における習熟の度合い も一律では ない。 この ことを前提 として、学習において到達すべ き目標に到達 していない児童生徒 には、補充的な 学習 により到達を支援 し、到達 している児童生徒に対 しては、発展的な学習を与えることにより、 さら に内容を深め広げてい くことをね らいとしているのが、発展的な学習 と補充的な学習の取 り扱いである。

発展的な学習については、学習指導要領の一部改正 において「 はどめ」規定が撤廃 され、学習指導要領 の「基準性」の一層の明確化 とともに、 この内容に示 された基礎・ 基本の習得が図 られた上での発展で あることが答申 (5)に よって示 されている。

回答のあった記述を見てみると、少人数指導 (習 熟度別指導 )の 各 コースの展開 と発展的な学習や補 充的な学習 とを関連付 けた単元の開発や教材開発がなされていることの記述が多 く見 られたことである。

また、補充学習については、 20分 程度のモジュール学習を教育課程内に位置付 けたり、教育課程外では、

朝 自習の時間や放課後 に位置付けたりしているとの記述 もあった。 さらに記述の内容を検討 した結果、

成果や影響を与えていることが らとして、 「蓄積された資料の活用 と発展」 「児童生徒の実態把握 と教材・

教具の工夫」「授業実践の深 まりと授業観の変容」の 3点 が共通性の高い内容 として見 いだす ことがで きた (表 2参 照 )。

第 1点 目の「蓄積 された資料の活用 と発展」についてである。 これは、小学校においては、大半の学 校が算数科を窓口に して研究を推進 した事例が多いのが特徴であるが、学年において開発 した算数の少 人数指導 におけるコース別の単元の発展的・ 補充的な指導案や教材 0教 具などを資料 として保管 し、次 年度 に活用す るというシステムが構築 されてきていることの記述が多 く見 られたことである。 これは、

時間 と労力をかけて開発 した単元や授業案等の情報 を一元化 してい くカ リキュラム管理を意識 したもの であり、担当 した学年 に関わった教師だけの財産に留めないで、学年部で開発 したコース教材等を学校 全体の共有財産 としての蓄積 と継承を図 ってい くことを意味 している (6、 このようなカ リキュラム管理 は、今 までの教師個人の個業を基盤に した職務形態か らは、存在 しに くか ったものである。そのような 視点においては、教師の持つ実践知や暗黙知を形式知 に変えてい く営みを含んでおり、学校制度や教員 文化に大 きな影響 を与えているものとして捉えることができる。一方、中学 においては、 「新 たな教材 開発 は難 しいが、昨年度 までに積み上げてきたものを利用 したり、改良 したりしなが ら発展的 0補充的 な学習を行 っている」 との記述か らも教材の開発等で培われた内容を基盤 にした資産の有効活用が教科 内で図 られていることが窺えるが、学校 としてカ リキュラムを保管・ 管理 していることに触れた記述 は 見あた らな く、同教科の教科担任による資産の継承 に留まっていると考え られる。

第 2点 目の「個の実態把握 と教材・ 教具の工夫」 についてである。小中学校 ともに児童生徒の学習状

況の把握か ら、少人数指導 (習 熟度別指導 )の コースに応 じた教材開発や具体物を準備するなどの工夫

に関す る記述が多 く見 られたことである。例えば、 「 ワークシー トを作成す る際においては、思考を引

き出すような工夫、 ポイ ントを押 さえた手作 リプ リントを心掛 けている」などの記述か らも事前 に丹念

に準備を行 い、工夫を凝 らして教具等を作成 して授業 に臨んでいる様子が窺える。また、中学校 につい

ては、少人数指導における発展的・ 補充的な教材ばか りでな く、選択教科において発展的な教材や補充

的な教材の開発を個の実態に即 して行 っているなどの記述か らも広が りが見 られた。中には、 「補充的

な学習 として、放課後個別指導の時間を設 け、 (略 )ど うして も見落 とされがちであった生徒達 に光を

あて、授業の中では、あまり積極的でなか った生徒達 と近い距離で接す ることができたのは大 きい」 と

(6)

の記述か らは、関わ り合 うことで子 どもの実態を再確認 し、子 どもに対する見方の変容を窺わせるもの である。以上のことか ら、一人一人の児童生徒に学力を保障 してい くという前提のもと、 日の前の子 ど もの実態を把握 した上で、それぞれの状況に応 じた教材・ 教具を開発す るとともに指導に生か してい く という教師の授業 に対す る姿勢が見 られることは大 きな成果 として捉えることができる。

第 3点 目の「授業実践の深まりと授業観の変容」 についてである。少人数指導等におけるコース別指 導におけるい くつかのコースの内容を同時に検討 し、発展 コニス、補充 コースの単元展開や、そのコー スで利用する教材や教具の開発を行 うことを通 して、授業展開の多様化、複線化、問題解決的な授業の 展開等が意識 され、授業実践への深 まりが見 られる点である。例えば、 「教師 も個 に応 じた対処が多様 にできるようになったり、教材や指導 に軽重をつけたり、発展問題の与え方や量、補充の積み上げ方な どに巾ができて きたように見受ける」「問題解決的な単元を通 した展開の工夫を試みることが増えた。

この中で指導を複線化 したり、少人数指導を行 う教科では、各々の教師の役割を意識 した教材開発や指 導展開を試みたりすることができるようになった」等の記述か ら窺 うことができる。 これは、授業のあ り方その ものや捉え方の転換が図 られてきていることの一端を示 しているものと捉えることができる。

表 2  発展的な学習や補充的な学習など個に応 じた指導のための教材の開発の影響について (自 由記述 )

<蓄 積 され た資 料 の活 用 と発展 >

・ それぞれの単元における各 コースごとの単元計画ができているので、 3年 〜 6年 までは、単元計画を参照 し て、個に応 じた授業展開ができる見通 しが もてるようになった。 (小 )

・ 単元で使 う教授プ リントやワークシー トが充実 してきて、学年 ごとの算数 ラックの中にす ぐに使えるよう保 管 されているので便利である。 (4ヽ )

・ これまで取 り組んできた教材開発が次にうけつがれ、それをさらに児童の実態に合わせて活用することがで きた。 こどもたちも算数の授業でわかる喜び新 しい学びに出会えるうれ しさで「好 き」 という子が増えてき た。 (小 )

・ 新たな教材開発は難 しいが、昨年度までに積み上げてきたものを利用 したり、改良 したりしなが ら発展的・

補充的な学習を行 っている。 (中 )

・ 学力向上 フロンティアスクールに取 り組んでか ら積み上げてきた教材を活用 し個や集団の実態に合わせて改 善 したり、 さらに開発を したりしている。 (中 )

・ 開発 したカ リキュラムは、完全習得学習を範に「 スター ト学習」「 ステ ップアップ学習」 (形 成的評価 )「 セ レク ト学習」か らなる一連の学習である。学力向上 Fの 実践は本校 の研修全体に大 きな影響を与えた。 (中 )

<個 の実 態把握 と教材 0教 具 の工 夫 >

・ 個を しっか り見つめる中で、一人一人を思い浮かべた指導を心がけるようになった。そのために必要な教材 を一人一人の教師が手間をかけなが ら工夫 して作 る機会が多 くなってきている。 (小 )

・ 子供の考え方に応 じて、できるだけ自分の考えで解決できるようにするためのワークシー トを作成 したり、

具体物を準備 したりするようにしている。

C/1ヽ

)

・ 実践を通 して、今まで以上に生徒個々の学習 した内容がどの程度定着 したかを しっか りと問 うことが必要で

はないかという課題がでてきた。そのため完全習得学習を範に「 スター ト学習」 「 ステ ップアップ学習」 「 セ

レク ト学習」か らなる一連の学習である :学 力向上 フロンティアスクールの実践 は本校の研修全体 に大 きな

影響 を与えている。 (中 )

(7)

・ 発展的な学習 については、あまり大 きな取 り組みができなかった。 しか し、補充的な学習 として、放課後個 別指導の時間を設 け、個に応 じた指導の促進ができた。 どうして も見落 とされがちであった生徒達 に光をあ て、授業の中では、あまり積極的でなかった生徒達 と近い距離で接することができたのは大 きい。 .(中 )

・ 子 どもの習熟の程度 に合わせた発展的補充的な学習の教材開発が日常的に行われるようにな り、学力向上に つなが っている。 (中 )

・ 各教科の授業の中で特 に力を入れたい単元や子 どもの意欲をより高め、学力を伸ば したい教材 については、

発展的な学習教材を工夫 して作成 し実践 している。補充的な学習については、 203年 の選択授業で主 に実 践 している。 (中 )

<授 業 実 践 の深 ま りと授業 観 の変 容 >

・ 教師 も個に応 じた対処が多様にで きるようになったり、教材や指導に軽重をつけたり、発展問題の与え方や 量、補充の積み上げ方などに巾ができてきたように見受 ける。 (4ヽ )

・ 習熟度指導を取 り入れたことで、学習グループに合わせためあてや学習展開を考えるようになった。 (小 )

・ 同 じ内容の教材であって も習熟度別 クラスによって提示の仕方を変えたり教具をより具体物で与える等、教 材に幅を もたせた。 (小 )

・ 問題解決的な単元を通 した展開の工夫を試みることが増えた。 この中で指導を複線化 したり、少人数指導を 行 う教科では、各々の教師の役割 を意識 した教材開発や指導展開を試みることがで きるようにな った。 (中 )

01時 間 ごとの学習 というより単元を通 して生徒にどんな力をつけたいかを考えて教材研究を行 うようにな っ た。少人数指導ができて もできな くて も「 ここを押 さえたい」や「既習事項 と比較 しよ う」「 ここは発展だ けどみんなに指導 したい」 と意識するようになった。 (中 )

※関係する主な意見を抜粋 した ものである。

C/Jヽ

)は 小学校を示 し、 (中 )は 中学校の回答者を示 してい る。

(2)少 人数指導をは じめとする指導方法・ 指導体制の工夫改善について

まず少人数指導 について触れておきたい。少人数指導 とは、現行の学級編成の標準である 40人 を上限 とす る学級を解体 して少人数に して授業を行なった り、学級へ もう一人の教師を配置 し、連携をとりな が ら TT(チ ームティーティング )で 行 ったりす る指導体制である。 さ らに、少人数指導 においては、

効果を上げるために習熟度別指導をはじめとする多様なコース編成による指導体制で適切な指導方法を 用いて授業実践を行 うものである。 こうした制度の推進は、文部科学省 の第 7次 公立義務教育諸学校教 職員定数改善計画の実施の事業の一貫である平成 13年 度か らの少人数加配が基 となっている。 この加配 制度 は、 目的加配であるため、少人数指導をすることを条件に、各学校 はどのよう方法や内容で取組を 行 うかの計画を前年度 に申請 し、審査を経て措置がなされるのが一般的である (7、 文部科学省 は、 この ような少人数加配 による新制度 によって学力向上が確実に成 されるとい う事業の趣 旨の実現 を図るため に、学方向上 フロンティア事業の研究の柱の 1つ に少人数指導の指導方法・ 指導体制 の研究を位置付 け るという方策を採 ったのである。

さて、 「少人数指導をはじめとす る個に応 じた指導 のための指導方法 0指導体制 の工夫改善 について

現在の貴校の教育活動 にどのような影響や成果をもた らしていますか」 の設間に対す る記述 を分析 した

結果、 「編成 コースの開発及び工夫改善」 「 システムの効果的運用」 「学年協業及 び教科担任 による協働

体制」 「 システムヘの懐疑及び不備」の 4点 が共通性の高い内容 として見いだす ことがで きた (表 3参

(8)

)。

第 1点 目の「編成 コースの開発及び工夫改善」では、少人数指導 における様々なコース設定や指導方 法が開発 され、運用 されていったことを窺 うことができる記述が多 く見 られた ことである。小学校にお いては、 ほぼ全部が算数 において少人数指導が運用 されており、例えば、 2C3Tと 言えば 2ク ラスの 集団を 3ク ラスに分割 して運用する方法である。 さらに分割の基準を等質で分 ける場合、習熟度別で分 ける場合、 目的別で分 ける場合等が見 られ、 システムを効果的に運用す るために児童の実態や単元の特 質 に応 じて これ らの方法を使い分 けてい くという運用の方法が各学校で開発 され定着 していったといえ る。小学校では、少人数指導における習熟度別編成が圧倒的に多いのが特徴であるが、現在で も、 これ らの開発 したノウハ ウや資産を活用 しているとの記述が多 く見 られ、研究の成果が根付いていることが 窺える。中学校において も、小学校 と同様に様々な少人数指導における指導方法・ 指導体制が開発 され 実践 されていったことが窺えるが、教科担任制を採 ってお り、数学や英語を中心 とする特定の教科に教 員が加配 されている傾向があるため、少人数指導、 TTを 併用 しなが らこれ らの教科を中心 に運用 して い くなかで、それぞれの学校に応 じて システムは開発されていったといえる。いずれにおいても、 レディ ネステス ト等による児童生徒の学習状況の把握、つけたい力、単元開発 との関係か ら少人数指導におけ

るコース設定の方法が検討されていることが窺えtシ ステム開発・運用に関しては相当な労力が費やさ

れてきていることが推測できる。

第 2点 目の「 システムの効果的な運用」についてである。小学校の記述に多 く見 られたのが、少人数 指導 (習 熟度別指導 )の 長所 と短所を実践か ら認識 し、それを生か しなが ら効果的な運用を行 っている 点である。例えば、 「少人数指導 についてどんな形態をとり、 どのような長所 :短所があるのかが見え たことにより、現在、子 どもたちを見なが らどんな指導体制をとろうかを考えてい くことがで きている」

「単元 によって少人数指導のクラス分 けを習熟度、均等、課題別等に している。評価を表現 0処理 に中 心をお く単元は習熟度別が効果的であった」等の記述か ら窺 うことがで きる。 どの単元に習熟度別指導 が有効であるかなどの得 られた知見か ら、年間を通 してどのように指導体制や指導方法を採 るかなどが 検討 され運用に移 されていることは大 きな成果である。一方、中学校 においては、少人数指導の形態 と して効果のあがる指導形態 は、 TTに よるものであるという意見が多 く見 られた。 これは、教科の特性 をはじめ習熟度別指導等 に学級を編成するなどの労力に時間をかけるよりは、で きるだけ複数の教師で 指導にあたった方が、 システムを運用 してい く上で効果的 0効 率的であるといった体験か らの示唆であ ると捉えることができる。

第 3点 目の「学年協業及び教科担任 による協働体制」についてである。小学校の教師の記述 に多 く見 られたのは、学級 の枠を超え、学年の教師が共同で指導にあたることや、単元を共同で開発 したり授業 中の児童の学習状況や表れを検討 した りすることの機会が増えたことのよさを評価 している点である。

例えば、 「子供たちにとってよい授業 とは何なのか話 し合 う機会が増え、学ぶ ことが とて も多 くなった」

「教師間の共同体制が進み、お互いにアイデアを出 し合い影響 し合 って児童の指導 にあたるようになっ てきた」等の記述か らは、共同による取組か ら教師間同士の交流の活性化が図 られ、教師自身の授業観・

子供観等が問い直されると同時に、同僚性の構築が窺えることである。 これは、以前か ら指摘 されてき た学級王国の解放を促進 し、児童 は学年や学校の全教師で育ててい くという新たな展開や価値観が生ま れているものとして捉えることができる。同様に、中学校教師の「教員の持ち時数 に限度があるが、で きるだけ複数の教員で指導にあたることの意義を教員が知 り、共通認識 した」 との記述か らは、複数の 教師による指導により、 きめ細かな対応ができることのよさや共同での取 り組む ことのよさを実感 して

いることが窺える。

(9)

第 4点 目の「 システムヘの懐疑及び不備」 についての意見である。少人数指導に関する指導体制 と指 導方法 は指定校において、そのシステムの長所や短所を認識 し、受けいれ られている記述が多か った。

しか し、学級が解体 されて しまい、人間関係が希薄になって しまうことや、少人数のクラスにして教師 と児童生徒 との表面的な関係 になっていることの指摘 もあ り、 システムその ものへの懐疑を窺わせ る記 述が見 られた。 また、中学校 において生徒指導上の問題で、問題傾向の生徒をせ っか く学級編成で切 り 離 したのに、 この制度 による学級分割による再編成によって問題傾向にある生徒が 1つ のクラスに集まっ て しまい、逆に大変になって しまったという記述が見 られた。仮 に問題行動が多発 している学校におい ては、 システムが刃になる危険性が内在 していることを指摘 しているものである。同様な習熟度別指導 の問題や課題を指摘 した論考 として、例えば、中学校教員の岸田 (8、 柏村 (9\ 月ヽ 寺 ° のらに見 ることがで きる。いずれの主張 も、子 どもたちの成長には異質の個性を もった子 どもたちが共同で学び合 うことが 必要であり、そのために相互 に学び合える授業 とそれを支える学級をつ くることが大切であることを主 張 している。以上のことか ら、制度だか ら物理的に強制的にや らねばな らないのではな く、その利用の 有無をはじめ、少人数加配をどのような形で効果的に活用 してい くかは、各学校の裁量の中で柔軟 に運 営で きる枠組みの構築を検討 してい く必要がある。逆 に、学級減 において、少人数加配が撤廃されたた め、 このシステムのよさを認識 していたにも関わ らず、次年度か ら運営できな くなったとの記述 もあっ た。 こうした制度面の不備に対 しての意見を重た く受 け止め、 どう制度に反映 させてい くかは、教育行 政 に課 され られている大 きな課題であることを指摘 しておきたい。

表 3  少人数指導をは じめとする個に応 じた指導のための指導方法・ 指導体制の工夫改善について (自

由記述 )

<編 成 コー スの開発 及 び工 夫改 善 >

・ 2ク ラスを 3ク ラスに分 けることが多か ったが単元の特性や レディネステス トの結果、つけたい力などか ら 色々な目的別 クラス分 けを した。 また人数 も常 に 1/3で はな く、柔軟 に変えた。単元によっては、途中で も

クラスを移動 し、より自分 に合 ったコースヘ 自分で選択 し、学習を進めることを した。 (小 )

・ 習熟度のみな らず実態や単元に応 じて等質 グループ習熟 +等 質 などさまざまなグループ分 けで対応 した。 1 学級の人数が 35人 以上の学年には少人数担当 として 2人 をプラス して 1グ ループの人数を少な くした。 (小 )

・ 英語科において、 102年 で 2C3T(2ク ラス合同で授業を 3人 の教師で行 う )3年 T.Tの 授業を行 っ ている。数学科においては、 1年 で 2C3Tを 203年 で TOTの 授業を現在 も継続 して行 っている。 (中 )

・ 理科においては、少人数等にはせず、  1人 の教師が実験準備、 もう 1人 が説明するなど役割分担を して授業 を した。その結果、時間を節約 し、効果的な授業を展開 した。 (中 )

<シ ステム の効 果 的運 用 >

・ 現在 も少人数指導を実施 してお り、成果 は上が っている。人数が少な くなることで子 どもの側では、意見が 言いやす くなる。教師側では目がいき届 くようになる。少人数指導についてどんな形態をとって どのような 長所・ 短所があるのかが見えたことにより、現在子 どもたちを見なが らどんな指導体制をとろうかを考えて い くことができている。 (4ヽ)

・ 単元の学習内容や児童 の実態により、 TT、 均等割、習熟度別、課題別での指導体制を工夫 して組み合わせ ている。大体の流れができてきている。 (小 )

0年 度当初 に、 どの単元を学年一斉の習熟度別指導 にするのか、 TT指 導にするのかを決め、実施 している。

子どもや保護者か らの理解 も得 られ、学年の教師が一体 となって指導を行 っている。 (小 )

(10)

・ 習熟度別 クラス分 けを多 く採用 してきたため、その分野においては、特に指導方法や指導体制ができてきて いる。特に「数 と計算」「数量関係」「量 と測定」の分野では、習熟度別 コース分けが必至 となった。 (小 )

・ 通常の授業の中で、新 しく少人数集団を作 るには、教員側にかかる負担が非常 に大 きい。中途半端な少人数 を構成するよりも TTの 形で複数の教員がつけた方が効果が上が っている。 (中 )

・ 少人数指導を 1年 生か ら年間を通 して行 う場合、そのグループの分け方や習熟度 にするか等質にするかなど は、実態を見極 め教材 と合わせて柔軟に してい った方がよいのではないか とい う考え方 に進んでいった。

(中 )

<学 年協業及び教科担任による協働体制 >

・ 子供たちにとってよい授業 とは何なのか話 し合 う機会が増え、学ぶ ことが とて も多 くなった。 (小 )

・ 少人数指導に取 り組むことによって、学級か ら学年で児童の指導を しようとす る傾向が多 く見 られるように なってきた。 (学 年協業の促進 )(4ヽ )

・ 教師間の共同体制が進み、お互いにアイデアを出 し合い影響 し合 って児童の指導 にあたるようになってきた。

(/Jヽ

)

。多 くの教師の日で子ども一人一人を見届けることができるので、より適切な支援や評価ができる。子 どもた ちは安心 して教室の中で自分の考えをもち発表 し、認め合い高め合 うことがで きた。 (小 )

・ 英語、数学、理科 3教 科 とりわけ英数 については、少人数指導をはじめとする指導方法の工夫によって学力 向上に結 びついた実績を数値上で もとらえることがで き、教員の持ち時数に限度があるが、できるだけ複数 の教員で指導にあたることの意義を教員が知 り、共通認識 した。 (中 )

く システムヘ の懐 疑及 び不備 >

・ あまり取 り組んでいない。少人数になればいいという問題ではないと強 く感 じていた。前任校で行 ったとき、

クラスを解体することで子ども同士の関係が希薄 となり、教師と子どもの関係 も表面的な教科になって しまっ ていた。やはり学校は塾 と違 う面がそこにはあると思 う。色々な子の意見を聞 き考えあうことで考えを深め 合 うばか りでな く、人 としての生 きる力 も育てていると考える。本校では、話 し合いではな く、 ドリル的な

ことをやるときに少人数指導を行 った。 (4ヽ )

・ 2ク ラスでなおかつ 1ク ラス 40人 に近い児童数では、 2C3Tで の指導体制は、 1ク ラスの人数がとて も多 くな りやす く、少人数指導 とはな らず、個に応 じた指導の難 しさを強 く感 じた。 (4、)

・ 英語で少人数指導 に取 り組んだが、次の年度か ら英語教師が削減 され、少人数指導ができなか った。せ っか くの取 り組みが生かされな く残念だ。 (中 )

・ 少人数指導を継続できている教科では、指導方法や体制の工夫は続いている。教科担任の減等により、学級 単位の授業 しかで きないものでは、対応が困難なのが現状である。 (中 )

※関係す る主な意見を抜粋 したものである。 (小 )は 小学校を示 し、 (中 )は 中学校の回答者を示 してい

る。

(11)

(3)児 童生徒の学力の評価を生か した指導の改善

現行の学習指導要領の趣 旨を受 け、評価に関 しては、相対評価か ら目標準拠評価 (絶 対評価 )へ と転 換 し、指導 と評価の一体化が唱え られている。 日標準拠評価 とは、最初 に目標を設定 し、授業によって 成 された到達状況を見取 ってい く評価である。そのため、国立政策研究所によって参考資料 として作成 された評価規準 1市 町教育委員会や学校独 自で作成 した評価規準を単元等に活用 しているのが現状であ る。児童生徒の学力の評価を生か した指導の改善についてどのような影響や成果があったかの設間に対 する回答を分析 した結果、 「単元評価の推進 と自己評価の活用」 「評価の客観性確保」の 2つ の共通性の 高い内容を見いだす ことができた (表 4参 照 )。

第 1点 目の「単元評価の推進 と自己評価の活用」についてである。毎時間の授業評価 に留 まらずに単 元全体を通 して継続的に児童生徒の学習状況の把握を行い、次の単元や授業 に生か してい くという記述 が多 く見 られ、単元を括 りとす る単元評価の浸透を窺 うことがで きる点である。 これは、単元でどのよ うな力をつけてい くのかを明確 に し、それをどのように評価 してい くのかの検討が事前になされ、従来 のテス トを中心 とする診断的な評価方法か ら単元を通 して継続的に捉えようとしているものである。 ま た、 自己評価カー ドの活用 に関す る記述 も多 く見 られた。 これは、児童生徒の学習の達成状況やつまず きなどの学習状況を把握することに活用 してい くことや、教師自身の授業評価のための判断材料を得 る ためのことが考え られ、教師の一方向的な授業にす ることな く、常に評価情報をフィー ドバ ックして蓄 積 していこうとする評価観が根付いてきていることを示 しているものとして捉えることができる。

第 2点 目の「評価の客観性確保」 についてである。現在、文部科学省が示 している評価の観点 は、

「 関心・ 意欲 0態度」 「思考力 (創 意工夫 )」 「表現・ 処理 (技 能 )」 「知識」 (国 語だけ 5観 点 )の 4点 で ある。「関心・ 意欲・ 態度」「思考力 (創 意工夫 )」 などの学力 は見えに くい ものであり、実際の場面 に おいて機能的に働 く高次の学力であるだけに、評価 もば らつ きがでやすい傾向にあるのが普通である。

こうした観点を主観か らどのようにして客観性を高めてい くかは、教師一人一人の重要な課題である。

「指導の成果があったかを、数値などでで きるだけ具体的に評価できるよ うに、評価の場面 と方法につ いて深 く研修するようになった。」「学年内で相談を して、付けたい力 と評価がつなが ってい くように し た。評価をす ることでまた次の指導 につなげてい くように心がけた。」等か らの記述か らは、 こうした 課題へ向けて、評価研修を実施 したり、教員がペアを組んだ りす ることにより、児童の学習状況を客観 的に把握することへの意識が高まっていることを窺 うことができる。評価方法に関する実証的な研究 は、

は じまったばか りであるが、そのような力量を形成 してい くためには、具体的な研修を通 して教師同士 で共通理解を図 ってい くことが一番の近道であることを記述 は示 している。 また、学力の測定 に関 して、

通過率の数値的な基準を設 けることで学力の達成状況を確認す るといった記述 もあり、先駆的な研究や

実践 も見 られた。いずれにおいて も、知識 Q技能をはじめ思考力 といった高次の学力 までを包括的に捉

えた上で、学力の測定をいかに客観性の高いものに近づけていけるかは、各学校に課せ られ大 きな課題

である。また、学方向上 フロンティアスクール校が取 り組んだ先導的な研究方法や成果 は、指定が終え

た後 も少人数指導の効果的・ 効率的な運営をはじめとして、評価研究、教師一人一人の授業実践や組織

的な共同体制 による取組 までに及んで、各指定校において確実に成果 として根付いているといることを

確認することができた。

(12)

表 4  児童生徒の学力の評価を生か した指導の改善について (自 由記述 )

<単 元評価の推進 と自己評価の活用 >

・ 単元を通 して意欲的に取 り組んだ児童が多か った場合は、 どんな教材 との出会いが良か ったのか、意欲が高 ま らなか った場合には何が悪か ったのかをみんなでその要因をさぐり次の単元に生か した。 (小 )

・ レディネステス ト、毎時間の内容定着チェックリス ト、単元終末のまとめのテス トなど、単元の各段階で、

まめに定着度、 さらに意欲の自己評価を組み入れた。その結果を次時の全体指導や個別指導に生かすように している。 (小 )

0年 間の中のい くつかの単元 については (学 期 41回 程度 )毎 時間 ごと本時の目標に対す る児童の表れをチェッ クす るように した。 この表れをもとに次時の学習活動を考えるようにした。 (小 )

・ 評価を最終ではな く、単元の区切 り区切 りに行 うことで全体への投 げかけや教材 (ワ ークシー トも含めて )

につまずきを乗 り越え られる手立てを組み入れることを意識的に取 り入れた。個々への対応 も個のつまずき に見合 った助言ができると実感 した。 (中 )

・ 自己評価カー ドで生徒の実態、つまずきなどを把握するように努めてきた。その結果、個々の生徒の疑間に 答え、今後の学習のア ドバイスができるよ うになった。その意味で教師全員が自己評価 カー ドを作成 し、工 夫 し、実践 したことが 1番 大 きな成果だと思われる。 (中 )

<評 価 の客観性 確保 >

・ 指導の成果があったかを、数値などでできるだけ具体的に評価できるように、評価の場面 と方法について深 く研修するようになった。 (小 )

・ それぞれのコースの子 どもたちがどこまで到達 してお り、何が足 りないのかを見極めることにより指導の方 法が決まって くる。私たちは AB、 CD、 EFと 2つ のチームの教師が相談を しなが らよりよい指導のあり 方を考え実践 している。 (小 )

・ 数値 として見 ることのできる学力 と目には見えないが考え方や見方感 じ方の変容 について も授業中の表情や 友達 との関わ り方などを感 じてい くように心がけ、情報交換をする中で、教師側の価値観 も見つめてい くよ

うな場を大切に している。それが授業観、指導観の広が りや深 さになっている。 (小 )

・ 定期 テス トにおいて、通過率を設定 し、毎回の定期テス トの通過率 (テ ス トの難 しさ )を 同程度 とす ること で、教師が生徒の到達度の向上を確認できるように した。また、生徒にも通過率について説明するとともに、

観点 と通過率が分かるテス ト分析表を作 り、 自身の苦手の観点や学力の向上を確認で ききるように した。

(中 )

※関係す る主な意見を抜粋 した ものである。

C/Jヽ

)は 小学校を示 し、 (中 )は 中学校の回答者を示 してい

る。

(13)

4.  おわ りに

本稿では、学力向上 フロンティアスクール指定校への質問紙調査か ら、研究の柱である 3項 目を中心 に、現在 における影響 と成果 について分析 と検討を行 った。その結果、「発展的な学習や補充的な学習 など個に応 じた指導のための教材の開発」においては、①蓄積 された資料の活用 と発展、②個の実態把 握 と教材・ 教具の工夫、③授業実践の深 まりと授業観の変容の 3点 について、「少人数指導をは じめと す る個に応 じた指導のための指導方法・ 指導体制の工夫改善」においては、①編成 コースの開発及 び工 夫改善、② システムの効果的運用、③学年協業及び教科担任による協働体制、④ システムヘの懐疑及 び 不備の 4点 について、「児童生徒の学力の評価を生か した指導の改善」 においては、①単元評価の推進 と自己評価の活用、②評価の客観性確保の 2点 について、その成果 と影響について見いだす ことがで き た。

いずれにおいて も、先導的で実証的でであった成果 は、指定終了後の授業改善をは じめとする教師の 意識、授業観や評価観をはじめとする価値観 に大 きな変容をもた らしていること、学校文化をはじめと

・ する制度的な側面や教師文化にも大 きな影響を与えていることを確認することができた。

今後の課題 として、 この研究指定か ら教師自身が具体的にどのような影響や成果を受 けているのか、

また、地域や保護者がどう捉えているのかを本稿で明 らかにしたことと併せて総合的に検討・ 考察を行 いたい。 さらに回答を頂 いた学校へ赴 き、直接教師ヘインタビュー調査をするなどを通 して、併せて質 的な調査を行 っていきたいと考えている。

なお、校務多忙の折、記述による質問紙調査を快 く引き受けて頂 き、貴重な情報を提供 して下 さった 静岡県内の小中学校の先生の皆様にこの場を借 りて御礼を申 し上 げます。

(1)齋 藤貴男 (2005)「 語 っているのはだれか語 られていない ことは何か」久冨善之・ 田中孝彦編

『希望をつむ ぐ学力』明石書店 ,p.54

(2)確 かな学力の向上のための 2002ア ピール   「学 びのすすめ」 は、学力低下論争中の 2002年 1 月に文部科学省か ら緊急 に出された声明であり、新学習指導要領の趣 旨を含め、 「 きめ細かな指導 で、基礎・ 基本や自ら学び自ら考える力を身に付 ける」 「 発展的な学習で、一人一人の個性等 に応

じて子 どもの力をより伸ばす」等の 5つ の提言がなされている。

http://wwwomext.goojp/b̲」 lenu/hOudOu/14/01/020107.htm

(3)文 部科学省では、平成 15年 度か ら、 「学力向上アクションプラン」 として確かな学力向上を図る ため、学力向上フロンティア事業、学力向上フロンティアハイスクール事業、放課後学習チューター 事業等と様々な事業を展開 している。学力向上 フロンティア事業は、平成 15年 か ら 17年 に実施され

た事業であり、その中核を成 した事業である。

http://www.mext.go.ip/響 enu/ShOtOu/aCtiOnplan/ShidOu/frontia/pdf/jigTou01.pdf

(4)静 岡県教育委員会では、完全学校週 5日 制 と新学習指導要領の実施に伴い巻 き起 こった子 どもの 学力をめ ぐる論議か ら、地方発の「確かな学力」育成会議を立ち上 げ、静岡県の子供たちに「確か な学力」を育むための方策等について審議を委嘱 した。平成 15年 5月 14日 、第 1回 の審議を皮切 り に年度内 5回 の審議 を経て「静岡の子 どもに『確かな学力』を」の提言 としてまとめ られている。

http://wwwopref.shizuoka.ip/kyOuiku/kk‑02/tashika/index.htm

(14)

(5)中 央教育審議会は、 「初等中等教育 における当面の教育課程及び指導の充実・ 改善方策について」

の答申において、①学習指導要領の「基準性」の一層の明確化、②必要な学習指導時間の確保、③

「総合的な学習の時間」の一層の充実、④「個に応 じた指導」の一層の充実、⑤全国的かつ総合的 な学力調査の今後の在 り方やその結果の活用について述べている。①において「 はどめ規定」につ いて触れ、「児童生徒の実態等を踏まえて個性を生かす教育を行 う場合は、 この規定にかかわ らず 学習指導要領 に示されていない内容を指導することも可能なものである」 と記 している。

(6)カ リキュラム管理に関 しては、教育課程編成の弾力的な運用や学校の裁量権の拡大に伴いカ リキュ ラムの開発、実践、評価、保存、改良等を学校組織 として取 り組んでいくむカ リキュラムマネジメ ントの必要性が叫ばれている。中留武昭は、カ リキュラム・ マネジメントを「教育課程行政の裁量 拡大を前提に、各学校が教育 目標の具現化のために、内容、方法 とそれぞれの支える条件整備 との 対応関係を確保 しなが ら、ポジティブな学校文化を媒体 として、 カ リキュラムを作 り、動か し、 こ れを変えてい く動態的な営みである」 と定義 している。 (「 カ リキュラム・ マネジメントによる学校 改善」 『確かな学力を育てるカ リキュラム・ マネジメント』教育開発研究所,2005)

(7)文 部科学省 は、平成 16年 度より義務教育費国庫負担金の算定方法 として総額裁量性を導入 し、総 額の枠内で増員分の教員給与費 も国庫負担の対象 としたことか ら、 これまで目的を限定 していた加 配教員を少人数学級の担任に振 り向けられるようにす るなど、地方の裁量 と自由度を高めている。

(8)岸 田幸雄 (2005)「 習熟度 クラス編成 の現場でお こっていること」 『 教育』 5月 号 ,国 土社

,

pp.44‑51

(9)小 寺隆幸「子 どもたちの学び合いを断ち切 り学力格差を拡大する危険性」梅原利夫・ 小寺隆幸編 (2005)『 習熟度別授業で学力は育つか』明石書店,pp.100‑139

(10)柏 村みね子「 クラス解体でコミニュケーションは実現するのか」梅原利夫・ 小寺隆幸編 (2005)

『 習熟度別授業で学力は育つか』明石書店,pp.74‑96

参考文献

(1)岩 川直樹・ 汐見稔幸 (2001)『 学力を問 う』草土文化

(2)梅 原利夫・ 小寺隆幸編 (2005)『 習熟度別授業で学力 は育つか』明石書店

(3)梅 原利夫「 フロンティアゆえの学力 と学習指導の苦悩」 『教育』 5月 号 ,国 土社,pp.52‑59

(4)静 岡県教育委員会 (2004)『 静岡の子 どもに「確かな学力」を   一「確かな学力」育成会議提言 より』

(5)佐 藤学 (2001)『 学力を問い直す』岩波書店

(6)佐 藤学 (2004)『 習熟度別指導の何が問題なのか』岩波書店

(7)志 水宏吉 (2005)『 学力を育てる』岩波書店

(8)員 鍋 じゅん こ (2005)「 学力向上 フロンティアスクール指定校 に聞 く『成果 と課題』」 『総合教育技

術』 3月 号 ,小 学館 ,pp.21‑26

参照

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