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運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍の関係に与え る影響

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(1)

運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍の関係に与え る影響

著者 竹ノ谷 文子, 山本 憲志, 竹内 正雄

雑誌名 星薬科大学一般教育論集

号 20

ページ 29‑43

発行年 2002

URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000221/

(2)

29

運動経験が主観的跳躍高と客観的   跳躍高の関係に与える影響

竹ノ谷文子(星薬科大学)

山本憲志(日本赤+字北海道看護大学)

竹内正雄(星薬科大学)

The effect of the motion experience on the

  relationship between objective jump       quantity and subjective

         jump quantity

TAKENOYA FUMIKO (H・shi university)

YAMAMOTO NORIYUKI(∫apanese Red cr・ss Hokkaido

       College of Nursing)

TAKEUCHI MASAO  (H・shi university)

【はじめに】

 スポーツ競技の場面において,瞬時的力発揮の大小が勝敗を決定する競技以 外は,全力での力発揮を要する場面は少ない。むしろその状況に応じた力の配 分が要求されることが多い1−6)。このように力の配分が優れている者は調整能力 が優れているとされる。スポーツ競技を行う上で調整能力が優れている選手は スキルも高いとの報告があり7−9),「余分な力が抜けている」「力んでいない」な どの言葉で表現される。また一般人においても調整能力が高いことは,日常生 活でも効率の良い動作が期待できる。このような調整能力を探るための研究は 古くならおこなわれており,客観的力発揮と主観的力発揮の関係を調べている ものが多い。力発揮を段階分けする用語はグレーディングと呼ばれ,主観的強

(3)

30

度の尺度により,客観的強度を計るとこであるといわれている3・10}。

 われわれは前回の報告で一般人にさまざまなグレーディングの跳躍動作を行 わせ,跳躍順序のパターンの違いにおける客観的跳躍(教示した跳躍高)と主 観的跳躍(実際に跳んだ跳躍高)の差を調べた11}。その結果,教示した目標設定 値よりも,実際の跳躍は高くなり跳び過ぎの傾向がみられた。また目標設定値 が低くなるに従いその誤差も増大した。また等間隔にグレーディングされた跳 躍よりも,跳躍順序を無作為に設定した場合の誤差が大きかった。さらに試行 順の早い跳躍の方が調整力が高いことから,1試行前の跳躍がフィードバック

され,次ぎの試行の基準となっているのではないかということが示唆された。

そこで今回われわれは,フィードバックがグレーディング能力に大きく影響し ているという前回の報告の結果11)から,運動選手は普段から様々な様式の運動 動作を繰り返し行っているため,グレーディング能力は優れているのではない かと考え,運動選手と一般人の跳躍におけるグレーディング能力を比較し検討

してみた。

【方   法】

1.被検者

 被験者は平均年齢19.1±0.8歳の健康な女子学生55名である。身体的特徴 は表1の通りである

表1.被検者の特性

N    Age   Height  weight  %fat   LBM

    (yrs.)   (cm)   (kg)    (%)    (kg)

AVG    55     19.1    158.1    49.4    2L3    38.8 SD      O.8     5.2     4.4     3.7     3.1

2.測定方法

 1)跳躍運動(垂直とび)

 測定動作の様式は跳躍運動で垂直とびとした。使用した測定器具は,ジャン

(4)

       運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍高の関係に与える影響  31 プMD(竹井社製)である。この器具は,跳躍した測定値が腰にっけたデジタル 計に表示されるため,被験者には跳躍直後の測定値が分からないようになって いる。測定は指導者の指示の下に行われ,実験先立ち被験者には各跳躍ごとに 集中して跳躍するように指示をした。測定は2人1組で行わせた。まず指導者 が目標設定値を教示した後,被験者は自分の感覚を頼りに,指示された目標設 定値を目指して跳躍を行った。跳んだ値が被験者に分からないように,一方の 者は跳躍後デジタル計に表示される値を素早く読み取り,直ちに測定用紙に記 入した。被験者には客観的力発揮として,5段階の目標設定強度で跳躍順序の

異なる6種類の測定を行った。第1測定から第3測定は1試行毎につき1分

間の休息をおいた。1回の測定で何度も跳躍させることによる学習効果をさけ

るため,第4測定から第6測定は後日(1週間後)に行った。図1に測定のプ

ロトコールを示した。その詳細は次の通りである。

 第1測定:客観的指標である目標設定値を,自分の最大跳躍能力の80%の 力で跳躍するよう指示し,次いで60%,50%,40%,20%の順で跳躍させた。

第1測定 降順設定      第2測定 昇順設定         第3測定 無作為設定  1008

 80

2

ロ  ゆ

量⑩

蟹 20 曜  0

ハ  ユ  くコ お

§

← 60

董⑳

む ぷ

  1  2  3  4  5         1  2  3  4  5      1  2  3  4  5   践 絃 試 試  拭        拭 試 試 試  試         賦 賦 拭 試  賦

  行行行行行   行行行行行    行行行行斤

第4嵩定 最大跳口後降順設定      第5閲定 最大跳■後昇顧設定    第6測定 最大眺躍後無作為設定

大賦試拭杖蹟  大鼠試試試猷  大試蹴試試試 坑 行行行行行  艮 行行行行行  眺 行行行行行

口       ■      ■

    図1.第1測定から第6測定のプロトコール

(5)

 32

(これらの跳び方を以下,「降順設定」とする)

 第2測定:第1測定とは逆に自分の最大跳躍能の20%の力で跳躍するよう

に指示し,次いで40%,50%,60%,80%の順で跳躍させた(以下,「昇順設 定」とする)。

 第3測定:目標設定値は無作為とし,最大跳躍能力の40%の力で跳躍する ように指示し,っいで80%,50%,20%,60%の順で跳躍させた(以下,「無 作為設定」とする)。

 第4測定:まず始めに被験者に最大跳躍を行わせたのち,客観的指標である 目標設定値を,自分の最大跳躍能力の80%の力で跳躍するよう指示し,次い で60%,50%,40%,20%の順で跳躍させた。(以下,「最大跳躍後降順設定」

とする)

 第5測定:被験者に最大跳躍を行わせたのち,第1測定とは逆に自分の最大 跳躍能の20%の力で跳躍するように指示し,次いで40%,50%,60%,80%

の順で跳躍させた(以下,「最大跳躍後昇順設定」とする)。

 第6測定:被験者に最大跳躍を行わせたのち,目標設定値は無作為とし,最 大跳躍能力の40%の力で跳躍するように指示し,ついで80%,50%,20%,

60%の順で跳躍させた(以下,「最大跳躍後無作為設定」とする)。

 2)アンケート調査

 測定終了後に被験者全員に運動に関するアンケート調査を行った。アンケー トの内容は以下の通りである。

 (現在の運動の有無,運動実施種目,運動の頻度,運動の経験年数)

【結   果】

 1.運動群と非運動群の形態的特徴

 本実験に参加した学生55名の内,運動部に所属する者(以下;運動群)は 35名(63.6%),運動部に所属しない者(以下:非運動群)は20名(36.4%)で あった。表2は運動群と非運動群の形態特性を示したものである。身長,体重,

BMIおよびLBMに有意な差は見られず,%Fatにおいてのみ有意な差(p<

(6)

運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍高の関係に与える影響  33    表2.運動群と非運動群の形態特性

N   Age   Height  Weight  %fat  LBM

   (yars.)   (cm)   (kg)   (%)   (kg)

運動群  35 19.1(0.8) 158.7(4.8)49.2(4.4)20.4(3.7)39.0(2.8)

非運動群   20  19.1(0.9) 157.0(5.9) 49B(4.5) 22.7(3.1) 38.5(33)

有意差       *

(S.D.)

0.05)が認められた。

 1.絶対値からみた運動群と非運動群の段階的跳躍能力

 図2は第1測定から第3測定(最大跳躍なし)までの,運動群と非運動群の

跳躍順序別の目標設定値(客観的跳躍)に対しての実際の跳躍高(主観的跳躍)

の絶対値の平均を示したものである。「降順設定」においては運動群と非運動群 とも,目標設定値50〜60%間をのぞいては,すべての目標設定間で有意差(p

<0.01)が認められた。また「昇順設定」においても目標設定値50〜60%間を のぞいてすべての目標設定間で有意(p<0.01)な差が認められた。このことか

ら両群とも「降順設定」,「昇順設定」で段階的な跳躍が行われていたことがわ かる。一方,「無作為設定」においては,跳躍順序を並び変えて各間を検定して みると運動群においては目標設定間の40〜50%間を除き,各間で有意な差が 見られたが,非運動群においては40〜50%間,50〜60%間において有意な差 が認められなかった。このことから「無作為設定」においては,運動群の方が 非運動群より,グレーディング能力が優れているのではないかと推測された。

2.運動群および非運動群の目標設定値における最大跳躍高に対する割合

 図3は第1測定から第3測定(最大跳躍なし)までの,運動群と非運動群の

跳躍順序別における目標設定値に対する実際の跳躍高を,最大跳躍高に対する 割合で示したものである。図中の横線は目標設定値のラインである。両群とも すべての目標設定において,跳び過ぎの傾向にあった。設定別にっいてみると,

「降順設定」,「昇順設定」は「昇順設定」の60%をのぞく,すべての目標設定 において,運動群よりも非運動群の方が跳びすぎる傾向にあった。また高値設 定よりも低値設定の方が誤差が大きかった。「無作為設定」についても運動群よ

(7)

34

降順設定

50

  40 E≡

  30

噺 20 10

0

80%60%50%40%20%    80%60%50%40%20%

    目標設定       目標設定

   運 動 群         非運動群 昇順設定

50

40 E≡

) 30

包20

10

0 20%40%50%60%80%   20%40%50%60%80%

    目標設定       目標設定

   運 動 群        非運動群 無作為設定

50

ω 330

姐 20

10

0

   一⇔一一「     一゜■

rNSr一 「  「−NSr「→lSr

40% 80僑  50%  20% 60%       40領5 80%  50% 20% 60%

    目標設定      目標設定

   運 動 群         非運動群

図2.運動群と非運動群の目標設定値における跳躍の平均値

(8)

運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍高の関係に与える影響  35       ■運動群

願髄   囲非鋤群 三標讐一.

 120 くロ 100

ト  80

2

訳  60

8

e 40

→く 20

  0  80%→  60% → 50% →  40% 一一ナレ 20%

      目標設定        ■運動群

       目標設定値 昇頗「設定       珍]非運動群

 120

緬loo

ト  80

×  6①

8

s  40

×  20

  0     20%→  40% 

→ 

50% →  609b −一一> 80%

       目標設定        ■運動群

    無作為設定      珍非運動群   目標設定値  120

<ロ 100

{ひ  80

訳  60

8

e  40

十く 20

  0     40%→ 80% 一一ヨー 50%一一うレ  20gら→ 60%

      目標設定

図3.運動群および非運動群の目標設定に対する跳躍の割合

... .,, ■■..・.も ....

3. 65.9

.2

層,,

7.0 L1

.7,

9.

  .,.

.6 51 5。

(9)

 36

りも非運動群の方が目標設定値よりも跳び過ぎの傾向にあり,特に非運動部で は,「降順設定」,「昇順設定」よりも低値設定での誤差がより大きくなった。

3.目標設定値と跳躍高との一致の割合

 図4は第1測定から第3測定まで(試行前に最大跳躍なし)と第4試行から

第6試行まで(試行前に最大飛躍あり)の運動群と非運動群の跳躍順序別の目 標設定値と跳躍高との一致の割合の平均値を示したものである。100%のライ ンが一致を示す。各跳躍順序とも80%では100%に近いラインに位置してい るが,目標設定値が低くなるに従い誤差の割合も増加している。目標設定60%

までは130%前後であったが,目標設定40%になると誤差が大きくなり 150%までになる。さらに目標設定20%になると200%前後までになり,目

標設定高の2倍近くを跳び過ぎていることになる。さらにすべての跳躍順序の 標準偏差をみてみると,高値設定よりも低値設定特に20%の標準偏差値が大

きい傾向にあり,個人差が大きい事が分かる。

 次に運動群と非運動群の試行前に最大跳躍ありと最大跳躍なしとで,目標設 定値と主観的跳躍の一致の差を見てみる。「降順設定」において,運動群では最 大跳躍なしの目標設定80%のみをのぞいて他の目標設定値では最大跳躍あり の方が一致ラインに近く,60%および40%では有意(P<0.01)な差が見られ た。一方非運動群では目標設定80%,60%および20%では最大跳躍なしの方 が一致ラインに近い値を示した。

 「昇順設定」では両群ともに最大跳躍ありの方が一致ラインに近く,特に運動 群では目標設定50,60,80%で有意な差がみられ,非運動群においても目標 設定50,80%で有意な差が見られた。さらに「無作為設定」においては,運動 群では最大跳躍ありとなしでは目標設定値と主観的跳躍の一致の値に大きな差 はみられなかった。非運動群では最大跳躍ありとなしで目標設定20%におい て有意(P<0.01)な差がみられた他は,ほとんど変わりない値であった。

4.運動経験年数と5試行の誤差の合計との相関関係

 図5は運運動経験年数と各測定の5試行の誤差合計値との相関関係をみた

のである。左側の図が最大跳躍なしでの各目標設定順序別,右側の図が最大跳 躍ありの各目標設定順序別である。

(10)

運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍高の関係に与える影響  37

㎏ 300

雫250

豊20①

§

き150

薔100

§

 50

障眉設定

    醐‡i麟蹴非運雌‡厭識㍑

    ■◎

,「「「..−−、..「.

,,

●● ,■「「「−..、., ,r「,9, 「,「

80%垣一一60%一●レ』50%一■レ 40%一レ20%

目標設定

c雨300 ヤ250

§

誉200

§

昌150

§

懸100

8

 50 昇順設定

運動群‡i量i濃鮒類雌‡厭鵠甥

20%一一一 40%一一  50%−4臼一60% → 80%

      目標設定 無作為設定

    醐‡綴鵠鍋婿妹‡厭器詔

 3①0 餅2501

e

§蕗200

9150

叢100

§

巳 50

■■

40%一の一 80%■弓印> 50%一■−20%一■)』60%

      目標設定

図4.運動群と非運動群の最大跳躍なしと最大跳躍ありの目標設定値と主観的跳躍     との関係

(11)

38

14鯉難一一一一〔ぴ㎜亘三ξ:{「三三〇ユラ∂      i4最フヒ坊店費庫頗設定         ・・y_o.o ◆4ぷ;_0303

12 ε10

磁  8 婿 6 殿  4

2 0

12        硲10        亘8

      .・ .      ㎜ 蘭6

..『『『  …  一 ・… ……   増 4

   ●●   ●●●●一     ●   ●     ●

2

0 2040 60 80ユ001201舶1ω180200  00 2040 60 801001201ω1ω180200

       ●  遠r.

       5試行の誤差合計甚《%)       5試行の誤差合計値(%)

14 12

昇頗設定       最大肪虜径昇順設危

         y・・0.012x+53・・6調き  14       y。一乱017、.5ぷ..0鋼9        12

亘10 … 一 …… ……  垂10

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       ●        ● ●●⇔● ●  ●  ●      ■

2 2

     ● ●    ● ● ●● ●●● ●

四・… り・・・…  ・・・・・・・・・… r… ●吟・… ◆・門 四・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… r… 曽… 四・・^・・・・・・・・・・・・・・・・… .

0       0

0  20  40  60  80  100 120 140 1ω  180 200     0  20  唱}  ぷ}  80  100 120 140 1ω  180 200

      5拭行の誤齢瞳儒)       堪行の領齢醜(%)

14  12

巴10

母 8 壁 6   4

2 0

無作為設定       泰大跳躍後鯖作為設定

^ ^ 、 、 、 』 馳 馳 、° °° 、 、 『 一一° ;二二石:㌫;二三三;6亙i予㍉漸i)       l      y=一帆029x+潟 r=o甜9ぽaA1)

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.........、................、..、.

●●●_  、._.、._..__.____,,_._..._「  賦

0   20  40   60   80  100  1加  140  160  180  200       0   20  40   60   80  100  120  140  160  180  200 5拭行の誤差合計値(%)       5舷行の娯差合計値(%)

障頗+昇順+無作為設定      最大肪虜後 庫頗設定+昇贋設定+無作為縦

 14 層層P7 9 層      14

      y=・OOllx頃.,X r=041(Pd}.《均

 12』 『◆ 9 層』7 『『        12

世10…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…『……・・…一・一・・一・・・・・…一・・・・………一…一・一・一… 爾10 瀬      }

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100        200        300        400        500      100        200        300        400        500          全試行の娯差合計値〔%)      全賦行の韻差合計値(%)

図5.運動経験年数と5試行の誤差合計値との相関関係

(12)

       運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍高の関係に与える影響  39  最大跳躍なしの「降順設定」をのぞいて,すべての跳躍順序において傾斜が 右肩下がりであり,運動経験年数の長い者ほど誤差が少ない傾向がみられ,「無 作為設定」および「最大跳躍後無作為設定」では1%水準で有意な相関関係が みられた。さらに経験年数と全目標設定順序の全試行の誤差合計との相関関係 をみてみると,最大跳躍なしおよび最大跳躍ありとも5%水準で有意な相関関 係がみられた。

 「最大跳躍後降順設定」および「最大跳躍後昇順設定」は,最大跳躍なしの

「降順設定」「昇順設定」よりも相関係数の値が大きいかった。しかし最大跳躍 なしの「無作為設定」においては,「最大跳躍後無作為設定」と相関関係に変り はなかった。

【考   察】

 図2は運動群と非運動群の目標設定値における跳躍の絶対値の平均を示し

た図である。両群とも目標設定値に対しての跳躍高は傾斜が描かれ,運動経験 に関係なく段階的な跳躍が出来ていた。しかしながら,図3のように最大跳躍 に対する割合で見てみると,両群とも目標設定よりも跳び過ぎの傾向にある が,さらに非運動群では顕著であった。さらに両群とも目標設定が高値設定よ

り低値設定になるにつれて誤差が大きくなる傾向が見られた。

 調整能力を左右する感覚の誤差は全身運動と局所運動のような運動様式の違 いが影響し,大きな運動様式よりも小さな運動様式の方が大きな誤差が生じる との報告がある12」3}。今回われわれの測定で行われた運動様式の跳躍運動であ る垂直とびは,全身運動に値するにも関わらず大きな誤差が生じていた。これ は図3のように高値設定よりも低値設定において誤差が大きくなる結果から 考えると,垂直とびは全身運動ではあるが,高値設定のように全力に近い跳躍

を要する場合は,沈みこみの動作が深くなり,大きな運動様式になるが,低値 設定になると沈みこみの動作が浅くなり小さな運動様式になるためと考えられ

る。

 スポーッ選手は垂直とびの値と筋力の大小は深く関係しているとの報告があ

(13)

 40

る14}。しかしながら,一般人において,筋力の大小が力の調整力と関係してい るかは明らかになっていない。感覚に依存する調整能力は体力や筋力よりも

「学習」「経験」「記憶」などの要素が深く関与しているものと推測される。

 定本らlo)は跳躍動作の主観的跳躍と客観的跳躍の正確性を調べるため,垂直 とびと立ち幅とびで比較した。その結果,立ち幅とびの方が主観的跳躍と客観 的跳躍に誤差が少なくかったと報告している。また山本14)は立ち幅とびと握力 で主観的力発揮と客観的力発揮を比較したところ,立ち幅とびの方が段階的に 跳躍され,グレーディング能力が優っていたと報告し,この理由として立ち幅 とびは自分の跳んだ値が目視でき,被験者に視覚的情報のフィードバックの情 報が得られたためと推察している。今回のわれわれの測定では,視覚的フィー バックはなく,感覚的なフィードバックになる。っまり「降順設定」および「昇 順設定」のように前試行の感覚を頼りに次ぎの試行に移れる場合と「無作為設 定」のように前試行の感覚を頼りにできない場合を比較した。その結果,客観 的である目標設定値に対し,主観的である実際の跳躍高は,段階的な目的設定 高に応じ,跳躍されていたが両群とも,各跳躍順序において跳び過ぎの傾向に あった。この傾向は各跳躍順序別とも目標設定値が低くなるにつれ,跳び過ぎ の割合も増加しており,定本10)山本15)の報告と同様であった。このような跳び 過ぎの原因の一として考えられるのは,発揮する力が上手く制御されていない ということが考えられる。その原因として殆どの者が,垂直とびの動作は,ま ず下方向に沈み込み,次に上方向に跳躍する。この沈み込む動作は力を蓄積し 跳躍動作に移る準備段階である。筋力の劣るものはこの蓄積が十分に行われて いないことも考えられる。ジャンプ後のコントロールは不可能に近いことを考 えると,この沈み込みの動作が調節能力と関係しているのではないかと示唆さ れ,沈み込み動作や沈み込み時間と調節能力との関係を探ることは大変興味深 いところである。

 図4は運動群と非運動群で各設定順序の試行前に最大跳躍を跳ばせた場合

と跳ばせないで跳躍したときの誤差を調べたものである。試行前に最大跳躍を 跳ばせると,被験者はこの全力で力発揮された記憶を指標とし,次ぎの教示さ れた目標設定値を跳ぶ事になるわけである。「降順設定」を正しく行うために

(14)

       運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍高の関係に与える影響  41 は,最大跳躍で跳んだ「感覚」を頼りに等間隔に力を減少していけばよいわけ である。このような方法で行なえば,第1試行の80%がずれるとそれ以降も ずれも大きくなる。「降順設定」の結果をみてみると,運動群は80%をのぞい てくすべての目標設定で最大跳躍ありの方がなしよりも誤差が小さく,特に 60,40%では有意に小さくなりフィードバックが生かされていた。一方非運 動群は運動群ほど最大跳躍後の誤差に有意な差はみられなかった。

 「昇順設定」は最大跳躍を行った後の第1試行の跳躍が目標設定20%とな

り,最大跳躍の「記憶」とは逆の小さい跳躍となる。

 両群とも最大跳躍ありの方が最大跳躍なしよりも誤差が少なかった。運動群

は50,60,80%で非運動群は50,80%で誤差が有意に減少していることか

ら,第1試行前に最大跳躍を行なうことは高値設定の跳躍で生かされていたこ とになる。さらに「無作為設定」では非運動群の目標設定20%をのぞいて両群 とも大きな変化はなく,目標設定順序がばらばらで段階的でなくなると,最大 跳躍のフィードバックが生かされないことが分かる。

 運動選手は日頃から様々な運動様式,また様々な強度の運動を繰り返し行っ ており様々な強度の「感覚」が「記憶」されているものと推測される。そのた め長年に渡り運動を行ってきている者ほど調整能力は優れているのではないか と考えられた。そこで運動群を対象に経験年数と5試行の誤差の合計調べたの

が図5である。運動群の経験年数は2年から最長12年である。対象者のほと

んどは運動経験3〜6年の範囲であり,中学または高校から運動をはじめたこ とになる。各設定順序とも運動経験年数と誤差との関係は負の傾斜になり,経 験年数の長い者ほど,客観強度(教示された跳躍高)と主観的強度(実際の跳 躍高)の誤差が少ない事が分かる。また「降順設定」「昇順設定」よりも「無作 為設定」の相関関係数が高くなり,段階的跳躍よりも無作為的跳躍の方が,さ らに調整能力に運動経験が生かされるようである。また「降順設定」「昇順設 定」での最大跳躍なしと最大跳躍ありでは最大跳躍を行った方の相関係数の値 の方が大きく,運動経験の長い者ほど,最大跳躍高の「記憶」をたよりにし,

次ぎの教示される跳躍にフィードバックを有効利用しているものと思われる。

(15)

42

【ま と め】

 運動選手と一般人にさまざまな目標設定値の飛躍順序がことなる垂直とびを 行わせ,教示した目標設定値と実際に跳躍された跳躍高との関係しらべ,両者 の調整能力を比較し検討した。両群とも段階的なグレーディンがされていたが 無作為に目標設定を教示すると,運動群の方がグレーディング能力が優れてい た。また教示した目標設定値と実際の飛躍高との誤差は,両者とも教示された 目標設定値よりも飛びすぎる傾向にあった。また目標設定値が低い程誤差が大 きく,「無作為設定」においての誤差が増加し特に非運動群で顕著であった。さ らに運動群は非運動群よりも段階的な跳躍で,最大跳躍の感覚をフィードバッ クし,調整能力に生かしていたが,無作為設定では最大跳躍による影響はな かった。また運動経験年数の長い者ほど教示と実際の跳躍高に誤差が少なかっ

た。

【参考文献】

1)矢部京之助:力の出し方の科学一動作前silent periodを中心として一,体育学研   究,(1996),40,324−328.

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3)大築立志:たくみ科学,朝倉書店,(1988).

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11)竹ノ谷文子・高橋勝美・山本憲志・竹内正雄:垂直とびにおける跳躍順序が主観   的跳躍高に与える影響,星薬科大学一般教育論集,(2001),19,11−21.

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(16)

運動経験が主観的跳躍高と客観的跳躍高の関係に与える影響  43 13)Weiss, B:Moment error, pressure, Variation and the range effect, J, Exp,

  Psycho,(1955),50,191−196.

14)豊田 博・山口 晃:バレーボール選手の体力に関する研究(1),体育学紀要,東   京大学教養学部体育研究室,(1966),3,57−67.

15)山本憲志:動的および静的運動における力発揮の正確性,日本体育学会第51回大   会号,(2000),351.

参照

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