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介護福祉士養成における介護福祉基礎実習の意義

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介護福祉士養成における介護福祉基礎実習の意義

著者 古市 孝義

雑誌名 人間関係学研究 : 社会学社会心理学人間福祉学 :  大妻女子大学人間関係学部紀要 

巻 21

ページ 31‑37

発行年 2019

URL http://id.nii.ac.jp/1114/00006818/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

古市 孝義

* Takayoshi FURUICHI

<キーワード>

介護実習,介護福祉養成

<要   約>

 介護福祉士養成課程ではカリキュラムの変更と共に求められる介護福祉士像が変化してい る。社会で求められる介護福祉士像は変化しつつある。この変化に対応していくためにも各 養成校では独自の実習や,実習内容の検討が行われている。本学では授業で学んだ知識と実 習における実践の統合化を図るために介護実習の各段階の前に入門実習を取り入れている。

本研究では,その入門実習のために必要な知識や学びについて先行研究を基に整理をするこ とを目的とした。

 調査結果より,・介護実習は実習の事前,事後の取り組みを大切に行うことが実習での学び を深めることにつながることになり,①実習は学生にとっては不安や,学びの多いものであ るがその中でも対人関係に関する悩みはどの段階の実習を通しても悩みとしてはのこるもの である。②早期に実習を行い,繰り返し悩みや学びを深める作業を行うことが実習を学びに 返る方法である。といったことが明らかになった。今後は本研究を基に実際に入門実習へ行っ た学生を対象に入門実習の学びや,悩みなどについて調査をしていくこととする。

*

大妻女子大学 人間関係学部 人間福祉学科

介護福祉士養成における介護福祉基礎実習の意義

(3)

32

大 妻 女 子 大 学

人間関係学部紀要 人間関係学研究

 21 2019

1.はじめに

 2019年度より「平成

30

年度介護福祉士養成課 程における教育課程内容等の見直し」に伴い,介 護福祉士養成に伴う教育内容の見直しが図られて いる。この見直しの観点としては,介護福祉士が リーダーとしてチームをマネジメントしていく能 力が求められ,地域の高齢者福祉の向上を目指す ことが目標とされている(表

1

)。同時に,介護福 祉士として様々な高齢者の状況に合わせて対応す るための介護過程実践力の向上が求められるよう になった。認知症ケアの実践力の向上では,地域 と家族の繋がりや支援を援助することが求められ る。そして,様々な場所での支援に対応するため にも介護と医療の連携を踏まえた実践力の向上が 求められるようになった。今回の改正で目指すべ き「求められる介護福祉士像」として専門職とし

てより高い倫理観と専門性が求められるように なっている(表

2)。今回の改正では教育カリキュ

ラムの変更を主に検討されているが,この改正目 標の到達に際し,養成校介護実習に関して注意し て取り組まなければならないと考える。介護実習

2009

年の介護福祉士養成カリキュラムの変更 に伴って各養成校の実習構成については,教育内 容と時間数,各教育内容に含むべき事項の基本的 枠組み以外は自由裁量が認められ,各養成校の独 自性を出すことができるようになっている。その 様に,各養成校での自由裁量による実習によって 独自性を見出すことができる介護実習では,早期 から開始する実習や,授業との組み合わせが意識 されたもの等様々な方法で取り組みが行われてい る。各養成校の取り組みにおいて何が重視されて いるのであろうか。実習と授業とを効果的に組み 合わせ,学生の学びを深めるためにも効果的な実

表1 介護福祉士養成課程の教育内容見直しの観点

表2 求められる介護福祉士像

①チームマネジメント能力を養うための教育内容の拡充

②対象者の生活を地域で支えるための実践力の向上

③介護過程の実践力の向上

④認知症ケアの実践力の向上

⑤介護と医療の連携を踏まえた実践力の向上

1.尊厳と自立を支えるケアを実践する

2.専門職として自律的に介護過程の展開ができる

3.身体的な支援だけでなく、心理的・社会的支援も展開できる

4.介護ニーズの複雑化・多様化・高度化に対応し、本人や家族等のエンパワメントを重視した支援ができる 5.QOL(生活の質)の維持・向上の視点を持って、介護予防からリハビリテーション、看取りまで、対象者

  の状態の変化に対応できる

6.地域の中で、施設・在宅にかかわらず、本人が望む生活を支えることができる 7.関連領域の基本的なことを理解し、多職種連携によるチームケアを実践する 8.本人や家族、チームに対するコミュニケーションや、的確な記録・記述ができる 9.制度を理解しつつ、地域や社会のニーズに対応できる

10.介護職の中で中核的な役割を担う

高い倫理性の保持

出典:厚生労働省「介護福祉士養成課程における教育内容の見直し」について

出典:厚生労働省「介護福祉士養成課程における教育内容の見直し」について

(4)

習の取り組みが求められる。

 大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科介護福 祉士養成課程(以下本学)では,介護実習をⅠ~

Ⅳ段階に分け,さらに

1

年生後期の

2

月に

5

日間 行う介護実習入門という取り組みを進めている。

本研究の目的は,本校の取り組みとして行われて いる介護実習入門が入門的実習としてどのような 意義を持ち,どのような問題点があるかを明らか にし,今後の実習に取り組む課題として整理する こととした。

2.研究目的

 介護実習における基礎的な実習はどのような効 果があるのかを先行研究を基にレビューを行う。

明らかになった結果を通して,介護実習の前後に 取り扱うべき授業や取り組みに関する示唆を得る こと目的とする。

3.研究方法

 本研究では国内文献を分析対象とし,日本の論 文検索システムとして活用されている国立情報研 究所学術情報ナビゲータ

CiNi

 

Articles

と特定非 営利活動法人医学中央雑誌 医中誌

Web

と文献に よる研究を行った。「介護実習」「効果」「介護実 習の目的」を組み合わせて行った。

4.倫理的配慮

 レビューを中心に介護実習における意義を明ら かにする。本研究では,論文検索システムによっ て収集した論文や資料を基に考察を試みる。引用 や参考においては原文を正確に引用,参考とする ことを心がけた。

5.結果

 介護実習に関する結果を整理し,介護実習に関 しての整理を行った。そこから介護実習に臨む学 生はどのような意識で実習に臨んでいるかをまと め,本学の介護実習入門が持つ特性や学生が介護 を学ぶ初期段階で実習に臨むことの意義について の整理を行っていく。

介護実習に関して

 介護福祉士養成課程における介護実習とは,介 護技術を学ぶと同時に,知識と技術と実践との統 合化を図るために重要な位置づけである1)。つま り,日々の学びを実践の中で具体化していく作業 が求められる。そのためにも学生は,学内での学 びを基本として実習に臨む必要がある。しかし,

実習に臨むためのカリキュラムの中の

10

科目

300

時間の「介護過程」は,実践的ではなくそのフレー ムを紹介するにとどまっている。現在のカリキュ ラムでは,時間数の関係も含め,丁寧な介護過程 の展開の指導が行えていない現状である2)。よっ て,現状では,介護過程の概念を体系的に学び,

その学びを実習を通して立体的に理解することが 難しい現状である。その様な中で,実習を通して 机上での学びを実際に経験した知識へと変え理解 を深めていくことが求められているのである。介 護福祉士の専門性とは自分たちの介護の根拠を説 明し,ケアの質の向上を常に目指すことにある。

そのためにも介護福祉士は,介護過程をしっかり と理解し介護の根拠を説明できることが求められ るのである。この介護福祉士の質の向上を目指す ためにも,学生が自身の行っている介護の目的や 意義,その意味についてもしっかりと説明できる ような学習方法が望まれる。そのためにも,実習 に臨むためにも充分な基礎的学習が求められるの である。

学生にとっての実習に関して

 介護実習は看護実習とは異なり,各養成校が実 習施設と実習施設の指導者と協力のもと施設に学 生を預け,学生の学びを主体的に行わせるといっ たことが中心に行われる。その中で,学生は自分 のこれまでの学びに対する不安や,対人関係に関 する不安を抱きながら実習に臨むのである。

 実習において学生は,各実習段階で異なる不安 を挙げているが,人間関係に関する不安に関して は何度実習を経験しても自信を持ちながら実習を 進めることができないと感じている3,4)。学内での 授業を受けてすぐに実践的な場に臨むというのは

(5)

34

大 妻 女 子 大 学

人間関係学部紀要 人間関係学研究

 21 2019

自分の学び不足に起因する不安以外にも不安感が 増すこととなり,体験的な実習やボランティアを 通して徐々に慣れていくことが大切なのではない かと考えられる。また,ボランティアや初期の実 習や学びを通して人間関係の構築を繰り返し行う ことで,人間関係構築に関しての自信が芽生え実 習という慣れない環境に出た時の学び方や施設職 員,利用者との関わり方に対しての変化が期待で きるものと考えられる。実際に学生と施設職員と の関係形成プロセスには初期段階では「受け止め」

として施設職員の言動を受け入れており,その後

「働きかけ」を通して学生からの働きかけを通し てよりよい関係性構築へと進んでいき,実習を通 して職業的モデルの構築につながっている5)。こ のように学生は実習の初期段階では,実習指導者 の言動を肯定的にとらえたり,否定的にとらえた りしながらも自分の中の関わり方の基準を形成し ていく。また,授業等を実習の事前事後に行うこ とで実習の前後で実習に対する心構えの変化があ ることが明らかになっている。変化項目は,「実 習を行う自信がついた」「実習を楽しかったと思 うようになった」実習後影響を受けて,事前準備 が不十分であったと感じていたり,もっと勉強し ておけばよかったと感じるように変化している6) この結果から,ボランティアや実習といった体験 実習は,自己の体験を肯定化していく面がありそ れが介護やボランティアに対する参加者自身の意 識の変容をもたらすのである。実習に対する事前 の学びが重要であることがわかる。

 介護実習を通して,各年次の実習を通して,「実 習についての感情・思い」「生活支援技術」「介護 に関する価値観」「利用者主体のケア」「実習の態 度」「利用者像」「介護過程」「実習の場」のカテ ゴリ,

3

年次実習後は,「地域における多職種連携」

4

年次「認知症の理解」が追加抽出されたように,

各年次ごとに実習を通して学ぶ内容や,理解を深 める内容に変化が報告されている。介護実習に対 して最も不安が大きい項目が,「介護過程の展開 に関する不安」「知識・技術の不確実さと経験不 足に起因する不安」「介護職員との対人関係に対 する不安」「生活パターンの変化に対する不安」「利

用者とその家族及び教員との対人関係構築に対す る不安」があった。学生は介護過程の展開をはじ めとした知識・技術不足に起因する不安を強く抱 き,対人関係の構築に最も不安を感じている。そ して介護過程の不安は学習度合い,つまり介護過 程をどれだけ学習しているかによって介護過程に 対する不安が挙げられるかが決定している7。そ のため,介護福祉士養成校は,豊かな人間関係形 成や幅広い知識の習得を目指した教育を進めなが らも,学生の心身のケアのために必要な基本的知 識・技術の会得を目指した教育が必要である。実 習を通して学生は自分の実習評価を低く付ける傾 向にあるが,教員は段階を重ねるごとに実習の到 達度合いを高く評価する傾向にある8)。学生自身 が自己の評価を低くする傾向にあっても,教員が 評価に対して丁寧な指導を行っていくことが重要 である。梶田は自己評価を上手に活用するならば,

効力感とか達成感といった肯定的な自己肯定感を 育てていくことができる9)としている。巡回指導 を通して学生の自己効力感の向上を目指した取り 組みが重要であると考えられる。

 そして実際に介護実習に臨んだ学生は,利用者 とコミュニケーションをとるように言われること が多い。学生は戸惑いながらも,何とか利用者と

“会話”をしようと心がける。しかし,うまく“会 話”が続かず,コミュニケーションが取れていな いといった悩みを持つことになる。特に利用者と のコミュニケーションをとることを重要視される 介護実習の初期の段階では,その多くの学びをコ ミュニケーションに求めることがある。介護実習 で学生が実習に満足する理由として「指導者が利 用者としっかりコミュニケーションをとっていて 多く学べた」「指導者の声掛けが上手でコミュニ ケーションについて学べた」とコミュニケーショ ンが実習の満足度につながっている10)。利用者と のコミュニケーションに関して学生は多くの学び や不安を抱えている。実習で学生は介護技術より コミュニケーションの方に学びが多いと感じてい るが,一方,同じ程度の段階の実習での実習と授 業との関連についての研究においては,学生は実 習前に学んでおきたかったこととして,排泄介助

(6)

や口腔ケア,入浴介助といった介護技術が多く,

以下医療的知識,専門用語,コミュニケーション 技術,レクリエーションと続いている。そして,

学んでおきたかったこととして,移乗介助,食事 介助といった技術から認知症について,実習施設 概要について,ベッドメーキング,記録の方法,

ボディメカニクスが挙げられている12。学生は同 じ段階の実習でも,どのような視点で実習に臨む かによってその学びは異なるが,学生にとって介 護技術といった目に見えた技術や実際に体験して 難しいと感じるコミュニケーションに関して学び が多いと感じるのではないだろうかと考えられ る。ここから,実習は実践を通して自分の知識を 抽象から具体へと変えていくことが重要であるこ とが考えられる。

本学実習入門に関して

 本学では

2016

年より介護実習入門といった各 段階の実習前に行う体験実習を取り組むことと なった。本学が実践している介護実習入門は,介 護実習の導入的役割として導入された。介護実習 入門はその目的を「施設入所している利用者とそ の実際を知る」こととしており介護実習Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,

Ⅳに続く実習として

1

年後期の

2

月に

5

日間行う 実習である。実習の目標として

4点挙げており 1.

用者の生活環境(人的・物的)環境を知る

2.

利用 者の一日の生活を知る

3.

利用者との会話を通して 利用者を知る

4.

利用者の日常生活における基本的 動作を観察するが挙げられている(表

3)。この実

習は体験的なことは一切行わず基本的には見学実 習となっている。因みに,本学の介護実習Ⅰは老 人保健施設に

12

日間,介護実習Ⅱでは障害児者 入所施設に

12

日間,介護実習Ⅲで特別養護老人 ホームに

23

日間,介護実習Ⅳで訪問介護,小規

模多機能型居宅介護施設へ

5

日間の実習を実施す ることになっている。それぞれの実習を通して介 護過程の展開を学びⅢ段階実習で介護過程の計 画,実施,評価を行うこととなっている。

 本学では,先にも述べた通り介護実習入門とし て実際に介護過程を学び,自身の学びを実践的に 理解する前段階で見学実習としての入門実習が用 意されている。しかし,実際に介護実習に臨むま でに,介護過程や,介護系の授業がカリキュラム に含まれていない。そのため,実際に介護実習入 門に臨む時点では,高齢者との接し方や,認知症 の理解,各種施設の意義等について十分な理解が あるわけではない。このことによって学生は

2

生に上がる前に,しっかりと学べていない高齢者 の施設に実習に行くことになるのである。この状 況は学生にとって,施設の現状を知ることはでき るが,知識のない中での学びによって得る知識や 技術は少ないのではないかということが考えられ る。早期に実習を行うことで,先行研究で述べら れていた通り,学生は授業やそれまでの学習態度 や,事前準備の必要性に気づく事が出来る。そし て今後はどのように実習に臨むことがよいかと いった見通しを立てることができるのである13) また,早期の実習を行うことと繰り返し人間関係 の構築に取り組むことで対人関係に対しての自身 に繋がっていくことが考えられる。このことから,

実習前後に体系的に学ぶ機会を設けることで介護 実習入門が効果を発揮することが考えられる。実 習には不安や緊張が付きまとうため,よい実習と して,良い学びとするためには授業と実習との関 連性を含め綿密な計画や準備が必要である。そう いった意味で,早期に実習を体験することができ る介護実習入門は意義のある実習であることがい える。

表3 本学における介護実習入門の展開

目的 施設種別 実習日数 実習目標

施設入所している利用者と

その生活の実際を知る 特別養護老人ホーム

5

日間

1.

利用者の生活環境(人的・物的)環境を知る

2.

利用者の一日の生活を知る

3.

利用者との会話を通して利用者を知る

4.

利用者の日常生活における基本的動作を観察する 大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科「介護実習の手引き」より抜粋

(7)

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大 妻 女 子 大 学

人間関係学部紀要 人間関係学研究

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まとめと本研究の課題

 介護実習を通して,学内での学びを実際の現場 で実際の現場の職員や利用者とのやり取り等を通 して知識と経験を結び付けることができるのであ る。今回は介護実習入門という各段階の早期に行 う実習に関する取り組みを体系的に学ぶためには どのような取り組みが求められるかについて検討 を行った。

・介護実習は実習の事前,事後の取り組みを大切 に行うことが実習での学びを深めることにつな がることになる。

・実習は学生にとっては不安や,学びの多いもの であるがその中でも対人関係に関する悩みはど の段階の実習を通しても悩みとしてはのこるも のである。

・早期に実習を行い,繰り返し悩みや学びを深め る作業を行うことが実習を学びに返る方法であ る。

 本研究においては,実習についての先行研究の 概観に留まっている。今後は本研究を基に実際に 介護実習入門に行った学生への調査を行い介護実 習入門の学びや課題についての調査を行うことと する。

引用・参考文献

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参照

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