墨流しパターンのマルチフラクタル性とその時間依存性
Multifractality and Time dependence of Pattern formation of “ suminagashi ”
物理学専攻 小倉祥吾 Dept.Physics Shogo Ogura
研究目的
墨流しの技法は平安時代より日本に伝わる模様作りの技法である。その模様は国宝でもある西本願寺本三 十六人家集(三十六歌仙の歌を集めた平安時代末期の装飾写本) の料紙としても用いられていたり【1】 、現在 では伝統工芸に認定されていたり、古くからその美しさを認められてきた模様であると考えられる。
図
1 墨流しを施した越前和紙(松下研究室所有物)時代を問わずに日本人を引き寄せてきた墨流しのパターンであるが、その魅力は一体どこから来るものだ ろうか。 その複雑に入り組んだ変幻自在な線状パターンだけを取り出すと自己相似のようにも見えるかもし れない。しかし、それに付随した白から黒への微妙な濃淡の変化が墨流しのパターンにおける最もな特徴で あると考えられる。
本研究では濃淡のある対象を特徴付けるのに対して有効なマルチフラクタル解析を用いて、 墨流しのパタ
ーンの特徴づけを目的とする。
実験
1墨流しのパターンを生成する上で必要な混合の過程において、偏心ニ円筒によるカオス混合【2】を参考 にした装置を用いたのが実験
1である。
図
2 実験1の模式図
この系によって得られる画像を元にマルチフラクタル解析を行い、その
𝒻(α)スペクトルに注目してみる。
図
3 得られるパターンとその𝒻(α)スペクトル(線部は計測したライン)
一般に𝒻
(α)スペクトルは上に凸な曲線になる【
3】。この上に凸な曲線を二次関数
𝓎 = 𝒶𝓍2+ 𝒷𝓍 + 𝒸 𝒶, 𝒷, 𝒸はフィッティングパラメータと考え、二次の係数𝒶についてその時間依存性を見てみたものが次の図
3である。
カメラ
70mm
300mm
撮影している範囲
260mm 133mm
図
4 二次の係数𝒶の時間依存性図
4を見ると、混合の過程において二次の係数𝒶が変わらない時間が存在することがわかる。
実験
2以下、図
5のような二心円筒による混合を用いた系で、実験
1同様の解析を行ったところ、実験
1と似 たような係数
𝒶の変わらない時間帯が見られた。図
5 実験2の模式図、実験
2での二次の係数
𝒶の時間依存性70mm
300mm
撮影している範囲
260mm
133mm
・二心円筒による混合
○改善された点
・波によるノイズの減少
・照明の改善
・内円筒の回転の安定化
また、𝒻
(α)スペクトルについて歪度
𝒮𝓀 = (𝓍𝒾 𝒾− 𝓍 )3 𝒩σ3