• 検索結果がありません。

潜在ニーズ発見のための行動観察に関する研究-行動要素の提案-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "潜在ニーズ発見のための行動観察に関する研究-行動要素の提案-"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

潜在ニーズ発見のための行動観察に関する研究-行動要素の提案-

-Study on Behavior Observation for Finding Latent Needs―A Proposal of Behavior Elements―

中央大学理工学研究科 経営システム工学専攻 小村淳一郎 1.序論

製品を売り出す際に消費者のニーズを把握してい ないと売り上げが伸びなかったり、不満の原因にな ったりする。ニーズに関する情報を集める手法とし てはアンケートやインタビューなどがあるが、消費 者自身が気づいていない潜在的なニーズを把握する ためには行動観察が有効である。しかし、行動観察 では得られる情報が多く、潜在ニーズに関わる情報 の取捨選択が難しいという問題点がある。

この問題点に対して、関谷ら[1]、清水ら[2]は行 動観察を行う前に予め観察する行動を絞ることを提 案した。まずアンケート調査や、グループインタビ ューを用いて要求品質展開表を作成し、それぞれの 要求品質に関連する行動を列挙する。その上で、列 挙した行動と要求品質のマトリックスを作成して、

両者の関連を整理し、得られたマトリックスを元に 観測する行動を選定する。この方法は、具体的なニ ーズを数多く得る上で有効である。しかし、調査す る製品ごとに要求品質展開表の作成、要求品質に関 連する行動の列挙、要求品質と行動の関連を整理し たマトリックスの作成を行う必要がある。

本研究では、様々な製品に関する、ニーズに関わ る行動を一般化した、「共通性から分類した行動要素」

と、ニーズと行動との関係を整理した「品質要素-

行動要素マトリックス」を提案する。これらを用い ることで、製品ごとに要求品質に関連する行動を列 挙したり、要求品質と行動の関連を整理したマトリ ックスを作成したりすることが不要となり、行動観 察がより容易に行えるようになると考えられる。

2.行動観察の難しさと先行研究及びその問題点 2.1 行動観察の難しさと先行研究

顧客の潜在ニーズを把握するためには、多くの原 始データ(発言、行動など)を集めてその背後にあ る共通性を把握しなければならない。行動観察は原

始データを集めるための有効な手法であるが、アン ケートやグループインタビューで得られる情報が言 語データであるのに対して、行動観察で得られる情 報は映像データであるため、得られる情報の量が多 く、それらをリアルタイムに取捨選択する難しさが 実施を困難にしている。

この難しさを克服するために、関谷ら[1]、清水ら [2]は以下に示す観察する行動の絞り方を提案した。

手順1:アンケートやグループインタビューで得ら れた情報を元に要求品質展開表を作成する。

手順2:要求品質と行動とのマトリックスを作成し、

それに基づいて観察する行動を絞る。

(2-1)要求品質展開表の要求品質ごとに、当該ニーズ を持つ顧客が取り得る行動を列挙する。

(2-2)列挙した行動をその類似性に基づいて分類し、

行動一覧表にまとめる。

(2-3)要求品質展開表を縦軸にとり、行動一覧表を横 軸にとったマトリックスを用意し、両者の関連を整 理する(図 1 参照)。

(2-4)要求品質と行動のマトリックスを利用し、把握 したい要求品質(使用性や安全性など)に関連のあ る行動を観察する行動として選ぶ。多くの要求品質 に関連する、3~6の行動を選ぶ。

関谷ら[1]、清水ら[2]は、観察する行動を絞るこ とで、着目した要求品質に関連した、事前の要求品 質展開表には含まれていない新たな要求品質を得る ことができるという結論を出している。

図 1 要求品質と行動のマトリックスの例

◎ ○

○ ◎

◎ 要

求 品 質 展 開 表

行動一覧表

(2)

2.2 先行研究における問題点

2.1の方法は、有効である反面、次に示す実施 上の問題点を持っている。

問題点1:調査する製品ごとに、要求品質展開表、

行動一覧表、要求品質と行動のマトリックスを作成 する必要がある。

問題点2:要求品質に関連する行動を列挙する際、

調査者の使用経験によって抜けが生じる。

問題点3:要求品質と行動の関連を整理する際、主 観的な判断となり、人によって整理の仕方が変わる。

3.行動要素を用いた行動観察の方法の提案 2.2で述べた問題点のうち、要求品質展開表に ついては、「品質要素」を用いることで個別の作成が 不要となる[3]。ここで言う品質要素とは様々な要求 品質をその類似性に着目して一般的に適用できる十 数項目にまとめたものである。この考え方に従えば、

行動一覧表、要求品質と行動のマトリックスについ ても、ニーズに関わる様々な行動をその類似性に着 目して一般的に適用できる項目「行動要素」を整理 することで、製品ごとに作成する手間が不要となり、

調査者に依存して抜けが生じる危険も少なくなると 考えられる。具体的な手順は以下の通りとなる。

手順1:着目する品質要素を選定する。

手順2:「品質要素と行動要素のマトリックス」から 着目した品質要素と関係の強い行動要素を選定する。

多くの品質要素に関連する、3~6の行動要素を選 ぶ。ここで言う「品質要素と行動要素のマトリック ス」は、品質要素を縦軸、行動要素を横軸にとって、

両者の関連を◎○△で示したものであり、多くの製 品についての品質要素と行動要素の関係を整理して 予め作成したものである。

4.行動要素の提案

4.1 行動要素が満たすべき性質特性

3.で述べた手順を考えると、「行動要素」は以下 の性質を持つ必要がある。

性質1:製品の種類に依存していない。調査する製

品ごとに行動要素を列挙したり、品質要素と行動要 素のマトリックスを作成したりしないために必要。

性質2:行動全てを漏れなく記述することが出来る。

選定した行動要素によって観察する行動が網羅され ていないといけない。

性質3:ニーズと密接な関連がある。ニーズと関連 が弱いと、品質要素と行動要素のマトリックスが網 羅的となり、観察する行動が絞れない。

4.2 10種類の製品に基づいた行動要素の導出 4.1で述べた性質を満たす行動要素を得るため に、複数の製品を取り上げた上で、それぞれの製品 ごとに、各品質要素に関わる行動を列挙し、得られ た多数の行動に関するデータを一般化、集約した。

製品については、(a) 携帯する、屋外で使用する できる製品、(b) 屋内で据え置いて使用する製品の 2つに分け、使用目的が異なる製品を各5種類ずつ 選んだ(a:自転車、スマートフォン、Ipod、財布、

鞄、b:椅子、冷蔵庫、洗濯機、パソコン、DVD デッ キ)。また、品質要素については、一般に用いられる 19項目を用いた(性能がよい、多機が多い、使い やすい、デザインがよい、経済的である、信頼性が 高いなど)。行動の列挙に当たっては、各品質要素に 関連する行動を一般的な表現で考えた上で、個々の 製品ごとに該当する行動を列挙した。結果の一部を 表1に示す。結果として、全部で約600個の行動 を列挙した。

表1で列挙した行動の中には製品特有の表現が含 まれている。例えば、「ペダル」「ペダルをこぐ」な どである。これらについては、一般的な名詞や動詞 に置き換えた。結果の一部を表2に示す。

最後に、一般的な表現に直した行動を、KJ法を 用いて集約した。類似性に着目し、近いと思うもの 同士をまとめ、まとめたものにラベルを付けた。結 果の一部を表3に示す。

結果として表4に示す41項目の行動要素を得た。

これらは大きく使用時に関するものと、使用時以外

(購入時など)に関するものに、前者はさらに指・

(3)

腕に関するものと指・腕以外(体など)に関するも のに分けられる。

表1 品質要素に関わる行動の列挙(一部)

表2 行動の表現の一般化の例

表3 一般的な表現に直した行動の集約(一部)

表4 行動要素

4.3 満たすべき特性の検証

表4の行動要素は製品の特有の表現を一般的な表 現にした上で集約したものであり、全ての製品に汎 用的に用いることができる。また、10製品に関す る行動をすべてカバーしている。他の製品について は別途確認が必要であるが、適用範囲は広いと考え

られる。さらに、品質要素に関連する行動を列挙し たものであり、ニーズと関連が深い。これらのこと から、表4の行動要素は、4.1で述べた性質1~

3を満たしていると考えられる。

5.品質要素と行動要素のマトリックスの作成 以下の手順で、品質要素と行動要素と品質要素の マトリックスを作成した。結果の一部を表5に示す。

(1)表1における行動を、対応する行動要素に置き換 え、品質要素と行動要素の各組合せについて対応す る行動の数を求める。

(2)品質要素ごとに行動要素の数の合計値を求め、各 行動要素の数に対する割合を求める。

(3)(2)で求めた割合が 0 より大きく 0.1 未満なら関 連性がある(「△」)、0.1 以上 0.3 未満なら強い関連 性がある(「○」)、0.3 以上なら非常に強い関連性が ある(「◎」)とする。

表5 品質要素と行動要素のマトリックス(一部)

6.行動要素を用いた行動観察の有効性の検証 3.で提案した方法による行動観察と2.1で述 べた先行研究の方法による行動観察を行い、結果を 比較することで提案方法の有効性の検証を行った。

対象製品はスマートフォン(行動要素の導出に用い た製品)、ボールペン(行動要素の導出に用いていな い製品)の2製品を選定した。行動要素を用いた行 動観察については3章で述べた手順を元に以下の手 順で行った。

いずれの方法においても、行動観察が使用性に関 わるニーズの発見に適していることを考慮し、使用

基本品 質

性能が よい

・本来の機能を正確、早く するために取る行動

立ったままペダルをこ

ぐ 鞄にしまう

・本来の機能が正確、早く ないときに取る行動

前のめりになってペダ

ルをこぐ ポケットにしまう 自転車

携帯できる製品

品質要素に対応する一般的

な行動の説明 スマートフォン

品質要素

対象

製品

原子データ

ペダルの上に立つ

足を曲げる 足を伸ばす 一般化している過程

付属品の上に立つ ペダルをこぐ 足を回転させる 立ったままペダ

ルをこぐ

物を付け替える くっつける 物を体に装着する 物を付ける 物を吹きかける 物を張り替える 物を体に装着する 物を付ける

物を付け替える 耳に当てる 物を張る 付属品を足で付ける 物を付ける

行動要素 行動要素

物を付ける 体を離す

物を組み合わせる 寄り掛かる

物を外す 物の上に体を乗せる

物を回す 座る

物を拭く 立ち上がる

開け口を開く 本体から降りる

開け口を閉じる 体を遠ざける

物を収納場所にしまう 体を近づける

物を入れる 動き回る

物を取り出す 周囲の状況を確認する

向きを変える 体を曲げる

物の場所を変える 体を伸ばす

大きさを測る 目を休ませる

対象製品同士を並べる 製品に関する情報を見る

物を押す 店舗へ持っていく

物を持つ 実物を使用する

物を置く 実物を見る

物を下す 割引券を使う

支える 折りたたむ 物の長さを調製する 他の作業をする 他人と共有する 主に

指、腕 が関係 する行 動要素

指、腕以 外の部分 も関係が ある行動 要素

使用時以 外のみに 関係があ る行動要

物を付 ける

物を組み

合わせる 物を外す

性能がよい 1(△) 1(△)

使用目的に

あっている 1(△)

応用性 他の多くの機

能がある 4(△) 3(○) 3(△)

… … … … …

69 30 35

基本品質

合計

行動要素

品質要素

(4)

性のうち「取り扱いやすい」という品質要素に関連 するものに着目した。

品質要素と行動要素のマトリックス、要求品質と 行動のマトリックスから観察する行動を選ぶ際には、

◎の付いた品質要素と非常に強い関連性がある行動 に着目した。提案方法については、「向きを変える」、

「物を押す」、「物を持つ」、「物を置く」、「体を近づ ける」という5種類の行動要素を選定した。また、

先行研究の方法については、「物を押す」、「物を持つ」

「物を取り出す」、「物をしまう」、「物を支える」と いう5種類の行動を選定した。

行動観察によって得られたデータを、(a)観察し た行動の数、(b)行動を分析することで得られた要 求品質の数、(c)得られた要求品質の具体性(得ら れた要求品質が、要求品質展開表の何次に対応する ものか)、の3項目に基づき集計した。結果を表6、

7に示す。

表6 提案方法と先行研究の方法との比較(製品:

スマートフォン)

表7 提案方法と先行研究の方法との比較(製品:

ボールペン)

これらの表から以下のことが分かった。

(1)行動要素を導出するのに用いたスマートフォン については、観察した行動の数、得られた要求品質 の数、得られた要求品質の具体性とも、提案方法と 先行研究の方法で大きな違いは見られなかった。

(2)行動要素を導出するのに用いていないボールペ ンについても、関する様々な行動を表4の行動要素 で表すことができた。結果として観察した行動の数、

得られた要求品質の数、得られた要求品質の具体性 とも、提案方法と先行研究の方法で大きな違いは見 られなかった。

先行研究の方法では、アンケートや、グループイ ンタビューを行って要求品質展開表を作成したり、

行動一覧表や要求品質と行動とのマトリックスを作 成したりするのに時間がかかるのに対し、提案方法 ではこれらの手間を省略できた。

7.結論と今後の課題

本論文では、様々な製品に関する、ニーズに関わ る行動を一般化した「行動要素」と、ニーズと行動 との関係を整理した「品質要素-行動要素マトリッ クス」を活用し、観察する行動を絞る方法を提案し た。この方法は、関谷ら[1]、清水ら[2]の提案した 従来の方法と同様に、着目した品質要素をより具体 的にした要求品質を得ることができた。また、従来 の方法と比べ、着目する行動を選定するまでにかか る時間を大幅に短くすることができた。

今後の課題としては、提案した方法を様々な製品 に適用し得られた結果の汎用性を確認すること、よ り広い範囲の製品について4.と同様の検討を行い、

行動要素や品質要素と行動要素のマトリックスをよ り有効性の高いものにすることなどが残されている。

参考文献

[1]関谷裕太、鈴木悠介、中條武志:“行動観察によ る潜在ニーズの把握に関するー考察”、「日本品質 管理学第 40 回年次大会要旨集」、2010

[2]清水健嗣、中條武志:“潜在ニーズの抽出を目的 とした行動観察方法の研究”、「日本品質管理学会 第 98 回研究発表会要旨集」、2012

[3] 松田慎一、中條武志:“総合的な消費者品質要求 のモデル化に関する研究”、「日本品質管理学第 55 回研究発表会」

一次の要求

品質の数 二次 三次 四次 五次 行動要素を用いた

行動観察 168 22 0 0 4 13 5

行動要素を用いてい

ない行動観察 146 25 0 0 5 15 5

(c)得られた要求品質の具体性

(a)観察 した行動の

(b)得ら れた要求 品質の数 観察方法

一次の要求

品質の数 二次 三次 四次 五次 行動要素を用いた

行動観察 98 15 0 0 3 7 5

行動要素を用いてい

ない行動観察 116 17 0 0 4 8 5

観察方法

(b)得ら れた要求 品質の数

(c)得られた要求品質の具体性

(a)観察 した行動の

参照

関連したドキュメント

プログラムに参加したどの生徒も週末になると大

大学教員養成プログラム(PFFP)に関する動向として、名古屋大学では、高等教育研究センターの

東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. [email protected]

情報理工学研究科 情報・通信工学専攻. 2012/7/12

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

学識経験者 小玉 祐一郎 神戸芸術工科大学 教授 学識経験者 小玉 祐 郎   神戸芸術工科大学  教授. 東京都

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 教授 赤司泰義 委員 早稲田大学 政治経済学術院 教授 有村俊秀 委員.. 公益財団法人