職長制度の変遷 と生産性管理
金 錯 基
く 目
はじめに
1.大卒職長の登場
2.オー トメーションと職長の機能 3.大卒以外の選択肢
4.
職長機能強化への要請5.態度の違 い
汰)
6.
現場に変革者を送 り込む7.早い昇進
8.内部昇進型職長の衰退
9.中途採用のノンキャリア‑職長
要約と展望は じ め に
米国 ミシガ ン州 にあ るゼ ネラル ・モー ター ズ
( GM)社 のあ る工場 を訪問 し
た とき,現場 の第一線管理職である職長 に大卒が多い と聞いて驚いた。現場 の 直接作業 に携 わる時 間給労働者 出身ではな く,最初か ら職長 として採用 された 人が多い とい うのだ。日本の職長 な ら現場作業者か らの内部昇進が普通である。韓 国 もその辺 は 日本 と似ている。私の授業 に参加 した大学生達 にこの話 を した ら
,
「それでは現場労働者 のや る気 は どうなるのですか」 とい う第一声が返 っ て きた。 日本 に住 む我 々に とってほや は り理解 しづ らい制度 なのである。 どう い う事情 によってその ような制度が出て きたか。本稿 ではそれを探 りたい。ご周知 の ように,米国 ビック
3
の市場 シェアは ここ3 0
年低下の一路 を辿 って きた。競争力低下 に歯止め をか けるべ く,生産 システム改革 な ど経営改革 も盛 んである。ベ ンチマーキ ング対象は 日本企業の,いわば 1)‑ ン生産 システムで あ る。1 9 8 0
年代以降盛 り上が った生産 システム論の成果 で明 らかな ように,リー〔 1 3 〕
ン生産 システムに内蔵 された改善の仕組みは現場作業集団,特 にその リーダー たる職長の役割 に強 く依存 している。それを意識 しつつ米国で導入 されつつあ るのがチーム制度である。少人数で作 る作業チームは従来職長の持 っていた管 理権限の一部を委ね られ,生産性 向上‑の 自主的コ ミッ トメン トを期待 される。
職長は命令者ではな くチームに助言 を与 える脇役 に徹す るとい うのだ。
チーム制度の現状 についてはこれまで男多しい数の調査研究が出ている。 とは いえ,その多 くは新制度の紹介や分析 に焦点を当ててお り,改革の対象 となっ た旧制度の実態が必ず しも明 らかでない。以下では,ニューデ ィル以降,作業 組織改革の始動する1
9 8 0
年代あた りまで,職長のあ り方が どのように変 わって きたかを, 自動車産業 を中心 に明 らか にしてい く。変化 に関わる要因 としては 特 に次の二つに注意が払われる。一つは労使関係で,特 に職長の労働組合参加 が禁 じられている米国的事情は決定的である。二つ 目は,生産性管理のあ り方, そ こにおける職長の位置づ けである。現場管理 における経営者の最終的関心は 生産性 にある。 しか し労働組合が職場 で規制力 を持つ と生産性管理 は様 々な困 難 に直面する。労働運動 と妥協 しつつ,満足 しうる生産性 をあげるための模索 がそこか ら始 まる。そこで職長はどの ような位置づけになるか, とい う視点で ある。1.大卒職長の登場
米国で も職長は現場労働者か らのたた き上げが普通であった。 しか し1
9 6 0
年 代 に入ると,現場労働の経験のない学卒 を職長に採用す る傾向が産業界 に急速 に広 まった。45
社 を調べたある調査 によれば,職長の うち大卒 (2
年制大学 を 含 む) の比 率 は,化学,石 油,石 け ん,電器 産業 で30 % 〜6 0%, その うち
J o h ns o n & J o h ns o n
社 は90 %に も上 る。一方,航空機製造,航空機整備会社で
は30 %未満 とやや低 い。それまで職長 に大卒 を起用することのなか った繊維産
業 で も,高収益 を誇 る一部企業 では15 %〜2 0 %ほ どまで増 えていた 。1) New
Yor kのある経営 コンサル タン ト会社 の調べでは,対象企業85
社 の職長の うち4
年制大卒以上の比率は8%強であった。 また同報告は,対象企業の多 くが大
卒職長制度を導入 したばか りで,その結果 におおむね満足 してお り今後大卒の 比率 を思 い切 って増や してい く方針である と伝 えてい る。2) 1 9 6 3 ‑6 4
年度の7
社 を対象 とした調査 は,社会全体の学歴上昇 も手伝い職長の平均学歴は上昇 し た と報告 している。 また従業員10 0 0
名以上の大企業3
社では大卒 を職長 に採用 していた。中小企業ではまだ内部昇進が主流だが,その場合で も高卒以上の学 歴が条件 とな りつつあるとしている。3) 1 95 0
年の全国セ ンサスでは,職長 と分 類 された78
万名の うち3.2%が 4
年制大卒 またはそれ以上の学歴 を持 っていた が,19 60
年 には11 0
万名の うち4.8 %
と増加 している。4)
体系的数値 に乏 しいが,以上の報告 を総合すれば,大卒職長制度の導入は化 学 など装置型産業の大企業が先駆 けとな り,電器 など当時の先端産業や機械産 莱‑ と大企業 を中心 に広が った ようにみえる。装置型産業では巨額 を投 じて建 設 した新 プラン ト運転 に,大卒の職長 を配置する傾向があった とされる。
また航空機産業 において大卒職長の比率が相対的に低い理 由については,金 属板の扱いや ドリリング,溶接 など数年以上の実務的知識 を要する職種が多い 上,仕事内容が毎回変わるため経験的知識が要 るか らとされている。注文生産 型の航空機産業では, 自動車産業のような徹底 した標準化 に基づ く大量生産 シ ステムは無理である。それ と関連 して参考 となるのは,Te
xa sl ns t r ume nt s
社1)Ho ppe r , Ke nne t h," TheGr o wi ngUs eo fCo l l e geGr a dua t e sa sFo r e me n: ' Ma7 l ‑
a ge me 7 1 tO fPe r s o 7 1 7 1 e lQuar t e ) . l y ,Summe r1 96 7 , vo l . 6 ‑ 2 , pp2 1 1 2 , a nd" TheNe w Lo o ki nSupe r vi s i o n: Thet r e ndi st o wa r dc o l l e geme n: ' Ma 7 1 a ge me 7 1 tRe L , l e w ,J ul y 1 9 6 7 , c o nde ns e df r o mEx e c ut i L , e' sBul l e t i 7 l ,J une1 5 ,1 9 6 7 , Pub l i s he db yFo r e me n' s I ns t i t ut e .
2)Kl e i n, Fr e de r i c kC. " Te c hni c a lGr a dua t e s : Wha tma ke st he m be c o mef o r e me n i nt hes ho p/Ma7 1 a ge me 7 1 tRe L , l e w ,J une1 9 6 8 , c o nde ns edf r o m TheWal lSt r e e t Jo ur 7 1 al ,vo l . CLXX, no .1 2 3 .
3)J ohns o n, Al t o nC. ; Ka hl er , Ge r al d
E. ; Pet er s o n, Ri c har d
B., " TheExpa ndi ng Ro l eo fToda y' sFo r e ma n: ' Ma7 2 a ge me 7 2 tRe L , l e w ,Ma y1 9 6 7 , c o nde ns e df ro m Ma‑
7 1 a ge me 7 1 tO fPe r s o 7 1 7 1 e lQuar t
er
ly,Wi nt e r1 9 6 7 .
4)Kl e i n, Fr e de r i c k C . , " Te c hni c a lGr a dua t e s : Wha tma ke st he m be c o mef o r e me n
i nt hes ho p: ' Ma7 1 a ge me 7 1 tRe L , l e w ,J une1 9 6 8 , c o nde ns edf r o m TheWal lSt r e e t
Jo ur 7 1 al ,vo l . CLXX. no .1 2 3 .
の事例である。組立 ライ ンでは職長の7
5 %が大卒,それ に対 し機械 職場 ,保全
部 門,金属加工部門の職長 はほぼ全員が時 間給労働者上が りとされてい る。電 器製造の組立職場 は コンベ アーでつなが る典型的な流れ作業職場,それ に対 し 保全や機械製作 な どは量産職場 ではな く熟練工の職場 である。総 じて,装置型 産業では連続工程のオー トメー シ ョンが進みつつある職場,機械産業では流れ 作業の量産職場が中心であ ることがわか る。ある航空会社 は,実務 と理論知識 を兼ね備 えた職長 を養成す るため,工科大 学 と連携 し
4
年課程 の うち6
ケ月を実務訓練 に当てるコース を新設 した とされ る。自動車産業 の
GM
社 の場合,19 68
年6
月 まで採用 された大卒職長数 は3,5 00
名 に上 っていた。先駆 ける装置産業 に比べ注 目度 は低 か ったか も知 れないが, 採用規模 でみれば本格 的であ った ことは明 らかであ る。 その うち3,000
名 は ミ シガ ン州 の フリン ト市 にあ るGM
工科大学( GM I ns t i t ut e
,現在のKe t t e r i ng Uni ve r s i t y)
出身であ った。GM
社 人事部長 は,GM
工科大学 出身は他 の大卒よ り昇進面で優遇 され るとい う
。5)
この大学 は当時GM
社所有で1 9 4 5
年 に学士 号 を授与で きる正親大学 に昇格 し,産学共同教育( C0 ‑ 0 pEd uc a t i o n)
が メイ ンであ った。 この プログ ラム にはGM
社 の現場 で給与 を もらいなが らフル タ イムで働 く現場実習が含 まれていた。 当時の詳 しい実態 は知 らないが,現在の プログラムについては同大学のホームペー ジか ら入手 した情報が参考 となる。それによれば,学期 は
3ケ月を単位 とし 1
学期 を学校 で,次の1
学期 を現場 で, とい う体制であ る。特 にI E ( I ndus t r i a lEng i ne e r i ng)
プログラムは修了 まで5
学期の現場実習 を義務づ けてお り,他学科 に比べ実習重視 の姿勢が もっとも 強い。I
E学科 は現場職長の主たる給源である。GM
工大 は1982
年 にGM
社 か ら独 立 し,他 の企業 に も共 同教育 プログ ラム を提供す るようになる。一方,GM
社 の方か らも共同教育 プログラムの提供先5)I b i d .
をほかの大学 に広げていったようである。ある人事ス タッフの発言では,1
9 87
年か ら多 くの大学 と連携す るGr a dua t e s ‑ I n‑Tr a i ni ngPr ogr a m
がス ター トし た としているが,それ以前 にも名称の似たプログラムはあったようで詳細 は確 認で きていない。6)
他大学 との連携 プログラムの一例 として,デ トロイ トにあるウェイン州立大 学
( Wa yneSt a t eUni ve r s i t y)
の事例 を紹介 しよう。 同大学工学部のI
E学科 内に設置 されているPMLP ( Pr oduc t i o nMa na ge me ntLe ade r s hi pPr ogr a m)
の教育 目的は,GM
社 など主 として 自動車産業むけに,生産 ライ ンの職長 に即 戦力 として採用で きる人材 を養成す ることになってい る。PMLP
は主 に大学2
年 目を終 えた学生 を募集 し, 2
年間のプログラムを履修 させ,協力企業の現 場職長 として送 り込む仕組みである。 またその2
年間には,夏休み を利用 した インター ンシップ,つ ま り協力企業の現場 で職長補佐 として働 く実習が含 まれ ている。近年は製造業 に良い人材が集 まらない傾向にあるので募集 には極めて 積極 的であ ると,PMLP
のホームページは学生 の積極 的応募 を呼びかけてい る。 また成績 に応 じて学生 に3, 0 0 0‑5, 0 0 0
ドルの奨学金 を与 えるし,優秀であ れば大学1
年 目の学生で もプログラムに採用 されることは可能 としている。2.
オー トメー シ ョン と職 長 の機 能大卒職長制度が導入 された背景 について,前掲 の文献はいずれ もオー トメー ションな ど技術革新 を第一要因にあげている。管見の限 りでは,当時は石油や 化学,鉄鋼, 自動車,電器 など量産型の重化学工業 における急速な技術革新が 研 究者の 目を引 きつけていたようだ。ハーバー ド・ビジネス ・スクールは技術 革新があ らゆる領域 に与 えるイ ンパ ク トを調べ る大がか りのプロジェク トを
1 95 4
年 に立ち上げた。 2年 ほど遅れて 日本で も東京大学社会科学研 究所が造船6)Mc Gui r eSe e ksLe a veToAppe a l( Oc t o b e r2 8 , 2 0 0 5 ) , ht t p : / / f r e e . f i na nc i a l ma i l . c o .
z a / r e po r t O 5 / gms a O 5 / gg ms a . ht m
業の技術革新調査 に着手 していた ことは興味深い。7)米国で起 きた前掲 の技術 革新 とほぼ同 じ性格 の ものが 日本ではやや時差 をおいて高度成長期 に本格化 し たか らである。その辺の比較 においては生産技術 と管理組織 の歴史段階論 を日 本の経験 に即 して整理 した山本潔が よい参考 となった
。8)
オー トメーシ ョンの一体 どうい うところが大卒職長制の導入を促 したか。前 掲 のハーバー ド大学 プロジェク トの うち
Br i ght( 1 9 5 8)は, 自動車産業のオー
トメーシ ョンと経営管理の変化 について多 くの紙幅を割いている。そこで読み とれた手がか りを再構成すれば以下の ようになる。9)
オー トメーシ ョンを進めている工場 の経営者が心配 していたのは,オペ レー ター (‑直接作業者)ではな く現場管理者,特 に第‑線管理者の職長について であった。オー トメーションによって力仕事や きつい姿勢の作業が減 らされた お陰で,直接作業その ものは過去 よ り楽 になった。 また人間の手仕事では精度 がそれ以上上が りに くい工程,人間の習熟 した動作 に頼 っているので人によっ てば らつ きの出やすい工程が 自動化の優先 的 ターゲ ッ トとな り,総 じてオペ
レー ターの作業その ものはよ り簡単で単純 な ものになった。
問題は設備の トラブルであった。オー トメーシ ョンの思わぬ落 とし穴 を聞 く 質問に,各社 はこぞ って,保全費用が高 くつ く,機械設備の設計や製作 に長い 時間がかかる,設置か ら正常稼働 までかかる時間が長い, とい う
3
点をあげて いた。1 0)
またFor d
社 を含む何社かは, トラブルへの迅速 な対応 を課題 に挙げ ていた。 まず,設計や製作 に当初の計画 よ り長い時間がかか るとい うことは, 技術的に不確実な要素 を抱 える意欲的プロジェク トが多いことを意味す る。次 に,設置か ら正常稼働 までかかる時間( de buggi ng‑ s t a r t uppe r i od)は,For d
7)東京大学社会科学研究所編 『技術革新 と労務管理 :造船業における事例研究 :
1 9 5 6 ‑ 5 9
年』東京大学州版会,19 7 2. 7
8
)山本潔 『日本における職場の技術 ・労働史』東京大学出版会,19 9 4
年。特に15
,1 6
頁を参照。9)Br i ght , J a me s
R., Aut o mat i o 7 1a 7 1 dMa 7 1 a ge me 7
1t ,Pl i mpt o nPr e s s , No r wo o d, M A, USA,1 9 5 8 .
1 0 )I bi d . , p8 0
社 の場合
1
年半か ら2
年 ほ どが普通 とされた。Fo r d
社 よ り規模 の小 さい他社 は,技術難度のやや低いオー トメーシ ョンだった こともあって, 1年以内が多 い。11)いずれ も経営者 に とっては恐 ろ しく長い時間であ る。製作 して設置 し た ものの,いつ までたって も計画 された生産量や質に到達で きない例は珍 しく ない し,結局は新設備 を撤去 し生産 ラインを元 に戻 して しまった事例 まであっ た。直接労働 は減 らされたが,保全な ど間接労働が大 きく増 え,直接労務費 より保全費が原価管理の ターゲ ッ トにな りつつあった。
以上の ような状況 において職長には どのような役割が期待 されるようになっ たか。一言で人間管理能力か ら機械管理能力へ とその重点が移 った。設備 をよ く理解 し普段の予防保全 を適切 に行 うことや, トラブルが発生 した時すばや く 処理で きる能力が重要 となった
。Fo r d
社重役の次の話が示唆的である。「職長は優秀な人間にや って もらいたい。設備 トラブルに迅速 に対応するに は, どこの誰 を呼べ ばよいかを職長が よく知 っている必要がある
。 」12)
故障 した機械 を患者 に例 えれば,職長は一般医,保全ス タッフは専 門医 とい えばわか りやすい。患者の症状 を見て軽い病気 は 自分で直 し,手 に負 えない時 は適切 な専 門医を見つけ出す。それが職長に期待 される役割 なのだ。保全体制 の整 った現在の 日本の 自動車生産現場 を想定すれば,設備 ごとに保全担 当が決 まっているのが普通である。職長か ら保全担当へ,保全担当か らさらに分野別 の専 門家 につな ぐ連携であ り,保全担 当が前掲の一般医の役割 を担 うことにな る。 しか し当時の
Fo r d
社 では,新設備 を入れると満足 ので きる稼働水準 に達 す るまで2
年近 く トラブル との戦 い を続 けなければな らない。 しか も場合 に よってはその設備 を設計,製作 したエ ンジニアーでない と対処で きないほど深 刻 な トラブル も発生する。要す るに工場 に実験室 を持ち込んだような もので, トラブル対処手順の標準化 はまだこれか らとい うことになる。風の症状 な ら経 験 の長い薬剤師に任せて十分であろう。 しか し重病の可能性 をつねに疑 う必要l l )I bi d. , p1 2 9
1 2 )I bi d. , p2 0 9
があれば,い くらひよこ医者で もそち らにかかった方が安心である。 ひよこ医 者 は 自分 で病名 を特 定 し治療 す る力 こそ劣 るが, 医学 の基 本 デ ィシプ リ ン
( di s ci pl i ne )
にのっとって さまざまな病因の可能性 を推理 し,可能性 の高い 順 に整理することはで きる。 またそれぞれの病因 ごとにどの専 門医を呼んだ ら よいか も判断で きる。 もし専 門医 と協力 して診断や治療 に当た らせれば,意思 疎通 に問題がな く,学習速度 も速い。経営者や上級管理者は既存の内部昇進型職長に問題が多い と見ていた。職長 の多 くは変化の波 に乗ろうとす るやる気や能力 に欠けるとい うのだ。小学校卒 (‑日本の高等小学校卒 に相当する
8
年程度)の学歴では学ぶべ きことが多す ぎて臆病 になって しまう。少な くとも高卒 はほ しい とい う。新 しい職長養成の ため,19 5 0
年代半ばですでに大学生の社内実習を取 り入れた事例 もあった。ちなみ に,やや時代 を下 り
1 9 6 0
年代 の話 となるが, コンピュー ター導入によ る情報処理技術が管理業務 に及ぼ した影響 も大 きかった ようだ。生産計画 も現 場 にオ ンラインで降 りて くるし,品質,生産性デー タな どの報告 も現場 で入力 す る。古い職長には苦手な作業である。逆 に若い学卒は経験が浅 くて もす ぐに 対応で きる。1 3)
3.
大卒以外の選択肢ここで一つ疑問が湧いて くる。日本で も1
9 6 0
年代 に技術革新が注 目されたが, 若い大卒 をす ぐ職長 にするようなことは起 こらなかった。職長制度の変化でい えば鉄鋼産業の作業長制度導入が もっとも注 目された。作業長は旧来の職長 よ1 3 )Ho ppe r , Ke nne t h," TheGr o wi ngUs eo fCo l l e geGr a dua t e sa sFo r e me n: ' Ma7 l ‑
a ge me 7 1 t O fPe r s o7 1 7 1 e lQuar t e r l y ,Summe r1 9 6 7 , vo l . 6 ‑ 2 , pp2 ‑ 1 2 , a nd" TheNe w
Lo o ki nSupe r vi s i o n: Thet r e ndi st o wa r dc o l l e geme n: ' Ma 7 2 a ge me 7 2 tRe L , l e w ,J ul y
1 9 6 7 , c o nde ns e df r o mEx e c ut i L , e ' sBul l e t i 7 l ,J une1 5 ,1 9 6 7 , Pub l i s he db yFo r e me n' s
I ns t i t ut e . Bur a c k, El me r & So r e ns e n, Pe t e rF. J r
.," Ma na ge me ntPr e pa r a t i o nf o r
Co mput e rAut o ma t i on: Eme r gentPat t e r nsa ndPr obl e ms : ' Ac ade my o fMa7 l ‑
a ge me
71t Jo ur 7 1 al ,J une1 9 7 6 . vo l .1 9
12 . pp31 8 1 3 2 3 .
り責任の大 きい職であったが,社内訓練 をうけた高卒労働者でまかなわれた。
年功的昇進か ら能力重視の選抜へ と,内部昇進のルールに一定の変化はあった が内部昇進その ものは変わ らなかった。韓国の現代 自動車の経験 も参考 にしよ う
。1 9 7 0
年代末,量産 システムの構築 を急 いでいた頃は,輸入設備の トラブル に備 え,若い大卒エ ンジニアーが現場 に常駐 し,時には職長 に,時 には職長の 肩越 しに担 当作業者 に直接指示 を出す ことが多か った。 しか し大卒エ ンジニ アーの組織上の地位 は課長や係長の指示 を仰 ぐス タッフであ り, ラインの責任 者ではなかった。 また操業が安定軌道 に乗れば大卒 を現場か ら引 き上げ,職長 による管理体制 に戻 った。米国内に も大卒の職長採用 に疑問を提示す る意見はあった。Bur
a c kは現場
の事例調査 をふ まえオー トメー ションと大卒職長の関連 を論 じた貴重な研究で あ る。1 4)
氏 の本格 的事例調査対象 は鉄鋼産業であったが,後 に調査対象 を他 の産業 に も広 げ 自説の一般化 をはか っている。氏 の鉄鋼調査 の成果 を中心 に 我 々に必要な限 りの論点をまとめてみた。まずオペ レー ターの場合,過去の装置運転 に必要だったノウハ ウの多 くが新 鋭設備では装置その ものに埋め込 まれているので,経験的熟練の必要性 は減少 した。 しか し トラベルが起 こった時は生産プロセス全体 に影響が及ぶのでコス トが大 きくなる。 また以前 よ り複雑な技術体系 なので問題解決には高度な分析 能力が必要 となる。そ うした潜在的 リスクと向 き合 うため,管理責任者である 職長やその上の現場管理者の技術的 レベルを上げると共 に,技術支援ス タッフ の強化が行われる。職長には,高校 レベルを超 えるエ ンジニアー リングの基礎
1 4 )Bur a c k, El me rH.
&Ca s s e l l , Fr a nkH. , " Te c hni c a lCha ngea ndMa npo we rDe ‑
Ve l o pme nt si nAdva nc edPr oduc t i o nSys t e ms : ' Ac a de myo fMa7 1 a ge me 7 1 t ,Se p‑
t e mb e r1 9 6 7 . Bur a c k, El me rH. ," I nd us t r i a lMa na g e me nti nAd va nc e dPr o d uc t i o n Sys t e ms : So meThe o r e t i c a lCo nc e pt sa ndPr e l i mi na r yFi ndi ngs : ' Admi 7 2 i s t r at i L , a Sc i e 7 1 C eQua r t e r l y,De c e mbe r1 9 6 7 , vo l .1 2i s s ue3 , p4 7 9 ‑ 5 0 0 . Bur a c k, El me rH.
&So r e ns e n, Pe t e rF.
Jr. , " Ma npo we rDe ve l o pme nta ndTe c hni c a lCha nge : So me Co ns i der at i onsf orRe vi s edSt r a t egi e s : 'TheJo ur 7 1 alo fMa7 1 a ge me 7 1 tSt udi e s ,
Oc t o b e r1 9 7 1 , pp3 0 4 ‑ 31 4 .
知識が必要で,特 に技術支援の大卒エ ンジニアー と意思疎通 をはか るためには, 用語 を含め工学の基礎知識 は欠かせない。そこで大卒でない と職長 に昇進で き な くなる傾向が強 くなった。
しか し大卒職長制 には次のような問題がつ きまとう, と氏 はまとめている。
第一に,職長に求め られる能力 を管理能力 と技術能力 (保全技術能力 といっ た方が よ り正確 と思 われるが) に分けた場合,大卒職長制は技術能力 に重 きを お くものである。 しか し将来,技術高度化が さらに進むな ら別だが, また職長 を上位管理職候補 と考えるな らそれ も別の話 になるが,現在の ところはまだ学 士号のない人で も訓練次第で職長職を任せ られる。
第二 に,新工場の操業が安定 して くると,現場 第‑線 に技術者 を配置 してお く必要は少な くなる。そ うなれば,職長の主な仕事は管理業務 となるが,そこ で頼 りになるの は学校 で得 た知識 で はな く,長 い現場経験 で得 た知識 であ る
。15)
しか も管理能力 と技術能力 は矛盾す る場合が しば しばあ る。若い大卒 職長には年配の労働者 を統率す る能力 に欠けるもの も多い。第三に,現場労働者 に内部昇進の門を閉 じれば,労働者のモチベーションは 大 きく下がる。職長 との摩擦 も大 きくなる。一方,大卒 を職長職に採用 し維持 す ることも簡単ではない。大卒 は期待水準が高 く,上位管理職への昇進チ ャン スが十分でなければよい人材 を持続的に集めることは難 しい。
第四に,代案 として, ラインと支援ス タッフの役割分担などを工夫すれば,労 働者に適切な教育を施 し技術スタッフと協力体制を作 ることは不可能ではない。
4.
職長機能強化 への要請これまで新鋭設備の保全 にかかわる技術 を中心 に議論 を進めて きたが,ほか
1 5 )I mbe r ma n,Woodr
uf f ," what everha ppe nedt os upe r vi s or yt r a i ni ng? "Bus i 7 1 e S S
Hor i z o
71S ,J ul /Åug1 9 9 3, vol . 3 6 ‑ 4 , pp75 ‑ 78
.著者は前掲のBur ac k
に依拠 しつつこ の点を強調 している。また氏の議論は42社の職長教育の実態を3年にわたって調べ た結果に基づ く提言であるとしている。に も職長の役割強化が必要 だ とい う議論が この時期 は広 く見 られる。それは職 長教育内容の変化 に端的に現れていた。
職長教育が本格 的 に始 まったのは1
9 4 0
年代前半。職長労働組合運動の台頭 を 警戒 しつつ大規模 で実施 されたTWI
プログラムに端 を発 してい る。 人間関係 論 に傾斜 した内容が 中心であった。参考 までに1
9 61
年 頃の,あるコンサ ル タン トの講演内容 を紹介 しよう。内容 は次 の3要素 によって構成 されていた。一つ は, 「会社 の成功があなたの成功 につ なが る」 「それ を確信 して心 を決め よ」 な ど,経営側 の一員であ ることを 自覚 させ会社へ の忠誠 を促 す内容。二つ 目は, 「生産 (目標達成) その もの を 目的 と見 るな。大事 なのはみ んなで一緒 に働 くことだ」 「自分 を抑 え公正 にふ るまえ」等,部下 に優 しく当た るためのア ドバ イスであ る。 それに対 し,三つ 目の業務技術面のア ドバ イスは決め手 に欠 ける。「仕事 は事前 に綿密 に計画 し, 部下 をい きな り駆 り立 て るな」 「定期 的 に保全や点検 のスケ ジュールを組 んで 行 うのが大事」 とい う一般論 に終始 している。1 6)
1 9 6 0
年代 になるとそれ までの人間関係論 中心の職長教育 を批判す る声が増 え る。ある専 門家は次 の ように話 した。19 2 0,3 0
年代 は部下 を駆 り立 てるタフな 職長像が,19 40,5 0
年代 はみなで幸せ な家族 になろ うとす る人間関係論者の職 長像が求め られた。 しか し今は標準 とい う言葉の傘 に隠れて安易 に妥協 す る職 長像 を捨 てるべ きである。部下 に適切 なプ レッシャーを与 え続 ける管理が大事 であると。17)Thur l e y & Ha mbl i n ( 1 9 6 2 )は職長の仕事時 間を調べ,純粋 に人間関係 的業
1 6 )Co me r , Pa t r i c kB. J r , ," Supe r vi s i o n:Te nWa yst oGe tAhe a d
:'vl l t alS pe e c he so f t heDa y,McMur r yI nc. Phoeni xAr i z ona, 6/1 /61 , vo l . 2 7i s s ue1 6 , pp51 0 ‑ 5
11. Po we r s , Rode r i c kD. , " Te nEa s ySt e pst oBe c o meaPo o rSupe r vi s o r : ' hl dus t r i al Ma 7 1 a ge me 7
1t ,Ma y1 9 6 5 , r e pr i nt e df r o m Su pe r L , i s i o 7 1Ma ga z i 7 l e .
以上は職長教育コンサルタントの講演要録である
。Po we r s
の ものは人間関係論的視点に,1 9 5 0
年代 に公表されたWa l ke r
ら (注18を見よ)の影響,つ まり職長による工夫だけでもQWL
的実践が一部可能だという知見を加えているように見える。1 7 )J e nki ns , Lus s e
llL," TheSupe r vi s o ro ft heFut u
re : 'Tr ai 7 1 i 7 1 ga 7 1 dDe L , e l o pme 7 1 t
Jo ur 7 1 al ,Se pt e mb e r1 9 6 6 . pp2 8 1 3 6 .
務 に割かれる時間はわずかであ り,人間関係論だけでは現実の世界で職長の担 うさまざまな役割 を捉 え切 れない と批判 した。 この研究が
Wa l ke rらの研 究に
刺激 されていたのは興味深い。1 8)
前掲 のBr i ght
によれば,経営管理 にとって オー トメーションの最大利点は, ビジネス運営全般 にわたって計画性 を高め ら れた ことである。1 9) wa l ke rらは QWLの観点か ら,計画性 の もっとも高い職
場 の一つ,つ ま りコンベアーでつなが る自動草組立 ライ ンを調べた。彼 らが発 見 したのは,生産が集権的に計画 され統制 されている流れ作業職場 において も, や る気や能力ある職長の分散的,個別的取 り組み によって労働者の疎外感や単 調感を減 らす余地があること, またその裁量余地 は生産 システム設計者がそれ に配慮 しているか否かで大 きく違 って くるとい うことであった。もう一つ注 目されるのは,職長に
I
Eの新技術 を教 えようとす る動 きである。前記 の ような生産 ライ ンの計画性 が高 まった ことを受 け
,I
E技術 の発展 も空 前のブーム となっていた。例 えば組立 ライ ンの平準化( l i ne ‑ba l a nc i ng)は経
験 的になされて きたが,19 5 4
年 に試験 的アルゴリズムを提示 した論文がは じめ て現れた。20)
職長に教 えようとす る項 目を並べ ると,作業簡略化( Wo r kSi m‑
pl i f i cat i on)
, 作 業 方 法 と時 間研 究( Met hodandTi meSt udy),SQC ( St a t i s t i ca lQua l i t yCont r o
l),PERT ( Pr ogr a m orPr o j e ctEva l ua t i ona nd Re vi e w Te chni que )
,安全管理教育( Sa f e t yEduca t i o n)などである
。職長になぜ
I
Eを教 えない と行けないかについては次の説明が参考 となる。「職長は作業標準の連鎖 をつな ぐキー ・リンクであ り,その協力がなければ 作業標準 システムは真 に効果 をあげ られない。‑‑一部の職長が協力 しない理
1 8 )Thur l e y
,K.E.&Ha mbl
in
,A.C. , " TheSupe r vi s o r ' sRo l ei nPr o duc t i o nCo nt
rol,…hl t e r 7 1 a t i o 7 1 al Jo ur 7 1 al o fPr o duc t i o 7 1Re s e a r c h ,De c e mb e r1 9 6 2 , vo l .1i s s ue4 , ppl l 1 2 . Wa l ke r , Cha r l e s
R. ; Gue s t , Ro be r tH. ;Tur
ne r , Ar t hurN. ,TheFo r e ma 7 10 7 1t he As s e mb l yLi 7
Ze ,Ca mbr i dg e : Ha r va r dUni ve r s i t yPr e s s ,1 9 5 6 .
1 9 )Br i ght , J a me s
R. , Aut o mat i o 7 1a 7 1 dMa 7 1 a ge me 7
1t ,Pl i mpt o nPr e s s , No r wo o d, M
A,USA,1 9 5 8
.特に本のFor e wo r d
を見よ。2 0 )Ki l br i dge , Maur i c eD. & We s t er , Le on," ARe vi e wo fAnal yt i c a lSys t e mso f
Li neBa l a nc i ng
:'( 妙e r at i o 7 1 SRe s e a r c h ,Se p/ Oc t 1 9 6 2 . vo l .1 0i s s ue5 . p6 2 6 ‑ 6 3 8 .
由は, シス テムを理解 してい ないか,理解 していて もそれ を 自分 ので はな く IEの仕事 だ と思 ってい るか らであ る。彼 は不完全 な ツー ル しか使 えないが, それで も (そ うい う理解 や協 力があれば :筆者)IE はあ らゆることについて 納得のい く正確 な情報 を得 ることがで きるだろ う。ただ しそれは問題の半分 を 解 決 した ことにす ぎない。残 り半分 は システムを運営す る側 の責任 であ る。標 準 の影響 を受 ける側 (‑現場側 :筆者)か ら上が って くる反応 は積極 的 に参考 されるべ きであ る
。」21)
そ もそ もIE と職長は仲が悪 いのが普通であ った。IEは職長の率い る作業集 団の作業標準 (‑作業負荷) を決める権 限を持つが,職長はそれを もっと達成 しやすいルースな ものに したが るか らである
。2 2)
い くらIE技術が進歩 し標準 化 が突 き進 んで もIE部 門は職長の協力 をほ しが るのであ る。 職長 にI
E技術 を教 える理 由は,職長 による下 か らの改善 を期待 す る面 ももちろんあるが,職 長 にI
E を理解 して もらいI E担 当者 との意思疎 通 を促 す 目的の方 が よ り大 き
い。そ こで職長 と IEが気楽 に意見交換 す る場 や雰 囲気 を作 ること,職長 に分 か りやすい簡略で実用的なツールを開発す ることが重要 とされた。2 3)
大量生産 システムの確立 に伴 う管理 の集権化 と職長権 限の縮小傾 向は経営史 や労働 史研究 において繰 り返 し強調 されて きた シェ‑マであ る。 とはい え, こ の フ レームは大 まかす ぎて戦後 の展 開 を考 える時 はその ままでは役 に立 たな い。戦後 の展 開で問題 にされるべ きは,大量生産 システムにお ける多様 なサブ ・
タイプ,それぞれが どの ように して生成 されて くるか とい うことである。 この
2
1)Hut c hi ns o n, J o hn," Wo r kSt a nda r dsde pe ndo nt heSupe r vi s o r : ' hl dus t r i al M a7 l ‑ a ge me 7
1t ,Ma y1 9 6 6 ,p1 6
.2 2 )Wat mough
,E.B. ," LookatYourPr es s ur ePoi nt s :TheManuf ac t ur i ngFor e‑
me n: ' hl dus t r i alMa 7 1 a ge me 7
1t ,De c e mbe r1 9 7 0 , pp1 1 1 1 4 .
2 3 )Hoo ve r , J
.E"" TheLi neFo r e ma na ndI ndus t r i a lEngi ne e r i ng: ' hZ dus t r i alMa7 2 ‑ a ge me 7
1t ,Sept e mbe r1 9
64, pp5 1 1 4. Ba r t h, Ke nnet h J /' Howt oAc c ompl i s hMo r e byWo r ki ngLe s s : ' hl dus t r i al M a7 1 a ge me 7
1t ,Febr ua r y1 9 6 5 , pp4 1 5 .Ni s s l e y, Ha r o l d
R. ," Pr a c t i c a lTi meSt udy‑ 5 :Supe r vi s o r ' SRe s po ns i bi l i t yi na nI nc e nt i vePr ogr a m ,
hl du s t r i al M a7 1 a ge me 7 1 t ,J ul y1 9 71 . pp1 2 1 1 5 .
時代 の技術革新 で問われていた経営管理戦略上の課題 は,標準化 に基づ く高度 に集権化 された管理 システムに,生産技術 の早い進歩 に応 じて標準 を速やか に 持続的に変 えてい くプロセスを如何 に して取 り込 むか, とい うことであ った。
それには変化 を間近 で捉 える現場 と集権化 された管理部 門の協力体制 を構築す る必要があ り,その要 として職長の機能強化が求め られ るようになった と考 え ることがで きよう。
5.
態度の違い戦後の技術 革新が進 むなか,職長 に高い保全技術 と最新 の管理技術 を身につ け させ集権化の進 む管理体制 を下か ら支 えるようにす ること,それが経営管理 上 の要請であった。 それに応 えるのに既存 の職長 には学歴が低 い とい う弱点が あ っ た こ と もす で に見 て きた とお りで あ る。 しか し大 卒 職 長 制 も前 掲 の
Bur a c kによって指摘 された ような幾多の問題 を抱 えている。学歴 だけの問題
な ら,経営者 は大卒職長制 の導入 によ り慎重 になったか も知 れない。注 目され るのは,既存 職長層 のや る気 のなさを指摘 す る論者が多い ことであ る。24)
「時間給従業員か ら昇進 しそれ以上 の昇進 はない とわか っている人に比べ る と,大卒 の職長は もっと管理者 的に行動す る。大卒 にとって職長職 は昇進階段 の もっとも下であ り昇進 は これか らである。彼 は 自分の能力 を証明 して見せ る ため,改善や生産 目標 の達成 に励み,部下労働者 の満足度や生産性 を高め,支 援 ス タッフともうま くつ きあ うだろ う。 同 じ理 由によって,変化 に対 して もそ れ を積 極 的 に受 け入 れ 手 伝 う こ とに な る だ ろ う。 ‑・‑ 大 卒 職 長 は新 技 術
( SQC,PERT,Wo r kSi mpl i f i c a t i o n
等) の習得 に熱心であ り,それが既存 の 職長 に も刺激 を与 え,新技術 の吸収 に積極 的な風土が形成 される。 ‑‑職長経2 4 )Thur l e y
,K.E.&Ha mbl
in
,A.C. , " TheSupe r vi s o r ' sRo l ei nPr o duc t i o nCo nt
rol,"hl t e r 7 1 a t i o 7 1 al Jo ur 7 1 alo fPr o duc t i o 7 1Re s e a r c h,De c e mb e r1 9 6 2 , vo l .1i s s ue4 , pp1 ‑
1 2 . Wa t mo ugh
,E.B. , " Lo o ka tYo urPr e s s ur ePo i nt s : TheMa nuf a c t ur i ngFo r e ‑
me n: ' hl du s t r i alMa 7 1 a ge me 7 1 t ,De c e mbe r1 9 7 0 . pp1 1 1 1 4 .
験者が上位管理職になれば,上位管理職 と職長層の風通 しが よくなる。その結 果,上位管理職が長期計画 を立案すれば,それは現場隅々の事情 を踏 まえたよ
り現実的な もの となる
。」25)
すでにのべた ように,時間給労働者上が りの職長はそ もそ もIE部門との葛 藤 を長 らく経験 している。 また学歴や年齢か らして新 しい知的学習 には意欲が 弱 く,消極的にな りやすい。特 に数値化 されたデー タが苦手だ とい う指摘 をよ く見か ける
。26)
昇進 とい うモチベー シ ョンが弱いのは,前記の ように彼 らの 行動 に大 きな影響 を与 えている。ただ し他 の国で も労働者上が りの職長 に当た えられるチ ャンスはそれほ ど大 きくない。 む しろ米国的特徴 として注 目すべ き は,職長層が組織の中で孤立 している存在だ とい うことである。部下である時 間給の労働組合員か らほ経営側の人間 として扱われる。 しか しサ ラリーをうけ とる職員のなかではキャリアーの上 でほかのグループ と明確 に断絶 されてい る。27)
それゆえに職長 は,労働法上 は経営の一員 と見 なされなが ら,経営者 にとっては会社への一体感 を教育 によって植 え付 けない といけない存在であ り つづけた。何事 にも消極的な態度はこうした所属感の危機,欠如 と無関係では ないように思 える。6.
現場 に変革 者 を送 り込 む現場 に送 り込 まれた大卒職長はどの ように活躍 したか。 まず具体的事例 を紹 介 しよう。残念なが ら自動車生産職場 の事例は入手で きなか った。 とりあえず
2 5 )Ho ppe r , Ke nne t h, " TheNe wLo o ki nSupe r vi s i o n: Thet r e ndi st o wa r dc o l l e ge me n: ' Man a ge me 7 1 tRe L , l e w,J ul y1 9 6 7 , c o nde ns e df r o mEx e c ut i L , e' sBul l e t i 7 l ,J une 1 5 ,1 9 6 7 , Publ i s he db yFo r e me n' sI ns t i t ut e .
2 6 )Thur l e y
,K,E &Ha mb l i n
,A,C, , o p.
°i t . Wa t mo ugh
,E B. , " Lo o ka tYo urPr e s s ‑ ur ePo i nt s : TheMa nuf a c t ur i ngFo r e me n: ' hl dus t r i alMa7 1 a ge me 7 1 t ,De c e mbe r 1 9 7 0 , ppl l ‑ 1 4 .
2 7 )Thur l e y
,K.E.& Ha mbl i n
,A.C. , o p.
°i t . Br i t t o n, " Supe r vi s o r s : Me ni nMi dd
le
,"hl du s t r i al M a 7 1 a ge me 7 1 t ,Apr i l1 9 7 5 . p1 4 .
化学,製紙 な ど装置産業の事例が中心 となる。
Di a mondAl ka l i
社 は3
千万 ドルを投 じて建設 した新 プ ラ ン トに大卒職長 を 配置 した。新 しい工程の問題 を発見す るには新米の 目が む しろ鋭い とい う。例 えば,職長 に採用 されて4
ケ月の人の提案 で品質は大幅 に向上 された。彼 は品 質低下の原因が改廃バ ルブの問題 にあ ることを突 き止めたのだ。Ki mbe r l y‑Cl a r k
社 は, 2カ所 のプ ラ ン トで新 旧二 人職長体制 を採用 した。労働者上が りの旧職長 と学卒の新職長の二 人体制 に し,技術 能力 と管理能力 を 高めた結果,高品質 と低 コス ト達成 に大 きな成果があった
。28)
大卒職長9
0%
で知 られ る化学大手 のJ ohns on&J ohns on
社 で は,大卒職長 の原価管理 を支援す るツール としてデー タシステムを構築 した。予算及 び予定 原価 ,毎 日及 び毎 月の材料使用量,毎週 の労働生産性 (能率給計算用),交替 制 の直 ごとの毎 日実績,その他報告事項, を職長がいつで も参照で きるように した。 また コス ト低減の実績 に応 じて最大 で本給 の20%までの能率給 を支給す るように した。2 9)
大卒職長 をフールに活用す るには,直属 の上司だけでな くそれ以上の管理職 に も直接 意見 をいえるようにチ ャンス を与 える必要があ る。 またルーチ ンな業 務か ら解 き放 され改善計画 に専 念で きる時 間を確保す るのが大事である。その ためIBM 社 では職長 を補佐す る事務員 をつ けている
。30)
11社 を対象 としたある調査 は大卒職長制 の導入 に伴い職長の役割が強化 され た と報告 している
。31)
特 に生産管理の領域 において職長の役割が強化 された。2 8 )
以上の2
事例は以下による。Kl e i n, Fr ede r i c kC." Te c hni c a lGr a dua t e s : Wha t ma ke st he m be c o mef o r e me ni nt hes ho p: ' Ma 7 1 a ge me 7 1 tRe L , l e w,J une1 9 6 8 , c o n‑
d e ns e df r o m TheWal lSt r e e t Jo ur 7 1 al ,vo l . CLXX, no .1 2 3 .
2 9 )Ho ppe r , Ke nne t h, " TheNe wLo o ki nSupe r vi s i o n: Thet r e ndi st o wa r dc o l l e ge me n: ' Man a ge me 7 1 tRe L , l e w,J ul y1 9 6 7 , c o nde ns e df r o mEx e c ut i L , e' sBul l e t i 7 l ,J une 1 5 ,1 9 6 7 , Publ i s he db yFo r e me n' sI ns t i t ut e .
3 0 )I bi d .
31 )J ohns o n, Al t o nC. ; Ka hl er , Ge r al d
E.
;Pet er s o n, Ri c har d
B., " TheExpa ndi ng
Ro l eo fTo da y' sFo r e ma n: ' Ma 7 1 a ge me 7 1 tRe L , l e w,Ma y1 9 6 7 , c o nde ns e df r o mMa 7 l ‑
a ge me 7 1 tO fPe r s o 7 1 7 1 e lQu ar t e r l y,Wi nt e r1 9 6 7
.調査対 象は11社 (従業員50 0 ‑ 3
万例 えば大卒職長制 を導入 してか ら生産関連の計画会議 に職長 を参加 させ るよう になった企業が多い。生産スケジュール計画,部品の在庫管理や品質計画など がそれである。一方,人事,安全,労使関係,財務統制の各領域 における役割 には 目立つ変化が少 ない。
以上,現場 に配置 された大卒職長は潜在的に高い技術的能力や強い向上心 を 発揮 し,特 に新工場 を立ち上げる時がそ うだが,生産プロセスにおける不具合 の発見 と改善 を,技術 ス タッフや IEス タッフなど工場 ス タッフ部門 と二人三 脚で進めてい く,現場の変革者 として機能 した。工場のス タッフ部門は従来, 標準 とい うデー タを もって ライン職長 を上か ら統制 しようとする立場であった が,標準その ものを書 き換 える推進力 としては物足 りない。大卒職長はその穴 を埋めるために現場 に送 り込 まれた変革推進役であった。
7. 早 い 昇 進
大卒職長を変革者 に駆 り立てるモチベーシ ョンは能率給な ど短期的,金銭的 刺激ではない。いわばフ アス ト・トラック扱い に与 え られた昇進チ ャ ンスで あった。
1 9 67
年 にWa l lSt r ee tJ our na l
は学卒職長の典型 として, イリノイ大学で工 学士 を と り,ハーバー ド大でMBA
を修得後,Fai r chi l dCa me r al ns t r ume nt
社 の半導体工場 に職長 として採用 された人物 を紹介 している。彼は19 6 2
年29歳 で職長に採用 され,19 67
年当時は香港工場 の半導体工場長に早 くも上 り詰めて いた。Wes tVi r gi ni a
大卒 の化学工学士で同社 に職長( s upe r vi s or )
に採用 さ れた人は18
ケ月後 にge ne r a ls upe r vi s or
に昇進 し,その後30
歳 の若 さでpr o ‑ duct i o l lma ⊥ l a ge r(‑生産課長 ?) に昇進 している 。32)
名
)
,産業は鉄鋼,食品加工,テープなど製造,産業機械,航空宇宙機械,自動車 部品などである。3 2 )Kl e i n, Fr e de r i c k
C. " Te c hni c a lGr a dua t e s : Wha tma ke st he m be c o mef o r e me n
i nt hes ho p: ' Ma7 1 a ge me 7 1 tRe L , l e w ,J une1 9 6 8 , c o nde ns edf r o m TheWal lSt r e e t
Jo ur 7 1 al ,vo l . CLXX. no .1 2 3 .
GM
社 の実態 を示唆す るデー タとして, ネ ッ ト検索 で入手 した以下 の6
名の 履歴 を紹介す る。33)
A
氏:GM
工大卒,専攻 は IE,GM c O‑ ops t ude nt ( 1964)
,生産部 門の管理 職 をへ て,Ge ne r a lSupe r vi s o
r( 197
2) ,Ma nuf a c t ur i ngSupe r i nt e n‑
de nt ( 1978) ,Ge ne r a lSupe r i nt e nde nt ( 1985) ,Pl a ntMa na ge r ( 1987) B
氏:GM
工大卒,
IE,GM c O ‑ ops t ude nt ( 1972)
,生産部 門の管理職 を経験 して
,GM
上海powe r t r a i n
事業部長( 1995) ,GM
エ ンジ ン工場 のpr oduct i o nma nage r ( 2001 )
C
氏 :ウ イ ドソル大 卒,財 務 と会計,GM col l ege ‑graduat e ‑ i n‑t rai ni ng ( 1975) ,pr oduct i ons uper vi s or ( 1977)
,資材管理 部 門のgeneral s upe r vi s o r ( 1980)
, 同部門s upe r i nt e nde nt ( 1989)
,各地の資材管理 部門をわた り, イ タリア工場 のpl a ntma na ge r ( 1997)
D氏 :コ ンコデ ア大卒,商学,経営学
,GM c ol l ege 一gr adua t e ‑ i n‑t r a i ni ng ( 1980) ,pr oduc t i ons upe r vi s or ,s upe r i nt e nde nt
, シャシライ ンのa r e ama na ge r ,a s s i s t a ntpl a ntma nage r ( 1993)
E
氏 :マルケ大学 院,電気工学,GM c o l l e gegr a dua t e ‑ i n‑ t r a i ni ng ( 1986)
,e ngi nee r i ng
部 門勤務,pr o j e c te ngi nee r ( 1989) , adva nce dpr o j e c t e ngi ne e r ( 1993) ,pr o j e c tma na ge r ( 199 4)
F氏 :オ トノマ大卒,化学工学
,pr oduc t i o ns upe r vi s or ( 1991 ) , ma nuf a c ‑ t ur i nge ngi ne e r
をへ て,e ngi ne e r i ngma na ge r ( 1995)
※
CO ‑ op
プログラム とc o l l ege 一gr a dua t e ‑ i n‑ t r a i ni ng
の当時の実態 は調べ て いない。前者 はGM
工大独特 の企業 間を往復す る産学共同プログラムで, 後者 ははっ き りしないが, その他 大学 (前記 のWayl l eSt at eUl l i ve r s i t y
の事例 を参照) との共 同プログラムではないか と推測 している。現在,後33) 6
名とも現在は他社 (2
社)にそれぞれ転職 している。その会社の新任エグゼクティブの紹介記事がネットに公開されていたので利用させて頂いた。また匿名にす るため氏名や転職後の履歴は省いた。
者は
2
年,前者 は4
年課程である。C,D,F
の3
名は生産 ラインの職長 に採用 された。A,B
の2
名 はC O ‑ o p
プログラム専 門のGM
工大卒。最初 に職長 を経験 した可能性 は高いが この資 料では正確 に確認で きない。E
は最初か ら技術部門ス タッフに配置 された。C
,D,F
の3
名の事例でいえば,GM
において も職長職 についている期 間は3
年 以内で早い昇進が行 われた ように見える。8.
内部昇進型職長の衰退大卒職長の大量採用が
1 9 6 0
年代か ら本格化 された とはいえ,職長の圧倒的多 数はまだ時間給従業員上が りの内部昇進職長であった。GM
のア トランタ工場( GMADLa ke wo o dpl a nt )
の事例では,時間給従業員か らサ ラリー従業員 (職 長 と事務員) に移動 (昇進 も含む)す る人が1 9 6 0
年代 を通 じて毎年3 0 ‑5 0
名い た。時間給従業員数は2 5 0 0 ‑3 0 0 0
名( 1 9 6 8
年他工場 と統合 され5 3 0 0
名規模 になっ たが),職長は2 3 0
名,事務員1 5 0
名 ほ どであった。大 まかではあるが,毎年サ ラリー (‑月給)従業員の約1 0 %
が時間給従業員か ら上がって くるとい う計算 となる。34)
ァ リン トン工場( Ge ne r a lMo t o r sAr l i ng t o nAs s e mb l yPl a nt )
の 事例では1 9 7 7
年 に1 2
名が職長に昇進 したが,前後の文脈か ら同様の内部昇進は 毎年つづ け られたように見 える。以上,内部昇進 は1 9 7 0
年代 も引 き続 き行われ た こと,人種 による昇進差別が問題 になるのを見 ると,一般 に労働者は昇進 を ほ しがる傾向があったことが窺 われる。35)
しか し
1 9 7 0
年代後半か ら長 きにわた ってGM
社 は雇用規模 の縮小 を繰 り返 す ことになる。労働組合員である時間給労働者の レイオフは先任権 の逆順で行3 4 )Ro wev . Ge n e r a lMo t o r sCo r p . , 4 5 7F. 2 d3 4 8( 5 t hCi r . 1 9 7 2 ) , h t t p : / / www. a l t l a w o r g
雇用差別禁止法関連の判例資料で前記のホームページより検索できる。3 5 )Re e dv . Ge n e r a lMo t o r sCo r p o r a t i o n , 7 0 3F. 2 d1 7 0( 5 t hCi r . 1 9 8 3 ) , h t t p : / / Www
a l t l a w. o r g
う。縮小規模が大 きくなるにつれ時間給労働者だけでな く,職長な どサ ラリー 従業員 もレイオフ対象 となる。経営側 は職長をレイオフか ら守 るため,元の時 間給職務 に戻す降格
( de mo t i o nI nt oba r ga i ni nguni t )
を好 んだ。その際,敬 長在任期 間を先任権 に算入す るか どうか とい うのが労使の争点 となる。UAW
とGM
社 の全国協約( Se p. 2 0 0 3 , Pa r a gr a ph6 9 , Do c ume nt8 6 )
で明 らかなのは,1 9 7 7
年 までほ算入が許 されていた。つ ま り職長は職長昇進以降の勤務期 間とそ れ以前 の勤務期 間をあわせ た先任権 を もって以前や っていた職務の属す るグ ループ( s e ni o r i t ybyno n‑ i nt e r c ha nge a bl eo c c upa t i o na lgr o up:
ここが先任権 適用の単位 となる)に降 りることがで きた。しか し労働組合はそれに反対 し1 9 7 7
年の以降は算入が認め られな くなった。つ ま り職長の先任権 は昇進前の勤務期 間( t i mewo r ke di nba r ga i ni nguni t )
とな り,非組合員 として働 いた職長在 任期間は加算 されない。それでは,元の先任権単位 に戻 って も順位が低 くなっ て しまう。 レイオフされるか,新米労働者扱いの不利益 を被 ることになる。職長が高い先任権順位 を もって戻 って きた ら,そこの既存労働者の うち先任 権順位の低い一人が レイオフされなければな らない。労働組合が既存組合員の 利益 を優先せ ざるをえないのは 自然である
。1 9 7 7
年以降, この間題 は何度 も労 使争点 とな り二転三転 して きた。 ちなみ に職長の先任権 問題 はGM
社 だけの 問題ではな く,米国ではか な り一般 的な問題である。特 にGM
社 の ように人 員整理 を繰 り返 して きた ところで,一般労働者が雇用不安 を恐れて職長‑の昇 進 をため らう傾向になるのは十分推測で きよう。3 6)
1 9 7 7
年3
月,職長勤務期 間は先任権 に算入 しない。1 9 8 4
年3
月, この時点か らは算入す る。3 6 )J a c o b y, Sa n f o r dM
,,荒又 重雄 ほか訳 『雇用 官僚制』 北 海道大 学 国書刊 行 会1 9 8 9
年,p3 1 5 。Kl e i n, Fr e d e r i c k
C. " Te c hni c a lGr a d ua t e s : Wha tma ke st h e mb e c o me
f o r e me ni nt hes ho p : ' Ma7 1 a ge me 7 1 tRe L , l e w ,J une1 9 6 8 , p 2 3 , c o nd e ns e df r o m The
Wal lSt r e e t Jo ur 7 1 al ,vo l . CLXX, no . 1 2 3 . " Supe r vi s o rRe t a i nsBa r g a i ni ngUni t
S e n i o r i t y : ' Lab o rLawJo unl al ,S e p t e mb e r1 9
71 . v o l . 2 2i s s u e9 . p 6 0 7 .
2 0 0 0
年1
月,この時点か らは算入 しない。120
日を超 えない臨時職長は例外。2 0 0 3
年9
月, この時点か らは算入す る。UAW
とGMの19 8 4
年団体交渉では労使協力体制 にむけたい くつかの合意が なされた。職長の先任権算入 もその一つで,労働組合側の譲歩 した項 目であっ た。 3 7)
2 0 0 3
年の妥結で この間題 は一 区切 りついた ように見 える。前掲 の全 国協約( Doc ume nt86)では,「これ ( ‑s e ni or i t ys l i ppage)によ り一般労働者か ら
職長になろうとする人が出てこないのは問題であ り,そ うい う人に職長 をやっ て もらうのは労使相互の利益 になる」 とうたわれた。 また職長在任期間を先任 権 に算入する代 わ り,それによってほかの労働組合員に不利益 を生 じさせない ようにす る経営側の約束が取 り付 け られていた。つ ま り先任者が職長に上がれ ば,単位内に空席が発生す るので,先任権順位が低 くて レイオフ状態 になって いた一人を呼び戻す。逆 に職長か ら元の単位 に降ろされて きた場合,従来のよ うにその単位内の誰かが レイオフされることは しない。要す るに誰かが職長に 昇進すれば,その出身グループに損はさせ ない, とい うことで労働側 を納得 さ せたのである。ただ し前記の問題 はあ くまで一般労働者 として働いた ことのある内部昇進者 に限った話である。大卒職長の ようには じめか ら職長に採用 された人は対象外 で,その雇用 を守 るのは全面的に経営側の問題なのである。経営側 は大卒職長 の雇用 を優先的に守 る政策 をとった。つ ま り大幅な人員縮小 に際 し,内部昇進 職長はで きるだけ時間給労働者の仕事 に降格 させ,それ もで きない場合 は レイ オフしたが,大卒職長については,事前 にあちこちに配置転換 を行いつつ人員 縮小の対象にな らないよう心がけたのである。それに対 し降格 または レイオフ された職長達が反発 し,年齢 に基づ く差別だ と裁判所 に訴えるケース も出てい
3 7 )La b o rNo t e s( Se pt e mb e r2 4 ,1 9 8 4 ) , p1 4
た。内部昇進組 と学卒組の溝 もこれで一気 に深 まった と思われる。 ちなみに, 不利益 を被 った内部昇進組 は
40
歳以上が多 く会社 も人事基準 として学歴でな く 年齢 を持 ち出 していたことも興味深い。38)
もうーっ,この判例の事件が起 こっ たのが19 7 5
年で,前記の19 7 7
年労働協約の以前であることも注 目される。つ ま り雇用削減が本格化 したことに加 え,職長の降格が増 えて きたことが,労働組 合側の反発 を招いた と見 られる。 また経営側が職長の先任権承認 を求めて きたとい うことは,引 き続 き内部昇進の職長を必要 としていたことを意味す る。
以上,経営者か らも差別的に扱われ,労働組合か らも排斥 された ことで,内 部昇進職長の志気 は低下 し現場労働者の昇進意欲 も大 きく削がれた ことは十分 推察 され よう。道 よ く元の職務 に降格 で きた職長 も,そ こで過去の部下たちに 歓迎 される可能性 は少ない。
「バ カにされるだけな らまだ ましだ よ。数年前,俺のいた工場ではみな借 り を返 してやると露骨 に脅 したか らね。辞め られるな ら辞めた方が ましだよ。大 勢の職長が降格 をあ きらめて出ていったさ
。」3 9)
2 0 0 3
年協約で労使が この間題 に協力するようになったので, これか らどのよ うに変化するか見守 りたい ところである。ある経営 コンサル タン トは1