医療提供体 制 の現状 と改革(1)
近 藤 中 浜
功 隆
目 次
は じめ に
第1章 医 療 提 供 体 制 の 現 状 と課 題 第2章 医 療 従 事 者 の 資 質 の 向 上
(1)医 療 の 量 か ら質 へ の 転 換 (2)医 師 の イ ン タ ー ン制 度 の 復 活 (3)医 療 従 事 者 の 免 許 更 新 制 度 の 新 設 (4)正 看 護 婦 の 教 育 年 限 の 引 き上 げ (5)准 看 護 婦 制 度 の 廃 止
第3章 診 療 情 報 の 提 供
(1)イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ンセ ン ト (2)医 療 情 報 の 開 示(以 上 本 号) 第4章 医 療 過 誤(以 下 次 号)
(1)医 療 過 誤 の 事 例 (2)医 療 事 故 の 調 査 (3)医 療 過 誤 訴 訟 の 増 加 (4)医 療 事 故 防 止 の 取 り組 み 第5章 診 療 報 酬 の 不 正 請 求
(1)診 療 報 酬 の 請 求 と審 査 (2)不 正 請 求 の 事 例
(3)不 正 請 求 に 対 す る 取 り組 み (4)不 正 青求 の 防 止
第6章 医 療 制 度 改 革 の ア ンケ ー ト調 査 (1)調 査 の 方 法 と結 果
(2)調 査 結 果 の 分 析 お わ り に
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商 学 討 究 第52巻 第2・3号
は じ め に
昭和36年 の 国 民 健 康 保 険 法 の 改 正 に よ っ て,国 民 皆 保 険 が 実 現 した 。 そ の後 も,社 会 保 障 制 度 を整 備 ・拡 充 す る た め に,お も に 国庫 負 担 の 引 き上 げ に よ っ て保 険 給 付 の拡 大 や 自 己負 担 の 軽 減 が 行 わ れ た 。 そ れ に よっ て す べ て の 国 民 が 比 較 的 安 い 自 己負 担 で,い つ で も,ど こで で も平 等 に受 診 す る こ とが で き,医 療 の恩 恵 を受 け られ る よ うに な っ た の で あ る。
しか し,1980年 代 に 入 り,医 療 政 策 は 総 じて 医療 費 抑 制 政 策 に転 換 した 。 昭 和57(1982)年 に老 人 保 健 制 度 が 創 設 され,高 齢 者 医 療 に お い て 自 己負 担 が 導 入 さ れ た 。 昭 和59年 に は,被 用 者 保 険 に お い て被 保 険 者 本 人 に 自己 負 担 が 導 入 され た。 また,1980年 代 以 降,診 療 報 酬 の 引 き上 げ抑 制 と薬 価 基 準 の引 き下 げ が 定 期 的 に 行 わ れ,高 齢 者 医療 にお け る 自己 負 担 の 引 き上 げ や 医 療 費 の 定 額 払 い 制 の 導 入 ・拡 大 も行 わ れ た 。
1990年 代 に 入 る と,そ れ ま で の 「部 分 的 」 改 革 に 対 し て,医 療 保 険 制 度 と医 療 提 供 体 制 の 両 面 に わ た る 「抜 本 的 」 改 革 の 必 要 性 が 指 摘 さ れ,改 革 内容 が 検 討 され た。 厚 生 省 は平 成9年8月 に,① 新 しい 診 療 報 酬 体 系 の構 築,② 薬 価 基 準 制 度 の改 革,③ 医 療 提 供 体 制 の 改 革,④ 新 しい 医療 保 険 制 度 ・高 齢 者 医療 制 度 の 創 設 を 柱 とす る 「21世紀 の 医 療 保 険 制 度 改 革(厚 生 省 案)一 医療 保 険 及 び 医療 提 供 体 制 の抜 本 的 改 革 の 方 向 一 」 を ま と め た 。 続 い て,与 党 医 療 保 険 制 度 改 革 協 議 会 は 「21世紀 の 国 民 医療 一 良 質 な 医 療 と皆 保 険 制 度 確 保 へ の 指 針 一 」 を ま とめ た。 与 党 協 案 は厚 生 省 案 を受 け て ま と め られ て お り,厚 生 省 案 と 大 差 な い もの で あ っ た。 ま た,日 本 医 師 会 や 日本 経 営 者 団 体 連 盟,日 本 労 働 組 合 総 連 合 会 な ど も,独 自の 改 革 案 をほ ぼ 同 じ時期 に発 表 した 。
そ して,医 療 保 険 制 度 の抜 本 的改 革 の 第 一 歩 と して,平 成9年9月 に 健 康 保 険 法 等 の 改 正 が 施 行 さ れ,① 被 用 者 保 険 にお け る 被 用 者 本 人 の 自 己負 担 の 引 き 上 げ,② 高 齢 者 医 療 に お け る 自 己負 担 の 引 き上 げ,③ 外 来 薬 剤 にお け る 新 た な 自 己負 担 の 導 入,④ 政 府 管 掌 健 康 保 険 の 保 険 料 率 の 引 き上 げ,が 行 わ れ た 。 こ う した改 革 内容 は 大 幅 な負 担 増 を 国民 に 求 め る もの で あ っ た 。
医療 提 供体 制 の現状 と改 革(1) ヱ29 医療 保 険 制 度 の 抜 本 的改 革 は平 成12年 度 に 介 護 保 険 と同 時 に実 施 す る予 定 で あ っ た 。 しか し,同 年 度 に 実 施 さ れ た 改 革 内容 は高 齢 者 医療 にお け る 定 率 負 担 の導 入 を中 心 とす る 「改 革 な き負 担 増 」 に終 り,抜 本 的 改 革 は平 成14年 度 に先 送 り され た の で あ る。
厚 生 労 働 省 は,当 面 す る保 険 財 政 の破 局 を 防 止 す る と と も に,中 長 期 的 に持 続 可 能 な 制 度 を確 立 す る た め に,平 成14年 度 の 医 療 制 度 改 革 案 を平 成13年9月 下 旬 に ま と め た 。 医 療 保 険 制 度 の 改 革 は 給 付 率 の 一 元 化(被 用 者 保 険 に お け る
自 己負 担 の 引 き上 げ)や 保 険 料 の 見 直 し(総 報 酬 制 の 導 入 と政 府 管 掌 健 康 保 険 の 保 険料 率 の 引 き上 げ)な ど,高 齢 者 医 療 制 度 の 改 革 は対 象 年 齢 の段 階 的 引 き 上 げ や 自己 負 担 の 引 き上 げ で あ り,医 療 費 の 負 担 を国 民 に い っ そ う求 め る も の
と な っ て い る。
わが 国 は急 速 な 少 子 高 齢 社 会 を迎 え,年 々増 加 す る老 人 医 療 費 は 医療 保 険 財 政 に大 きな 影 響 を 及 ぼ し,今 後 ま す ます 医療 保 険 財 政 の 悪 化 が 懸 念 され て い る 。
「医 療 保 険 制 度(医 療 保 険 財 政)」 を安 定 化 させ,国 民 の 期 待 す る 「良 質 な医 療 」 を確 保 す る た め に,医 療 保 険 制 度 と医療 提 供 体 制 の 両 面 に わ た る抜 本 的 改 革 は 実 施 さ れ な け れ ば な ら な い重 要 な 国民 的 課 題 で あ る。
本 稿 で は,医 療 保 険 制 度 と医 療 提 供 体 制 の う ち,医 療 提 供 体 制 を取 り上 げ る。
著 者(近 藤)は 約40年 間,自 治体 病 院 に 医 療 技 術 職 員(臨 床 検 査 技 師)と し て 勤 務 し,定 年 退 職 後 も今 日 まで 同 一 職 種 に 従 事 して き た。 本 稿 は,著 者 の 医 療 現 場 に お け る経 験 を ふ ま え て現 在 の 医療 提 供 体 制 の 問 題 点 を 指 摘 し,改 革 案 を 提 示 す る こ と を 目的 とす る。
第1章 医療提供体制の現状と課題
医 療(医 療 提 供 体 制)の 現 状(問 題 点)と して,「3時 間待 ち3分 問診 療 」,「社 会 的 入 院」,「不 十 分 な イ ン フ ォー ム ド ・コ ン セ ン ト(医 師 の 説 明 と患 者 の 同 意)」,「医 療 過 誤 の 多 発 」,「過 剰 診 療 」,「診 療 報 酬 の 不 正 請 求」 な どが 指 摘 さ れ て い る 。
商 学 討 究 第52巻 第2・3号
先 進 国 の な か で,わ が 国 の 「平 均 寿 命 の 長 さ」,「乳 幼 児 死 亡 率 の低 さ」,「医 療 へ の ア ク セ ス の 良 さ」 は 高 く評 価 され て い る が,「 医 療 の 質 」 は比 較 的低 い とい わ れ て い る。 と くに,近 年 多 発 して い る 医療 過 誤(医 療 事 故)に よ って, 医 療 に対 す る 国民 の信 頼 は揺 らい で い る 。
医 療 制 度 改 革 案 の な か で 取 り上 げ られ て い る 「医療 の 質 の 向 上 」 を 図 る さ い の 基 底 と な る の は 「医 師 の 意 識 改 革 」 で あ る。 近 年,「 医 師 の モ ラ ル 」 の低 下 が 目立 つ よ う に な っ て い る。 した が っ て,良 質 な 医療 を提 供 す る体 制 を確 立 す る さい に もっ と も重 要 な こ とは,医 療 従 事 者 の な か で 中 心 的役 割 を果 た して い る 医 師 の 倫 理 を早 急 に確 立 す る こ とで あ る 。 つ ま り,医 師 一 人 一 人 が 「医(医 師)の 倫 理 」 に立 脚 し,医 師 と患 者 の信 頼 関 係 を構 築 し,患 者 本 位 の 医療 サ ー ビス を提 供 す る こ と で あ る。 また,医 科 大 学 や 日本 医 師 会,厚 生 労 働 省 も こ う した 課 題 に積 極 的 に取 り組 ん で い か な け れ ば な らな い1)。
これ か らの 医 療 に必 要 な こ とは,① 医療 情 報 の 提 供,② 医 師 ・医 療 機 関 の 評 価,③ 患 者 の 医 師 ・医療 機 関 の選 択,④ 医 師 ・医 療 機 関 の 競 争 で あ り,こ れ ら を通 じた ⑤ 良 質 な 医療 の 提 供 で あ る2)。 これ ま で の 医 療 で は,患 者 は 治 療 方 針 1)日 本 医 師 会 の 「会 員 の 倫 理 向 上 に 関 す る 検 討 委 員 会 」 は,『 医 の 倫 理 綱 領 ・医 の
倫 理 綱 領 注 釈 』 を平 成12年2月 に 作 成 した 。 課 題 は,本 文 で 指 摘 した よ う に,そ れ を医 療 現 場 で 早 急 に 確 立 す る こ と で あ る 。
ま た 川 渕 孝 一 教 授 は,わ が 国 の 医 学 教 育 と若 い 医 師 に つ い て 次 の よ う に 述 べ ら れ て い る 。 『若 い 医 師 の 人 事 権 を 一 手 に握 っ て い る 「医 科 大 学 改 革 」 を 同 時 平 行 で 進 め る 必 要 が あ る 。 「一 県 一 医 科 大 学 」 の 余 波 を受 け て 急 増 し た47歳 未 満 の 医 師 の ほ と ん ど は 大 学 病 院 か そ の 関 連 病 院 に 勤 務 して い る か らで あ る。 問 題 は こ う した 医 師 が ど ん な 教 育 を う け て い る か で あ る。 一 般 に,医 学 部 は 偏 差 値 の 高 い 学 生 が 入 学 す る と言 わ れ る が,ど の 大 学 も臓 器 別 の 講 座 制 を敷 い て い る た め,6年 間 の 教 育 を 受 け て,医 師 免 許 を得 た 段 階 に な る と,社 会 性 が 欠 如 した 人 格 が で き 上 が っ て い る こ とが 多 い 。 そ し て,医 師 の 多 く は 国 家 試 験 に 受 か る と 自動 的 に 保 険 医 登 録 す る が 「療 養 担 当 規 則 」と い う 言 葉 す ら知 ら ず に保 健 医 療 を行 っ て い る 。 つ ま り,末 期 医 療 の あ り方 や イ ン フ ォー ム ド コ ン セ ン トの 仕 方 を 知 ら な い 半 人 前 の 医 師 が,一 人 前 の 医 師 と 同 一 の 診 療 報 酬 ・同 じ点 数 で 保 険 請 求 を して い る の で あ る。』 川 渕 孝 一 『医 療 保 険 改 革 と 日本 の 選 択 』 薬 事 日報 社,平 成10年,224ペ ー ジ 。
2)広 井 良 典 教 授 は,「 途 上 国 型 医 療 構 造 か ら成 熟 型 医 療 構 造 へ 」の 転 換 を 図 る に は, そ の イ ン セ ン テ ィ ブ を伴 う具 体 的 な 「制 度 」 の 改 革 を行 っ て い く こ とが 重 要 で あ
り,そ の た め の キ ー コ ン セ プ トと な る要 素 と し て,「医 療 の 質 」,「選 択 」,「情 報(開
医療 提供 体 制の 現状 と改 革(1) 131 や 治 療 内 容 を 医 師 に任 せ,医 師 もそ れ ら を患 者 に明 示 して い なか っ た 。 これ か
らの 医 療 に お い て は,医 師 は 診 療 情 報 や 医 師 ・医 療 機 関 の 医 療 情 報 を 患 者 に で きる か ぎ り提 供 し,患 者 は こ う した情 報 に基 づ い て 質 の 高 い 医 師 ・医療 機 関 を 選 択 で き る よ うに し な け れ ば な らな い 。
厚 生 省 案 と与 党 協 案 で は,医 療 提 供 体 制 の改 革 と して,① 医 療 機 関 の 機 能 分 担,② 入 院 医 療 の 適 正 化,③ 医 療 従 事 者 の 資 質 の 向 上,④ 診 療 情 報 の積 極 的 提 供,な どが あ げ られ て い る 。 そ れ に対 し て,筆 者 は本 稿 で,① 医 療 従 事 者 の 資 質 の 向 上,② 診 療 情 報 の積 極 的 提 供,③ 医 療 過 誤 の 防 止,④ 診 療 報 酬 の 不 正 請 求 の 防止,を 取 り上 げ た い 。 以 下 で,こ れ らの 現 状(問 題 点)を 指 摘 し,改 革 案 を提 示 す る。
第2章 医療 従 事 者 の 資 質 の 向 上
(1)医 療 の 量 か ら質 へ の 転 換
わが 国 の 医 療 に お け る大 き な問 題 は 「医 療 の 質 」 で あ る 。 国 民 皆 保 険 が 実 現 し,す べ て の 国 民 が 医 療 を 平 等 に受 け られ る よ う に な っ て 以 後 も,わ が 国 の 医 療 政 策 は 「質 」 よ り も 「量 」 を 重 視 して きた 。 「3時 間 待 ち3分 問 診 療 」 と い う言 葉 に 端 的 に示 され る よ う に,医 師 は 患 者 一 人 一 人 を 十 分 に診 断 し治 療 す る 時 間 的 余 裕 が な か った 。
しか し,こ の よ う な わが 国 の 医 療 の状 況 は変 わ りつ つ あ る 。 こ の こ とは,医 療 に対 す る国 民 の 関 心 が 高 ま り,国 民 が 医 療 の 「質 」 を選 択 す る新 しい 時 代 に 入 っ て きた こ とを 意 味 して い る。 そ れ は,筆 者 が 実 施 した ア ン ケ ー ト調 査 にお け る 「医療 の 質 」 に つ い て の 質 問 に対 して,約75%が 「医療 費 が 高 くな っ て も
「量 」 か ら 「質」 へ の 医 療 政 策 の 転 換 が 必 要 で あ る」 と回 答 して い る こ と に も 示 さ れ て い る3)。 患 者 を 中 心 と し た 医 療,「 質 」 を 重 視 す る 医療 を期 待 す る と
示)」,「 競 争 」 を あ げ ら れ て い る 。 広 井 良 典 『医 療 保 険 改 革 の 構 想 』 日 本 経 済 新 聞 社,平 成9年,33ペ ー ジ,39〜41ペ ー ジ 。
3)ア ンケ ー ト調 査 の 内 容 と 回 答 に つ い て は 別 稿 で 取 り上 げ る 。
商 学 討 究 第52巻 第2・3号 い う医 療 に 対 す る 意 識 の 変 化 が 国 民 に 生 じて い る の で あ る 。
医 療 従 事 者 に は,医 師 ・歯 科 医 師,看 護 婦 ・士,薬 剤 師,放 射 線 技 師,臨 床 検 査 技 師 な どが い る 。 そ の な か で,医 療 サ ー ビス を提 供 す る役 割 をお も に担 っ て い る の は 「医 師 ・歯 科 医 師」 と 「看 護 婦 ・士 」 で あ り,と くに 「医 師 ・歯 科 医 師 」 が 中心 的 役 割 を 果 た して い る。
そ こで,医 療 の 質 を 高 め,質 の 高 い 医療 を安 定 的 に 提 供 す る た め に は,医 師 ・ 歯 科 医 師 を 中 心 と す る 医 療 従 事 者 の 資 質 の 向 上 を 図 る こ とが 重 要 で あ る。 医
師 ・歯 科 医 師 を は じめ す べ て の 医 療 従 事 者 は資 質 の 向 上 に努 め な けれ ば な ら な い 。 ま た,医 療 従 事 者 の 資 質 の 向 上 を 図 る た め の制 度 改 革 を行 わ な け れ ば な ら な い 。 本 稿 で は,医 療 従 事 者 の 資 質 の 向上 を図 る た め の 制 度 改 革 と して,① 現 行 の 医 師 の 臨床 研 修 制 度 の 廃 止 ・イ ン タ ー ン制 度 の復 活,② 医療 従 事 者 の免 許 更 新 制 度 の 新 設,③ 正 看 護 婦 に対 す る教 育 年 限 の 引 き上 げ,④ 准 看 護 婦 制 度 の 廃 止,を 提 言 す る。
(2)医 師 の イ ン タ ー ン制 度 の 復 活
わ が 国 の イ ン ター ン制 度(実 地 修 練 制 度)は,欧 米 諸 国 を模 範 に し,水 準 の 高 い 医 師 を養 成 す る と い う観 点 か ら戦 後 の 昭和21年 に新 設 され た 。 しか し,学 生 で も 医 師 で も な い イ ン ター ンの 行 う 医 療 行 為 の 法 的 位 置 づ け の 問 題 や イ ン
タ ー ンの 経 済 的 問 題,実 地 修 練 病 院 の 指 導 体 制 の 不 備 な どの 理 由 に よ っ て 昭和 43年 に 廃 止 され た4)。 現 在 の 臨 床 研 修 制 度 は,同 年 に イ ン ター ン制 度 に代 わ っ て 導 入 され た もの で あ る 。
イ ン ター ン制 度 で は,医 学 部 卒 業 後,診 療 と公 衆 衛 生 に 関 す る実 地 修 練(臨 床 実 習)を1年 以 上 行 う こ とが 義 務 づ け られ,医 師 国家 試 験 の 受 験 資 格 の 要 件
と さ れ た 。 そ して イ ン タ ー ン終 了 後,医 師 国 家 試 験 に合 格 し て初 め て 正 規 の 医 師 と して 医 療 行 為 を行 う こ とが で きた 。 つ ま り,イ ン ター ン期 間 中 は 医 師 免 許
4)医 道審 議会 医師 分科 会 医師 臨床研 修検 討 部会(第1回)資 料 「臨床研 修 の概要 に つ い て」厚 生労 働省 ホ ームペ ー ジ ・審 議 会議事 録。
医療 提供 体制 の現 状 と改 革(1) 133 を有 しな い た め に,患 者 を診 療 す る こ と は で き なか っ た の で あ る。
そ れ に 対 して,現 在 の 臨床 研 修 制 度 で は,医 学 部 卒 業 後 す ぐに 医 師 国 家 試 験 を受 験 で き,そ れ に 合 格 す る と医 師免 許 を与 え られ る。 そ して,免 許取 得 後2 年 以 上,大 学 付 属 病 院 ま た は厚 生 労 働 大 臣 の 指 定 す る病 院 で 臨 床 研 修 す る。 し か し,そ れ は 「努 力 規 定 」 で あ り,「 義 務 規 定」 で は な い。 た だ現 在 で は,医 師 の 大 部 分 は免 許 取 得 後 に臨 床 研 修 を受 け て い る5)。 しか し,臨 床 研 修 中 で も
(ま た は 臨 床 研 修 を受 け な くて も),医 師 免 許 を 有 す る 正 規 の 医 師 と して 患 者 を診 療 す る こ とが で き る の で あ る。
患 者 に は外 見 上,医 師 が 臨床 研 修 中(研 修 医)で あ る か ど うか わ か らな い 。 そ こで,当 面 解 決 し な け れ ば な ら な い 課 題 は,① 研 修 す る 医療 機 関 の掲 示 板 な ど に 「研 修 医 」の 氏 名 を 公 表 す る こ と,② 白衣 に付 け る ネ ー ム ・プ レー トに 「研 修 医 」 と表 示 す る こ と な どに よ っ て,医 師 が 臨床 研 修 中(研 修 医)で あ る か ど
うか を患 者 が 識 別 で き る よ う にす る こ とで あ る 。
良 質 な 医 療 を効 率 的 に提 供 す る体 制 を確 立 す る た め に,医 療 法 等 の 一 部 が 平 成12年11月 に改 正 さ れ た(第4次 医 療 法 改 正)。 そ の なか で,医 療 従 事 者 の 資 質 の 向上 を図 る た め に,医 師 は免 許取 得 後2年 以 上,一 定 の研 修 体 制 を 有 す る 大 学 付 属 病 院 ま た は 臨 床 研 修 病 院 で 臨 床 研 修 を行 う こ とが 必 修 化 さ れ た 。 つ ま
り,現 行 の 臨 床 研 修 の 「努 力 規 定 」 が 「義 務 規 定 」 に改 正 され た。
しか し,臨 床 研 修 制 度 の 改 革 に は 問 題 点 もあ る。 第1に,臨 床 研 修 中 で も研 修 医 は 医療 行 為 の 内 容 ・種 類 を制 限 され な い こ とで あ る。 つ ま り,臨 床 研 修 中 で も正 規 の 医 師 と して 患 者 を診 察 す る こ とが で き る点 は現 行 制 度 と変 わ ら な い こ とで あ る。 第2に,医 師 に対 す る 臨 床 研 修 の 必 修 化 は平 成16年4月 か ら実 施 され る こ と で あ る 。 つ ま り,臨 床 研 修 の 必 修 化 が 法 改 正 か ら4年 も後 に 施 行 さ れ る こ とで あ る 。 第3に,臨 床 研 修 の 必 修 化 は,そ れ が 実 施 され た後 に 免 許 を 取 得 した 医 師 に 適 用 さ れ る こ と で あ る。 つ ま り,臨 床 研 修 の 必 修 化 が 実 施 さ れ
5)平 成11年 度 に おけ る研 修 実施 率(研 修 実 施者 数 ÷研 修対 象者 数)は87.0%で あ る。
医道 審 議会 医 師分科 会 医師 臨床研 修検 討部 会(第1回)資 料 「臨床研 修 の概 要 に つ いて 」厚 生労 働省 ホ ームペ ー ジ ・審 議 会議事 録。
商 学 討 究 第52巻 第2・3号
る 以 前 に免 許 を取 得 し た 医 師 に は適 用 され な い こ とで あ る6)。 こ う した 改 革 内 容 で は,現 在 生 じて い る研 修 医 に よ る医 療 過 誤 を早 急 に 防 止 す る こ とは で きな
い で あ ろ う。
研 修 医 は,正 規 の 医 師 と して の プ ラ イ ドは もち なが ら,経 験 が 不 十 分 な ま ま 医 療 行 為 を行 っ て い る。 研 修 医 に よ る 「医 療 過 誤 」 の事 例 につ い て は 別 稿 で 叙 述 す る が,そ れ が 生 じる の は む しろ 当 然 で あ ろ う。 尊 い生 命 を扱 う 医 師 に は, 豊 富 な 経 験 と技 術 が 必 要 で あ る。
した が っ て,医 学 部 卒 業 後 す ぐに 医 師 免 許 を取 得 して 医療 行 為 を行 う こ とが で きる現 行 の 「臨 床 研 修 制 度 」 を廃 止 し,医 学 部 卒 業 後 に 臨 床 研 修 を 受 け,そ の 後 に 医 師 免 許 を取 得 して初 め て 医療 行 為 を行 う こ とが で き る 「イ ン ター ン制 度 」 に戻 す べ きで あ る。 そ れ に よ っ て,研 修 医 に よ る医 療 過 誤 はか な り防 止 で
き るの で は ない か と思 われ る 。
なお,上 記 の よ う に戦 後 の イ ン タ ー ン制 度 に は い くつ か の 間 題 が あ っ た 。 し た が っ て イ ン タ ー ン制 度 に戻 した と きに,ふ た た び こ う した 問 題 が 生 じな い よ う に,イ ン タ ー ン生 に 対 す る経 済 的 保 障 や 受 入 医療 機 関 の 人 的 ・物 的整 備(と くに イ ン ター ン生 に 対 す る 医 師 の 指 導 体 制 の 確 立)に よ っ て,イ ン タ ー ン生 が 臨 床 研 修 に 十 分 専 念 で き る環 境 を整 備 す る必 要 が あ る7)。
6)歯 科 医 師 の 場 合 は1年 以 上 の 臨 床 研 修 が 必 修 化 され,平 成18年4月 か ら実 施 さ れ る こ と に な っ た 。
7)社 団 法 人 全 国 自治 体 病 院 協 議 会 会 長 は,当 協 議 会 総 会 に お い て,先 に本 文 で 述 べ た 医 師 の 臨 床 研 修 制 度 の 必 須 化 につ い て 次 の よ う に 表 明 さ れ て い る 。
「現 在 ,研 修指 定病 院 は全 国 に400病 院 あ り,自 治体病 院 はそ の うちの152病 院 34.5%を 占 め て い る 。 た だ,全 体 か ら み る と卒 業 生 の80%が 出 身 大 学 で研 修 し,
ほ と ん ど が ス トレ ー ト方 式 で 行 わ れ て い る。 安 い 給 料 で,研 修 ど こ ろ か 労 働 力 と して 働 か され,救 急 外 来 で 指 導 医 な しの 当 直 を続 け て 過 労 死 した 事 例 や,大 学 で の 医 療 ミス が 研 修 医 に 多 い と い う報 道 が さ れ て い るが,こ れ も十 分 に う な ず け る もの で あ る 。 彼 ら が こ う した 悪 条 件 の 下 で もそ れ に耐 え て い る の は,そ の 背 後 に 明 治 以 来 の 医 局 講 座 制 度 が あ っ て,大 学 の 医 局 に 入 れ ば そ の 後 の 人 生 が 保 障 さ れ る,地 方 病 院 勤 務 医 の 人 事 権 が す べ て 教 授 に 託 され て い る か らで あ る 。 医 局 員 は も っ ぱ ら細 分 化 し た 専 門 医 の 道 を歩 む が,今 や 大 学 は研 究 者 を 育 て る 場 と して は よい と して も,地 域 医療 や 全 人 的 医 療 を 教 え る場 で は な く な っ て い る。 卒 後,大 多 数 の 医 師 は将 来 地 域 で の 医 療 を担 う の で,そ れ に適 し た 人 材 を育 て る の は 地 域
医療 提供 体 制の現 状 と改 革(1) 135 (3)医 療 従 事 者 の 免 許 更 新 制 度 の 新 設
ア メ リ カで は,医 師 の大 学 卒 業 後 の 持 続 医学 教 育 が 確 立 され,医 師 は 国 家 試 験 に合 格 して も3年 ご と に 医 師 更 新 を 更 新 しな け れ ば な らな い こ と に な っ て い る。 か つ て 医 学 生 時 代 に勉 強 した 以 上 に勉 強 しな け れ ば,免 許 の 更 新 は で き な
いo
た とえ ば,大 都 会 に い る 医 師 に対 して は,大 学 病 院 や ア メ リ カ 医 師 会 が 承 認 した 総 合 病 院 で の研 修 が 行 わ れ る。 そ れ は各 専 門 科 目 の 臨床 例 を学 ぶ だ け で な く,薬 剤,放 射 線 治療,臨 床 病 理,生 命 倫 理 に至 る まで,び っ し り と最 新 の 医 学 を学 び 直 さ な け れ ば な らな い 。 僻 地 に い る 医 師 に 対 して は,大 学 の客 員 教 授 が わ ざ わ ざ僻 地 に 出 向 き,各 専 門 科 目 を は じめ と した 大 都 市 と同 じよ うな カ リ キ ュ ラ ム の研 修 が 行 わ れ る 。 また,医 学 教 育 テ レ ビ に よ る カ ン フ ェ ラ ンス が 放 送 大 学 の ス ク ー リ ン グ の よ う に行 わ れ,レ ポ ー トの 提 出 を は じめ と した 数 々 の 試 験 が 待 っ て い る。 さ ら に,医 師専 門 の テ レ ビチ ャ ンネ ル(タ イ トル は ラ イ フ)
で は,週1回,専 門 医 に よ る テ レ ビ討 論 な どが 積 極 的 に行 わ れ て い る 。 そ の他,全 国 全 州 に わ た っ て 専 門科 目の 学 会 が 開 催 さ れ る の で 当然 そ れ に も 出 席 しな け れ ば な らず,討 論 会 も頻 繁 に行 わ れ る 。 さ らに,通 信 教 育 講 座 や 通 信 医 学 テ ス トが 準 備 され て い る。 もち ろ ん医 学 雑 誌 や メ デ ィ カ ル ・ニ ュ ー ス も 送 られ て く る。
の病 院 で なけれ ばで きない。地 域 の 自治体病 院 にそ の責務 が あ る と考 え る。 そ う す れば,病 院は大 学へ の依 存体 質 か ら脱 却 で き,自 治体病 院 に とって必 要 な人材 を確 保す るこ とに な り,へ き地 医療 に生 き甲斐 を もつ医 師 も育 つ こ と となる。 日 本 の医療 改革 は,こ こか ら始 まる と言 って も過 言で は ない と考 えてい る。新 しい 研 修 制度 の発足 にあ たっ て まず 大切 なこ とは,第1は 研修 生 を出 身大学 に関係 な く全 国規 模 で各地 の指 定病 院 に配 置す る こ と,第2は 完全 ローテ ー ト方 式 に して 2年 間 の うちあ る期 間は救 急 医療 は もちろ ん,へ き地 医療,介 護 も体 験 させ て地 域 医 療 を行 う医 師 と して最 低 限度必 要 な医学 知 識 と技 術 の標準 化 とそ れに対 す る 客観 的評価 を行 う こ と,第3は 研 修 医 の待遇 につい て,医 療費 か ら出 して いた こ れ まで のや り方 を全廃 して研 修 医並 びに指導 医 の給料 を診 療報 酬 とは別 途 に国 か ら直接 支 給す べ きで あ る。 この3点 が厳 守 され な ければ,か つ て我 々が 経験 し廃 止 に追 い込 まれ た イ ンター ン制 とま った く同 じこ とに な りか ねな い。」 「21世紀型 自治 体病 院 の構築 」社 団法 人全 国 自治体 病 院協 議 会 ホー ムペー ジ ・会長所 信 表明 。
ア メ リ カで は,ア メ リ カ 医 師 会 が 中心 に な っ て ア メ リ カ全 土 に い る 医 師 に対 し て最 先 端 の 医 学 を 学 ぶ チ ャ ンス を与 え て い る た め に,こ う した チ ャ ンス を生 か した い と思 っ て い る医 師 が圧 倒 的 に 多 く,開 業 医 の 医 学 水 準 は 非 常 に 高 くな っ て い る8)。
わ が 国 で も,医 師 ・歯 科 医 師,看 護 婦,薬 剤 師,放 射 線 技 師,臨 床 検 査 技 師 な ど,医 療 行 為 に 関 わ るす べ て の 免 許 資格 者,と くに 患 者 の生 命 を直 接 的 に扱 う医 師 に対 して,一 定 期 間 ご とに 免 許 の 更 新 を行 い,そ の さ い に 更 新 講 習 を実 施 し て,新 しい 医 学 知 識 や 医療 技 術 の修 得 を義 務 づ け る 「免 許 更 新 制 度 」 を導 入 す べ きで あ る。 そ れ は,日 進 月 歩 発 展 す る医 学 知 識 や 医 療 技 術 に追 随 し,良
質 な 医 療 を提 供 す る た め に も必 要 で あ る。
(4)正 看 護 婦 の 教 育 年 限 の 引 き上 げ
「医 療 過 誤 」 の 多 くは 看 養 婦 ・士 に よ る もの で あ り,加 重 な看 護 業 務 に よ る 不 注 意 や 不 十 分 な看 護 教 育 が 原 因 で 発 生 す る事 例 が 比 較 的 多 い よ う に 思 わ れ る 。 現 行 の 看 護 婦 養 成 教 育 と看 護 婦 制 度 を 改 革 し,看 護 婦 に よ る 医 療 過 誤 を防 止 す る必 要 が あ る。
厚 生 省 は こ れ まで,看 護 婦 不 足 を解 消 す る た あ に,た ん に看 護 婦 の 数 合 わ せ に重 点 を置 い た 医 療 政 策 を実 施 して き た。 これ か らの新 しい 医療 政 策 は,看 護 婦 の 「数 」 よ りも 「質」 に重 点 を置 か な け れ ば な らな い 。
現 在,「 保 健 婦 助 産 婦 看 護 婦 法(保 助 看 法)」 に よっ て,看 護 婦 国 家 試 験 の 受 験 資 格 を取 得 す る た め の 看 護 教 育 課 程 と して 「3年 課 程 」 と 「2年 課 程 」 が 設 置 され て い る(図1を 参 照)。 「3年 課 程 」 で は,高 校(普 通 科 ・商 業 科 等,衛 生 看 護 科 以 外 の 高 校)卒 業 後,看 護 婦 養 成 所 また は看 護 短 期 大 学 また は看 護 大 学(看 護 大 学 は4年)を 卒 業 し,看 護 婦 国 家 試 験 を受 験 し て看 護 婦 免 許(厚 生 労 働 大 臣)を 取 得 す る(図2を 参 照)。
「2年 課 程 」 は,准 看 護 婦 の 資 格 を有 して い る場 合 の 看 護 教 育 課 程 で あ る 。
8)中 野 次 郎 『誤 診 列 島 』 集 英 社,平 成13年,98〜99ペ ー ジ。
医療提 供体 制 の現状 と改 革(1) 137
看
護
婦
・
士 3 年 課 程
【1lli1i li:ilil
高 校
看 護 大 学 看 護 短 大
*看 護婦 養成 所
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年 課 程
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*看 護 婦養 成所 准看 護i婦養成 所
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業務経験3年
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*高 校衛 生看 護科
看 護短 大 看 護高校 専 攻科
*看 護婦 養成所 lilll
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定 時 制 高 校
(連携 教育)
看 護 短 大
看 護 高校専 攻科
*看 護 婦 養 成 所 准看護婦養成所
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護婦
・
士
;
准看護婦養成所 ll:i
*高 校衛 生看 護科
illl
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年齢15 16 17 18 19
〔注 〕*印 は 定 時 制 課 程 あ り,修 業 年 限1年 延 長 。
20 21 22
〔出 典 〕佐 々 木 栄 子 「看 護 婦(士)の 要 件 と 国 家 試 験 」『保 健 の 科 学 』第42巻,第9号,
平 成12年,708ペ ー ジ 。
図1看 護 教 育系統
看 護婦 学校 養成 所 3年(定 時 制4年)
看護 婦学 校養 成所 2年(定 時制3年)
准看護婦養成所 高校衛生看護科 2年3年
(入学 資格)
①3年 以上 の業務 経験 を 有す る准 看護婦 ・士
② 高校 を卒 業 してい る准 看護 婦 ・士
〔注 〕 下 記 の 文 献 に は 「助 産 婦 」 と 「保 健 婦 ・士 」 に つ い て も記 述 さ れ て い るが, こ こ で は 省 略 し て い る 。
〔出 典 〕 北 海 道 看 護 教 育 施 設 協 議 会 『平 成13年 度 北 海 道 内 高 等 看 護 学 校(学 院)案 内 』 平 成13年,3ペ ー ジ。
図2看 護教育 制 度
この課程 には以下 の2つ が ある。① 准看護婦 免許 の取得 後,3年 以上 の業務 経 験 を有 した後,看 護婦養 成所 を卒業 し,看 護婦 国家試 験 を受験 して看護婦 免許 (厚生労働大 臣)を 取得 す る。② 准看護婦免 許の取得 後,看 護婦 養成所 また は 看 護高校専攻 科 または看 護短期大 学 を卒業 し,看 護婦 国家試験 を受験 して看 護 婦 免許(厚 生 労働大 臣)を 取得 す る9)。
医療 提供 体 制 の現状 と改 革(1) 139 現 在 の 看 護 婦 養 成 教 育 ・看 護 婦 制 度 に は 問 題 点 が2つ あ る。 第1に,上 記 の よ うに 看 護 教 育 課 程 が 多 岐 に わ た っ て い る こ とで あ る 。 と くに,中 学 校 卒 業 で も看 護婦 国 家 試 験 の 受 験 資格 を取 得 で き る看 護 教 育 課 程(上 記 の 「2年 課 程 」 の ①)が 現 存 して い る こ とで あ る。 した が っ て 同 じ正 看 護 婦 で も,最 終 学 歴 は 大 学 院,大 学,短 期 大 学,専 門 学 校,高 校,中 学 校 とま ち ま ちで あ る10)。
第2に,医 療 提 供 体 制 に お い て,一 般 に看 護 婦 は他 の 医療 従 事 者 よ りも低 く み られ る 傾 向 が あ っ た こ とで あ る。 つ ま り,看 護 婦 は 医 師 の 従 属 的 ・補 助 的 立 場 と み な され る傾 向 が あ っ た こ と で あ る。
医 療 が 高 度 化 し多 様 化 して い る今 日,質 の 高 い 看 護 を提 供 し,医 療 に 積 極 的 に参 加 で き る よ う にす る た め に は,現 行 の 看 護 婦 養 成 教 育 と看 護 婦 制 度 を改 革 す る必 要 が あ る。 具 体 的 に は,第1に,看 護 婦 養 成 教 育 に お い て,高 校 卒 業 後 の 正 看 護 婦 の 最 低 限 の 教 育 年 限 を現 行 の3年 か ら4年 に 引 き上 げ る こ とで あ る。 つ ま り,看 護教 育 課程 の 「3年 課 程 」 を 「4年 課 程 」 に し,看 護 大 学 と同 等 にす る こ と に よっ て 高 度 な 看 護 学 を 習 得 し,現 在 は時 間 数 が 不 足 して い る実 習 教 育(臨 地 実 習)を 充 実 させ る こ とで あ る。
第2に,現 行 の 准 看 護 婦 制 度 を廃 止 し,准 看 護 婦 を正 看 護 婦 に移 行 す る措 置 を早 急 に 講 じる こ とで あ る 。 この 点 に つ い て は 次 節 で 詳 し く述 べ る。
(5)准 看 護 婦 制 度 の 廃 止
現 在,准 看 護 婦 ・士 の教 育 機 関 に は,准 看 護 婦 養 成 所(2年)と 高 校 衛 生 看
9)看 護 教 育 機 関 は,「 学 校 教 育 法 」 と 「保 健 婦 助 産 婦 看 護 婦 法(保 助 看 法)」 の2つ の 法 律 に よ っ て 運 営 さ れ て い る 。 看 護 教 育 機 関 は,「 学 校 教 育 法 」 上,第 一 条 校 で あ る 看 護 大 学,看 護 短 大,看 護 高 校 専 攻 科(厳 密 に は 第 一 条 校 で は な い),看 護 専 門 学 校 ・各 種 学 校 に 分 類 され る 。「保 助 看 法 」上 は,本 文 で 述 べ た 「3年 課 程 」 と 「2年 課 程 」 に 分 類 さ れ る 。 「保 助 看 法 」 は,看 護 専 門 学 校 ・各 種 学 校 を 看 護 婦 養 成 所 と 呼 称 して い る 。 看 護 教 育 機 関 と看 護 教 育 課 程 につ い て は,佐 々 木 栄 子
「看 護 婦(士)の 要 件 と 国 家 試 験 」 『保 健 の 科 学 』 第42巻 第9号 ,平 成12年,707
〜716ペ ー ジ を参 照 。
10)図1に は 示 され て い な い が,近 年 で は 数 は き わ め て 少 な い が 看 護 大 学 大 学 院 を 修 了 して い る看 護 婦 も い る 。
護 科(3年)が あ る(図1を 参 照)。 准 看 護 婦 養 成 所 ま た は 高 校 衛 生 看 護 科 を 卒 業 し,准 看 護 婦 都 道 府 県 知 事 試 験 を受 験 して 准 看 護 婦 免 許 を取 得 す る(図2
を参 照)。
准 看 護 婦 養 成 所 の 入 学 者 の ほ とん ど は高 校 以 上 の卒 業 者 で あ る。 しか し,入 学 資格(学 歴)は 制 度 上,中 学 校 卒 業 以 上 で あ る(図1と 図2は そ れ に基 づ い
て作 成 して い る)た め に,准 看 護 婦 養 成 所 の教 育 内 容 は 中 学 校 卒 業 程 度 の 学 力 に合 わ せ て い る 。 ま た,正 看 護 婦 と准 看 護 婦 との 地 位 や待 遇 の相 違 な ど に よっ て,准 看 護 婦 養 成 所 の 志 願 者 数 は減 少 し て きて い る。 北 海 道 内 で は,准 看 護 婦 養 成 所 と高 校 衛 生 看 護 科 は 平 成 元 年 に34校 あ っ た が,平 成12年4月 時 点 で26校
ま で減 少 して い る11)。
准 看 護 婦 制 度 は,戦 後 の 看 護 婦 不 足 を補 うた め に昭 和26年 に新 設 され た もの で あ り,正 看 護 婦 の 助 手 的存 在 で あ る 。 准 看 護 婦 教 育 で行 わ れ る看 護 学 や 一 般 教 養 の 水 準 は,正 看 護 婦 教 育 と比 べ る とか な り低 くな っ て い る。 「保 健 婦 助 産 婦 看 護 婦 法 」 上 は,看 護 婦(正 看 護 婦)も 准 看 護 婦 も行 う こ と の で き る看 護 業 務 の 内容 は 同 じで あ る(看 護 婦 は 医 師 ・歯 科 医 師 の 指 示 を受 け て療 養 上 の 世 話 また は診 療 の 補 助 を行 い,准 看 護 婦 は 医 師 ・歯 科 医 師 ま た は看 護 婦 の 指 示 を受 け て療 養 上 の 世 話 ま た は 診 療 の 補 助 を行 う)。 しか し,正 看 護 婦 と准 看 養 婦 の 看 護 業 務 の 役 割 分 担 を明 確 に す べ きで あ る。 そ れ に よ っ て,准 看 護 婦 に よ る 医 療 過 誤 を少 し で も減 少 させ る こ とが で き るの で は な い か と思 わ れ る 。 「准 看 護 婦 は 医療 の 質 を低 下 させ る 要 因 の 一 つ に な っ て い る」 こ と を指 摘 す る 正 看 護 婦 もお り,准 看 護 婦 制 度 の廃 止 運 動 が 正 看 護 婦 な ど に よ っ て 行 わ れ て い る12)。
厚 生 省 の 「准 看 護 婦 問題 調査 検 討 会 」 は,准 看 護 婦 問題 につ い て の 報 告 書 を 平 成8年12月 に ま と め た 。 報 告 書 は,「 関 係 者 の 努 力 に よ り現 行 の 准 看 護 婦 養 成 課 程 の 内 容 を正 看 護 婦養 成 課 程 の 内 容 に達 す る ま で に 改 善 し,21世 紀 初 頭 の
11)『 北 海 道 新 聞』 平 成13年10月5日 付 け朝 刊 。
12)日 本 看 護 協 会 は,准 看 護 婦 の 養 成 停 止 と看 護 婦 養 成 制 度 の 一 本 化 を求 め る 運 動 を 展 開 して い る 。 日本 看 護 協 会 「准 看 護 婦 養 成 停 止 ・看 護 婦 養 成 制 度 の 一 本 化 を 求 め る運 動 」 日本 看 護 協 会 ホ ー ム ペ ー ジ ・プ レ ス 資 料,平 成 ユ2年4月 。
医療提 供体 制 の現状 と改革(1) 141 早 い段 階 を 目途 に,准 看 護 婦 養 成 制 度 の統 合 に努 め る こ と を提 言 」 し,「今 後, 国 にお い て 関 係 者 と十 分 な協 議 を重 ね な が ら,看 護 職 員 の養 成 及 び 准 看 護 婦 養 成 所 の 改 革 等 にあ た っ て の 財 政 支援,医 療 機 関 に看 護 職 員 を提 供 で き る体 制 の 整 備 等 具 体 的 な検 討 を行 うべ き」 で あ る と して い る。
日本 医 師会 は,准 看 護 婦 養 成 問 題 に対 す る基 本 姿 勢 と し て,准 看 護 婦 養 成 と 准 看 護 婦 制 度 の 維 持 を 表 明 して い る。 こ の 点 につ い て 日本 医 師会 は,准 看 護 婦 制 度 が 創 設 され た 昭和26年 以 来,准 看 護 婦 は 日本 の 医療 を支 え て きた(大 きな 役 割 を果 た して き た)こ と,ま た 地 域 医療 の 分 野 に お い て は現 在 も准 看 護 婦 に 大 き く依 存 し て い る こ と を 指 摘 し て い る13)。 しか し,開 業 医 の な か に は 人 件 費 を 抑 制 す る た め に准 看 護 婦 を雇 用 して い る と こ ろ もあ っ た。
看 護 婦 の 資 質 を 向上 させ,医 療 サ ー ビ ス を改 善 す る た め に は,准 看 護 婦 を 正 看 護 婦 に移 行 す る措 置 を 早 急 に講 じ,准 看 護 婦 制 度 を廃 止 す る必 要 が あ る 。 具 体 的 に は,現 在 の 准 看 護 婦 に対 して,① 一 定 時 間数 の 指 定 講 習 の 受 講 を義 務 づ け,② 指 定 講 習 の 所 要 単 位 数 を取 得 した場 合,正 看 護 婦 の 特 例 国 家 試 験 の 受験 資 格 を与 え,③ 特 例 国家 試 験 に合 格 した場 合,正 看 護 婦 免 許 を与 え る,と い う 救 済 措 置 を現 在 の 准 看 護 婦 に対 して 講 じる こ と を筆 者 は提 案 した い 。
第3章 診療情報の提供
(1)イ ン フ ォー ム ド ・コ ン セ ン ト
大 病 院 に 行 っ た 外 来 患 者 の 多 くは,「 長 い 待 ち 時 間」 と 「医 師 の 説 明 不 足 」 を経 験 して い る 。3時 間待 っ て3分 間 の受 診 を終 え,た だ ち に別 室 で 採 血 やX 線 検 査 な どを 受 け,効 能 に 対 す る説 明 が な い 薬 を処 方 され る こ とが しば しば あ る。
患 者 は 体 調 の 主 訴 を 医 師 に伝 え る 時 間 を 十 分 に は与 え られ ず,医 師 も治 療 方 針 を 患 者 に きち ん と説 明 し,同 意 を求 め よ う とす る姿 勢 が あ ま りみ られ な い 。
13)日 本 医 師 会 「准 看 護 婦 養 成 問 題 に つ い て 」 日本 医 師 会 ホ ー ム ペ ー ジ。
筆 者 が 行 っ た ア ン ケ ー ト調 査 で も,医 療 の 世 界 は 閉鎖 的 で あ る と約9割 が 回 答 して い る。
欧 米 諸 国 で は,数 十 年 前 か ら患 者 の 権 利 に つ い て 医療 側 か ら明確 な 形 で 示 さ れ て い る 。 す な わ ち,1947年 「ニ ュ ー ル ンベ ル ク綱 領 」,ユ964年 「ヘ ル シ ンキ 宣 言 」(第18回 世 界 医 師 会 総 会),1972年 「患 者 の 権 利 章 典 に 関 す る 宣 言 」(ア
メ リ カ病 院会)は,医 師 が 診 療 に あ た っ て患 者 に何 を どの よ う に説 明 し,ま た 検 査 や 治 療 の前 に ど の よ う な説 明 を して,ど の よ う に 同 意 を得 な け れ ば な らな い か な どの,い わ ゆ る 医療 行 為 を行 う さい に患 者 が 選 択 で き る人 権 を どの よ う
に尊 重 す べ き か を 定 め て い る14)。
患 者 か ら要 望 が あ れ ば,医 師 は診 断 内 容 や 治 療 方 針 に つ い て 患 者 に き ち ん と 説 明 し,同 意 を得 る こ とは 当 然 で あ る 。 わ が 国 で も,こ う した 「イ ン フ ォー」ム ド ・コ ンセ ン ト」 に 対 す る患 者 の 関心 が 高 ま り,患 者 は そ れ を求 め る よ う に な って い る 。 筆 者 が行 っ た ア ンケ ー ト調 査 の な か で,回 答 者 の9割 以 上 は 十 分 な イ ン フ ォー ム ド ・コ ンセ ン トが 必 要 で あ る と回 答 し て い る 。
日本 看 護 協 会 は,平 成12年5月 に作 成 した 『看 護 記 録 の 開 示 に関 す る ガ イ ド ラ イ ン』 の 内 容 に つ い て 改 め て 同 会 会 員 の 関 心 を呼 び起 こ す と と も に,患 者 へ の 診 療 情 報 提 供 に 関 す る実 態 と今 後 の 方 向 を把 握 す る た め に,「2000年 患 者 へ の 診 療 情 報 提 供 に 関 す る調 査 」 を平 成12年9月 に行 っ て い る15)。
調 査 結 果 に よ る と,「 患 者 へ の 診 療 記 録 開 示 に つ い て 」 で は,診 療 記 録 の 開 示 規 定 が 「あ る」 と回 答 した病 院 は1115病 院(36.4%)で あ っ た 。 こ れ を 設 置 主 体 別 で み る と,「社 会 保 険 関 係 団 体 」(73病 院,82.0%)と 「公 的」(123病 院, 65.1%)が 他 の 設 置 団 体 に比 較 して 「あ る 」と回 答 した 割 合 が 高 く,「医 療 法 人 ・ 個 人 」 と 「国」 は 「な い 」 と回 答 した 割 合 が 高 くな っ て い る(表1を 参 照)。
14)日 本 病 院 会 「日本 病 院 会 が 提 言 す る イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン ト」日本 病 院 会 ホ ー ム ペ ー ジ。
15)調 査 対 象 は 同 会 会 員 が 勤 務 す る全 国 の6219病 院(記 入 者 は 看 護 部 長),回 答 病 院 数 は3066(有 効 発 送 数6215に 対 す る 有 効 回 収 率 は49.3%)で あ る 。 調 査 概 要 と調 査 結 果 に つ い て 詳 し くは 次 の 文 献 を 参 照 。 「患 者 へ の 診 療 情 報 提 供 に 関 す る調 査 」
(病 院 対 象 調 査)『 日本 看 護 協 会 調 査 研 究 報 告 』No.60,平 成13年3月 。
医療提 供体 制 の現状 と改革(1) 表1診 療 記録 開示規 定 の有 無 ・設 置 主体
143
設 置主体 あ る な い 無 回 答 ・不 明 合 計
国
97(40。4%)
141(58,8%) 2(0.8%) 240(100.0%)自 治 体 262(43.8%) 330(55.2%) 6(1.0%) 598(100.0%) 公 的 123(65.1%) 65(34.4%) 1(0.5%) 189(100.0%) 社 会 保 険
関 係 団 体 73(82.0%) 16(18.0%) 0(0.0%) 89(100,0%) 医 療 法 人 ・
個 人 385(25.2%) 1110(72.7%) 31(2.0%) 1526(100.0%) 学 校 法 人 ・
そ の 他 169(42.4%) 224(56.1%) 6(1.5%) 399(100,0%) 合 計 1115(36.4%) 1905(62.1%) 46(1.5%) 3066(100.0%)
〔出典 〕 「患 者へ の診 療 情報 提 供 に関 す る調査 」(病 院対 象調 査)『 日本 看護 協 会調 査研 究 報告』No.60(平 成13年3月),72ペ ー ジ。
病 床 規 模 別 で み る と,病 床 規 模 が 大 き くな る ほ ど 「あ る」 と 回答 した 割 合 が 高 くな っ て い る(表2を 参 照)。
「イ ン フ ォー ム ド ・コ ンセ ン トに 関 す る取 り組 み 」 で は,イ ンフ ォー ム ド ・ コ ンセ ン トに 関 す る看 護 部 門 の 取 り組 みへ の 評 価 につ い て 「患 者 の 知 る権 利 の
表2診 療記 録開 示規 定 の有無 ・病 床規模
床 あ る な い 無 回 答 ・不 明 合計
99以 下 137(18.7%) 576(78.8%) 18(2,5%) 731(100.0%)
100〜199
279(29.8%) 642(68.5%) 16(1.7%) 937(100.0%)200〜299
179(35.8%) 317(63.4%) 4(0.8%) 500(100.0%)300〜399
191(50.9%) 180(48.0%) 4(1.1%) 375(100.0%)400以 上 328(63.7%) 183(35.5%) 4(0.8%) 515(100.0%) 合 計 1115(36.4%) 1905(62.1%) 46(1.5%) 3066(100.0%)
〔出 典 〕 表1に 同 じ。
表3イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン トに 関 す る看 護 部 門 の取 り 組 み へ の 評 価 (単 数 回 答,n=3066) 十 分 ど ち ら と も
い え な い
不 十 分
・不 明 無 回答 合 計
患 者 の知 る権利 の 尊 重
447 (14.6%)
1630 (53.2%)
902 (29.4%)
87 (2.8%)
3066 (100.0%) 患 者 の情報 へ の アク
セス権 の尊 重
348 (11.4%)
1273 (41.5%)
1351 (44.1%)
94 (3.1%)
3066 (100.0%) 自 己 コ ン トロー ル 権
の 尊 重
114 (3.7%)
879 (28.7%)
1973 (64.4%)
100 (3.3%)
3066 (100.0%) 患 者 の 自己決定 権 の
尊重
549 (17.9%)
1414 (46,1%)
996 (32.5%)
107 (3.5%)
3066 (100.0%)
※患 者 の知 る権利 の尊 重=患 者 が望 む情 報 を充分 提供 してい る こ と
※患 者 の情報 へ のア クセ ス権 の尊重=患 者 が必 要 な時 に必 要 な情報 を入 手 で きる環 境 を整 えて い る こと
※ 自己 コ ン トロー ル権 の尊 重=患 者 が 自分 に関 わ る記 録 を把握 ・管 理で きる よう支 援 してい る こと
※患 者の 自己 決定権 の 尊重=患 者 に,治 療法 等 自己決 定 に必要 な情 報 を十分 提供 し て い るこ と
〔出典 〕 表1に 同 じ(23ペ ー ジ)。
尊 重 」 と 「患 者 の 自己 決 定 権 の 尊 重 」 は 「ど ち ら と もい え な い」 とい う回 答 が もっ と も多 く,続 い て 「不 十 分 」 とい う評 価 が な され て い る(表3を 参 照)。 「患 者 の 情 報 へ の ア ク セ ス権 の 尊 重 」 と 「自己 コ ン トロー ル権 の 尊 重 」は 「不 十 分 」 とい う 回答 が も っ と も多 く,イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ンセ ン トに 関 す る 看 護 部 門 の 取 り組 み は ま だ 不 十 分 と認 識 さ れ て お り,現 場 に お い て は課 題 も多 い とみ られ
る。
イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ンセ ン トを促 進 す る た め の看 護 部 門 と して の 取 り組 み と 今 後 の 計 画 に つ い て は,「 看 護 婦 の 計 画 的 な研 修 」 は726病 院(23.7%)が 現 在
「実 施 して い る 」 と し て お り,「 今 後 実 施 予 定 」 は1312病 院(42.8%)と な っ
医 療 提 供 体 制 の 現 状 と改 革(1)145
表4イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン トを促 進 す る た め の 取 り組 み と 今後 の計 画(看 護 部 門)
(単 数1亘1答,n=3066)
実 施 し て い る
今後実 施予定
特 に実施 予
定 はない 無 回答 合 計
看 護婦 の計 画的 な研 修
726 (23.7%)
1312 (42.8%)
901 (29.4%)
127 (4.1%)
3066 (100.0%) 看 護部 門 ガ イ ドライ
ンの整 備
235 (7.7%)
1646 (53.7%)
1018 (33.2%)
167 (5.4%)
3066 (100.0%)
そ の他 45
(1.5%)
56 (1.8%)
!98 (6.5%)
2767 (90.2%)
3066 (100.0%)
〔出 典 〕 表1に 同 じ(24ペ ー ジ)。
て い る 。 「看 護 部 門 ガ イ ド ラ イ ン の 整 備 」は 「実 施 し て い る 」が235病 院(7.7%) と 少 な く,「 今 後 実 施 予 定 」 が1646病 院(53.7%)と な っ て い る(表4を 参 照)。
イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン ト を 促 進 す る た め の 病 院 全 体 と し て の 取 り組 み と 今 後 の 計 画 に つ い て は,「 医 療 従 事 者 の 計 画 的 な 研 修 」 は348病 院(11.4%)が 現 在 「実 施 し て い る 」 と し て お り,「 今 後 実 施 予 定 」 は1243病 院(40,5%)と
な っ て い る 。 「患 者 向 け ガ イ ド ラ イ ン の 整 備 」 は 「実 施 し て い る 」 が150病 院 (4,9%)と 少 な く,「 今 後 実 施 予 定 」 が1282病 院(41.8%)と な っ て お り,「 職 員 向 け ガ イ ド ラ イ ン の 整 備 」 も 同 様 の 傾 向 が み ら れ る 。 「イ ン フ ォ ー ム ド ・コ
ン セ ン トに 関 す る 患 者 へ の 情 報 発 信 」 は 「実 施 し て い る 」 が314病 院(10.2%) で あ り,「 患 者 向 け ガ イ ド ラ イ ン の 整 備 」 と 比 較 す る と 実 施 さ れ て い る 割 合 は 高 く な っ て い る(表5を 参 照)。
日 本 病 院 会 は,イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン トを 医 療 の 基 本 と 考 え,病 院 側 と し て 初 め て の イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン ト に つ い て の 統 一 的 見 解 を 発 表 し て い
16)日 本 病 院 会 「日本 病 院 会 が 提 言 す る イ ン フ ォー ム ド ・コ ンセ ン ト」日本 病 院 会 ホ ー ム ペ ー ジ。
商 学 討 究 第52巻 第2・3号
表5イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン トを促 進 す る た め の 取 り組 み と 今 後 の 計 画(病 院 全 体)
(単数 回 答,n=3066) 実施 し
て い る
今後実 施予定
特 に実施予
定 はない 無 回答 合 計
医療 従事 者 の計 画的 な研 修
348 (11.4%)
1243 (40.5%)
1163 (37.9%)
312 (10.2%)
3066 (100.0%) 患 者 向け ガイ ドライ
ンの整備
150 (4.9%)
1282 (41.8%)
1237 (40.3%)
397 (12.9%)
3066 (100.0%) 職 員向 け ガイ ドラ イ
ンの整備
183 (6.0%)
1431 (46.7%)
1049 (35.7%)
358 (11.7%)
3066 (100.0%) イ ン フ オー ム ド ・コ
ン セ ン トに 関 す る 患 者 へ の 情 報 発 信
314 (10.2%)
1088 (35.5%)
1185 (38.6%)
479 (15.6%)
●
3066 (100.0%)
その他 15
(0.5%)
44 (1.4%)
202 (6,6%)
2805 (91.5%)
3066 (100.0%)
〔出 典 〕 表1に 同 じ(24ペ ー ジ)。
る16)。 また,イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ンセ ン トを積 極 的 に実 施 す る 医療 機 関 も増 加 して い る 。た だ,上 記 の 日本 看 護 協 会 の調 査 結 果 に よる と,イ ン フ ォー ム ド ・
コ ンセ ン トに 関 す る取 り組 み の評 価 につ い て 「どち ら と もい え な い 」 と 「不 十 分 」 とす る 回 答 が 多 い こ と,ま た イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ンセ ン ト促 進 の た め の取 り組 み と今 後 の 計 画 に つ い て 「今 後 実 施 予 定 」 と 「特 に 実 施 予 定 は な い 」 とす る 回 答 が 多 い こ とか ら,イ ン フ ォー ム ド ・コ ンセ ン トが 十 分 に行 わ れ る まで に は い ま し ば ら く時 間 を要 す るか も知 れ な い。
(2)医 療 情 報 の 開 示
「カ ル テ(Karte)」 とは 「医 師 法 」 第24条 に 定 め られ た 医 師 の 診 療 録 で あ り, 患 者 の 診 療 情 報 が 記 載 され た 文 書 で あ る17)。 カ ル テ は 診 療 情 報 の な か で もっ