医療提供体 制 の現状 と改革(3)
近 藤 中 浜
功 隆
目 次
は じめ に
第1章 医療提 供体 制 の現状 と課題 第2章 医療 従事者 の 資質 の向 上
(1)医 療 の量 か ら質へ の転 換 (2)医 師の イ ン ター ン制 度の復 活 (3)医 療 従事 者 の免 許更新 制 度 の新設 (4)正 看 護婦 の教 育 年 限の引 き上 げ (5)准 看 護婦 制 度の廃 止
第3章 診 療情 報 の提供
(1)イ ンフ ォー ム ド ・コ ンセ ン ト (2)医 療 情報 の 開示
第4章 医療過 誤 (1)医 療 過誤 の事 例 (2)医 療 事故 の調 査 (3)医 療 過 誤訴 訟の増 加 (4)医 療 事故 防止 の取 り組 み
第5章 診 療報 酬 の不 正請求(以 下 本号) (1)診 療 報酬 の 請求 と審査
(2)不 正 青求の事 例
(3)不 正 青求 に対 す る取 り組 み (4)不 正 青求 の防止
第6章 医療 制度 改革 の ア ンケー ト調査(以 下次号) (1)調 査 の方法 と結 果
(2)調 査 結 果 の分析 お わ りに
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第5章 診療報酬の不正請求
厚 生 省(現 在 は厚 生 労 働 省)は,昨 今 の 跡 を絶 た ない 悪 質 な 不 正 請 求 の 多 発 を放 置 で きな くな っ た。 厚 生 省 監 修 『厚 生 白書(平 成10年 版)』 は 「昨 今,悪 質 な診 療 報 酬 の 不 正 請 求 が 跡 を絶 た な い こ とか ら,不 正 請 求 に 対 して厳 正 に対 処 す る こ とが 現 在 求 め られ て い る」 と して い る。 そ し て,保 険 医 療 機 関 の 取 り 消 しの 強化 や 診 療 報 酬 の 不 正 請 求 に対 す る加 算 金 の 強 化 な どが 実 施 さ れ た 。
この よ う に厚 生 省 が 本 腰 を上 げ,対 策 に 取 り組 ん だ に もか か わ らず,そ の 後 も医 療 機 関 に よ る 「悪 質 な不 正 請 求 」 が 一 向 に減 少 して い な い の は,一 体 何 故 で あ ろ う か 。
本 章 で は,道 内 の 医療 機 関 に よ る不 正 請 求 の 「事 例 」,全 国 の 「実 態 」,不 正 請 求 の 「取 り組 み 」,「防 止 策 」 を論 述 す る 。 不 正 請 求 の 内容 や 実 態 を把 握 す る た め に は,ま ず 現 行 の 医 療 保 険 制 度 に お け る 「診 療 報 酬 の 請 求」 の 仕 組 み につ い て,そ の概 要 を理 解 して お く こ とが 必 要 で あ る。
(1)診 療 報 酬 の 請 求 と審 査
診 療 を実 施 した 医 療 機 関 は前 月 分 の 診 療 内 容 を記 載 した 診 療 報 酬 請 求 明細 書 (レ セ プ ト)を 月 初 め に,都 道 府 県 ご とに 設 置 さ れ た機 関(被 用 者 保 険 の場 合 は 「支 払 基 金 」 に,国 民 健 康 保 険 の 場 合 は 「国 民 健 康 保 険 連 合 会 」)に そ れ ぞ れ提 出 し,審 査 され,各 保 険 者 か ら医 療 機 関 に医 療 費 が 支 払 わ れ る 仕 組 み に な っ て い る。 しか し,医 療 機 関 か ら請 求 さ れ た 診 療 報 酬 は,全 て無 条 件 に そ の ま ま 支 払 わ れ る もの で な く,そ の レセ プ トの記 載 内 容 は 審査 委 員 に よ って 審 査 さ れ,適 正 と承 認 され て初 め て 全 額 支 払 わ れ る 。
池 上 教 授 は レセ プ トの 審 査 につ い て,「 審 査 員 は 全 国 に7,909人(1992年)お り,中 医 協 と同 じ く診 療 側,支 払 側,学 識 経 験 者 に よっ て 構 成 さ れ て い る が, 異 な る点 は審 査 に は専 門 知 識 を必 要 と して い るた め,い ず れ も医 師 で あ っ て 意 見 の 対 立 は あ ま りな い こ とで あ る 。 そ も そ も審 査 員 に な るた め に は,そ れ な り
の見 識 と奉 仕 精 神 が 求 め られ る の で 候 補 者 も限 られ て い る。 委 員 の 主 観 を少 な
医療提 供体 制 の現状 と改 革(3) 171 く し,審 査 対 象 とな る病 院 と特 別 な 関 係 を 防 ぐた め,3か 月 ご とに ロー テ ー シ ョ ンが な され て い る」 と述 べ て い る51)。
さ ら に,池 上 教 授 は 「医 療 費 の 不 正 請 求 や 過 剰 診 療 を防 ぎ医 療 費 を抑 制 す る 観 点 か ら も医 療 機 関 か ら出 さ れ る 全 て の レセ プ トに つ い て,審 査 ・点 検 が な さ れ て い る こ と に な っ て は い るが,実 際 上 は,大 量 の レセ プ ト処 理 の た め レセ プ ト全 て を厳 密 な審 査 対 象 とす る の で な く記 入 上 の誤 りな どが 事 務 職 に よ りチ ェ ッ ク され た後,審 査 を 必 要 とす る よ う な 問 題 が あ りそ う な高 額 の レセ プ トや 問 題 の あ る 医 療 機 関 か ら の レ セ プ トが 審 査 の 対 象 に な りや す い 」 と述 べ て い
る52)。
上 記 の通 り,医 療 機 関 か ら請 求 され た全 て の 診 療 報 酬 請 求 明細 書 を こ と細 か に審 査 す る こ と は事 務 的 に も技 術 的 に も不 可 能 で あ り,1枚 当 た りの レ セ プ ト 処 理 時 間 は わ ず か 十 数秒 程 度 と も言 わ れ て い る。 そ の た め,実 際 に は患 者 に 実 施 され て い な い 検 査 を 実 施 した こ と に して 請 求 した り,患 者 の 実 際 の 診 断 以 外 に 数種 の診 断 名 を薬 剤 に合 わせ て 追 加 した診 断 名(診 療 内 容 に合 わ せ た保 険 病 名)を 頻 繁 に付 け て請 求 し て い る の は事 実 で あ る。 重 要 な こ とは,こ の よ う な 医 師 の 勝 手 な都 合 や 不 正 な保 険 請 求 が 目的 で,患 者 が 知 らな い うち に診 療 内 容 に合 わ せ た 数種 類 の診 断 名(保 険 病 名)が 追 加 さ れ て い る こ とが あ る こ とを 患 者 は 知 っ て お く必 要 が あ る(診 断 名 に よっ て は,入 学,就 職,生 命 保 険 加 入 時
な ど,本 人 の 不 利 益 に繋 が る こ と もあ り う る)。
医療 機 関 に よ る不 正 ・不 適 正 な レセ プ トの 請 求 防 止 は,現 行 の 医療 保 険 制 度 (診療 報 酬 体 系)の 下 で は,完 全 に防 止 す る こ とは無 理 で あ る。 不 正 請 求 を す る悪 徳 な 医療 機 関 は厳 し く責 め られ な け れ ば な らな い が,防 止 の観 点 か ら も現 在 の 診 療 報 酬 体 系 の抜 本 的 改 革(例:検 査 潰,薬 潰 な どが 行 わ れ ない よ うな 仕 組 み な ど に 改 革 す る)を し,診 療 報 酬 の 「審査 の在 り方 」 を考 え 直 す こ とが 重 要 で あ る。
ア メ リカ に 永 年 居 住 し,大 学 医 学 部 教 授 ・開 業 医,帰 国 後 神 戸 大 学 医 学 部 講
51)池 上 直 己,J.C.キ ャ ン ベ ル 『日 本 の 医 療 』 中 公 新 書,平 成10年,170〜171ペ ー ジ 。
52)同 上,172〜173ペ ー ジ 。
師 な ど を歴 任 され た 中 野 次 郎 医 師(医 学 博 士)は 日本 にお け る 「レセ プ トに よ る 医 療 報 酬 支 払 い 」 に つ い て,次 の よ う に述 べ て い る。 「ニ ッポ ン で は,完 壁 な 評 価 機 構 や 制 度 が 存 在 し な い か ら,多 くの 医 師 た ち は 不 適 切 な 薬 剤 治 療 や薬 漬 け,検 査 漬 け に よ り,国 民 の血 税 を平 気 で 浪 費 して い るの です 。厚 生 省 も ま
た,こ う した現 実 に 目を つ む り,特 に厳 格 な 審 査 制 度 を創 設 せ ず,従 来 通 り, レセ プ トに記 載 され た,出 来 高 に よ る 「怪 しい 」 医 療 報 酬 支 払 い を,過 去40年 に わ た っ て続 け て き た の で す 。 この 制 度 は,悪 徳 医 師達 の 富 を増 や し,不 正 申 告 を す る悪 い病 院 に莫 大 な お 金 を注 ぐ一 方,正 直 誠 実 な 医 師 に経 済 的 な苦 痛 を 与 え,善 良 な病 院 を倒 産 させ ます 。 世 界 の 文 明 国 で,医 療 機 関 な らび に医 師 の 評 価 をせ ず に,言 わ れ た 通 り,医 療 費 を払 う国 は ニ ッポ ンだ け か も しれ ませ ん」
と,日 本 に お け る 不 適 正 な レ セ プ ト請 求 や 支 払 い を論 じて い る の に 注 目 した い53)。
(2)不 正 請 求 の 事 例
(a)北 海 道 に お け る不 正 請 求 の 事 例(介 護 保 険 の 不 正 請 求 も 含 む)
医療 過 誤 の続 発 と 同様,医 療 機 関 に よ る悪 質 な 診 療 報 酬 の不 正 請 求 も跡 を 絶 た な い 現 状 は上 記 で 論 述 の 通 りで あ る。 経 済不 況 な どの影 響 で,一 般 勤 労 者 の賃 金 引 上 げ が行 わ れ な い 時 期 に お い て も,医 師 の 診 療 報 酬 は平 成13年 度 まで 改 定 の た び ご と に引 き上 げ が 行 わ れ て きた 。 この こ とは,政 府 や 国 民 が 医 療 機 関 に よ る 医 療 の 「質 」 の 向上,「 不 正 請 求 」 や 「過 剰 診 療 」 の 発 生 防 止 の観 点 か ら容 認 した も の で あ る。 そ れ に もか か わ らず 「不 正 請 求 」 が 跡 を 絶 た な い の が 現 状 で あ る。
政 府 は 医 療 保 険財 政 の 悪 化 防 止 策 と して 国民 に 対 し,こ れ まで 幾 度 も保 険 料 の引 上 げ や 医 療 費 個 人 負 担 の 引 上 げ な ど患 者 の負 担 増 を求 め て き た。 医 療 財 政 の悪 化 原 因 は 国 民 に あ る の で は な く,診 療 報 酬 の 出 来 高 払 い 制,医 療 機 関 に よ る 診 療 報 酬 の 「不 正 請 求 」 や 「過 剰 診 療 」 な どが 医 療 財 政 の 悪 化 の 要
53)中 野 次 郎 『誤 診 列 島 』 集 英 社,平 成13年,284ペ ー ジ。
医療提 供体 制 の現状 と改 革(3) 173 因 に な っ て い る こ とを 医 療 機 関 は 深 く認 識 ・反 省 し,不 正 請 求 が今 後 発 生 し な い よ うに し な け れ ば な らな い 。
以 下 は 平 成12年,13年,14年 中 に 『北 海 道 新 聞』(朝 刊 と夕 刊)に 掲 載 さ れ た 北 海 道 内 の 医 療 機 関 に よ る 診 療 報 酬 の不 正 請 求 の 事 例 を示 した もの で あ る 。
*平 成12年4月15日(朝 刊)p.35
北 海 道 内 の 民 間病 院 で,平 成12年4月,同 病 院 の軽 費 老 人 ホ ー ム の 入 所 者 60人 の健 康 診 断 で,本 来 請 求 で き な い 医 療 費 を長 年 に わ た り,国 民 健 康 保 険 や 老 人 医 療 保 険 な ど保 険者 に不 正 に 請 求 して い た 事 実 が 判 明 した 。 軽 費 老 人 ホ ー ム の 関係 者 に よ る と,こ の不 正 請 求 は平 成3年 か ら5年 間 に わ た
り,年 間120件 に上 っ て い た と言 わ れ て い る 。
これ に対 し,道 は 平 成10年5月,約26万9000円 を町 国 保 に 返 還 させ た が, 平 成7年 度 以 前 に つ い て は 調 べ て い な か っ た。 しか し,平 成7年 度 以 前 に つ い て,北 海 道新 聞 が 調 べ た と こ ろ,複 数 の不 正 請 求 が あ り,い ず れ も健 康 診 断 に対 して 初 診 科 な どの 医 療 費 を請 求 して い た こ とが 判 明 した。
*平 成12年5月26日(朝 刊)p,30
北 海 道 内 の歯 科 医(矯 正 歯 科 ク リニ ッ ク)は,同 ク リニ ッ クが 開業 した 平 成7年 か ら平 成12年2月 まで の 問 に1245件,909万 円 の診 療 報 酬 を不 正 請 求 し て い た(架 空 請 求 や 二 重 請 求)。 北 海 道 社 会 保 険 医療 協 議 会 は,25日
この 歯 科 医 院 と歯 科 医 を保 険 医療 機 関 の指 定 と保 険 医登 録 の 取 り消 し処 分 を答 申 した 。 道 社 会 保 険 事 務 局 は,6月1日 付 け で答 申 通 り処 分 す る。
*平 成12年11月16日(朝 刊)p.29
北 海 道 内 の 病 院 と歯 科 医 院 で,平 成12年12月,道 社 会 保 険 事 務 局 の 諮 問 機 関,道 社 会 保 険 医療 協 議 会 は 医 師 と歯 科 医 師 の 二 人 に 対 し,診 療 報 酬 を不 正 に請 求 して い た と して,保 険 医 療 機 関 の 指 定 と保 険 医 登 録 の取 り消 し処
分 を 答 申 した 。 同 事 務 局 は 答 申通 り 同 年12月 に処 分 す る 。 処 分 さ れ る医 師 は,死 亡 して い た 患 者5人 分 を診 療 して い た よ う に見 せ か け て架 空 請 求 す る な ど,判 明 して い る だ け で 平 成11年1月 か ら907件,970万 円 分 を 架 空 水 増 し請 求 した 。 一 方,歯 科 医 師 は 自費 診 療 と して の 料 金 を 受 け取 っ た に もか か わ らず 保 険 診 療 した か の よ う に 装 う な ど して,平 成7年10月 か ら 2665件,1107万 円 を架 空,水 増 し請 求 して い た 。
*平 成13年7月4日(朝 刊)p.32
北 海 道 内 の 歯 科 医 院 で,歯 科 医 師 が 診 療 報 酬 を不 正 に請 求 して い た と して, 道社 会 保 険 事 務 局 の 諮 問 機 関,道 地 方 社 会 保 険 医療 協 議 会 は3日,同 歯 科 医 院 院長 を 保 険 医療 機 関 指 定 と保 険 医登 録 の 取 り消 し処 分 を答 申 し た。 同 局 は,健 康 保 険 法 に基 づ い て9日 付 で 答 申 通 り処 分 す る。 同 医 院 は平 成8 年4月 か ら平 成13年3月 ま で,自 費 診 療 と して 治 療 代 を受 け取 っ た に もか か わ らず,保 険 診 療 した よ う に偽 っ て診 療 報 酬 請 求 の不 正 を繰 り返 して い た 。 不 正 受 給 の 総 額 は3043件,3480万 円 に 上 っ た。
*平 成13年10月20日(夕 刊)p.11
北 海 道 内 の病 院 の 病 院 長(59才)は,偽 の入 院 証 明書 や 診 療 報 酬 明細 書 を 作 成 し,保 険 金 や 診 療 報 酬 を計 約200万 円 をだ ま し と っ た(診 療 報 酬 の 不 正 請 求 の 外,民 間 保 険会 社 か ら もだ ま し とっ た)と して,警 察 に詐 欺 罪 で 逮 捕 され た。 逮 捕 され た の は院 長 の外,同 医 院 の 女 性 職 員2人,偽 装 入 院 で 保 険 金 を だ ま し取 っ た とみ ら れ る 上 川 管 内 の 自営 業(46才)と 同管 内 の 土 木 作 業 員(34才)で,平 成12年10月,自 営 業 者 が 「急 性 胆 の う炎 で3か 月 入 院 した 」 との 虚 偽 の 入 院 証 明 書 を作 成 して,生 命 保 険 金 社 か ら約170 万 円 を だ ま し取 っ た 外,同 様 の 手 ロ で 土 木 作 業 員 に も虚 偽 の 入 院 証 明書 を 作 成 して 別 の生 命 保 険 会 社 か ら も20万 円 を だ ま し と っ た。 さ ら に同 院 長 は 女 性 職 員 二 人 と共 謀 の 上,平 成12年7月 通 院 して い た 男 性 患 者 を入 院 した よ うに装 い,入 院 基 本 料 な ど を水 増 し した 虚 偽 の 診 療 報 酬 明細 書 を作 成,
医療 提供 体制 の現 状 と改 革(3) 175 診 療 報 酬 と して10万 円 を だ ま し取 った 。 警 察 で は偽 装 入 院 を繰 り返 して い た 可 能 性 が 高 い とみ て 余 罪 を調 べ て い る。
※ そ の後 の 警 察 の 調 べ に よ り,同 院 長 は 同 じ偽 装 入 院 の 手 口で さ らに 保 険 金 約790万 円 を搾 取 した 。 暴 力 団 員3人 が 「ア ル コ ー ル 性 肝 炎 」 な ど で 入 院 した との 虚 偽 の 入 院 証 明書 を作 り生 命 保 険 会 社 な どか ら270万 円 を だ ま し取 り,10数 人 の 患 者 が入 院 した よ う に装 い,国 民 健 康 保 険 団 体 連 合 会 を 通 じて520万 円 の 診 療 報 酬 もだ ま し取 っ て い た と して,11月10日
に同 院長(詐 欺 罪 で逮 捕 起 訴 済)は 再 逮 捕 され た。
そ の 後 の 論 告 求 刑 公 判 で は,院 長 に懲 役5年,女 性 職 員2人 の うち 看 護 師 長(67才)に は,懲 役2年 が 求 刑 さ れ た 。
*平 成14年2月1日(朝 刊)p.33
北 海 道 内 の 病 院(143床)が 医 師 や 看 護 婦 の 数 を 水 増 し,過 去5年 間 に健 康 保 険 な どか ら約10億 円 の 診 療 報 酬 を不 正 に請 求 し,受 給 して い た こ とが 道 社 会 保 険事 務 局 の調 査 等 に よ り発 覚 した 。 同 病 院 は 医 療 法 上 の基 準 で は 医 師 数11人 〜14人 必 要 で あ る の に 対 し4〜5人 程 度 の 常 勤 医 しか お らず, あ と は 同病 院 に勤 め て ない14人 の 医 師 の名 義 を借 り,常 勤 や 非 常 勤 医 師 と 装 う手 口 で水 増 し報 告 して い た 。
また,看 護 婦 につ い て も水 増 を し,入 院基 本 料 な どの 診 療 報 酬 を不 正 請 求 し,最 終 的 な 不 正 受 給 額 は総 額7億2000万 円 を不 正 に 受 給 して い た 。 医 療 機 関 の 診 療 報 酬 の 不 正 請 求 と して は,道 内 に お い て は 過 去 最 大 規 模 の も の
で あ っ た(同 年2月5日,朝 刊,p.31)。
さ ら に,同 病 院 は,勤 務 実 態 の な い 医 師 の名 義 を借 りて 道 に介 護 保 険 法 に 基 づ く指 定 介 護 療 養 型 医 療 施 設 の 虚 偽 指 定 を 申請 し,平 成12年4月 よ り13 年11月 迄,不 正 介 護 報 酬 約5千 万 円 を受 け続 けた こ と も発 覚 し,マ ス メ デ ィ アで 報 道 され た。 介 護 保 険 の不 正 受 給 に よ る指 定 介 護療 養 型 医療 施 設 の 取 り消 し処 分 は平 成12年4月 の 介 護 保 険 法 施 行 以 来,道 内 初 で あ る 。 同 病 院 で は,名 義 を借 りた 医 師 に 月 額20万 円前 後,看 護 師 に は 月 額3万 円 前 後
を謝 礼 と して 支 払 っ て い た 。 道 社 会 保 険事 務 局 は,同 病 院 の 「保 険 医 療 機 関 」 の指 定 取 り消 し と 「介 護 指 定 」 取 り消 し処 分 を行 い,不 正 受 給 額 の 返 還 と追 徴 金(不 正 受 給 額 の10%か ら40%)の 支 払 い を求 め る こ とに した(同 年3月1日,朝 刊,p.31)。
*平 成14年2月1日(朝 刊)p.31
道 内 の 歯 科 医 院(院 長76才)が 架 空 の 診 療 や,つ け増 し した りす る 手[]で 診 療 報 酬 を不 正 請 求 し,過 去5年 間 で 総 額 約340万 円 を 不 正 に 受 給 して い た と して道 地 方 社 会 保 険 医 療 協 議 会 は2月4日,同 歯 科 医 院 を 開設 して い た 歯 科 医 師 の 保 険 医 の登 録 を取 り消 す 処 分 を 答 申 した(処 分 は7日 付)。
*平 成14年3月1日(朝 刊)p,31
道 内 の 医 療 法 人 社 団施 設 開 設 の通 所 リハ ビ リテ ー シ ョ ン施 設 が,看 護 師 の カ ラ雇 用 な どで 介 護 報 酬 を不 正 に多 く受 け取 っ て い た こ とが 分 か り,道 が 発 表 した。 同 施 設 は,通 所 者40人(昨 年11月 以 降 は20人)に つ き4人 置 く べ き専 従 者 を2人 しか 置 か ず,タ イ ム カ ー ドを偽 造 して さ ら に2人 が 実 在
す る よ う に見 せ か け虚 偽 の 雇 用 通 知 書 を作 成 して 道 に提 出 して い た 。 こ の カ ー ドに は,同 法 人経 営 の 病 院 で 以 前 働 い て い た 看 護 師 の 名 前 を無 断 で 記 入 して い た。 さ らに,通 所 者20人 につ き2人 必 要 な専 従 者 の う ち1人 は作 業 療 法 士,理 学 療 法 士 な どの 有 資格 者 で な い と な らな い が,昨 年10月 迄 こ れ を満 た して い な か っ た 。 本 来 介 護 報 酬 を 通 常 の3割 減 で 請 求 す べ き と こ ろ を,満 額 請 求 し,受 領 して い た 。 水 増 し した 総 額 は423万 円 で,道 は不 正 分 の 返 還 を法 人 に指 導 す る と と も に,介 護 保 険 法 に基 づ く指 定 介 護 療 養 型 医 療 施 設 の 指 定 を3月15日 付 で取 り消 す 処 分 を決 め た 。
*平 成14年3月15日(夕 刊)p.12
介 護 保 険 サ ー ビ ス を 提 供 し て い る 道 内 の 根 室 管 内 の 民 間 非 営 利 団 体 (NPO)法 人 の 介 護 ス テ ー シ ョン が介 護 報 酬 を過 剰 請 求 して い た 問 題 で,
医療 提供 体 制の現 状 と改 革(3) 177 新 た に,ホ ー ムヘ ルパ ー の 「カ ラ派 遣 」 な ど不 正 請 求 を含 め,約60万 円 を 余 分 に請 求 し,支 払 い を受 け て い た こ とが15日,調 査 で 分 か っ た。 既 に判 明 し て い る過 剰 請 求 分 を加 え る と不 正 ・過 剰 請 求 は 計460万 円 に上 り,今 後 さ らに膨 らむ 可 能 性 も出 て きた 。 調 査 は,平 成13年7月 か ら8月 に か け て 国 保 団 体 連 合 会 に利 用 者 か らの苦 情 申 し立 て が あ っ て分 か っ た。
*平 成14年7月30日(朝 刊)p.19
道 内 病 院(150床)の 院 長 は1990年 代 前 半 か ら今 年3月 ま で 同 院 院 長 と同 じ医 大 出 身(内 科)の 医 師9人 を,実 際 は勤 務 して い な い の に名 義 を 借 り, 診 療 報 酬 や 介 護 保 険 サ ー ビス 費 を受 領 して い た こ とが 分 か った 。 同病 院 の 所 在 地 の 保 健 所 は31日,医 療 法 と介 護 保 険 法 に 基 づ く立 ち入 り検 査 を 実 施 す る 。 診 療 報 酬 や 介 護 保 険 サ ー ビ ス 費 は,医 師 数 が 設 置 基 準 に満 た な い 場 合,減 額 さ れ る が,同 病 院 は,設 置 基 準 で は 医 師4人 体 制 の と こ ろ,実 際 は一 時 期 を除 き,院 長,副 院 長 の2人 しか い な か っ た。 そ こで 同病 院 は, 米 国留 学 中 で 不 在 の 医 師 を 常 勤 と した り,学 生 医 師 を週3回 の 非 常 勤 医 師 にす る な ど して書 類 上,4人 ない し3人 の 医 師 が い る よ うに 装 っ て い た 。 これ らの 医 師 は,殆 どが1日 も出勤 しな い の に,病 院 と雇 用 契 約 を結 び,「常 勤 医 師 」 で 毎 月 約30万 か ら50万 円,「 非 常 勤 医 師 」 で20万 円 前 後 の 給 料 を も らっ て い た 。 病 院 側 は 医 師 数 を正 直 に届 け 出 て 報 酬 を減 ら され る よ り名 義 借 りの 給 料 を払 っ た 方 が 安 上 が り と考 え,医 師 らの 印 鑑 を作 り,出 勤 薄 に押 した り,薬 剤 処 方 箋 に不 在 の 医 師 の 印 鑑 を押 し,勤 務 して い る よ うに 見 せ か け て い た。 不 正 請 求 が確 定 した場 合,名 義 を貸 した 医 師 も医 師法 違 反 に 問 わ れ る可 能 性 が あ る。
北 海 道 新 聞 の 報 道 に よ る と,同 病 院 は過 去5年 以 上 にわ た り診 療 放 射 線 の 無 資 格 の 事 務 員2人 にX線 撮 影 させ た り,看 護 師 に つ い て も,平 成12年 夏 か ら平 成14年6月 まで 医 師 と同 様 に名 義 借 りを して い た こ とが 医 療 監 視 で 判 明 した外,医 師 が 毎 日宿 直 の 必 要 が あ った の に宿 直 して い な か っ た こ と も分 か り,同 病 院 の 診 療 体 制 の ず さ ん さが 浮 き彫 りに な っ た。 刑 事 告 発 が
予 定 され て い る(同 年8月16日,夕 刊,p.13)。
同病 院 に対 し,道 社 会 保 険 事 務 局 は12日,医 師 の 名 義 借 りな どに よ る同 病 院 の保 険 医 療 機 関 の 指 定 を12月 中旬 を 目途 に 取 り消 す こ と決 め,さ ら に昨 年 度,現 在 の病 院 の 隣 に 新 築 の 際,受 け て い た 新 病 院 に対 す る道 の 補 助 金 1億5千 万 円 の全 額 返 還 を求 め る 方 針 で あ る こ とが,同 年11月13日(朝 刊) で 明 らか に な っ た 。
以 上,平 成12年 か ら同14年 の3年 間 にお い て,道 内 の 医療 機 関 に お け る診 療 報 酬 や 介 護 報 酬 の 不 正 請 求 が 発 覚 し,北 海 道 新 聞 で 発 表 され た 事 例 で あ る (道外 の 不 正 請 求 は 除 外 し た)。 不 正 請 求 は道 内 に 限 らず,道 外 の 医 療 機 関 等 で も発 生 し,報 道 され て い る。
マ ス メ デ ィ ア で報 道 さ れ た不 正 請 求 は,医 療 過 誤 と 同様,氷 山 の一 角 で あ る と言 わ れ て い る。 平 成15年 に 入 っ て か ら も,道 内 の 大 学 病 院 に所 属 す る 医 師4人 と道 外 在 住 の 医 師3人 の 名 義 を借 りて診 療 報 酬 を不 正 に 受 給 して い た こ とが テ レ ビや 新 聞 で 大 き く報 道 され,道 民 の批 判 を浴 び て い る。 実 態 の な い 病 院 の 賃 金 台 帳 を 作 成 し,医 師 が 月 額100万 円 を受 け 取 っ た よ う に賃 金 台 帳 に記 載 しな が ら,実 際 に は18万 円 程 度 しか 渡 して い なか っ た 実 例 を含 め, 医 師 数 の虚 偽 報 告 に よ る介 護 報 酬 の 水 増 し請 求 な ど,目 に余 る 悪 質 な不 正 請 求 を行 っ て い る こ とが判 明 して い る。
既 に論 述 した が,現 在 の 「診 療 報 酬 体 系 」 と 「診 療 報 酬 審 査 制 度 」 の 下 で は,不 正 請 求 に歯 止 め をか け る こ と は 困難 で あ る。 これ らの制 度 改 革 を 図 ら な い 限 り,医 療 機 関 に よ る不 正 請 求 は今 後 も継 続 的 に発 生 す る で あ ろ う 。新 聞 な ど で不 正 請 求 が 表 面 化 す る の は 「氷 山 の 一 角 」 で あ る こ と を国 民 は よ く 再 認 識 す る 必 要 が あ る 。
(b)全 国 の 医 療 機 関 に よ る不 正 請 求 の 事 例(平 成11,12年 度 分)
*『 北 海 道 新 聞 』 平 成12年12月19日(朝 刊),p.26
全 国 の保 険 医 療 機 関 や 保 険 医 が 診 療 報 酬 を不 正 に 請 求 し,都 道府 県 か ら返 還 す る よ う指 導 さ れ た 総 額 が,平 成11年 度 は,65億2000万 円 に 上 が る こ と
医療 提供 体制 の現 状 と改 革(3)
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が,厚 生 労 働 省 が 同年12月18日 に ま と め た指 導 ・監 査 結 果 で 分 か っ た 。 昭 和48年 度 に調 査 を 開始 して 以 来,返 還 額 は平 成 元 年 度 の69億1000万 円 に次 い で2番 目に多 か っ た 。 道 内 で は 上 川 管 内 の 歯 科 医 院 が,実 際 に診 療 を し て い な い 分 まで 請 求 して,得 た2380万 円 を,ま た 函 館 市 内 の 内科 医 院 も 同 じ く450万 円 を返 還 。 両 施 設 の保 険 医 療 機 関 指 定 と,そ れ ぞ れ 一 人 ず つ の 保 険登 録 医 が取 り消 さ れ た 。
診 療 報 酬 の不 正 請 求 は平 成9年 度 か ら年 間60億 円 前 後 で推 移 し,平 成2年 度 初 め の3倍 近 くに な っ て い る54)。
*『 北 海 道 新 聞』 平 成13年12月27日(朝 刊),p.29
厚 生 労 働 省 は,平 成12年 度 に診 療 報 酬 を不 正 に 請 求 した全 国 の 医療 機 関 に 対 す る 指 導 と監査 の 状 況 を ま とめ た 。
不 正 に 得 た た め,後 に健 保 組 合 な どの 保 険者 に 返 還 さ れ た 診 療 報 酬 の 総 額 は,前 年 度 よ り5億7000万 円 減 っ た もの の,過 去4番 目 に多 い59億5000万 円 に 上 っ た。 悪 質 な 「不 正 請 求 」 に よ っ て保 険 医 療 機 関31施 設 と,各 施 設 の 医 師,歯 科 医 師 計36人 が 保 険 医 な ど の指 定 を取 り消 され た 。 こ の う ち福 岡県 の 病 院 は 医 師 数 を水 増 し て,1件 当 た り過 去 最 高 額 の16億4800万 円 を 返 還,岩 手 県 の 国 立 病 院 は,国 立 病 院 と して 初 め て指 定 を取 り消 さ れ た 。 道 内 で は,札 幌 市 の2つ の 歯 科 医 院 と小 樽 市 の外 科 医 院 の 計3施 設 と,各 施 設 の 医 師,歯 科 医 師 の 計3人 が 保 険 医 の指 定 が 取 り消 し され た55)。
(3)不 正 請 求 に対 す る取 り組 み (a)厚 生 労 働 省
医 療 機 関 に よる 診 療 報 酬 の 不 正 請 求 につ い て は 上 記 で述 べ た 通 り,全 国 で 年 間,約60億 円 もの 不 正 が 毎 年 明 らか に な っ て い る。 医 療 機 関 を監 督 す る主 務 官 庁 と し て の厚 生 労 働 省 の これ ま で の 不 正 請 求 に対 す る 「取 り組 み」 は 決
54)『 北 海 道 新 聞 』 平 成12年12月19日(朝 刊),26ペ ー ジ 。
55)同 上,平 成13年12月27日(朝 刊),29ペ ー ジ 。
して 十 分 な もの で は なか っ た 。 平 成10年 度 に入 り厚 生 省 は,跡 を絶 た な い 不 正 請 求 に 取 り組 む た め,本 腰 を上 げ る 様 子 が み られ る よ うに な っ た。 厚 生 省 監 修 『厚 生 白書(平 成10年 度 版)』 の 中 で,「 昨今,悪 質 な診 療 報 酬 の不 正 請 求 事 件 が 跡 を絶 た な い こ とか ら,不 正 請 求 に た い して厳 正 に 対 処 す る こ と も 求 め られ て い る」 と し,医 療 機 関 の指 定 の 取 り消 しが 行 わ れ た 場 合,再 指 定 を行 わ な い こ とが で き る期 間 を現 行 の2年 か ら最 長5年 に改 め る と と も に, 診 療 報 酬 の 不 正 請 求 に係 る 返 還 金 に対 す る加 算 の 割 合 を現 行 の10%か ら40%
に改 め る と した改 正 案 が1997(平 成9)年11月,医 療 福 祉 審 議 会 の運 営 部 会 にお い て 審 議 が 行 わ れ,1998(平 成10)年1月 の 同 審 議 会 等 の 答 申 を経 て2 月10日 「国 民 健 康 保 険 法 等 の 一 部 を修 正 す る法 律 」 が 国会 に提 出 さ れ,4月 30日 に衆 議 院 で 可 決 され た56)。
しか し,厚 生 省 が 上 記 の取 り組 み や 防 止 策 を 講 じた 後 の平 成12年 度 と平 成 13年 度,平 成14年 度 にお い て も,悪 質 で 高 額 の 「不 正 請 求 」 が発 生 して い る の が 実 態 で あ る。 今 後,厚 生 労 働 省 が 思 い 切 っ た 罰 則 の 強 化 や 診 療 報 酬 制 度 の抜 本 改 革,レ セ プ ト審 査 の 改 革 を実 行 し な い 限 り,不 正 請 求 の 続 発 を抑 え る こ とは 無 理 で あ る 。
(b)日 本 医 師 会
医 療 過 誤 と同 様 に,医 療 機 関 に よ る診 療 報 酬 や 介 護 報 酬 の不 正 請 求 は,昨 今,マ ス メ デ ィ ア で頻 繁 に報 道 され て い る。 医 師 や 歯 科 医 師 に よ る 「不 正 請 求 」 は,「 医 の 倫 理 」 を 忘 れ た 医 師 に よ る 悪 質 な もの が 多 い 。 これ まで 日本 医 師 会 や 日本 歯 科 医 師 会 は,医 師 に よ る 「不 正 請 求」 に対 して は真 剣 な取 り 組 み を 国民 に 示 す よ うな こ とは な か っ た 。 新 聞 で報 道 され た 「不 正 請 求 」 の 殆 ど は,刑 法 で 規 定 す る 「詐 欺 罪 」 に 当 る こ と を 日本 医 師 会 と 日本 歯 科 医 師 会 は深 く認 識 し,不 正 請 求 の予 防 策 を講 ず る と と もに,不 正 請 求 な ど 明 らか な 違 法 請 求 が 行 わ れ た 場 合,そ の 医 師 会 員 に対 して 断 固 た る処 置 を講 じ,非 医 師 会 員 に 対 して も指 導 的 助 言 を与 え る こ と に よ っ て,国 民 の信 頼 回 復 に 努
56)厚 生 省 監 修 『厚 生 白 書 』 平 成10年 度 版,㈱ ぎ ょ うせ い,254ペ ー ジ。
医療提 供 体制 の現 状 と改革(3)
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め る こ とが 必 要 で あ る。(c)そ の他 の 機 関
医 療 費 を抑 制 し,適 正 な請 求 を確 認 す る た め,「 レセ プ ト」 の 審 査 ・点 検 が 行 わ れ るが,実 際 に は大 量 の レセ プ トの審 査 は,1枚 当 り僅 か 数 十 秒 程 度 と言 わ れ て い る。 不 正 防止 の 観 点 か ら,レ セ プ ト審 査 等 に つ い て,池 上 教 授 は次 の よ う に述 べ て い る。 「レ セ プ トの 審 査,点 検 以外 に も,医 療 機 関 を チ ェ ッ クす る よ り強 硬 な 方 法 が あ る。 そ の 一 つ が 各 都 道 府 県 の担 当 部 局 と地域 の 医 師会 が 共 同 で行 う 「指 導 」 で あ る 。 具 体 的 に は,あ らか じめ 抽 出 して お い た レセ プ トに対 応 す る カ ル テ を照 合,点 検 して 問 題 箇 所 が あ れ ば減 額 し,そ の 上 で 医 療 機 関 に 対 して,同 様 な誤 りが あ る か ど うか を過 去 に湖 っ て 自主 的
にチ ェ ッ クす る よ う に求 め る 。 そ れ に 基 づ い て 医 療 機 関 は各 保 険 者 に対 して 不 適 切 に請 求 した 金 額 を 返 還 しな け れ ば な らな い 。 どの よ う な基 準 で 指 導 の 対 象 に な るか は 必 ず し も明 らか で な い が,他 と比 べ て収 益 を上 げ て い る 医 療 機 関 が 選 ば れ や す い よ うで あ る。
も う一 つ が 「監 査 」 で あ り,監 査 は 架 空 請 求 な ど明 らか な違 法 行 為 が 行 わ れ た可 能 性 が 高 い 場 合 に 実 施 さ れ る 。 不 正 事 実 が 確 認 され た 場 合 に は,保 険 医 療 機 関 と して の 一 時 的,あ る い は 永 久 的 な 指 定 の 取 り消 しが 行 わ れ る 。 し か しな が ら,平 成4(1992)年 に お い て 監 査 の 対 象 とな った の は45施 設 の75 人 の 医 師 で,こ の う ち指 定 取 り消 しが あ っ た の は20施 設 の21人 の 医 師 の み で
あ っ た 」57)。
行 政 機 関 に よ る 「立 ち 入 り検 査 」 や 「業 務 監 査 」 が 行 わ れ る場 合,緊 急 性 の 問 題 が な け れ ば 「抜 き打 ち検 査 」 が 実 施 さ れ る こ とは な い 。 こ の 点 につ い て は,長 い 間,医 療 機 関 に勤 務 して い る管 理 職 で あ れ ば,承 知 して い る と こ ろ で あ ろ う。
厚 生 労 働 省 は,不 正 事 件 の多 発 を受 け,平 成9年,抜 き打 ち検 査 を行 う よ う各 自治 体 に 通 知 した が,道 内 で 実 施 例 は殆 ど ない 。 道 は抜 き打 ち検 査 につ
57)池 上 ・キ ャ ン ベ ル 『日 本 の 医 療 』176〜177ペ ー ジ 。
い て,① 検 査 時 に 必 要 な書 類 が 見 つ か ら な い と検 査 が 非 効 率 的 で あ る こ と,
② 病 院 と協 力 して 地 域 医療 をつ くる 立 場 もあ り,最 初 か ら疑 うわ け に い か な い こ とな ど を述 べ て い る。
最 近,道 民 の批 判 を浴 び た 道 内 の 医 師 水 増 し問 題 で 不 正 発 覚 が 遅 れ た 原 因 や 背 景 に は,形 骸 化 した検 査 行 政 に 問 題 が あ る と も述 べ て い る 。 道 内 に お け る7億 円 を上 回 る 医 師 水 増 し不 正 受 姶 を初 め と して,全 国 に お け る平 成12年 度 の 診 療 報 酬 等 の不 正 請 求 は,発 覚 した もの だ け で59億5000万 円 で あ る 。 役 所 の 言 う 「医 師 を疑 わ な い」 前 提 は既 に 崩 壊 して い る と 同新 聞 は 医 師 を批 判
して い る 。
検 査 行 政 の こ う した 姿 勢 に つ い て,民 間 非 営 利 団 体(NPO),権 利 擁 護 市 民福 祉 オ ンブ ズ マ ン機 構 の 石 田 幸 子 氏(北 海 道 の幹 事)は 「無 意 味 な事 前 通 告 検 査 を続 け る の は,役 人 の再 就 職 な ど業 者 と癒 着 の構 造 が あ る か らで は な い か 。 患 者 等,利 用 者 も含 め た 第 三 者 機 関 に よ る抜 き打 ち検 査 を しな い とだ め で す 」 と述 べ て い る58)。
(4)不 正 請 求 の 防 止 (a)防 止 策 の必 要 性
「不 正 請 求」 の 発 生 防 止 につ い て は 医療 過 誤 と同様,厚 生 労 働 省,日 本 医 師 会,日 本 歯 科 医 師会,各 保 険者,都 道 府 県 の 関 係 機 関 が 一 致 協 力 し,解 決 を 図 ら な け れ ば な らな い 重 要 な 国 民 的 課 題 で あ る。 現 在,跡 を絶 た な い 診 療 報 酬 等 の 不 正 請 求 が 行 わ れ る の は,不 正 受 給 に対 す る 認 識 が 欠 如 して い る 医 師 や 歯 科 医 師 もい る か らで は な い か と思 わ れ る。 医 療 過 誤 は医 師 や 看 護 師 な どの 不 注 意 に よ り引 き起 こ され る もの が 多 い が,診 療 報 酬 や 介 護 報 酬 の 不 正 請 求 は,意 図 的 に行 わ れ る も のが 殆 どで あ る 。 悪 質 な診 療 報 酬 等 の不 正 受 給 は,明 らか に刑 法 上 の 「詐 欺 罪 」 に 当 た り,刑 罰 は10年 以 下 の 懲 役 と規 定 さ れ て い る。
58)『 北 海 道 新 聞 』 平 成14年8月6日(朝 刊),31ペ ー ジ 。
医療 提 供体 制 の現状 と改 革(3) 183 従 っ て,悪 質 な診 療 報 酬 の不 正 請 求 は違 法 行 為 で あ る こ とを 医 師 と歯 科 医 師 は 認 識 す べ きで あ る 。
筆 者 が 平 成12年 〜14年 に北 海 道新 聞 で 報 道 され た 医療 機i関に よ る不 正 請 求 に つ い て 論 述 した もの は,い ず れ も悪 質 と思 わ れ る もの ば か りで あ っ た 。
第4章 で 「医 師 の 倫 理 欠 如 」 を 指 摘 した が,本 章 の不 正 請 求 で も同様 の こ と を再 度 指 摘 し な け れ ば な ら な い 。 詐 欺 行 為 を行 う医 師 は,「 医 師 は一 般 人 と異 な る」 とい う 間違 っ た 考 え や 「医 師 は何 を し て も誰 か ら も指 摘 を受 け な い」 とい っ た特 権 意 識 が あ るか らで は な い だ ろ うか 。
医療 に対 す る 国 民 の意 識 が 急 速 に 変 化 す る 中,医 師 の 意 識 も変 化 しな け れ ば な ら ない 。 これ まで の古 い 日本 的 医 療 の体 質 は時 代 に そ ぐわ な い こ と を医 師 は認 識 す べ きで あ る。 どち らか とい う と,厚 生 労 働 省 は,こ れ ま で患 者 側 よ り医 師 会 側 に 有 利 な診 療 報 酬 体 系 を構 築 して き たが,今 後 は 国民 や 患 者 を 中心 に し,医 師 の 「不 正 請 求 」 が で き に くい診 療 報 酬 体 系 に再 構築 す る必 要 が あ る 。 こ れ に よ り不 正 請 求 は相 当 減 少 させ る こ とが で き る はず で あ る。
こ れ まで,国 民 は 大 変 厳 しい 経 済 状 況 下 で,賃 金 や 賞 与 の切 り下 げ,増 税, 保 険 料 の 引 上 げ,医 療 費 自己 負 担 の 引 上 げ な ど を認 め て きた 。 こ う した 状 況 に もか か わ らず,医 師(開 業 医)に 対 す る 「診 療 報 酬 の 引 上 げ 」 は平 成13年 度 ま で 定 期 的 に 実 施 さ れ て きた 。 ま た,多 くの 国 民 が 廃 止 を求 め て きた 「医 師 の優 遇 税 制 」も認 め て きた の で あ る。こ う した 背 景 に は 「医 療 の 質 の 向 上 」,
「医療 過 誤 の 防 止 」,「 過 剰 診 療 の 防 止 」 や 「不 正 請 求 の根 絶 」 な ど を国 民 が 願 っ て きた か らで あ る。 そ れ に もか か わ らず,国 民 の願 い を踏 み に じ り,悪 質 な 「不 正 請 求 」 を行 う医 師 や 歯 科 医 師 が 跡 を絶 た な い現 状 を踏 ま え,筆 者 は 「不 正 請 求 」 を根 絶 す る た め,次 の 防 止 策 を提 言 した い 。
(b)不 正 請 求 の 防 止 の 提 言
① 請 求 の 審査 を コ ン ピ ュー タ化 す る
現 在,医 療 に お い て もIT化 の推 進 が 叫 ば れ,す で に 多 くの 大 病 院 にお い て は 膨 大 な カ ル テが 電 子 化 さ れ て お り,一 般 病 院 に お い て も電 子 カ ル テ が 導 入 され る 時 代 に入 っ た 。 ま た レセ プ トの 請 求 も,誰 が 見 て もわ か る よ
う に,大 多 数 の病 院 で は コ ン ピ ュー タ で処 理,印 刷 して 請 求 して い る。
しか し 「レセ プ トの 審 査 業 務 」 は,い まだ に手 作 業 に よ っ て行 わ れ て い る の が 実 情 で あ る。 大 量 の レセ プ ト審 査 業 務 を コ ン ピュ ー タ化 す る こ と に よ り,「 審 査 業 務 の 迅 速 化 」 が 図 られ る ほ か,「 不 正 請 求 の発 見 ・防 止 」 に も役 立 て る こ とが で きる 。 す な わ ち,① 診 断 名 に対 す る 「適 正 検 査 」 の 実 施 の 有 無 「不 適 正 薬 剤 」 の 使 用 な ど を細 か にチ ェ ッ ク す る こ とが 可 能 と な る,② 過 去 にお い て 請 求 不 適 正 と思 わ れ る 医 療 機 関 を コ ン ピ ュ ー タ に入 力 して お き,次 回 の 請 求 時 に は,そ の 内容 が 自動 的 に は じ き 出 させ る,③ 現 在,レ セ プ トの 開示 請 求 は可 能 と な っ て は い るが,カ ル テ の よ うに は進
ん で い な い。 この 原 因 は,患 者 や遺 族 か ら レセ プ ト開示 を請 求 さ れ て も, レセ プ トを保 管 して い る 「保 険 者 」 は,膨 大 な レセ プ トか ら抽 出 し,開 示 す る の は大 変 な 手 作 業 に な り,困 難 で あ る。 しか し,コ ン ピ ュ ー タ化 に よ り,こ の こ と は 解 決 され る 。 コ ン ピ ュ ー タ に よ る 開示 に よ っ て,「 行 っ て もい ない 治 療 」,「服 用 して も い な い 薬 剤 」,「行 っ て もい な い 検 査 」 な ど を 患 者 側 か ら発 見 す る こ とが 可 能 とな る。 こ の よ う に,現 在 の 「手 作 業 」 に よ る レセ ブ.トの 審 査 業 務 の コ ン ピュ ー タ化 は,…審査 業 務 の省 力 化 と コス ト 軽 減,診 療 報 酬 の 不 正 防 止 に寄 与 す るの で あ る 。 ④ 不 正 請 求 防 止 の観 点 か
ら,で き る だ け 早 期 に フ ロ ッ ピ ー デ ィス ク に よ る レセ プ ト請 求 に移 行 す べ きで あ る。
② 刑 事 責 任 を問 い,行 政 処 分 を 強化 す る
診 療 報 酬 の不 正 請 求 は,我 が 国 の 「国 民 皆 保 険 制 度 」 を利 用 して,国 家 (税 金)や 国民 ・患 者(保 険 料 や 患 者 一 部 負 担 金)を 欺 い て 診 療 報 酬 を不 正 に 受 給 す る もの で,許 す こ との 出 来 な い犯 罪 行 為 で あ る 。 不 正 請 求 の パ ター ン に は,① 全 く診 療 して い な い の に,診 療 した こ とに して 保 険 者 に請 求 す る,② 全 く診 療 して い ない の に,診 療 した こ と に して患 者 一 部 負 担 と して 患 者 に まで 請 求 す る,③ 患 者 に不 必 要 な検 査 を実 施 して 請 求 す る 。 特 に① ② は不 正 の 意 思 を もっ て レセ プ トを作 成 し,保 険 者 や患 者 に 医療 費 を 請 求 す る最 も悪 質 な犯 罪 行 為 で 詐 欺 罪 で あ る。本 章(2)で,道 内 にお け る 「不
医療 提供 体 制 の現 状 と改 革(3) 185 正 請 求 の事 例 」の 論 述 中,最 も悪 質 な例 と して 「死 亡 して い た5人 の 患 者 」 を診 療 して い た か の よ う にみ せ か け て 架 空 請 求 をす る とい う医 療 機 関 も あ っ た 。 また,あ る歯 科 医 院 で は,患 者 か ら 自費 診 療 と して 治 療 代 を 受 け取 っ て い た に もか か わ らず 「保 険 診療 」 を した か の よ うに 装 っ て不 正 請 求 を 繰 り返 し,3千 万 円 以 上 を不 正 受 給 して い た 。
医 師 や 歯 科 医 師 に よ る上 記 の よ う な悪 質 な 診 療 報 酬 の不 正 請 求 に対 し て は,行 政 処 分 の 強 化 を 含 め,刑 事 事 件 と して 取 り扱 う こ と を国 民 の多 くは 求 め て い る の で あ る 。 同 一 の 医 師 ・歯 科 医 師 が 同一 不 正 を複 数 回 に わ た っ て お こ した場 合 は,保 険 医 療 機 関 の 取 り消 しや 保 険 医登 録 の 取 り消 し に止 ど ま らず,状 況 に よ っ て は医 師(歯 科 医 師)免 許 の 一 時 停 止,有 期 停 止, 取 り消 しな ど,現 在 よ り強 い 行 政 処 分 を行 う必 要 が あ る 。 そ う しな け れ ば 不 正 請 求 の根 絶 は望 め な い 。
③ 診 療 報 酬 制 度 を 改 革 す る
医 療 機 関 の 診 療 報 酬 不 正 請 求 の 誘 発 原 因 の 一 つ とな っ て い る現 在 の 診 療 報 酬 体 系 の 「出来 高 払 い 制 」 を是 正 し,不 正 請 求 が で き に くい診 療 報 酬 体 系 に改 め,現 在 の 「出 来 高 払 い 制 」 か ら 「患 者 疾 病 別 の 包 括 払 い 制(定 額 払 い 制)」 に 一 層 推 進 す る必 要 が あ る。 将 来 的 に は 粗 診 粗 療 に 繋 が ら な い
よ う に配 慮 し,欧 米 諸 国 で導 入 され て い るDRG(DiagnosisRelatedGroup) とPPS(ProspectivePaymentSystem)を 組 み 合 わ せ た 体 系 を構 築 す る こ とが 不 正 請 求 の 防 止 に繋 が る と思 わ れ る 。 現 在 の 「出 来 高 払 い 制 」 は ど う して も医 師 を 「過 剰 診 療 」 や 「不 適 切 診 療 」 に走 らせ て い る の が 実 態 で あ る。高 度 医 療 や 急 性 期 疾 患 は 「出 来 高 払 い 制 」,高 齢 者 医療 や慢 性 疾 患, プ ラ イ マ リー ケ ア な どは 「包 括 払 い 制(定 額 払 い 制)」 の 組 み合 わせ にす る こ とが よい と思 わ れ る。
④ 不 正 請 求 を積 極 的 に公 表 す る
不 正 請 求 は,余 程 大 き な問 題 とな らな い 限 り,新 聞 な ど に よ っ て 「公 表 」 され る こ と は少 な い よ う で あ る 。 不 正 請 求 防 止 の観 点 か ら今 後 は,悪 質 な
「不 正 請 求 」 と認 め られ た場 合 は ,不 正 金額 の多少 に拘 らず何等 かの方法
で 公 表 す べ き で あ る。
⑤ 医 師 会 は不 正 請 求 の 防 止 策 を提 示 す べ きで あ る
日本 医 師 会 は,医 療 機 関 に よ る 「不 正 請 求 」 に対 して は,ど ち らか とい う とこ れ まで 消 極 的 に対 応 して きた よ う に思 わ れ る 。 筆 者 が 第6章 で論 述 す る 「医 療 保 険 制 度 」 に 関 す る ア ンケ ー ト調 査 の な か で,「 診 療 報 酬 の不 正 請 求 」 の 設 問 に対 す る 回答 で は,不 正 請 求 を行 うの は ご く 「一 部 の 医療 機 関 」 と思 う と回答 した 人 が31%,不 正 請 求 は新 聞 報 道 以 外 で も程 度 差 こ そ あ れ 「相 当 数 の 医 療 機 関 」が お こ な っ て い る と思 う と 回答 した 人 が63.4%
で あ っ た 。 この こ とか ら,ア ンケ ー トに 参 加 した 半 数 以 上 の 人 が 医 療 機 関 に よ る 「診 療 報 酬 の不 正 請 求 」 は行 わ れ て い る と疑 念 を抱 い て い る の で あ る。 ア メ リ カで は 医 師 会 自 らが 医 師 の診 療 行 為 を 監 視 す る組 織 を有 し,相 当 に厳 しい と言 わ れ て い る。 日本 医 師会 も今 後,医 療 機 関 に よ る診 療 報 酬 の 不 正 請 求 の 防 止 に対 す る具 体 的 な 防止 策 を提 示 し,失 わ れ た 国 民 の 信 頼
を回 復 す る べ き で あ る。
⑥ 「抜 き打 ち 」 の 医療 検 査 と監 査 を行 う
「医 療 検 査 」 と 「監査 」 は,通 常1か 月 程 前 に,検 査 内 容 な どが 通 知 さ れ る。 そ の 理 由 と して,検 査 す る行 政 側 が 医 療 機 関 を不 審 に思 わ ず,信 頼
して い る か ら と も い え る。 しか し悪 質 な不 正 請 求 が 多 発 す る現 在,医 師 や 医療 機 関 に対 す る行 政 側 の 信 頼 は 大 き く失 わ れ て い る の が 現 状 で あ る。
不 正 請 求 を 防 止 す る 観 点 か ら,今 後 は行 政 に よ る検 査 や 監 査 は 「抜 き打 ち 」 に改 め る と 同時 に,不 正 請 求 防 止 オ ン ブズ マ ン制 度 を設 置 し,医 療 に 詳 しい 弁 護 士 や 医 師 の ほ か 医療 関 係 者 も選 任 し て,患 者 の 苦 情 解 決 を含 め 医療 監 視 を行 う こ と も必 要 で あ ろ う。
⑦ 患 者 が 良 質 な 医療 機 関 を選 択 す る
21世 紀 の新 しい 医療 は,患 者 が 医 療 を 選 択 す る 時代 に入 っ た 。不 正 請 求 を防 止 す る観 点 か ら も,患 者 は 質 の 良 い病 院 を選 択 す る こ とが 必 要 で あ る が,実 際 に は 困 難 な こ と で あ る 。 そ こ で,良 い 医療 機 関 を選 択 す る指 標 の 一 つ に な る の が(財)日 本 医療 機 能 評 価 機 構 に よ る 「機 能 評 価 認 定 」 の有
医療提 供体 制 の現状 と改 革(3) 187 無 で あ る 。 同機構 は,厚 生 省 と 日本 医 師会 等 が 後 押 し(援 助)し て 設 立 さ れ た もの で あ り,平 成14年 末 で全 国 の病 院 の6.4%(全 国 で816施 設,道 内 で は42施 設)が 評 価 の 認 定 を受 け て い る 。 評 価 の 認 定 を受 け た病 院 は 「医 療 の 安 全 面,病 床 の規 模,人 事 配 置,院 長 以 下 全 職 員 の研 修 会,病 院 の 情 報 公 開,24時 問 の 検 査 体 制,救 急 医 療 体 制,そ の 他 」 を ク リ ア して初 め て
「質 」 の 良 い 病 院 と評価 認 定 され る の で あ る 。
筆 者 が この こ とを述 べ た 理 由 は,機 能 評 価 認 定 を受 け た 病 院 は 通 常,良 質 な 医 療 を提 供 して い る こ との ほ か,過 剰 診 療 ・不 適 切 診 療 ・不 正 請 求 な
ど を起 さ な い こ と,医 療 過 誤 な ど を含 め患 者 が 安 心 して 治 療 を任 せ られ る こ とが 証 明 され た 医療 機 関 で あ る と思 わ れ る か らで あ る。 道 内 に お い て も
「機 能 評 価 認 定 」 を 申 請 す る病 院 が 増 え続 け て お り,医 療 の 「質」 の 向 上 と不 正 請 求 の 減 少 が期 待 され て い る。
結 語
本 章 で は,医 療 機 関 に よる 診 療 報 酬 の 「不 正 請 求 」 につ い て 論 述 して きた 。 診 療 報 酬 の 「レセ プ ト請 求 シス テ ム」 を変 え,審 査 体 制 を い くら厳 しい もの に 改 め て も現 在 の 「診療 報 酬 体 系 」 が 続 く限 り不 正 請 求 の 根 絶 を図 る こ とは 無 理 で あ ろ う。「行 っ て もい な い診 療 」を さ も行 った よ うに 装 い,レ セ プ トを請 求 し, 国 民 か ら集 め た保 険 料 や 患 者 一 部 負 担 金 を だ ま し取 る な どの 詐 欺 行 為 は 良 識 あ る国 民 か ら考 え られ な い こ とで あ る。 これ らの行 為 は重 大 な犯 罪 行 為 で あ る こ と を 医 師 や 医 療 機 関 の 関係 者 は 認 識 しな けれ ば な ら ない 。
医 療 機 関 に よ る診 療 報 酬 や 老 人 保 健 施 設 に よ る 介 護 報 酬 の不 正 受 給 が発 覚 し た 場 合,単 に 「運 が 悪 か っ た 」 とか,見 つ か っ た か ら 「不 正 金 額 を返 還 」 す れ ば,あ とは 軽 い行 政 処 分 で終 わ るか ら,と い う安 易 な考 え方 は 改 め な け れ ば な ら な い 。
現 在,国 民 は,医 療 に対 す る 意 識 も次 第 に高 ま り,「 良 質 な 医療 」 ・ 「医 療 過 誤 」 ・ 「過 剰 診 療 」 ・ 「不 正 請 求 」 に対 して は 深 い 関 心 を もつ よ う に な って き た。 跡 を絶 た な い 医 療 機 関 に よ る 「不 正 請 求 」 を な くす た め に は,「 診 療 報
酬 制 度 」 の 改 革 が 必 要 で あ る が,政 府 は平 成14年 度 も 同制 度 改 革 を後 回 し に し て,国 民 に 「保 険料 の 値 上 げ 」 や 「患 者 一 部 負 担 金 の 引 上 げ」 を強 え る結 果 と
な っ た 。
政 府 や 日本 医 師会 は,こ れ ら不 正 請 求 の 根 絶 や 過 剰 診 療 の 防 止 を実 行 す る た め に も,医 療 機 関 が不 正 請 求 を実 行 しに くい 診 療 報 酬 体 系 の抜 本 改 革 を推 進 す
る こ とが 必 要 で あ る 。
平 成15年2月17日 付 の 新 聞 報 道 に よ り 「政 府 管 掌 健 康 保 険(政 管 健 保)か ら 給 付 さ れ る 医 療 費 が2002年 度 上 半 期(4‑9月)に 前 年 同 期 比4.0%減 少 した こ とが 同 年2月16日 まで に社 会 保 険 診 療 参 療 報 酬 支 払 い 基 金 の 医療 費 動 向調 査 で 分 か っ た 。 この 原 因 は,平 成14年4月 か ら実 施 され た診 療 報 酬 の 平 均2.7%
の 引 き下 げ,同 年10月 か ら の老 人 保 健 の 自己 負 担 の 実 質 的 な増 額 等 に よ り,患 者 が 受 診 を控 え た 結 果 に よ る もの と思 わ れ て い る」59)。
平 成15年4月 か らは,多 くの 国 民 が 反 対 した に も拘 らず,被 用 者 保 険 本 人 の 一 部 負 担 が2割 か ら3割 に引 き上 げ られ
,患 者 負 担 が 増 大 す る こ と に な っ た 。 患 者 一 部 負 担 増 は,受 診 控 え に よる 国 民 の健 康 悪 化 な どが 大 き く心 配 され て い る。
こ う し た患 者 一 部 負 担 増 に よ っ て 低 所 得 者 の 受 診 が控 え られ,そ の 結 果,医 療 機 関 の 診 療 収 入 が 減 少 す るか も しれ な い。 医 療 機 関 が これ ま で の 診 療 収 入 の 維 持 を図 ろ う とす る と,こ れ ま で 以 上 に 「過 剰 診 療 」 ・ 「不 適 切 診 療 」 ・ 「不 正 請 求 」 ・ 「医 師 の 名 義 貸 し に よ る 不 正 請 求 」 な どが 行 わ れ る こ とが 懸 念 さ れ る。
日本 医 師 会 は 失 い か け て き た 国民 の 信 頼 回復 の た め に も,患 者 の立 場 に立 っ て 国民 の 生 命 と健 康 を守 る た め の 医療 保 険 制 度 の 改 革 に積 極 的 な姿 勢 を う ち だ す こ と を強 く望 み た い 。
平 成15年2月 に,筆 者 が 居 住 す る 小 樽 市 内 の 老 人 保 健 施 設(100床)で 介 護 報 酬 不 正 受 給 が発 覚 した。 関 係 者 の 試 算 に よる と,同 施 設 に よ る介 護 報 酬 の 不
59)『 北 海 道 新 聞 』 平 成15年2月17日(朝 刊),2ペ ー ジ 。
医療提 供体 制 の現状 と改革(3) 189 正 受 給 額 は,介 護 保 険 制 度 が 始 ま っ た 平 成12年4月 か ら平 成14年 の 秋 ま で の2 年 半 余 で3億 円 を超 え る可 能性 も あ る 。 同 施 設 長(医 師)は,不 正 受 給 を 認 め な が ら も 「だ ます つ も りは な か っ た」,「不 正 受 給 で 返 還 請 求 が あ れ ば お金 は 返 す 」,「以 後 は この よ う な こ とが 起 きな い よ う に充 分 注 意 を す る」 と述 べ て い る60)。 こ う し た発 言 は,不 正 受 給 が 犯 罪 行 為 で あ る とい う認 識 が 相 当 欠 如 し て い る と思 わ れ る 。
医 療 過 誤 と 同様,医 療 機 関 や 老 人 介 護 施 設 に よる 「不 正 請 求 」 が 今 後 起 こ ら な い よ う にす る た め に も,国 民 一 人 一 人 が 医 療 や介 護 制 度 の現 状 を再 認 識 し, 医 療 制 度 や 介 護 制 度 に対 す る 意 識 改 革 を はか る こ とが 重 要 で あ る。
(平成15年5月6日 提 出)