少年事件における本人特定報道禁止の意義
著者 渕野 貴生
雑誌名 静岡大学法政研究
巻 5
号 3‑4
ページ 297‑335
発行年 2001‑03‑15
出版者 静岡大学人文学部
URL http://doi.org/10.14945/00008832
論 少 説 年 事 件 に お け る 本 人 特 定 報 道 禁 止 の 意 義
渕 野 貴 生
一 課 題 一一 少 年 の本 人特 定報 道禁 上 に対 す る批 判 1
. 日本
2
. ア メ リ カ
.
3 小. 括 一 考 察 1
.表 現 の自 由 規制 のあ り方 2 保. 護す べき 利益 の重 要性 と 侵害 の定 型性 0 名誉
・プ ラィ バシ ー
② 社会 復 帰 利の 益 3 規. 制 の過 剰性 過︑ 少 性 関に す る問 題 少年 事件 にお るけ 本人 特定 報道 禁止 の意 義 一 七一九
法政 研究 五巻 三
・四 号 含一〇
〇 一年
︶ 0少 年 が 公 開 刑の 事 裁判 に付 され た場 合
②報 道 機 関 独が 自 に情 報 を 入手 した 場 合 0 そ の他 の問 題 4 少. 年 の本 人特 定事 実 の公 共 性 5 結︒ 論 0 少年 の本 人特 定 報道 禁 上 の合 憲性
② 本 特人 定報 道 を行 たっ 場合 の法 的効 果 結 語
︱少 年法 六 一条 の意 義
二九八
一 課 題 少 年法 は 六 一条 で
﹁家 庭 裁 判所 の審 判 付に さ れた 少 年 又 は少 年 のと き 犯し た罪 によ り 公訴 を 提起 され た者 に つい ては 氏︑ 名 年︑ 齢 職︑ 業 住︑ 居 容︑ ぼ う 等 に より そ の者 が当 該 事件 の本 人 あで る こと を推 知 す る こ と が でき る よう な 記事 又 は 写 真 を新 聞 紙 そ の他 の出 版物 に掲 載 し ては な ら な い﹂ と の規 定 を 置き 少︑ 年 に つい て︑ いわ ゅる 本 人特 定 報道 の禁 上 を定 め て い る︒ こ の規 定 は これ ま で 一般 に
﹁少︑ 年 の名 誉 やプ ライ バ シ ーを 保 護 す ると と も に︑ 非 行 の克 服 によ る 健 全 な 成 長 を 実 現 す るた め に 報︑ 道 機 関 によ る事 件 報 道 に抑 制 を求 めた も の﹂ と 理 解 さ れ てき た す︒ な わち 従︑ 来 こ︑ の規 定 の趣 旨 は 少︑ 年 の 名誉
・プ ライ バ ーシ を 保護 し 本︑ 人 を特 定 たし 犯 罪報 道 によ てっ 社会 的偏 見 が生 じ る こと を 防ぐ こと を通 じ て︑ 少年 の更 正 を 図 ろう と す ると こ ろに あ ると だ粋 ま︑ た そヽ の趣 旨 を 無 にし な いた め に︑ 同条 は
﹁捜︑ 査 段 階 や処 分 執 行 段 階 に つ いて は
定 め て いな いが 非︑ 公 表 原の 則 当は 然 それ ら の場 合 にも 及
﹂ぶ と 解 さ れ て一
だ
︒ そ し てヽ 道報 機 関も 基︑ 本 的 に は
︑
﹁少 年 の健 全 育
﹂成 と うい 少年 法 の理 念 を 反映 たし 本条 趣の 旨 受を 入け れ てき た と言 って よ い︒ すな わ ち 日︑ 本新 協聞 会 は ︑ 一九 五 八年 小の 松 川高 校 女 子生 徒殺 人事 件 おに け る報 道 を機 に
﹁︑ 少年 法 第 六十 一条 の扱 いの 方 針
﹂を 策 定し
﹁︑ 少 年法 第 六十 一 条 は 未︑ 成 熟 な少 年 を保 護 し そ︑ の将 来 の更 正を 可能 にす るた め のも の あで るか ら 新︑ 聞 は少 年 たち の 親″
″ の立 場 に立 っ て︑ 法 の精 神 を実 せん す べき であ 従︵
﹂ とう た たつ ので あ る︒ 実 際 に は︑ そ の後 も 社︑ 会党 沼浅 委員 長殺 人事 件
︵一 九六
〇年
︶︑
中 央 公 論社 社 長宅 襲 撃事 件
︵一 九 六
〇年
︶︑
連続 ビ スト ル射 殺事 件
︵一 九 六 八年
︶な ど 社︑ 会 に与 え た衝 撃 が 大 き い こと を 理 由 に実 名 報 道 行が わ れ ると いう 事 態 が散 発 的 に繰 り返 さ たれ が ︑ 一九 七
〇年 代 以降 は そ のよ う な事 例も 新 あ聞 る いは 放 送 に お てい は とほ んど 見 られ くな な てっ
﹂だ
︒ と こ ろが 近︑ 時
︑ こ の少 年 法 六 条一 を めぐ てっ 社︑ 会 的 あに る いは 法 理 論 上 さ︑ まざ ま な疑 問 や批 判が 提起 され るよ う に な てっ き た︒ 第 一に 近︑ 年 社︑ 会 の耳 目を 集 め た少 年事 件 に つい て の報 道 にお いて ︑ 一部 雑の 誌 メデ ィ アが 確 信 犯的 に少 年 の実 名 や顔 写 真 掲を 載 す ると いう 事態 が続 出 し た 例︒ え ば 神︑ 戸児 童 殺人 事 件 関に し て︑ 刊週 新潮 お よび FO CU Sは 少 年 の顔 写真 を 掲 載 し ま︑ た そ︑ の後 発生 たし 堺市 の女 児 等 殺傷 事 件 の報 道 に際 し ても 新︑ 潮 45が
少 年 の実 名 及び 顔 写真 を掲 載 たし し︒ か も 実︑ 名 あ る いは 顔 写 真を 掲載 す る にあ た てつ
︑ それ ぞれ の雑 誌 は︑ 少 年 法 のあ り方 批を 判 す る メコ ント を付 し て るい
︒ こ れ ら の少 年 法 対に す る メコ ント は 少︑ 年法 の趣 旨 を きち んと 理解 し うた え でな され たも のと 思は え な
﹂L
︑ こ のよ う な報 道 姿 勢 は マス コミ 内 部 にお いて も 批 判さ れ て いる と こ ろで あ社︵
︒ かし し 少ヽ 年 犯 罪 に対 す る厳 し い対 処 を求 め る世 論 のも と に あ てっ
︑ これ ら の主 張 が 一定 力の を も つ可 性能 あが る こと には 留 意 し てお く必 要 あが うろ
︒ 第 二に
︑ こ のよ う な社 会 的事 象を 一つ のき かっ けと し て︑ 法 律家 と︑ り わけ 憲 法 学者 のな かか ら 少︑ 年 本 人特 定 報道 の禁 止 を定 め た少 年 法 六 一条 を報 道 の自 由 知︑ 権る 利 の観 点 らか 改 め て問 い直 し 少︑ 年法 の規 制 のあ り 方 に対 し 鋭て い批 判 を提 少年 事件 おに るけ 本人 特定 報道 禁上 の意 義 一 一九九
法政 研究 五巻 三
・四 号 含一〇
〇 一年
︶ 一二〇
〇 起 す る論 者 が 見 られ るよ う にな たっ
︒ これ ら の論 者 は 総︑ じ て︑ 少 年法 六 一条 は 憲︑ 法 優上 越 的な 地位 を 与え られ る べき 表 現
・報 道 の自 由 知︑ る権 利を 不当 に制 約 す るも ので あ って 憲︑ 法 上正 当 化 でき な いと 主 張 し て いる
︒ 第 三 に︑ 先 に述 べた 雑 誌 メデ ィ ァに よ る実 名 o顔 写 真報 道 対に し て︑ 少 年 側 か ら実 名 報道 の違 法 性 を 問う 複数 の損 賠害 償 請 求 訴 訟 が提 起 さ れた し︒ か し そ︑ のう ち の 一つ であ る堺 女 児等 殺傷 事件 報 道 に対 す る損 賠害 償請 求 訴 訟 にお いて 大︑ 阪高 裁 は 実︑ 名 報 道 の違 法性 を 否定 す る判 決を 下 だレ
︒ そ こ で︑ 本 稿 では 少︑ 年 法 六 一条 に対 し て急 激 起に こ った これ ら の批 判 を検 討 し 少︑ 年 に対 す る本 人 特定 報 道 の禁 止 の意 義 と 憲 法 上 の位 置付 け に つい て理 論的 な解 明 を試 み る こと と した い︒ 二
少 年 の本 人 特 定 報 道 禁 止 に対 す る 批 判 1
.日 本 現 在 少︑ 年 法 六 一条 対に し ては 同︑ 条 は表 現
︒報 道 の自 由 知︑ る権 利 に対 す る不 当 な制 約 と な てっ お り 憲︑ 法 上正 当 化 で き な いと の批 判 が提 起 さ れ て いる
︒ 以 下 では
︑ こ のよ う な批 判を 展 開し て いる 代表 的論 者 の論 理を 追う こと によ てっ 検︑ 討
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﹁が ︑ デイ アに は憲 法で 保障 され た表 現の自 由が
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う 基 本 的 な立 場 に立 たっ 上 で︑ メア リカ の少 年 事件 報道 に関 す る判 例 o学 説を も参 考 にし なが ら 少︑ 年法 六 一条 を次 のよ う に批 判 す る す︒ な わち
︑ た﹁ し か に︑ 少 年 のプ イラ ヴ シァ ーを 保護 し 少︑ 年 の更 正を 促 進 す ると うい 少 年 法 の目 的 は正 当 で あ り 十︑ 分 尊 重 値に す る利 益 であ る︒ かし し
︑ いか 尊に 重 に値 す る利 益 だ から と い てつ 表︑ 現 の自 由 を制 約 し てか ま わな い と は いえ な い︒ 本 来 氏︑ 名 の報 道 な 表ど 現報 道 の内 容 に基 づき 表 現報 道を 制約 す る場 合 には
︑ やむ にや ま れな いほ 重ど 要 な 府政 の利 益 を 達成 す るた め に必 要 不 可欠 な手 段 でな け れば 許 され な いと うい べき あで る﹂︒ い﹁ か に少 年法 の目 的が 崇高 でも
︑ そ れ は憲 法 二 一条 の要 請を ク リ ア でき な いか りぎ 少︑ 年 法 あが るか らと い つて あ︑ る いは 少 年法 趣の を旨 考 え て︑ 少 年 の氏 名 な ど の報 道 禁止 は 正当 化 され ると 判 断 す る こと は許 さ れ な い﹂︒
﹁そ う だ とす ると 少︑ 年 氏の 名 など を︑ ど のよ う 場な 合 で 肘 悔
扮
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箕 裁 判 に付 さ れ 公︑ 開 の法 廷 おに け る公 判 で審 理さ れ 傍︑ 聴 人 少が 年 の氏 名 な をど 当 然知 る こと が でき る場 合
②︑ 報 道機 関 が 独 自 の取 材 動活 よに てっ 少 年 の身 元 に関 す る情 報 を 入手 たし 場合
③︑ 年少 の氏 名 が す でに 公知 あで る場 合
④︑ 年少 自が 名ら 乗 り 出 た場 合
⑤︑ 少 年 の氏 名 が合 理的 な 公的 関心 の対 象 であ る場 合 に︑ 本 人特 定 報道 を 一律 に︑ か つ絶 対 的 に禁 止 す る こと 正は 当 化 さ ずれ
︑ これ ら の場 合 も含 め 規て 制 し て いる 少年 法 六 一条 憲は 法 二 一条 抵に 触 し て いる と し︑ ま た
⑥︑ 少年 成が 人 にな たっ のち も 禁止 が続 く点 もに 疑 間 を呈 し て るい さ︒ ら に
⑦︑ 少 年法 が規 制 体媒 と し て
﹁新 聞 そ の他 の出 版物
﹂と 規定 し て いる と ころ を放 送 やイ タン ーネ ット を含 とむ 解釈 し て いる のは
﹁本 来 あ まり にも 無 理 な拡 大 解釈 であ
﹂り
︑ し かも
︑ こ の 解 釈 に基 づ いた と し ても 周﹁ り の人 が ロ ミコ 少で 年 の氏 名 を触 れ 回 るこ と﹂ は規 制 でき な いか ら そ︑ も そも 同条 の規 制 は
︑ 少 年 のプ ライ ヴ シァ ー保 護 更︑ 正 促の 進 と いう 利益 を十 分 に達 成 きで な いも の であ ると も主 張 し て は犯
︒ こ のよ う な 主張 に対 し ては
︑ ちの に詳 し く見 るよ う に 刑︑ 事 法
・少 年 法 研 究者 か ら と︑ く に⑤ の点 に関 し て︑ 事件 や少 年 手 続 に公 共 性 があ るこ と から 少 年 の身 元 の公 共性 が導 き だ せ るわ け では な い︑ 年少 の身 元 に つい て公 性共 あが ると は考 え ら 少年 事件 にお るけ 本人 特定 報道 禁上 の意 義 一 二〇 一