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〈論 説 〉
憲法学か ら見た行政の民主的統制
塩 津 徹
目 次 は じめに
(一)国 家観 の転換
(二)議 会主義か ら市民主義 へ (三)行 政法 におけ る市民 総 括
は じめ に
憲 法 学 か ら見 た行 政 の民 主 的統 制 とは主 と して 二 つ の意 味 が込 め られ て い る。
一 つ に は行 政 に対 す る民 主 的統 制 を これ まで の よ うに議 会 だ け に委 ね るの で は な く市 民 に も拡 げ よ う とす る もの で あ る。 この こ とを徹 底 的 に議 論 す るな らぼ 個 別 の 法制 度 や 法 技 術 の再 検 討 に と どま らな い 。 なぜ な ら憲 法 学 にお け る国家 観 、 国 民 主 権 論 、 議 会 主 義 が姐 上 に あ げ られ な くて は な らな い か らで あ る。
これ まで の憲 法 学 に お い て は近 代 立 憲 主 義 の 観 念 が 主 流 で あ った 。 それ は個 人 の 自由 の保 障 を主 軸 にお き極 力 、 国 家権 力 を抑 制 しよ う とす る もので あ る。
しか し、 この よ うな 国家 か らの 自 由 を 中心 に組 み立 て られ た 人権 論 、 国 家 観 、 また、 そ の保 障 を議 会 に委 ね て き た 国民 主 権 論 、 議 会 主 義 が 、 国 家 行 政 が 拡 大 す る現 代 国家 の 中 で はた して適 合 的 な の か を 問 わ ざ るを え な い。
二 つ に は行 政 法 学 の議 論 に対 す る憲 法 学 か らの 評価 で あ る。 行 政 に対 す る市 民 の 民 主 的統 制 の 拡 大 の方 向性 に つ い て は理 論 だ けで は な く既 に実 定 法 上 も行 政法 の様 々 な分 野 で 見 られ る。 情 報 公 開 法 の制 定 、 行 政 手 続 法 の制 定 と改正 、 行政 事 件 訴 訟 法 の改 正 、更 に地 方 自治 法 等 に お い て この こ とが 確 認 で き る。 そ
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して、 行 政 法学 の 中 に は これ を実 定 法 上 の個 別 的 問題 と して で は な く理 論 的 に も構 造 的変 化 と して 受 け止 め る学 説 が あ る。
本 稿 で は この よ うな個 々 の実 定 法 上 の変 化 とそ の 意 味 を確 認 し、 学 説 の傾 向
り
を行 政 法 の 問題 に と どめ る こ とな く改 めて 憲 法 学 か ら検 討 す る もので あ る。 行 政 法 学 に お いて も これ まで は憲 法 学 と同様 に 国家 か らの 自 由 を主 要 な課 題 と し て 法 制 度 の構 築 、 法 理 論 の構成 が 行 わ れ て きた。 しか し、 市 民 の 能 動 的 な立 場
を強 調 す る一 部 の学 説 は これ を超 え よ う と して お り、 そ れ を憲法 学 の視 点 か ら 論 究 しよ う と思 うの で あ る。
(一)国 家 観 の 転 換
行 政 に関 す る問題 と して 避 けて通 れ な い問 題 の 一 つ に行 政 国家 の現 象 が あ る。
国家 が消極 的 な警 察 的役 割 だ けで な く社 会 投 資 、社 会福 祉 等 の積 極 的役 割 を担 っ て い る こ とは今 日で は否 定 し よ う もな い現 象 で あ る。 それ に と もな っ て法 的課 題 と して行 政 法 の分 野 で も従 来 の侵 害(規 制)行 政 に加 えて 給 付 行 政 の概 念 が 形 成 され て きた こ と も事 の 当 然 の 論 理 で あ る。 しか し、 問題 は これ らの 行 政 法
上 の 問題 を憲 法 学 で どう捉 え るか で あ る。
憲 法 学 で も当然 、 行 政 国家 の現 象 は認 識 され て い るが 、 法 的課 題 と して これ に積 極 的 に対 処 して い る とは思 えな い。 その こ とを端 的 に示 す もの が 国 家 観 の
ラ
問題 で あ り、 憲 法 学 は これ まで 国家(の 権 力行 使)を 「悪 視 」 して きた とい わ ざ る を えな い 。 国 家権 力 を ど う統 制 す るか で はな く、極 力 、 国 家 の関 与 を抑 制 す る こ とに力 を注 いで きた ので あ る。 そ して、 人 権 論 にお いて も国 家 か らの 自 由 を軸 とす る 自由権 中 心 の 思 考 が 見 られ た。
確 か に近 代 立 憲 主 義 の成 立 期 に お いて は個 人 の 自立 性 、 市 民社 会 の 自律 性 を 前提 に国 家 の介 入 の抑 制 の思 想 が 強調 され 、 行 政 は警 察 、 消極 的行 政 に 限定 さ れ た の で あ って 人 権 論 に お い て も自 由権 を中 心 に保 障 され た。 しか し、 現 代 国 家 にお い て は市 民 社 会 の経 済 的 自律 性 は 十 分 とはい えず 、 また個 人 の 自立 的 生 存 の た め に も国 家 の 関 与 が 不 可 欠 とな っ た 。 そ こで 新 た な給 付 行 政 論 の登 場 を 含 め て行 政 国家 の 現 象 が 生 じた の で あ る。
この よ うな 国家 お よび社 会 の歴 史 的 構 造 変 化 の 中 で行 政 法 学 は変 化 して きた
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(た だ 、後 で も述 べ る よ うに行 政 法 学 で も近代 立 憲 主 義 の観 念 は強 固 で あ る)。とこ ろが 、 憲 法学 に お いて は あ い も変 わ らず 国家 か らの 自由 を思 想 的基 盤 と し て い る。 そ して 、 行 政 の拡 大 に対 して も 自由権 の保 障 、 国 家 権 力 に対 す る受 動 的 防御 とい う視 点 で 対 応 して い る と思 え るの で あ るが 、 果 た して その こ とが 妥
当な の か 問 わ ざ るを え な い 。
この 点 に関 して 戦 前 の ドイ ツ に お いて 給 付 行 政 論 を提 唱 したE・ フ ォル ス ト ホ フが 、 戦 後 に行 政 法 学 の レベ ル で は給 付行 政 論 を維 持 しつ つ も憲 法 学 の レベ ルで は 国家 か らの 自由 に重 点 をお い た 自由主 義 的法 治 国家 論 を固 守 した こ とは
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興 味 深 い。 彼 は個 人 の 自 由 を徹 底 的 に抑 圧 した ナ チ ス体 制 に参 画 した こ とを反 省 して戦 後 はむ しろ、 国 家 か らの 自由 に こだ わ る こ とに な った か も しれ な い。
同 じ よ うな こ とが 我 が 国 に もい え るの で あ っ て 明 治 憲 法 下 の 自由 な き体 制 へ の 総括 が 口本 国 憲 法体 制 にお いて 国 家 か らの 自由へ の強 調 にな っ た ので はな いか 。
この よ うに これ まで の憲 法 学 の 対応 が 歴 史 的構 造 変 化 に対 応 で きて いな い こ とに関 して 国 民主 権 論 か ら も批 判 を加 え る こ とが で き る。 今 日の 国 民 主権 の憲 法体 制 の下 、 国民(以 下 で は一定 の思 想 性 の下 に あ え て 市 民 とい う言 葉 を使用 す る)は 主 権 者 で あ る。 で あ るな らば国 民 主 権 に よ って構 成 され る国 家 が 悪 で あ り、 市 民 が被 害 者 で あ っ てた えず 国家 か らの 自由 を守 らな けれ ば な らな い と
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い う構 図 に は ど こか 不 自然 な もの が あ る。
国 民 主権 の 下 で は主 権 者 で あ る市 民 は主 人 公 で あ り、 国 家 は主 人 公 に よ って 運 営 ・管 理 され る。 しか し、君 主 主権 の 下 で は市 民 は主 人 公 で はな く、 家 来 、 臣民 な ので あ る。 で あ るな らば君 主 に よって 支 配 され る国家 は 市 民 に とって 異 質 な もの で あ っ て市 民 と して は そ の権 力 行 使 を極 力、 抑 制 す る こ とを求 め る こ
とに な る。 しか し、 国 民 主 権 の 下 で は国 家 と市 民 は同 質 で あ って 国 家 の 権 力 行 使 の抑 制 だ け を 目指 す わ け に は い か な い の で あ る。
確 か に主権 者 に よって 選 任 され た 国家 行 政 の担 い手 が 市 民 の 自由 と権 利 を侵 害 す る こ とは あ りう る。 た だ、 も し、 そ うで あ るな らば国 家 行 政 に よ って脅 か され るの は 自由だ けで は な く、社 会福 祉 の分 野 で も権 利 が 侵 害 され る こ ともあ る。 た とえ ば 、後 者 の場 合 の侵 害 とは 自由 と権 利 の侵 害 だ けで は な く、 社 会 福 祉 の た め の適 切 な給 付 が行 われ な い とい う侵 害 の形 態 もあ りう るか らで あ る。
憲 法 学 にお い て 自 由の侵 害 に対 して は防御 を考 え なが ら社 会 福 祉 の分 野 で の
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給 付 の 問題 に対 して は そ の妥 当性 を問 わ な い こ とに論 理 的 な整 合 性 が あ る とは 思 え な い。 そ こに 国家 か らの 自由 に思 想 的基 軸 をお い て きた従 来 の憲 法学 の 思 考 の 限界 が あ る。 国 民 主権 の憲 法 体 制 の下 にあ って 憲 法 学 は国 家 行 政 を悪 視 す るの で はな く侵 害 行 政 で あれ 給 付 行 政 で あ っ て も市 民 が それ を どの よ うに統 制 して い くか に重 点 を置 くべ きで あ る。
したが って 、 歴 史 的構 造 変化 に対 応 して人 権 論 の構 成 も従 来 の 自 由権 中心 の 枠 組 み は変 化 を余 儀 な くされ て い るの で あ る。 人権 論 で は国 家 か らの 自由、 国 家 に よ る 自由、 国 家 へ の 自由 を個 別 的 に並 置 され て きた が 、今 後 は個 人 の 尊厳 、 個 人 の 自己 決 定 を基 盤 に お い て、 これ まで 以 上 に 自律 的 ・能 動 的市 民 とい う憲 法 に お け る人 間像 が 中心 軸 に想 定 され る中 で個 々 の 人権 の関 係 の整 合 性 が はか
らラ
られ な くて は な ら な い 。
(二)議 会 主 義 か ら市 民 主 義 へ
① 議 会 中心 主 義 か らの転 換
以 上 の よ うな国 家 観 の転 換 に と もな って 行 政 の民 主 的統 制 につ い て も再 考 の 必 要 が あ る。 これ まで行 政 の 民主 的統 制 に関 して は 当然 の ご と く議 会 に委 ね ら れ て きた。 日本 国憲 法41条 で は 国会 が 唯 一 の立 法機 関 で あ る こ とを規 定 し、 行 政 に対 して は法律 の 留保 、 法 律 の優 位 性 の原 則 が確 立 され 、 議 会 の民 主 的統 制 が 確 立 され た の で あ る。 この こ とは近 代 立 憲 主 義 に お け る国 民 主権 の議 会 中 心 主 義 体 制 に符 合 す る もの で あ っ た。
そ して、 国 家 行 政 の拡 大 に対応 して 議 会 、 法 律 に よ る規 制 領 域 も拡 大 して き た の で あ る。 法 律 の留 保 に 関 して もか つ て の侵 害 留 保 説 だ けで な く、今 日で は 全 部 留保 説 、 本 質 性留 保 説 の よ うに拡 大 が 見 られ る。 それ に加 えて議 院 の 国政 調 査 権 、 議 員 の質 問権 も議 会 に よ る行 政 の民 主 的統 制 に貢 献 して きた とい え る。
要 す る に憲 法 にお いて も行 政 に対 す る民 主 的統 制 は議 会 に焦 点 が置 か れ て きた ので あ る。
様 々 な教 科 書 にお い て も憲 法 統 治機 構 論 の記 述 は ほ ぼ これ に沿 って な され て きた 。 もち ろ ん、 人 権 論 で の 国 家賠 償 の 項 で は市 民 に よ る行 政 との 関 わ りは触 れ られ て い る。 た だ、 行 政 手 続 法 、情 報 公 開 法 な どの市 民 と行 政 との 関 わ りは
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ほ とん どが 行 政 法 の 分 野 に委 ね られ て お り、 憲 法 学 で は触 れ られ る こ とは少 な
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い 。 それ ゆ え に憲 法 学 で は行 政 に対 す る民 主 的 統 制 を議 会 に全 く委 ね て きた と いわ ざ るを え な い の で あ る。
議 会 に よ る行 政 の 民主 的 統 制 は今 後 とも必 要 不 可 欠 で あ るが それ だ けで 十分 で あ る とはい えず再 検 討 が必 要 で あ る。 民主 的統 制 とはい うが 、 この場 合 の 「民 主 」 とは議 会 だ け に集 約 され るの か否 か で あ る。 い い か えれ ば、 国 民主 権 の憲 法 体 制 の 下 、 市 民 は主権 者 と して議 員 を選 ぶ だ けで そ の任 務 を終 え、 行 政 に対 す る統 制 を全 く議 会 に の み委 ね られ るべ きな の か を再 考 す べ きで あ り、 そ の 点 に対 して は第 一 、 第 二 の問 題 に分 けて考 え る こ とが で き る。
まず 、 第 一 に主 権 者 と して の 市 民 の 集 団 的 、 政 治 的決 定 の行 使 、 も し くは影 響 力 の行 使 で あ る。 この場 合 は更 に二 つ の道 筋 が 考 え られ る。 その 一一つ に は、
直接 民 主 主 義 的 な 制度 の 活用 で あ る。確 か に憲 法41条 に よっ て 国政 にお いて は 市 民 は立 法 に関与 で き な い な ど憲 法 は 間接 民 主 主 義 を基本 として 定 め る(例 外 と して 憲 法 改正 に お け る国 民 投票 等 の制 度 が あ る)。 しか し、 憲 法 で は、具 体 的 には地 方 自治 法 に よれ ば地 方 自治 体 の場 合 は異 な る。
た とえ ば、 条例 に関 す る住 民 投 票 の 規 定 が あ る(た だ 、 これ は後 で も述 べ る よ うに住 民 投 票 に よ って決 定 で き るの で はな く、 議 会 へ の請 求 に とどま る)。 そ れ だ けで な く、 後 で(三)② 二 で 述 べ る よ うに首 長 の選 出、 あ るい は解職 請 求 な ど様 々 な直 接 民主 主 義 的 制度 が あ る。 この よ うな制 度 を国政 にお いて も憲 法 改 正 の問 題 と して論 じ るだ けで な く現 行 憲 法 の枠 内 で も活用 で き な いか 検 討 の 余 地 が な い わ けで はな い。
二 っ に は政 党制 にお け る党 内民 主 主 義 の活 性 化 で あ る。 原 則 的 に直 接 民 主 主 義 が否 定 され て い る憲 法 下 で も主 権 者 と して の 市 民 は議 員 を選 ぶ こ とで主 権 者 と して の役 割 が 終 わ っ た わ けで はな い。政 党 内 に お い て、 あ るい は政 党 外 か ら も候 補 者 の選 択 、 政 策 の決 定 な どにつ い て影 響 力 を行 使 で き る はず で あ る。 た だ、 これ らの政 党 民 主 主 義 、党 内 民 主 主 義 の 問 題 は本 稿 の テ ー マ で はな いの で 改 めて 別 の機 会 に検 討 す る。
この第0の 問題 は、 前 者 で は主 権 者 と して の市 民 が議 会 に依 存 す る こ とな く 直接 、 政 治 的影 響 力 を行使 す るで あ り、 後 者 で は政 党 を媒 介 と しっ つ も法 律 制 定 に対 す る政 治 的影 響 力 を行 使 す る もの で あ る。 た だ 、 これ らの場 合 は いず れ
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に して も最 終 的 に は主 権 者 と しての 市 民 の集 団 的行 為 とな る こ とで あ る。 それ ゆ え に主権 者 と して の市 民 の行 為 は この よ うな集 団 的行 為 に限定 され るの か と い う問題 が 生 じ る。
そ こで 第 二 の 問題 で あ る個 々 の市 民 に よ る行 政 の統 制 が 考 え られ る。 これ は 第 一一の 問題 が 最 終 的 に は主権 者 で あ る市 民 の集 団 的 か つ 政 治 決 定 に関 す る もの で あ っ た の に 対 して 政 治 的 決 定 以 後 の個 々 の市 民 に よ る行 政 に対 す る統 制 で あ る。 この点 に 関 して は行 政 法 学 の任務 か も しれ な い し、 事 実 、研 究 が 進 んで お り、 本 稿 で も これ らの研 究 に依 拠 す る こ とが 大 きいが この こ とをあ えて 憲 法 学 の 問題 として検 討 しよ う とす る もの で あ る。
と ころで 、 先 に述 べ た政 治 的決 定 とは端 的 に い え ば法 律 制 定 、 改廃 へ の 影 響 力 行 使 で あ る。 しか し、 今 日の 国家 行 政 の拡 大 は単 に量 的 な拡 大 に と どま らな い の で あ っ て専 門性 が 必 要 とされ る よ うな複 雑 化 とい う質 的 な変化 もあ る。 そ こで 法 律 に よ る内容 策 定 とい う面 で限 界 が あ るの で あ って ど う して も行 政 の裁 量 の余 地 が 出 て くる。 それ ゆ え に行 政 に対 す る統 制 を議 会 、 法 律 に全 く委 ね る の に は 限界 が あ る とい わ ざ る を え ない 。
こ こか ら行 政 に対 す る民 主 的統 制 は市 民 に よって 選 ばれ た議 員、 議 会 だ けで な く市 民 が 直 接 関 与 す る こ とも必 要 で あ る こ とに な る。p会 で決 定 され た 法律 内容 の 具体 化 を行 政 に全 面 的 に委 ね る(行 政 の 裁 量)の で は な く、 市 民 が そ こ に参 加 し、統 制 す る こ とで あ る。 議 会 中心 主 義 か ら市 民 主 義 へ とい う こ とを正 確 に表 現 す るな らば行 政 に対 す る民 主 的統 制 は これ まで の 議 会 中心 主 義 に修 正
を加 え て市 民 の参 加 を加 え る こ とを い うので あ る。
この点 に関 して大 橋 洋一 教 授 は これ まで の行 政 法 学 で は行 政 に対 して は議 会
の
統 制 重 視 で あ っ た と指 摘 し、 また 、行 政 に対 して は近 代 行 政 法 で は議 会 統 制 中 心主 義 で あ るが 、 現代 行 政 法 は市 民 参加 、市 民 監 視 の充 実 で あ る と述 べ て い る。g}
この よ うに行政 法 学 に お い て は近 代 国家 か ら現 代 国 家 へ の歴 史 的構 造 変 化 に対 す る理 論 的 対応 が な され て い るの で あ っ て憲 法 学 と して これ を どの よ う に受 け
とめ るか で あ る。
② 国民主権 と市 民
ここまで は行政 に対す る民主的統制 の問題 と して 国民主権 との関係 にはあま
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り触 れ て こな か っ た。 それ は従 来 の 国 民 主 権 に関 す る議 論 に は限 界 が あ る と考 え るか らで あ る。 広 義 の 国 民 主権 論 に は ナ シ オ ン主 権 とプー プル 主 権 論 が あ る が、 国民 主 権 を名 目 も し くは正 当性 の契 機 に と どめ る ナ シオ ン主 権 論 、 中 で も 特 に純 粋 代 表 制 は主権 者 を全 く議 会 に置 きi換え る もので あ って 個 々 の 市 民 の能 動 的 参加 を強 調 す る本 稿 で は 問題 に な らない 。
しか し、 権 力 性 の契 機 に焦 点 を あて るプー プル 主 権 論 、 人 民 主権 論 も抽 象 的 存在 として の人 民 の権 力 の 行使 、権 力 の集 団 的行 使 を中 心 に して お り、 個 人 の
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存 在 を重視 して こなか った こ とは否 定 で きな い。 そ こで は市 民個 人 の 自己決 定 、 表 現 の 自由 な どの 人権 の 行 使 が 射 程 外 に置 か れ、 それ ゆ え に松 井 教 授 の よ うに
i0)
国民 主 権 の議 論 よ りも個 々 の市 民 の表 現 の 自由 を重 視 した民 主 主 義 の議 論 を と い う主 張 に共 感 を もた ざ る を えな い 。
あ るい は樋 口教 授 の よ うに国 民 主権 は正 当 性 の 問題 に と どめ て個 人 の存 在 、
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自己決定 を軸 とした人権 論 と して議 論 をす べ き とい う こ とも大 い に理 解 で き る。
この点 に 関 して興 味深 い の は辻 村 教 授 の人 民 主 権 論 で あ り、 同教 授 の場 合 は人
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民主 権 論 の 現代 バ ー ジ ョン として 「市 民主 権 論 」 の 言 葉 を使 用 して い る。 そ こ で は従 来 の 人 民 主権 論 で は強 調 され て い なか った個 人 の存 在 に配 慮 され て い る
こ とに注 目 した い。
「市 民主 権 論 」 で は、 「集 合 的 に捉 えれ ぼ 『人 民 』 だ が、 実 体 は主権 主体 構 成
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員 と して の 『市 民 』 で あ る」 とされ 、個 人 と して の 自己決 定 が重 視 され て い る。
それ は人 民主 権 論 へ の批 判 、 た とえ ば、 人 民 が 国家 権 力 を保 持 した として もそ
14)
の国 家 権 力 が 少数 者 の 人権 を保 証 す る とは限 らな い とい う批 判 、 また 「多 数 派 に よ る独 裁 な どの 危 険 が あ るの で、 市 民 の幸 せ の た め に は国 家 の主 権 に対 す る
ら
人権 とい う対 抗 関係 を強 調 すべ き」 とい う批 判 に応 えた もの で あ る とい え よ う。
辻 村 教 授 の市 民 の定 義 に は広 狭 の 意 味 が あ る とされ て い るが 、狭 い意 味 で の 市 民概 念 とは 「政 治 的権 利 主体 と して の市 民 」 で あ り、広 い意 味 で の 市 民 とは
エの
「私 的領 域 で の 自律 した個 人 として の 市 民」 で あ る とされ て い る。 この よ うに同 教 授 の人 民 主権 論 にお いて は個 人 の存 在 を重 視 し、 なお か つ 私 的領 域 で の個 人 の 自律 性 を強 調 す る と こ ろに従 来 の人 民 主権 論 とは異 な る ものが あ る。
た だ、 「市 民主 権 論 」 で は広 狭 の意 味 の市 民 の概 念 の 関係 につ い て はあ ま り論 じ られ て お らず 両 者 の 関係 は必 ず し も排他 的 関 係 で は な い こ とだ けが述 べ られ
so
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て い る。 あ くまで も集 団 的 政 治 決 定 を論 じ よ う とす れ ば狭 い意 味 で の 「政 治 的 権 利 主 体 と して の市 民」 だ け を語 らざ るを え な い か も しれ な い。 しか し、 本 稿 で は広 狭 の 両 方 の意 味 で の 市 民 を想 定 しなが らあ え て広 い 意 味 の 市 民 の 方 か ら 国 民主 権 論 を考 え て み た い。
そ れ は私 的領 域 に お け る個 人 の 自律 性 を前提 とした上 で改 め て人 間 生 活 にお け る権 力 の存 在 の 必 要 性 とは、 権 力 の統 制 の 意 義 とは何 か を根 本 的 に考 えて い くこ とで あ る。 これ まで の人 民 主 権 論 で は個 人 の 自律 性 は視 野 に入 れ られ ず権 力 の問 題 の みが 語 られ、 しか も抽 象 的 存 在 と して の人 民 の権 力 、 集 団 的行 使 だ けが 強 調 され た。 しか し、 本 稿 で は個 人 の 自律 性 、 個 人 の尊 厳 を 重視 す る意 味 で 国 民 で は な く市 民 とい う言 葉 を使 った の で あ る。
そ こで 、個 人 の 自律 性 と政 治 的決 定 、 権 力 との関 係 につ い て表 現 の 自 由の 問 題 で考 えて み る。 表 現 の 自由 に は二 つ の意 味 が あ り、 自 己実 現 と自己統 治 で あ る とされ て い る。 自 己実 現 の場 合 は、 と りあ え ず は他 者 の 利 益 とは関 係 な く自 己実 現 とい う 自己 の利 益 を はか る もので あ る。 自己実 現 に よ って個 人 の存 在 は よ り豊 か な もの に な るが、 た だ 表 現 活 動 の 中 に は全 く個 人 の領 域 に と ど ま らな い もの もあ る。
表 現 活動 の 中 に は政 治 権 力 に関 して正 確 な情 報 を伝 え、 受 け る もの が あ る。
で あ るな らば情 報 は主権 者 と して の市 民 の政 治 的決 定 に寄 与 す るので あ って表 現 の 自由 の 自己統 治 の 意 味 が あ る。 この場 合 は表 現 活動 は 自己 のみ な らず他 者 の利 益 を考 慮 し、 民 主主 義 に貢 献 す る もので あ る。 この よ うな プ ロセ ス を考 え れ ば個 人 の 自律 性 を根 拠 と した権 利 の行 使 に お いて も個 人 か ら社 会 へ の 広 が り が あ るの で あ る。
個 人 の 自律 性 を根 拠 とした上 で も① で述 べ た よ うに社 会 へ の広 が りは主 権 者 と して の市 民 の政 治 的決 定 、 これ は辻 村 教 授 の い う狭 い意 味 の市 民 に 関 わ る も の と・ 政 治 的決 定 後 の行 政 に対 す る市 民 の 民主 的統 制 の よ うな ものが あ る。 本 稿 の主 眼 は後 者 にあ るの で あ るが 、 この場 合 も個 人 の利 益 の保 障 が 総 体 と して み れ ば行 政 に対 す る民 主 的統 制 につ な が る こ ともあ れ ば、 本 来 的 に民 主 的 統 制 をめ ざ した もの もあ るな ど多様 な 回路 が あ る。
要 す る に国 民 主権 論 を論 ず る に して も抽 象 的 な存在 で あ る人 民 を主 体 と した 権 力 性 の 問題 だ けで な く、 具 体 的存 在 で あ る個 人 の 自律 性 を基 盤 と して個 人 の
憲法学か ら見た行政 の民主 的統制
SI
権利 保 障 、 個 人 と して の市 民 の行 政 に対 す る民 主 的統 制 、 個 人 と して の市 民 の 政 治 参加 、 そ して、 集 団 的 政 治 決 定 とい う構 造 で 捉 えて み た い と考 え て い るの で あ る。 そ の 意 味 で は樋 口教 授 の 見 解 に近 い し、 辻 村 教授 の 「市 民 主 権 論 」 に 人権 論 か ら接 近 す る もの で あ る とい え よ う。
た だ、 個 人 の権 利保 障 は私 益 を 目的 と して い る場 合 が あ り、 それ が どの よ う な形 で公 益 と連 続 性 を持 ち うるか との 問 い は あ りう る。 しか し、 そ の よ うな 問 い に対 して は これ まで の公 益 と私 益 とい う二分 論 自体 が 公 法 ・私 法 二 元論 にっ なが って きた こ とを想 起 すべ きで あ る。公 法 ・私 法 二 元 論 に お い て は これ まで は とか く私 益 を超 越 した と ころ に公 益 が あ る とい う論 理 構 成 を、 国 家 行 政 の権 威 的 思 考 を生 みが ち で あ った の で あ る。
抽 象 的 な公 益 論 の代 表 例 が か って の 「公 共 の福 祉 論 」 で あ り、 私 益 に対 す る 公 益 の優 位 性 を論 証 もな く認 め る もの で あ っ た。 しか し、今 日で は国 家 の抽 象 的か つ優 位 論 で は な く個 々 の具 体 的利 益 を比 較 衡 量 しな けれ ぼ な らな い の は 当 然 で あ る。 そ して 、 公 益 、 公 共 性 の担 い 手 も決 して 国 家 だ けで は な く市 民 で も あ りう るはず で あ る。公 の優 位 、 「滅 私 奉公 」 で は な く 「個 人 を活 か しつ っ公 共
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性 を開 花 させ る新 しい思 考 」、 「活 私 開公 」 の 思 考 が 要 請 され て い るの で はな い か 。
ま た、 内野 教授 は民 主 制 の議 論 にお い て憲 法43条 の 「全 国民 の代 表 」 の解 釈 に関 して個 々 の議 員 が全 国 民 を代 表 す る こ とは必 要 な い し、 各 集 団 の利 益 の寄
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せ 集 め を代 表 す る こ とで もい い ので は な いか と主 張 す るが 、 あ えて 抽 象 的 な公 益 性 の概 念 を持 ち 込 む こ とへ の批 判 が こ こに見 られ る。 それ で も権 威 的 思 考 へ
の批 判 にな りえて も私 益 の集 合 とい う点 へ の不 安 は あ りう る。
そ こで 石 川 教 授 は私 益 を起 因 と し しつ も最 終 的 に は公 益 につ なが る こ とを可
'LO)
能 とす る 「公 共性 の 回路 」 が 必要 で あ る として い る。 この 「公 共性 の 回路 」 は、
国家 が個 人 を 国家 構 成 員 の 一・員 と して承 認 す る回 路 か 、 国家 の論 理 を払 って個
21}
人 が市 民 と して公 徳 心 を持 っ よ うな 自己拘 束 を行 うか の 回路 に分 か れ る とす る。
確 か に、 後 者 にお け る単 に 自己 の 利 益 だ けで な く公 共 性 、公 益 性 につ いて 考 え る公 徳 心 を持 っ市 民 、 本稿 で 述 べ る能 動 的市 民 像 とい うの は 「神 話 」 か も しれ な い。
しか し、 自然権 思 想 も絶 対 王 政 を打倒 し、 市 民 的 自 由 と権 利 を保 障 す るた め
s2
の 「神 話 」 で あ った 。 そ の意 味 で は 「神 話 」 で あ る と認 識 しっ っ も権 力 を統 制 す るた め の思 想 と して 市 民 の 問 で 共 有 す る こ とが必 要 で あ る。個 人 の 自律 性 を 根 拠 とした個 人 の権 利 保 障 は私 益 の保 障 に な るか も しれ な いが 、 同時 に権 威 的 公 共 性 を極 力 、 抑 制 しっ っ 公 共 性 を 目指 す 公 徳 心 を持 っ 市 民 と して 行 政 に対 す
る民 主 的統 制 を 目指 す こ とが要 請 され るの で あ る。
た だ 、行 政 に対 す る民 主 的統 制 とい うテ ー マ に即 して い え ば、 私益 、 公 益 と い う問題 は限 定 され て くる。 民 事 訴 訟 で あ れ ば市 民 対 市 民 の 関係 で全 く私 益 の 問題 で あ る こ とは い う まで もない 。 しか し、(三)で 具体 的 に述 べ る よ うに行 政 訴 訟 に お い て は 市 民 対行 政 の 関 係 で あれ ば、 た とえ 私益 の問 題 で あ っ て も それ を保 障 す る こ とが行 政 の誤 りを正 し、 行 政 の適 法 性 に もた らす こ とが あ り、 そ の結 果 、 公 益 につ な が る こ と もあ りう る。
それ で も私 益 に と どま らな い た め に は公 益 を意 図 す る意 識 、 公徳 心 を持 つ 市 民 で あ る こ とが 不 可 欠 で あ る。 この場 合 、 それ を個 々 の市 民 の 意識 形 成 だ け に 求 め るの で は な く、 私 益 を世 論 や 裁判 にお いて 公 益 も し くは公 共性 へ と転 化 さ せ て い く 「場 」 が 必 要 とな っ て くるの で あ る。 市 民 は私 益 に とど ま らな い た め に も世 論 とい う公 的 「場 」 で公 益 へ と転 化 して い く努 力 を重 ね 、個 人 の 利 益 を 守 るた め の訴 訟 、 裁 判 とい う公 的 「場 」 にお い て も他 の 市 民 の権 利 の保 障 、 更
に は行 政 の適 法 性 の確 保 とい う公 益 を 目指 す こ ともで き るので あ る。
(三)行 政 法 に お け る市 民
① 私 人 か ら市 民 へ
今 日、行 政 法 学 に お い て も 「市 民」 の 言 葉 が 使用 され て い る こ とが 注 目 され る。 そ れ は言葉 だ けの問 題 だ け で はな く行 政 法 学 の 転 換 を示 す もの で あ り、 国 家 の構 造 変 化 へ の 真 摯 な対 応 を表 す もの で あ る。 行 政 法 学 の転 換 を示 す もの は い くつ か あ るが 、 そ の一 つ に行 政 行 為 論 の 問題 が あ る。従 来 、 行 政 法 学 にお い て は行 政 行 為 論 が 中 心 に な って きた ので あ っ て行 政 法 ・行 政 法 学 の課 題 は国家 に よ る市 民 の 自由 と財 産 へ の侵 害 を抑 制 す る こ とに あ った 。
それ は また 憲 法 学 にお け る国 家 か らの 自由 の保 障 に対 応 す る行政 法 の観 念 で あ った 。 それ ゆ え に 自由 と権 利 の保 障 の た め に は 国家 権 力 の抑 制 が 求 め られ 、
憲法学か ら見 た行政 の民主 的統制
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と りわ け、 公権 力 が 行 使 され る行 政 行 為 に焦 点 が あた って い た の で あ る。 この よ うな行 政 行 為 論 で は 国家 権 力 の 抑 制 が 主 とな るが 、 国家 権 力 に よ る侵 害 行為 (行政 行 為)が あ って は じめて市 民 は事 後 的 に それ に対処 す る こ とに な り、 市 民 は受 動 的 な 立場 で あ る と想 定 され た。
しか し、今 日に お いて は行 政 法 にお い て も市 民 が 能 動 的 な立 場 と して想 定 さ れ ざ るを え な くな っ て い る。特 に行政 手 続 法 の 制 定 に よっ て市 民 が 事 前 に行 政 過 程 に参 加 す る状 況 が 出 て きた か らで あ る。 この こ とは行 政行 為 論 を 中心 と し て 国家 は能 動 的 、 市 民 は受 動 的 、 事 後 的 な対 応 とい う こ とに焦 点 を あ て て て き た従 来 の 行 政 法 学 に質 的 な変 化 を もた らさ ざ るを え な い。 具 体 的 に は この変 化
は どの よ うな もの で あ った の か 。
22)
この変 化 に対 して行 政 手 続 法 を 「行 政 過 程 へ の 私 人 の 参加 」 と して 説 明 しよ う とす る こ と も見 られ た。 この 「私 人 の 参加 」 の 表 現 に は確 か に市 民 の行 政 過 程 へ の 参加 、 市 民 に よ る行 政 過 程 の統 制 を示 す ものが うか が わ れ る。 しか し、
「私 人 の参加 」 の言 葉 に は 国家 に よ る行 政 行 為 が 主体 で あ り、 私 人 の行 為 は例 外 で あ る とい う観 念 を払 拭 で きて い な い し、 「私 人 」 の表現 に は 自己 の利益 の み を
目指 す存 在 との位 置 づ けが 見 えて な らな い。
他 方 、 行 政 法 学 の 中 に は私人 の 言 葉 を使用 しな い で よ り積 極 的 な意 味 で 市 民 の言 葉 を使 用 す る例 もあ る。 これ は単 に言 葉 だ けの 問題 で は な く、 市 民 が 部 分 的 に 国家 に よ る自由 や権 利 の侵 害 行 為 に対 して抵 抗 的 、 受 動 的 に対 応 して い く 立場 で は な く国家 行 政 全 般 に対 して能 動 的 に関 与 して い こ う とす る立 場 で あ り、
また 、 自 己 の利 益 だ けで な くコ ミュニ テ ィの一 員 と して社 会 の制 度 改 革 を提 言
23)
して い く面 に着 目 して い るの で あ る。
また、 行 政 法 にお い て 私 人 あ るい は市 民 と して理 解 す るか の相 違 には行 政 法 の本 質 を ど う と らえ るか に密 接 に関 わ って くる。 す な わ ち、 行 政 法 の本 質 を国 家 に よ る 自由や 権 利 の侵 害 を抑 制 す る こ とに求 め るの か(例 外 と して の 「私 人 の参加 」)、それ とも市 民 に よ る行 政 活 動全 般 に対 す る統 制 と考 え るのか で あ る・
この 点 に関 して行 政 法 学 で は従 来 の行 政 の権 力 的 活 動 に注 目す る説 は権 力説 、 行 政 権 が 法 関 係 の 当事 者 と して参 画 す る点 に注 目す る説 は主 体 説 で あ る とされ
て い 慧 。
その他 に も公 益 説 も主 張 され て い るが こ こで は前 二 者 に絞 って検 討 してみ る。
S4
主体 説 と権 力 説 とも 自由 と権 利 の保 障 を 目指 す こ とは変 わ りはな い。 しか し、
権 力説 で は国 家権 力 に よ る市 民 の 自由 と権 利 の 侵 害 の抑 制 に重 点 が 置 か れ て い る。 権 力説 で も国 家行 政 の 拡 大 とい う現 象 は認 めて い るが 、 法 的 課 題 と して は 従 来 の侵 害(規 制)行 政 中 心 に侵 害 行 政 の軸 とな る行 政 行 為 論 に焦 点 が 当 て ら れ て き た。
行 政 法学 にお け る権 力 説 は これ まで の憲 法 学 に共 通 す る面 が あ る。 それ は、
国家 権 力 を悪 視 す る こ とで あ り、 国家 か らの 自由 を重視 す る こ とで あ る。 そ し て、 憲 法 学 で は 国家 権 力 、特 に行 政 に対 して は 国民 の代 表 で あ る議 会 に よ る統 制 が 主 とな る こ とはす で に述 べ た とお りで あ る。 行 政 法 学 にお け る権 力 説 で も 議 会 の 定 め た 法 律 に基 づ い て行 政 に よ る 自 由 と権 利 の侵 害 を極 力 抑 制 しよ う と す るの で あ る。
しか し、主体説 は甲家 に対す る認識が権力説 と異 な る。 主体 説で は国家権力 を悪 視 す るので は な く国家 か らの 自由 だ け を重 視 す るの で もな い。 侵 害 行 政 だ けで な く給 付 行政 も含 め て 国家 行 政 を統 制 しよ う とす る。 国家 に よ る市 民 の 自 由や 権 利 の侵 害 だ けで な く、 社 会 投 資 、 社 会 保 障 も統 制 し よ う とす る もの で あ る。 た とえ ば 、権 力説 で は行 政 事 件 訴 訟 法3条 の 「公 権 力 の行 使 」 は行 政 の権 力 的 作用 だ け に適 用 され るが主 体 説 で は給 付 行 政 に も適 用 され る とい25)}。
そ して・ 権 力 説 で は国家 行 政 と市 民 との対 抗 関 係 が 前提 とされ るので あ るが、
主 体 説 で は国家 行 政 と市 民 との対 抗 関係 は弱 め られ 、 国 民 主 権 原 理 が重 視 され
26)
るが ゆ え に行 政 と市 民 の 同質 性 が 強 調 され て い る。 また 、権 力 説 で は市 民 は原 則 と して 受動 的 な立 場 と して例 外 と して 「私 人 の参加 」 として しか扱 われ なか っ た 。 しか し、 主 体 説 で は行 政 全 般 に対 して の 市 民 として能 動 的 な 立場 が 強 調 さ れ た の で あ る。
更 に、 主 体 説 で は議 会 に よ る民 主 的統 制 、 法 律 に基 づ いた 行 政 を 当然 とす る と同時 に市 民 に よ る行 政 に対 す る民 主 的 統 制 が 重 視 され て い る と ころ に特 徴 が あ る。 それ は、 情 報 公 開 法 、 行 政 手 続法 の 制 定 ・改 正 、 行 政 事 件 訴 訟 法 の 改 正 等 を受 けて実 定 法 上 か ら導 き出 され る面 もあ るが 、 それ だ け で は な くそ れ らを 通 して包 括 的 に行 政 法 学 の観 念 を市 民 の主 体 性 、 能 動 性 を軸 に変 革 しよ う とす る もので あ る。
この よ うな市 民 の概 念 は 「行 政 の相 手 方 た る市 民 は、 自律 的 に選 択 し行 動 す
憲法学 か ら見た行政の民主的統制
SS
る誇 り高 き個 人 な の で あ って 、行 政 決 定 へ の 参加 だ けで な く、 能 動 的 に公 共性
2r)
の0部 を担 う主 体 と して も登場 して い る」 とされ る。 そ れ ゆ え に これ まで の行 政 法 学 の よ うに重 点 を行 政 の側 に置 くの で は な く、 市 民 の 能 動 的 地 位 を強 化 し
て い か な け れ ば な ら な い し、 そ れ ゆ え に 「私 人 で は な く、 市 民 と さ れ る 」 と さ れ る こ と に な る の で あ る 。
② 行 政 法 の様 々 な課 題
以下 で は個 々 の 市 民 の 能 動 的 主 体 性 の視 点 か ら行 政 に関 す る諸 法 を検 討 し、
行 政 に対 す る市 民 の民 主 的統 制 の 方 向性 を改 め て 憲 法 学 か ら見 定 め て み る。行 政 に対 す る市 民 の民 主 的統 制 は市 民 の 私 的 利 益 を起 因 とす る もの か ら公 益 を 目 指 す もの まで 多種 多様 にあ る。 そ して 、 当初 の法 の 内 容 が改 正 され て 前 者 だ け で な く後 者 の要 素 が盛 り込 まれ た もの もあ る。 こ こで は情 報 公 開 法 、 行 政 手 続 法 、 行 政 事件 訴訟 法 、 地 方 自治 法 を例 に挙 げて説 明 す る。
イ 、 情 報 公 開法
以 下 で 触 れ る行 政 に関 す る諸 法 の 中で は情 報 公 開法 が最 も新 しい(た だ 、 行 政 手 続 法 、行 政 事 件 訴 訟 法 は情 報 公 開法 制定 後 に一 部 改 正 され て い る)。 情 報 公 開法 で は行 政 情報 の公 開 とい う法 の個 別 的課 題 は もち ろ ん の こ と、 その新 しさ ゆ え に近 年 の行 政 法 学 の動 向 が よ り直 載 に見 られ るので あ る。 そ れ は行 政 に対 す る市 民 の 民主 的統 制 の観 念 で あ り、 そ の前 提 とな る市 民 の 自律 的 ・能 動 的 人
間像 の強 調 で あ る。
近 年 、制 定 され る各 種 法 律 に は1条 に お い て法 律 の 目的 を明 確 に定 め る場 合 が 多 い。情 報 公 開法(正 式 に は 「行 政y{関 の保 有 す る情 報 の公 開 に関 す る法律 」) で も1条 で 「この法 律 は、 国 民 主権 の理 念 に の っ と り、 行 政 文 書 の 開 示 を請 求 す る権 利 につ き定 め る こ と等 に よ り」 政 府 の活 動 を市 民 に説 明 し、 市 民 の的 確 な理 解 と批 判 の下 に公 正 で 民 主 的 な行 政 が推 進 され る、 とい う 目的 が 示 され て い る。
行 政 が 担 うの は公 共 性 、 公 益 性 の 実現 で あ る。 しか し、 これ まで は ともす る と公 共 性 の実 現 は上 か らの権 威 的 支 配 に よ り、 市 民 の影 響 が及 ば な い官 僚 の 手 、 裁 量 に委 ね られ て きた 。 そ の意 味 で は公 共 性 とは 国 家 的公 共性 とされ て きた の
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で あ る。 しか し、 公 的(Public)の 言 葉 に は何 人 に対 して も開 か れ た とい う意 味 が 含 まれ て い る。 それ とは反 対 に私 的(Private)の 言葉 は対 照 的 に他 人 に は 閉 じ られ た とい う意 味 が あ り、 プ ライバ シ ー の権 利 の根 源 も こ こに あ る。
行 政 に関 す る情 報 を公 開 す る こ とは、 市 民 に よ る行 政 情 報 の取 得 とい う行 為 に限定 され る もの で は な い。 行 政 に関 す る情 報 の公 開 が 前 提 とされ る と官僚 の 裁 量 は大 幅 に限定 され 、 市 民 に対 して の説 明責 任 が課 され て行 政 過 程 の透 明性 が 一 層 、 増 す の で あ る。 そ して 、 行 政 の全 過 程 に対 して は情報 を え た市 民 が能 動 的 に監 視 し、 市 民 の参 加 に よ る公 共性 の形 成 を可 能 に す る。 これ を市 民 的 公29?
共 性 と呼 ぶ こ とが で き る。
情 報 公 開法 にお いて は情 報 は原 則 公 開 で あ り、 開 示 請 求 で き るの は何 らか の 利 害 関 係 を有 す る者 で はな く 「何 人 」 で も可 能 な の で あ る。 それ は 当該 法 律 の 目的 に もあ る よ う に個 人 の権 利 、 利益 の保 障 を直 接 の 目的 とす るの で は な く、
国 民 主権 の 理 念 に基 づ き民 主 的 な行政 が 推 進 され る こ とを 目的 と して い るか ら で あ る・ しか も、 イ ニ シ ア テ ィ ブ を議 会 で は な く個 々 の市 民 に委 ね て い る こ と が 重 要 な の で あ る。
それ ゆ え に行 政 に対 す る個 々 に よ る市 民 の民 主 的統 制 の 考 え方 を最 も端 的 に 示 して い るのが 情 報 公 開法 な の で あ る。 これ まで は議 会 にお いて議院 の国 政 調 査 権 、議 員 の 質 問 権 を通 して政 府 の活動 を明 らか に し、 その結 果、 間i接的 に政 府 の情 報 が 市 民 の 目に明 らか に な って きた の で あ る。 そ こで は、 国 民主 権 とは い え イ ニ シ ア テ ィ ブ は どち らか とい え ばG会 に 委 ね られ 、 市 民 は受 動 的 な 立場 に置 か れ て きた の で あ る。
しか し、 情 報 公 開法 で はイ ニ シ アテ ィ ブ は市 民 の手 に あ り、 能動 的 市 民 像 が 想 定 され て い る。 国民 主 権 の下 で議 会 だ けで な く市 民 自 らが 直接 的 に行 政 に対 す る民主 的 な統 制 を図 ろ う とす る もの で あ る。 しか も、 国 民 、 人 民 とい う抽 象 的 な集 合 体 で はな く、具 体 的 な個 々 の市 民 の行 為 に よ って な され る。 行 政 側 か らす れ ば議 会 に対 して だ けで な く、 た えず 市 民 の存 在 、動 向 を意 識 した説 明責 任 を負 う こ とに な る。
君 主 主権 の明 治憲 法 下 で は、 「国民 」 どころで はな く 「臣民 」 で あ った市 民 は、
天 皇 の 臣下 で あ る以 上 、 臣下 か らお上 に行 政 情 報 の公 開 を求 め る こ とは当 然 、 問題 とな る こ とはな か っ た 。 国 民 主 権 の 日本 国 憲 法 で は この こ とに対 す る変 革
憲法学か ら見 た行政 の民主的統制 57
は必 要 で あ った が 、行 政 に関 す る情 報 公 開 の法 制 度化 はか な り遅 れ て しまっ た。
大浜 教授 は以 上 の こ とを ふ ま えて 国 民 主 権 の 下 の 情 報 公 開 の法 制 度 化 の意 義 を 次 の よ うに述 べ る。
国 民 主 権 に も議 会 の 支配 を正 当化 す る点 に力 点 が あ る 「ナ シ オ ン主 権 」 と民 衆 の 具体 的 な政 治 参 加 に力 点 を置 く 「プ ー プル主 権 」(人 民主 権 論)と が あ るが
say
情 報 公 開法 の 理念 は後 者 に近 い と して い る。 た だ 、 これ まで の 人 民 主 権 論 が 抽 象 的 団体 と して の 人 民 の政 治 的決 定 に焦 点 を あて て いた こ とを考 え るな らば、
情 報 公 開 法 は個 々 の 具 体 的市 民 の 参加 を想 定 して お り、 そ の意 味 で は これ まで の 人 民 主権 論 を超 え る もの が あ る とい え る。
ま た、 情 報 公 開 法 の意 義 は宇 賀 教 授 に よれ ば 以下 の よ うに要 約 され る。 情 報 を行 政 に独 占 させ るの で は な く、 行 政 に対 して説 明 責任 を課 し、 情 報 を共 有 し た市 民 を参 加 させ 、 合 意 を形 成 して い く行 政 過 程 へ の転 換 を促 す 。 また、 情 報
を与 え られ た 市 民 に とって も 自己決 定 を し、 自己 責 任 を負 っ た り、 行 政 過 程 に 責任 あ る参 加 を行 った りす る 自律 的 ・能 動 的 市 民 像 が 期 待 され る こ とに な るの
31)
で あ る。
要 す るに情 報 公 開法 は 単 に個 別 的 な問題 と して 市 民 に行 政 情 報 の 開 示 を保 障 した とい う よ りは、 情 報 公 開 法 の活 用 と具 体 化 の た め に は 日常 的 に も精 神 的 に 自律 的 して い る市 民像 が 期 待 され て い る こ とが 重 要 な の で あ る。 情 報 公 開 法 を 活 用 す る 目的 は情 報 を公 にす る こ とに よっ て公 的議 論 を喚起 し政 治 、 行 政 を正 す こ とにあ る。公 徳 心 を持 っ 市 民 と して 私益 で は な く公 益 を 目指 して行 政 の 民 主 的統 制 に関 わ って い くの で あ る。
この よ う に情報 公 開 法 は能 動 的 市 民像 を前 提 として 市 民 の行 政 過 程 へ の参 加 、 民 主 的 統 制 を確 保 す る とい う変 化 を もた ら して い る。 そ れ は また従 来 の 国 民 主 権 論 の議 論 、 人 民 主 権 論 に対 して も個 人 の 自律 性 、 個 人 の 自己 決 定 の領 域 か ら 権 力 へ の関 与 を よ り具 体化 した能動 的市 民像 とい う新 た な局 面 を開 くもの とな っ て お り、 そ の 意 味 か ら も憲 法 学 と して も注 目す べ き こ となの で あ る。
口、 行 政 手 続 法
行 政 手 続 法 は1条 で 目的 を 「この 法 律 は、 処 分 、 行 政 指 導 及 び届 出 に関 す る 手 続 並 び に命 令 等 を定 め る手続 に関 し、 共 通 す る事 項 を定 め る こ とに よ って 、
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行 政運 営 にお け る公 正 の確 保 と透 明性 の 向 上 」 を図 り、 国民 の権 利 、 利 益 の保 護 に資 す る と して い る。 先 の情 報 公 開法 で は個 人 の 利 益 の保 障で は な く民主 的 な行 政 に貢 献 す る とされ た が 、 行 政 手 続 法 で は個 人 の 利 益 の保 障 と行 政 の適 法 性 、 公 正 さの確 立 とい う二 重 の構 造 が 設 定 され て お り、 そ の点 が 異 な る。
情 報 公 開 法 は 「何 人」 で も開 示 請 求 で き る こ とに よっ て 私益 で は な く公 益 を 目指 す 市 民 の活 動 が 想 定 され て い た。 しか し、 行 政 手 続 法 で想 定 され て い るの は原 則 的 に(後 で 触 れ る意 見 公 募 制 は必 ず し も狭 い意 味 で の利 害 関係 者 で はな い が)私 益 に関 わ る利 害 関 係 者 で あ る。 に もか か わ らず 利 害 関 係 者 の権 利 、 利 益 を保 障 す る こ とが 行 政 の公 正 ・適 正 化 を もた らす こ とが で き る とい う二 重 の 構 造 が定 め られ て い る。
行 政 手 続 法 は1993年 に制 定 さ れて お り、 行政 諸 法 の 中 で も比較 的新 しい法 律 に属 す る とい え る。市 民 は それ まで 行政 の行 為 に対 して は事後 的 に行 政 事 件 訴 訟 法 、 国家賠 償 法 に よっ て 争 う他 は なか っ た。 それ に対 して行 政 手続 法 の意 義 は行 政 の行 為 に対 して事 前 に枠 を は めて統 制 す る こ とに な り、 それ は また 事後 にお いて も市 民 に とって行政 事 件 訴 訟法 等 で争 う こ とを容易 にす る こ とに もな っ た の で あ る。
こ こで は行 政 に対 す る市 民 の 民 主 的統 制 とい う視 点 か ら行 政 手 続 法 に 関 して は二 つ の面 だ け を取 り上 げ る。 一 つ に は第 二 章 の 申請 に対 す る処 分 と第 三 章 の 不 利 益 処 分 の 問題 で あ る。 申請 に対 す る処 分 と不 利 益 処 分 とで は法 の 定 め る手 続 は異 な るが 、 共 通 す る こ とは市 民 の 行政 過 程 へ の事 前 参 加 に よ って 行 政 過 程 の透 明 性 を図 る こ とを 目的 と して い る こ とで あ る。 これ に よ り利 害 関係 者 で あ る市 民 の権 利保 護 と同時 に行 政 の 適正 ・公 正 を もた らす こ とに もな る こ とに注 目 した い 。
行 政 の適 正 ・公 正 を確 保 す るた め には法 治主 義、 法律 に よ る コ ン トロー ル が 必 要 で あ る。 しか し、行 政 の 行 為 を すべ て法 律 で コ ン トロー ル す る こ とは不 可 能 で あ り、 結 局 は行 政 の 裁 量 に な って し まい、 市 民 に とって は事後 的 に行 政 不
32)
服 審 査 法 を含 む行 政 争 訟 法 で 争 う他 は な くな る。 そ して、 行 政 手続 法 以 前 に は 個 別 的 分 野 に お い て は事 前 手 続 を定 め た 法律 は な くは なか っ た が行 政 全 般 に関
して は事 前 手 続 を定 め る包 括 的法 律 は な か った 。
そ こで行 政 手続 法 で は事 前 手 続 と して 申請 に 対 す る処分 、 利 益 付 与 処 分 に関
憲法学か ら見 た行政 の民 主的統制
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して は審 査 基 準 を定 め て公 表 し、 不 利 益 処 分 に関 して も処 分 基 準 を定 めて 公 表 す る こ とを定 め た の で あ る。 利益 付 与 処 分 で は審 査 基 準 の他 、標 準 処 理 期 間 、 理 由 の提 示 、 公 聴 会 の 開催 等 を規 定 して い る。 そ して 、不 利 益 処 分 で も処 分 基 準 の他 、 理 由 の提 示 、 文 書 の閲 覧 、 聴 聞 、弁 明 の機 会 の 付 与 が規 定 され た ので あ る。
申請 に対 す る処 分 にせ よ、 不 利 益 処 分 にお い て も基 準 を設 定 し、 理 由 を提 示 す る こ とは利 害 関係 者 で あ る市 民 に事 前 に行 政 に関 す る情報 を提 示 す る こ とで あ る。 この こ とは行 政 の裁 量 を縮 小 し、行 政 過 程 の 透 明 性 を確保 す る こ とにな る。 他 方 、 市 民 の側 に とっ て は事 前 に情 報 を得 る こ とに よって 自己 の利 益 の確 保 、 自 己決 定 た め の資 料 とな り、 それ は また 、 事 後 的 に行 政 と争 うこ とに比 し て よ り市 民 の能 動 性 を確 保 す る こ とにつ なが る。
また 、 申請 に対 す る処 分 の公 聴 会 の 開 催 、 不 利 益 処 分 の聴 聞 、弁 明 の機 会 の 付 与 は市 民 が 行 政 に 関 して 直接 、 意 思 を表 明 す る こ とを可 能 にす る。 これ は行 政 過 程 へ の市 民 の参 加 で あ る。確 か に個 別 の問 題 に関 す る処 分 で あ っ て 当事者 の利 害 関係 に限定 され た もの か も しれ な いが 同様 な 問題 は当事 者 以 外 に も生 じ る こ とが あ る。 そ れ ゆ え に個 々 の 市 民 の利 害 に関 わ る意 思表 明 は、 他 の市 民 の 利 益 の保 護 、 更 に は行 政 の恣 意 的 な行 為 を排 除 し行 政 の公 正 ・適 法 性 につ なが
る こ とも あ りうる。
二 っ には2005年 の行 政 手続 法 の改 正 に よ る第 六 章 の意 見公 募 手続 等 の導 入 で あ る。 意 見公 募 とは、 具 体 的 に は命 令 、政 令 、 告 示 等 の行 政 立 法 の制 定 に関 し て市 民 の 意 見 を公 募 す る もの で あ る。 それ まで は行 政 手 続 法 に お い て は事 前 手 続 の範 囲 と して先 の よ うな行 政 処 分 と行政 指 導 につ い て の み定 め 、行 政 立 法 は 除 か れ て い た。 それ ゆ え に行 政 立 法 に関 す る意 見 公 募 手 続 の導 入 は行 政 過 程 の 透 明 性 を0層 、増 す もの で あ る。
同 じ く行 政 手続 法 の 内容 で あ っ て も申請 に対 す る処 分 、不 利 益 処 分 と意 見 公 募 手 続 で は行 政 に対 す る市 民 の民 主 的統 制 の視 点 か らす れ ば相 違 点 が あ る。 前 者 で はあ くまで も個 別 的 な利 害 関 係 者 とい う限定 性 が あ りつ つ もそれ が結 果 的 に一 般 的 に行 政 の公 正 ・適 法 性 に資 す る こ とにな る もので あ っ た。 それ に 対 し て後 者 は個 別 的 な利 害 関 係 者 の意 見 表 明 で はな く行 政 立 法 に対 す る意 見表 明 で
あ りう るか らで あ る。
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具 体 的 に は意 見公 募 制 に関 して 行政 手続 法39条 で は命 令 制 定機 関 は 、命 令 等 を定 め よ う とす る場 合 に は当 該 命 令 等 の案 を あ らか じめ公 示 し、 意 見 提 出先 お よび 期 間 を定 めて 「広 く一 般 の意 見 」 を求 め な けれ ば な らな い と して い る。r広
く0般 の意 見 」 に見 られ る よ うに市 民 は 自 らの利 害 に 直接 関係 な く、 意 思 を表 明 で き るの で あ る。 ま さ に これ は市 民 の 自律 性 ・能 動 性 を前 提 と した 市 民 に よ
る行 政 の公 正 ・適 正 化 の道 筋 な の で あ る。
行 政 手続 法 、 と りわ け意 見 公 募 制 の導 入 の 改 正 後 は一 層 そ うで あ るが 、 行政 に対 して 市 民 の立 場 は強 化 され 、 市 民 は行 政 に関 して 意 見 を これ まで 以 上 に言 いや す くな り、 行 政 過 程 も市 民 か ら見 た とき の透 明 性 を増 し、 また行 政 の 市 民 に対 して の説 明 責任 が 生 じ る こ とにな っ て行 政 の 裁 量 を規 律 しや す くな るの で
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あ る。 そ の こ とは情 報 公 開 法 と共 通 す る もの で あ るが 、 いず れ に して も行 政 に 対 す る市 民 の 民 主 的 統 制 を強 化 して い る。
行 政 手続 法 は個 人 の権 利 、 私 益 の保 護 と行 政 の適 法性 と公 正 さ とい う二 重 の 構 造 が設 定 され た。 しか も、 改 正 後 の意 見 公 募 制 は一 層 、後 者 の面 を増 す こ と
とな っ た。 市 民 が個 人 の権 利 の保 障 を求 め るだ けで な く個 人 の権 利 を実 現 す る た め に広 く公 益 性 、 公 共 性 へ とつ な げ、 あ るい は公 共 性 その もの の 実 現 を 目指 す とい う多 様 な構 造 が行 政 手続 法 に設 定 され て い るの で あ る。 その 意 味 で は行 政 手 続 法 も また市 民 個 々人 の 能 動 的 参加 とい う点 か ら国 民主 権 の 内実 を増 す こ
とに な って い るので あ る。
八、 行政 事件 訴 訟 法
行 政 の行 為 に対 す る事 後 的救 済 と して行 政 不 服審 査 法 、 行 政 事 件 訴 訟 法 、 国 家 賠 償 法等 が定 め られ て い る。 この よ うな 事後 的 救 済 措 置 に お い て も近 年 、行 政 に対 す る個 々 の 市 民 に よ る民 主 的統 制 が 強 化 され て い る。 こ こで は この 強化 の方 向 を特 に行 政 事 件 訴 訟 法 を 中心 に して検 討 して み る。 この点 に関 して は取 消 訴 訟 に お け る訴 訟 要件 の緩 和 化 と行 政 訴 訟 の 救済 機 能 の 変化 の 二 つ につ い て 考 えて み た い。
行 政 事 件 訴 訟 法 は原 則 と して 主 観 訴 訟 で あ り、 客 観 訴 訟 は住 民 訴 訟 、 選 挙 訴 訟 、機 関 訴 訟 等 例 外 に属 す る。 主観 訴訟 とは当 事 者 の個 人 的 な権 利 ・利 益 の保 護 を 目的 と し、 客 観 訴 訟 とは客 観 的 な法 秩 序 の 維 持 、 行 政 の適 法 性 を 目的 とす
憲法学か ら見た行政の民主的統制
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る。 しか し、 行 政 事 件 訴 訟 法 にお いて 原 則 とされ る主 観 訴 訟 にお いて も訴 訟 要 件 の 緩 和 化 、 行 政 訴 訟 の 救 済f能 の 変 化 に よっ て行 政 の適 法 性 の確 保 の要 素 が 加 味 され っ っ あ り、行 政 手 続 法 で 示 した二 重 の構 造 が 多 少 な り とも見 られ る。
まず 、訴 訟 要件 の 緩 和 化 で あ るが 、 そ の一 つ と して 行 政 処 分概 念 の拡 大 が あ げ られ る。 行政 事件 訴 訟 法 に お け る取 消 訴 訟 の対 象 は 「公 権 力 の行 使 」 で あ り、
行政 処 分 として の違 法 性 が 問題 とされ た 。 それ ゆ え に 「公 権 力 の行 使 」 に は あ た らな い行 政 指 導 や 事 実 行 為 に対 して は原 則 的 に行 政 事件 訴 訟 法 上 の 救 済 が お よぼ な い とされ て きた 。 た とえ、 事 実 上 の 「公 権 力 の行 使 」 で あ って も行 政 法 の概 念 に該 当 しな い か らで あ る。
これ で は個 人 の権 利 ・利 益 の救 済 の道 を狭 め る こ とに な り、 行 政 の裁 量 を大 き く認 め市 民 に よ る行 政 の民 主 的統 制 の可 能 性 を限 定 して しま う。 そ こで、 「公 権 力 の行 使 」、行 政 処分 の概 念 の拡 大 が 求 め られ て きた。 た とえ ば 「実 質 的 に国 民 生 活 を一 方 的 に規 律 す る もの で 、 国 民 が これ に よ り現 実 に不 利 益 を受 け、 ま た は受 け るお それ が あ る にか か わ らず 、 民 事 訴 訟 そ の他 の 手続 き に よって 容 易
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に救 済 され ない場 合 に は」 「処分 性 」 を承 認 す べ き とい う見 解 が 出 され る こ とに な る。
訴 訟 要 件 の 緩 和化 の二 つ 目 と して原 告適 格 の 拡 人 の 問題 が あ る。 行 政 事 件 訴 訟 法9条 で は原 告 適 格 につ い て 「法律 上 の利 益 」 を有 す る者 と して い る。 この
「法 律 上 の 利益 」 を ど う解 す るか で裁 判 上 の救済 を受 け る者 の範 囲が 決 定 され る 点 で 、 す な わ ち、 個 人 の権 利 救済 とい う意 味 で 非 常 に 重要 な こ とで あ る。 行政 法 学 に お い て は この 点 に関 して権 利 説 、 法 律 上 保 護 され た利 益 説 、 法 的 な保 護
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に値 す る利益 説 、適 法性 保 障 説 が 主 張 され て い る。
これ らの説 で は権 利 説 は主 観 的権 利 の保 障 に軸 をお いて 原 告 適 格 を限 定 して お り、逆 に適 法性 保 障 説 は原 告 適 格 を拡 げ客 観 的 な行 政 の適 法 性 、 統 制 に軸 を お いて い る こ とは明 らか で あ る。 た だ 、 た とえ主 観 的 権 利 に軸 をお い て い る と して も結 果 と して の行 政 の 適法 性 を全 て 否 定 して い るの で は な い 。 また 、 適 法 性保 障 説 に お い て も その反 対 の こ とが い え るの で あ るが。
いず れ の説 が妥 当 で あ るか は行 政 法 学 に委 ね る と して 憲 法学 と して 注 目す る の はか つ て は主観 的権 利 の保 障 に焦 点 が あて られ て いた原 告 適 格 の概 念 が 次 第
に拡 大 され 、 今 日で は法 的 な保 護 に値 す る利 益 説 、 更 に適 法 性 保 障説 まで もが