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ゲノム編集によるタンパク質発現調節および新規育種技術への利用

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Academic year: 2021

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ゲノム編集によるタンパク質発現調節および新規育種技術への利用

佐々木 北海道大学大学院 農学院 生物資源科学専攻 応用分子生物学講座 分子生物学

1. 背景と目的

生物の遺伝情報は DNA にコードされている.遺伝子は,DNA からmRNA が合成され る「転写」mRNAからリボソームによってタンパク質が合成される「翻訳」の各過程を経 て発現する.本研究では,翻訳段階において遺伝子発現に関与する塩基配列を改変すること で,目的のタンパク質発現量を調節することを試みた.この手法は、タンパク質のアミノ酸 配列を変えずに発現量のみを調節することが可能であり、新たな育種技術としての利用が 期待される。

発現調節の対象として,シロイヌナズナ FLC 遺伝子を用いた.FLC (FLOWERING

LOCUS C) は植物の開花を抑制する機能を持つ転写因子である.春化に応答して花成ホル

モンFT 遺伝子の発現を制御している.FLC の発現が強い植物は遅咲きの表現型を示す.

花成の調節は寒冷地に適した品種の作出に有用である.本研究では,FLC の発現を減少さ せることで,遅咲きのシロイヌナズナに早咲きの形質を付加することを試みる.

2. 方法

遅咲きのシロイヌナズナfca-1変異株に対してCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編 集を行い,タンパク質発現調節に機能する配列の改変を行った.変異体を選抜し,ロゼット 葉の数を計測することで表現型の解析を行った.次に,ゲノム編集により導入された変異の タンパク質発現量への関係性を調べるために,FLC 遺伝子のタンパク質コード領域の部分 にレポーター遺伝子を融合させたコンストラクトを作成し,シロイヌナズナMM2d細胞を 用いた一過的発現解析を行った.

3. 結果と考察

FLC 遺伝子のゲノム編集により,タンパク質発現量の減少が期待される2種類の変異体 を得た.これらの変異体は,野生型配列のFLC遺伝子を持つ植物と比較して有意に早咲き になることが確認された.一過的発現解析においては,ゲノム編集配列でタンパク質発現量 の減少が見られた.この結果は,花成の解析と一致している.したがって,本手法によって タンパク質発現量を変化させ,植物の表現型を調節できることが示された.

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