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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:市野澤 隆宏

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:Molecular interaction of the SspB analogous peptide with periodontopathic and cariogenic bacteria

(SspB ペプチドによる歯周病原細菌および齲蝕原生細菌との分子間相互作用)

審査委員:(主 査) 教授 落合 智子

(副 査) 教授 平塚 浩一 教授 清水 武彦

口腔バイオフィルムの一つであるデンタルプラークの形成は, 歯面上に形成された唾液ペリクルへの口 腔レンサ球菌の付着に起因する。齲蝕原性細菌 Streptococcus mutans や初期定着細菌 Streptococcus gordonii はそれぞれ菌体表面のアドヘジン (付着因子)を介した唾液ペリクルへの付着能を有する。S.

gordonii の持つアドヘジンの一つである SspB の C 末端アミノ酸領域 (SspB Adherence Region: BAR)は歯 周病原性細菌Porphyromonas gingivalis の持つ線毛と結合する。この BAR から合成された BAR ペプチドは, in vitro において P. gingivalis の S. gordonii への付着に続くバイオフィルム形成を抑制し, in vivo ではS. gordonii を定着させたマウスの口腔内に BAR ペプチドで処理した P. gingivalis を投与すると, マ ウス口腔の歯槽骨吸収を抑制したと報告されている。

一方で SspB の N 末端アミノ酸領域はS. mutans のタンパク質抗原 PAc と相同性があり, SspB 類似ペプチ ド SspB (390-T400K-402)は唾液糖タンパク (gp340)由来ペプチド (SRCRP2) と高い結合作用を持つ。SspB (390-T400K-402)は唾液コートしたハイドロキシアパタイト (s-HA)への処理によって, S. mutans および S. gordonii の付着を阻害し, さらに唾液コートしたポリスチレンプレートを SspB (390-T400K-402)で処 理すると, S. mutans のバイオフィルム形成を阻害したと報告されている。そこで本研究では歯肉縁上およ び 歯 肉 縁 下 に お け る 歯 周 病 原 細 菌 の バ イ オ フ ィ ル ム 形 成 メ カ ニ ズ ム を 理 解 す る た め に , SspB (390-T400K-402), 歯周病原細菌ならびに唾液成分の相互作用を検討した。また SspB ペプチドによる S.

mutans の初期付着阻害に着目し, SRCRP2 への結合が最も高いと報告されている SspB (A4K-A11K)を用いて S. mutans のバイオフィルム形成阻害効果について検討した。

本実験ではP. gingivalis W83 株, W50 株および ATCC 33277 株, Fusobacterium nucleatum #20 株およ び ATCC 23726 株, Aggregatibacter actinomycetemcomitans ATCC 29522 株, ATCC 29523 株および Y4 株を 歯周病原細菌として供試した。 歯周病原細菌と SspB (390-T400K-402)の結合および SspB (390-T400K-402) の結合において唾液成分が及ぼす影響について, ELISA 法を用いて評価した。SspB (A4K-A11K)による S.

mutans のバイオフィルム形成阻害効果は, s-HA ディスク上に形成されたバイオフィルムの定量およびバイ オフィルム中の細菌数の測定で分析した。すなわち, ディスク上に形成されたバイオフィルムをサフラニ ンで染色後, 吸光度測定によって定量した。またディスク上に形成されたバイオフィルムを剥離後, Mitis-Salivarius (MS)寒天培地に植菌し, コロニー数を計測した。

本研究から得られた結果として,

1. SspB (390-T400K-402)はP. gingivalis ATCC 33277 株, F. nucleatum #20 株および ATCC 23726 株と 高い結合反応を示した。

2. ヒト全唾液で処理された歯周病原細菌への SspB (390-T400K-402)の結合反応は, 未処理群と比較し て低下した。一方で SRCRP2 によって処理された歯周病原細菌では, 未処理群よりも高い SspB (390-T400K-402)の結合作用を示した。

3. MS 寒天培地に形成されるコロニー数において, SspB (A4K-A11K)で処理された s-HA 群では, 未処理群

(2)

と比較して減少した。また s-HA 上のバイオフィルム形成量は SspB (A4K-A11K)処理群で減少した。

以上の結果より, S. gordonii は SspB を介して歯周病原細菌と結合し, S. gordonii と歯周病原細菌の 相互作用には gp340 が関与することが示唆された。また SspB ペプチドは唾液ペリクルの gp340 へ結合し, S.

mutans の初期付着を競合的に阻害したと考えられる。したがって SspB ペプチドは齲蝕バイオフィルムの新 規抑制因子として有用である可能性が示唆された。

よって本論文の著者は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

平 成 年 月 日 2 9 2 2 3

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