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腎炎症例研究 32 巻 2016 年 症例 88 歳女性 主訴 食欲不振, 背部痛, 発熱 現病歴 入院 2カ月前は腎機能障害や尿異常の指摘なし. 2 週間前から食欲不振,1 週間前から背部痛が出現した. 当院受診し, 冠攣縮性狭心症の疑いで入院になった. 入院時にCr 1.8 mg/dl,crp

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症  例

症 例:88歳女性。入院2カ月前は腎機能正 常であった。2週間前より食欲不振が出現し, 1週間前から背部痛が出現。心電図変化を認め 冠攣縮性狭心症の疑いで緊急入院になった。発 熱,腎機能障害(Cr 1.8 mg/dl,尿蛋白2+,尿 潜血1+),炎症反応上昇(CRP 13.7 mg/dl)も 認め,急性腎盂腎炎として抗生剤(CTRX)を 開始した。その後も炎症反応高値,発熱が継続。 10日目の検査でCr 2.9 mg/dl,U-Pro 2.7 g/gCr, U-RBC 1-4/HPFと腎機能の増悪を認め,RPGN の経過を呈した。ANCA含め各種抗体は陰性で あ っ た が, 尿NAG 12 U/L, 尿 β2MG 76500 μg/Lと尿細管マーカーの上昇を認めた。Ga シンチで両側腎に集積を認め,12日目には滲 出性紅斑が出現した。間質性腎炎を疑い入院 14日目に腎生検を施行した。 腎生検結果:光顕では糸球体を7個認め,う ち1個に細胞性半月体を認めた。また,多核巨 細胞を伴う肉芽腫がおよそ6個あり,少なくと も3つは糸球体と考えられた。中位動脈血管壁 に高度の単核細胞,好酸球浸潤があり,壁の fibrinoid necrosisを認めた。壊死性血管周囲に も肉芽腫性変化を認めた。尿細管間質炎所見も 高度であり,形質細胞に加え,好酸球,リンパ 球,好中球の浸潤を認めた。蛍光所見はpauci-immune型で,電顕でもEDDの沈着は認めな かった。 経 過:ANCA陰性血管炎と診断し,ステロ イドパルス治療を施行した。翌日には解熱し, 皮疹も消退した。後療法としてPSL 30 mg/日 内服を開始し,CRPは改善,Cr 1.5 mg/dlと腎 機能も改善している。 考 察:腎生検にて高度の血管炎所見を認め ANCA陰性血管炎と診断した。尿細管間質炎の 所見が強いが,CTRXでDLST陽性であること から臨床的にはCTRXによる薬剤性間質性腎炎 の合併を考えたい。また肉芽腫が血管周囲性で あることから,薬剤性間質性腎炎ではなく血管 炎に起因する肉芽腫と考えざるを得ない。臨床 的にはGPAやEGPAの所見を認めずMPAの診 断としたいが,肉芽腫を認めることから腎限局 型GPAと診断した。 疑 問:尿細管間質炎,肉芽腫は一元的に ANCA陰性血管炎で病理学的に説明可能か。も しくは薬剤性間質性腎炎の合併と考えるべき か。診断は腎限局性GPAで妥当か。 (1横浜市立みなと赤十字病院 腎臓内科 (2横浜市立みなと赤十字病院 病理診療科

ANCA 陰性血管炎に

尿細管間質炎と肉芽腫像を呈した一例

山 﨑   潤

1

  金 久 恵理子

1

  山 口 若 葉

1

熊 谷 二 郎

2

  長 濱 清 隆

3

  藤 澤   一

1 病理コメンテータ

  山 口   裕

4

  城   謙 輔

5 Key Word:腎限局型GPA,肉芽腫,ANCA陰性血管炎,薬剤 性間質性腎炎

(2)

図 6

血液検査

3

【感染症】 HBs抗原 (‐) 血液培養2セット 陰性 HCV抗体 (‐) 尿培養 梅毒RPR (‐) α Streptococcus 梅毒TPLA (‐) E.Coli ASO 72 IU/ml ツベルクリン反応 陰性 ASK 160 倍 HTLV1 (‐) T・SPOT (‐) パルボB19 (‐) βDグルカン 7.6 pg/mL 図 5

血液検査

2

【免疫】

IgG 1824 mg/dL 抗ds‐DAN抗体 0.6 IU/ml IgG4 28 mg/dL 抗GBM抗体 <10EU

IgA 656 mg/dL MPO‐ANCA <0.5 IU/ml IgM 129 mg/dL PR3‐ANCA <0.5 IU/ml CH50 45 U/mL クリオグロブリン 陰性 C3 128 mg/dL 免疫電気泳動 M蛋白(‐) C4 25.7 mg/dL ANA <40倍 RF 10 U/mL 抗SS‐A抗体 1.4 U/mL 抗SS‐B抗体 1.4 U/mL 図 4

血液検査

1

【血算】 【生化】 WBC 8700 /μL TP 6.3 g/dL ALP 390 U/L Seg 74 % Alb 2.3 g/dL CK 17 U/L

Lym 10.7 % BUN 39.6 mg/dL T‐Cho 116 mg/dl

Mono 7.2 % Cr 2.9 mg/dL BS 113 mg/dL

Eos 7.4 % Na 134 mEq/L HbA1c 7.0 %

Baso 0.6 % Cl 104 mEq/L CRP 10.7 mg/dL

RBC 288万/μL K 4.8 mEq/L BNP 73 pg/mL

Hb 7.5 g/dL Ca 8.1 mg/dL ACE 8.5 U/L Ht 22.7 % UA 4.0 mg/dL

MCV 78.8 fL T‐Bil 0.2 mg/dL 【凝固】 Plt 42.5万/μL AST 33 U/L PT‐INR 1.19 Ret 8 ‰ ALT 23 U/L APTT 29.3 秒 LDH 333 U/L Fib 538 mg/dl

尿検査

【尿定性】 【尿沈査】 比重 1.010 赤血球 1‐4 /HPF pH 7.0 白血球 1‐4 /HPF 蛋白 (2+) 円柱 (+) 糖 (1+) ウロビリノーゲン (+/‐) 【尿生化】 ケトン体 (‐) 尿Na 73 mEq/L ビリルビン (‐) FENa 4.2 % 潜血 (+/‐) 尿NAG 12.0 U/L WBC (‐) 尿β2MG 76500 μg/L 亜硝酸塩 (‐) 蛋白尿 2.7 g/gCr 図 3

転科時所見

【身体所見】 結膜 :貧血あり・黄染なし 頚部 :リンパ節腫大なし 胸部 :肺胞呼吸音正常 心雑音なし 腹部 :平坦・軟,圧痛なし 四肢 :下腿浮腫あり 皮疹なし,関節圧痛なし 神経学的異常なし 【Vital  Sign】 血圧 脈拍 体温 SpO2 身長 146 cm 体重 45.0 kg(+2.0 kg) 130/60 mmHg 90 /分 整 37.0 ℃ 99 % (RA) 図 2

症例

88歳 女性

【主訴】食欲不振,背部痛,発熱 【現病歴】 入院2カ月前は腎機能障害や尿異常の指摘なし. 2週間前から食欲不振,1週間前から背部痛が出現した. 当院受診し,冠攣縮性狭心症の疑いで入院になった. 入院時にCr 1.8 mg/dl,CRP 13.7 mg/dlと腎機能障害,炎症反応 上昇を認め,尿路感染症,脱水症の合併が疑われた.補液,抗生 剤(CTRX)を継続するも,腎機能は進行性に増悪したため,入院 9日目に当科転科になった. 【既往歴】 高血圧症,腰痛症,胃癌 【内服薬】 カンデサルタン,アムロジピン,リマプロスト 健康食品・漢方なし 【生活歴】 喫煙:なし,  飲酒:機会飲酒 図 1

(3)

図 12 図 11 図 10 Crmg/dl) (mg/dl) CTRX CRP 入院後日数 (日後)

入院後経過

腎生検 薬疹 0 1 2 3 4 5 6 7 8 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 1 2 3 6 8 10 13 15 図 9

ガリウムシンチグラフィ

図 8

胸部レントゲン、胸腹部CT

図 7

(4)

図 18

尿細管間質炎

¾ 血管炎に伴うPTC炎からの波及では好中球,好酸球,単核球から なる多彩な炎症細胞が浸潤する.(腎生検病理アトラス) ¾ 薬剤性間質性腎炎では形質細胞,リンパ球が中心で,アレルギー 性の場合は好酸球も出るが必須ではない.(腎生検病理アトラス) ⇒ 本症例では,好中球,形質細胞,好酸球いずれも認め,血管炎と 薬剤性の合併を考えたい. 図 17

症例のまとめ

• 臨床的には皮疹,Gaシンチ陽性,DLST陽性から セフェム系の薬剤性間質性腎炎が疑われ,病理 でも間質性腎炎の組織像を呈した. • しかしANCA関連血管炎の病理所見も呈し, ANCA陰性血管炎と診断した. • 上下気道所見を認めず,好酸球増多や喘息を 認めないため,臨床的にはMPAと考えたが, MPAでは認めないはずの肉芽腫像を呈した. • ステロイド治療により腎機能は改善した. 図 16 Crmg/dl) (mg/dl) PSL 30 mg CTRX 0 1 2 3 4 5 6 7 8 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 CRP 入院後日数 (日後)

入院後経過

腎生検 mPSL 500 mg 薬疹 ∥ ∥ ∥ 63 25 mg

病理結果まとめ

• 半月体形成,中位動脈の血管炎所見を認め る. • 多核巨細胞を伴う肉芽腫を,糸球体と壊死性 血管周囲に認める. • 尿細管間質炎が高度であり,形質細胞と好 酸球,好中球の浸潤を認める. • 蛍光はpauci‐immune型. • 電顕はEDDを認めない. 図 15

電顕

図 14

蛍光

図 13

(5)

図 23

疑問点

• 尿細管間質炎は,血管炎のみで説明可能 か.薬剤性間質性腎炎の合併と考えるべき か. • 肉芽腫は血管炎に伴うものか. • 腎限局型GPAの診断は妥当か. 図 22

まとめ

• 半月体形成と小葉間動脈の血管炎所見から, ANCA陰性血管炎と考えられる. • 尿細管間質炎が高度であるが,形質細胞と好酸 球を認め,臨床経過からからもセフェム系抗生 剤による薬剤性間質性腎炎の合併を考えたい. • 肉芽腫は血管(糸球体)周囲性であり,血管炎に よる肉芽腫を考える. • 上下気道病変を認めないが,肉芽腫の存在から ANCA陰性の腎限局型GPAと診断した.

ANCA陰性血管炎

ANCA‐associated vasculitis(GPA・MPA・EGPA)にANCA‐negativeが 含まれる.(CHCC2012) ¾ Pauti‐immune型半月体形成性糸球体腎炎の10‐30%がANCA 陰性. (Nat.Rev.Nephrol2009;5:313) ¾ GPAの5%,MPAの10%,EGPAの30%はANCA陰性. (Heptinstall p649) ¾ 1 (Nat.Rev.Rheumatol2014;10:484)  図 21 CHCC 2012 ⇒ GPA Wattsアルゴリズム ⇒ GPA 厚生省診断基準 ⇒GPA確実,EGPA疑い GPAはE(上気道),L(肺),K(腎)の順に発症するが,本症 例ではE,Lの症状を認めない. ¾ 腎限局型GPAの可能性 ・稀だが,19例の文献報告あり.腎生検後4~78か月(平均26.3か月)で上下気 道症状が出現する.(Medicine1987;66:181) ・高齢者では気道病変が減り,腎病変が増える可能性.(Lupus2009;18:567) ¾ E,Lの症状を診断できていない可能性

診断

GPAの診断 図 20

肉芽腫

原因 Infection(TB,真菌,寄生虫) Drugs(Sulfonamides, Penicillins, Quinolones, PPI, NSAIDsなど) Sarcoidosis GPA TINU Oxalosis, Gout, Cholesterol granuloma      (Heptinstall p1093) ¾ セフェム系抗生剤でも尿細管周囲に肉芽腫出現の報告あり. (Pediatr Nephrol 2007;22:306) ¾ GPA,EGPAでは傍糸球体,間質内いずれにも肉芽腫を形成すること がある. 本症例では傍糸球体肉芽腫であり,血管炎による肉芽腫を疑う. 図 19

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増悪。2台が,最終的には4台に増悪しています。 入院10日目に薬疹を疑う皮疹が出現し,14日 目に腎生検を施行しています。  血尿が少なく,ANCA陰性であり,当初は血 管炎は疑いませんでした。セフトリアキソン投 与後に薬疹が出現し,β2MG上昇,ガリウム シンチ陽性,後にセフトリアキソンに対する DLSTが陽性であることが分かり,薬剤性間質 性腎炎を疑い腎生検を施行しています。  小葉間動脈に血管炎の所見を認めています。 間質に炎症細胞浸潤を高度に認めています。糸 球体は高度に破壊されています。  糸球体の強拡大像では,ボウマン嚢基底膜と 係蹄の破壊,fibrinoid壊死,半月体形成を認め ます。  こちらの糸球体では多核巨細胞を有する肉芽 腫を認めています。周囲の間質に形質細胞や好 中球,好酸球など,多彩な細胞浸潤を認めまし た。  蛍光所見はpauci-immuneと判断しています。  電顕でもEDDの沈着は認めていません。  病理結果のまとめです。半月体形成,中位動 脈の血管所見を認めました。多核巨細胞を伴う 肉芽腫を,糸球体と壊死性血管周囲に認めてい ます。尿細管間質炎が高度であり,形質細胞と, 好酸球,好中球の浸潤を認めました。蛍光は pauci-immune,電顕はEDDを認めていません。  その後の経過です。腎生検結果から血管炎が 疑われ,ステロイドパルス治療を施行。その後 ステロイド後療法をPSL0.7mg/kgで開始してい ます。薬疹は速やかに消退し,CRPは2台まで 改善。クレアチニンも一時5台まで増悪しまし たが,その後1台まで改善しています。  症例のまとめです。臨床的には皮疹,ガリウ ムシンチ陽性,DLST陽性から,セフェム系抗 生剤による薬剤性間質性腎炎が疑われました。 病理でも,間質性腎炎の所見を認めています。 しかし,ANCA関連血管炎の病理所見を認め, ANCA陰性血管炎と診断しています。上下気道 所見を認めず,好酸球増多,喘息,神経所見も

討  論

山﨑 「ANCA陰性血管炎に尿細管間質炎と肉 芽腫像を呈した一例」について報告します。  症例は,88歳と高齢女性です。入院2カ月前 は腎機能障害や,尿異常の指摘はありません。 2週間前から食欲不振,背部痛が出現していま す。当院を受診され,心電図異常があり,冠攣 縮性狭心症の疑いで入院になりました。   入 院 時 にCr1.8mg/dl,CRP13.7mg/dlと 腎 機 能障害,炎症反応の上昇を認め,尿路感染症, 脱水症の合併が疑われました。補液,抗生剤(セ フトリアキソン)を継続しましたが腎機能は進 行性に増悪。入院9日目に当科に転科になりま した。  既往歴として,高血圧症を認め,降圧薬を内 服しています。  身体所見では,貧血,下腿浮腫を認めました。 血圧は130/80,体温が37.0℃,体重が2kg増加 していました。  蛋白尿2(+),2.7g/g・Crとなっています。潜 血(±),尿赤血球1 〜 4とあまり多くありま せん。尿β2MG76500μg/Lと著明に上昇して います。  採血では,WBC8700,CRP10.7と炎症反応の 上昇を認めています。貧血とアルブミン低下を 認め,Cr2.9と上昇しています。  免疫系では,IgGとIgAが多少増加していま す が,MPO-ANCA,PR3-ANCA含 め, 各 種 抗 体はいずれも陰性でした。  尿培養は陽性ですが,その他感染症項目は全 て陰性となっています。  レントゲンでは心拡大を認めています。CT で,肺の腫瘤は認めていません。腎臓はやや腫 大傾向を認めました。  ガリウムシンチグラフィでは,両側の腎臓に 集積を認めました。  入院後の経過です。セフトリアキソンを開始 しましたが,CRPは10以上が継続し,改善し ていません。クレアチニンはその後,進行性に

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部に含まれています。約10%がANCA陰性と いわれています。  まとめです。半月体形成と小葉間動脈の血管 所見から,ANCA陰性血管炎と考えました。尿 細管間質炎が高度でしたが,形質細胞と好酸球 を認め,臨床結果からもセフェム系の抗生剤に よる薬剤性間質性腎炎の合併を考えました。  肉芽腫に関しては,血管周囲性であったため, 血管炎による肉芽腫を考えました。上下気道所 見を認めていませんが,肉芽腫の存在からは ANCA陰性の腎限局型のGPAと診断していま す。  疑問点です。尿細管の間質性腎炎は血管炎の みの所見か,もしくは薬剤性の間質性腎炎の合 併と考えるべきか。また,肉芽腫は血管炎,薬 剤性どちらに伴うものか。診断は,腎限局型の GPAで妥当かどうか。以上について教えていた だければと思います。以上です。 座長 どうもありがとうございました。では, フロアの先生から,ご質問,ご意見等はござい ますでしょうか。城先生,お願いします。 城 まずCTRX(セフトリアキソン)が分から ないのですが,セフェム系のβラクタム環を もった薬剤ですか。 山﨑 そうです。 城 フルネームは何ですか。 山﨑 セフトリアキソンという名前です。よく 使われるセフェム系のお薬です。 城 第三世代ですか。 山﨑 はい,第三世代です。 城 DLSTの値はどのぐらいでしたか。 山﨑 値自体は正確に覚えていないのですけれ ども,強陽性でした(SI2.6)。 城 当時使っているのは,CTRXだけですか。 山﨑 眠剤や胃薬も使っていました。全て DLSTを出して,眠剤が疑陽性でしたが,ほか はすべて陰性でした。 座長 そのほか,ございませんでしょうか。  今回のANCAは,間接蛍光抗体法もやられ たのでしたか。 認めなかったため,臨床的にはMPAを考えま した。しかしMPAでは認めないはずの肉芽腫 像を呈していました。ステロイド治療により, 腎機能は軽快しています。  尿細管間質腎炎についての考察です。血管炎 に伴うPTC炎からの波及では,好中球や,好 酸球,単核球からなる細胞が浸潤するとされま す。一方,薬剤性間質性腎炎の場合は,形質細 胞,リンパ球が中心で,アレルギー性の場合は 好酸球が出るといわれています。本症例では好 中球,形質細胞,好酸球,いずれも認め,血管 炎と薬剤性両者からの間質性腎炎と考えまし た。  肉芽腫についての考察です。原因は,感染, 薬剤,sarcoidosis,GPA,TINUなどいろいろあ りますが,本症例で可能性があるのは,セフェ ム系の抗生剤です。その場合は,尿細管周囲に 肉芽腫が出現するという報告があります。一方, GPA,EGPAでは,傍糸球体,間質内,いずれ にも肉芽腫を形成することがあるとされます。 本症例では,傍糸球体の高度の肉芽腫であり, 血管炎による肉芽腫をより疑いました。   診 断 で す が,Chapel Hillの 診 断 基 準 で は GPA,Watts’ algorithmでもGPA,厚生労働省診 断基準でもGPAとなり,いずれの診断基準か らもGPAの診断になります。GPAは一般的に はE(上気道),L(肺),K(腎)の順に発症 するとされていますが,本症例ではE,Lの症 状は全く認めず,腎臓のみの所見となっていま す。  そこで,腎限局型のGPAの可能性を考えま した。非常にまれですが,19例の文献報告が あり,平均26カ月で,その後に上下気道症状 が出現すると報告されています。また,高齢者 では気道病変が減り,腎病変が増える可能性が あるという指摘もあります。なお,E,Lの症 状を診断できていない可能性も否定できませ ん。  この方はANCA陰性でしたが,CHCC2012で もANCA陰性血管炎はANCA関連血管炎の一

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などで一番典型的に見られるものです。 【スライド07】小葉間動脈からは少し太めの。 内腔と内弾性板ぐらいしか見ないで,内弾性板 が断裂してしまっています。 【スライド08】fibrinoid materialが見られます。 糸球体で一部fibrinoid necrosisと言ってもいい。 ボウマン嚢周囲にgranulomatousな病変があり ます。 【スライド09】糸球体を置換するようなgranu-lomatousな 変 化 で,necroticに な っ て い ま す。 massiveな単核多核球の浸潤があって,tubulitis があります。 【スライド10】糸球体を完全にgranulomaが置 換して,多核巨細胞が出て,この動脈も壁構造 が失われて,elasticaがあるのですが,recanali-zationした血管腔が見えます。 【スライド11】fibrinoid materialが一部出ていて, 壊死性で,granulomatousな動脈炎であります。 【スライド12】ボウマン嚢があって,係蹄の虚 脱し,その周囲に肉芽腫性の反応が強く起こっ ている。これもボウマン嚢が消失して,炎症が, ボウマン嚢腔内に及んでいます。 【スライド13】cellular crescent,あるいはgranu-lomatous,tubulitisは多彩で,好中球が多いよ うに思います。 【スライド14】GBMの残存が中央にあって,肉 芽腫性の,これは完全にcollapseしてしまって います。ここはendarteritisとtubulitisの像であ ります。 【スライド15】肉芽腫性,壊死性の動脈炎糸球 体炎と,シビアなtubulitisになると思います。 【スライド16】これも同じ感じです。 【スライド17】動脈なのか糸球体なのか分から ないですが,ここに一部残っています。 【スライド18】肉芽腫性半月体性糸球体炎像で す。 【スライド19】肉芽腫性半月体性糸球体炎です。 【スライド20】fibrinoid necrosisが糸球体内に見 る。 【スライド21】20と同様です。 山﨑 c-ANCA,p-ANCAですか。 座長 はい。 山﨑 SRLでは検査は出来ないとのことで検査 はしていません。 座長 そうですか。分かりました。  そのほか,ご質問,ご意見,ございませんで しょうか。では,時間がちょっと押しています ので,病理のほうへ行ってよろしいですか。は い。では,山口先生,お願いいたします。 山口 【スライド01】これは,標本をご覧にな ると非常に素晴らしい,美しいgranulomaが多 発しています。 【スライド02】強い間質性の炎症細胞浸潤が あって,単核多核球のtubulitisがすごいです。 基底膜がはっきりしなくなるような。糸球体は 一部,ボウマン嚢周囲から押し寄せるような感 じで,それでcrescentをつくってくる。 【スライド03】こんなgranulomaなのです。ば かでかい,多核巨細胞が幾つか集まってgranu-lomaができています。一部,糸球体の係蹄の fragmentが中心部に残っていますので,糸球体 の周りというか,糸球体全体にgranulomaが及 んでしまっています。単核多核球によるtubuli-tisもひどいです。 【スライド04】糸球体全体が類上皮様の細胞, crescent様でgranulomatousな感じのもので,こ こに係蹄が少し残っている。好中球もずいぶん 多いです。尿細管が破壊性に,あちこち基底膜 の断裂が起きてしまっています。 【スライド05】動脈なので,内弾性板の内側が 見えている。周りがgranulomaなのです。中膜, 外膜が消失し,内皮下のhyalinosisが見えてい る。中膜筋がちょこっと残って,elastosisの強 い動脈で,周囲にgranulomatousな反応,いわ ゆるgranulomatous inflammationといわれる反応 が見られています。 【スライド06】ボウマン嚢が一部あって,多核 巨細胞が多発して,糸球体をgranulomatousに 置換している。こういうものをgranulomatous crescentと言っていた時期もあります。wegener

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底膜の破壊があります。 【スライド05】動脈には,動脈炎の所見があり ます。ここが糸球体です。糸球体の毛細血管係 蹄は,ボウマン嚢腔内でのcrescentの形成によ り圧排され,collapseを起こしています。この crescentは非常に顕著なTouton型の巨細胞の形 成を含んでいます。 【スライド06】こういう症例は,私もほとんど 見たことがないです。これだけ高頻度で,しか も糸球体の中,あるいは糸球体周囲,あるいは 間質内にTouton型の巨細胞が出てくる症例は 見たことがないです。 【スライド07】ここに動脈のfibrinoid壊死があ ります。動脈炎を合併しております。 【スライド08】ここに糸球体があります。PAS 染色で見ても,Touton型の巨細胞が高頻度に見 られます。ボウマン嚢基底膜の破壊が全面的に 見られます。それから周囲には尿細管炎や尿細 管基底膜の破壊があります。 【スライド09】これだけ大きな巨細胞が糸球体 の中に形成されておりますが,こんな所見は私 は見たことがありません。 【スライド10】それ以外の糸球体,要するに crescentを免れた糸球体はほぼ正常です。細動 脈の内膜に硝子様の肥厚があります。 【スライド11】尿細管間質ですけれども,大部 分の尿細管基底膜は破壊されて,tubulitisを認 め, 好 中 球,plasma cell, リ ン パ 球,macro-phagesを含む炎症細胞浸潤が見られます。一部, 好中球が基底膜の周りにまとわりついておりま す。こういう変化は,drug-inducedでも来ますし, ANCAでも来ます。 【スライド12】ここも,尿細管基底膜の破壊が かなり強くて,そこにgranulomaを形成してい る像だと思います。 【スライド13】これは小動脈ですが,小動脈の 周 囲 にgranulomaを 形 成 し て, そ の 周 囲 に Touton型の巨細胞が見られます。すなわち糸球 体の中だけではなく,間質,あるいは尿細管に 連続して巨細胞が見られます。 【スライド22】fibrinoid necrosisと肉芽腫性病変 を見ます。 【スライド23】C3のみが一部に陽性です。 【 ス ラ イ ド24】CD68陽 性。 で す か ら, 単 球 macrophages系が主体のgranulomaだろうと思い ます。 【スライド25】電顕はparamesangiumにdeposit があった。 【スライド26】尿細管は単球多核球のtubulitis がありますし,plasma cellもちょっと混ざって おります。peritubular capillaritisもあります。 【スライド27】granulomatous crescentic

glomeru-lonephritisと,necrotizing granulomatous arteritis で,ANCAが 陰 性 で す が,granulomatous cres-centicなかたちでくるのは,wegenerが多いの で,これはGPAでいいのかなと考えます。 【スライド28】これは,granulomaが糸球体に出 てくる場合,これはsarcoidosisで見られたもの です。感じが違う。こちらにもgranulomaが。 これはsarcoidosisで見られたものであります。 【スライド29】これは高安で見られた動脈炎で, あちこちにgranulomaがある。中膜,外膜,内 膜に多発して,動脈を壊してしまって,granu-lomatousな高安で見られた動脈炎であります。 以上です。 座長 ありがとうございました。では,城先生, お願いいたします。 城 【スライド01】この患者様はずっとANCA が陰性で,腎生検で,血管炎,尿細管炎,そし て,著明な肉芽腫を呈した症例です,Masson 染色の条件があまりよくなくて,Masson染色 は呈示しません。 【スライド02】PAM染色ですが糸球体も壊れて いますし,間質に非常に強い炎症細胞があって, 尿細管基底膜の破壊も広範です。 【スライド03】糸球体では毛細血管係蹄の破壊 があって,ボウマン嚢腔一面にcrescentが見ら れ,ボウマン嚢基底膜が破壊され周囲にgranu-lomatous lesionが広がっている所見です。 【スライド04】ここもそうです。ボウマン嚢基

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るかと思います。 【スライド20】これはB cellですけれども,間 質にぱらぱらある。しかし,少し時間がたつと, こういうふうにB cellが集簇してくるところも あります。 【スライド21】T cellがボウマン嚢周囲に出る のはANCA性crescentの特徴でありますが,B cellに関しては,特別な特徴像があるとは言え ません。しかし,時間がたつと,B cellはこう いうふうに集簇してくる特徴を持っておりま す。  macrophagesはどういうかたちで出てきても いいわけです。本症例では結構plasma cellが出 ている。免疫学的機序を介する間質性腎炎の場 合,drug-inducedもそうですし,ANCAもそう ですし,immunologically mediatedの間質性腎炎 の1つの指標は,plasma cellの浸潤であると思 います。 【スライド22】糸球体は9個で,全節性硬化が1 個あります。 【スライド23】これは,言うまでもなくボウマ ン嚢基底膜の破壊がある。免れたところの糸球 体の基底膜の肥厚はなく,膜性腎症の合併はあ りません。 【スライド24】尿細管間質では,ほぼ100%の 領域に著明な炎症細胞浸潤があって,間質は線 維性浮腫性に拡大しています。炎症細胞の種類 はリンパ球,形質細胞,好酸球,好中球であっ て,この好中球が基底膜に付着する傾向があっ て,尿細管炎を形成しています。基底膜の破壊 が広範に見られて,この症例の特徴として Touton型巨細胞を含む肉芽腫が顕著に見られま す。これだけ強い巨細胞形成を伴う間質性腎炎 は,drug-inducedの機序ではまれだと思います。 【スライド25】血管系ですけれども,fibrinoid 壊死があって,その周囲に肉芽腫性の動脈炎を 合併してきます。これはpauci-immune型腎炎の 特徴でよろしいかと思います。 【スライド26】電顕で見ても,dense depositは 顕著なものはありません。ここは,糸球体の変  少し太いところの動脈を見ますと,動脈炎が あって,その周囲に肉芽腫性の,肉芽腫は少し 瘢痕化しておりますけれども,granulomatous arteritis と呼べる所見だと思います。内膜もen-doarteritisを合併しています。中膜筋にfibrinoid 壊死があって,一部は動脈内膜炎,一部は動脈 周 囲 のgranulomatous arteritisに 進 展 し て い ま す。 【スライド14】ここでは動脈内膜の硝子様の肥 厚があり,管腔が狭窄しております。 【スライド15】ここにも動脈内膜炎があります。 【スライド16】ここもそうです。動脈のfibri-noid壊死があって,動脈周囲にgranulomaの形 成があり,尿細管炎を合併しています。炎症細 胞は,好中球が基底膜にまとわりついておりま す。好中球のほかに好酸球がかなりの高頻度で 見られます。リンパ球,plasma cell,多種多様 の炎症細胞が混じっています。 【スライド17】ここはplasma cellが結構多いと ころです。ANCA関連腎症でも出てきます。 drug-inducedの場合でも好酸球の浸潤があり, 最初はリンパ球から始まる急性間質性腎炎で す。急性過敏性間質性腎炎でも,好中球の phaseを介さないで,リンパ球からplasma cell へのphaseに移行することがあります。そこに 好酸球がかぶってきます。一方では,好中球が 基底膜にまとわりつくようなかたちでのdrug-induced hypersensitivity nephritisの症例もありま す。

【スライド18】現時点では,本症例はANCA陰 性で,検索した範囲での抗原が見つからないか たちでは,ANCA陰性間質性腎炎なのか,ある い はdrug-induced hypersensitivity nephritisな の か,決定的な証拠は出ないと思います。 【スライド19】CD3ですけれども,ここには crescentがありますが,T細胞が病変糸球体の 周 囲 に 出 る の が,ANCA関 連 腎 症 のcrescent formationのときの特徴であります。B cellは, 出るとすればT cell領域の周囲に出てきます。 ボウマン嚢周囲は必ずT cellの浸潤が主体であ

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電顕の撮影範囲では尿細管間質に強い変化が見 られます。糸球体の正常なところが撮影されて おりますので,この症例の代表的な情報ではな いと思います。 【スライド32】考察です。さっきの免疫染色で は非特異的なものだということでいいと思いま す。尿細管間質においてもdense depositが基底 膜にないということで,免疫複合体性腎炎によ る尿細管炎は否定できる。  最初は,CTRXのDLSTが陽性ということか ら,薬剤過敏症性間質性腎炎を疑いました。そ の根拠としては,好中球,好酸球,形質細胞, リンパ球の浸潤が著明であって,薬剤過敏性の 中に好中球主体の尿細管炎を伴う症例もありま すので,薬剤性で説明がつかないことはない。  肉芽腫性のhypersensitivity granulomaといわ れる肉芽腫はdrug-induced TINでも出るのです けれども,程度がこんなに強い症例は見たこと がないです。恐らく,この肉芽腫の形成の機序 は特別だと思います。細胞性半月体を形成する 薬剤過敏性TINの報告はあります。後で実験例 をお見せいたします。  しかし,薬剤過敏で説明がつかないのは,動 脈のfibrinoid壊死です。薬剤過敏からcrescent まで起こしてくる症例はあるのですけれども, 動脈の壊死まで起こしてくる症例は非常にまれ だと思います。  輸入細動脈にfibrinoid壊死がある。もう1つ は,抗GBM腎炎は陰性だったわけですけれど も,抗GBM腎炎は動脈の壊死を伴いません。 糸球体のcrescentは伴いますけれども,動脈壊 死 を 伴 い ま せ ん。 動 脈 壁 の 基 底 膜 が Ⅳ 型 collagenα6ですけれども,これに対する抗体 は抗GBM腎炎ではありません。ANCAの場合 は出てきますけれども,抗GBM抗体の場合は 動脈炎を合併しないということで,抗GBM抗 体腎炎を否定する根拠になると思います。  一方,ANCA陰性の血管炎と診断する場合は, 上記全てで説明がつきます。  そういうことで,肉芽腫が顕著であるという 化のないところを電顕で捉えております。固定 が非常に悪くて詳細な変化は取れませんけれど も,ANCA性の変化は出ておりません。ここに 多少のdense depositが見られますが,IgMが陽 性だということで,浸出性病変によるdense depositであると思います。免疫複合体性のもの とは言えないと思います。 【スライド27】尿細管では,尿細管壊死,tubu-litisの両方が見られます。 【スライド28】ここはリンパ球が基底膜の中に 入っております。tubulitisの所見です。ここでは, 尿細管壊死はあまり目立ちません。 【スライド29】これはplasmaですけれども,こ ういう変化は,著明な尿細管炎を伴う間質性腎 炎でみられることがあり,TBMにはdense de-positの沈着はありません。  この所見は,drug-inducedでもみられます。 lupusの場合の様にここにdense depositが出てく ることはありません。ANCAのときも,ほとん どTBMにはdense depositは出てまいりません。  にもかかわらず,基底膜の内外に炎症細胞浸 潤がある。drug-induced hypersensitivity nephritis のときもそうですし,ANCAのときにも,基底 膜の破壊を伴うtubulitisがみられます。どうし て起こるのか,まだ詳しいことは分かっていな いと思います。 【スライド30】免疫染色では,IgM,C3がme-sangium領域に,恐らく浸出性病変に顆粒状に 陽性。免疫複合体性腎炎は否定的です。 【スライド31】電顕所見としては,傍mesangi-umにdense depositがあるけれども,これは浸 出性病変と思われます。糸球体毛細血管管腔内 への炎症細胞浸潤は光顕的には見られました が,ないところが電顕で撮影されていると思い ます。好中球が1個ありましたが,非特異的で す。尿細管間質の撮影写真ですけれども,リン パ球,好中球の浸潤による尿細管炎が目立つ。 尿細管壊死も見られます。間質には,好中球, 形質細胞,リンパ球の浸潤が見られます。  以上の所見から,ANCA関連腎症としては,

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けれども,正常な切片に患者血清をかけて, TBMに親和性がないかどうかを,この症例は やってみる価値はあると思います。  今のようにモンキーの実験からいわれるよう に,薬剤過敏等々があって,GBMやTBMの破 壊があって,それらに非常に過敏な患者さんと 思われます。この症例も薬剤過敏があったわけ で,ANCAは出ておりませんけれども,何らか の宿主の条件が加わって,これだけ強い巨細胞 を伴う間質性腎炎が出た可能性があります。1n vivoで抗TBM抗体がないかどうかをやってみ る価値はあると思いました。以上です。 座長 どうもありがとうございました。臨床の 先生から,何かご質問はございませんでしょう か。ありがとうございます。  今回の肉芽腫性の血管炎の引き金になったも のは,感染であるのか,どのように考えたらよ ろしいでしょうか。 城 chronologicalにいうと,まず急性腎盂腎炎 があって,抗生剤をやって,その後,薬剤過敏 が出てきたということで,それが1つのきっか けになっていると思います。腎限局型のGPA という診断は,病理的にどこにも診断の置き場 所がないので,疾患概念からつけた診断なので, 機序を説明するものではありません。  だから,機序を説明するきっかけとしては, 薬剤過敏や急性腎盂腎炎が1つの引き金になっ たという考えは捨てきれないと思います。 座長 ありがとうございます。  この患者さんは,これだけひどい組織所見な のですけれども,クレアチニンが比較的低い感 じがしたのです。治療のタイミングが良かった のかもしれませんが,再生検の予定はあるので しょうか。 山﨑 高齢で腎生検も嫌がったのを無理やりと いうところもあったので,その予定は恐らくな いと思います。 座長 ANCAに関しては,MPOとPR3以外の ANCAを調べる方法がもしあれば,やっていた だきたいと思います。 点で,腎限局型のGPAと診断ができると思い ます。しかし,腎限局型のGPAの中でこれだ け強いTouton型の肉芽腫の出る症例はめった にないと思います。 【スライド33】まとめです。臨床症状はRPGN があって,CRPが高値であって,狭心症,急性 腎盂腎炎の既往にあって,そこでCTRXを使っ たわけです。β2-microglobulinが7万という非 常に高い値を示しています。これは,尿細管間 質性腎炎があれほど顕著に出ていれば説明がつ きます。   滲 出 性 紅 斑 は, 薬 疹 だ ろ う と 思 い ま す。 CTRXにDLSTが陽性で,薬疹が出て,それが ステロイドで消えておりますので,これは恐ら く薬剤過敏によるものでないかと思います。  MPOANCAが出ておりません。ANCA陰性 の腎血管炎ということになります。 【スライド34】重松先生が,NCドメインのⅣ 型コラーゲンをモンキーに能動免疫をした実験 があります。4gのウシ型Ⅳ型コラーゲンのNC ドメインをFreund’s adjuvantを用いて,モンキー に免疫します。これは論文になっておりますが, ご覧のように,本症例とそっくりな変化が出て まいります。ボウマン嚢基底膜に強いTouton 型の炎症があります。尿細管の基底膜も破壊さ れて,その周囲にmacrophages,あるいは巨細 胞の浸潤があります。この巨細胞の出現の様子 は,本症例の所見と非常によく似ております。 【スライド35】これは,ずいぶん昔に山口先生 と一緒にまとめた論文からの引用ですが,ミノ マイシンでDLSTが1000ありますけれども,こ の症例はcrescentが出現しています。確か血管 炎は出ていなかったと思います。薬剤過敏でも crescentまでは起こす症例は,どうもあるよう です。  この症例は,結局,抗GBM抗体は陰性だっ たのですけれども,抗TBM抗体が陽性の可能 性は否定できません。これは1980年前後に(バ フ ァ ロ ー 大 学 で のMcCluskey R.T.とOoiの 一 派)が盛んにやった仕事です。地味な仕事です

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山﨑 はい。c-ANCA,p-ANCAですね。 乳原 1つだけ質問させていただきます。肉芽 腫性の所見がある場合,絶対にsarcoidosisを否 定しなければいけないのですが,sarcoidosisの 場合には,腎機能の割には血清カルシウム値が 高いことと,血清ビタミンD値(1.25 OH2 D3) が高いということが知られていますが,それは いかがだったのでしょうか。激しいgranuloma がある場合は,1,25-ジヒドロキシビタミンD3 が高くなるという特徴を有するのですが。 山﨑 測っていません。 乳原 それが1つのポイントです。  もう1つは,急性腎盂腎炎と簡単に言ってし まいましたが,急性腎盂腎炎はかなりの激痛で す。CVA tendernessがあるのです。それはあっ たのですか。 山﨑 初めは循環器内科で入院になった症例で あり,詳細は分かりません。 乳原 片側性であるというのも特徴です。本当 にそれでいいかどうかです。急性腎盂腎炎は抗 生剤が効きます,そんな単純なもので良かった かどうかということです。 山﨑 急性腎盂腎炎があったかどうかは分かり ません。CRPが高く,肺炎がないので,UTIで しょうという判断で抗生剤が開始されたという 経過です。 乳原 循環器だとその程度ですか。 山﨑 はい。そうですね。 座長 どうもありがとうございました。では, 今回の症例はこれで終わらせていただきます。 貴重な症例をどうもありがとうございました。

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山口先生 _06 山口先生 _05 山口先生 _04 山口先生 _03 山口先生 _02

I‐2:ANCA陰性血管炎に尿細管間質炎と肉芽

腫像を呈した1例(横浜みなと赤十字腎内)

症例:88歳、女。2週間前食欲不振、背部痛、冠攣 縮性狭心症の疑いで入院。Cr 1.8 mg/dl, UP2+,  URBC1+, CRP 13.7 mg/dl。その後Cr 2.9 mg/dl, UP  2.7/g/gCr, NAG 12 U/L, β2MG 76500 μg/L。滲出性 紅斑でTIN疑いで生検。 臨床病理学的問題点: 1.尿細管間質炎と肉芽腫との関連は? 2.薬剤性間質性腎炎の合併か? 3.腎限局性GPAか? 山口先生 _01

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山口先生 _12 山口先生 _11 山口先生 _10 山口先生 _09 山口先生 _08 山口先生 _07

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山口先生 _18 山口先生 _17 山口先生 _16 山口先生 _15 山口先生 _14 山口先生 _13

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山口先生 _24 CD68 山口先生 _23 山口先生 _22 山口先生 _21 山口先生 _20 山口先生 _19

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城先生 _01 I-2 ANCA陰性血管炎に尿細管間質炎と 肉芽腫像を呈した一例 横浜市立みなと赤十字病院 腎臓内科・病理診療科、 日本医科大学 解析人体病理学 山崎 潤 先生、金久恵理子 先生、山口若葉 先生、熊谷二郎 先生、 長濱清隆 先生、藤沢 一 先生 東北大学大学院・医科学専攻・病理病態学講座 城 謙輔 第64回 神奈川腎炎研究会2015年9月17日(土)15:30~19:45 横浜シンポジア 山口先生 _29

Granulomatous arteritis; Takayasu arteritis 山口先生 _28 サルコイドーシス 64‐I‐2(横浜みなと日赤) 1. Granulomatous crescentic glomerulonephritis 2. Necrotizing granulomatous arteritis cortex/medulla= 9/1, global sclerosis/glomeruli= 0/17 光顕では、密な好酸球、好中球や形質細胞、リンパ球浸潤がびまん性に拡がり、fibrinoid necrosisを伴う中位動脈炎を認め、多核巨細胞出現と肉芽腫を形成し、一部では器質化してい ます。高度の尿細管炎やperitubular capillaritisがびまん性に見られます。リンパ濾胞構造を認 めます。 糸球体には9ヶに多核巨細胞を伴う肉芽腫性半月体が目立ち、ボウマン囊壁の断裂、消失を 認めます。その他では軽度のメサンギウム域拡大が見られ、ボウマン嚢壁の一部消失を伴う 周囲間質に好酸球、好中球や形質細胞、リンパ球浸潤を認めます。 尿細管系には硝子或いは血球円柱が散在し、上皮の扁平化と内腔の拡張を散見します。中 位動脈壁に内膜肥厚が軽度見られ、高度の細動脈硝子化を認めます。 蛍光抗体法では、IgG(‐), IgA(‐), IgM(±), C3(±), C4(‐), C1q(‐)です。 電顕では、糸球体にはGBMに内皮下拡大と内皮の腫大が軽度見られ、単球などが散見され ます。メサンギウム域には傍メサンギウム域と基質内に僅かな沈着が見られ、基質増加を認 めます。脚突起癒合を疎らに認めます。単核球による尿細管炎が見られ、リンパ球や形質細 胞浸潤を認めます。 以上、上記の診断と思われ、GPAが考えられます。 山口先生 _27 山口先生 _26 山口先生 _25

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城先生 _07 城先生 _06 城先生 _05 城先生 _04 城先生 _03 城先生 _02

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城先生 _13 城先生 _12 城先生 _11 城先生 _10 城先生 _09 城先生 _08

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城先生 _19 CD68 城先生 _18 CD20 城先生 _17 CD20 CD3 城先生 _16 城先生 _15 城先生 _14

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城先生 _25 城先生 _24 城先生 _23 城先生 _22 <光顕> 標本は2切片採取。 糸球体 1/9個 (11%)に全節性硬化を認めます。 残存糸球体において、メサンギウム細胞増多ならびに管内性細胞増多や分節性硬化、 癒着、虚脱はありません。細胞性半月体を2/8個(25%)を認め、ボウマン嚢基底膜 の破壊を伴っています。糸球体基底膜の肥厚はなく、PAM染色にて二重化ならびに spike・bubblingも見られません。糸球体の腫大はありません(200μm)。 尿細管・間質 尿細管の萎縮ならびに間質の線維性・浮腫性拡大を高度に認め(80%)、 同域に著明な炎症細胞浸潤を認めます(100%)。 炎症細胞浸潤の種類はリンパ球・形質細胞・好酸球・好中球です。 好中球は尿細管基底膜に付着する傾向があり著明な尿細管炎を合併しています。 基底膜の破壊も見られます。また領域的にチュウトン型巨細胞を含む肉芽腫の 形成も見られます。遠位尿細管に軽度の硝子円柱を合併しています。 血管系 小葉間動脈に中等度の内膜の線維性肥厚を認め動脈硬化性病変と 思われます。一方、輸入細動脈に軽度の内膜の硝子様肥厚を認めます。 またフィブリノイド壊死を認めその周囲に肉芽腫性動脈炎を伴っています。 城先生 _21 CD138 城先生 _20

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城先生 _31 標本番号 H15-1637 88歳 女性 臨床診断: 急速進行性糸球体腎炎症候群、CRP:高値、狭心症、急性腎盂腎炎、 尿β2MG:高値、浸出性紅斑 病因分類: MPO-ANCA陽性腎炎 病型分類: 薬剤過敏性間質性腎炎、腎限局型GPAの鑑別診断 IF診断: 免疫複合体性腎炎否定 電顕診断: 尿細管炎を伴う尿細管・間質性腎炎、ANCA関連腎炎の疑い、 免疫複合体性腎炎否定 皮質:髄質=10:0 糸球体数:9個、全節性硬化:1個、 メサンギウム細胞増殖:0個、管内性細胞増多:0個、 半月体形成:2個(細胞性半月体:2個、線維細胞性半月体:0個、線維性半月体:0個) 分節性硬化:0個、癒着:0個、虚脱: 0個、未熟糸球体:0個 尿細管の線維化(IFTA):80%、間質の炎症細胞浸潤:100% 小葉間動脈内膜の線維性肥厚:中等度、輸入細動脈内膜の硝子様肥厚:軽度、 壊死性病変:高度 城先生 _30 <考察> 免疫染色にてIgM・C3cが陽性ですが浸出性病変と思われ、免疫複合体性腎炎は 否定されます。pauci-immune型腎炎に矛盾しません。 電顕にて傍メサンギウム沈着物がありますが、浸出性病変と思われます。 尿細管・間質において光顕上、好中球が尿細管基底膜に付着していますが、 電顕的に尿細管基底膜上には免疫複合体性はありません。 以上の所見から、高度の急性間質性腎炎の原因についてはCTRXでDLSTが 陽性であった事から、薬剤過敏性間質性腎炎をまず疑います。 その根拠としては好中球・好酸球・形質細胞・リンパ球浸潤が著明であり、 好中球は尿細管基底膜に付着し、尿細管炎を呈しています。 また肉芽腫の形成は薬剤過敏性肉芽腫でも説明がつきます。 細胞性半月体形成も薬剤過敏性間質性腎炎に合併するという報告があります。 しかし、輸入細動脈のフィブリノイド壊死は薬剤過敏性間質性腎炎では稀です。 輸入細動脈のフィブリノイド壊死があると言うことは、抗GBM腎炎を否定する 根拠になります。一方、ANCA陰性の血管炎と診断する場合は上記の病変の 全てが説明されます。肉芽腫が顕著である点で腎限局型GPAと診断出来ます。 城先生 _29 <免疫染色> IgM・C3cがメサンギウム領域のおそらく浸出性病変に顆粒状に陽性です。 免疫複合体性腎炎は否定的です。 <電顕診断> 傍メサンギウム領域にdense depositがありますが免疫染色にてIgM・C3cが陽性で、 おそらく浸出性病変と思われます。免疫複合体性腎炎は否定的です。 特に毛細血管腔内への炎症細胞浸潤は目立ちません。好中球浸潤が1個認められます。 一方、尿細管・管腔が撮影されています。リンパ球・好中球による尿細管炎が目立ちます。 尿細管上皮の壊死を伴っています。間質には好中球・形質細胞・リンパ球浸潤が 見られます。以上の所見から、ANCA関連腎症は尿細管・間質が主体で、 糸球体での病変は電顕的に目立ちません。 城先生 _28 城先生 _27 城先生 _26

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城先生 _37

Am J Nephrol 10:222-230, 1990 Joh K et al. 城先生 _36 城先生 _35 城先生 _34 城先生 _33 尿細管基底膜関連の肉芽腫の可能性 重松秀一先生実験腎炎(抗NC domain ColIV腎炎) Monkeyの皮下に 能動免疫

抗原: 4mg bovine Type IV collagen 成分 (non collagenous(NC) domain 1(K35) + Freund Complete Ajuvant

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腎尿細管間質の肉芽腫 1.結核病巣、真菌病巣 2.サルコイドーシス 3。薬剤過敏性間質性腎炎 4.Wegener肉芽腫(GPA)、顕微鏡的多発血管炎 (ANCA関連腎炎) (ボウマン嚢基底膜周囲 periglomerular granulomatosis) 5.尿細管基底膜破壊による? 抗GBM(抗TBM)腎炎? 城先生 _39 城先生 _38

図 12図 11図 10Cr(mg/dl)(mg/dl)CTRXCRP入院後日数(日後)入院後経過腎生検薬疹01234567802468101214161812368101315図 9ガリウムシンチグラフィ図 8胸部レントゲン、胸腹部CT図 7
図 23 疑問点 • 尿細管間質炎は,血管炎のみで説明可能 か.薬剤性間質性腎炎の合併と考えるべきか.• 肉芽腫は血管炎に伴うものか.• 腎限局型GPAの診断は妥当か.図 22まとめ• 半月体形成と小葉間動脈の血管炎所見から,ANCA陰性血管炎と考えられる. • 尿細管間質炎が高度であるが,形質細胞と好酸球を認め,臨床経過からからもセフェム系抗生剤による薬剤性間質性腎炎の合併を考えたい. • 肉芽腫は血管(糸球体)周囲性であり,血管炎による肉芽腫を考える.• 上下気道病変を認めないが,肉芽腫の存在からANC

参照

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