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胃 がん 各種がん

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Academic year: 2021

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(1)

各種がん 101

がん

受診 から 診断、治療、経過観察 への

(2)

 がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。

大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。

ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。

あなたらしく過ごすためにお役立てください。

「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないで ください。なるべく早く受診しましょう。

受診のきっかけや、気になっていること、症状など、

何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと 整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日 が決まります。

治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを 確認するために、しばらくの間、通院します。検査を 行うこともあります。

治療が始まります。気が付いたことは担当医や看護 師、薬剤師に話してください。困ったことやつらいこ と、小さなことでも構いません。よい解決方法が見つ かるかもしれません。

がんや体の状態に合わせて、担当医が治療方針を説明 します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方 と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を 見つけましょう。

担当医から検査結果や診断について説明があります。

検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法 を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り 返し質問しましょう。検査が続くことや結果が出るま で時間がかかることもあります。

がんの疑い

受 診

検査・診断

治療法の選択

治 療

経過観察

(3)

 目 次

がんの診療の流れ

1. がんと言われたあなたの心に起こること

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1

2. 基礎知識

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3

3. 検査

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7

4. 治療

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11

1 病期と治療の選択

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11

2 内視鏡治療(内視鏡的切除)

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17

3 手術(外科治療)

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18

4 薬物療法(化学療法)

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20

5 緩和ケア/支持療法

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22

6 転移�再発

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23

5. 療養

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24

診断や治療の方針に納得できましたか?

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26

セカンドオピニオンとは?

�����������������������������������������

26

メモ/受診の前後のチェックリスト

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27

(4)

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。

ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で 自分が」などと考えるのは自然な感情です。しばらくは、不安 や落ち込みの強い状態が続くかもしれません。眠れなかった り、食欲がなかったり、集中力が低下する人もいます。そんなと きには、無理にがんばったり、平静を装ったりする必要はあり ません。

時間がたつにつれて、 「つらいけれども何とか治療を受けて いこう」 「がんになったのは仕方ない、これからするべきことを 考えてみよう」など、見通しを立てて前向きな気持ちになって いきます。そのような気持ちになれたらまずは次の 2 つを心が けてみてはいかがでしょうか。

あなたに心がけてほしいこと

■ 情報を集めましょう  

 まず、自分の病気についてよく知ることです。病気によっては まだわかっていないこともありますが、担当医は最大の情報源 です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席し てもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問して ください。

 病気のことだけでなく、お金、食事といった生活や療養に関 することは、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士など が専門的な経験や視点であなたの支えになってくれます。

1 . がんと言われた

あなたの心に起こること

(5)

また、インターネットなどで集めた情報が正しいかどうかを、

担当医に確認することも大切です。他の病院でセカンドオピニ オンを受けることも可能です。

「知識は力なり」。正しい知識は考えをまとめるときに役に 立ちます。

※参考 P26「セカンドオピニオンとは?」

■ 病気に対する心構えを決めましょう 

がんに対する心構えは、積極的に治療に向き合う人、治るとい う固い信念をもって臨む人、なるようにしかならないと受け止 める人など人によりいろいろです。どれがよいということはな く、その人なりの心構えでよいのです。そのためにも、自分の病 気のことを正しく把握することが大切です。病状や治療方針、今 後の見通しなどについて担当医から十分に説明を受け、納得し た上で、あなたなりの向き合い方を探していきましょう。

あなたを支える担当医や家族に自分の気持ちを伝え、率直に 話し合うことが、信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合う ことにつながります。

情報をどう集めたらいいか、病気に対してどう心構えを決め たらいいのかわからない、そんなときには、巻末にある「がん相 談支援センター」を利用するのも1つの方法です。困ったときに はぜひご活用ください。

1

がんと言われたあなたの心に起こること

(6)

胃は袋状の器官で、みぞおちの裏あたりにあります。胃の入 り口を噴

ふんもん

門部

といい、中心の部分を胃体部といいます。胃の出 口は幽

ゆうもん

門部

と呼ばれ、十二指腸へつながっています(図1)。胃の 近くにある血管の周りにはリンパ球が多く集まるリンパ節があ ります。

2 . 基礎知識

胃について 1

粘膜 粘膜下層

固有筋層 漿膜下層 漿膜

幽門 噴門

肝臓

食道

小腸 大腸 十二指腸

図1.胃の構造

(7)

2

基礎知識

胃の壁は、内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿

しょう

まく

下層、漿膜 と呼ばれる層になっています。

胃の主な働きは、食べ物をある時間その中にとどめ、それを消 化することです。胃は、入ってきた食べ物のかたまりをくだき、

胃液や消化酵素を含む消化液と混ぜていきます。どろどろの粥

かゆ

状になった食物は、幽門部を通り少しずつ十二指腸へ送り出さ れていきます。

胃の入り口の噴門は、胃の中の食べ物が食道に逆流するのを 防ぎ、胃の出口の幽門は、消化された食べ物を十二指腸へ送り出 す量を調節します。

胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因 でがん細胞となり、無秩序にふえていくことにより発生します。

がんが大きくなるにしたがい、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜 へと外側に深く進んでいきます。がんがより深く進むと、漿膜 の外側まで達して、近くにある大腸や膵

すいぞう

臓にも広がっていきま す。このようにがんが周囲に広がっていくことを浸

しん

じゅん

といいま す。

胃がんでは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って、離れ た臓器でとどまってふえる転移が起こることがあります。ま た、漿膜の外側を越えて、おなかの中にがん細胞が散らばる腹

ふくまく

膜 播

はくしゅ

種が起こることがあります。

胃がんとは

2

(8)

胃がんの中には、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていく タイプがあり、これをスキルス胃がんといいます。早期のスキ ルス胃がんは内視鏡検査で見つけることが難しいことから、症 状があらわれて見つかったときには進行していることが多く、

治りにくいがんです。

胃がんは、早い段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行 しても症状がない場合があります。

代表的な症状は、胃(みぞおち)の痛み・不快感・違和感、胸 やけ、吐き気、食欲不振などです。また、胃がんから出血するこ とによって起こる貧血や黒い便が発見のきっかけになる場合も あります。しかし、これらは胃がんだけにみられる症状ではな く、胃炎や胃

かいよう

瘍の場合でも起こります。胃炎や胃潰瘍などの 治療で内視鏡検査を行ったときに偶然に胃がんが見つかること もあります。

また、食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合 は、進行胃がんの可能性もあります。これらのような症状があ れば、検診を待たずに医療機関を受診しましょう。

がん細胞の組織型(細胞を顕微鏡で観察した外見)分類では、

胃がんのほとんどを腺がんが占めています。また、腺がんは、細 胞の特徴から、大きく分化型と未分化型に分けられます。一般 的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型は進行が速い傾向があ るといわれています。

3 症状

組織型分類

4

(9)

胃がんは、日本全国で一年間に約135,000人が診断されま す。胃がんと診断される人は男性に多い傾向にあり、50歳ごろ から増加して、80歳代でピークを迎えます。

男性で最も多く、女性では乳がん、大腸がんに次いで3番目に 多いがんです。

日本の胃がんの罹患率は、人口の年齢構成の移り変わりの影 響を調整した場合、男性では2000年代前半まで減少傾向、その 後は横ばいが続いています。女性では、1980年代から一貫して 減少傾向にあります。

胃がんの発生要因としては、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ 菌)の感染、喫煙があります。その他には、食塩・高塩分食品の 摂取が、発生する危険性を高めることが報告されています。

患者数(がん統計)

5

6 発生要因

2

基礎知識

(10)

3 . 検査

胃がんが疑われると、まず、「がんであるかを確定するための 検査」を行い、次に、治療の方針を決めるために、「がんの進行度

(進み具合)を診断する検査」を行います。

内視鏡検査やX線検査などを行い、病変の有無や場所を調べ ます。内視鏡検査で胃の内部を見て、がんが疑われるところがあ ると、その部分をつまんで取り(生

せいけん

検)、病理検査で胃がんかどう かを確定します。

治療の方針を決めるためには、がんの深さや膵臓・肝臓・腸 などの胃に隣り合った臓器への広がり、離れた臓器やリンパ節 などへの転移を調べて胃がんの進行度を診断します。そのた め、さらに、CT検査、MRI検査、PET検査などを行います。また、

腹膜播種の可能性が強く疑われる場合には審査腹腔鏡が行われ ることがあります。

胃がんの検査 1

1 )がんを確定するための検査

2 )がんの進行度を診断する検査

(11)

3

検査

検査の種類 2

内視鏡を用いて胃の内部を直接見て、がんが疑われる部分(病 変)の場所や、その広がり(範囲)と深さを調べる検査です(図 2)。病変をつまんで取り、病理検査をする場合もあります。

バリウムをのんで、胃の形や粘膜などの状態や変化をX線写真 で確認する検査です。

胃の内視鏡検査や腹腔鏡検査で採取した組織に「がん細胞が あるか」「どのような種類のがん細胞か」などについて、顕微鏡 で調べる検査です。

1 )内視鏡検査

図2.内視鏡検査の様子

2 )X線検査(バリウム検査)

3 )生検�病理検査

(12)

CT検査はX線、MRI検査は磁気を使って体の内部の断面を撮 影する検査です(図3)。離れた別の臓器やリンパ節への転移、肝 臓など胃の周りの臓器への浸潤などを調べます。

放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞に取 り込まれるブドウ糖の分布を撮影することで、がんの広がりを 調べる検査です。リンパ節やほかの臓器への転移の有無、がんの 再発の有無、治療の効果を調べるために使われることがありま す。

お尻からバリウムと空気を注入し、X線写真を撮ります。胃の すぐ近くを通っている大腸にがんが広がっていないか、腹膜播 種がないかなどを調べます。

4 )CT検査�MRI検査

図3.CT検査の様子

5 )PET検査

6 )注腸検査

(13)

3

検査

腫瘍マーカーとは、がんの種類により特徴的に産生される物 質で、血液検査などにより測定します。この検査だけでがんの有 無を確定できるものではなく、がんがあっても腫瘍マーカーの 値が上昇を示さないこともありますし、逆にがんがなくても上 昇を示すこともあります。

胃がんでは腫瘍マーカーとしてCEAやCA19-9などが使わ れます。主に、手術後の再発や薬物療法の効果判定の参考に使わ れます。

おなかに小さな穴を開け、腹腔鏡と呼ばれる細い内視鏡によ りおなかの中を直接観察する検査です。一般的に全身麻酔をし て検査は行われます。腹膜播種の有無は画像検査のみではわか りにくいため、腹膜播種の正確な診断が必要な場合に行うこと があります。この検査では、がんが疑われる部位を生検したり、

腹水を採取したりすることによって、がんの有無を病理検査に より確認します。

7 )腫瘍マーカー検査

8 )審査腹腔鏡

(14)

 治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討しま す。

 がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類し、ロー マ数字を使って表記することが一般的です。胃がんでは、早期か ら進行につれてⅠ期~Ⅳ期に分類します。

 胃がんの病期は、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)

の組み合わせで決めます。

   Tカテゴリー:がんの深さの程度(深達度[図4])

   Nカテゴリー:リンパ節への転移の有無

   Mカテゴリー:遠くの臓器への転移(遠隔転移)の有無

4 .治療

病期と治療の選択 1

1 )病期(ステージ)

(15)

4

治療

日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成 粘膜層(M)

粘膜下層(SM)

固有筋層(MP)

漿膜下層(SS)

がんが粘膜、粘膜下層にとどまっている がんが粘膜層にとどまっている がんが粘膜下層にとどまっている

がんが筋層に入り込んでいる、あるいは浸潤している がんが筋層を越えて漿膜下組織に浸潤している がんが漿膜を越えて胃の表面に出ている

がんが胃の表面に出た上に、他の臓器にもがんが広がっている

T1b T2 T3 T4a T4b

他臓器 漿膜(SE)

肝 臓

幽門

噴門 T1a

T1   T1a   T1b T2 T3 T4a T4b

早期がん 進行がん

図4.胃がんの深達度

 がんの深さが粘膜および粘膜下層にとどまるものを「早期胃

がん」、粘膜下層より深いものを「進行胃がん」といいます。

(16)

 胃がんの治療方針を決めるためのがんの病期は、次の2つの分 類があります。

(1)臨床分類

 画像診断や生検、審査腹腔鏡などの結果に基づいて、がんの広 がりを推定し、治療方針を決めるときに使う分類です(表1)。

遠隔転移 なし

(M0)

あり

(M1)

リンパ節転移 深達度

なし

(N0) あり

(N+) 有無に 関わらず

T1a / T1b、T2 I IIA

IVB

T3、T4a IIB III

T4b IVA

表1.胃がんの臨床分類

日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成

(17)

4

治療

(2)病理分類

 手術で切除した病変を病理診断し、実際のがんの広がりを評 価した分類です。病理分類は臨床分類と異なる場合があります。

病理分類は病気の見通しを立てたり、術後補助化学療法が必要 かどうかを判断したりするときなどに使われます(表2)。

表2.胃がんの病理分類

遠隔転移 なし

(M0) あり

(M1)

深達度

(N0)なし 1~ 2個

(N1) 3 ~ 6個

(N2) 7 ~ 15個

(N3a) 16個以上

(N3b) 有無に

関わらず

T1a、T1b IA IB IIA IIB IIIB

IV

T2 IB IIA IIB IIIA IIIB

T3 IIA IIB IIIA IIIB IIIC

T4a IIB IIIA IIIA IIIB IIIC

T4b IIIA IIIB IIIB IIIC IIIC

日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第 15 版(2017 年 10 月)」(金原出版)より作成

リンパ節転移 の個数

(18)

 胃がんの治療法には、内視鏡治療、手術、薬物療法などがあり ます。

 治療法は、標準治療に基づいて、患者さんの体の状態や年齢、

希望なども含めて検討し、担当医と共に決めていきます。

 図5は、胃がんに対する治療方法を示したものです。担当医と 治療方針について話し合うときの参考にしてください。それぞ れの治療方法は、P17以降をご覧ください。

2 )治療の選択

(19)

4

治療

図5.胃がんの治療の選択

内視鏡治療

経過観察

根治度[※2]

A、B根治度[※1] 胃切除 リンパ節郭清

(D1、D1+)[※3]

術前補助化学療法 +胃切除・合併切除

を検討

放射線治療薬物療法 緩和手術対症療法

特定の転移の 状況により、

手術が検討される 場合がある

リンパ節郭清胃切除

(D2)[※3]

※1 根治度A、B :がんが確実に取りきれリンパ節転移の可能性が極めて低い場合

※2 根治度C:がんが取りきれなかった、あるいは取りきれているがリンパ節転移の可能性がある場合

※3 D1、D1+、D2:リンパ節郭清の範囲を示します 粘膜下層まで

(T1b)

粘膜下層より深い

(T2-4)

(N0)なし 粘膜層まで

(T1a)

(N0)なし

対象 対象外

粘膜下層まで

(T1)

(N+)あり あり 高度なリンパ節転移

なし

(M0)なし あり

(M1)

病理分類

手術後

経過観察 薬物療法

術後補助化学療法 対症療法

ステージ I ステージ II、III ステージ Ⅳ T1およびT3・N0を除く

日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン医師用 2018年1月改訂(第5版)」(金原出 版)より作成

(20)

 胃内視鏡を使って胃の内側からがんを切除する(切り取る)方 法です。がんが粘膜層にとどまっており、原則リンパ節転移の可 能性がごく低い早期のがんで、一度に切除できると考えられる 場合に行われることがあります。

 内視鏡治療でがんが確実に取りきれたかどうかは、病理診断 で確認します。リンパ節への転移の可能性も考えながら、次の治 療について決めていきます。がんが確実に取りきれてリンパ節 転移の可能性が極めて低い場合(根治度A、B)には、経過を観察 します。がんが内視鏡治療では取りきれなかった、あるいは取り きれているが、深さが粘膜下層まで達しているなどの理由でリ ンパ節転移の可能性がある場合(根治度C)は、後日、追加で手術 が必要となります。

 切除の方法には、高周波のナイフで切り取る内視鏡的粘膜下 層剥離術(ESD)や輪状のワイヤーをかけてがんを切り取る内視 鏡的粘膜切除術(EMR)があります。病変の大きさや部位、悪性 度、潰瘍などがあるかにより治療方法を選びます。近年は、治療 の適応の拡大や技術的な進歩により、内視鏡的粘膜下層剥離術

(ESD)が普及しています。

内視鏡治療(内視鏡的切除)

2

1 )内視鏡治療の方法

(21)

4

治療

 遠隔転移がない胃がんで、内視鏡治療による切除が難しい場 合には、手術による治療が推奨されています。手術では、がんと 胃の一部またはすべてを取り除きます。同時に胃の周囲のリン パ節を取り除くリンパ節郭

かくせい

清や、食物の通り道をつくり直す再 建手術(消化管再建)も行います。おなかを20cmほど切開する 開 腹 手 術 と、小 さ い 穴 を 開 け て 専 用 の 器 具 で 手 術 を 行 う 腹

ふくくうきょうか

腔鏡下手術があります。腹腔鏡下手術が長期的にみて有効か についてはまだ十分わかっていないので、この手術を検討する ときは、担当医とよくご相談してください。

(1)胃切除

 切除する胃の範囲は、がんのある部位と病期(ステージ)の両 方から決めます。胃の切除範囲によっていくつかの方法があり、

代表的なものは、胃全摘術、幽門側胃切除術、幽門保存胃切除術、

噴門側胃切除術です(図6)。

手術(外科治療)

3

1 )手術の方法

幽門 噴門

(がん)病変

胃全摘術 幽門側胃切除術 幽門保存胃切除術 噴門側胃切除術

(がん)病変

幽門 噴門

(がん)病変

幽門 噴門

幽門 噴門

(がん)病変

図6.胃切除の方法

(22)

(2)リンパ節郭清

 胃切除の際に、胃とともに胃の周囲にあるリンパ節を切除し ます。胃のすぐそばのリンパ節と、胃から少し離れたリンパ節を 合わせて切除する「D2リンパ節郭清」が標準的に行われます。

早期がんでは郭清するリンパ節の範囲を狭くした手術を行いま す(D1またはD1+郭清)。

(3)消化管再建

 消化管再建とは、胃の切除手術の際に、胃や腸などの消化管を 縫い合わせてつなぎ、新しく食べ物の通り道をつくり直すこと です。再建の方法は、いくつかの種類があり、胃の切除範囲など によって決めていきます。

(4)周辺臓器の合併切除

 胃の周囲には、肝臓、横隔膜、膵臓、胆のう、横行結腸などの臓器 があります。これらの臓器にがんが広がっている場合、胃の切除 と同時に、がんが浸潤している臓器の一部を切除することがあ ります。これを合併切除といいます。手術の範囲は広くなりま すが、がんを完全に切除することを目指して行います。

 胃がんの手術に伴う主な合併症として、縫

ほうごうふぜん

合不全、膵

すいえきろう

液漏、腹 腔内腫瘍、肺

はいそくせん

塞栓などがあります。気になることがあれば、担当 の医師や看護師にご相談ください。

2 )手術に伴う合併症とその対策

(23)

4

治療

 がんや全身の状態により、さまざまな薬を単独または組み合 わせて使います。

 胃がんの薬物療法に使う薬には、細胞障害性抗がん薬、分子標 的薬そして免疫チェックポイント阻害薬があります。

 胃がんの薬物療法には、大きく分けて「手術によりがんを取り きることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法」と再発 の予防を目的とする「術後補助化学療法」があります。

(1)手術によりがんを取りきることが難しい   進行・再発胃がんに対する化学療法

 遠隔転移がある場合など、手術によりがんを取りきることが 難しい場合や、がんが再発した場合に行います。薬だけでがんを 完全に治すことは困難ですが、がんの進行を抑えることにより、

生存期間が延長したり、症状を和らげたりすることがわかって います。患者さんのがんの状況や臓器の機能、化学療法に伴う想 定される副作用、点滴の必要性、入院の必要性や通院頻度などに ついて担当医と患者さんで話し合って、どのような薬を使うか を決めていきます。

薬物療法(化学療法)

4

1 )胃がんの薬物療法で使われる薬

2 )胃がんの薬物療法の種類

(24)

(2)術後補助化学療法

 手術でがんを切除できた場合でも、目に見えないようなごく 小さなながんが残っていて、のちに再発することがあります。こ うした小さながんによる再発を予防する目的で行われる化学療 法を術後補助化学療法といいます。手術後の患者さんの全身状 態やがんの進行度を考慮しながら、TS-1のみあるいはほかの薬 とともに使う方法を検討します。

● 副作用について

細胞障害性抗がん薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも障害を 与えます。このために、治療による副作用が出てくることがありま す。副作用は、血液細胞の数、肝機能や腎機能など検査でわかるも のと、口内炎、吐き気、脱毛、下痢など自分でわかるものがあります。

副作用の有無や程度は人によりさまざまです。最近は副作用を予 防する薬も開発され、特に吐き気や嘔吐に対しては以前と比べて多 くの人に予防ができるようになってきました。

副作用の症状や対処について、担当の医師や薬剤師・看護師よりよ く説明を受けましょう。

(25)

4

治療

 緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)

を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対す る症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩 和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断された ときから必要に応じて行われるものです。患者さんの希望に応 じて幅広い対応をします。

 なお、支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に 伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予 防、治療およびケアのことを指します。

 本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ 伝えましょう。

緩和ケア/支持療法

5

(26)

4 治療

 転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別 の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。

 再発とは、初回の手術(内視鏡あるいは開腹手術)のときに目 で見える範囲の胃がんをすべて取り除いたあとや、術後補助化 学療法を行ったあとに、治療を行った場所または離れた別の臓 器やリンパ節に再び胃がんができることをいいます。

 再発に対する治療は、再発した部位、その時の全身状態や前回 行った治療法とその時の効果などにより決められます。薬物療 法による治療が一般的です。

転移�再発

6

(27)

症状や、治療の状況により、日常生活の注意点は異なります。

症状が重いときの対処について担当医と相談しておきましょう。

完治を目標とした治療が終了したあとは、全身の状態や後遺 症を確認し、再発を早期に見つけるために、定期的な経過観察 を行います。受診と検査の間隔は、がんの状況や治療の内容、体 調の回復や後遺症の程度などによって異なります。

手術(外科治療)のあとには、回復の度合いや再発の有無を確 認するために、定期的に通院して検査を受けます。通院の頻度 は個別の状況により異なりますが、少なくとも手術後 5 年間は

5 . 療養

1 日常生活を送る上で

2 経過観察

5

療養

● 手術後の食生活

「少量ずつ」「何回かに分けて」「よくかんで」「ゆっくり」食べ ることを基本として、新しい胃腸の状態に応じた食べ方に少しず つ慣れていくことが大切です。また、水分をとるときは、固形物 と別の時間にすることで、固形物を腸で吸収する時間をゆっくり にすることにつながります(空ける時間の目安:30 ~ 60 分)。

患者さんにより手術後の食事状況や好みは異なるため、栄養士な どの医療者と自分に合った食事の方法を相談していきましょう。

(28)

5 療養

内視鏡治療後の経過観察の方法は、病理診断の結果により異 なります。年に 1 ~ 2 回の内視鏡検査による経過観察を基本と して、CT 検査などの別の画像検査をする場合もあります。

薬物療法を継続しない場合には、はじめは 1 週間ごと、病状 が安定してきたら 2 ~ 3 週間ごとに定期的に受診します。治療 効果については、治療によりがんを取りきることが難しい進 行・再発胃がんに対する化学療法の場合には 2 ~ 3 カ月に一 度、術後補助化学療法の場合には、半年ごとに CT 検査などでが んの状態を確認します。

規則正しい生活を送ることで、体調の維持や回復を図ること

ができます。禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、適度

な運動など、日常的に心がけることが大切です。

(29)

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。

一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという 患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、

患者さん自身が満足できる方法が一番です。

 まずは、病状を詳しく把握しましょう。 わからないことは、担当医 に何でも質問してみましょう。治療法は、病状によって異なります。

医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、 自分に合った治療 法であることを確認してください。

 診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。

担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。これを「セ カンドオピニオンを聞く」といいます。ここでは、①診断の確 認、②治療方針の確認、③その他の治療方法の確認とその根拠 を聞くことができます。聞いてみたいと思ったら、 「セカンドオピ ニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします」と担当 医に伝えましょう。

担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませ んが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なこ とと理解しています。納得した治療法を選ぶために、気兼ねなく 相談してみましょう。

診断や治療の方針に納得できましたか?

セカンドオピニオンとは?

診断や治療の方針に納得できましたか?/セカンドオピニオンとは?

(30)

受診の前後のチェックリスト

□ 後で読み返せるように、医師に説明の内容を紙に書いてもらったり、

自分でメモをとったりするようにしましょう。

□ 説明はよくわかりますか。わからないときは正直にわからないと伝え ましょう。

□ 自分に当てはまる治療の選択肢と、それぞれのよい点、悪い点につい て、聞いてみましょう。

□ 勧められた治療法が、どのようによいのか理解できましたか。

□ 自分はどう思うのか、どうしたいのかを伝えましょう。

□ 治療についての具体的な予定を聞いておきましょう。

□ 症状によって、相談や受診を急がなければならない場合があるかどう か確認しておきましょう。

□ いつでも連絡や相談ができる電話番号を聞いて、わかるようにしてお きましょう。

□ 説明を受けるときには家族や友人が一緒の方が、理解できて安心だと 思うようであれば、早めに頼んでおきましょう。

□ 診断や治療などについて、担当医以外の医師に意見を聞いてみたい場 合は、セカンドオピニオンを聞きたいと担当医に伝えましょう。

メモ/受診の前後のチェックリスト

参考文献:

厚生労働省.がん登録 全国がん罹患数 2016年速報,2019年 日本臨床腫瘍学会編.新臨床腫瘍学 改訂第5版.2018年,南江堂 日本胃癌学会編.胃癌取扱い規約 第15版,2017年10月,金原出版

日本胃癌学会編.胃癌治療ガイドライン医師用 2018年1月改訂 第5版,金原出版

メモ

   (    年   月   日)

がんの種類 [ 腺がん(分化型 ・未分化型) ・       ]

がんの深達度 [ T1a ・ T1b ・ T2 ・ T3 ・ T4a ・ T4b]

病期(ステージ) [ ⅠA・ⅠB・ⅡA・ⅡB・ⅢA・ⅢB・ⅢC・Ⅳ ]

リンパ節への転移 [ あり ・ なし ]

別の臓器への転移 [ あり ・ なし ]

(31)

がんの冊子

各種がんシリーズ

がんと療養シリーズ 緩和ケア 他 がんと仕事のQ&A

がんの書籍

(がんの書籍は書店などで購入できます)

がんになったら手にとるガイド 普及新版 別冊 『わたしの療養手帳』

もしも、がんが再発したら

国立がん研究センターがん対策情報センター作成の本

上記の冊子や書籍は、全国のがん診療連携拠点病院などの

「がん相談支援センター」で閲覧・入手することができます。

ウェブサイト「がん情報サービス」で、冊子ファイル(PDF)を 閲覧したり、ダウンロードして印刷したりすることができます。

がん情報サービス 

https://ganjoho.jp

上記の冊子・書籍の閲覧方法や入手先がわからないときは、

「がん情報サービス」または「がん情報サービスサポートセンター」

でご確認ください。

● インターネットで

● 病 院 で

0570-02-3410

03-6706-7797

受付時間:平日 10 時 ~ 15 時

(土日祝日、年末年始を除く)

*相談は無料ですが、通話料金はご利用される方のご負担となります。

ナビダイヤル

2007 年 4 月 第 1 版第 1 刷 発行 2019 年 4 月 第 4 版第 1 刷 発行 2021 年 6 月 第 4 版第 2 刷 発行 がんの冊子 各種がんシリーズ 胃がん

編集:がん情報サービス がん情報編集委員会

発行:国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター

(32)

各種がん

胃がん

101

国立がん研究センター がん対策情報センター

「がん情報サービス」 https://ganjoho.jp

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       について

 がん相談支援センターは、全国の国指定のがん診療連携拠点病院など に設置されている「がんの相談窓口」です。患者さんやご家族だけでなく、 どなたでも無料で面談または電話によりご利用いただけます。

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 わからないことや困ったことがあればお気軽にご相談ください。

参照

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