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フラクタル上のラプラシアン・熱方程式入門

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Academic year: 2021

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(1)

梶野 直孝(神戸大学大学院理学研究科)

数学特別講義

I

(奈良女子大学理学部 

2018

年度集中講義)

2018

11

1

(2)

本稿は奈良女子大学理学部における

2018

年度集中講義「数学特別講義

I」の講義

内容の一部をまとめたものである.

本講義では

Sierpi´nski gasket

上の標準

Dirichlet

形式(及び対応する

Laplacian)

の構成を取り扱う.本稿の内容は主に木上淳氏による

monograph [28, Chapters 2]

の記述に従うが,必要に応じて同氏による最近の論文

[30, 31]

の結果も取り入れ て筆者なりに整理したつもりである.原則として証明を省略することはせず,数 学的に完全に理解することを目標とする.ただし講義回数に限りがあるため,内

容は

Dirichlet

形式の構成を理解する為に最低限必要な範囲に留めており,触れ

ることのできていない重要な事柄も多い.本講義で割愛した事項については

[28,

Chapters 1–3]

及び本文中で示した文献を参照されたい.

京都大学大学院情報学研究科の木上淳氏は筆者がまだ学部生の頃から現在に 至るまで大変丁寧にご指導下さり,未熟な学生であった筆者をフラクタル上の解 析学の豊かな世界に導いて下さった.数々の学恩に心より感謝申し上げる.

またこの度は奈良女子大学理学部において筆者の専門について既知の事実を 整理し講義する貴重な機会をいただいた.講師としてお招きいただいた篠田正人 氏,嶽村智子氏はじめ奈良女子大学理学部の皆様に篤くお礼申し上げる.

2018

10

月,神戸にて 梶野 直孝

ii

(3)

目次

ii

本講義を通して使われる記号

iv

2

章 抵抗形式と有効抵抗距離

1

2.1

有限集合上の抵抗形式と有効抵抗距離

. . . . 3

2.2

有限集合上の

Laplacian

の適合列とその極限

. . . . 13

2.3

一般の抵抗形式と有効抵抗距離

. . . . 16

2

章参考文献

. . . . 33

3

Sierpi´nski gasket

上の

Laplacian

の構成

34 3.1

有限部分集合上の

Laplacian

の適合列の構成

. . . . 34

3.2 Euclid

距離と有効抵抗距離の同値性

. . . . 35

参考文献

38

iii

(4)

本講義を通して使われる記号

本論に入る前に,本講義を通して使われる幾つかの記号をここで導入しておく.

(1)

等式

A WD B

は「A

B

で定義する」の意味に用いる.

(2) N , Z , Q , R , C

は通常通り自然数全体,整数全体,有理数全体,実数全体,複 素数全体の集合をそれぞれ表す.本稿では

N

0

を含まないと約束する:

N D ¹ 1; 2; 3; : : : º :

(3)

集合

A

に属する元の総数を

#A

で表す.#A

2 N [ ¹ 0; 1º

である.

(4)

集合

X; Y

,写像

f W X ! Y

A " X

に対し,写像

f j A W A ! Y

f j A .x/ WD f .x/, x 2 A

により定める.この

f j A

f

A

への制限という.

(5)

空集合

;

の上限,最大値,下限,最小値は

sup ; WD max ; WD 0, inf ; WD min ; WD 1

と約束する.a; b

2 Œ #1 ; 1 !

に対し

a _ b WD max ¹ a; b º , a ^ b WD min ¹ a; b º , a C WD a _ 0, a

!

WD # .a ^ 0/

と定め,Œ

#1 ; 1 !-値関数に対しても同様の記号を

用いるものとする.本稿では関数と言えば

Œ #1 ; 1 !-値関数のみを考えるものと

する.

(6) d 2 N

とする.

R d

には通常の

Euclid

ノルム

j $ j

を入れる.d

% d

単位行列を

I d

で表し,実行列

M

に対しその転置行列を

M

"で表す.

(7) X

を位相空間とする.A

" X

に対しその

X

における内部,閉包,境界をそ れぞれ

int X A, A X , @ X A

で表す.X

Borel " -加法族(X

の開集合全体を含む

X

における

" -加法族のうちで最小のもの)を B.X /

で表す.さらに

C .X / WD ¹ f j f W X ! R , f

は連続

º , f 2 C .X /

に対し

supp X Œf ! WD f

!

1 . R n ¹ 0 º / X , k f k 1 WD sup x2X j f .x/ j

とおき,

C

c

.X / WD ¹ f 2 C .X / j supp X Œf !

はコンパクト

º

とする.

(8) .X; #/

を距離空間,x

2 X

とする.r

2 .0; 1 /

に対し

B

!

.x; r/ WD ¹ y 2 X j

#.x; y/ < r º , B

!

.x; r/ WD ¹ y 2 X j #.x; y/ & r º

とおき,また

A " X

に対

dist

!

.x; A/ WD inf y 2 A #.x; y/, diam

!

A WD sup y;´ 2 A #.y; ´/

とおく.A

" X

diam

!

A < 1

を満たすとき,A

#-有界であるという.

iv

(5)

2

抵抗形式と有効抵抗距離

本章では,第

3

章で

Sierpi´nski gasket

上に

Laplacian

を構成するための準備として,

抵抗形式とそこから生じる対称正則

Dirichlet

形式の一般論を取り扱う.

対称正則

Dirichlet

形式とは,Euclid空間

R d

上の(適当な滑らかさを持つ)関

u; v

に対して定義される双線型形式

E .u; v/ WD

Z

Rd

hr u; r v i dx (2.1)

を抽象的に一般化した概念である.双線型形式

(2.1)

が部分積分の公式

Z

Rd

hr u; r v i dx D # Z

Rd

v$udx (2.2)

により

R d

上の通常の

Laplacian $

との自然な対応関係を持つように,対称正則

Dirichlet

形式が与えられると

L 2 -内積を経由して Laplacian

に相当する(自己共役

で,一般に有界とは限らない)作用素を自然に定めることができる.

また確率論的な対応物として,

R d

上にはよく知られているように

Brown

動(Wiener過程)B

D . ¹ B t º t 2 Œ0; 1 / ; ¹P x º x 2R

d

/

が定義され,その性質から(多少 の面倒な計算は必要になるが,比較的容易に)

lim t # 0

E x Œu.B 2t /! # u.x/

t D $u.x/ (2.3)

が適当な滑らかさと可積分性を持つ関数

u

に対して成り立つことが証明される.

関係式

(2.3)

の一般化として対称正則

Dirichlet

形式に対しては,適当に良い性質

を持つ確率過程

X D ¹ X t º

で,(2.3)に相当する関係式を(L

2 -ノルム収束の意味

で)満たすものが存在することが知られている.

さらに

Brown

運動

B D ¹ B t º t 2 Œ0; 1 /

についてはその見本路

Œ0; 1 / 3 t 7! B t .!/

は連続であるが,この性質は対応する

Dirichlet

形式の局所性

supp

Rd

Œu! \ supp

Rd

Œv! D ; H)

Z

Rd

hr u; r v i dx D 0 (2.4)

により特徴付けられる.すなわち,対称正則

Dirichlet

形式に対応する確率過程

X D ¹ X t º

が連続な見本路を持つためには,元の

Dirichlet

形式が

(2.4)

に相当する 局所性を持つという意味で局所的であることが必要十分である.(上記の対称正則

Dirichlet

形式の一般論について詳細は

[12, 11]

を参照のこと.)

1

(6)

さて,我々の目標は

Sierpi´nski gasket

において自然な

Laplacian

や熱方程式を 定式化することであった.Sierpi´nski gasketは容易に分かるように弧状連結であり,

すると「熱は空間を連続的に伝わる」と考えるのが自然であるから,Laplacian 対応する確率過程は連続な見本路を持つことが当然に要求される.そこで上記の 対称正則

Dirichlet

形式の一般論を考慮すると,Sierpi´nski gasket上に(非自明で)

局所的な対称正則

Dirichlet

形式を構成することさえできれば,あとは

[12, 11]

ある一般論を適用することで

Laplacian

やそれに

(2.3)

の意味で対応する確率過程 も自動的に得られ,Laplacianの構成という我々の目標が達成される.そこで(非 自明で)局所的な対称正則

Dirichlet

形式を

Sierpi´nski gasket

上に構成すればよ ことになる.

その方法として,素朴には次のようなものが考えられる:

1. Sierpi´nski gasket K

を有限部分集合の増大列

¹ V m º m 2N[¹ 0 º

により近似する.

2.

V m

上の

Dirichlet

形式

E .m/ W R V

m

% R V

m

! R

をとる.

3. ¹ .V m ; E .m/ / º m 2N[¹ 0 º

を適切に選んでその「m

! 1

とした極限」を取ること により,K上の(非自明で自然な)対称正則

Dirichlet

形式

E

が得られる.

このアイデアを実行するのは非常に難しいのが普通である1が,実は

Sierpi´nski

gasket

(に代表される

p.-c.f.

自己相似フラクタルと呼ばれる範疇のフラクタル)に対

しては,ある(自己相似的な形で定義される)自然な

¹ V m º m 2N[¹ 0 º

を考えることで,

比較的平易な議論により上記のアイデアを実行することができる.さらに各

E .m/

が極限の

Dirichlet

形式

E

V m

への「制限」(あるいは,

E

¹ .V m ; E .m/ / º m2N[¹0º

の「帰納極限」2)になっていることが分かり,そのことから

E

について色々と具 体的な計算を行うことが可能になる.以上のことを証明し,それにより

Sierpi´nski

gasket

上の局所的な対称正則

Dirichlet

形式を得るのが第

3

章の目標である.

本章ではその準備として,主に

[28, Chapter 2]

に従い有限集合上の

Dirichlet

式の列の「帰納極限」についての一般論を展開する.具体的には,まず

2.1

節で有 限集合上の

Dirichlet

形式3の性質を詳しく調べる.そこで見るように,有限集合

V

において

Dirichlet

形式

E

を考えることは

V

に連結な電気回路の構造を導入する

ことに他ならず,そこで自然に定まる

2

x; y 2 V

の間の「有効抵抗」RE

.x; y/

を考えると実は

R

E

V

上の距離関数になる.この「有効抵抗距離」の概念が本 章では(従って

p.-c.f.

自己相似フラクタル上の

Laplacian

の構成と解析にも)極 めて重要な役割を果たす.続いて

2.2

節で,有限集合

V m

とその上の

Dirichlet

E .m/

の列

S D ¹ .V m ; E .m/ / º m 2N[¹ 0 º

の自然な「帰納極限」を取ることができる ための条件を与え,さらに極限として得られる可算集合

S 1

m D 0 V m

上の双線型形

E

S の基本性質を述べる.2.3節では,2.2節の

E

S と同様の性質を有する,可 算とは限らない一般の集合上で定義された双線型形式を「抵抗形式」として定式 化しその一般論を展開する.特に,任意の抵抗形式が有限集合上の

Dirichlet

形式 の「帰納極限」として記述できること,有効抵抗距離に関する完備化を考えるこ とにより

2.2

節の

E

S から自然に非可算集合上の抵抗形式が得られること,及び

Green

関数が(抵抗形式の再生核として)自然に定まることを示す.

1例えば

Sierpi´nski carpet

に対してはこれは楠岡-Zhou [39]によりなされたが,そこでの証明は複雑

な計算による幾つもの精密な不等式評価の積み重ねであり,細部まで正確に理解するのはかなり骨が 折れる.以前筆者が

[39]

を読んだときには,途中の計算を追うことはできた(と思う)がその計算に 至る発想の由来は全然分からなかった.

2「帰納極限」という語はここでは「極限値の『有限の段階への制限』が極限を取る前の値に一致 するという性質を満たすような極限概念」の意味に用いている.

3本章で取り扱う有限集合上の

Dirichlet

形式は,正確には

Dirichlet

形式の一般論で言うところの

「既約再帰的な」Dirichlet形式である.定義

2.2

とその直前の記述を参照のこと.

(7)

記号

.

本章を通して以下の記号を用いる.

(1) K

を空でない集合とする.A

" K

に対し

1 A K 2 R K D ¹ u j u W K ! Rº

1 A K .x/ WD

´ 1 x 2 A;

0 x 2 K n A; (2.5)

で定める.誤解の恐れがない場合には,Kを省略してこれを単に

1 A

と書く.ま

x 2 K

に対し

1 K

¹

x º ; 1

¹

x º

をそれぞれ単に

1 K x ; 1 x

と書く.

(2)

空でない有限集合

V

に対し,

R V

上の内積

h$ ; $i V

を次で定める:

h u; v i V WD X

x 2 V

u.x/v.x/; u; v 2 R V : (2.6) (3) U; V

を空でない有限集合とする.線型写像

L W R V ! R U

に対し

L xy WD .L1 V y /.x/

により行列

.L xy / x 2 U; y 2 V 2 R U

$

V

を定める.容易に分かるように,

L 7!

.L xy / x 2 U; y 2 V

は線型写像

L W R V ! R U

の全体から行列

.L xy / x 2 U; y 2 V 2 R U

$

V

の全体への線型同型であり,以下この線型同型により線型写像

L W R V ! R U

行列

.L xy / x 2 U; y 2 V D ! .L1 y V /.x/ "

x2U; y2V 2 R U

$

V

を同一視する.

さらに

U D V

のとき,線型写像

L W R V ! R V

に対し双線型形式

E L W R V % R V ! R

E L .u; v/ WD h u; # Lv i V

で定める.Lが内積

h$ ; $i V

について対称

(すなわち双線型形式

E L

が対称)であるためには

L

に対応する行列

.L xy / x;y 2 V

が対称行列であることが必要十分であることを注意しておく.

2.1

有限集合上の抵抗形式と有効抵抗距離

本節では有限集合上の

Dirichlet

形式と対応する有効抵抗距離の基本性質を取り扱 う.まず,次の基本的な事実を思い出しておく.

命題

2.1. F

R

上の線型空間とし,

E W F % F ! R

F

上の非負定値対称双線 型形式とする.このとき任意の

u; v 2 F

に対し

(Cauchy-Schwarzの不等式)

jE .u; v/ j & E .u; u/ 1=2 E .v; v/ 1=2 ; (2.7)

(3角不等式)

E .u C v; u C v/ 1=2 & E .u; u/ 1=2 C E .v; v/ 1=2 : (2.8)

証明

. u; v 2 F , t 2 R

とする.

E

は非負定値対称双線型なので

0 & E .u C t v; u C t v/ D E .u; u/ C 2t E .u; v/ C t 2 E .v; v/: (2.9) E .v; v/ D 0

のときは,(2.9)より任意の

t 2 .0; 1 /

に対し

jE .u; v/ j & t

!1

E .u; u/

であり,従って

E .u; v/ D 0

となり

(2.7)

が成り立つ.

E .v; v/ > 0

のときは,(2.9)

t WD #E .u; v/= E .v; v/

とおくことで

0 & E .u; u/ E .v; v/ # E .u; v/ 2

となり

(2.7)

を得る.さらに

(2.9)

t D 1

として

(2.7)

を用いれば直ちに

(2.8)

が従う.

有限集合上の(既約再帰的な)Dirichlet形式は次で定義される.なお,有限集 合に対しては次の定義は後に

2.3

節で与える抵抗形式の定義(定義

2.26)と一致

するため,用語の統一のため最初からこれを抵抗形式と呼ぶことにする.

定義

2.2 (有限集合上の抵抗形式). V

を空でない有限集合とする.

R V

上の非負定

値対称双線型形式

E W R V % R V ! R

が次の

2

条件を満たすとき,

E

V

上の 抗形式

(resistance form)

であるという:

(RF1)

fin

¹ u 2 R V j E .u; u/ D 0 º D R 1 V .

(RF2)

fin(Markov性)任意の

u 2 R V

に対し

E .u C ^ 1; u C ^ 1/ & E .u; u/.

さらに

RF.V / WD ¹E j E

V

上の抵抗形式

º

とおく.

(8)

定義

2.3 (有限集合上の Laplacian). V

を空でない有限集合とする.

R V

上の対称 線型写像

L D .L xy / x;y 2 V W R V ! R V

が次の

2

条件を満たすとき,L

V

上の

Laplacian

であるという:

(LA1) ¹ u 2 R V j Lu D 0 º D R1 V .

(LA2) x 6D y

なる任意の

x; y 2 V

に対し

L xy ' 0.

さらに

LA.V / WD ¹ L j L

V

上の

Laplacian º

とおく.

定義

2.4 (有限集合上の抵抗網構造). V

を空でない有限集合とする.次の

2

条件を満

たす

r D .r xy / x;y 2 V; x 6D y " .0; 1 !

V

上の抵抗網構造

(resistor network structure)

という:

(RN1) x 6D y

なる任意の

x; y 2 V

に対し

r xy D r yx .

(RN2) x 6D y

なる任意の

x; y 2 V

に対し,n

2 N

¹ x k º n k D 0 " V

が存在して,

x 0 D x, x n D y,

かつ任意の

k 2 ¹ 1; : : : ; n º

に対し

x k

!

1 6D x k

かつ

r x

k!1

x

k

< 1 .

さらに

RN.V / WD ¹ r j r

V

上の抵抗網構造

º

とおく.

次の命題に述べるように,RF.V /;

LA.V /; RN.V /

の間には自然な全単射が存 在し,これにより

E 2 RF.V /

は対応する

L

E

2 LA.V /

及び

r L

E

2 RN.V /

と自然 に同一視される.

命題

2.5. V

を空でない有限集合とする.

(1) L 2 LA.V /

に対し

E L 2 RF.V /

であり,LA.V /

3 L 7! E L 2 RF.V /

は全単 射でその逆写像は

RF.V / 3 E 7! L

E

WD . #E .1 x ; 1 y // x;y2V

で与えられる.

(2) L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /

に対し

r L WD .L

!

xy 1 / x;y 2 V; x 6D y " .0; 1 ! (0

!

1 WD 1 )

とおくと

r L 2 RN.V /.

また

r D .r xy / x;y 2 V; x 6D y 2 RN.V /

に対し

L

r

D .L xy / x;y 2 V 2 R V

$

V

x 6D y

のとき

L xy WD r xy

!

1 , x D y

のとき

L xx WD

# P

´ 2 V n¹ x º r

!

1 ( 1

!

1 WD 0)

により定めると

L

r

2 LA.V /.

さらに

LA.V / 3 L 7!

r L 2 RN.V /

RN.V / 3 r 7! L

r

2 LA.V /

は互いに逆の全単射である.

証明.

(1) L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /

とし,u

2 R V

とする.(LA1)

L

の対称性 より任意の

x 2 V

に対し

P

y 2 V L xy D P

y 2 V L yx D 0

であるので,(LA2)より

E L .u; u/ D # X

x;y 2 V

L xy u.x/u.y/ D 1 2

X

x;y 2 V

L xy .u.x/ # u.y// 2 ' 0: (2.10)

すると

E L

R V

上の非負定値対称双線型形式となるので,

E L .u; u/ D 0

とする

(2.7)

により

h Lu; Lu i V D E L . # Lu; u/ D 0,

従って

Lu D 0

となり,(LA1)より

u 2 R 1 V .

逆に

u 2 R 1 V

のとき

Lu D 0

より

E L .u; u/ D h u; # Lu i V D 0.

さらに 任意の

x; y 2 V

に対し

j .u C ^ 1/.x/ # .u C ^ 1/.y/ j & j u.x/ # u.y/ j

であるので,

(2.10)

より

E L .u C ^ 1; u C ^ 1/ & E L .u; u/.

以上から

E L 2 RF.V /.

また明らかに

L

EL

D . #E L .1 x ; 1 y // x;y 2 V D L

であり,特に

LA.V / 3 L 7! E L 2 RF.V /

は単射 である.

次に

E 2 RF.V /

とし,LE

D . #E .1 x ; 1 y // x;y 2 V DW .L xy / x;y 2 V

とおく.明ら かに

E D E L

E であるので,前段落を考慮すると

L

E

2 LA.V /

を示せば

(1)

の証 明が完了する.

E

の対称性から

L

Eは対称である.u

2 R 1 V

ならば

(RF1)

finより

E .u; u/ D 0,

従って

(2.7)

より

h L

E

u; L

E

u i V D #E .L

E

u; u/ D 0

となり,よって

L

E

u D 0.

逆に

u 2 R V , L

E

u D 0

ならば

E .u; u/ D h u; # L

E

u i V D 0

となり

(RF1)

fin

より

u 2 R 1 V .

次に

(LA2)

を示すために

x; y 2 V , x 6D y

とする."

2 .0; 1 /

とし

u WD 1 x # "1 y 2 R V

とおくと,u

C ^ 1 D 1 x

であるので

(RF2)

finにより

# L xx C 2"L xy # " 2 L yy D E .u; u/ ' E .u C ^ 1; u C ^ 1/ D # L xx ;

(9)

従って

L xy ' ."=2/L yy

となり,"

2 .0; 1 /

は任意であるので

L xy ' 0.

よって

L

E

(LA2)

を満たすことが分かり,LE

2 LA.V /.

(2) L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /

とする.Lは対称なので

r L D .L

!

xy 1 / x;y 2 V; x 6D y DW .r xy / x;y 2 V; x 6D y

(RN1)

を満たす.(RN2)を示すために,x

2 V

とし

V L x WD ¹ x º [

² y 2 V ˇˇ

ˇˇ n 2 N

¹ x k º n k D 0 " V

が存在して,

x 0 D x, x n D y,

かつ 任意の

k 2 ¹ 1; : : : ; n º

に対し

x k

!

1 6D x k

かつ

r x

k!1

x

k

< 1

³ (2.11)

とおく.すると

V L x

の定義

(2.11)

から

y 2 V L x , ´ 2 V n V L x

に対し

r y´ D r ´y D 1 ,

すなわち

L y´ D L ´y D 0

でなければならず,このとき

L1 V D 0

より

L1 V

Lx

D 0

が得られる.従って

(LA1)

より

1 V

Lx

2 R 1 V

であり,1

V

Lx

.x/ D 1

より

1 V

Lx

D 1 V ,

すなわち

V L x D V .

これは

(RN2)

を意味し,よって

r L 2 RN.V /

が従う.

逆に

r D .r xy / x;y 2 V; x 6D y 2 RN.V /

とし

L

r

D .L xy / x;y2V 2 R V

$

V

を主張の ように定める.Lr はその定義より

(LA2)

L

r

1 V D 0

を満たし,(RN1)より対 称である.次に

u 2 R V

L

r

u D 0

を満たすとし,u

2 R1 V

を示すために

x 2 V

u.x/ D max ´ 2 V u.´/

となるように取る.y

2 V n ¹ x º

とし,(RN2)のように

n 2 N

¹ x k º n k D 0 " V

を取る.このとき

u.x 0 / D u.x/ D max ´ 2 V u.´/

に注意し,

k 2 ¹ 1; : : : ; n º , u.x k!1 / D max ´ 2 V u.´/

と仮定すると,r

x

k!1

x

k

2 .0; 1 /

であり

0 D .L

r

u/.x k

!

1 / D X

´2V n¹x

k!1

º

r x

!1k!1

´ .u.´/ # u.x k

!

1 // & u.x k / # u.x k

!

1 / r x

k!1

x

k

& 0

なので

u.x k / D u.x k

!

1 / D max ´ 2 V u.´/.

従って

k

についての数学的帰納法によ

u.y/ D u.x n / D u.x/

となり,y

2 V n ¹ x º

は任意なので

u D u.x/ 1 V 2 R1 V .

よって

L

r

2 LA.V /

である.

最後に,容易に確認できるように任意の

L 2 LA.V /

に対し

L

rL

D L,

また 任意の

r 2 RN.V /

に対し

r L

r

D r

であるので,LA.V /

3 L 7! r L 2 RN.V /

RN.V / 3 r 7! L

r

2 LA.V /

は互いに逆の全単射である.

注意

2.6. V

を空でない有限集合,

E 2 RF.V /

とし,L

D .L xy / x;y 2 V WD L

E

2 LA.V /, r D .r xy / x;y 2 V; x 6D y WD r L

E

2 RN.V /

をそれぞれ命題

2.5

の意味で

E

に対 応する

V

上の

Laplacian

及び抵抗網構造とする.このとき

x; y 2 V , x 6D y

に対 し,r

xy < 1

なら

x

y

は抵抗値

r xy

の抵抗器により接続されており,r

xy D 1

なら

x

y

は抵抗器により直接接続されてはいないと考えることにより,V には 抵抗器のネットワーク構造が備わっていると見なすことができる.このとき

(2.10)

より

u 2 R V

に対し

E .u; u/ D 1 2

X

x;y 2 V; x 6D y r

xy

< 1

.u.x/ # u.y// 2

r xy (2.12)

であるが,(2.12)の右辺は

「抵抗網

.V; r/

に電位

u D .u.x// x 2 V

を与えたときの

V

上での総消費電力」

に他ならない.RF.V /の元を

V

上の抵抗形式と呼ぶのはこのことに由来する.

次に,抵抗形式の部分集合への「制限」について考察する.

補題

2.7. V

を有限集合とし,U

¤ V , U 6D ;

とする.L

2 LA.V /

とし,T

D T U 2 R U

$

U , J D J U 2 R .V n U /

$

U , X D X U 2 R .V n U /

$

.V n U /

を,L

U , U n V

の各成分への分割

L D

% T J

"

J X

&

D

% T U J U

"

J U X U

&

(2.13)

(10)

により定める.このとき

X

は負定値対称行列であり,また任意の

u 2 R V

に対し

E L .u; u/ D E X .u j V n U C X

!

1 J.u j U /; u j V n U C X

!

1 J.u j U //

C E T

!

J

"

X

!1

J .u j U ; u j U /: (2.14)

証明

. L

は対称なので,(2.13)より

X

も対称である.v

2 R V n U

とし,

v Q 2 R V

v Q j V n U WD v, v Q j U WD 0

により定めると,

E X .v; v/ D E L . v; Q v/ Q ' 0

なので

E X

非負定値であり,さらに

E X .v; v/ D 0

ならば

(RF1)

finより

v Q 2 R1 V

となるので

Q

v j U D 0 (U 6D ; )

により

v Q D 0,

よって

v D 0

である.すなわち

E X

は正定値であ り,従って

X

は負定値である(ので

X

!1が存在する).最後に

u 2 R V

に対し

E X .u j V nU C X

!

1 J.u j U /; u j V nU C X

!

1 J.u j U //

D h u j V n U C X

!

1 J.u j U /; # X.u j V n U / # J.u j U / i V n U

D h u j V n U ; # X.u j V n U / i V n U C 2 h u j V n U ; # J.u j U / i V n U C h u j U ; # J

"

X

!

1 J.u j U / i U D E L .u; u/ C h u j U ; T .u j U / i U C h u j U ; # J

"

X

!

1 J.u j U / i U

D E L .u; u/ # E T

!

J

"

X

!1

J .u j U ; u j U /

となるので,(2.14)を得る.

定理

2.8. V

を有限集合とし,U

¤ V , U 6D ;

とする.L

2 LA.V /

とし,T

2 R U

$

U , J 2 R .V n U /

$

U , X 2 R .V n U /

$

.V n U /

(2.13)

で定める.u

2 R U

とし,

h U .u/ D h L U .u/ 2 R V

h U .u/ j U WD u, h U .u/ j V n U WD # X

!

1 J u

で定める.

(1) h U .u/

は最小値

min v 2R

V

; v j

U

D u E L .v; v/

を達成する唯

1

つの

v 2 R V

である.

(2) ŒL! U WD T # J

"

X

!

1 J

とおくと

ŒL! U 2 LA.U /

であり

E ŒL"

U

.u; u/ D E L .h U .u/; h U .u// D min

v2R

V

; vj

U

Du E L .v; v/: (2.15)

証明

. v 2 R V , v j U D u

とすると補題

2.7

より

X

は負定値であるので,(2.14)から

E L .v; v/ D E X .v j V n U C X

!

1 J u; v j V n U C X

!

1 J u/ C E ŒL"

U

.u; u/ ' E ŒL"

U

.u; u/

であり,さらに上の不等式における等号成立は

v j V nU D # X

!

1 J u D h U .u/ j V nU ,

すなわち

v D h U .u/

と同値である.これで

(1)

(2.15)

が示せた.

次に

E ŒL"

U

2 RF.U /

を示そう.Lの対称性と

(2.13)

から

ŒL! U

は対称であり,

(2.15)

より

E ŒL"

Uは対称で非負定値である.さらに

(2.15)

により,

E ŒL"

U

. 1 U ; 1 U / D 0

であり,また

u 2 R U , E ŒL"

U

.u; u/ D 0

とすると

E L .h U .u/; h U .u// D 0

なので

(RF1)

finより

h U .u/ 2 R 1 V ,

従って

u D h U .u/ j U 2 R 1 U

である.最後に

u 2 R U

に対し,.h

U .u/ C ^ 1/ j U D u C ^ 1

であるので

(2.15)

(RF2)

finにより

E ŒL"

U

.u; u/ ' E L .h U .u/ C ^ 1; h U .u/ C ^ 1/

' min

v 2R

V

; v j

U

D u

C

^ 1 E L .v; v/ D E ŒL"

U

.u C ^ 1; u C ^ 1/:

従って

E ŒL"

U

2 RF.U /

であるので,命題

2.5-(1)

より

ŒL! U D L

EŒL!

U

2 LA.U /.

注意

2.9.

定理

2.8

の状況を仮定する.

(1) h U .u/

はその定義から,Lに関する

V n U

上での

Laplace

方程式の

Dirichlet

境界値問題

´

Lv j V nU D 0

v j U D u (2.16)

(11)

の唯

1

つの解

v 2 R V

である.Lv

j V n U D 0

v

が「Lに関して

V n U

上で調和」

であることを意味しており,このことから

h U .u/

u 2 R U

の「Lに関する(あ るいは

E L

に関する)V 上への調和拡張

(harmonic extension)」と呼ぶことがある.

(2.16)

の一意解

h U .u/

が定理

2.8-(1)

の最小値を達成する唯

1

つの

v 2 R V

もなっていることに注意されたい.つまり,Lに対応する双線型形式

E L

の最小 化問題

min v 2R

V

; v j

U

D u E L .v; v/

の解を求めることは,Lに関する

Laplace

方程式

Dirichlet

境界値問題

(2.16)

の解を求めることと同値なのである.同様の事実は

Euclid

空間

R d

上の通常の

Laplacian(あるいはより一般に楕円型偏微分作用素)

に対してはよく知られたことであるが,定理

2.8

はその「離散版」である.

(2)

定理

2.8-(2)

ŒL! U

「L

2 LA.V /

U ¤ V

への抵抗網としての制限」

を表している.この意味を説明するために,

v WD h U .u/

に対する等式

Lv j V nU D 0

を「電気回路」的に解釈してみる.r

D .r xy / x;y2V; x6Dy WD r L 2 RN.V /

とおくと き,.Lv/.x/

r

を用いて書き換えると

.Lv/.x/ D X

y 2 V n¹ x º ; r

xy

< 1

v.y/ # v.x/

r xy (2.17)

となるが,v

V

の各点における電位と解釈すれば,(2.17)の右辺は電位

v

の下 での「xにおける総流入電流量と総流出電流量の差」を表していることになる.

従って

Lv j V n U D 0

とは

「各

x 2 V n U

において総流入電流量と総流出電流量が釣り合っている」,

言い換えると

「各

x 2 V n U

において電流の外部からの流入・外部への流出が起きていない」

ということを表している.中学・高等学校の理科で学んだのは,このような状況 で回路の総消費電力を求めるためには,V

n U

の点を「ないもの」と見なして

U

における「合成抵抗」を求め,その「合成抵抗」と

U

の各点の電位

u D v j U

ら通常の方法で総消費電力を計算すればよい,ということであった.定理

2.8-(2)

E ŒL"

U

.u; u/

がまさにこの「合成抵抗を用いた総消費電力の計算」であり,対応

する

U

上の

Laplacian ŒL! U

が「合成抵抗」を表している.つまり

ŒL! U

「抵抗網

L

において

V n U

の点を『ないもの』と見なした『合成抵抗』網」

を表しており,この意味で

ŒL! U

は「L

U ¤ V

への抵抗網としての自然な制限」

と考えられるのである.

「調和拡張作用素」h

U D h L U W R U ! R V

と「制限」ŒL!

U

についてはさら に次が成り立つ.空でない有限集合

V

L 2 LA.V /

に対し

h V D h L V WD id

RV

, ŒL! V WD L

と定める.このとき定理

2.8

の結論は全て

U D V

の場合も含めて成り 立つことに注意する.

命題

2.10. V

を有限集合,U; W

V

の部分集合で

; 6D W " U

を満たすとし,

L 2 LA.V /

とする.このとき

ŒŒL! U ! W D ŒL! W

かつ

h L U ı h ŒL" W

U

D h L W .

特に任意

w 2 R W

に対し

h ŒL" W

U

.w/ D h L W .w/ j U .

(12)

証明

. w 2 R W

とする.h

L W .w/ j W D h L U ı h ŒL" W

U

.w/ j W D w

であるので

(2.15)

より

E ŒL"

W

.w; w/ D E L !

h L W .w/; h L W .w/ "

' min

v 2R

V

; v j

U

D h

LW

.w/ j

U

E L .v; v/ D E ŒL"

U

!

h L W .w/ j U ; h L W .w/ j U "

' min

u2R

U

; uj

W

Dw E ŒL"

U

.u; u/ D E ŒŒL"

U"W

.w; w/ D E ŒL"

U

! h ŒL" W

U

.w/; h ŒL" W

U

.w/ "

D E L !

h L U ı h ŒL" W

U

.w/; h L U ı h ŒL" W

U

.w/ "

' min

v 2R

V

; v j

W

D w E L .v; v/ D E ŒL"

W

.w; w/:

よって上記の計算中の各辺は全て等しく,そこで定理

2.8-(1)

h L W .w/

の一意性 の主張から

h L U ı h ŒL" W

U

.w/ D h L W .w/

すなわち

h L U ı h ŒL" W

U

D h L W

が得られ,特 にこの等式の両辺の

U

への制限を考えることにより

h ŒL" W

U

.w/ D h L W .w/ j U

が従 う.また

E ŒŒL"

U"W

.w; w/ D E ŒL"

W

.w; w/

E ŒŒL"

U"W

; E ŒL"

W の対称双線型性から

E ŒŒL"

U"W

D E ŒL"

W となり,従って

ŒŒL! U ! W D L

EŒŒL!U!W

D L

EŒL!W

D ŒL! W .

演習

2.1 (直列回路の合成抵抗). (1) V D ¹ q 0 ; q 1 ; q 2 º

#V D 3

を満たす集合,

R 1 ; R 2 2 .0; 1 /

とし,

L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /

L q

0

q

1

WD R

!

1 1 , L q

1

q

2

WD R 2

!

1 , L q

0

q

2

WD 0

で定めるとき,ŒL!¹

q

0

;q

2

º D .R 1 C R 2 /

!

1 !

!

1 1

1

!

1

"

であることを示せ.

(2) n 2 N , V D ¹ q 0 ; q 1 ; : : : ; q n º

#V D n C 1

を満たす集合,

¹ R j º j n D 1 " .0; 1 /

とし,L

D .L xy / x;y2V 2 LA.V /

L q

j

q

k

WD

´ R j

!

_ 1 k . j j # k j D 1/;

0 . j j # k j ' 2/; j; k 2 ¹ 0; 1; : : : ; n º ; j 6D k

により定める.このとき

ŒL!

¹

q

0

;q

n

º D !P n

j D 1 R j "

!

1 !

!

1 1

1

!

1

"

であることを示せ.

q ✉ 0

q ✉ 1

R

!

1 1 ✉ q 2

R

!

2 1

q n

!

1

q ✉ n

R n

!

1

$ $ $ .V; L/

q ✉ 0

q ✉ n

!P n

j D 1 R j "

!

1

. ¹ q 0 ; q n º ; ŒL!

¹

q

0

;q

n

º /

2.1:

直列回路の合成抵抗(演習

2.1)

以下に

L 2 LA.V /

に関する調和関数の基本性質を挙げる.注意

2.9-(1)

同様,

これらの事実も

R d

上の通常の

Laplacian

に対してはよく知られたものである.

定理

2.11 (強最大値の原理). V

を有限集合とし,U

¤ V , U 6D ;

とする.L

D

.L xy / x;y2V 2 LA.V /, x 2 V n U

とし,W

L x " V n U , U L x " U

を次で定める:

W L x WD ¹ x º [

²

y 2 V n U ˇˇ

ˇˇ n 2 N

¹ x k º n k D 0 " V n U

が存在して,x

0 D x, x n D y,

任意の

k 2 ¹ 1; : : : ; n º

に対し

L x

k!1

x

k

> 0

³

; U L x WD ¹ y 2 U j

ある

´ 2 W L x

に対し

L y´ > 0 º : (2.18) (1) U L x 6D ;

であり,任意の

y 2 W L x

に対し

¹ ´ 2 V j L y´ > 0 º " W L x [ U L x . (2) u 2 R W

Lx

[ U

Lx とし,(1)より

.Lu/.y/ D P

´ 2 V; L

>0 L y´ .u.´/ # u.y//

y 2 W L x

に対し自然に定義されることに注意して

Lu j W

Lx

D 0

と仮定する.このとき

q min 2 U

Lx

u.q/ & min

q 2 W

Lx

u.q/ & max

q 2 W

Lx

u.q/ & max

q 2 U

Lx

u.q/: (2.19)

さらに,max

q 2 W

Lx

u.q/ D max q 2 U

Lx

u.q/

または

min q 2 W

Lx

u.q/ D min q 2 U

Lx

u.q/

あるためには

u 2 R 1 W

Lx

[ U

Lx であることが必要十分である.

(13)

証明

.

まず

W L x

の定義から容易に分かるように,y; ´

2 V n U

に対し

´ 2 W L y

とき

y ( .V n U;L/ ´

と定めると

( .V n U;L/

V n U

上の同値関係であることを注意 しておく.特に

y 2 V n U

に対し

W L y

( .V n U;L/

に関する

y

の同値類であるの で,W

L x \ W L y 6D ;

ならば

W L x D W L y

であり,従ってまた

U L x D U L y

である.

(1) y 2 U

を取る.(RN2)より

n 2 N

¹ x k º n k D 0 " V

が存在して

x 0 D x, x n D y

かつ任意の

k 2 ¹ 1; : : : ; n º

に対し

L x

k!1

x

k

> 0. l WD min ¹ k 2 ¹ 1; : : : ; n º j x k 2 U º

とおくと

¹ x k º l kD0

!

1 " V n U , x l 2 U

であるので

¹ x k º l kD0

!

1 " W L x , x l 2 U L x 6D ;.

次に

y 2 W L x

とし

´ 2 V , L y´ > 0

とすると

(2.18)

により,

´ 2 U

ならば

´ 2 U L x

であり,

´ 2 V n U

ならば´

2 W L y D W L x

となるので

¹ ´ 2 V j L y´ > 0 º " W L x [ U L x . (2) u 2 R1 W

Lx

[ U

Lx ならば

(2.19)

4

辺は全て等しい.また,max

q 2 W

Lx

u.q/ <

max q 2 W

Lx

[ U

Lx

u.q/

ならば

max q 2 W

Lx

u.q/ < max q 2 W

Lx

[ U

Lx

u.q/ D max q 2 U

Lx

u.q/.

あとは

max q 2 W

Lx

u.q/ D max q 2 W

Lx

[ U

Lx

u.q/

と仮定し

u 2 R1 W

Lx

[ U

Lx を導けば,

max q 2 W

Lx

u.q/ & max q 2 U

Lx

u.q/

及びこの等号の成立が

u 2 R 1 W

Lx

[ U

Lx の場合に限 ることが分かり,min

q 2 U

Lx

u.q/ & min q 2 W

Lx

u.q/

に対する同様の議論と合わせて 証明が完了する.そこで

max q2W

Lx

u.q/ D max q2W

Lx

[U

Lx

u.q/

と仮定し,u.x"

/ D max q 2 W

Lx

[ U

Lx

u.q/

を満たす

x

"

2 W L x

を取る.このとき

W L x

"

D W L x

なので,

y 2 .W L x [ U L x / n ¹ x

"

º

とすると,n

2 N

¹ x k º n k

!

D 1 0 " V n U

が存在して,x

0 D x

"

,

かつ

x n WD y

とおくと任意の

k 2 ¹ 1; : : : ; n º

に対し

L x

k!1

x

k

> 0. u.x 0 / D u.x

"

/ D max q 2 W

Lx

[ U

Lx

u.q/

に注意して,k

2 ¹ 1; : : : ; n º

とし

x k

!

1 2 W L x [ U L x

u.x k

!

1 / D u.x

"

/

と仮定すると,x

k

!

1 2 V n U

より

x k

!

1 2 W L x

であり,する

(1)

より

x k 2 ¹ ´ 2 V j L x

k!1

´ > 0 º " W L x [ U L x

であるので

0 D .Lu/.x k

!

1 / D X

´ 2 V; L

xk!1 ´

>0 L x

k!1

´ .u.´/ # u.x k

!

1 //

& L x

k!1

x

k

.u.x k / # u.x

"

// & 0

となり,よって

u.x k / D u.x

"

/.

従って

k

に関する数学的帰納法により

u.y/ D u.x n / D u.x

"

/

となり,y

2 .W L x [ U L x / n ¹ x

"

º

は任意なので

u 2 R1 W

Lx

[ U

Lx

.

2.12 (楕円型 Harnack

不等式).

V

を有限集合とし,U

¤ V , U 6D ;

とする.

L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /, x 2 V n U

とし

W L x ; U L x

(2.18)

で定める.このとき

c 2 .0; 1 /

が存在して,u

' 0

Lu j W

Lx

D 0

を満たす任意の

u 2 R W

Lx

[ U

Lxに対し

c max

q 2 W

Lx

[ U

Lx

u.q/ & min

q 2 W

Lx

u.q/: (2.20)

証明

. A WD ®

u 2 R W

Lx

[ U

Lx

ˇˇ u ' 0, Lu j W

Lx

D 0, max q 2 W

Lx

[ U

Lx

u.q/ D 1 ¯

とおく.

1 W

Lx

[ U

Lx

2 A

より

A 6D ;

であり,定理

2.11

より

min q 2 W

Lx

u.q/ > 0

が任意の

u 2 A

に対して成り立つ.そこで

c WD inf ®

min q 2 W

Lx

u.q/ ˇˇ u 2 A ¯

とおくと,

A

R W

Lx

[U

Lx の空でないコンパクト部分集合で

A 3 u 7! min q 2 W

Lx

u.q/ 2 R

連続なので

c D min ®

min q 2 W

Lx

u.q/ ˇˇ u 2 A ¯

2 .0; 1 /

となり,すると

u ' 0

Lu j W

Lx

D 0

を満たす

u 2 R W

Lx

[ U

Lxに対し

c

の定義より容易に

(2.20)

を得る.

次に定義する有効抵抗距離の概念は抵抗形式の理論の根幹に位置しており,極 めて重要である.

定義

2.13 (有限集合上の有効抵抗距離). V

を空でない有限集合,L

2 LA.V /

とす

る.R

L W V % V ! Œ0; 1 /

R L .x; y/ WD !

min ¹E L .u; u/ j u 2 R V , u.x/ D 1, u.y/ D 0 º "

!

1

(2.21)

(14)

D max

² j u.x/ # u.y/ j 2

E L .u; u/

ˇˇ ˇˇ u 2 R V n R 1 V

³

(2.22)

(ただし

min ; WD 1 , 1

!

1 WD 0, max ; WD 0)で定める.R L

L

に対応する有効 抵抗距離

(effective resistance metric,

あるいは単に

resistance metric)

という.

x D y

のときは

(2.21), (2.22)

の右辺は明らかに共に

0

となる.x

6D y

のとき,

(2.21)

の最小値が存在して正であることは定理

2.8

から分かり,(2.22)の最大値が

存在して

(2.21)

の右辺に等しいことは,u

2 R V n R 1 V

に対し

u.x/ 6D u.y/

ならば

j u.x/ # u.y/ j 2

E L .u; u/ D E L

% u # u.y/

u.x/ # u.y/ ; u # u.y/

u.x/ # u.y/

&

!

1

& R L .x; y/ (2.23)

であり,さらに

(2.21)

の最小値を達成する

u 2 R V

に対して

(2.23)

の不等式で等 号が成立することから分かる.すると特に

(2.22)

から次の不等式が得られる.

命題

2.14. V

を空でない有限集合,L

2 LA.V /

とするとき,任意の

u 2 R V

と任 意の

x; y 2 V

に対し

j u.x/ # u.y/ j 2 & R L .x; y/ E L .u; u/: (2.24)

注意

2.15. x; y 2 V , x 6D y

のとき,定理

2.8-(2)

から次が成り立つことが分かる:

ŒL!

¹

x;y º D 1 R L .x; y/

% # 1 1

1 # 1

&

: (2.25)

注意

2.9-(2)

によれば

ŒL!

¹

x;y º

は「.V; L/

2

x; y

間の単一の抵抗器と見なした

『合成抵抗』網」を表していると解釈することができるが,(2.25)はその「合成抵 抗」網が

2

x; y

を抵抗値

R L .x; y/

の抵抗器で接続して得られる抵抗網である ことを示している.R

L .x; y/

を「有効抵抗」と呼ぶのはこの解釈に基づいている.

その名称が示唆する通り,有効抵抗距離

R L

は実は距離関数になっている.さ

らに

R L

によって

Laplacian L

は一意的に定まる.これを次に定理として述べる.

定理

2.16. V

を空でない有限集合とする.

(1) L 2 LA.V /

とするとき,R

L

V

上の距離関数である.

(2) L 1 ; L 2 2 LA.V /

R L

1

D R L

2を満たすならば

L 1 D L 2

である.

定理

2.16

の証明の前に,定理

2.16-(2)

の重要な系を

1

つ述べておく.

定義

2.17. k D 1; 2

に対し

V k

を空でない有限集合,

L k 2 LA.V k /

とする.

V 1 " V 2

かつ

L 1 D ŒL 2 ! V

1 であるとき

¹ .V 1 ; L 1 /; .V 2 ; L 2 / º

適合している

(compatible)

いい,この性質が成り立つことを

.V 1 ; L 1 / & .V 2 ; L 2 /

と書き表す.

2.18. k D 1; 2

に対し

V k

を空でない有限集合,L

k 2 LA.V k /

とする.このと き,.V

1 ; L 1 / & .V 2 ; L 2 /

であるためには

V 1 " V 2

かつ

R L

1

D R L

2

j V

1$

V

1 であるこ とが必要十分である.

証明.

.V 1 ; L 1 / & .V 2 ; L 2 /

ならば,V

1 " V 2

であり,また

x 6D y

なる任意の

x; y 2 V 1

に対し命題

2.10

より

ŒL 1 !

¹

x;y º D ŒŒL 2 ! V

1

!

¹

x;y º D ŒL 2 !

¹

x;y º ,

従って

(2.25)

より

R L

1

.x; y/ D R L

2

.x; y/

となるので

R L

1

D R L

2

j V

1$

V

1 である.

逆に

V 1 " V 2

かつ

R L

1

D R L

2

j V

1$

V

1 ならば,前段落の結果から

R ŒL

2"V1

D

R L

2

j V

1$V1 であるので

R L

1

D R ŒL

2"V1 となり,従って定理

2.16-(2)

より

L 1 D

ŒL 2 ! V

1

,

すなわち

.V 1 ; L 1 / & .V 2 ; L 2 /

である.

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