梶野 直孝(神戸大学大学院理学研究科)
数学特別講義
I
(奈良女子大学理学部
2018
年度集中講義)2018
年11
月1
日序
本稿は奈良女子大学理学部における
2018
年度集中講義「数学特別講義I」の講義
内容の一部をまとめたものである.本講義では
Sierpi´nski gasket
上の標準Dirichlet
形式(及び対応するLaplacian)
の構成を取り扱う.本稿の内容は主に木上淳氏による
monograph [28, Chapters 2]
の記述に従うが,必要に応じて同氏による最近の論文
[30, 31]
の結果も取り入れ て筆者なりに整理したつもりである.原則として証明を省略することはせず,数 学的に完全に理解することを目標とする.ただし講義回数に限りがあるため,内容は
Dirichlet
形式の構成を理解する為に最低限必要な範囲に留めており,触れることのできていない重要な事柄も多い.本講義で割愛した事項については
[28,
Chapters 1–3]
及び本文中で示した文献を参照されたい.京都大学大学院情報学研究科の木上淳氏は筆者がまだ学部生の頃から現在に 至るまで大変丁寧にご指導下さり,未熟な学生であった筆者をフラクタル上の解 析学の豊かな世界に導いて下さった.数々の学恩に心より感謝申し上げる.
またこの度は奈良女子大学理学部において筆者の専門について既知の事実を 整理し講義する貴重な機会をいただいた.講師としてお招きいただいた篠田正人 氏,嶽村智子氏はじめ奈良女子大学理学部の皆様に篤くお礼申し上げる.
2018
年10
月,神戸にて 梶野 直孝ii
目次
序
ii
本講義を通して使われる記号
iv
第
2
章 抵抗形式と有効抵抗距離1
2.1
有限集合上の抵抗形式と有効抵抗距離. . . . 3
2.2
有限集合上のLaplacian
の適合列とその極限. . . . 13
2.3
一般の抵抗形式と有効抵抗距離. . . . 16
第
2
章参考文献. . . . 33
第
3
章Sierpi´nski gasket
上のLaplacian
の構成34 3.1
有限部分集合上のLaplacian
の適合列の構成. . . . 34
3.2 Euclid
距離と有効抵抗距離の同値性. . . . 35
参考文献
38
iii
本講義を通して使われる記号
本論に入る前に,本講義を通して使われる幾つかの記号をここで導入しておく.
(1)
等式A WD B
は「AをB
で定義する」の意味に用いる.(2) N , Z , Q , R , C
は通常通り自然数全体,整数全体,有理数全体,実数全体,複 素数全体の集合をそれぞれ表す.本稿ではN
は0
を含まないと約束する:N D ¹ 1; 2; 3; : : : º :
(3)
集合A
に属する元の総数を#A
で表す.#A2 N [ ¹ 0; 1º
である.(4)
集合X; Y
,写像f W X ! Y
とA " X
に対し,写像f j A W A ! Y
をf j A .x/ WD f .x/, x 2 A
により定める.このf j A
をf
のA
への制限という.(5)
空集合;
の上限,最大値,下限,最小値はsup ; WD max ; WD 0, inf ; WD min ; WD 1
と約束する.a; b2 Œ #1 ; 1 !
に対しa _ b WD max ¹ a; b º , a ^ b WD min ¹ a; b º , a C WD a _ 0, a
!WD # .a ^ 0/
と定め,Œ#1 ; 1 !-値関数に対しても同様の記号を
用いるものとする.本稿では関数と言えばŒ #1 ; 1 !-値関数のみを考えるものと
する.(6) d 2 N
とする.R d
には通常のEuclid
ノルムj $ j
を入れる.d% d
単位行列をI d
で表し,実行列M
に対しその転置行列をM
"で表す.(7) X
を位相空間とする.A" X
に対しそのX
における内部,閉包,境界をそ れぞれint X A, A X , @ X A
で表す.XのBorel " -加法族(X
の開集合全体を含むX
における" -加法族のうちで最小のもの)を B.X /
で表す.さらにC .X / WD ¹ f j f W X ! R , f
は連続º , f 2 C .X /
に対しsupp X Œf ! WD f
!1 . R n ¹ 0 º / X , k f k 1 WD sup x2X j f .x/ j
とおき,C
c.X / WD ¹ f 2 C .X / j supp X Œf !
はコンパクトº
とする.(8) .X; #/
を距離空間,x2 X
とする.r2 .0; 1 /
に対しB
!.x; r/ WD ¹ y 2 X j
#.x; y/ < r º , B
!.x; r/ WD ¹ y 2 X j #.x; y/ & r º
とおき,またA " X
に対 しdist
!.x; A/ WD inf y 2 A #.x; y/, diam
!A WD sup y;´ 2 A #.y; ´/
とおく.A" X
がdiam
!A < 1
を満たすとき,Aは#-有界であるという.
iv
第
2
章抵抗形式と有効抵抗距離
本章では,第
3
章でSierpi´nski gasket
上にLaplacian
を構成するための準備として,抵抗形式とそこから生じる対称正則
Dirichlet
形式の一般論を取り扱う.対称正則
Dirichlet
形式とは,Euclid空間R d
上の(適当な滑らかさを持つ)関数
u; v
に対して定義される双線型形式E .u; v/ WD
Z
Rd
hr u; r v i dx (2.1)
を抽象的に一般化した概念である.双線型形式
(2.1)
が部分積分の公式Z
Rd
hr u; r v i dx D # Z
Rd
v$udx (2.2)
により
R d
上の通常のLaplacian $
との自然な対応関係を持つように,対称正則Dirichlet
形式が与えられるとL 2 -内積を経由して Laplacian
に相当する(自己共役で,一般に有界とは限らない)作用素を自然に定めることができる.
また確率論的な対応物として,
R d
上にはよく知られているようにBrown
運 動(Wiener過程)BD . ¹ B t º t 2 Œ0; 1 / ; ¹P x º x 2R
d/
が定義され,その性質から(多少 の面倒な計算は必要になるが,比較的容易に)lim t # 0
E x Œu.B 2t /! # u.x/
t D $u.x/ (2.3)
が適当な滑らかさと可積分性を持つ関数
u
に対して成り立つことが証明される.関係式
(2.3)
の一般化として対称正則Dirichlet
形式に対しては,適当に良い性質を持つ確率過程
X D ¹ X t º
で,(2.3)に相当する関係式を(L2 -ノルム収束の意味
で)満たすものが存在することが知られている.さらに
Brown
運動B D ¹ B t º t 2 Œ0; 1 /
についてはその見本路Œ0; 1 / 3 t 7! B t .!/
は連続であるが,この性質は対応する
Dirichlet
形式の局所性supp
RdŒu! \ supp
RdŒv! D ; H)
Z
Rd
hr u; r v i dx D 0 (2.4)
により特徴付けられる.すなわち,対称正則Dirichlet
形式に対応する確率過程X D ¹ X t º
が連続な見本路を持つためには,元のDirichlet
形式が(2.4)
に相当する 局所性を持つという意味で局所的であることが必要十分である.(上記の対称正則Dirichlet
形式の一般論について詳細は[12, 11]
を参照のこと.)1
さて,我々の目標は
Sierpi´nski gasket
において自然なLaplacian
や熱方程式を 定式化することであった.Sierpi´nski gasketは容易に分かるように弧状連結であり,すると「熱は空間を連続的に伝わる」と考えるのが自然であるから,Laplacianに 対応する確率過程は連続な見本路を持つことが当然に要求される.そこで上記の 対称正則
Dirichlet
形式の一般論を考慮すると,Sierpi´nski gasket上に(非自明で)局所的な対称正則
Dirichlet
形式を構成することさえできれば,あとは[12, 11]
に ある一般論を適用することでLaplacian
やそれに(2.3)
の意味で対応する確率過程 も自動的に得られ,Laplacianの構成という我々の目標が達成される.そこで(非 自明で)局所的な対称正則Dirichlet
形式をSierpi´nski gasket
上に構成すればよ いことになる.その方法として,素朴には次のようなものが考えられる:
1. Sierpi´nski gasket K
を有限部分集合の増大列¹ V m º m 2N[¹ 0 º
により近似する.2.
各V m
上のDirichlet
形式E .m/ W R V
m% R V
m! R
をとる.3. ¹ .V m ; E .m/ / º m 2N[¹ 0 º
を適切に選んでその「m! 1
とした極限」を取ること により,K上の(非自明で自然な)対称正則Dirichlet
形式E
が得られる.このアイデアを実行するのは非常に難しいのが普通である1が,実は
Sierpi´nski
gasket
(に代表されるp.-c.f.
自己相似フラクタルと呼ばれる範疇のフラクタル)に対しては,ある(自己相似的な形で定義される)自然な
¹ V m º m 2N[¹ 0 º
を考えることで,比較的平易な議論により上記のアイデアを実行することができる.さらに各
E .m/
が極限の
Dirichlet
形式E
のV m
への「制限」(あるいは,E
が¹ .V m ; E .m/ / º m2N[¹0º
の「帰納極限」2)になっていることが分かり,そのことから
E
について色々と具 体的な計算を行うことが可能になる.以上のことを証明し,それによりSierpi´nski
gasket
上の局所的な対称正則Dirichlet
形式を得るのが第3
章の目標である.本章ではその準備として,主に
[28, Chapter 2]
に従い有限集合上のDirichlet
形 式の列の「帰納極限」についての一般論を展開する.具体的には,まず2.1
節で有 限集合上のDirichlet
形式3の性質を詳しく調べる.そこで見るように,有限集合V
において
Dirichlet
形式E
を考えることはV
に連結な電気回路の構造を導入することに他ならず,そこで自然に定まる
2
点x; y 2 V
の間の「有効抵抗」RE.x; y/
を考えると実は
R
EはV
上の距離関数になる.この「有効抵抗距離」の概念が本 章では(従ってp.-c.f.
自己相似フラクタル上のLaplacian
の構成と解析にも)極 めて重要な役割を果たす.続いて2.2
節で,有限集合V m
とその上のDirichlet
形 式E .m/
の列S D ¹ .V m ; E .m/ / º m 2N[¹ 0 º
の自然な「帰納極限」を取ることができる ための条件を与え,さらに極限として得られる可算集合S 1
m D 0 V m
上の双線型形 式E
S の基本性質を述べる.2.3節では,2.2節のE
S と同様の性質を有する,可 算とは限らない一般の集合上で定義された双線型形式を「抵抗形式」として定式 化しその一般論を展開する.特に,任意の抵抗形式が有限集合上のDirichlet
形式 の「帰納極限」として記述できること,有効抵抗距離に関する完備化を考えるこ とにより2.2
節のE
S から自然に非可算集合上の抵抗形式が得られること,及びGreen
関数が(抵抗形式の再生核として)自然に定まることを示す.1例えば
Sierpi´nski carpet
に対してはこれは楠岡-Zhou [39]によりなされたが,そこでの証明は複雑な計算による幾つもの精密な不等式評価の積み重ねであり,細部まで正確に理解するのはかなり骨が 折れる.以前筆者が
[39]
を読んだときには,途中の計算を追うことはできた(と思う)がその計算に 至る発想の由来は全然分からなかった.2「帰納極限」という語はここでは「極限値の『有限の段階への制限』が極限を取る前の値に一致 するという性質を満たすような極限概念」の意味に用いている.
3本章で取り扱う有限集合上の
Dirichlet
形式は,正確にはDirichlet
形式の一般論で言うところの「既約再帰的な」Dirichlet形式である.定義
2.2
とその直前の記述を参照のこと.記号
.
本章を通して以下の記号を用いる.(1) K
を空でない集合とする.A" K
に対し1 A K 2 R K D ¹ u j u W K ! Rº
を1 A K .x/ WD
´ 1 x 2 A;
0 x 2 K n A; (2.5)
で定める.誤解の恐れがない場合には,Kを省略してこれを単に
1 A
と書く.ま たx 2 K
に対し1 K
¹x º ; 1
¹x º
をそれぞれ単に1 K x ; 1 x
と書く.(2)
空でない有限集合V
に対し,R V
上の内積h$ ; $i V
を次で定める:h u; v i V WD X
x 2 V
u.x/v.x/; u; v 2 R V : (2.6) (3) U; V
を空でない有限集合とする.線型写像L W R V ! R U
に対しL xy WD .L1 V y /.x/
により行列.L xy / x 2 U; y 2 V 2 R U
$V
を定める.容易に分かるように,L 7!
.L xy / x 2 U; y 2 V
は線型写像L W R V ! R U
の全体から行列.L xy / x 2 U; y 2 V 2 R U
$V
の全体への線型同型であり,以下この線型同型により線型写像L W R V ! R U
と行列
.L xy / x 2 U; y 2 V D ! .L1 y V /.x/ "
x2U; y2V 2 R U
$V
を同一視する.さらに
U D V
のとき,線型写像L W R V ! R V
に対し双線型形式E L W R V % R V ! R
をE L .u; v/ WD h u; # Lv i V
で定める.Lが内積h$ ; $i V
について対称(すなわち双線型形式
E L
が対称)であるためにはL
に対応する行列.L xy / x;y 2 V
が対称行列であることが必要十分であることを注意しておく.
2.1
有限集合上の抵抗形式と有効抵抗距離本節では有限集合上の
Dirichlet
形式と対応する有効抵抗距離の基本性質を取り扱 う.まず,次の基本的な事実を思い出しておく.命題
2.1. F
をR
上の線型空間とし,E W F % F ! R
をF
上の非負定値対称双線 型形式とする.このとき任意のu; v 2 F
に対し(Cauchy-Schwarzの不等式)
jE .u; v/ j & E .u; u/ 1=2 E .v; v/ 1=2 ; (2.7)
(3角不等式)
E .u C v; u C v/ 1=2 & E .u; u/ 1=2 C E .v; v/ 1=2 : (2.8)
証明. u; v 2 F , t 2 R
とする.E
は非負定値対称双線型なので0 & E .u C t v; u C t v/ D E .u; u/ C 2t E .u; v/ C t 2 E .v; v/: (2.9) E .v; v/ D 0
のときは,(2.9)より任意のt 2 .0; 1 /
に対しjE .u; v/ j & t
!1E .u; u/
であり,従って
E .u; v/ D 0
となり(2.7)
が成り立つ.E .v; v/ > 0
のときは,(2.9) でt WD #E .u; v/= E .v; v/
とおくことで0 & E .u; u/ E .v; v/ # E .u; v/ 2
となり(2.7)
を得る.さらに(2.9)
でt D 1
として(2.7)
を用いれば直ちに(2.8)
が従う.有限集合上の(既約再帰的な)Dirichlet形式は次で定義される.なお,有限集 合に対しては次の定義は後に
2.3
節で与える抵抗形式の定義(定義2.26)と一致
するため,用語の統一のため最初からこれを抵抗形式と呼ぶことにする.定義
2.2 (有限集合上の抵抗形式). V
を空でない有限集合とする.R V
上の非負定値対称双線型形式
E W R V % R V ! R
が次の2
条件を満たすとき,E
はV
上の抵 抗形式(resistance form)
であるという:(RF1)
fin¹ u 2 R V j E .u; u/ D 0 º D R 1 V .
(RF2)
fin(Markov性)任意のu 2 R V
に対しE .u C ^ 1; u C ^ 1/ & E .u; u/.
さらに
RF.V / WD ¹E j E
はV
上の抵抗形式º
とおく.定義
2.3 (有限集合上の Laplacian). V
を空でない有限集合とする.R V
上の対称 線型写像L D .L xy / x;y 2 V W R V ! R V
が次の2
条件を満たすとき,LはV
上のLaplacian
であるという:(LA1) ¹ u 2 R V j Lu D 0 º D R1 V .
(LA2) x 6D y
なる任意のx; y 2 V
に対しL xy ' 0.
さらに
LA.V / WD ¹ L j L
はV
上のLaplacian º
とおく.定義
2.4 (有限集合上の抵抗網構造). V
を空でない有限集合とする.次の2
条件を満たす
r D .r xy / x;y 2 V; x 6D y " .0; 1 !
をV
上の抵抗網構造(resistor network structure)
という:(RN1) x 6D y
なる任意のx; y 2 V
に対しr xy D r yx .
(RN2) x 6D y
なる任意のx; y 2 V
に対し,n2 N
と¹ x k º n k D 0 " V
が存在して,x 0 D x, x n D y,
かつ任意のk 2 ¹ 1; : : : ; n º
に対しx k
!1 6D x k
かつr x
k!1x
k< 1 .
さらにRN.V / WD ¹ r j r
はV
上の抵抗網構造º
とおく.次の命題に述べるように,RF.V /;
LA.V /; RN.V /
の間には自然な全単射が存 在し,これによりE 2 RF.V /
は対応するL
E2 LA.V /
及びr L
E2 RN.V /
と自然 に同一視される.命題
2.5. V
を空でない有限集合とする.(1) L 2 LA.V /
に対しE L 2 RF.V /
であり,LA.V /3 L 7! E L 2 RF.V /
は全単 射でその逆写像はRF.V / 3 E 7! L
EWD . #E .1 x ; 1 y // x;y2V
で与えられる.(2) L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /
に対しr L WD .L
!xy 1 / x;y 2 V; x 6D y " .0; 1 ! (0
!1 WD 1 )
とおくとr L 2 RN.V /.
またr D .r xy / x;y 2 V; x 6D y 2 RN.V /
に対しL
rD .L xy / x;y 2 V 2 R V
$V
をx 6D y
のときL xy WD r xy
!1 , x D y
のときL xx WD
# P
´ 2 V n¹ x º r x´
!1 ( 1
!1 WD 0)
により定めるとL
r2 LA.V /.
さらにLA.V / 3 L 7!
r L 2 RN.V /
とRN.V / 3 r 7! L
r2 LA.V /
は互いに逆の全単射である.証明.
(1) L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /
とし,u2 R V
とする.(LA1)とL
の対称性 より任意のx 2 V
に対しP
y 2 V L xy D P
y 2 V L yx D 0
であるので,(LA2)よりE L .u; u/ D # X
x;y 2 V
L xy u.x/u.y/ D 1 2
X
x;y 2 V
L xy .u.x/ # u.y// 2 ' 0: (2.10)
するとE L
はR V
上の非負定値対称双線型形式となるので,E L .u; u/ D 0
とする と(2.7)
によりh Lu; Lu i V D E L . # Lu; u/ D 0,
従ってLu D 0
となり,(LA1)よりu 2 R 1 V .
逆にu 2 R 1 V
のときLu D 0
よりE L .u; u/ D h u; # Lu i V D 0.
さらに 任意のx; y 2 V
に対しj .u C ^ 1/.x/ # .u C ^ 1/.y/ j & j u.x/ # u.y/ j
であるので,(2.10)
よりE L .u C ^ 1; u C ^ 1/ & E L .u; u/.
以上からE L 2 RF.V /.
また明らかにL
ELD . #E L .1 x ; 1 y // x;y 2 V D L
であり,特にLA.V / 3 L 7! E L 2 RF.V /
は単射 である.次に
E 2 RF.V /
とし,LED . #E .1 x ; 1 y // x;y 2 V DW .L xy / x;y 2 V
とおく.明ら かにE D E L
E であるので,前段落を考慮するとL
E2 LA.V /
を示せば(1)
の証 明が完了する.E
の対称性からL
Eは対称である.u2 R 1 V
ならば(RF1)
finよりE .u; u/ D 0,
従って(2.7)
よりh L
Eu; L
Eu i V D #E .L
Eu; u/ D 0
となり,よってL
Eu D 0.
逆にu 2 R V , L
Eu D 0
ならばE .u; u/ D h u; # L
Eu i V D 0
となり(RF1)
finより
u 2 R 1 V .
次に(LA2)
を示すためにx; y 2 V , x 6D y
とする."2 .0; 1 /
としu WD 1 x # "1 y 2 R V
とおくと,uC ^ 1 D 1 x
であるので(RF2)
finにより# L xx C 2"L xy # " 2 L yy D E .u; u/ ' E .u C ^ 1; u C ^ 1/ D # L xx ;
従って
L xy ' ."=2/L yy
となり,"2 .0; 1 /
は任意であるのでL xy ' 0.
よってL
E が(LA2)
を満たすことが分かり,LE2 LA.V /.
(2) L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /
とする.Lは対称なのでr L D .L
!xy 1 / x;y 2 V; x 6D y DW .r xy / x;y 2 V; x 6D y
は(RN1)
を満たす.(RN2)を示すために,x2 V
としV L x WD ¹ x º [
² y 2 V ˇˇ
ˇˇ n 2 N
と¹ x k º n k D 0 " V
が存在して,x 0 D x, x n D y,
かつ 任意のk 2 ¹ 1; : : : ; n º
に対しx k
!1 6D x k
かつr x
k!1x
k< 1
³ (2.11)
とおく.するとV L x
の定義(2.11)
からy 2 V L x , ´ 2 V n V L x
に対しr y´ D r ´y D 1 ,
すなわちL y´ D L ´y D 0
でなければならず,このときL1 V D 0
よりL1 V
LxD 0
が得られる.従って(LA1)
より1 V
Lx2 R 1 V
であり,1V
Lx.x/ D 1
より1 V
LxD 1 V ,
すなわちV L x D V .
これは(RN2)
を意味し,よってr L 2 RN.V /
が従う.逆に
r D .r xy / x;y 2 V; x 6D y 2 RN.V /
としL
rD .L xy / x;y2V 2 R V
$V
を主張の ように定める.Lr はその定義より(LA2)
とL
r1 V D 0
を満たし,(RN1)より対 称である.次にu 2 R V
はL
ru D 0
を満たすとし,u2 R1 V
を示すためにx 2 V
をu.x/ D max ´ 2 V u.´/
となるように取る.y2 V n ¹ x º
とし,(RN2)のようにn 2 N
と¹ x k º n k D 0 " V
を取る.このときu.x 0 / D u.x/ D max ´ 2 V u.´/
に注意し,k 2 ¹ 1; : : : ; n º , u.x k!1 / D max ´ 2 V u.´/
と仮定すると,rx
k!1x
k2 .0; 1 /
であり0 D .L
ru/.x k
!1 / D X
´2V n¹x
k!1º
r x
!1k!1´ .u.´/ # u.x k
!1 // & u.x k / # u.x k
!1 / r x
k!1x
k& 0
なのでu.x k / D u.x k
!1 / D max ´ 2 V u.´/.
従ってk
についての数学的帰納法によ りu.y/ D u.x n / D u.x/
となり,y2 V n ¹ x º
は任意なのでu D u.x/ 1 V 2 R1 V .
よってL
r2 LA.V /
である.最後に,容易に確認できるように任意の
L 2 LA.V /
に対しL
rLD L,
また 任意のr 2 RN.V /
に対しr L
rD r
であるので,LA.V /3 L 7! r L 2 RN.V /
とRN.V / 3 r 7! L
r2 LA.V /
は互いに逆の全単射である.注意
2.6. V
を空でない有限集合,E 2 RF.V /
とし,LD .L xy / x;y 2 V WD L
E2 LA.V /, r D .r xy / x;y 2 V; x 6D y WD r L
E2 RN.V /
をそれぞれ命題2.5
の意味でE
に対 応するV
上のLaplacian
及び抵抗網構造とする.このときx; y 2 V , x 6D y
に対 し,rxy < 1
ならx
とy
は抵抗値r xy
の抵抗器により接続されており,rxy D 1
ならx
とy
は抵抗器により直接接続されてはいないと考えることにより,V には 抵抗器のネットワーク構造が備わっていると見なすことができる.このとき(2.10)
よりu 2 R V
に対しE .u; u/ D 1 2
X
x;y 2 V; x 6D y r
xy< 1
.u.x/ # u.y// 2
r xy (2.12)
であるが,(2.12)の右辺は
「抵抗網
.V; r/
に電位u D .u.x// x 2 V
を与えたときのV
上での総消費電力」に他ならない.RF.V /の元を
V
上の抵抗形式と呼ぶのはこのことに由来する.次に,抵抗形式の部分集合への「制限」について考察する.
補題
2.7. V
を有限集合とし,U¤ V , U 6D ;
とする.L2 LA.V /
とし,TD T U 2 R U
$U , J D J U 2 R .V n U /
$U , X D X U 2 R .V n U /
$.V n U /
を,LのU , U n V
の各成分への分割L D
% T J
"J X
&
D
% T U J U
"J U X U
&
(2.13)
により定める.このとき
X
は負定値対称行列であり,また任意のu 2 R V
に対しE L .u; u/ D E X .u j V n U C X
!1 J.u j U /; u j V n U C X
!1 J.u j U //
C E T
!J
"X
!1J .u j U ; u j U /: (2.14)
証明
. L
は対称なので,(2.13)よりX
も対称である.v2 R V n U
とし,v Q 2 R V
をv Q j V n U WD v, v Q j U WD 0
により定めると,E X .v; v/ D E L . v; Q v/ Q ' 0
なのでE X
は 非負定値であり,さらにE X .v; v/ D 0
ならば(RF1)
finよりv Q 2 R1 V
となるのでQ
v j U D 0 (U 6D ; )
によりv Q D 0,
よってv D 0
である.すなわちE X
は正定値であ り,従ってX
は負定値である(のでX
!1が存在する).最後にu 2 R V
に対しE X .u j V nU C X
!1 J.u j U /; u j V nU C X
!1 J.u j U //
D h u j V n U C X
!1 J.u j U /; # X.u j V n U / # J.u j U / i V n U
D h u j V n U ; # X.u j V n U / i V n U C 2 h u j V n U ; # J.u j U / i V n U C h u j U ; # J
"X
!1 J.u j U / i U D E L .u; u/ C h u j U ; T .u j U / i U C h u j U ; # J
"X
!1 J.u j U / i U
D E L .u; u/ # E T
!J
"X
!1J .u j U ; u j U /
となるので,(2.14)を得る.定理
2.8. V
を有限集合とし,U¤ V , U 6D ;
とする.L2 LA.V /
とし,T2 R U
$U , J 2 R .V n U /
$U , X 2 R .V n U /
$.V n U /
を(2.13)
で定める.u2 R U
とし,h U .u/ D h L U .u/ 2 R V
をh U .u/ j U WD u, h U .u/ j V n U WD # X
!1 J u
で定める.(1) h U .u/
は最小値min v 2R
V; v j
UD u E L .v; v/
を達成する唯1
つのv 2 R V
である.(2) ŒL! U WD T # J
"X
!1 J
とおくとŒL! U 2 LA.U /
でありE ŒL"
U.u; u/ D E L .h U .u/; h U .u// D min
v2R
V; vj
UDu E L .v; v/: (2.15)
証明. v 2 R V , v j U D u
とすると補題2.7
よりX
は負定値であるので,(2.14)からE L .v; v/ D E X .v j V n U C X
!1 J u; v j V n U C X
!1 J u/ C E ŒL"
U.u; u/ ' E ŒL"
U.u; u/
であり,さらに上の不等式における等号成立は
v j V nU D # X
!1 J u D h U .u/ j V nU ,
すなわちv D h U .u/
と同値である.これで(1)
と(2.15)
が示せた.次に
E ŒL"
U2 RF.U /
を示そう.Lの対称性と(2.13)
からŒL! U
は対称であり,(2.15)
よりE ŒL"
Uは対称で非負定値である.さらに(2.15)
により,E ŒL"
U. 1 U ; 1 U / D 0
であり,またu 2 R U , E ŒL"
U.u; u/ D 0
とするとE L .h U .u/; h U .u// D 0
なので(RF1)
finよりh U .u/ 2 R 1 V ,
従ってu D h U .u/ j U 2 R 1 U
である.最後にu 2 R U
に対し,.hU .u/ C ^ 1/ j U D u C ^ 1
であるので(2.15)
と(RF2)
finによりE ŒL"
U.u; u/ ' E L .h U .u/ C ^ 1; h U .u/ C ^ 1/
' min
v 2R
V; v j
UD u
C^ 1 E L .v; v/ D E ŒL"
U.u C ^ 1; u C ^ 1/:
従って
E ŒL"
U2 RF.U /
であるので,命題2.5-(1)
よりŒL! U D L
EŒL!U
2 LA.U /.
注意
2.9.
定理2.8
の状況を仮定する.(1) h U .u/
はその定義から,Lに関するV n U
上でのLaplace
方程式のDirichlet
境界値問題
´
Lv j V nU D 0
v j U D u (2.16)
の唯
1
つの解v 2 R V
である.Lvj V n U D 0
はv
が「Lに関してV n U
上で調和」であることを意味しており,このことから
h U .u/
をu 2 R U
の「Lに関する(あ るいはE L
に関する)V 上への調和拡張(harmonic extension)」と呼ぶことがある.
(2.16)
の一意解h U .u/
が定理2.8-(1)
の最小値を達成する唯1
つのv 2 R V
に もなっていることに注意されたい.つまり,Lに対応する双線型形式E L
の最小 化問題min v 2R
V; v j
UD u E L .v; v/
の解を求めることは,Lに関するLaplace
方程式の
Dirichlet
境界値問題(2.16)
の解を求めることと同値なのである.同様の事実はEuclid
空間R d
上の通常のLaplacian(あるいはより一般に楕円型偏微分作用素)
に対してはよく知られたことであるが,定理
2.8
はその「離散版」である.(2)
定理2.8-(2)
のŒL! U
が「L
2 LA.V /
のU ¤ V
への抵抗網としての制限」を表している.この意味を説明するために,
v WD h U .u/
に対する等式Lv j V nU D 0
を「電気回路」的に解釈してみる.rD .r xy / x;y2V; x6Dy WD r L 2 RN.V /
とおくと き,.Lv/.x/をr
を用いて書き換えると.Lv/.x/ D X
y 2 V n¹ x º ; r
xy< 1
v.y/ # v.x/
r xy (2.17)
となるが,vを
V
の各点における電位と解釈すれば,(2.17)の右辺は電位v
の下 での「xにおける総流入電流量と総流出電流量の差」を表していることになる.従って
Lv j V n U D 0
とは「各
x 2 V n U
において総流入電流量と総流出電流量が釣り合っている」,言い換えると
「各
x 2 V n U
において電流の外部からの流入・外部への流出が起きていない」ということを表している.中学・高等学校の理科で学んだのは,このような状況 で回路の総消費電力を求めるためには,V
n U
の点を「ないもの」と見なしてU
における「合成抵抗」を求め,その「合成抵抗」とU
の各点の電位u D v j U
か ら通常の方法で総消費電力を計算すればよい,ということであった.定理2.8-(2)
のE ŒL"
U.u; u/
がまさにこの「合成抵抗を用いた総消費電力の計算」であり,対応する
U
上のLaplacian ŒL! U
が「合成抵抗」を表している.つまりŒL! U
は「抵抗網
L
においてV n U
の点を『ないもの』と見なした『合成抵抗』網」を表しており,この意味で
ŒL! U
は「LのU ¤ V
への抵抗網としての自然な制限」と考えられるのである.
「調和拡張作用素」h
U D h L U W R U ! R V
と「制限」ŒL!U
についてはさら に次が成り立つ.空でない有限集合V
とL 2 LA.V /
に対しh V D h L V WD id
RV, ŒL! V WD L
と定める.このとき定理2.8
の結論は全てU D V
の場合も含めて成り 立つことに注意する.命題
2.10. V
を有限集合,U; W はV
の部分集合で; 6D W " U
を満たすとし,L 2 LA.V /
とする.このときŒŒL! U ! W D ŒL! W
かつh L U ı h ŒL" W
UD h L W .
特に任意 のw 2 R W
に対しh ŒL" W
U.w/ D h L W .w/ j U .
証明
. w 2 R W
とする.hL W .w/ j W D h L U ı h ŒL" W
U.w/ j W D w
であるので(2.15)
よりE ŒL"
W.w; w/ D E L !
h L W .w/; h L W .w/ "
' min
v 2R
V; v j
UD h
LW.w/ j
UE L .v; v/ D E ŒL"
U!
h L W .w/ j U ; h L W .w/ j U "
' min
u2R
U; uj
WDw E ŒL"
U.u; u/ D E ŒŒL"
U"W.w; w/ D E ŒL"
U! h ŒL" W
U.w/; h ŒL" W
U.w/ "
D E L !
h L U ı h ŒL" W
U.w/; h L U ı h ŒL" W
U.w/ "
' min
v 2R
V; v j
WD w E L .v; v/ D E ŒL"
W.w; w/:
よって上記の計算中の各辺は全て等しく,そこで定理
2.8-(1)
のh L W .w/
の一意性 の主張からh L U ı h ŒL" W
U.w/ D h L W .w/
すなわちh L U ı h ŒL" W
UD h L W
が得られ,特 にこの等式の両辺のU
への制限を考えることによりh ŒL" W
U.w/ D h L W .w/ j U
が従 う.またE ŒŒL"
U"W.w; w/ D E ŒL"
W.w; w/
とE ŒŒL"
U"W; E ŒL"
W の対称双線型性からE ŒŒL"
U"WD E ŒL"
W となり,従ってŒŒL! U ! W D L
EŒŒL!U!WD L
EŒL!WD ŒL! W .
演習
2.1 (直列回路の合成抵抗). (1) V D ¹ q 0 ; q 1 ; q 2 º
を#V D 3
を満たす集合,R 1 ; R 2 2 .0; 1 /
とし,L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /
をL q
0q
1WD R
!1 1 , L q
1q
2WD R 2
!1 , L q
0q
2WD 0
で定めるとき,ŒL!¹q
0;q
2º D .R 1 C R 2 /
!1 !
!1 1
1
!1
"
であることを示せ.(2) n 2 N , V D ¹ q 0 ; q 1 ; : : : ; q n º
を#V D n C 1
を満たす集合,¹ R j º j n D 1 " .0; 1 /
とし,LD .L xy / x;y2V 2 LA.V /
をL q
jq
kWD
´ R j
!_ 1 k . j j # k j D 1/;
0 . j j # k j ' 2/; j; k 2 ¹ 0; 1; : : : ; n º ; j 6D k
により定める.このときŒL!
¹q
0;q
nº D !P n
j D 1 R j "
!1 !
!1 1
1
!1
"
であることを示せ.q ✉ 0
q ✉ 1
R
!1 1 ✉ q 2
R
!2 1 ✉
q n
!1
q ✉ n
R n
!1
$ $ $ .V; L/
q ✉ 0
q ✉ n
!P n
j D 1 R j "
!1
. ¹ q 0 ; q n º ; ŒL!
¹q
0;q
nº /
図2.1:
直列回路の合成抵抗(演習2.1)
以下に
L 2 LA.V /
に関する調和関数の基本性質を挙げる.注意2.9-(1)
同様,これらの事実も
R d
上の通常のLaplacian
に対してはよく知られたものである.定理
2.11 (強最大値の原理). V
を有限集合とし,U¤ V , U 6D ;
とする.LD
.L xy / x;y2V 2 LA.V /, x 2 V n U
とし,WL x " V n U , U L x " U
を次で定める:W L x WD ¹ x º [
²
y 2 V n U ˇˇ
ˇˇ n 2 N
と¹ x k º n k D 0 " V n U
が存在して,x0 D x, x n D y,
任意のk 2 ¹ 1; : : : ; n º
に対しL x
k!1x
k> 0
³
; U L x WD ¹ y 2 U j
ある´ 2 W L x
に対しL y´ > 0 º : (2.18) (1) U L x 6D ;
であり,任意のy 2 W L x
に対し¹ ´ 2 V j L y´ > 0 º " W L x [ U L x . (2) u 2 R W
Lx[ U
Lx とし,(1)より.Lu/.y/ D P
´ 2 V; L
y´>0 L y´ .u.´/ # u.y//
がy 2 W L x
に対し自然に定義されることに注意してLu j W
LxD 0
と仮定する.このときq min 2 U
Lxu.q/ & min
q 2 W
Lxu.q/ & max
q 2 W
Lxu.q/ & max
q 2 U
Lxu.q/: (2.19)
さらに,maxq 2 W
Lxu.q/ D max q 2 U
Lxu.q/
またはmin q 2 W
Lxu.q/ D min q 2 U
Lxu.q/
で あるためにはu 2 R 1 W
Lx[ U
Lx であることが必要十分である.証明
.
まずW L x
の定義から容易に分かるように,y; ´2 V n U
に対し´ 2 W L y
の ときy ( .V n U;L/ ´
と定めると( .V n U;L/
はV n U
上の同値関係であることを注意 しておく.特にy 2 V n U
に対しW L y
は( .V n U;L/
に関するy
の同値類であるの で,WL x \ W L y 6D ;
ならばW L x D W L y
であり,従ってまたU L x D U L y
である.(1) y 2 U
を取る.(RN2)よりn 2 N
と¹ x k º n k D 0 " V
が存在してx 0 D x, x n D y
かつ任意のk 2 ¹ 1; : : : ; n º
に対しL x
k!1x
k> 0. l WD min ¹ k 2 ¹ 1; : : : ; n º j x k 2 U º
とおくと¹ x k º l kD0
!1 " V n U , x l 2 U
であるので¹ x k º l kD0
!1 " W L x , x l 2 U L x 6D ;.
次に
y 2 W L x
とし´ 2 V , L y´ > 0
とすると(2.18)
により,´ 2 U
ならば´ 2 U L x
であり,´ 2 V n U
ならば´2 W L y D W L x
となるので¹ ´ 2 V j L y´ > 0 º " W L x [ U L x . (2) u 2 R1 W
Lx[ U
Lx ならば(2.19)
の4
辺は全て等しい.また,maxq 2 W
Lxu.q/ <
max q 2 W
Lx[ U
Lxu.q/
ならばmax q 2 W
Lxu.q/ < max q 2 W
Lx[ U
Lxu.q/ D max q 2 U
Lxu.q/.
あとは
max q 2 W
Lxu.q/ D max q 2 W
Lx[ U
Lxu.q/
と仮定しu 2 R1 W
Lx[ U
Lx を導けば,max q 2 W
Lxu.q/ & max q 2 U
Lxu.q/
及びこの等号の成立がu 2 R 1 W
Lx[ U
Lx の場合に限 ることが分かり,minq 2 U
Lxu.q/ & min q 2 W
Lxu.q/
に対する同様の議論と合わせて 証明が完了する.そこでmax q2W
Lxu.q/ D max q2W
Lx[U
Lxu.q/
と仮定し,u.x"/ D max q 2 W
Lx[ U
Lxu.q/
を満たすx
"2 W L x
を取る.このときW L x
"D W L x
なので,y 2 .W L x [ U L x / n ¹ x
"º
とすると,n2 N
と¹ x k º n k
!D 1 0 " V n U
が存在して,x0 D x
",
かつx n WD y
とおくと任意のk 2 ¹ 1; : : : ; n º
に対しL x
k!1x
k> 0. u.x 0 / D u.x
"/ D max q 2 W
Lx[ U
Lxu.q/
に注意して,k2 ¹ 1; : : : ; n º
としx k
!1 2 W L x [ U L x
かつ
u.x k
!1 / D u.x
"/
と仮定すると,xk
!1 2 V n U
よりx k
!1 2 W L x
であり,すると
(1)
よりx k 2 ¹ ´ 2 V j L x
k!1´ > 0 º " W L x [ U L x
であるので0 D .Lu/.x k
!1 / D X
´ 2 V; L
xk!1 ´>0 L x
k!1´ .u.´/ # u.x k
!1 //
& L x
k!1x
k.u.x k / # u.x
"// & 0
となり,よって
u.x k / D u.x
"/.
従ってk
に関する数学的帰納法によりu.y/ D u.x n / D u.x
"/
となり,y2 .W L x [ U L x / n ¹ x
"º
は任意なのでu 2 R1 W
Lx[ U
Lx.
系
2.12 (楕円型 Harnack
不等式).V
を有限集合とし,U¤ V , U 6D ;
とする.L D .L xy / x;y 2 V 2 LA.V /, x 2 V n U
としW L x ; U L x
を(2.18)
で定める.このときc 2 .0; 1 /
が存在して,u' 0
とLu j W
LxD 0
を満たす任意のu 2 R W
Lx[ U
Lxに対しc max
q 2 W
Lx[ U
Lxu.q/ & min
q 2 W
Lxu.q/: (2.20)
証明
. A WD ®
u 2 R W
Lx[ U
Lxˇˇ u ' 0, Lu j W
LxD 0, max q 2 W
Lx[ U
Lxu.q/ D 1 ¯
とおく.1 W
Lx[ U
Lx2 A
よりA 6D ;
であり,定理2.11
よりmin q 2 W
Lxu.q/ > 0
が任意のu 2 A
に対して成り立つ.そこでc WD inf ®
min q 2 W
Lxu.q/ ˇˇ u 2 A ¯
とおくと,A
はR W
Lx[U
Lx の空でないコンパクト部分集合でA 3 u 7! min q 2 W
Lxu.q/ 2 R
は 連続なのでc D min ®
min q 2 W
Lxu.q/ ˇˇ u 2 A ¯
2 .0; 1 /
となり,するとu ' 0
とLu j W
LxD 0
を満たすu 2 R W
Lx[ U
Lxに対しc
の定義より容易に(2.20)
を得る.次に定義する有効抵抗距離の概念は抵抗形式の理論の根幹に位置しており,極 めて重要である.
定義
2.13 (有限集合上の有効抵抗距離). V
を空でない有限集合,L2 LA.V /
とする.R
L W V % V ! Œ0; 1 /
をR L .x; y/ WD !
min ¹E L .u; u/ j u 2 R V , u.x/ D 1, u.y/ D 0 º "
!1
(2.21)
D max
² j u.x/ # u.y/ j 2
E L .u; u/
ˇˇ ˇˇ u 2 R V n R 1 V
³
(2.22)
(ただし
min ; WD 1 , 1
!1 WD 0, max ; WD 0)で定める.R L
をL
に対応する有効 抵抗距離(effective resistance metric,
あるいは単にresistance metric)
という.x D y
のときは(2.21), (2.22)
の右辺は明らかに共に0
となる.x6D y
のとき,(2.21)
の最小値が存在して正であることは定理2.8
から分かり,(2.22)の最大値が存在して
(2.21)
の右辺に等しいことは,u2 R V n R 1 V
に対しu.x/ 6D u.y/
ならばj u.x/ # u.y/ j 2
E L .u; u/ D E L
% u # u.y/
u.x/ # u.y/ ; u # u.y/
u.x/ # u.y/
&
!1
& R L .x; y/ (2.23)
であり,さらに(2.21)
の最小値を達成するu 2 R V
に対して(2.23)
の不等式で等 号が成立することから分かる.すると特に(2.22)
から次の不等式が得られる.命題
2.14. V
を空でない有限集合,L2 LA.V /
とするとき,任意のu 2 R V
と任 意のx; y 2 V
に対しj u.x/ # u.y/ j 2 & R L .x; y/ E L .u; u/: (2.24)
注意2.15. x; y 2 V , x 6D y
のとき,定理2.8-(2)
から次が成り立つことが分かる:ŒL!
¹x;y º D 1 R L .x; y/
% # 1 1
1 # 1
&
: (2.25)
注意
2.9-(2)
によればŒL!
¹x;y º
は「.V; L/を2
点x; y
間の単一の抵抗器と見なした『合成抵抗』網」を表していると解釈することができるが,(2.25)はその「合成抵 抗」網が
2
点x; y
を抵抗値R L .x; y/
の抵抗器で接続して得られる抵抗網である ことを示している.RL .x; y/
を「有効抵抗」と呼ぶのはこの解釈に基づいている.その名称が示唆する通り,有効抵抗距離
R L
は実は距離関数になっている.さらに
R L
によってLaplacian L
は一意的に定まる.これを次に定理として述べる.定理
2.16. V
を空でない有限集合とする.(1) L 2 LA.V /
とするとき,RL
はV
上の距離関数である.(2) L 1 ; L 2 2 LA.V /
がR L
1D R L
2を満たすならばL 1 D L 2
である.定理
2.16
の証明の前に,定理2.16-(2)
の重要な系を1
つ述べておく.定義
2.17. k D 1; 2
に対しV k
を空でない有限集合,L k 2 LA.V k /
とする.V 1 " V 2
かつ
L 1 D ŒL 2 ! V
1 であるとき¹ .V 1 ; L 1 /; .V 2 ; L 2 / º
は適合している(compatible)
と いい,この性質が成り立つことを.V 1 ; L 1 / & .V 2 ; L 2 /
と書き表す.系
2.18. k D 1; 2
に対しV k
を空でない有限集合,Lk 2 LA.V k /
とする.このと き,.V1 ; L 1 / & .V 2 ; L 2 /
であるためにはV 1 " V 2
かつR L
1D R L
2j V
1$V
1 であるこ とが必要十分である.証明.
.V 1 ; L 1 / & .V 2 ; L 2 /
ならば,V1 " V 2
であり,またx 6D y
なる任意のx; y 2 V 1
に対し命題2.10
よりŒL 1 !
¹x;y º D ŒŒL 2 ! V
1!
¹x;y º D ŒL 2 !
¹x;y º ,
従って(2.25)
よりR L
1.x; y/ D R L
2.x; y/
となるのでR L
1D R L
2j V
1$V
1 である.逆に