保健体育
「スリーアップ」を取り入れた体育学習の導入に関する実践
―「できる」・「わかる」・「かかわる」が実感できる授業を目指して―
藤田 範子
研究主題に寄せて はじめに
分の授業内容の組み立てとして、どの教科にお いても「導入」がある。生徒に問いかけることによ り思考を促したり,また本時の内容に興味関心を持 たせるために大切にしたい重要な時間である。体育 科の授業に置き換えると,導入の時間の大半を準備 運動に費やしている。準備運動には「安全な運動実 施」「運動パフォーマンスの向上」を目的として,
体操が実施する教員が多いが,その方法はどの単元 においても画一的である。
令和 年度より,いよいよ新学習指導要領 が全面実施されることとなる。新学習指導要領では,
予測困難な社会の変化に主体的に関わり,感受性を 豊かに働かせながら,どのような未来を創っていく のか,どのように社会や人生をよりよいものにして いくのかという目的を自ら考え,自らの可能性を発 揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力 を身に付けられるようにすることが求められてい る。
こうした力はまったく新しい力ということではな く,「生きる力」を改めて捉え直し,より具体化さ れたものである。保健体育科の改訂においては,筆 者は特に「体つくり運動」に着目した。体つくり運 動については,体を動かす楽しさや心地よさを味わ
わせるとともに健康や体力の状況に応じて体力を高 める必要性を認識させ,学校の教育活動全体や実生 活で生かすことができるよう改善が求められてい る。
具体的には,体ほぐしの運動で,第学年及び第 学年では「手軽な運動を行い,心と体の関係に気付 き,仲間と積極的に交流すること」と示した。第学 年では,「手軽な運動を行い,心と体は互いに影響 し変化することや心身の状態に気付き,仲間と自主 的に関わり合うこと」を内容として示した。どちら においても新たに示されているのは,「仲間との関 わり」に関することである。また,新学習指導要領 では「主体的・対話的で深い学び」が強調されるよ うになり,「何を学ぶか」だけでなく,「どのように 学ぶか」を問題にするようになった。
研究の目的
「スリーアップ」は,中村なおみ他が,ダ ンス領域では心身のほぐしを重視したダンスウォー ムアップが主体的な学びに向かう導入として成果を 上げており,中村が中学校の教員であった時に,ダ ンス以外の種目でもグループ授業で活動するチー ムやグループを中心に音楽を用いて準備運動を行 っていた。ウォームアップだけでなく,スキルアッ プ・モチベーションアップにもつながることを意図 し,音楽を用い,グループで,学習内容に応じて構 本論の要旨
筆者のこれまでの研究では,競技特性と運動構造を理解し,どのように体を動かせばよいのかが「わか る」ことと,その知識を実践し,課題設定した運動が「できる」ことを実感させること、そして学習活動 の中で,運動が得意な生徒と苦手な生徒が積極的に「かかわる」ことで,双方の学びの姿勢やパフォーマ ンスにどのような変化が現れるのかを検証してきた。
新学習指導要領では,生徒の主体的な学びの場を保証する方針がより強く打ち出されているが,体育授 業の準備運動においては,年代の調査で,すでに「形骸化」「紋切り型」「一斉指導型」と指摘され ているにもかかわらず,過去の形式のみ受け継がれている傾向があり,「主体的な学び」へと向かう授業 の導入となる実践の検討が必要と考える。
そこで本研究は,導入の分間にこれまでの一斉指導型の準備運動に代わって「スリーアップ」の 考え方を取り入れる。それにより,形骸化されている準備運動から,主活動を行うための準備へ質的な変 換をを図る。さらに,生徒同士の関わりに着目して内容を構成し,運動の得意な生徒と苦手な生徒が協働 して取り組むことで,互いの運動感覚を磨き,力が高まることを実証したい。
■キーワード 準備運動,導入,スリーアップ,主体的,対話,協働
保健体育
「スリーアップ」を取り入れた体育学習の導入に関する実践
―「できる」・「わかる」・「かかわる」が実感できる授業を目指して―
藤田 範子
研究主題に寄せて はじめに
分の授業内容の組み立てとして、どの教科にお いても「導入」がある。生徒に問いかけることによ り思考を促したり,また本時の内容に興味関心を持 たせるために大切にしたい重要な時間である。体育 科の授業に置き換えると,導入の時間の大半を準備 運動に費やしている。準備運動には「安全な運動実 施」「運動パフォーマンスの向上」を目的として,
体操が実施する教員が多いが,その方法はどの単元 においても画一的である。
令和 年度より,いよいよ新学習指導要領 が全面実施されることとなる。新学習指導要領では,
予測困難な社会の変化に主体的に関わり,感受性を 豊かに働かせながら,どのような未来を創っていく のか,どのように社会や人生をよりよいものにして いくのかという目的を自ら考え,自らの可能性を発 揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力 を身に付けられるようにすることが求められてい る。
こうした力はまったく新しい力ということではな く,「生きる力」を改めて捉え直し,より具体化さ れたものである。保健体育科の改訂においては,筆 者は特に「体つくり運動」に着目した。体つくり運 動については,体を動かす楽しさや心地よさを味わ
わせるとともに健康や体力の状況に応じて体力を高 める必要性を認識させ,学校の教育活動全体や実生 活で生かすことができるよう改善が求められてい る。
具体的には,体ほぐしの運動で,第学年及び第 学年では「手軽な運動を行い,心と体の関係に気付 き,仲間と積極的に交流すること」と示した。第学 年では,「手軽な運動を行い,心と体は互いに影響 し変化することや心身の状態に気付き,仲間と自主 的に関わり合うこと」を内容として示した。どちら においても新たに示されているのは,「仲間との関 わり」に関することである。また,新学習指導要領 では「主体的・対話的で深い学び」が強調されるよ うになり,「何を学ぶか」だけでなく,「どのように 学ぶか」を問題にするようになった。
研究の目的
「スリーアップ」は,中村なおみ他が,ダ ンス領域では心身のほぐしを重視したダンスウォー ムアップが主体的な学びに向かう導入として成果を 上げており,中村が中学校の教員であった時に,ダ ンス以外の種目でもグループ授業で活動するチー ムやグループを中心に音楽を用いて準備運動を行 っていた。ウォームアップだけでなく,スキルアッ プ・モチベーションアップにもつながることを意図 し,音楽を用い,グループで,学習内容に応じて構 本論の要旨
筆者のこれまでの研究では,競技特性と運動構造を理解し,どのように体を動かせばよいのかが「わか る」ことと,その知識を実践し,課題設定した運動が「できる」ことを実感させること、そして学習活動 の中で,運動が得意な生徒と苦手な生徒が積極的に「かかわる」ことで,双方の学びの姿勢やパフォーマ ンスにどのような変化が現れるのかを検証してきた。
新学習指導要領では,生徒の主体的な学びの場を保証する方針がより強く打ち出されているが,体育授 業の準備運動においては,年代の調査で,すでに「形骸化」「紋切り型」「一斉指導型」と指摘され ているにもかかわらず,過去の形式のみ受け継がれている傾向があり,「主体的な学び」へと向かう授業 の導入となる実践の検討が必要と考える。
そこで本研究は,導入の分間にこれまでの一斉指導型の準備運動に代わって「スリーアップ」の 考え方を取り入れる。それにより,形骸化されている準備運動から,主活動を行うための準備へ質的な変 換をを図る。さらに,生徒同士の関わりに着目して内容を構成し,運動の得意な生徒と苦手な生徒が協働 して取り組むことで,互いの運動感覚を磨き,力が高まることを実証したい。
■キーワード 準備運動,導入,スリーアップ,主体的,対話,協働
成する準備運動を「スリーアップ」と称し,単元・
時間の授業の導入として行った。
・ウォームアップ自分との対話
怪我の予防,その種目の特徴的な空間や用具を 体感し,その種目を動きやすい体を探求する。
・モチベーションアップ他者との対話 グループの仲間と楽しみつつ,協働で運動の原 理原則を学び合う。
・スキルアップ内容との対話
その種目で中核となる技能の感覚を耕すアナ ロゴン(反復)を積み重ねていく。
ところでつをアップし,対話的な学びをはじめ るためには,まずは競争しあう関係ではなく,協働 の関係を育てなければならない。3)岡野・佐藤 は,「体育科において尊重されるべきは『話し合い』
の言語ではなく,体育の身体言語の『訊き合い』で あり,その『学び合い』である。一人では学び合い が成立しないという前提に立ち,『聴き合い』(訊き 合い)にもとづく他者のアイデアや身体活動の模倣 とスキャフォルディング(足場かけ)による学びを追 及している。」と述べている。
そこで本研究では,授業の導入で実施されること の多かった画一的な準備体操や準備運動からの脱却 を目指し,主運動と密接に関連した効果的な導入と なるよう実践について述べていく。図
図研究の構造図
研究の内容
①導入でのスリーアップの実践
第学年 単元 陸上競技短距離走・リレー 男女混合人グループで実施。
第学年
単元 球技バスケットボール 男女別人~人グループで実施。
②オリエンテーションの工夫
第学年 陸上競技短距離走,バスケットボー ル,ダンス
第学年 陸上競技短距離走・リレーバレー ボール,跳び箱運動,ダンス
単元の始めに調べ学習をして情報収集を行った。
③動きの分析中間・終末
第学年 ベースボール型球技ソフトボール 第学年 器械運動マット運動
発表会の自分の演技,仲間の演技の評価をルーブ リックを用いて行った。
第学年 球技バレーボール
まとめのゲームの自チームの動きの分析を行っ た。
第学年,第学年 ダンス創作ダンス 発表会の作品の鑑賞・分析を行った。
④ウォーミングアップ内容の実践 第学年 体つくり運動
体育理論の授業で, 分間の導入の内容を思考 し,実践した。
授業実践Ⅰ
校内研究会の研究授業として実施した。
題材名,対象学年,授業時間
陸上競技短距離走第学年全時間
単元設定の理由
陸上競技は,身体能力によって記録が左右されやす いものだという考えを変えるために,適正な練習によ って記録向上がなされることを経験させ,基本的な動 きや効率の良い動きを身に付けさせたい。また,単元の 技術理論はもとより,単元で伸ばすことのできる体力 などを明確にすることにより,生涯にわたって運動に 親しむことができる,豊かなスポーツライフを実現で きるような意欲・態度も身に付けさせたい。 また,体 を動かすことの楽しさを味わわせたり,身体能力の向 上を図るとともに,情緒面や知的な発育を促したり,集 団的活動や身体活動を通してコミュニケーション能力 を育成するなど,筋道を立てて練習や作戦を考え,改善 の方法などをお互いに話し合う活動を通して,論理的 思考力を養いたい。
学習目標
するどいスウィング動作で推進力を向上させ,ス トライドが伸長できるようにする。
評価規準
・自らの運動感覚、運動イメージについて,具体的 に表現することができる。【思考・判断・表現】
・自分のフォームの特徴を分析し,課題を設定する
保 健 体 育
ことができる。 【思考・判断・表現】
単元計画
第時短距離走のスタート方法について調べる。
第時①クラウチングスタートの練習をする。
②秒間走の計測を行う。
第時P走の計測をし,ピッチとストライドを求 める。
第時①「はずむ」感覚を身に付ける。
②速い動きを身に付ける
第時推進力を高める。自分に合ったストライドを 見つける。本時
第時ストライドとピッチを安定させる。
第時スタートからフィニッシュまでの練習を行 う。
第時まとめの秒間走の計測を行う。
スリーアップの実践内容
本単元では,男女混合の6人グループでの準備運 動を行っている。陸上競技は個人種目ではあるが,
自分のフォームやスピード感などは,主観だけでな く客観的に観察し,アドバイスされることで大きな 変化につながることがある。そのため,仲間とコミ ュニケーションを図りながら行う準備運動をするこ とで、主活動でのグループ学習を円滑に進めること を目的としている。
本時の学習過程
学習内容・活動
導 入 展 開
本時のめあてを知る。
人班でスリーアップを行う。
・パシュートラン周
・ダイナミックストレッチ
・人間ドリブル
・ラインステップ秒×種目 本時の学習課題を理解する。
前後のペアで意見交流→全体交流 推進力をえるためのドリルを行う。
・ひざペッチン(男女別ペア)
・前傾姿勢でのスウィング動作 (男女混合人班)
はずむ感覚とスウィング動作を意識しなが ら,設定したコースでスプリント練習を行う。
FPの間隔のコースで,自 分に合ったストライド(間延びした走りになら ない幅)を探る。
ま と め
本時のまとめを行う。
個人思考ワークシート記入→全体交流発表 自分のフォームの特長を活かせるストライドとピッチ について考える。
次時の活動内容を把握する。
成果と課題
これまでの授業では,集合した生徒から個人で規 定の周数をランニングするという流れで準備運動を 行ってきたが,本単元からチームでのランニングを 取り入れた。図
図パシュートランの様子
このランニング方法では,先頭の生徒は後ろを走 る仲間のペースを把握しながらスピードを調整する 必要がある。男女混合で行っているため,走力にも 差があることから,特にコミュニケーションを取り ながら行わなければならない。また,最後尾の生徒 が先頭の位置までダッシュすることで先頭を交代す るので,全員がその調整役を経験する。走りながら の言葉を交わすことは難しいため,ノンバーバルコ ミュニケーションとなることから,より観察力を養 うことができ,準備運動としては最適であると考え る。
静的ストレッチ,動的ストレッチでは,短距離走 のような速い動きを行うこと,また本時ではストラ イドを伸ばすことを目標としていることから,股関 節の可動域を広げられるような動きが望ましい。行 う内容は生徒主導で,人 種目以上を提案するよ う指示をした結果その生徒のこれまでの運動経験 の中で行ってきた内容の幅が狭く静的ストレッチ 中心の内容になったことが課題である。脚の振り上 げ動作であったりリズムに乗って行うブラジル体 操などを今後取り入れていきたい。
また研究協議会にて,スリーアップは導入のみな らず様々な場面で生かせるのではないかという議論 がなされた。またスキルアップ内容との対話の部 分で,動きを自己認識させるために,&7機器を充実
・パシュートラン追い越し走
・静的,動的ストレッチ
・アジリティトレーニングラインステップな ど
・人間ドリブル既習のはずむ感覚の復習
学習課題 ストライドを伸ばすために 必要な力は何だろう。
ことができる。 【思考・判断・表現】
単元計画
第時短距離走のスタート方法について調べる。
第時①クラウチングスタートの練習をする。
②秒間走の計測を行う。
第時P走の計測をし,ピッチとストライドを求 める。
第時①「はずむ」感覚を身に付ける。
②速い動きを身に付ける
第時推進力を高める。自分に合ったストライドを 見つける。本時
第時ストライドとピッチを安定させる。
第時スタートからフィニッシュまでの練習を行 う。
第時まとめの秒間走の計測を行う。
スリーアップの実践内容
本単元では,男女混合の6人グループでの準備運 動を行っている。陸上競技は個人種目ではあるが,
自分のフォームやスピード感などは,主観だけでな く客観的に観察し,アドバイスされることで大きな 変化につながることがある。そのため,仲間とコミ ュニケーションを図りながら行う準備運動をするこ とで、主活動でのグループ学習を円滑に進めること を目的としている。
本時の学習過程
学習内容・活動
導 入 展 開
本時のめあてを知る。
人班でスリーアップを行う。
・パシュートラン周
・ダイナミックストレッチ
・人間ドリブル
・ラインステップ秒×種目 本時の学習課題を理解する。
前後のペアで意見交流→全体交流 推進力をえるためのドリルを行う。
・ひざペッチン(男女別ペア)
・前傾姿勢でのスウィング動作 (男女混合人班)
はずむ感覚とスウィング動作を意識しなが ら,設定したコースでスプリント練習を行う。
FPの間隔のコースで,自 分に合ったストライド(間延びした走りになら ない幅)を探る。
ま と め
本時のまとめを行う。
個人思考ワークシート記入→全体交流発表 自分のフォームの特長を活かせるストライドとピッチ について考える。
次時の活動内容を把握する。
成果と課題
これまでの授業では,集合した生徒から個人で規 定の周数をランニングするという流れで準備運動を 行ってきたが,本単元からチームでのランニングを 取り入れた。図
図パシュートランの様子
このランニング方法では,先頭の生徒は後ろを走 る仲間のペースを把握しながらスピードを調整する 必要がある。男女混合で行っているため,走力にも 差があることから,特にコミュニケーションを取り ながら行わなければならない。また,最後尾の生徒 が先頭の位置までダッシュすることで先頭を交代す るので,全員がその調整役を経験する。走りながら の言葉を交わすことは難しいため,ノンバーバルコ ミュニケーションとなることから,より観察力を養 うことができ,準備運動としては最適であると考え る。
静的ストレッチ,動的ストレッチでは,短距離走 のような速い動きを行うこと,また本時ではストラ イドを伸ばすことを目標としていることから,股関 節の可動域を広げられるような動きが望ましい。行 う内容は生徒主導で,人 種目以上を提案するよ う指示をした結果その生徒のこれまでの運動経験 の中で行ってきた内容の幅が狭く静的ストレッチ 中心の内容になったことが課題である。脚の振り上 げ動作であったりリズムに乗って行うブラジル体 操などを今後取り入れていきたい。
また研究協議会にて,スリーアップは導入のみな らず様々な場面で生かせるのではないかという議論 がなされた。またスキルアップ内容との対話の部 分で,動きを自己認識させるために,&7機器を充実
・パシュートラン追い越し走
・静的,動的ストレッチ
・アジリティトレーニングラインステップな ど
・人間ドリブル既習のはずむ感覚の復習
学習課題 ストライドを伸ばすために 必要な力は何だろう。
させ,その場で自分の動きを確認する時間が必要で あると考える。
どの単元においても,生徒がその動きをイメージ できるような言葉の選択が大切であり,専門性の高 い内容ほど,言葉をかみ砕いて伝えることが必要で ある。その積み重ねがスキルアップへとつながり,
時間 時間のスリーアップの質が向上するのでは ないかと考える。
授業実践Ⅱ
題材名,対象学年,授業時間
ゴール型球技バスケットボール第学年 全時間前期・後期併せて
スリーアップの実践内容
本単元は,前期は感染症対策で近い距離での接触 を避けるためパスやシュートなどの個人の基本技能 の習得を目標として行った。その際のグループ編成 は男女別人グループとし,バスケットボール経験 者がグループ活動でスモールティーチャー以下 67としてサポートできる体制で行った。
準備運動として行った基礎練習では,音楽に合わ せてリズムよくボールを扱えるようになることで,
個人のハンドリングスキルが向上すると考えた。音 楽は,スクリーンで字幕入りの動画として提示する ことで,生徒が視線をずっとボールに向けるのでは なく視線を上げてボールをコントロールすることが できるようになることをねらいとした。
成果と課題
基礎練習を動画音楽に合わせて行うという方法 は,運動を反復することや,どの単元にも応用する ことから,生徒の技能向上に効果があると感じた。
バスケットボールの準備運動として行った本研究 は,運動経験の差が大きく表れる種目であることか ら,経験者の生徒がボールハンドリングやドリブル を音楽のリズムに合わせてやってみせることで,周 りの生徒の興味関心を引きつけ,モチベーションの 向上につながった。単元後半のゲームに向けてのウ ォーミングアップのについては,「自分の苦手なこ と,チームで頑張ることなどを見つけることにつな がったと思う。」「目標を持つことができた。」「ス トレッチや準備運動についての関心が高まり,バリ エーションを増やし,しっかり考えることにつなが った。」と事後アンケートにて生徒の前向きな意見
を得ることができた。
今後の課題としては,グループ編成の方法である。
男女共習で授業を行っているが,ゴール型球技など のように身体接触の恐れがある単元については,男 女別のグループ編成にすることがほとんどである。
その単元の特性に応じて効果的なグルーピングを行 っていきたい。また,運動の習熟度や体格差,人間 関係など,編成する際に配慮すべき点を押さえてお くことで,グループ活動の質の向上につながるため,
生徒の観察をより一層丁寧に行う必要がある。
「できる」と「わかる」をつなげるために オリエンテーションでの調べ学習
各単元において,体育理論中,運動やスポーツ への多様なかかわり方とのつながりを持たせた調 べ学習を実施した。学習内容はその種目の競技特性,
成り立ちや歴史,ルールなどをインターネットや体 育実技の副読本を使用してノートに整理する時間を 設 け た 。 ま
た,試合の様 子 や 基 礎 と な る 技 能 の 動 き を 動 画 で確認し,運 動 イ メ ー ジ を知識として
取り入れた上で実技に入るようにした。
前述した内容以外にも,その競技の魅力や自分が 興味を持ったこと,必要だと思う情報を主体的に調 べるよう促し,個人の知識量に応じた学習の定着を 目指した。事前に調べ学習を行うことで,ルールが 知識として備わった状態で内容に入ることで,基本 となるスキルがなぜ必要なのかを説明する際に,生 徒が運動をイメージしやすくなり,活動の一つひと つの目的・意図を理解しながら動く生徒が増えたこ とで,生徒同士での観察や助言が自然と生まれ,集 団としてのスキル習得がよりスムーズになった。
・音楽字幕入り映像に合わせた基礎練習 ハンドリング、ドリブル、パス
・グループでのパス練習
・グループでのシュート練習
図調べ学習の様子
図調べ学習自主学習スペース
保 健 体 育
単元中間での調べ学習
第学年ソフトボールの単元では,まとめのゲー ムに向け,単元中間で時間の作戦タイムを設け,
守備の分担,配置,打撃の順番などを各グループで 工夫した。協働学習をする上で,生徒間に知識や運 動経験の差がある中で,口頭での話し合いだけでは,
グループ全員に作戦やイメージを浸透させることは 難しい。本単元はインターネットを媒体として,よ り綿密な作戦を立てられるように促した。
また授業内でバウンドするボールをキャッチする 時の姿勢や,バッティング技術について,うまくい かないところを自主的に調べ,メモする生徒の姿が あった。生徒の振り返りの中には,「もっとうまく なりたい」「チームに貢献できるくらいの力を身に 付けたい」という感想が多く見られた。生徒それぞ れがイメージする理想の動きと,実際の自分の動き の間にある差を明確にし,どのように身体をコント ロールすればよいのかを再確認するのに効果的であ った。
図作戦タイムの様子
自己分析
球技,器械運動,ダンスの単元において,撮影し た個人とグループの動きの分析・評価を行った。
特に効果を実感したのは器械運動の単元の分析で ある。本単元では,ルーブリック評価表表 を示 し,練習を行ってきた。自己分析ではルーブリック 評価表に沿って自己評価を行った。また,運動の分 析は人以上で行うことでより精度が増すため,ペ アでの他者評価も取り入れた。
表ルーブリック評価表一部抜粋
分析した結果,人の評価に差があった場合は,再 度動きを人で確認し,意見交流をさせた。ペア学 習にすることによって,自分の動きを客観的に観察 することができるとともに,特に運動に苦手意識を 持っている生徒の運動構造に対する理解が高まるこ とが期待される。また,「なぜうまくいかなかった のか」「結果的にこうなったのは,どこが原因か」
を言語化させることによって,知識と技能をリンク させながら「わかった上でできる」という姿につな げることができると考える。
ウォーミングアップ内容の実践
第1学年の体育理論の授業のまとめとして,生徒 がこれまでで養った知識を生かし,主体的な活動に つなげることを目的として行った。
①導入の15分間で行う。
②活動内容のねらい・目的を明確に示す。
③3つ以上の活動を組み合わせる。
上記のことを統一し,人組で 回の授業にて その日の担当者を決め,人 回ずつリーダーとし て仲間に説明させながら活動を行った。
生徒の活動の様子としては,活動内容を事前に熟 考し,準備をきちんと行ってきたおおよその生徒が,
班の仲間に自分の言葉で運動の方法を説明しなが ら,質の高い運動を行っていた。例えば,全身持久 力・筋持久力を高めるためにインターバルトレーニ ングを行ったり図 ,巧緻性を養うためにボール やフリスビーを使用したコーディネーショントレー ニングを取り入れるという工夫が見られた。また,
授業の後半にネット型球技を行うことを思慮して,
瞬発力や俊敏性を高めるためにジャンプを取り入れ たメニュー図 や,展開につなげるための準備運 動を取り入れているグループが多くあった。
中学校では、運動やスポーツの合理的な実践や生 涯にわたる豊かなスポーツライフを送る上で必要と なる運動やスポーツに関する科学的知識等を中心 に,授業を進めることが求められている。
生徒自身がどのような力を身に付けたいかを具体 的にイメージし,その力をつけるための運動につい て,効果的な「強度・時間・頻度」を理解した上で行 うことは,今後の自分のスポーツライフを組み立て
図ランニングメニュー 図ジャンプメニュー
単元中間での調べ学習
第学年ソフトボールの単元では,まとめのゲー ムに向け,単元中間で時間の作戦タイムを設け,
守備の分担,配置,打撃の順番などを各グループで 工夫した。協働学習をする上で,生徒間に知識や運 動経験の差がある中で,口頭での話し合いだけでは,
グループ全員に作戦やイメージを浸透させることは 難しい。本単元はインターネットを媒体として,よ り綿密な作戦を立てられるように促した。
また授業内でバウンドするボールをキャッチする 時の姿勢や,バッティング技術について,うまくい かないところを自主的に調べ,メモする生徒の姿が あった。生徒の振り返りの中には,「もっとうまく なりたい」「チームに貢献できるくらいの力を身に 付けたい」という感想が多く見られた。生徒それぞ れがイメージする理想の動きと,実際の自分の動き の間にある差を明確にし,どのように身体をコント ロールすればよいのかを再確認するのに効果的であ った。
図作戦タイムの様子
自己分析
球技,器械運動,ダンスの単元において,撮影し た個人とグループの動きの分析・評価を行った。
特に効果を実感したのは器械運動の単元の分析で ある。本単元では,ルーブリック評価表表 を示 し,練習を行ってきた。自己分析ではルーブリック 評価表に沿って自己評価を行った。また,運動の分 析は人以上で行うことでより精度が増すため,ペ アでの他者評価も取り入れた。
表ルーブリック評価表一部抜粋
分析した結果,人の評価に差があった場合は,再 度動きを人で確認し,意見交流をさせた。ペア学 習にすることによって,自分の動きを客観的に観察 することができるとともに,特に運動に苦手意識を 持っている生徒の運動構造に対する理解が高まるこ とが期待される。また,「なぜうまくいかなかった のか」「結果的にこうなったのは,どこが原因か」
を言語化させることによって,知識と技能をリンク させながら「わかった上でできる」という姿につな げることができると考える。
ウォーミングアップ内容の実践
第1学年の体育理論の授業のまとめとして,生徒 がこれまでで養った知識を生かし,主体的な活動に つなげることを目的として行った。
①導入の15分間で行う。
②活動内容のねらい・目的を明確に示す。
③3つ以上の活動を組み合わせる。
上記のことを統一し,人組で 回の授業にて その日の担当者を決め, 人 回ずつリーダーとし て仲間に説明させながら活動を行った。
生徒の活動の様子としては,活動内容を事前に熟 考し,準備をきちんと行ってきたおおよその生徒が,
班の仲間に自分の言葉で運動の方法を説明しなが ら,質の高い運動を行っていた。例えば,全身持久 力・筋持久力を高めるためにインターバルトレーニ ングを行ったり図 ,巧緻性を養うためにボール やフリスビーを使用したコーディネーショントレー ニングを取り入れるという工夫が見られた。また,
授業の後半にネット型球技を行うことを思慮して,
瞬発力や俊敏性を高めるためにジャンプを取り入れ たメニュー図 や,展開につなげるための準備運 動を取り入れているグループが多くあった。
中学校では、運動やスポーツの合理的な実践や生 涯にわたる豊かなスポーツライフを送る上で必要と なる運動やスポーツに関する科学的知識等を中心 に,授業を進めることが求められている。
生徒自身がどのような力を身に付けたいかを具体 的にイメージし,その力をつけるための運動につい て,効果的な「強度・時間・頻度」を理解した上で行 うことは,今後の自分のスポーツライフを組み立て
図ランニングメニュー 図ジャンプメニュー
る上で必要なことであると考える。また実践してい く中で運動の「安全性・楽しさ・効果」を体感しな がら自分に合った活動内容を探る力を養ってほし い。
主体的・協働的な学びに向かう導入へ
第学年の生徒を対象に準備運動に関するアンケ ートを行い名から回答を得た。その中で,小学 校でこれまで行ってきた準備運動の方法については 以下のような結果であった。
表小学校での準備運動の形態
①全員が同じ内容を、一斉に行った。 人
②同じ内容をグループごとに行った。 人
③準備運動は行っていない。 人 残りの人については単元によって①,②を使 い分けられていることが分かった。また活動内容に ついては,単元種目に関わらず年間を通じて同じ 内容を行っていた生徒が人,単元種目によって 異なる内容を行っていた生徒が人と,大きな差が 見られた。このことから,本年度の取り組みは多く の生徒にとっては自然な流れであり,順応できたの ではないかと考える。
本研究で取り入れた「スリーアップ」は前述した ように「ウォームアップ自己との対話」「モチベ ーションアップ他者との対話」「スキルアップ内 容との対話」を目的としているが,生徒自身の実感 は以下の通りである。
表事後アンケート結果
①自分の体調等に合わせて行うことがで きるので,グループの方がよい。
②教師の指示通りに一斉に準備運動を行 う方が気楽でよい。
③グループは自由度が高い分,運動の質が 高まる。
④グループは自由度が高い分,運動の質が 落ちる。
①と②を比較すると有意な差は得られなかった が,③と④とでは大きな差が見られた。指導を行う 立場としては,グループ活動の方が運動の質が落ち るイメージであったのだが,一つひとつの活動の中 で,教師人で人の動きを細かく把握し,人ひ とりにアドバイスすることは困難なことであること から,生徒としては小グループで仲間からの気づき やアドバイスを得られたという実感があったのでは ないかと推察する。
先行研究におけるスリーアップの実践では,活動 内容を統一していることから,「言語的な交流は少
なく,身体の感覚を通した関わりあいが多く見られ た。生徒が視覚・聴覚・触覚という受信器をきちん と開き,近い距離にいる仲間をよく観て感じ取って 考えることが本当の意味での主体的な取り組みとな るのではないか」と中村は述べている。
本研究では個人種目である陸上競技と,団体種目 であるバスケットボールにおいて実践を行ったが,
技能差が明確になる技能練習の場面では,得意とす る生徒が一方的に教えるという構図になりがちだ が,不得意な生徒が得意な生徒に聴くことから会話 が生まれ,双方向のやりとりへとつながった。
協働学習をする上で,単元によってさまざまな配 慮をする必要性を実践して感じた。 グループの人 数,男女を混合にするか別にするか,活動内容の精 選を今後の課題としたい。
引用・参考文献 中村なおみ他
「体育授業における『準備運動』を再考し,『主体 的な学びへ向かう導入』へと変えていく試み」
年笹川スポーツ研究助成
中学校学習指導要領平成年告示解説 保健体育編 文部科学省
岡野昇・佐藤学
『体育における「学びの共同体」の実践と探究』
年 大修館書店
「 時間で足が速くなる日本記録を量産する新 走法ポン・ピュン・ランの秘密」川本和久 年 ダイヤモンド社