状態平均化法による矩形波 コンバータの動作特性解析
2015 年 08 月 17 日 群馬大学 客員教授
落合政司
1
1.
状態方程式
2.
状態平均化法と状態平均化方程式
内容
2
DC-DCコンバータ等のスイッチを含む回路は、非線形であるためにその動作解析は非常に困難
で複雑になる。しかし、スイッチング周波数が十分に高いと電圧や電流の一周期間の平均値を 変数にすることにより、線形的な取り扱いをすることができる。 このような線形解析を状態平均 化法という。ここでは状態平均化法によってコンバータの状態平均化方程式を求める。
0
Ton Toff
IL
iL iQ iD
T t
eo Ei D C Ro
Q L
+
図5.1 降圧形DC-DCコンバータ
3. DC-DC
コンバータの静特性(定常状態)の求め方
4. DC-DC
コンバータの動特性(動作状態)の求め方
5. DC-DC
コンバータの状態平均化方程式
6. DC-DC
コンバータの定常状態における静特性
7. DC-DC
コンバータの動作状態における伝達関数
8. DC-DC
コンバータの制御特性
8.1
レギュレーション機構と出力電圧
8.2
出力電圧の微小変動と減衰時定数
8.3
入出力電圧比の利得と位相差の周波数特性
8.4
出力インピーダンスの周波数特性
8.5
出力電圧の変動率
8.6制御系の安定性
9.
参考・引用図書
内容
3
1.状態方程式
) ( )
(
) ( )
) ( (
t t
t dt t
t d
Cx y
Bu x Ax
一般にR、L、Cによって構成される回路を解析する一つの方法として、式(1.1)に示す一階微 分方程式が使われる。式中のそれぞれは、uが入力を表す列ベクトル、yが出力を表す列 ベクトル、x(t)が状態変数(状態ベクトル)、A、B、Cが定数行列(係数行列)を示している。こ れを状態方程式というが、 式(1.1)を解いてxを求めると、次にyも求めることができる。
(1.1)
(1.2)
u(t):入力を表す列ベクトル、y(t):出力を表す列ベクトル x(t):状態変数(状態ベクトル)、A、B、C:定数行列
一階微分方程式である式(1.1)の解は以下のように求めることができる。
このような手法で解析を行うのを状態変数解析という。
例として図1.1及び図1.2に示す回路の状態方程式を求めてみる。
( )
:積分定数)
(t eAt
eAtBu t dt D Dx (1.3)
4
この二つの方程式を状態方程式という。
1.状態方程式
E C VC R2
R1
i +
図1.1 RCによる回路網例
CR E V
R R
R C R
CR E R
R C V R
V E C CR
V dt
dV
R V i E
V iR E
C i CR
V dt
V dV R
i V C
C C
C C
C
C C
C C
C C
1 2
1 2 1 1
2 1
1 2
1 1
2 2
1 1
1 1
1 ) 4 . 1 ( ) 5 . 1 (
) 1 (
態方程式が得られる。
に代入すると以下の状 これを式
が求められる。
より、
式
立つ。
上図において次式が成
(1.4)
(1.5)
(1.6)
x(t)/dt x(t) u(t)
A
B
5
1.状態方程式
CR t C
CR t C
C
CR t CR
t CR
t CR
t CR
t C
C
At At
C
R e R
R R
V E R E
i
i
R R
R R R
e R E
R V R
R E R D R
V t
De R E
R D R
e CR E
e CR D
CR dt e E
e V
CR E CR t
R R
R C R
V t
D dt t e
e t
V
1 1 1
1 0 ) 0 ( 0
) 1 ( 1 ,
, 1 )
(
) ( )
( ) 3 . 1 (
2 1
2 1
1
2 1
2 1 2
1 2
2 1
2
2 1
2 1
1
1 2
1 2 1
。 を求めると以下となる 次に、
となる。ただし、
となる。したがって、
とすると で
を代入する。
に 式
について求める。
先ず
Bu A
x
Bu x
6
(1.7)
(1.8)
L E V
i CR
C
L L
R
dt dV dt di
C i CR
V dt
V dV R
i V C
L E L
i V L R dt
V di E i dt R
Ldi
C C
C C
C C
C C
0 1 1
1
1 )
1 . 1 ( ) 1 (
2 1
2 2
1 1
。 態方程式が求められる に当てはめると次の状
これらを式
り立つ。
上図において次式が成
1.状態方程式
E C VC R2
1 L
R
+
図1.2 RLCによる回路網例
(1.9)
(1.10)
(1.11)
7
i
u(t)
x(t)
x(t)/dt
A B
別な回路網についても状態方程式を求めてみる。
7
DC-DCコンバータ等のスイッチを含む回路は、非線形であるためにその動作解析は非常に 困難で複雑になる。しかし、スイッチング周波数が十分に高い場合は、電圧や電流のス イッチング素子の一周期間の平均値を変数にすることにより線形的な取り扱いをすること ができる。このようなDC-DCコンバータの線形近似による動作解析法として状態平均化法
(State-Space-Averaging Method)がある。
8
2.状態平均化法と状態平均化方程式
いま、DC-DC コンバータのスイッチが図1.2 のようにオン・オフを繰り返したとき、各々の状
態に応じた回路の電圧、電流を要素とする状態変数(状態ベクトル)X(t)は次の状態方程 式で表されることができる。
ここで、状態変数x(t)の各要素になるのはリアクトル電流や出力コンデンサ電圧などの連 続量が選ばれる。
尚、式中のA1 、 A2 、 B1 、 B2、C1、C2は回路のパラメータによって決まる定数行列(係数行 列)であり、また、Ei は入力電圧を意味する。
T
Ton Toff
9
DT DT
kT
t t
k 1
TT T D T T
D on , off
図1.2 スイッチの状態とコンバータの状態変化
) (t x
) (t x
x(t):電圧、電流を 要素とする状態変数
DT DT DT
k
Tt 1
kTx xk 1T
k T
x 1
k T
x 1
k T DT
x 1
kTx
k T
x 1
kT DT
x
S
) ( ), ( t x t x
2.状態平均化法と状態平均化方程式
戻る
次にDC-DCコンバータの一周期間の平均値を求め、これを新たな状態変数として線形近 似をしてみよう。このとき、状態平均化法によって求められる状態平均化方程式は以下と なる。
(2.5)
) ( )
(
) ) (
(
t t
E dt t
t d
i
x C y
B x
x A
(2.6)
2.状態平均化法と状態平均化方程式
■状態2(スイッチ・オフ期間:Toff期間)
) ( )
(
) ) 1 ( (
) ) (
(
2
2 2
t t
T k
t T
kT E
dt t t d
on i
x C y
B x
x A
(2.3)
(2.4)
■状態1(スイッチ・オン期間:Ton期間)
) ( )
(
) (
) ) (
(
1
1 1
t t
T kT t
kT E
dt t t d
on i
x C y
B x
x A
(2.1)
(2.2)
10
入力u(t)はEiになる。
ここで、状態方程式を求める。
(降圧形DC-DCコンバータ) Ei D C Ro eo
Q L
iL +
11
C C
xy
B B
x A x A
C C
C C C
C C C C
B B
B B B
B B B B
A A
A A A
A A A A
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 2 1
1
2 1
2 1
2 2 1
1
2 1
2 1
2 2 1
1
D D
t
E D
D D
dt D d
D D
D T D
T D DT
T T T
D D
D T D
T D DT
T T T
D D
D T D
T D DT
T T T
i off
on
off on
off on
) (
1 1
1 (2.7)
(2.8)
となる。これらを式(2.5)、式(2.6)に代入すると次の状態平均化方程式が得られる。
式(2.10)及び式(2.11)がDC-DCコンバータの動作解析を行う時の基本式になる。
(2.10)
ここで式(2.5),(2.6)の中の定数行列A、B及びCは
(2.9)
(2.11)
2.状態平均化法と状態平均化方程式
戻る
3. DC-DC コンバータの静特性(定常状態)の求め方
ここでは、DC-DCコンバータの定常特性(静特性)の求め方を説明する。
定常状態においてはリアクトルの電流や出力コンデンサの電圧に変化はなく、x(t)は 直流値Xとなる。したがって、次式が成り立つ。
上式を用いれば、定常状態におけるリアクトルの電流や出力コンデンサの電圧は次式で 求められる。
また、コンバータの出力は式(3.2)より、以下となる。
式(3.2)、式(3.3)よりコンバータの電圧変換率、負荷特性、リプル率などの静特性を求める
ことができる。
i i i
i
E E E
E dt t
t d
B CA CX
Y
B A A
X B
B x
x A
1 1
0 )
) ( (
(3.3)
(3.2)
(3.1)
12
4. DC-DC コンバータの動特性(動作状態)の求め方
定常状態において、入力電圧、時比率、負荷抵抗などが微小変動したときの低周波小信号 動特性は以下のように求められる。
入力電圧Ei、時比率D、負荷抵抗Roなどに微小変動ΔEi、時比率ΔD、負荷抵抗ΔRoを与え ると、状態変数 に微小変動ΔXが生じる。
13
) (t x
より得られる。
~式 の偏微分は式
に対する定数行列 ここで、時比率
つ。
とすると次式が成り立
に対し
) 9 . 2 ( )
7 . 2 (
) ( , )
( ,
,
C B, A,
X C X
C C Y
Y
B B X
Α X A A
B B B
X Α X
A A X
X
Y Y
y X
X x
D
R R D D
E E
D D R R
D D
E E
R R D D
R R D D
dt d
t t
R R
R D
D D
E E
E
o o
i i
o o
i i
o o o
o
o o
i i
i
(4.1)
(4.2)
負荷抵抗が変化してもBは変化しない。
δB/δR=0
式(2.7)~(2.9)
2
1
2 1
B B
B
A A
A
D D
D D
1 1 注)
o io i
i o
o i
i i
o o
i
i i
i i
o o
i i
o o
E R R
D dt E
d
E R R
D dt E
d
D E E
R R D
E
D E
E E
E R R
D
E E
D R R
dt D d
D D D
D
D D D
D
D D D
D
B Α X
B B
X A A
X X A
B Α X
B B
X A A
X X A
B B
B Α X
X A A
X A B
AX
B B
B X Α X
X X
A A
X X
A
B B
B X
Α X A
A X A
X
C C
C C C
B B
B B B
A A
A A A
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
) 2 . 4 ( )
1 . 4 ( )
3 . 4 (
1 1 1
項を無視し整理する。
に代入し、2次の微小 と式
を式 式
14
(4.3)
(4.4)
4. DC-DC コンバータの動特性(動作状態)の求め方
す。
動特性が正確になりま 以下の場合),小信号
分 低い場合(一般的には グ周波数よりも十分に
ッチン 小変動の周波数はスイ
められます。なお,微 バータの伝達関数が求
変動に着目するとコン
を代入し,出力電圧
,
,
, 応する定数行列 ンバータの各回路に対
これらの式に降圧形コ
より が得られる。
動に対して以下の結果 れば,平均値の微小変
以上をラプラス変換す
1 10
) 7 . 4 ( )
( )
( )
( ) ( )
(
) 6 . 4 ( )
( )
( )
( )
(
) ( )
( )
( )
( )
(
) 5 . 4 ( )
(
) (
) (
) (
) (
2 1 2 1
2 1
2 1 2
1 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
2 1
B B A A C X
X C C X
C Y
B Α X
B B X A A
A X
B Α X
B B X A A
X A X
C X X
C C X C Y
C X X
C C X C Y C X
X C C X C CX
X C X
X X
C C X
X C
X C X
C C C Y
Y
s R R
s D s
s
s E s
R R s
D E s
s
s E s
R R s
D E s
s s
R R D
R R D
R R D
R R D
R R D
o o
i o
o i
i o
o i
o o
o o
o o
o o o
o
4. DC-DC コンバータの動特性(動作状態)の求め方
15
( ) ( ) ( ) (4.6)
) (
1 1 0
0 1
) 6 . 4 (
2 1 2
1 1
1
s E s
R R s
D E s
s
s
i o
o
i Α X B
B B X A A A
I X
I
I A
ます。
に書き直すことができ とすると,以下のよう
を は単位マトリックス および式中の
なお,式
4. DC-DC コンバータの動特性(動作状態)の求め方
16
5. DC-DC コンバータの状態平均化方程式
5.1 降圧形DC-DCコンバータの状態平均化方程式
eo Ei D C Ro
Q L
+
図5.1 降圧形DC-DCコンバータ
降圧形DC-DCコンバータのスイッチ・オン期間とスイッチ・オフ期間の等価回路を 図5.2に示す。
17
5. DC-DC コンバータの状態平均化方程式
IL
Ei C +Ro
L
eo
r1
+ eo C Ro
L
IL
r2
図5.2 降圧形DC-DCコンバータの各動作状態における等価回路
(a)状態1 (スイッチ・オン期間:Ton期間) (b)状態2 (スイッチ・オフ期間:Toff期間)
eo:出力電圧 、 iL:コイルを流れる電流 r1:スイッチ素子オン時の等価抵抗
( 入力電源の内部抵抗、スイッチ素子のオン抵抗、コイルの抵抗などの損失抵抗 ) r2:スイッチ素子オフ時の等価抵抗
( ダイオードのオン抵抗、コイルの抵抗などの損失抵抗)
図5.2の等価回路より次式が成立つ。
18
動作状態1(スイッチ・オン期間)に対して
動作状態2(スイッチ・オフ期間)に対して
oo L
CR t o
o L
o
CR t o
L o
o L
L
o L L
o o L
CR t o
o L
o
CR t o
L o
i o
L L
o L L
i
CR e Ci
CR e C i
dt de
e dt C i
e
Le L i
r dt
di
e i dt r
L di
CR e Ci
CR e C i
dt de
e dt C i
e
L E Le
Li r dt
di
e i dt r
L di E
o o
o o
1 0 1
1 1
1 0
1 0
1 0 1
1 1
1 0
1 1
2 2
1 1
より より
より より
(5.1)
(5.2)
(5.3)
(5.4)
5. DC-DC コンバータの状態平均化方程式
IL +
Ei C Ro
L
eo r1
+ C Ro eo L
IL r2
19