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アルマティ市熱電併給システム 近代化計画予備調査

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(1)

日本自転車振興会補助事業

平成 17年度連携促進型地域振興技術協力支援調査事業 

アルマティ市熱電併給システム  近代化計画予備調査  

   

調査報告書   

       

平成 18 年 2 月   

 

社団法人  海外コンサルティング企業協会 

東北電力株式会社  

(2)

まえがき

本報告書は、社団法人海外コンサルティング企業協会(ECFA)から当社が平成 17 年度 連携促進型地域振興技術協力支援調査事業として受託した「アルマティ市熱電併給システム 近代化計画予備調査」の成果を取りまとめて報告するものである。

本事業は、日本自転車振興会からの補助金を受けて、日本の様々なステークホルダーの協 力を得たネットワーク型地域振興のノウハウを途上国へ技術移転すべく、適用可能性の分析 検討を行い、日本からの技術協力支援に結びつけることを目的としている。

カザフスタン共和国は、旧ソ連の崩壊により、1991 年に独立した比較的新しい国家であ る。独立以来、一時的な経済の落ち込みはあったものの、その後の経済成長は目覚しく、

GDP成長率は2001年に13.5%を記録し、2003年で9.2%、2004年で9.4%とその成長は 現在も堅調である。

カザフスタン共和国の南東部に位置するアルマティ市は、人口120万人を抱える同国最大 の都市である。アルマティ市は、好調な経済に支えられ、更なる発展を続けている。その発 展ペースとは裏腹に市内熱電併給システムの老朽化は着実に進んでおり、近い将来、市民生 活に深刻な問題が発生する可能性は非常に高い。また、市内の熱電併給所は老朽化のうえに 適切な環境設備を備えていないため、最大の大気汚染源となっており、アルマティ地域は国 内でも大気汚染が進んでいる地域の一つとなっている。

このことから、本調査では、特にアルマティ市の熱電併給所・熱供給所に主眼を置き、既 存設備の改修、新規設備と最新の環境設備の設置により、同市が抱えている熱電供給問題と 環境問題の解決を図ることを目的とし、ならびに日本の高い技術の移転の可能性を分析検討、

日本からの技術協力支援となる事業を目指すための予備調査を実施したものである。

平成18年2月

東北電力株式会社

(3)

目   次

要約

・・・s−1

略語集

1.  調査目的と概要

1.1 調査の背景 ・・・  1

1.2 調査の目的 ・・・  2

1.3 調査の概要 ・・・  3

1.4 当該プロジェクトの位置付け ・・・  3

2.  カザフスタンの概要

2.1 一般事項 ・・・  6

2.2 社会・政治状況 ・・・  6

2.3 経済状況 ・・・  8

2.4 外交 ・・・ 10

2.5 アルマティ市の概要 ・・・ 11

3.  電力・熱供給の現状と課題および今後の計画

3.1 カザフスタンにおける電力セクターの現状と課題、今後の計画 ・・・ 13 3.2 アルマティ地域における電力セクターの現状と課題、今後の計画 ・・・ 17 3.3 熱需給の現状と課題、今後の計画 ・・・ 21

4.  カザフスタン側実施機関

4.1 カザフスタン側の体制 ・・・ 26

4.2 カズトランスガスについて ・・・ 26

4.3 APKについて ・・・ 27

5.  アルマティ熱電併給設備の現状と課題

5.1 第一熱電併給所(TETS 1) ・・・ 31 5.2 第二熱電併給所(TETS 2) ・・・ 33 5.3 第三熱電併給所(TETS 3) ・・・ 36 5.4 西部熱供給センター(ZTK) ・・・ 38 5.5 アルマティ熱電併給所の各種データ ・・・ 41 5.6 アルマティ熱電併給設備の課題 ・・・ 44

(4)

6.  カザフスタンに適応可能な日本の知見

6.1 カザフスタンの意向・ニーズ ・・・ 47 6.2 カザフスタンの技術レベル ・・・ 47 6.3 カザフスタンに適応可能な日本の技術 ・・・ 48 6.4 日本企業の優位性(技術面・経済面) ・・・ 50

7.  法制度

7.1 電力エネルギー分野に関する法制度 ・・・ 51

7.2 環境法令 ・・・ 54

7.3 課題 ・・・ 56

8.  プロジェクトの事業計画

8.1 プロジェクトサイト及び規模 ・・・ 58

8.2 プロジェクトの概要 ・・・ 64

8.3 プロジェクトの実施スケジュール ・・・ 73 8.4 プロジェクトのコスト概算 ・・・ 77

8.5 財務分析 ・・・ 78

9.  提言

9.1 APKの事業実態 ・・・ 84

9.2 事業の分析 ・・・ 85

9.3 新たな設備の提案 ・・・ 85

9.4 プロジェクト実施による影響について ・・・ 86

9.5 事業モデル提案 ・・・ 87

9.6 今後の課題と方向性 ・・・ 88

添付資料

資料1 サイト平面図 資料2 現場調査写真 資料3 日本の技術参考例 資料4  参考文献リスト

(5)

図表リスト

表2.1  カザフスタンの年別経済指標(1)

表2.2  カザフスタンの年別経済指標(2)

図3.1  最大電力発生日における出力バランス

表3.1  カザフスタンの最大電力発生日における出力バランス(2003年12月26日)

表3.2  カザフスタンの電力バランス

表3.3  カザフスタンの電力需要予想

図3.2  カザフスタンの電力需要実績と予想

表3.4  アルマティ地域での出力バランス(2000年)

表3.5  アルマティ地域での電力バランス(2000年)

図3.3  アルマティ地域の最大電力発生日における出力バランス(2004年12月29日)

図3.4  アルマティ地域の最低電力発生日における出力バランス(2005年6月15日)

図3.5  アルマティ地域の2010年における出力バランス予想

図3.6  アルマティ地域の2020年における出力バランス予想

図3.7  熱供給配管の取替え長さと不具合発生回数

図4.1  関係機関相関図

図4.2  APK株式会社の組織体制

図4.3  アルマティ州送電系統図

表5.1  2004年の蒸気タービン発電機の利用率

表5.2  石炭性状(計画)

表5.3  主な石炭性状(実績)

表5.4  石炭灰埋立地

表5.5  石炭灰成分(実績)

表5.6  排出許可量と税金

表8.1  月間平均気温(℃)

図8.1  アルマティ市街地における熱電併給所の位置

表8.2  処理前の水の性状(2004年度)

表8.3  環境法令

表8.4  2005年大気への排出制限 表8.5  天然ガス性状

表8.6  石炭性状

図8.2  ガスコンバインドサイクルプラント設置図

図8.3  石炭焚高性能超臨界圧発電所

図8.4  石炭焚ボイラ

表8.7  プロジェクトスケジュール(ガスタービンコンバインドサイクル)

表8.8  プロジェクトスケジュール(500MW 石炭焚高性能超臨界圧火力発電所)

(6)

表8.9  プロジェクトスケジュール(石炭焚高効率ボイラ)

表8.10  想定費用

表8.11  サイト別の資金投入期間と設備使用開始年

表8.12  プロジェクト実施によるサイト別の増加電力量

表8.13  サイト別の年間使用燃料量

表8.14  円借款利用時のキャッシュ・フロー分析

表8.15  カザフスタン商業銀行利用時のキャッシュ・フロー分析

(7)

略  語  集

APK Almaty  Power  Consolidated:アルマティ熱電併給システム運用会社

AR As  Receive:到着ベース

BTC  pipeline Baku-Tbilisi-Ceyhan  pipeline:バクー−トビリシ−ジェイハン パイプライン

CIS Commonwealth of  Independent States:旧ソ連独立国家共同体 CNPC China  National  Petroleum  Corporation:中国石油天然ガス集団

HHV Higher Heating Value:高位発熱量

ICA Intergas  Central  Asia:インターガス中央アジア社

KEGOC Kazakhstan  Electricity  Grid  Operating  Company

:カザフスタン国内の送電網を管理する会社

KOREM Казахстански  Оператор  рынка

  электроэнергии  и  мощности

:カザフスタン電力卸売市場オペレータ

OREM Оптового  рынка  электроэнергии  и 

мощности:電力卸売市場

OSCE Organization for Security and Cooperation in Europe

:欧州安全保障協力機構

REC Распределительные  электросетевые компании:配電会社

TETS Тепровая  Электроцентраль:熱電併給所

(8)

ZTK Западный  тепловой  комплекс

:アルマティ西部熱供給センター

電気用図記号

Δ デルタ結線 Y スター結線

化学記号

SiO 二酸化珪素 Al2O3 酸化アルミニウム Fe2O3 酸化第二鉄 CaO 酸化カルシウム MgO 酸化マグネシウム TiO2 酸化チタン Na2O 酸化ナトリウム K2O 酸化カリウム P2O5 五酸化二リン NO2 二酸化窒素 NO 一酸化窒素 NOx 窒素酸化物 SO 三酸化硫黄 SOx 硫黄酸化物 CO2 二酸化炭素 CO 一酸化炭素 Be ベリリウム

B ホウ素

O2 酸素

V バナジウム W タングステン Ca2+ カルシウムイオン Na+ ナトリウムイオン Cl 塩素イオン H2SO4 硫酸

NaOH 水酸化ナトリウム

V2O5 五酸化バナジウム H2S 硫化水素

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アルマティ市熱電併給システム近代化計画予備調査 要  約

1.  調査の背景と目的

アルマティ市は、人口120万人を抱えるカザフスタ ン最大の都市である。同市は好調な経済成長に支えら れ、順調に都市発展を続けているが、その発展ペース とは裏腹に市内インフラシステムの老朽化は着実に進 んでおり、近い将来、市民生活に深刻な問題が発生す る可能性は非常に高い。特に熱電併給システムは旧ソ 連時代に構築され、既に耐用年数を過ぎた機器・設備 を未だに使用しており、設備の状態は劣悪である。

また、アルマティ市を含むカザフスタン東部では、

安価な石炭を大量に入手できることからアルマティ市 内の熱電併給所および熱供給所においても燃料として 石炭を利用している。市内の熱電供給設備は老朽化に よりエネルギー効率が大幅に下がっているうえ、環境 対策設備も適切に設置されていないため、同市最大の 大気汚染源となっている。

これら諸問題の解決を図るため、アルマティ市から日本側へ調査実施の依頼があった。

本調査では、アルマティ市のエネルギー安定供給と設備効率の向上ならびに環境改善とい う目標を設定し、熱電併給システム全体の中で特に設備的・金額的規模、及び環境的に影 響が大きい「熱電併給所及び熱供給所」の設備に着目して調査を実施することとした。

2.  調査結果

本調査では、市内の既存熱電併給システムの現状と問題点を抽出するとともに、アルマ ティ市及び周辺地域における将来的な電力・熱需給動向や現地機関(アルマティ熱電併給

会社:APK)のニーズなどを確認し、最適なシステム構築のための基本計画策定を行った。

APKが所有している熱電供給設備の仕様(設計値)は、以下のとおりである。

サイト名 電気出力 (MW)

熱出力 (Gcal/h)

タービン (台)

ボイラ

(台) 燃料 製造年

6 石炭 1960〜96

第一熱電併給所(TETS1) 145 1,256 3

7 (温水) ガス/重油 1966〜79 第二熱電併給所(TETS2) 510 1,176 6 7 石炭 1978〜88 第三熱電併給所(TETS3) 173 335 4 6 石炭 1960〜66 西部熱供給センター − 1,208 − 17 (温水) ガス/重油 1962〜87

アルマティ市内の様子

(10)

いずれの設備も運開以来30〜40年が経過しており老 朽化が目立っている。さらに、旧ソ連の崩壊とともに、

実施されるはずだった長期補修計画・増設計画などが頓 挫しており、満足のいくメンテナンスが施されていない 状況で、設備の効率や利用率が低下していることが共通 した問題となっている。

発電設備については、主機の老朽化もさることながら 周辺設備(石炭設備や冷却設備等)の不具合が頻発して おり、定格出力を長期間に亘って安定的に供給すること ができず、部分負荷運転を強いられている。熱供給設備 については、計画的な補修ができていないことにより、

熱供給配管や配管保温材などの劣化が著しく、大きな熱 損失を招いている。また、環境設備については、集じん 装置は設置しているが、その他の設備は全く設置されて おらず、NOxやSOxが大量に排出されている状態で市 内の環境は悪化の一途である。しかも、集じん装置は湿 式であるため、捕集した灰は多量の水分を含んでおり、

その後の有効利用が困難となっている。

通常期のアルマティ地域の電力需給は、供給不足(最 大負荷時で約230MW不足)の状態であり、不足分は 他地域や隣国からの輸入に頼っている。国やAPKでは、

今後もアルマティ地域の電力需要は順調に伸び続けると 予想しており、2010年断面でおよそ600MWの供給不 足と予測している。

このような状況下で、熱電併給所に関し て、将来を見据えたAPKのニーズは、第一 熱電併給所のリプレイス、第二熱電併給所 の増設、第三熱電併給所の老朽化設備のリ プレイス、ならびに既設の改修、環境設備 の改善である。

また、アルマティ市内の電気料金は、4.6 KZT/kWh(約4円/kWh)である。これは、

アルマティ地域が供給独占地域であるため APKが自由に料金設定することができず、

国が定めた料金となっているが、実際に熱 電併給所を健全に運営するには低い設定と 0

400 800 1,200 1,600 2,000

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 時間(時)

電力量MWh)

TETS1 TETS2 TETS3

水力 需要

第一熱電併給所(TETS 1)

アルマティ市2010年の電力需給予想

老朽化した建屋

冬季の冷却塔

(11)

3.  事業提案

今回の調査結果、熱電併給設備の現状や将来構想などAPKの事業実態を具体的に把握す ることができた。そのデータから、APK 熱電併給部門の経営的な問題を以下のように分析 した。

設備の老朽化、慢性的な電力不足

設備の不具合続きで利用率の低下、需要増による他地域からの購入電力量増加 発電原価の上昇、計画発電原価(3.8KZT/kWh)を大幅に上回る

計画発電原価から国が算定する電気料金は低すぎる

APK熱電併給部門の経営を圧迫

計画的な補修費や大規模改修費、建設費が確保できない

このような悪循環から老朽化した設備を更新したくてもできないと実情がある。APK の 将来構想、環境問題等を考慮・検討した結果、まずは設備の老朽化と電力不足の問題を大 規模の新設で解決し、設備利用率の高い最新設備の運用によってAPKの収益性を向上させ ることが先決と判断した。今回の調査では熱電併給部門の新設やリプレイスに焦点を絞り、

将来の電力需給を考慮して以下の事業モデルを提案する。

○設備

以下の設備対策を、需給動向を考慮しながら段階的に実施する。

サイト名 対策案 現状 変更後 事業費 第一熱電併給所

(TETS 1) 発電設備の

リプレイス ・石炭焚

・出力145MW

・天然ガス焚ガスタービン コンバインドサイクル設備

・出力80MW 105百万USD

石炭焚ボイ

ラの増設 ・7台

・熱出力2,450MW ・8台(1台追設)

・熱出力2,800MW 250百万USD 第二熱電併給所

(TETS 2) 石炭焚高性 能発電設備

の新設 ・なし

・超臨界圧発電設備

・出力500MW

・環境設備(乾式集じ ん装置、脱硫装置、

脱硝装置)

800百万USD

第三熱電併給所

(TETS 3) 冷却塔の

リプレイス ・旧型湿式

・設備利用率40%

・最新型乾湿式

・設備利用率70%

・冷却熱量205MW 38百万USD

(事業費総額:1,193百万USD)

(12)

○ファイナンス

事業規模が大きく費用も莫大(総事業費:約1,200百万USD)となるため、円借款 の利用を推奨する。円借款は低金利で返済期間の長い緩やかな貸付条件となっている。

加えて、特に公害防止(大気汚染防止)に関する案件は、優先条件が適用できること からさらに低金利となり、本事業の実施に際してこれほど好条件の資金源は他に存在 しない。

現在のアルマティ地域の発電事業環境下にて上記事業を実施した場合で財務分析を行っ た結果、投資回収は可能であることが判明した。回収可能となる大きな要因は、

・  高効率の最新設備導入により設備利用率が向上し、安定した収入が得られること

・  円借款の低金利(0.75%)

にある。一方、カザフスタン国内の商業銀行から資金を調達した場合には、金利が 10%〜

15%と非常に高いため投資回収は不可能となる。

4.  まとめ

本調査は設備的・金額的規模、及び環境への影響度合いからAPK設備のうち熱電併給所

(TETS)に着目し調査を実施した。調査結果に基づきTETSに対して、「老朽化設備の性 能回復対策」「需要の伸びに対する設備増設」「環境保全対策」の三点を柱に最適な設備構 成となるように既設改修および新設設備の提案を行い、アルマティ市が抱えている諸問題 を解決できる基本計画を策定した。電力不足の問題に対しては、設備の増強・改善により 解決を図る。環境改善に関しては、環境設備の設置により NOx やSOx の排出が削減され るだけではなく、最新の高効率発電設備の導入やリプレイス(燃料転換)の実施によりCO2

の排出も削減され、世界的規模の地球温暖化防止にも寄与する。最大の問題はファイナン スであるが、円借款を利用することによって収益を確保しながら返済することができ、事 業として成立すると考えられる。

本調査ではTETS設備に関する最適化を図ったが、APKの設備近代化を図り、さらにそ の後の経営効率化を進めるためには、APK 設備を含め APK の経営全般に関わる近代化構 想を立案し、その構想に基づいてAPK各部門の最適化を図っていく必要がある。

この全体構想を取り纏めるにあたっては、TETS以外の「送配電設備及び変電設備」、「熱 供給配管・ポンプステーション」等APK全体の設備運用に関する情報の収集は勿論、経営 全般に関わる各種データを収集することにより、設備運営やエネルギー販売戦略なども含 めた APK 経営全般に亘る問題点を洗い出し、APK 側の視点に立ったエネルギー事業経験 者としての立場から検討することが重要である。

また、今回の調査において、カザフスタン政府も本件の円借款案件化について前向きに 考えていることが判明した。しかしながら、法律上、カザフスタン政府は円借款を要請す る前提として、詳細な実現可能性調査に基づく判断が必要としている。

(13)

今後、プロジェクト全体を対象として、JETRO等の公的資金を利用してこうした経営全 般に関わる詳細な調査を実施していくこととしたい。その結果をカザフスタン政府に提案 することによりカザフスタン政府から円借款の要請を引き出し、必要に応じて案件形成促 進調査(SAPROF)などを実施して、プロジェクトの具現化につなげていきたいと考えて いる。

(14)

首都:アスタナ 調査地:アルマティ

アルマティ市位置図

(15)

1.   調査目的と概要

1.1  調査の背景

カザフスタン共和国(以下、カザフスタンという。)は、旧ソ連の崩壊により、1991年に 独立した比較的新しい国家である。独立以来、一時的な経済の落ち込みはあったものの、

その後の経済成長は目覚しく、その成長は現在も堅調である。カザフスタンではこれまで 国家発展を目的とした数々のプログラムを制定してきたが、国家プログラム「2010年まで のカザフスタン産業発展基本方針」の中では 石油ガス、鉱物採掘・精錬、電力及び輸送 分野の生産設備を発展させていく という政策を謳っており、また「2030年までの電力開 発プログラム」の中では、 電力自給率の向上 や 新しい発電技術を用いた電源構成の改 善 を挙げている。このように、国内の電力供給設備の整備は、同国の重要政策である石 油・ガス開発とならび重要な命題となっている。

一方、経済優先政策の弊害として環境悪化が進んでいることも事実である。近年、政府 や国民の環境保護への意識は急速に高まってきており、環境規制がますます厳しくなって きている。カザフスタンでは、経済発展と環境保護を両立させながら国家を発展させてい くことを大きな目標として掲げている。

カザフスタンの南東部に位置するアルマティ市は、人口 120 万人を抱える同国最大の都 市である。1997年に首都はアルマティ市からアスナタ市に移ったが、カザフスタン政府は アスタナ市を 政治の中心都市 、アルマティ市を 経済・金融の中心都市 としていく意 向であり、政府のこうした方針の下、アルマティ市は更なる発展を続けている。2004年12 月、ナザルバエフ大統領の右腕であり、カザフスタンの政治的重鎮であるタスマンガンベ ートフ氏(アティラウ州知事、大統領府長官、首相などの重職を歴任)がアルマティ市の 新市長に就任した。

アルマティ市は、堅調な都市発展ペースとは裏腹に市内インフラシステムの老朽化が着 実に進んでおり、近い将来、市民生活に深刻な問題が発生する可能性は非常に高い。特に 熱電併給システムは旧ソ連時代に構築され、既に耐用年数を過ぎた機器・設備を未だに使 用している状態である。かつ、資金難によるメンテナンス不足と相まって、市民へ供給す る電力の電圧や周波数の変動が大きいなど機器信頼性が低下しており、停電や熱供給の停 止事故が年々増加するなど設備の状態は劣悪である。

また、アルマティ市を含むカザフスタン東部では、エキバストゥズ炭鉱という同国最大 規模の炭鉱を擁し、安価な石炭を大量に入手できることからアルマティ市内の熱電併給所 および熱供給所においても燃料として石炭を利用している。市内の熱電併給設備は老朽化 によりエネルギー効率が大幅に下がっているうえ、環境対策設備も設置されていないため、

同市内の最大の大気汚染源となっている。さらに、アルマティ市は四方を山に囲まれた盆 地構造であるため大気の流動性が低いという悪条件も重なり、国内でも最も大気汚染が進 んでいる地域の一つとなっている。このことは、政府はもちろん市民もその実態を認識し

(16)

ており、早急な対策の必要性を感じている。

以上のように、アルマティ市の熱電併給システムは、供給および環境の両面において危 機的な状態にある。このような状態を憂慮したタスマンガンベートフ市長は、本問題を 喫 緊に解決すべき課題 と位置付け、市長から命を受けたスマンクーロフ副市長は対策検討 チームを立ち上げ、「アルマティ市における燃料とエネルギー分野の近代化及び改良プログ ラム」を作成した。このプログラムは、 旧ソ連時代に構築された老朽熱電併給システムの 近代化によって、電力・熱の供給力・効率・技術レベルの向上を図り、供給エネルギーの 品質・安定供給を確保し、さらに悪化した環境の改善と保護を実現、総合的なエネルギー 使用の合理化を進める とした大規模なインフラ整備事業プログラムとなっている。本プ ログラムは、大きくエネルギー分野と上下水道分野に分かれており、エネルギー分野だけ でも、熱電併給所、送配電設備、変電設備、熱供給設備、ガス供給設備、水力を含む再生 可能エネルギー、とその内容は広範囲に渡っている。しかしながら、当該プログラムでは、

現状を大まかに調査して近代化への目標を立てるに留まっており、近代化への具体的かつ 最適な方策については検討していない。

その後、アルマティ市熱電併給システム運営会社の所有権がアルマティ市からカズトラ ンスガス(Kaz Trans Gas,政府系企業)に移ったが、近代化計画を推し進める方向性に変 更はなく、早期の詳細調査実施を必要としている。

なお、カズトランスガスは、カザフスタン最大の石油・ガス開発関連の政府系企業であ るカズムナイガス(Kaz Munai Gas)の子会社であり、主にガス輸送事業を行っているが、

最近では国のエネルギー政策も絡み、政府の意向を受けたカズムナイガスからの命を受け、

国内のエネルギー供給事業の整備も担務している。

1.2  調査の目的

本プロジェクトでは、アルマティ市のエネルギー安定供給と設備効率の向上、ならびに 環境改善という目標を設定している。このため、設備計画としては、熱電供給用プラント として熱効率の高い超臨界圧型石炭火力発電設備の導入などを、環境対策設備として脱硫・

脱硝・集じん装置の設置などを検討する必要がある。また、燃料を石炭から天然ガスへ転換 し、熱効率が高く、環境負荷も低い発電設備の活用などを検討する必要もある。さらに、

送配電設備に関して、日本で普及している低損失電線活用などによる送配電損失の低減や、

熱供給に関して、熱供給母管に対する保温施工・供給配管材質の変更など、熱電併給シス テム全体に関わる様々な技術を組み合わせた近代化計画が必要となる。

このように本プロジェクト全体の基本計画策定のためには、「熱電併給所及び熱供給所」、

「送配電設備及び変電設備」、「熱供給配管・ポンプステーション」等、アルマティ市熱電 併給システムを構成する設備すべてについて詳細に調査する必要がある。しかし、今回の 調査では、設備信頼性の向上と環境問題の改善という目的のために、特に設備的・金額的 規模及び、環境的に影響が大きい設備に着目して調査することとし、「熱電併給所及び熱供

(17)

給所」に特化して現地調査を実施する。

本調査では、市内の既存熱電併給システムの現状と問題点を抽出するとともに、アルマ ティ市及び周辺地域における将来的な電力・熱需給動向、ならびに燃料調達ルートの可能 性を調査・検討し、現地機関のニーズを反映しながら最適なシステム構築のための基本計 画策定につながる調査を行い、アルマティ市におけるエネルギー問題、環境問題の解決を 目指す。

また、カザフスタン全体の問題となっている 電気料金が低く抑えられているために設 備が適正にメンテナンスされていない という問題を取り上げ、適切な電気料金水準につ いても検討する。

1.3  調査の概要

現地調査では、カズトランスガスやアルマティ市熱電併給システム運営会社(APK;

Almaty Power Consolidated)の協力を得ながら調査を実施し、近代化計画の前提となる設 備の現状や将来構想などの情報や電力料金設定の適正化に関して収入と支出の情報などを 収集し、基本計画の策定を目的とした予備調査を実施する。

主な調査項目としては、以下の事項。

・  カザフスタン及びアルマティの概要

・  アルマティ市及び周辺地域における電力・熱需給動向の現状と将来

・  現地実施機関の情報

・  現地関係者の意向、ニーズの確認

・  既存熱電併給設備の現状把握

・  環境規制や法制度に関する調査

・  電気料金の実態と収入と支出状況

・  熱電併給所の近代化計画案の策定

・  工事費の概算、事業費積算、財務評価

1.4  当該プロジェクトの位置付け

現在のカザフスタンの躍進は、紛れもなく石油・ガス開発に依存した結果である。政府 もこの偏った国家発展を認識しているが、国際社会への早期参入のため、それを承知で開 発を進めてきたところではある。しかし、政府では、資源一辺倒の発展だけでは社会に歪 みが生じることも理解しており、製造業や三次産業といった分野の成長と、これらの発展 ペースに見合う国民生活水準の底上げの必要性を認識している。このような背景から、健 全な国家発展の礎となるインフラ整備に関するプログラムは、石油・ガス開発とならび極 めて重要な政策として位置付けられている。

1999年4月9日に国家承認された「2030年までの電力開発プログラム」(政令№384)

では、 電力自給率の向上 , 海外輸出できる競争力のある電源開発 , 競争力のある電力

(18)

市場の発展 の三点を大きな目標に掲げており、その目標達成のための具体的施策として、

既存の電力供給源の有効活用・リハビリ・近代化 を明確に謳っている。また、同プロ グラムでは、アルマティ市を含むカザフスタン南部地域の電力不足の実態と今後に対する 懸念も列記されており、対策として新規発電設備を設置するという案も示されている。さ らに、大部分の熱電併給所の燃料が石炭に頼っている現状をあげ、石炭の重要性を認める 一方で、環境悪化に鑑み設備効率のさらなる改善の必要性を強調している。

アルマティ市政府が策定した「アルマティ市における燃料とエネルギー分野の近代化及 び改良プログラム」は、前述国家プログラムの施策を具現化したものであるとともに、現状 のアルマティ市熱電併給システム老朽化による諸問題を解決し、市民生活や経済活動を支 え得る重要なプログラムとなっている。また、政府では 国内の環境改善モデル都市とし てアルマティ市を選定する という構想もあり、環境改善プログラムとしてもカザフスタ ンの方針に合致している。本プログラムは、アルマティ市という国内最大の経済都市のイ ンフラ整備でもあり、国における重要性ならびに優先度は極めて高いと言える。

本プロジェクトは、アルマティ市熱電併給システム近代化のため、「熱電併給所及び熱供 給所の改修またはリプレイス」、「送配電設備及び変電設備の改修・取替」、「熱供給配管・

ポンプステーションの改修・取替」等の事業を、コンポーネント毎に複数年をかけ、段階的 に実施するものである。熱電供給用プラントとしては、熱効率の高い超臨界圧石炭火力設 備やガスタービンコンバインドサイクル設備などを導入し、環境設備としては、最新の排 煙脱硝装置、排煙脱硫装置、集塵装置などを設置する。さらに、システム全体としての高 効率化を図るため、送配電設備として低損失送電線等の損失低減技術を採用するなどによ り、アルマティ市内の環境改善に大きく寄与する。また、信頼性の高い本邦製設備を導入 するとともに、設備の維持・管理方法についても設備所有者へ移転する計画であり、質の 高いエネルギーを安定供給することが可能となるため、市民生活の安定化と産業基盤の強 化が図られる。加えて、発電設備については、カザフスタンを含む中央アジア全体で老朽 化の傾向にあるため、アルマティ市内の発電所の近代化及び能力拡大を実施し、電力を近 隣諸国への輸出へ振り向けることにより、中央アジア全体での持続的な経済発展の基盤を 築くことが可能となる。

アルマティ市においては、熱電併給システム老朽化問題の対策責任者であるスマンクー ロフ副市長がシステムの著しい老朽化の現状と近代化の必要性を強く認識している。副市 長は、アルマティ市作成の近代化プログラムにある 旧ソ連時代に構築された老朽熱電併 給システムの近代化による、電力・熱供給能力の向上および供給効率向上によるエネルギー 使用の合理化を進める という目的を達成するために、本プロジェクトが同市にとって最 重要プロジェクトである旨を強調しているとともに、プロジェクト実施の際には市をあげ て全面的に支援することを約束している。

アルマティ市政府の後を受けたカズトランスガスにおいても、システム近代化を最重要 課題として取り上げ、アルマティ市内の安定的なエネルギー供給と設備効率の向上により、

(19)

収益を上げることを急務としており、プロジェクト早期実施の期待が大きいことは言うま でもない。加えて、カズトランスガスは、カザフスタン政府の政策を実践する半官企業で あり、本プロジェクトの実施は単なる一企業の考えに留まらず、中央政府の考えそのもの に他ならない。政府では、アルマティ市を中央アジア圏でリーダーシップを取る中心都市 とすることも目指しており、本プロジェクトは、この目標を達成するための重要な位置付 けとなる。

以上のことから、本プロジェクトによる「設備効率の改善」、「エネルギー供給力の増強 と安定供給」、「環境改善」という効果は、アルマティ市民の生活基盤の安定化を図り、環 境悪化の問題を解決するとともに、国家政策における 電力自給率の向上 と 海外輸出 できる競争力のある電源開発 という目標の達成につながり得る。

(20)

2.   カザフスタンの概要

2.1  一般事項

カザフスタンは、南はキルギスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、北はロシ ア、東は中国と接し、西はカスピ海に面している。国土の面積は272万 4,900平方キロ メートル(東西約3,200km、南北約1,600km)で、日本の約7倍である。地形は概ね平 坦で、北部はステップ地帯、西部はカスピ海沿岸低地で、東部や南東部にはアルタイ、テ ンシャン山脈が連なる。国土の大半は大陸性気候で、昼夜の温度差は大きい。山間部は低 温で降雨量が多いが、低地の砂漠地帯は比較的温暖で少雨である。

カザフスタンは16 の地方行政単位から構成されている。2004年の人口は1,496万人 で、旧ソ連時代末期の1989年の人口調査に比べ約130万人減少した。これは、ロシアや ドイツへの移住が220万人に上ったこと、出生率が低下したことによるものとみられる。

主要都市は、首都アスタナ(人口32万人)、アルマティ(116万人)、カラガンダ(56万 人)、シムケント(39 万人)などがある。カザフスタンには約 120 の民族がおり、民族 構成は、カザフ人53.4%、ロシア人30.0%、ウクライナ人3.7%、ウズベク人2.5%ドイ

ツ人2.4%等となっている。カザフ人の多くは、カザフ語を母国語とする。また、ロシア

語も公用語として使われており、政府官庁や実業界で広く使用されている。宗教は、カザ フ人の間では他の中央アジア諸国と同様にイスラム教スンニ派が信仰されており、ロシア 人の間ではロシア正教が信仰されている。

2.2  社会・政治状況

カザフ人は、民族アイデンティティと共に、父系出自に基づく部族意識が強いと言わ れている。また、中央アジア諸国の中でカザフスタンは、イスラム教の受容が歴史的に遅 かった。このため、カザフ人のイスラム信仰はさほど厳格ではないものの、生活や文化の 一部には根付いている。飲酒や女性の衣服などは、一般に寛容である。メディア統制等に 関しては、西側諸国が懸念を示しているが、一部有識者を除けば国民の不満の高まりは見 られない。他のCIS 諸国同様、カザフスタンは権威主義的様相を呈しているが、ナザル バエフ大統領の人気は高く、また、経済的安定が維持されているため、現状社会不安は生 じないと見る向きが多い。

カザフスタンの政治体制は、大統領権限の強い共和制で、大統領が首相や全閣僚を任 命し議会の解散権を持つ。議会は二院制で、上院(セナート:定数47、任期6年)と下 院(マジリス:定数 77、任期5年)から構成されている。大統領と下院議員は18 歳以 上の国民の選挙で選出され、上院議員は大統領の任命と地方議会の間接選挙で選出される。

ヌルスルタン・ナザルバエフ氏は、旧ソ連時代の1990年にカザフスタン最高会議によっ て大統領に選出された。そして、1991年12月の国民投票で95%の得票率で国民から承 認され、1999年1 月には79.78%の得票率を以って再選(投票率87.05%)されたが、

(21)

この際、カザフスタン政府は有力候補と見られていたカジェゲルディン前首相の立候補資 格を取り消すなどの妨害工作をしたため、米国や OSCE(欧州安全保障協力機構)が懸 念を示すなど、カザフスタンは国際的に非難を受けた。さらに2000年6月には、「初代 カザフスタン大統領に関する法」が承認され、ナザルバエフ大統領は、大統領離職後も国 の指導者の権限を保証された。また、同大統領は、「ファミリー」と呼ばれる血縁者を要 職に配し、マスコミや経済界に強い影響力を持っている。カザフスタンの議会は、親大統 領派の政党によって議席の大半が占められている。現在の与党は、共和国党オタン、共和 国党アサル、財界系の市民党、旧集団農場系の農業党などで、野党は、共産党、民主選択 党、アクジョル党などである。

2004年9月19日、任期満了に伴う下院選挙が行われた。(候補者681名、有権者850 万人、投票率56.7%)。選挙では、野党の共産党と民主選択党が連立を組み与党に挑んだ。

67の小選挙区のうち、45の選挙区で当選者が決定し、残りの22議席については10月3 日に決選投票が行われた。与党のオタンは、小選挙区(定数67)で35議席を、また比例 代表では、60.62%の票を獲得して比例区(定数10)で7議席を獲得し、定数77のうち 42議席を獲得した。農業党と市民党の連合は11議席、アサルは4議席を獲得し、無所属 当選者は18人であった。一方、野党の共産党と民主選択党は議席を獲得できなかった。

選挙戦では、石油産業による景気回復や汚職追放が議論されたほか、共産党と民主選 択党の野党ブロックは、1993 年から1995年にかけての国有企業の私有化についての再 調査を要求し、デモを行った。また、民主選択党は、党設立者であり現在投獄されている ジャキヤノフ氏の釈放を請願する百万人の署名を提出した。こうした中、国営テレビ局は、

共産党・民主選択党から成る野党ブロックの宣伝放送を停止した(その後、中央選挙委員 会は、共産党・民主選択党ブロックの放送は内容を修正すれば放送可能と決定)。なお、

OSCEは、この選挙はOSCEの基準を満たしていないと批判し、メディアの野党偏向報 道や中央選挙管理委員会の不透明さを指摘した。

2004年のウクライナのオレンジ革命後、民主選択党が活動禁止を命じられた。カザフ スタンでは、野党勢力の有力な指導者達が投獄されるか、もしくは亡命していることもあ って、ウクライナやグルジアと異なり、民衆を牽引する政治力のある人物が少ないと言わ れている。カザフスタンでは、ナザルバエフ大統領が1990年以来権力の座にあり、独裁 化や世襲化の動きに関して内外から批判が出ているものの、豊富な石油資源と近年の原油 高に伴う経済の好調で国民の不満は頂点に達しておらず、国家が動揺するような激震が走 る可能性は少ないとみられている。しかし、選挙で政権側による不正が行われるようであ れば、ウクライナやキルギスのように政変に繋がる可能性も排除できない。

2005年12月4日に大統領選挙が実施され、ナザルバエフ大統領が得票率91%を獲得 し四選を果たした。ナザルバエフ大統領は、野党側のトゥヤクバイ前下院議長や政党「輝 く道」のバイメノフ議長らの候補を大きく引き離しての当選で、1989年に旧ソ連カザフ 共和国共産党第一書記に就任以来、16年間続いたナザルバエフ政権は、更に7年間延長

(22)

されることとなった。

2.3  経済状況

カザフスタンは、旧ソ連時代には原材料・資源の供給地と位置付けられ、原材料や中 間財を輸出し、加工品を輸入する産業構造であった。よって、旧ソ連崩壊後、旧ソ連の共 和国間による経済連携が破綻したため、大きく生産が落ち込んだが、2000年以降は、原 油価格の高騰により高い経済成長を達成しており、2004年の1人当たり GDPは2,723 ドルにまで上昇した。

原油価格の高値推移が続き、カザフスタンの経済は好調である。石油分野が経済を牽 引する形で2004年の実質GDP成長率は、前年比9.4%、2005年上期は前年同期比9.1%

と依然高い伸びを維持している。2004年に関しては、同国のGDPの約3割を鉱工業分 野が、鉱業だけでなく製造業を含めて高い伸びを示したほか、建設、商業、運輸、通信業、

その他サービス分野も二桁の伸びと好調であった。2005年上期の鉱工業生産の伸びは、

前年同期比7.0%と若干鈍化しているものの、実質GDP成長率は同9.1%と依然高い伸び を示している。政府は2005年の実質GDP成長率を8.8%、鉱工業生産の伸びを7.3%と 見込んでいる。また、2004年の固定資本投資は前年比10.6%の伸びとなり、2005 年上 期は前年同期比 50.2%と高い伸びを示している。カザフスタンでは、その割合こそ低下 傾向にあるものの、固定資本投資の約 3 割が鉱業に向けられている。近年の石油分野に おける大幅な増産は、鉱業分野への重点的な投資や、外資への開放政策が大きく寄与して いる。一方で、更なる発展のためには、石油や天然ガスなどの資源輸出型経済から脱却す る必要性もある。また、問題点としては、政府の経済への影響が大きいことに加え、民間 ビジネスにおいても透明性が欠如していること等が挙げられる。2005年9月に発表され

た世銀 Doing Business in 2006 によれば、カザフスタンのビジネス環境は86位に格

付けされており、今後の継続的な経済発展のためには、汚職撲滅、民主化推進等による透 明性の向上が急務となっている。

産業構造を分野別にGDP構成比でみると、鉱工業のシェアが約3割と最大である。近 年カザフスタンのGDP構成比に大きな変化は見られないが、石油・ガス採掘が牽引する 形で、鉱業のシェアが若干上昇している。鉱工業生産は、旧ソ連崩壊後大きく落ち込んだ が、1996年からプラス成長に転じた。1998年はロシアの経済危機の影響で、好調であっ た原油・ガス分野でも停滞が見られたが、1999年は通貨テンゲの切り下げにより、鉱工業 生産はプラスの伸びとなった。さらに、2000年以降は、毎年10%前後の伸びを記録し、

GDP 成長の牽引力となっている。特に、石油生産は1999 年代後半以来、安定した増産 を続けており、カザフスタンの鉱工業生産を支えている。現在、カザフスタンの産油量は 日量130万バレルであるが、政府は2015年までに日量350万バレルの水準に生産を拡 大する、との見通しを示している。

(23)

表2.1  カザフスタンの年別経済指標(1)

(出典:国際金融情報センター  各国の概要レポート)

表2.2  カザフスタンの年別経済指標(2)

(出典:国際通貨基金  Country Report)

カザフスタンから輸出される石油の大部分は、ロシア経由で国際市場に向かっている ため、同国は輸送ルートの多角化を目指している。2004年9月には、中国北西部へのパ イプライン建設工事が始まった(カザフスタン中部のアタスから中国のアラシャンコウに 達するもので、全長1,240km、輸送量は年間2,000万トン)。また、2005年5月には、

バクー、トビリシ、ジェイハンを結ぶBTCパイプライン(アゼルバイジャンの首都バク ーからグルジアの首都トビリシを経由し、地中海に面するトルコのジェイハンに通ずる全

長約1,765km、輸送量は日量100万バレル程度が見込まれている)が完成し、これによ

ってカスピ海東岸のカザフスタンアクタウから、アゼルバイジャンのバクーにタンカーで

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004

名目GDP 20,114 21,273 21,104 17,558 18,320 21,341 24,637 31,126 40,743

(百万ドル)

1人当たりGDP 1,263 1,351 1,400 1,176 1,171 1,374 1,593 2,069 2,723

(ドル)

実質GDP成長率 0.5 1.7 -1.9 2.7 9.8 13.5 9.8 9.2 9.4

(%)

CPI上昇率 39.3 17.3 7.1 8.3 13.2 8.4 5.9 6.4 6.9

(年平均、%)

失業率 NA NA 13.1 13.5 12.8 10.4 9.3 8.8 8.4

(%)

(単位:%)

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004

農林業 12.2 11.4 8.6 9.9 8.2 8.7 8.0 7.9 7.9 鉱工業 21.2 21.4 24.4 28.2 32.6 30.7 29.4 29.1 31.1  鉱業 NA NA NA NA 13.0 11.4 12.1 12.1 13.8   石油・ガス採掘 NA NA NA NA 9.3 8.0 9.1 9.3 11.5  製造業 NA NA NA NA 16.5 16.4 14.5 14.2 14.5   石油精製 NA NA NA NA 1.0 1.2 1.1 1.2 1.3  電力 NA NA NA NA 3.1 2.8 2.9 2.8 2.8 建設業 4.4 4.2 4.9 4.7 5.2 5.5 6.3 6.0 5.9  石油関連施設 NA NA NA NA 2.4 2.6 2.5 2.3 2.1 商業 17.3 15.6 15.2 13.6 12.4 12.1 12.2 11.6 11.4 運輸・通信業 11.3 11.7 13.8 12.9 11.5 11.2 11.6 12.4 12.2  運輸 NA NA NA NA 10.0 9.7 10.1 10.8 10.4   石油関連輸送 NA NA NA NA 1.1 0.9 1.1 1.1 1.1  通信 NA NA NA NA 1.5 1.5 1.5 1.6 1.8 その他サービス 33.7 35.6 33.2 31.9 24.5 26.1 26.7 27.8 27.0 その他共計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

(24)

輸送すれば、ロシアを経由せずに地中海に達することが可能となった。建設の背景として は、旧ソ連諸国のパイプラインは老朽化が進み、輸送能力が限界に達している、また、パ イプラインは基本的にモスクワ向けで各国とロシアとの間で輸送割り当てをめぐる争い が頻発しているなどの課題があった。将来的には、カザフスタンからバクーへ向かうカス ピ海パイプラインの敷設も検討されている。カザフスタンでは、テンギス油田に続く油田 として、カスピ海のカシャガン油田で新たな鉱区の開発に努めている。同油田の可採埋蔵 量は、最大で130億バレルに達すると見込んでおり、2008年には生産を開始できる予定 である。

最近の石油分野の動きとしては、2005年8月に、中国国有の石油最大手企業「中国石 油天然ガス集団(CNPC)が、カザフスタンの原油生産量全体の約 12%を占めるカナダ 企業「ペトロカザフスタン」を41億8,000万ドルで買収することで合意し、同10月、

買収に関わる契約が完了した模様であるとの報道があった。

2.4  外交

カザフスタンの外交の基本方針は、ロシアをはじめとするCIS 諸国との関係維持、西 側諸国との関係拡大、中国、インド、パキスタンなどの近隣諸国との善隣友好関係維持、

という全方位外交である。地理的に欧州とアジアの中間に位置することもあり、外交政策 ではカザフスタンによる欧州とアジアの架け橋的意義(ユーラシア国家)が強調される。

ナザルバエフ大統領は、CIS枠内における協力の必要性を強調し、1994年3月にユー ラシア同盟の創設を提唱した。1995年1月には、ロシア、ベラルーシとの間で関税同盟 条約(後にキルギス、タジキスタンが参加し2000年10月にユーラシア経済共同体に発 展した)を、また、1996年3月には、ロシア、ベラルーシ、キルギスと統合強化条約を 締結した。1994年7月にはウズベキスタン、キルギスと統一経済圏創設条約(1998年に タジキスタンが加わり、4 ヶ国による中央アジア経済共同体に、2001年には中央アジア 経済協力機構に発展した。)を締結した。こうした中央アジア協力機構やカザフスタン、

キルギス、ウズベキスタン間の諸条約を基礎として、EUをモデルとする共通の市場と通 貨の導入を目指しているほか、「中央アジア諸国連合」構想を提案している。

ロシアとの関係では、西部の油田地帯からロシアに原油が輸送されており、経済的な繋 がりも強い。また、カザフスタンには現在も多くのロシア人が生活しており、製造分野、

軍事関係、企業の中間管理職など、社会の中枢を担っている。旧ソ連崩壊後、両国には 1992年5月に友好相互援助条約に、同年 10月に経済・軍事面での協力関係構築に合意 しており、現在も両国の関係は良好な状態にある。近年は二国間関係に加えて、経済的に は統一経済圏構想で、政治・軍事的には上海協力機構で関係を一層強化している。統一経 済圏構想とは、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンで協議されているもので、

2003年9月に4カ国の大統領がウクライナで協議し、協定に調印した。統一経済圏とは、

関税、通貨、金融などの分野で共通の政策をとり、貿易障壁を撤廃し、商品、サービス、

(25)

資本、労働力が自由に移動できる共通の市場を構築することを目指すものである。しかし、

細部で協議が難航しているほか、ウクライナが参加の意思を表明しながらも、西側への統 合の足かせとならないように慎重に対応を進めている。カザフスタンの立場は、WTO加 盟交渉を睨んで、4 カ国が統一の条件を提示した方が得策であるとして、統一関税同盟、

運輸同盟を強く推進している。

米国との関係では、カザフスタン国内の原油開発に際し、米国石油資本が積極的に参入 していることもあり、両国の経済関係は深まっている。米国は、ナザルバエフ大統領の政 治手法に独裁的色彩が散見されることに対して懸念を表明しつつも、米国資本によるカザ フスタンエネルギー分野での権益を確保する必要があるため、概ね良好な関係を維持して いる。

WTO加盟問題に関しては、その準備が本格化している。2005年7月には、ナザルバ エフ大統領が、年内に米国、EUとの二国間交渉を完了させ、日本、韓国、トルコとの間 でも合意文書を締結する意向を表明している。既に、カザフスタンの国内法の 90%は WTO基準に準拠していると言われ、知的財産権保護などに関する国内法の整備が進めら れた。今後、加盟に向けて残る課題は、国内農業の保護である。エネルギー分野への集中 的な投資による農業分野への投資不足が影響し、同分野の低迷が続いている。また、カザ フスタンは内陸国であり、世界市場から離れていることがカザフスタン農産品の競争力を 低下させている。こうしたことから、政府は農業分野に対して補助金を出しているが、

WTO 加盟にはその削減が求められるため、政府は厳しい舵取りを迫られている。なお、

加盟時期は、ユーラシア経済共同体の国家間委員会で、ロシアなどの他の CIS諸国と歩 調を合わせることが確認されている。そのロシアは、2005年内の交渉完了を目指してい たものの、知的財産権保護などに関して米国との交渉が難航している。一方他の CIS 諸 国では、1998年12月にキルギス、2000年6月にグルジア、2001年7月にモルドバ、

2003年2月にアルメニアがそれぞれ加盟している。

2.5  アルマティ市の概要

アルマティ市は面積300平方キロメートル、人口約120万人(2001年)でカザフスタン 共和国の南東部に位置する同国最大の都市である。北緯43度に位置し、日本では札幌とほ ぼ同緯度である。アルマティ市は天山山脈の支脈であるアラタウ山脈の標高約 800 メート ルの位置にあり、アラタウ山脈の雪解け水が大アルマティ川と小アルマティ川となって市 内を流れる。また、北から南へ向かってなだらかな上り坂になっており、街の通りは碁盤 の目のように整然と区画されている。気候は他の中央アジアの諸都市と比べると過ごしや すいが、平均気温は夏が23℃、冬が−6℃と寒暖の差が激しい。

アルマティは若い街で、その歴史は浅い。現在アルマティ市がある付近は、サカ族(紀元 前 3 世紀頃)やチュルク系民族が集落を築き、東西の通商拠点の一つであることもあった が、街として開発されたのは1854年にロシア帝国が中央アジア征服のための要塞をこの地

(26)

に建設したことに始まる。それまでアルマアタ(「林檎の里」の意味、カザフ語)と呼ばれ ていた小さな集落は、ヴェルノエ(「忠実」の意味、ロシア語)とロシア風に改名された。

1867年にはセミレーチェンスキー州の州都としてヴェルヌィ市と改称、行政の中心地とな った。

ロシア革命後、1920 年にキルギス自治共和国が形成され、アルマティは同自治共和国内 に編入された。キルギス自治共和国の首都ははじめオレンブルグであったが、カザフ自治 共和国と名称を変更した1925年にクズル・オルダに移され、その後1929年に現在のアル マティに遷都した。なお当時すでにヴェルヌィはアルマアタに名称を変更していた。カザ フ自治共和国は1936年12月にカザフ・ソビエト自治共和国になり、アルマアタは同国の 首都として発展を続けてきた。1930年トルキスタン・シベリア鉄道の開業により開発が本 格的に始まり、第二次世界大戦によって旧ソ連のヨーロッパ部から大量の避難民、疎開者 がアルマアタにきたことで人口も増加、街も発展を続けた。

1986 年 12 月、アルマティで、「旧ソ連初の民族暴動(アルマアタ事件)」を経て、1990

年10月にカザフ・ソビエト社会主義共和国は共和国主権宣言を出し、1991年、旧ソ連崩壊 に伴って同年 12月16 日に独立を果たし、カザフスタン共和国と国名を改称、アルマアタ も本来のアルマティにその名を戻したのである。1997年12月10日、首都はアルマティか らアスタナ市へと遷都されたが、アルマティ市はカザフスタン経済の中心として発展しつ づけている。

発展の一方では、環境問題も顕在化、深刻化している。前述した地形と所在地によりアル マティ市は風による大気汚染物質の拡散が少ない。さらに降水量が極めて少ないために、降 雨による大気の洗脱度合いも低く、一旦放出された大気汚染物質の都市上空での滞在時間 は長い。汚染物質の発生源としては、自動車、冶金工業、石油精製工業、熱電併給所、熱 供給プラントなどである。特に、カザフスタンの熱電併給所は石炭を燃料としている所が9 割を占めており、適切な環境装置を設置していない発電所が多く見受けられる。また、環境 設備を有している熱電併給所でも、老朽化や補修不良による故障などで機能が著しく低下 している所が多い。

(27)

3.   電力・熱供給の現状と課題および今後の計画

3.1  カザフスタンにおける電力セクターの現状と課題、今後の計画 3.1.1  カザフスタンにおける現状と課題

カザフスタンは、1991年の独立以前には経済活動も活発で多くの電力を消費していたが、

独立後の混乱により、国内経済は冷え込み、電力消費量は著しく低下した。しかし、国内 が安定してきた1990年代終盤からは経済も回復し始め、現在もその成長過程にある。

2003年末におけるカザフスタン全発電所の定格総出力は18,461MWとなり、2002年と

比較して 130MW の増加となった。しかし、多くの設備が老朽化しているため、すべて定

格出力を出せる状況ではなく、ある設備は部分負荷運転を行い、またある設備は運転休止 を余儀なくされている。さらに、旧ソビエト連邦時代に構築された送電網の影響により、

電力が十分足りている地域と不足している地域の両方が国内に存在するという不均衡な送 電網が形成されており、これらが現在のカザフスタン電力分野における問題となっている。

2003年のカザフスタンの最大負荷は9,615MWであった。これに対して、供給側の発電

出力は9,703MW。このうち、438MWをロシアへ輸出し、一方では、350MWを周辺国か

ら輸入しており、これはまさに分断された送電網の弊害である。

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

時間(時)

負荷(MW)

水力発電所 熱電併給所 中央アジアとの融通 ロシアとの融通 火力発電所 負荷(MW)

図3.1  最大電力発生日における出力バランス

(28)

表3.1  カザフスタンの最大電力発生日における出力バランス(2003年12月26日)

発電出力(MW)

時間 負荷

(MW) 合計 熱電併給所 水力発電所 火力発電所

ロシアとの 融通

(MW)

中央アジア との融通

(MW)

0 8,878 9,157 8,132 830 195 ‐500 221

1 8,551 9,102 8,154 753 195 ‐656 105

2 8,434 9,037 8,113 729 195 ‐650 47

3 8,366 9,038 8,110 733 195 ‐571 ‐101

4 8,371 9,047 8,125 727 195 ‐590 ‐86

5 8,448 9,012 8,095 722 195 ‐452 ‐112

6 8,549 9,078 8,147 736 195 ‐427 ‐102

7 8,775 9,137 8,131 811 195 ‐348 ‐14

8 9,022 9,269 8,171 903 195 ‐246 ‐1

9 9,144 9,398 8,194 1,009 195 ‐607 353

10 9,143 9,431 8,224 1,013 194 ‐451 163

11 9,023 9,451 8,216 999 200 ‐587 195

12 8,794 9,362 8,176 986 200 ‐696 128

13 8,591 9,240 8,067 973 200 ‐783 134

14 8,591 9,259 8,174 885 200 ‐764 96

15 8,466 9,123 8,107 816 200 ‐763 106

16 8,521 9,037 8,049 788 200 ‐563 47

17 8,752 9,267 8,100 967 200 ‐584 69

18 9,338 9,424 8188 1,036 200 ‐339 253

19 9,615 9,703 8,313 1,190 200 ‐438 350

20 9,424 9,621 8,311 1,110 200 ‐549 352

21 9,397 9,541 8,304 1,037 200 ‐514 370

22 9,331 9,532 8,333 999 200 ‐608 407

23 9,162 9,438 8,308 930 200 ‐597 321

※融通でのマイナスは、輸出電力を表す。

(出典:カザフスタン共和国首相府編  カザフスタンの経済)

2003年のロシアとの融通電力は2,326,300MWhであった。このうち、カザフスタン西部

地域では1,506,700MWhをロシアから輸入し、北部地域では3,833,000MWhをロシアへ輸

出している。また、中央アジア方面との融通は 655,300MWh であり、キルギスから

(29)

485,400MWh を、タジキスタンから 169,900MWh をカザフスタン南部地域へ輸入してい る。2003年で特筆すべき事項は、カザフスタンの送電網を利用して、初めて中央アジアか らロシアへ電力を供給したことである。その電力量は903,500MWhで、内訳はキルギスか ら713,900MWh、タジキスタンから189,600MWhであった。

表3.2  カザフスタンの電力バランス

単位:1,000MWh 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年

発電量 47,497 51,635 55,355 58,289 63,653

電力需要 50,262 54,369 56,782 58,159 61,982 国外からの電力輸入 5,683 6,026 3,636 2,391 2,162 国外への電力輸出 2,917 3,292 2,210 2,521 3,833

(出典:カザフスタン共和国首相府編  カザフスタンの経済)

2003 年のカザフスタン国内の電力需要は 61,982,000MWh に達し、2002 年比で

3,934,500MWh増(6.8%増)であった。需要増の大きな要因は、大企業の生産活動が回復

したことによる。増加率の大きかった系統は以下のとおり。

パブロダール州 :  1,142,900MWh(前年比11.5%増)

アルマティエネルギー系統 :  505,500MWh(前年比10.7%増)

カラガンダエネルギー系統 :  384,500MWh(前年比4.9%増)

コスタナイ州 :  344,400MWh(前年比8.0%増)

ジャンブール州 :  324,500MWh(前年比13.6%増)

また、地域ごとの電力需要は以下のとおりである。

北部地域 :  41,949,100MWh(構成比67.7%)

南部地域 :  11,541,800MWh(構成比18.6%)

西部地域 :  8,491,100MWh(構成比13.7%)

表3.3  カザフスタンの電力需要予想

単位:1,000MWh

2000年 2005年 2010年 2020年 2030年

北部地域 37,920 42,000 47,000 58,200 64,000 南部地域 9,490 12,200 13,500 18,300 22,000 西部地域 6,970 11,100 17,700 28,500 34,000

合計 54,380 65,300 78,200 105,000 120,000

(出典:カザフスタン首相府編  カザフスタンの経済)

(30)

0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000

1986 1990 1994 1998 2002 2006 2010 2014 2018 2022 2026 2030 年

電力量(1,000MWh)

実績 予想

図3.2  カザフスタンの電力需要実績と予想

(出典:カザフスタン首相府編  カザフスタンの経済)

カザフスタン中央政府は、今後も順調な経済成長とともに電力需要は伸び続けると予想 している。しかしながら、既設発電設備の老朽化や分断された送電網等の問題により、現 状では需要の伸びに追いつけないことは認識している。この状況を克服するために、既設 の改修や新設とならび、電力セクターのシステムそのものの改革を推し進める必要があり、

政府はその動きを加速させ始めている。

3.1.2  カザフスタンにおける今後の計画

カザフスタンは、独立以来、世界経済への早期参入という目標のために、電力分野の改 革に努めてきた。その中で、電力市場の自由化に関しては早くから構想にあり、様々な対 応を行ってきた。例えば、

・  国内送電線及び国家間送電線を管理する株式会社KEGOCの設立

・  電力の購入、分配、販売を行う配電会社RECの設立

・  大規模発電所の株式化(民営化)

・  電力分野への国の介入と市場経済との調整

・  電力卸売市場OREMの形成

・  市場自由化に向けての各種法律の整備 などである。その結果、

・  市場参加者の職務への責任感高揚により、電力品質の向上や経営に対する感性が高ま った。

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