• 検索結果がありません。

柏木如亭『詩本草』・『訳注聯珠詩格』

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "柏木如亭『詩本草』・『訳注聯珠詩格』"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

研究者と図書館

7

 「柏木如亭と出会ってから、もう三十年近くに なる。富士川英郎氏の『江戸後期の詩人たち』

が最初の出会いの場だった。出会った途端、そ の自由奔放な生き方と清新な抒情詩に強く惹き つけられ、以来なんとか自分の手で如亭の生涯 を復原し、詩の魅力を解き明かしてみたいと思 うようになった。(揖斐高『遊人の叙情 柏木 如亭』あとがき、『遊人の叙情 柏木如亭』岩波 書店、2000年所収)

 何気なく手に取った一冊が、未知の領域に踏 み込むきっかけになることはよくある。揖斐高 氏にとって、富士川英郎氏の『江戸後期の詩人 たち』との出会いがなければ、忘れられた詩人 だった柏木如亭の生涯とその清新な魅力を明ら かにすることはなかった。

 「私が本書を初めて手に取ったのは、昭和 四十六年の夏秋の交ではなかったかと思う。い わゆる大学紛争の影響で、変則的に七月に国文 学専攻の大学院に入学したばかりの頃だった。

国文学研究室の書棚にあった麦書房版の本書を 借り出して読み始めたが、一気に読み終わった。

当時の私は日本の漢詩や漢詩人についてほとん ど無知であったにもかかわらず、深い感銘を受 けた。(中略)しかし、本書において私自身がもっ とも惹かれた詩人は、菅茶山ではなく柏木如亭 だった。柏木如亭は、幕府の小普請方大工棟梁 をつとめる豊かな家に生まれたものの、遊蕩に 身を持ち崩し、詩に魅入られた挙げ句、家職を 辞して遊歴の境涯となり、旅先の京都で窮死し た詩人である。『解説 私的『江戸後期の詩人 たち』頌』、富士川英郎『江戸後期の詩人たち』

東洋文庫816所収)

 柏木如亭の著書は、今岩波文庫で読める。『詩 本草』(黄280-1)と『訳注聯珠詩格』(黄280-2)

の二冊で、いずれも揖斐高氏の校注である。

 『詩本草』は柏木如亭が、行く先々で口にした 美食と、旅の記憶に漢詩を結合させた随筆であ る。清の袁牧の『随園食単』とフランスのブリア・

サヴァランの『美味礼賛』に匹敵する魅力的 な一品である。『詩本草』は柏木如亭(1763 ~ 1819)の遺稿として文政5年(1822)に出版され た。江戸と京都での遊蕩生活において酒楼の料 理を飽食した如亭が、両都の食味を体験的に評 論した一段、『詩本草』の第三十八・《京の名品》

の冒頭にある七言詩を揖斐高氏の書き下し文で 引用する。

 京きょうぐうかえ寓還り来きたつて便すなわち家に当つ 嵐山鴨水の旧 生涯 老夫は是れ官を求むる者にあらず 祇 愛す平安城外の花

 『聯珠詩格』は宋末・元初の于済が三巻本とし て原撰し、同じ宋末・元初の蔡正孫が増訂・附 注し二十巻本として、元の大徳四年(1300)に 刊行した選詩集である。それを柏木如亭が抄訳 し、『訳注聯珠詩格』と題して享和元年(1801)

に四巻二冊として出版した。書名にいう「聯珠」

とは、美しい表現を連ねた詩句の意であり、「詩 格」とは詩の表現上の格式(形式)を意味して いる。如亭の後半生は、多く地方を旅して詩を 教え、書画を揮毫して潤筆料を得るという、い わゆる遊歴の境涯のうちに過ぎていった。そう した生活におけるもっとも早い時期の遊歴先が 信州中野である。信州中野に如亭が寓居を定め たのは、三十三歳の寛政七年であったと推定さ れる。如亭はここに晩晴吟社という詩社を開き、

近在の人々を集めて詩を教えた。その晩晴吟社 での詩作講義のテキストとして用いられたのが

『聯珠詩格』だった。如亭は晩晴吟社の門人たち を前に、『聯珠詩格』の一首一首を俗語を用いて

「訳注」してゆくことで、詩の読解や作詩の勘所 を説き示していった。

 『訳注聯珠詩格』から、李白の詩『山中の人に 答ふ』を書き下し文と如亭の話し言葉を使った 訳で比較対照する。

 (書き下し文)余に問ふ 何の意ぞ碧山に棲む と 笑ひて答へず 心自ら閑なり 桃花流水杳 然として去る 別に天地の人間に非ざる有り  (如亭の訳)どういうきで やまおくにすむと  おれにきくから にこにこもので あいさつ もせぬぐるみ こころがしぜんとひまだ もも のはながながれちつて とほくへいくところ  べつなせかいがあって うきよとはちがつたも のさ

かげやま たつや(教授・中国文学)

中国のほんの話(67)

柏木如亭『詩本草』・『訳注聯珠詩格』

~ 江戸時代後期の漢詩人、デカダンスの漂泊詩人 ~

蔭山達弥

中国のほんの話 6 7

参照

関連したドキュメント

を世に間うて一世を風塵した︒梅屋が﹁明詩一たび関って宋詩鳴る﹂

わからない その他 がん検診を受けても見落としがあると思っているから がん検診そのものを知らないから

1A 神の全知 1-6 2A 神の遍在 7-12 3A 神の創造 13-18 4A 神の救い

日本語で書かれた解説がほとんどないので , 専門用 語の訳出を独自に試みた ( たとえば variety を「多様クラス」と訳したり , subdirect

 このようなパヤタスゴミ処分場の歴史について説明を受けた後,パヤタスに 住む人の家庭を訪問した。そこでは 3 畳あるかないかほどの部屋に

海なし県なので海の仕事についてよく知らなかったけど、この体験を通して海で楽しむ人のかげで、海を

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

・私は小さい頃は人見知りの激しい子どもでした。しかし、当時の担任の先生が遊びを