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追悼・大石慎三郎先生 (財)信州農村開発史研究所主任研究員

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Academic year: 2021

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追悼・大石慎三郎先生

(財)信州農村開発史研究所主任研究員

斎 藤 洋 一

大石慎三郎先生は,昨年 5 月 10 日,東京都府中市榊原記念病院で肺炎のため逝去されました。

享年 80 歳でした。それからほぼ 1 年が経ちますが,いまだに残念でなりません。

先生は,1923(大正 12)年に,愛媛県北条市でお生まれになられました。44 年に東京帝国大 学文学部国史学科に入学され,兵役をはさんで,49 年に東京大学文学部国史学科を卒業されま した。

文部省史料館・市立高崎短期大学・神奈川大学を経て,63 年に学習院大学経済学部教授とな り,94 年 3 月の定年まで務め,同年 4 月に学習院大学名誉教授となられました。

この間,75 年より 84 年まで学習院大学史料館長を兼ね,83 年より 87 年まで学習院大学経済学 部長を 2 期務められました。また,81 年より徳川林政史研究所長を兼ね,学習院大学退職後の 98 年 9 月まで務められました。94 年 10 月には,新設された愛媛県歴史文化博物館の初代館長とな り,逝去の日まで務められました。

先生は,近世農村史の研究から歴史研究に入り,その後「享保の改革」を生涯の研究テーマと されましたが,それにとどまらず研究は多岐にわたりました。著書は多数ありますが,主なもの をあげますと,研究書には『封建的土地所有の解体過程』(御茶の水書房,58 年),『享保改革の 経済政策』(同,61 年。この年 12 月に「享保の改革の経済政策」で東京大学より文学博士の学位 取得),『近世村落の構造と家制度』(同,68 年),『日本近世社会の市場構造』(岩波書店,78 年),

『田沼意次の時代』(同,91 年),『享保改革の商業政策』(吉川弘文館,98 年)などがあります。

一般書には,『庶民の抬頭』(講談社,69 年),『元禄時代』(岩波新書,70 年),『大岡越前守忠 相』(岩波新書,74 年),『江戸時代』(中公新書,77 年),『天明三年浅間大噴火』(角川書店,86 年),『将軍と側用人の政治』(講談社現代新書,95 年)などがあります。このほか自治体史や史 料集の編纂も数多く手がけられました。

このように先生は,相次いで著書を発表され,また学内外で要職を務められました。その働き ぶりは,私からは驚異的に思われます。

これについて,助手時代のことですが,忘れられない思い出があります。ある調査旅行にお供 したときのこと,私は前の晩に酒を呑み過ぎて,朝 5 時ごろに目がさめてしまいました。そこで トイレに行こうと廊下を歩いていると,先生の部屋のドアが開いていました。何気なく見ると,

なんと先生が机に向かっておられたのでした。前の晩,一緒に酒を呑まれたのにもかかわらずで す。我が身を省みざるをえませんでした。

このような先生に,私が初めてお目にかかったのは,文学部史学科に入学した 70 年のことで した。以来,30 年以上にわたってご指導いただいてきたわけですが,とくに 77 年に修士課程を 修了し,史料館へ助手として就職してからは,公私にわたってご指導いただきました。史料館で は,館長の次が助手で,さまざまな用務があったからです。おかげで右に一例を述べたように,

先生の仕事ぶりを身近で見聞することができ,さまざまな勉強をさせていただくことができまし た。

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先生から折にふれて教えていただいたことはたくさんありますが,なかでも「通説を鵜呑みし ないこと」「できるだけ現地に足を運ぶこと」「文章はわかりやすく書くこと」などの教えは肝に 銘じています。

その後,85 年に史料館を退職し,現在の職場へ勤務するようになってからも,引き続き親身 にご指導いただきました。とくに 95 年には先生のご推薦で,先生がプロローグを執筆され,私 が本文を執筆した『身分差別社会の真実』(講談社現代新書)を出版することができました。こ れは先生のご推薦がなければかなわなかったことです。

ところが,2001 年に先生が,中学校用のある歴史教科書の監修者に名前を連ねておられるこ とを知り,音信を控えるようになってしまいました。私には,この事実を受け入れることができ なかったからです。今となってみれば,先生のお考えを率直にうかがっておくべきだったと悔や んでいます。

そのような事情で,この数年は音信が途絶え勝ちでした。そうしていたところへ先生の悲報が もたらされました。さっそくお伺いしようと思いましたが,「死者は生者を煩わすべきではない」

という先生のご指示で,ご葬儀は近親者だけで営まれるということでしたので,後日お焼香させ ていただきました。その際,最後まで先生のお側におられた方から,「先生が斎藤さんの処遇の ことを心配しておられましたよ」とうかがい,感謝とふがいなさとで,涙がこぼれました。

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本論文冒頭

参照

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