研 究 集 会
第2回 (6月25日)
口頭伝達
一記号論的説明の限界一
井谷 玲子
伝達 は二つの情報装置 を必要 とす るプロセスで あ り、一つの装置が もう一つの装置の物理的環境 を変えようとす るものである。その結果、受信側 の装置 は送信側 に既 にあった情報、又それに似 た 情報 を再生す ることになる。例 えば口頭伝達 にお いて話者 は聞 き手の音響環境 を変 え、その結果話 者の伝 えたかった思考 と似 た思考 を聞 き手は得 る ことになる。 ここでの問題 は、二つの全 く異 なる 刺激、即 ち音パ ター ンとい う発話 と、それが表わ す話者の思考が如何 に して必要 なだけ類似 した も のになるのか とい う問題である。ア リス トテ レス の時代か ら現代記号論 に至 るまで全ての伝達理論 はコー ドモデル とい う一つのモデルに基づいて き た。 コー ドとい うのは内部 メ ッセージを外部信号 (シグナル) と結 びつけ、生物 であれ機械 であれ 二つの情報処理装置が伝達で きるようにす る もの である。言語発話 は人間の最 も重要 な伝達手段で あるが、発話が信号であ り、話者の思考 をコー ド 化 した ものであると考 えられる。 しか しなが ら、
あいまい性解決、省略部分又意味的不完全分の完 成、指示物 同定発話内効力の決定、比倫表現認識、
暗示的内容回復等、発話解釈 とい うのが、発話 と い う信号 の解読以上 を要するのは明白な事実であ る。 もちろん言語 は文、発話の音声表記 と意味表 記 を対 にす るコー ドであるとみなせ るが、意味表 記 と実際発話 によ り伝 え られる話者の思考の間に はギャップがあ り、そのギャップは、 コー ド解読 ではな く、推論 とい うプロセスによって埋 め られ るのである。ここで語用論的課題である推論 プロ セスの解明が大切 な研究テーマとなったのである。
参考文献
WilsonandSperber(1987) ̀PrecisofReユ evance:Communication and cognltion'Beha viouralandBrainSciences697‑754
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