BulletinofFacultyofEducation,NagasakiUniversity :CumiculumandTeachingNoA6(2006)1191126
心を育む体育授業の研究
松永 淳一*・有田 敏広 * *
(平成 17年10月31日受理)
AStudyonPhysicalEducationClassesAimingtoImproveSchoolchil血en'sMind
JyunichiMATSUNAGA*・ToshihiroARIDA** (ReceivedOctober31,2005)
1.は じめに
最近 の子 どもをめ ぐる問題行動 は,キ レル,不登校, 自殺 な どの 自傷 の ものか ら,い じ め,暴力 ,学級崩壊,殺人 な どの他 に危害 を及 ぼす ものまで 目にあまるものがある。 これ らの行為 はいずれ も 「他人のことを考 えない」 自己中心的な思考 によるもの と考 えられ る。
1998年 の中央教育審議会答 申では1),い じめの問題 を学校 として取 り組む最 も重要 な課 題 のひ とつ に挙 げ,1994年〜 1995年 に行 った 「児童生徒 のい じめ等 に関す るアンケー ト 調査」 をもとに,い じめ体験のある子 どもは,一般 の子 どもに比べて 「正義感やル ール を 大切 にす る心,思いや りの心が希薄 である」 と報 じてい る。 また,榎本 は2)は これ らの子 どもが抱 えるJLの問題 に関 して 「こ うした問題 の根底 にあるのは,人 間関係 の欠如, ある いは人 と関わ る体験の希薄 さ,それ による自己像や他者像の不確 か さ,そ うしたつかみ ど ころのない 自分 と他人 を前 にしての不安や苛立ちである」 と述べ てい る。 さらに,NHKの 世論調査3)による と,友人 とのつ きあい方 において, 「心の深 い ところは出 さないで, ご く表面的 につ きあ う」 とした者 が,親友 の場合で も中学生約35%,高校生約30%,普通 の友達 の場合 は中学生約85%,高校生で約90%にのぼ り, コ ミュニケー シ ョンの希薄 さ を示 してい る。 こ うした人 と人 との関わ りの弱 さは,他者 の考 えや立場 を推 しはかって他 者 を理解す る能力 の低下 に繋が ると考 え られ る。今求め られ る心の教育 に関 して南本 は4)
「他者へ の思いや りに乏 しい とか, 自分勝手 な行動 を繰 り返す とか,主 に社会性 に関わ る 課題 であ り,心 を育て る教育の重点 として,いかに子 どもの社会性,特 に協 同的な関わ り を育てるかが重要である」 と述べてい るよ うに, これか らの教育では,心の教育 を中心に 据 えた協 同 とコ ミュニケーシ ョンの広 が りや深 ま りを重視す る必 要がある。
ここで,体育授業 にお ける心 の教育の可能性 を探 って見 よ う。
まず,他教科 が持 ち合わせ ない体育授業 の特性 を検討す る。賀川 は5) 「体育授業 は, そ の身体活動性,集団性,情緒怪,課題解決性, といった点で豊かな疑似社会体験の場 を持 っ てお り,現代 の教育課題 である 『心の教育』 に最適 である」と述べ, さらに松 田は6) 「体
*長崎大学教育学部保健体育教室 **宇部市立小羽山小学校
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青 は,授業 に対す る子 どもたちの欲 求 も高 く,また相互 に関わ りなが ら学習が進 め られ る 機会 が多い こ とか ら,子 ども相互 の トラブル も多 く発生 しがちであるが, これ は体育が仲 間の気持 ちに 目を向け,相互 に理解 し合 って学 んで行 く大切 さを教 えるの に恵 まれ た教科 であ る」 と述べてい る。その他 ,特性 を挙 げる と, コ ミュニケー シ ョン活動 を中心 とした 集 団学習,集 団の共通 目標達成‑ 向 けた協 同,あるい は役割 分担 とその責任遂行,心 も体
も解放 した状態 での仲 間 との交流, 目標達成 による感動体験 の豊 か さ等 があ り, ま さに, 高橋 が 7)述べ てい るよ うに 「心 を育 む教科」 として最適, あるいは責任 を持つ教科 と言 え
よ う。
次 に,本研究 にお ける 『心』 とは,現行学習指導要領 の 「生 きる力 」 としての豊 かな人 間性 ,す なわ ち 「自らを律 しつつ,他人 とともに協調 し,他人 を思いや る心や,感動す る 心な ど」 と社会現象 を考慮 し,その必要性の中核 となる 「他人 を思いや る心」す なわち 『思 いや りの心』 に限定す る。
で は,思 いや りの心 とは どの よ うなもので あろ うか。松 田による と8),一般 に 「他者 の 立場 に立 って,他者 の気持 ちを汲 んで考 えることがで きる」 あるい は 「他者 の立場 に立 っ て行動 で きること」 の二つ の意味 を含 み,前者 を共感性 ,後者 を愛他 的行動 としてい る。
また,共感性 の生起過程 について,P.マ ッセ ン,N.アイゼ ンバー グは9),①他者 の感情 認知 :仲 間の感情 の変化 を知 り, その感情 が どの よ うなものか知 る‑(診役割取得能力 :仲 間 と同 じよ うな立場 か ら,その場 の現象 を見 ることがで きる‑③感情 の共有 :相手 の立場 を理解 す るだけでな く,感情 を共有 できる としてい る。 したがって, 「思 いや りのある行 動」 とは共感性 の上 に立 った愛他 的行動 と定義 で きよ う。
そ こで本研 究 では, 「思いや りの心」を共感性 の三つ の レベル と愛他 的行動 の関連 か ら 捉 え,体 育授業 にお ける, 「思 いや りの心」を育 む学習活動 と教 師の関わ りを明 らか にす
る こ とを 目的 とした。
2.研 究方法
1)調査1 思いや りの心 を育む学習活動 を捉 える際 に,心 を育む視点 か ら体育授業 を 見つ め直す必 要がある。 そ こで,体育授業 の現況 か ら問題点 を探 り,思 いや りのあ る 行動 を導 き出す学習指 導 のあ り方 を明 らかに しよ うとした。
長 崎県下 の公立小学校教諭3名 を対象 に 口述調査 を行 った。
期 間 は 2003年5月 下旬 であった。
調査 内容 は ①思 いや りの心 の捉 え方 ②体育授業 で思いや りの心 を育む可能性 と 期待 ③思いや りの心 を育む学習活動 とは ④体育授業 における学び合い (教 え合い)
の実態 ⑤集 団 目標設定 の実態 であった。
2)調査 2 思いや りの心 を育む学習理論 を,体育授業 で実践 に移 す には,心 (思いや りの心) の教育 をね らった授業 の実践状況及 びその必 要性 を明 らか に しよ うとした。
長崎県下の公立小学校教諭88名 を対象 に質問紙調査 を行 った。 回収率 は38.6%で あった。
期 間 は 2003年 10月上旬 であ った。
調査 内容 は 【1】教師が考 え る思いや り観 【2】体育授業 と思 いや りの心の関連
① 体育授業 で思いや りの心 を育 め る可能性 ②体 育授業 と他 の教科 との比較 【3】
体育授業 での学 び合 い ・教 え合 い について ① グルー プの意志決定 (目標 ・学習の方
松永淳一 ・有 田敏広 :心 を育む体育授業 の研究 121
向性 の設定) について ②教 え合いでの児童 の関係 について ③教 え合 いでの児童 の 様子 についてであった。
3.思 いや りの心 を育む視点か ら捉 えた体育授業 の問題点
調査1よ り,調査対象者3名全員 の一致 した回答 か ら,次の4項 目が思いや りの心 を育 む上 での問題点 として挙 げ られ た。
(1) 技能優先 の学び合 いであ ること
(2)一方通行 の教 え合 いであること (3) 集 団の 目標 が不明確 であ るこ と
(4) 集 団 目標 と個人 目標 の関連 が不 明確 であること
(1)については技能上位 の児童,または,集 団の リー ダーが集 団での学習 に大 きな影響力 を発揮 し学習が展 開 されている。そのために,特 に集 団的スポーツであれ ば,技能下位 の 児童 は 「何 をしてい るのかわか らない」, 「何 をすれ ばよいのかわか らない」 といった状態 で立 ちつ くす様子が うかがえる。川 島も10)技能上位 の児童 を中心 に学習が進 んで しまい, 体力や技能 に劣 る児童が邪魔扱 い されて しま う状態 では,児童の上下関係 が 目立 ち,人間 関係 を悪 くして しま うこともあると述べてい る。そ うではな く,細江 が 11)が述べてい るよ うに,他人 を思いや る気持 ちを育むには技能上位 の児童 も技能下位 の児童 も,互い を認め 合い,それ ぞれ の個性 を発揮 し合 える関係‑発展 させ ることが,必要 と考 え られ る。
(2)については,教 える側 は教 える仲 間の技能,身体 的特徴,立場 をあま り考慮せず, た だ指示す るのみで,教 え られ る側 は何 を言われてい るかわか らない状態 での教 え合い場面 が見 られ る。また,教 え合いのほ とん どが技能上位 の児童か ら技能下位 の児童‑の一方通 行 であ り,双方 のや りと りのない,教 え合 い とは言 えない状況 が見 られ る。
岡出が12)述べてい るよ うに,技能下位 の児童 と技能上位 の児童 とい うレッテル貼 りが無 意識 に行われてい るのであれば,下位 の児童 には劣等意識が 自然 に芽生 え,上位 の児童 は 下位 の児童 は仕方 がない といった見方 に陥って しま う。 これでは児童が相互 に関わ ること の必然性 は生 じて こない。
この よ うに, 「教 える」 とい うことは,上位 が下位 に 「教 えてや る」 とい う意味 に捉 え られがちである。出原 が13)述べてい るよ うに, この一方通行,優劣 の関係 を, よ り対等 な 関係‑近づ けること,す なわち, 「縦 のつなが り」ではな く, 「横 のつなが り」を生む こと が必 要 と考 え られ る。
(3)については,特 に,集 団的スポーツの場合,集 団 目標 が不明確 なまま,学習が展 開 さ れ ることが多 く,集 団 目標 に対す る個 々の共通意識 も希薄 な状態 で学習 してい る様子 が見 られ る。す なわち,みんなで集 団の力 を高 め よ うとす る 目標, 目標 を達成 しよ うとす る共 通意識 をもたせ る指導, 目標達成 に向か うプ ロセスを児童 に理解 させ,実践 させ る指導が 十分 にで きてい ない。
津 田が14)述べてい るよ うに自分 とは異 なる他者 と共通 の 目標 を設定 し,それ に向かって 協力 し合 うことは,向社会的行動 の発達 に欠かせ ない といわれてい る。 この ことか らも, 仲 間 と共通 目標 の達成 を 目指す 目的意識 を共有 し,協力 し合 う関係 を作 り出す ことが必要
と考 え られ る。
(4)については,集 団 目標 と個人 目標 の関連が希薄 であ り,集 団 目標 に対す る個人 目標 の 位置づ けが不明確 な状況 が多 く見 られ る。そのために,集 団 目標達成 のために とるべ き個
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人 の活動 としての関連 が見 られず,個 々の活動 が集 団 目標達成 の活動‑反 映 されず,個 々 の連携 が生 じない現象 が見 られ る。(3)で述べ た よ うに,共通 の 目標‑ 向かい,仲 間 と協力 しあ うことは,相互理解 の上 で思いや りの心 を育む条件 として欠 かせ ない。細江が15)述べ てい るよ うに,個人 目標 は集 団 目標 に依存す ることを理解 させ,共通 の 目標達成‑向け, 一人ひ とりが個 々の力 を発揮 し,仲 間 と力 を合わせ,協力 し合 う関係 を作 り出す ことが必 要 と考 え られ る。
以上4項 が,心 を育む体育授業 としての問題点 として示唆 され た。 これ らの要因が,仲 間の立場 を認め,仲 間の立場 で理解す ることや,仲 間 と同 じ気持 ちを共有す る,す なわち 共感 の体験 を阻害 してい る と考 え られ た。
4.体 育授業 における思 いや りの心 を育む児童 の姿 とそれ に対す る教 師の関わ り方 ここでは,3の問題 を受 け,児童 が関わ り合い を育んでゆ く姿 を捉 え, それ に対す る教 師 の関わ りを明 らか にしよ うとした。
その学習過程 は共感性 の 「他者 の感情 の認知」, 「役割取得」, 「感情 の共有」か ら捉 えて い く。
1)他者 の感情認知 :相手 の感情 の変化 を知 り, その感情 が どの よ うな ものか知 る
<児童 の姿 >
目標 の設定や課題 の選定 な ど,学習活動全般 にわた り仲間の意見や思い を受 け入れ, 仲 間の気持 ちを理解 す る姿 であ る。
集 団的スポー ツでは,集 団 目標 の設定, 目標達成 をめ ざした課題 の抽 出の際 に,互 いの気持 ちに 目を向 け,理解 し合 お うとす る。 さらに,個 々の活動 が集 団 目標 の達成 に欠 かせ ない もの と認識す ることによって,仲 間一人ひ とりの活動 が重要であるこ と を 自覚 し,仲 間 に 目を向 け,仲 間の気持 ちを理解 しよ うとす る意欲 を生み出す と考 え る。
また,集 団的スポー ツの場合 は, ゲー ムの中で も仲 間の感情 を認知す る場 が多 く存 在す る。す なわ ち,作戦や連係 プ レー を必要 とす る場合,仲 間の気持 ちを考 えなが ら
プ レーす る必要 があ る。 また, フォ ローや カバー リング等 の プ レー は仲 間の気持 ち を 感知 して起 こす行為 であ る。 さらに,ゲーム を振 り返 る際 には, この よ うなゲーム に お ける他者理解 の重要性 を児童 が認識す ることで,ゲーム中にも仲 間の気持 ちを理解 しよ うとす る姿 が見 られ るよ うにな る と考 える。
個人的スポー ツの場合 は,集 団的スポーツよ りも,で きない ときの悔 しさや悲 しさ な どの,ネ ガテ ィブな感 情 が表れや す く仲 間の感 情 と直面す る機 会 が多い。
これ よ り,仲 間の個人 目標 を理解 し,活動や努力 を認 め合 うことで,仲 間の気持 ち に 目を向け,理解 しよ うとす る姿 が見 られ よ う。
<教 師 の関わ り>
これ に対す る教師の関わ りとしては ○仲 間の活動 に 目を向け,気持 ちの理解 を促 す 関わ り ○仲 間の気持 ちや気持 ちの変容 に気づ かせ る関わ りが必 要 とな る。
仲 間の気持 ちの理解 を促す には,前述 の よ うに,集 団 目標達成 ‑ の意志 の統一 と, 目標達成 に対す る個人 の活動 を明確 にす る必要がある。それ には,個 々の 目標 を確認 し, 目標達成 との関連 か ら個 々の活動 を振 り返 る場 を設 け,仲 間 の思 いや活動 を尊重 す る機会 を充分確保 す る必 要が ある。 その中で教師 は 「目標達成 にはみんなの活動 が
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必要ですね」, 「目標達成 のために どの様 な気持 ちで学習 してい るかな」 な ど,仲 間の 気持 ちに 目を向けさせ る言葉 かけを行 った り, グルー プノー トに個 々の思いを記入す
る欄 を設 けるな どの工夫 が必 要 とな る。
2)役割取得 :相手 と同 じよ うな立場 か ら,その場 の現象 を見 ることがで きる。
<児童 の姿 >
集 団的スポーツの場合 には,個 々が担 う役割 を通 して,仲 間の立場 と置 き換 えて活 動す る姿が見 られ る。す なわち, 「今 日のゲームは,みんなにボール が回っていて, シュー ト数 も多いな」,「〜君 は苦労 してい るだろ うな」, 「自分がその係 だった らどう だろ う」 これ は,仲 間の立場 を 自分の こ ととして考 える姿 である。 さらには, 「〜 さ ん,誰 か手伝 ってほしい と思 ってい るかな ?」, 「自分がその係 だった ら,手伝 って く れ る人 がいた ら嬉 しいだろ うな」 これ は,仲 間の気持 ちを くんで行動 を考 え,行動す
る姿 である。
児童 は,集 団 目標達成 のために必 要な役割 を分担 し,それ を 目標達成 の関連 か ら振 り返 ることで,個 々の役割や存在 を認 め合 う。そ こか ら, 「何 をしてほ しい と思 って い るか,何 をしてあげれ ば良いか」 と仲 間の立場 を自分 に置 き換 えて考 え,行動す る と考 える。
また,集 団 目標 に基づ く個 々の 目標 を,お互いに理解 し認 め合 うことは 「一人ひ と りがで きること,や ろ うとす ることに相違 はあるが,集団の 目標達成 に向か う気持 ち は同 じである」 とい う意識 を持 たせ られ ると考 える。 この意識 を持つ ことで,仲 間の 立場や努力 を認 め,仲 間の立場 に立 ち,仲 間の気持 ち を考 えて行動す る と考 える。
個人種 目の場合 は,役割分担 か ら仲 間の立場 を置 き換 える体験 は少 ない。 しか し, 自己の体験 か ら仲間の置かれている立場や,その時の気持 ちを考 えて行動 を起 こす頻 度 は高い。
で きない児童が置 かれている立場 は,できるよ うになった児童 に とって 「過去の 自 分」であ り, 自分がかって,苦労 しなが ら克服,達成 してきた段 階で足踏み してい る 同士 と見 るよ うになる16),17)。 こ うして仲間の置かれてい る立場 を 自分の経験 と照 らし 合わせ て, どの よ うな行動 を とるべ きか を考 え,行動す る と考 える。
<教 師の関わ り>
まず,調査2よ り 「教師が持つ思 いや り観」 について図1に示す。
I 教 え合い、協力等、他者 との協同の場が多い EZl 他者 との共感場面が多い
■ 心 と体のふれ合いが ある 団 人間関係 が顕著である
白 その他
n=34 x21※※※
図1 体育授業が思いや りの心 を育む理 由
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思いや りの心の捉 え方 は,図1よ り 「相手 の立場で考 え行動す る役割取得」が最 も 多 く,次いで 「他者 の尊重,親切 ・気配 り」 であった。 これ よ り 「役割取得」 の指導 が最 も重要で,体育授業 でも 「相手の立場 で考 える」, 「相手の立場 を自分の立場 に置 き換 えて行動す る」 な どの指導 を充実 させ る必要がある。
各 自が集 団 目標達成‑向けて活動す る中で,児童が一生懸命 になれ ばなるほ ど,失 敗 を責 めた り,仲間のせいにした りと集 団内での衝突が生まれ る。その中で教師は 「 〜
さんも 目標達成‑向けて 自分 な りに一生懸命 だ と思 うよ」, 「自分が同じよ うに責 め ら れた らどうだろ う」 な どの言葉 かけを行 った り,その問題 をグループや学級全体で考
える機会 を設 けるな どの関わ りが必要 となる。 このよ うな経験の繰 り返 しによ り,相 手 の立場 を 自分 と置 き換 えさせ,取 るべ き行動 を考 えさせ るよ う仕 向けなけれ ばな ら
ない。
また,役割 については役割 の仕事で苦労 してい る仲間に対 し, 自己の経験 か ら 「ど のような行動 をすれば良いか」 を考 えさせ る言葉かけ,また,長期的ではあるが,色々 な役割 があるこ とを知 らせ るために,多様 な役割 を体験 させ ることが必要 となる。
但 し,仲間の立場 に立つ能力 は,他者 の感情認知 よ り高度 な能力 を要す る18)と言わ れ てい るので,教師 は児童 の発達段 階 に応 じた言葉 かけや 関わ りが必 要であ る。
3)感情 の共有 :相手 の立場 を理解す るだけでな く,感情 を共有 で きる
<児童 の姿 >
感情 の共有 には,異なった他者 と共通 の 目標 を設定 し,それ に向かって協力 し合 う 関係が必要 となる。 この 自己 と他者 が共通 の 目標 を目指 し協力 し合 う関係,お よびそ こで行 われ る活動 は,協 同 と呼 ばれてい る。調査2の 「体育授業 で思いや りの心 を育 める理 由」 について図2に示す。
30
25
20
15
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n=34 x2‑※ ※※
図2 体育授業が思いや りの心 を育む理 由
体育授業で思いや りの心を育める理 由は 「教 え合いや協力 の "協同"の場面が多い」
が最 も多 く,次いで 「他者 との共感場面が多い」,「心 と体 のふれあい」の順であった。
これ よ り多 くの教師は,協 同体験 が思 いや りの心 を育む と認識 していることが明 ら か とな り,児童 が協 同を通 して, どのよ うに思いや りの心 を育んでい くか,それ に対 す る教 師の関わ りを明 らかにす る必 要性 が示唆 され た。
浮 田が19)「協 同によって生 じる感情 の共通体験 は,思いや りの心の発達 に欠かせ な
松永淳一 ・有 田敏広 :心 を育 む体 育授業 の研究 125
い」 と述べ てい るよ うに,児童 は集 団 目標達成 に向けて気持 ちを一致 させ,個人の活 動 を明確 にす る とともに, 目標達成 をめ ざして協 同す ることで,気持 ちを共有 してゆ
くと考 え られ る。
集 団的スポー ツの場合 は,前述 の よ うに,集 団 目標 を一致 させ,それ に対す る個々 の 目標 と活動 を明確 にす ることが,集 団に協 同を生 じさせ る要因になると考 える。す なわち,明確 な集 団 目標 によって個 々が集結 し,協 同を通 して感情の共有 が多 く期待 できる と考 える。
個人的スポーツの場合 は,個 々の 目標 が能力 によって多様 であ り,集 団スポーツの よ うな個々の集結要因は少 ない。 しか し,個 々の 目標 が異なる状態であっても,その 目標 を互いに理解 し,認め合いなが ら学習す ることで,感情の共有 を生 じると考 える。
すなわ ち,個々の 目標や, 目標達成 に対す る活動や努力 を認 め合 うことで,優劣感 が 無 くな り,仲 間の ことを 自分 の ことの よ うに喜 び合 う姿が生 じよ う。
<教師の関わ り>
感情 の共有 は,仲 間 との相互理解 ,協 同を通 して生 じるものであ り, 「共有 させ る 直接的な関わ り」は考 え られ ない。 しか し,教師は児童 の 「仲 間が困っている と思 っ てア ドバイス した」 とい う行動 が見 られた場合,その児童の感情 に即 したものか を図 るために,お互いの気持 ちを確認 し合 う場 を設 け,互いの感情 を共有 させ る必要があ る。
また,集団 目標‑の意志の統一,個々の 目標 と活動の位置づけを明確 にす ることで, 児童が積極 的に学習 に取 り組 む よ うにし向け,児童 の肯定的 ・否定的感情 をよ り開放
させ ることが必要 である。
5.思 いや りの心 を育む教師の関わ り
以上 よ り,思いや りの心 を育む教師の関わ りをま とめると,集 団 目標達成‑向けて個 々 の活動 を責任持 って遂行 し,協 同 しなが ら学習す る中で,仲 間の気持 ちや立場 に気づかせ る言葉かけ,働 きかけが必要である。児童が 自ら 「気づ く ・考 える」ことが重要であ り,
「〜 さんは こんな気持 ちでい るよ」, 「失敗 を責 めた らいけない よ」な ど,児童 に一方的 に 押 し付 けるかかわ りではな く,教師は ヒン トを与 え,児童が考 え結論 を下す菊池が20)言 う
「考 えて ごらん型」 で関わ るこ とが重要である。
また, 目標達成 との関連か ら,個 々の全 ての活動 を振 り返 る場 を充分確保す ることが, 必要である。教師 は思いや りの行動 を称賛 し,全員 にその ことを伝 えた り,その時の気持 ちを確認 し合 うことで,共感性 の3要素 を常 に意識 させ,体験 させ てい くことができる。
従 って, これか らの学習計画では技能,学び方 の学習 内容 に加 え,態度では特 に仲間 を 思いや る心 を育む ことが重要であ り,学習の振 り返 りで も, この 3視点か ら振 り返 ること が必要 となろ う。
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